激戦を終え、南の島で一時を過ごしたアークのリベリスタ達。 残り僅かな九月十日への猶予で忘却の石の補充を行い、戦いに向かう為の英気を養った彼等は矢継ぎ早に訪れる次なる戦いに身を投じる。 飢餓するバロックナイツ第五位『魔神王』キース・ソロモンの我慢は既に限界だった。 ギリギリのタイミングで訪れた九月十日。 キースは力無き者を虐殺するような行動を好まないが、全てはアークが彼の期待に応えるかどうかにかかっていた。日本各地に残る古戦場、城跡を制圧した魔神達にアークは戦力を差し向ける。 北は北海道・五稜郭のビフロンス、南は沖縄・首里城のアスタロテ。 日本の中心京都・二条城に出現したキース、遅れて来た魔神ゼパールをを含め、次々と出現した魔神王の勢力はそれぞれの性格のままにリベリスタ達を挑発する。 この時の為に力を磨けるだけ磨いたリベリスタ達は奮闘する。各地で圧倒的な戦闘力を誇る魔神を時に出し抜き、時に敗れるも健闘を見せた彼等の戦いは二条城に集約された。 ――いい加減起きろよ、アンタレス! 俺様と打ち合うか、面白ぇ――! 無敵の戦闘力を誇るキースにリベリスタ達は全滅の危機に陥るも、小崎・岬(BNE002119)の呼びかけに応えた彼女の武装『アンタレス』が覚醒し、彼を一時押し戻す。自身の召還した魔神達が六勝七敗で負け越した事を知ったキースは引き分け狙いを潔しとせず、戦いの終了を宣言した。 キース指定の九月十日を超えたアークの元に同盟組織オルクス・パラストから要請が来る。 バロックナイツ連破で名声の高まったアークには世界中から助力の声が来ていたのだ。 キースとの対決で上位のバロックナイツの戦闘力を知ったアークは現状を憂慮。更なる力を獲得する為に海外での傭兵活動を展開する事を決定した。 アークの海外活動が始まり程無くして、恋人の六道紫杏をモリアーティに奪われた凪聖四郎の元には不穏な情報が届いていた。 紫杏の研究成果であるエリューション・キマイラは倫敦を拠点にするモリアーティ一派『倫敦の蜘蛛の巣』に利用され、かの地の平穏を大きく乱し始めていたのだ。 キマイラの戦闘力はモリアーティによる強化を受け、旧来より大幅に増していた。ロンドンのリベリスタ組織『スコットランド・ヤード』の協力要請を受けたアークは重点的に倫敦派との戦いを進めていく。同時に戦略司令室長・時村沙織の思惑通り、『ヴァチカン』等から協力の謝礼を受けたアークは新たな力を獲得する為の地歩を固めていた。 そして十二月。年の瀬を迎えたアークは『スコットランド・ヤード』との共同作戦で宿敵である六道紫杏のキマイラを利用する『倫敦の蜘蛛の巣』を叩く計画を練っていた。 しかし、倫敦派はアーク側の機先を制する形でロンドン市内を恐怖と混沌に陥れる。 『スコットランド・ヤード』の本部であるロンドン警視庁地下を守る戦いは激戦を極めた。倫敦派として打って出た六道紫杏の部隊、テンプル駅付近に出現し、九条徹を痛めつけた部隊、最高戦力を誇るモリアーティの腹心セバスチャン・モラン大佐率いる部隊、倫敦派の幹部『魔術師』アラステアの部隊には驚くべきかフェーズ4を数えるエリューション・キマイラが配備されていたのだ。 『スコットランド・ヤード』地下本部に潜り込んだアラステアは倫敦派に反旗を翻した『午前二時の黒兎』土御門・ソウシの裏切りも受け撤収。ロンドン市街での防衛戦は辛くもリベリスタ側の勝利に終わったが、フェーズ4キマイラの脅威を見せ付けたこの事件はリベリスタ側を焦らせるには十分だった。 日本国内では主流七派・裏野部がいよいよその脅威を増しつつあり、海外ではアシュレイの協定から戦わない訳にはいかない『倫敦の蜘蛛の巣』が力を増していた。