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倫敦事変、その後……>

「先日はご苦労だったな。もう既に知っての通りだろうが――お前達の活躍もあって『蜘蛛』の猛攻は『ヤード』側を陥落させるには到らなかった。
 まぁ、アーク救援外での戦いもかなりの規模にはなってたんだが、お前達の戦いに象徴されるような士気が何処にもあったってそういう事だ」
 ブリーフィングに呼び出されたリベリスタ達はようやく人心地ついたクリスマスを後に表情を引き締め直した沙織から労いの言葉を受けていた。
 沙織が言及したのは言わずと知れた『倫敦事変』――バロックナイツが一、ジェームズ・モリアーティ率いる『倫敦の蜘蛛の巣』とリベリスタ達の対決の顛末である。ロンドン市内、リベリスタ組織『スコットランド・ヤード』治下本部を舞台にした激闘は彼の言の通り紙一重でリベリスタ側の勝利となっていた。状況はほぼ五分、時には五分より悪い状況もあったのだが、戦略目標を攻略出来なかった時点で蜘蛛からすれば痛手になろう。
「今回の戦いは更にアークの名声を高めると共に『ヤード』ひいては欧州のリベリスタ達への『貸し』にもなる。まぁ、尤もあのアシュレイと同盟を結んでいる以上はバロックナイツとの戦いは不可避だ。あの女がへそを曲げて『閉じない穴』の制御を辞めればナイトメアダウンの再来も否めない所だからな。
 ……まぁ、それはそれとしてだ。今回の戦いは唯単に連中を撃退すれば良かったって話じゃない。それがお前達を呼んだ理由なんだが」
 沙織の言葉をここまで待った新田・快(BNE000439)がここで一つ頷いた。
「――守っていても状況は解決しない。
 ジェームズ・モリアーティはその天才的な頭脳で強化キマイラをやがて『完成』させる。或いは更なる『兵器』を作り出す。だから……ですよね? 室長」
 快の言葉にはより逼迫した事態への強い警戒感が潜んでいた。今回こそリベリスタ連合は倫敦派を撃退するに到ったが、それは微妙な勝負のあやも大きい。その結果を導き出した大きな理由の一つに『フェーズ4キマイラの制御不良』が挙げられるのだから次なる戦いでこれを期待するのは虫が良すぎる。尤もその制御不良は先んじて撃って出る事を目論んだ『ヤード』とアークに合わせた戦いが生み出したものなのだから今回についてはやりたいようにさせなかったと言えるのだが。
「アークはモリアーティの機先を制する必要がある。
 今回の防衛戦の副目的に情報収集を当てたのはその為だ」
 敵の強さを肌で感じた言葉に沙織は肯定の言葉を返す。彼の言葉に合わせてブリーフィングのモニターには倫敦各所の戦闘映像が映し出されていた。
「ロンドン市内、『ヤード』本部での戦闘はかなり大規模なものになった。結果として大きな被害こそ出たが、この戦闘を切っ掛けに俺達は一定の情報を集める事に成功したとも言える」
「例えば蜘蛛の本拠の手がかりとか、ね。
 まるで暗闇の中で蜘蛛の糸を辿るような話ではあるけれど」
「それともヘンゼルとグレーテルかしら?」と嘯いたのは場所こそ違うが快と同じく地下鉄で倫敦派を迎撃した東雲 未明(BNE000340)であった。
「ピカデリー・サーカス周辺での戦闘でおかしな痕跡を掴んだわ。
 私達なりに『蜘蛛』の動きに予測をつけて探ってみたんだけど――集音装置や動物会話での調査の結果を考えても、あの一帯の『下』が怪しい事は確実だと思うわね」
 未明の言葉に「成る程」とばかりに頷いたのは汐崎・沙希(BNE001579)。「こういうところ、来るのは苦手なんだけど」と前置いた彼女は『ヤード』本部での戦闘で敵フィクサード、デイブ・パスカヴィルより読み取った情報が未明等の想定を裏付けるものである事を証明した。ハイリーディングで盗み取った『蜘蛛』の重要映像を御丁寧に念写した彼女は資料をブリーフィングのリベリスタ達に手回した。映像はあくまで彼女の記憶を基に作られている為、ディティールは完璧ではないが現代的な要塞めいたその場所がアークや『ヤード』を思わせる地下本部である事は連想出来る範囲にあった。
「『ヤード』は警察機構だ。表の世界とのつながりも強い。こういったもんを調べさせたらそれこそ『ホームズ』みたいな強味があるからな。お前達が持ち帰った情報を今連中が全力で解析してる筈だ。モリアーティを今度は逆に攻め返す必殺の作戦の第一歩としてね」
 その言葉はある意味でリベリスタ達の期待通りだった。
 受けてばかりでは気分も滅入る。リベリスタという商売柄、悪事を働くフィクサードの後手に回らざるを得なくなる事は致し方ないが、何時までもそれを野放しにする心算は無い。
「しかし、幾つか気になる情報もあります」
 そう言う新城・拓真(BNE000644)はハイド・パークでの戦闘――その結末に受け取ったメッセージを思い出していた。

『倫敦は、パズルの1ピースに過ぎません。
 モリアーティお爺さんが欲しがっているのは、もっともっと、大きなもの』

『蜘蛛』の傘下組織『イーストエンドの子供達』が恐らく情で伝えた警告である。恐らくは彼等もモリアーティの本心を知らないのではあろうが、ホームズと並ぶ天才とされる彼に何の企みがあっても不思議は無い。
「それに、『モリアーティ・プラン』。
 リー教授が言うにはそれは超越した確率的演算だとか。
 ……つまり、それが彼の『アーティファクト』なんだとしたら?」
 拓真に合わせた快の言葉は戦慄の意味を持っている。バロックナイツが神器級のアーティファクトを有しているのは最早定説だ。『倫敦の鮮血乙女』、『冥王の呼び声』、『渇望の書』、『ゲーティア』、そして『24、The World』。何れも超越者に相応しい一つで世界を相手取れる魔性の品々である。モリアーティの作戦がもし彼のアーティファクトに根ざして立案されているのだとすれば、『彼が失敗したかどうかは実際問題怪しくなる』。
「……確かに今回の攻めは激しかったが倫敦派らしくは無かった。
 疑えばきりはないし、モリアーティの狙いは分からん。しかし、一方で奴は『午前二時の黒兎』の裏切りを配下に伝えてはいなかった。奴の計算が百パーセントじゃねぇのか、それとも『敢えて伝えなかった』かも分からんが、ここは『完全じゃない』と考えるしかないだろ」
 沙織の言葉にリベリスタ達は頷いた。
 バロックナイツは常識外の存在だ。ロンドンの霧の先に何が待っていたとしても不思議は無い。だが、状況が動き出した以上、リベリスタには迷う事は許されないのだ。
「兎に角、今は暫く待機だ。『ヤード』側の戦力再編と情報分析が済み次第、今度はこっちの攻撃計画がスタートする。バロックナイツとの直接対決が確実な情勢になった以上は形はどうあれアシュレイの助力もあるだろう。同時にあの女にも注意を配らなくちゃいけなくなるが。
 お前達の戦いに感謝してる。
 残り少なくなった『今年』をゆっくり過ごして鋭気を養うようにしてくれ」
 2013年は先輩達を見習って、あくまで早足で駆けて行く。
 気付けば激動を幾度と無く越えた三高平も年の瀬を迎えようとしていた。