苦難の末に大芸術家・ケイオスを退けたアーク。 世界的な悪名を持つケイオスの撃破は神秘業界にアークの名声を高める結果となった。 先の作戦でケイオス邸の位置を特定する協力を果たした世界最強のリベリスタ組織『ヴァチカン』より招待を受けたアークは一時を海外で過ごす事となった。 『ヴァチカン』で譲り受けた『深化の石』と梅子、桃子の母親である桜子・エインズワースの協力で新しい力を得たアーク。 しかし『楽団』残党によるアンコール事件の余韻も冷めぬ内に次なる問題が持ち上がる。 敵勢力『親衛隊』の頭脳・クリスティナ中尉の外交能力により、先のケイオス戦では事実上の味方であった国内フィクサード達とケイオスの敗退、アークのダメージを見越して動き出したバロックナイツ『鉄十字猟犬』リヒャルト少佐率いる『親衛隊』が結託したのだ。 点数稼ぎにフュリ・アペレースをはじめとした『楽団』残党を狩る一方で、国内の諸勢力――時村の終生のライバルである大田剛伝と結び付きを深めた『親衛隊』は遂に行動を開始する。 最早国内に並ぶ者の無い日本の守護者となったアークを揺るがしたのは、『親衛隊』による執拗なゲリラ戦の展開だった。正面衝突で敗れたケイオスを見た彼等はより狡猾にアークの戦力を削りに掛かる。 先のケイオスとは異なり、国内フィクサードとぶつかる気配を見せない『親衛隊』にアーク首脳部はフィクサード同士の結託を推察する。敵をあくまでアークに絞った彼等はアーク所属の中でも余り力に優れない軽い任務に就く者を中心に狙い撃つという猟犬の如き戦術を展開した。アルトマイヤー少尉、ブレーメ曹長等、有力なフィクサードの作戦が容赦なく牙を剥く。特に自ら出陣したリヒャルト少佐の砲撃を回避出来たのは、全滅の危機に偏に身を挺したメアリ・ラングストン(000075)の犠牲が為だったと言う他は無かった。 苦戦を余儀なくされるアークに会談を持ち掛けてきたのは予想外の人物だった。 国内主流七派『逆凪』総帥・逆凪黒覇はアークを見定め、やがて衝撃的な事実を告げる。 「全世界的テロ、全世界的闘争の広がり、国家は国家を憎悪し――崩壊は伝播する。 どれ程の『確率』があるかは別にして。彼等は『祖国』の為に文字通り『世界』を侵すだろう。 人類の黄昏を人は――第三次世界大戦と呼ぶのだよ」 黒覇によれば『親衛隊』の目的は祖国ドイツの奪還。 『親衛隊』は軍需産業の重鎮・大田と手を組んで新兵器の開発を進めているのだ。 彼等が望むのはこの世界に三度目の大戦を引き起こす事であるという。 最早逆凪をしても御し切れなくなりつつあるアークを彼はこの機に潰すと宣言した。 だが、彼の本当の望みはアークと『親衛隊』の共倒れにあるという。 或る意味絶対に看過出来ない最悪の計画を聞かされたアークはやがて『親衛隊』との大規模闘争へと突入する。 戦いの夜。襲撃に前後して、国内主流七派の首領達――逆凪、三尋木、剣林、六道、裏野部が動き出すという驚愕の『偶然』に遭遇したアークは重要な戦力の一部を本部から引き離され、『絶望的な』状況に臍を噛む。 『偶然』を利用した彼等は、自身等の目的を進める為に重要な意味を持つ三ツ池公園――『閉じない穴』を狙った『親衛隊』は大田と共に作り上げた新兵器を携え、猛烈な攻勢をかけてきたのだ。 熾烈を極めた三ツ池公園防衛戦はアークの敗北に終わる。 次善策を考えるアーク本部にエマージェンシーコールが響く。 何と三高平を来訪したのはバロックナイツ――『魔神王』キース・ソロモンであった。 一方的なやり取りでアークに宣戦布告を押し付けるキース。 目の前の『親衛隊』に加え、九月十日に始まるキースの行動開始にアークは戦慄した。 しかし、このキースの宣言を戦略司令室長・時村沙織は逆手に取る事に成功する。 大田に接近する恐山の一方、キースを材料に使う事で国内主流七派の動きを牽制したアークはその機を逃さず、『親衛隊』との早期決戦を企てた。 アークの作戦は二段構え。まずは重要拠点である三ツ池公園に攻撃部隊を飛ばし、敵戦力を釣り出した上で彼等の本拠である『大田重工埼玉工場』を叩くというまさに前回の意趣返しであった。 公園、工場共にリベリスタ側優勢。戦況を見定めるのは黒騎士、白騎士。 『親衛隊』頼みのブレーメを義桜 葛葉(BNE003637)の死戦が絶ち斬った。 予想外の苦境に一人ごちるクリスティナ。 戦力を束ねるリベリスタ。対峙するリセリア・フォルン(BNE002511)にリヒャルトは咆哮する。 「お前に一体何が分かる。 戦争の常とは言え、だ。大切なものを根こそぎ奪われ、この顔の傷を受けた僕の気持ちが分かるのか? 愛する者を目の前でミンチにされた経験は? そのバーベキューの臭いを知っているか? ええ? 愛する祖国の為に戦い――命を賭けて。その祖国から『間違った歴史』と呼ばれる気持ちが分かるか? ベルリンを土足で踏み荒らした連中は、祖国の何を引き裂いた。 あの壁が倒れた時、此の世に有りもしなかったお前に――『親衛隊』の憎悪の何が分かる!」 更に猛攻を加えるリベリスタに遂に情勢が動き始める。 敵が意地も誇りも打ち砕き、遂にリヒャルトに到達した司馬 鷲祐(BNE000288)の雷光が炸裂した。 