非常に難しい局面にアークは両睨みの態勢で対処する事を要求されていたのだ。 更に倫敦事変で『倫敦の蜘蛛の巣』の情報を取得したアークと『スコットランドヤード』は、先の反省を生かして倫敦派に先制攻撃を仕掛けんと動き出していた。 『ヴァチカン』の情報、『ガンダーラ』の協力、探検隊となったセレア・アレイン(BNE003170)等の活躍もあり、先に獲得した『渇望の書』から力を引き出す術を得たアークはその準備を進めていた。 暫しの時を経て始まったのは『倫敦の蜘蛛の巣』攻略戦。 戦場には六道紫杏、そして凪聖四郎の姿もあった。 東雲 未明(BNE000340)、汐崎・沙希(BNE001579)等の情報からピカデリー・サーカスの地下の敵本部情報を断定したリベリスタ達は、頑強な抵抗を?き分けて敵本丸に迫っていく。しかし、万全を期して市内封鎖を果たしていたリベリスタ陣営は、蜘蛛の巣の最奥でモリアーティの真の狙いを知る事となった。 『モリアーティの行動計画書<モリアーティ・プラン』を有する彼の計画に隙は無かった。 新田・快(BNE000439)や新城・拓真(BNE000644)が情報から懸念していた通りそれは罠だったのだ。 生身でのサイバーダイヴを可能とするアーティファクト『Wolrd Wide Web』を起動したモリアーティの狙いは遥か数千キロ離れた日本・三高平に存在するアークの根幹システムだった。その場に引き込まれたリベリスタ達のアクセス・ファンタズムをネットワークの侵入経路に変えた彼は最初から『倫敦の蜘蛛の巣』全てを捨石にして自身の望みを叶えんとしていたのだ。 モラン大佐の守る地下本部を制圧し、モリアーティを追撃するリベリスタ達。 紫杏、アラステア等も戦死し、倫敦派は総崩れの時を迎えていた。 しかし、最後に残る最大の難関は他ならぬジェームズ・モリアーティ。 三高平に残ったリベリスタ達は研究開発室長・真白智親の閃きでVTSのシステムを転用し、ウィルスと化したモリアーティに対抗する。 攻めるモリアーティ、守るアーク。ロンドンと三高平で同時に展開する攻防は熾烈を極めた。 しかし、モラン大佐が倒れ、倫敦派が駆逐されるに到り――電脳世界上の決戦も変化を迎える。 建城 遊菜(BNE003950)の提案で智親が作り出した『ホームズ・ワクチン』がモリアーティの動きを止めたのだ。 「繰り返しの演目か。ここはライヘンバッハでは無いというのに!」 絶望の声を上げるモリアーティにリベリスタ達の攻勢が襲い掛かる。 彼の飽くなき野望を止めたのは、 「物語のキャラクターとしてのアンタは、嫌いじゃなかったぜ。滝も無ければバリツも使えんが勘弁してくれ」 禍原 福松(BNE003517)の構えた黄金の銃――オーバーナイトミリオネア。 0と1の数字に分解されるモリアーティの正体を――制圧した倫敦派地下本部で一息を吐いたイーゼリット・イシュター(BNE001996)と海依音・レヒニッツ・神裂(BNE004230)が推察していた。 「モリアーティって、何だったと思う?」 「彼等は人間では無かったのではないかしら」 「神(ドイル)は何者も望んでは居なかった。 モリアーティを生み出したのは、他でもないシャーロキアン。 彼の退場を惜しんだ人。彼はホームズと『同等以上』だと信じた――彼自身の『ファン』だった」 消滅寸前の『モリアーティの行動計画書<モリアーティ・プラン>』が高原 恵梨香(BNE000234)に告げる。 ――――アークが、これからも存続し、この世界を守る為の最適解 アシュレイ・ヘーゼル・ブラックモアを今すぐ殺す事。