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『倫敦』より愛を込めて>

「成る程、教授の慧眼通り。ミス六道の『作品』は中々有用ですな」
 セバスチャン・モラン大佐は自身の主人たる老紳士に邪悪な視線を向けて含むように笑っていた。彼等『倫敦の蜘蛛の巣』が古くは『極東の空白地帯』、最近は『極東に生まれた奇跡の地』として神秘界隈を騒がせる日本より一人の女を拾い上げたのは幾ばくか前の出来事である。主流七派と呼ばれる日本のフィクサードの大軍団の幹部を勤めていた六道紫杏という女は確かに類稀な才能の持ち主だった。
「つまり、『教授の作品』は万全という事です」
 モランの言葉は紫杏への皮肉と嘲りに満ちていた。
 扱い難い天才の才能を欲し、傀儡に貶める謀略を倫敦派が講じたのは紫杏とアークが対決を迎えた時の事である。結果として自身の戦力の大半を喪失した彼女は失意の中、この倫敦に渡る事になった。その後の彼女の活躍は『倫敦の蜘蛛の巣』に小さくない利益を与えているのだ。
「『キマイラ』の完成度は教授の力で飛躍的に上昇しています。
 あの使い捨ての戦力で――首を絞められ続ければ『ヤード』が音を上げるのも近々でしょう」
 リベリスタ組織『スコットランドヤード』――通称『ヤード』は『倫敦の蜘蛛の巣』と英国の覇権を賭けて争う強力な集団である。この程パワーバランスが崩れ始めたのはモランの口にした『キマイラ』の存在が切り離せない。倫敦派は彼等に告げている。「諸君等が我々のささやかなビジネスを邪魔しないならばこんな悲劇は防げよう」と。見え透いた脅迫だが、表舞台に簡単に現れず真綿で首を絞めるようなやり方は蜘蛛の得手の一つである。
「長年の宿敵もこれまでという訳ですな」
 機嫌良くそう言ったモランを老紳士は――ジェームズ・モリアーティは制した。
「大佐。物事には裏と表が付きものだよ。
 我々が『キマイラ』を運用したとすれば顔を出したがる連中は居るだろう。
 尤も、それも計算の内だ。今や『彼等』は神秘界隈の超新星なのだから。倫敦派がこれを仕留めればその声望たるや地の果てまで響くだろう。倫敦派が倫敦を超え、この世界の暗黒街を統べる事を認めさせるにこれ程のデモンストレーションがあるだろうか?
 ……何も彼等のホームで勝負する必要は無いのだよ。地の利をもって迎えよう。この妖しくも美しい『倫敦』に。我々の『蜘蛛の巣』に」
 言葉を切ったモリアーティは薄く笑った。
「全てのシャーロキアンに教えよう。
 我々の世界に『ホームズは』居ないというその事実を!」