「――神速斬断『竜鱗細工』――ッ!」 崩れ落ちるリヒャルト。しかし、『塔の魔女』アシュレイは砕けた彼のアーティファクト(アハト・アハト)にその柳眉を曇らせた。 亡霊の夜は終わっていなかった。 やがて『親衛隊』の残滓を飲み込んだ巨大な鉄の球体がリベリスタ達の頭上に出現した。 真のバロックナイツはクリスティナ中尉の持つ魔術書『渇望の書』だったのだ。空腹の彼はリヒャルトの妄執を、『親衛隊』の想いを糧に遂に動き出したのだ。 時同じくして三ツ池公園の戦況にも変化が訪れていた。 退いたアルトマイヤーに代わり、『親衛隊』幹部ベルンハルト・“ドク”・ノイマンの切り札がリベリスタ達に襲い掛かる! ――さってと、リヒャルトの望みは何だっけ? クリスティナの望みは、『親衛隊』は…… ええと、そうだ。『永遠に続く戦争』だっけ! 公園ではドクの巨大機兵コング。 本拠工場では意志を持つアーティファクトと残党を纏めるクリスティナ。 ――二つの決戦が始まった。 敵は圧倒的な力を持つ球体『ファントム・レギオン』。対抗するは満身創痍のリベリスタ達。 『神秘探求同盟』の面々を従え、大怪球最深部まで進撃したイスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)はアシュレイと『渇望の書』の獲得を競り、惜敗するも――彼の欠片を入手するに到った。 空中で崩壊していく亡霊の夢にリベリスタ達は安堵の表情を浮かべていた。 公園での戦い、ドクを破った羽柴 壱也(BNE002639)の声が本部に届く。 『渇望の書』の正体を今知る者は無かったが――戦いは一先ず終わったのだ。 ★登場人物・重要事項Check! 『鉄十字猟犬』リヒャルト・ユルゲン・アウフシュナイター少佐 バロックナイツ厳かな歪夜十三使徒第八位。 元アーネンエルベ所属。ドイツ軍人、階級は少佐。 及び旧体制の信望者を集めたフィクサード集団『親衛隊』の首魁。 『親衛隊』の中では最も実年齢が若い部類の人物である。 極めて強力な携行用主砲『アハト・アハト』を備える魔人。 実は『渇望の書』に見出されて命を永らえた革醒者だが、その才能は書のみのものではない。 神経質で非常に気難しい人物だが仲間には寛容かつ、守るべき者には極めて優しい。 アーリア人種を至高の人種と考えており、その他を劣等種と見下している。 クリスティナ・エンデ中尉 リヒャルトの副官。二十代中盤~後半に見える黒髪の美女。 『鉄の処女』の異名を持つ極めて有能な軍人であり、全ての任務を的確にこなす事が出来る。 元アーネンエルベ所属。階級は中尉。 彼女が手にしているのはアーネンエルベ時代に発掘した魔術書『渇望の書』である。 アルトマイヤー・ベーレンドルフ少尉 『親衛隊』有数の使い手。スナイパー。 気障な伊達男で何事も優雅にスマートにが信条の皮肉屋。 三ツ池公園防衛の責任者だったが、中途で負傷して撤退。 親友であるブレーメ・ゾエの死を知り激昂。『親衛隊』の復讐戦を指揮し、壮絶に戦死した。 →<Reconquista>終焉穿つパトローネ<Ritterkreuz Bajonett> ブレーメ・ゾエ曹長 『親衛隊』有数の使い手。ナイフ使い。 飄々としているが、その本来の気質は苛烈にして執念深い蛇の如しである。 追い込まれる程強くなる気質を持ち、勝利へ異常な執念を燃やす男。 純戦闘能力ならば『親衛隊』でも一、二を争う実力者だが、義桜 葛葉(BNE003637)と相打ちで果てた。 ベルンハルト・“ドク”・ノイマン 『親衛隊』メンバー。研究者。元アーネンエルベ。 所謂マッドサイエンティストであり、ドイツの科学力は世界一。 機械・電気系、化学・バイオ系、そして神秘にも詳しい敏腕研究者で、主に兵士の戦闘力強化と、大規模・広範囲攻撃兵器、そして対神秘兵器の研究を行っていたともされる。 金髪の優男だが、その性質には狂気が見て取れる。軍人との相性は余り良くなかった様子。 三ツ池公園攻略戦では撤収したアルトマイヤーに代わり、最後の障壁としてアークの前に立ちはだかった。 『渇望の書』 真の第八位。 正体不明のアーティファクト。願望機。インテリジェンスアイテム。 意志を持つこのアーティファクトはリヒャルトの死の運命を救い、『親衛隊』の妄執を煽ってきた。 自らの食事を終えた彼は圧倒的な魔力で大怪球『ファントム・レギオン』を形成。 散々暴れ回るも、最終的にはアシュレイに所有される事となった。 イスカリオテ・ディ・カリオストロ(BNE001224)を気に入り、彼とアークに自身の一項を授けた。 大田剛伝 政治家、資産家。時村貴樹の終生のライバル。 時村貴樹が総理の時代は『大時戦争』と呼ばれる政治闘争を繰り返した。 世界一の金持ちが時村であるとするならば、世界二の資本を持つのは大田である。 『親衛隊』の落日を恐山に諭され、保険でそちらとも手を組んだ。 現在は恐山の資本のバックボーンとなっており、懲りずに虎視眈々と神秘業界進出を狙っている。 ■13/07/25 曲撃のアーク/亡霊の哭く夜に ■13/06/18 Verzweifelt →『鉄十字編』の動き |