99・999%…… ――かくて、戦いは終わったのだ。 ★登場人物・重要事項Check! 『魔神王』キース・ソロモン バロックナイツ厳かな歪夜十三使徒第五位。 極めて単純明快に戦う事が大好きな生粋のバトルマニア。 スイッチが入ると碧眼が赤く染まり、その危険度は圧倒的に増大する。 魔術書『ゲーティア』でソロモンの魔神を使役するが、そのスペックは術者であるキースの力量に拠る模様。 現時点でリベリスタ達が出会った中では『最強』と目される異能者である。 『犯罪ナポレオン』ジェームズ・モリアーティ バロックナイツ厳かな歪夜十三使徒第十一位。 『小説の中から抜け出してきたかのようなジェームズ・モリアーティ』といった風。 非常に明晰な頭脳を持ち、倫敦の闇を長年支配してきた犯罪王である。 『倫敦の蜘蛛の巣』という組織を構えていたが、それも自身の目的を達する為の駒に過ぎなかった。 行動計画を正確無比に確率演算するアーティファクト『モリアーティの行動計画書<モリアーティ・プラン>』を有していたが、実は人間ではなく『フェイトを得たエリューション・フォース』に過ぎず、アーティファクトと彼は一心同体であった。 『倫敦で二番目に危険な男』セバスチャン・モラン大佐 モリアーティの腹心。世界有数の射撃の名手。 軍人上がりと見られていたが、その出生はモリアーティと同じである。 彼等は本当の意味での唯一の同類であり、故にモラン大佐はモリアーティに絶対の忠誠を誓っていた。 『魔術師』アラステア モリアーティの腹心。魔術に精通した有力フィクサード。 モリアーティの真の計画を或る程度聞かされていた事から一定の信頼を得ていた様子である。 倫敦地下本部で適当な数のリベリスタをモリアーティの元へ通過させる事で仕事を果たしたが、最終的には敗れた。 『午前二時の黒兎』土御門・ソウシ 『倫敦の蜘蛛の巣』の構成員と見られていたが、実はスパイであった。 元々は後宮シンヤの配下だった彼は現在グレゴリー・ラスプーチンの手の者として暗躍している。 倫敦事変でアラステアを裏切った事から倫敦派を完全に離脱している。 フェーズ4キマイラ 極めて危険な貴族級のエリューション。 通常難しい制御をキマイラ技術の応用で行っているが、不安定。 六道紫杏の研究をモリアーティが強化運用したもので、日本でのそれとは比較にならない性能を持っていた。 スコットランド・ヤード ロンドンの平和を守る有力リベリスタ組織。 実戦部隊の平均的な戦闘力はアークに劣るが、警察的捜査に極めて優れており、情報収集能力が高い。 又、一部精鋭はかなりの戦闘力を持っている。 『ヴァチカン』 世界最強のリベリスタ組織。そして原理主義組織。 本拠とするローマ近辺には一切のフィクサードの生存は許されない。 非常に付き合い難い存在だが、現在のアークには一目置いており、比較的友好的である。 幹部にアゴスティーノ枢機卿、チェネザリ枢機卿等が居る。 『チェネザリ機関』と呼ばれる影の組織を有しており、この戦闘力は激烈のようだ。 『ガンダーラ』 インドに所在する有力リベリスタ組織。 世界三大組織の一つとされ、そのトップには女性教主ラーナ・マーヤを戴いている。 アークに『ラビリンス』と呼ばれる地下迷宮の発掘権を譲渡した。 『真なる賢者の石』を獲得したアークはこれに応える事となった。 『真なる賢者の石』 より純度の高い『賢者の石』であり、高い魔力を秘めている。 フィクサード考古学者ハインリヒの言によればミラーミスの落とし子に近い存在らしく、極めて希少な存在である。 ■14/01/25 ■13/12/05 →『倫敦編』の動き |