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ソフ00

[2021/07/16]


「…………」
 水晶の国から帰還したフロレンシス・ルベル(CL3000702)は水晶の国から自由騎士達を運んできたスチームドラゴン『セカイ』に頭を下げた。朽ちるはずだったセカイの命を救ったフロレンシス。
 セカイはフロレンシスを始めとした自由騎士達に一礼し、水晶の国に戻っていく。水晶の巫女を弔うために――
「ヘルメリアは無事、です」
 ヘルメリア島での怪我人を癒し終えたたまき 聖流(CL3000283)は疲労のため息をつく。相手は全てを飲み込む神とそのデウス=ギア。その撃破に必要となった魔力は大きく、それを放ったのちに神との戦いで傷ついた怪我人を癒したのだ。
 彼女を支える信念の強さがうかがえよう。疲労に満ちた表情ではあるが、その瞳は真っ直ぐに空を見ていた。
「カダちゃん、御達者デ。死んだら虚無の海で会いましょうネ」
 ハンカチで涙を拭く『ような』ポーズでルー・シェーファー(CL3000101)はそんなことを言った。曰く、幻想種であるルーの父親が知り合いだったようだ。その縁故で色々話を聞いていたようだが、実際に会うのはこれが初めてだったという。
 央華大陸の医の始祖。薬学を嗜むルーからすれば、その教えは基礎の基礎。反転してなければ……神の蟲毒で殺し合ったのだから、まあ結果は同じである。
「毎度ながらギリギリだな。だからこそ、勝てた戦いでもあるが」
 カタクラフトの調子を確かめながらアデル・ハビッツ(CL3000496)は言う。思えばイ・ラプセルの戦いは苦難ばかりだ。だからこそ思考し、策を練り、活路を見出してきた。弱気を知り努力する存在に、強いだけの存在が勝てる道理はない。
 だが、これで終わったわけではない。アデルは大空に開いた虚の穴を見た。ソフ00が始まる前にはなかった穴だ。そこから、神が降りてきた。
「ったく。神だか何だか知らないけど、信じてる人を裏切るヤツはぶっころすだけよ!」
 未だに怒りの声をあげる猪市 きゐこ(CL3000048)。アマノホカリで手痛い裏切りを経験したきゐこは、裏切り行為を許しはしない。かつてアマノホカリで信望されていた神。それを裏切り、世界を滅ぼす側になった存在。それに対する怒りは、まだ残っていた。
 とはいえ、神は滅んだ。きゐこが滅ぼした。偶然必然などどうでもいい。故郷を裏切った神を殺したのだ。その事実で、少しは溜飲が下ると言うものだ。

 ――来る。
 自由騎士達は言葉ではなく、魂で理解する。
 大陸を無に帰す『アイン0』。
 無限の力持つ神の蹂躙『ソフ00』。
 そして創造神による本当の終わり。全てを光に包み込む『オウル000』。
 世界は白紙に消えるか、或いは創造神の揺り籠を壊してヒトは自由を得るか。
 その戦いが、来る――

【ソフ00関連依頼】
『【ソフ00】YoreGod!『滅びよ』と神は言った』(どくどくST)
『【ソフ00】神威顕現、虚無到来、いざ尋常に終焉を』(吾語ST)

アデル・ハビッツ (VC: 柿坂 八鹿
猪市 きゐこ (VC:つとう
ルー・シェーファー (VC:甘栗
フロレンシス・ルベル
たまき 聖流

こんにちはせかい

[2021/07/11]

最初は希望だった。
 きらきらしたものを造りたかった。
 まあるくて青い宝石。
 そこに雫を落とした。
 その雫はいのちとなって、多様性をもってひろがっていく。

 はろーせかい。こんにちは。
 とてもすてきなわたしだけのビオトープ。

 いろいろなものはとてもかわいくて、すてきだとおもった。
 いつしかヒトと呼ばれるものがあらわれた。
 何をするかわからないけど世界をかえる存在。
 それ自体はおもしろかった。

 でも。
 ヒトは知恵を重ねて歴史をつくり、いろいろなものを作り上げてきた。
 最初はおもしろかった。
 なのに文明とよばれるそれはなんども争いのもとになった。
 なんども彼らにやめてと聲をかけたけど。
 だれにもそれは聞こえない。

 だから。

 洪水で流(リセット)した。まっさらになったせかいをやりなおそう。

 また生まれた彼らは、見えない、しらない神の名においてたたかいはじめた。
 
 洪水で流(リセット)した。まっさらになった世界をやりなおそう。
 
 かれらは機械の文明を呼び起こしきれいな世界を汚した。

 洪水で流(リセット)した。まっさらになった世界をやり治そう。

 なのになんどもおなじようなことがくりかえされた。

 だから、わたしは目に見える神のかたちの人形をつくった。
 導くものがあれば変わっていくだろう。
 人形には多様性をもとめるために、心も設置した。
 けれど争う。
 でも、すこしだけ秩序ができた。この秩序を記憶しておこう。
 彼らのように記憶し、蓄積をつづけていこう。
 恒常性としてこのせかいをまもってくれるように。
 
 そして、65536回目。
 未知が世界に出現した。
 今まではおおよそ同じことが繰り返されたはずなのに
 それまでとは違うそれ。
 彼らはそれを「天啓(オラクル)」と呼んだ。
 
 自壊していくせかい。それは未知(アポトーシス)
 怖かった。
 
 こわかった。
 とても。こわかった。

 わたしはまちがってたのだろうか?
 なにをまちがえていたのかはわからないけど。
 でも、
 それは、
 もしかすると
 もしかしたら――。

ヴィスマルク陥落

[2021/06/29]

 「さあ、顛末は語り終えた。
 どうだった?  君たちの英雄譚。

 ご意見ご感想お待ちしております。なんつってね!


 5柱の力がケセドにあつまったよ。
 彼女は今をもってタットワの剣となる。
 神殺しの概念になって君たち青のオラクルに宿る。
 
 え? ケセドがどうなるかって?

 ……そりゃあ……ねえ?」
 
 ぐるぐる巻きになってイ・ラプセルにつれてこられたクローリーは悪びれることもなくいつもどおりに嘯く。

 「みんな! 大変だよ!
 帰ってきたところほんとにわるいんだけど。

 アクアディーネ様がどこにもいないの!!!

 それと!!
 くるの。
 空から。
 神様たちが!!!
 水鏡にうつったの!

 
 どうしよう、どうすればいいの?」


 突如、バタンと扉があけられ、深刻な顔のクラウディアが飛び込んでくる。
 
「そうそう、それさ。
 アイン、ソフ、オウル。
 滅びの第2楽章。
 ソフ00が発動した。
 せっかちなんだよ、あいつはさ」

 アクアディーネ神の姿が消えました。


「ききたいことが山程あるだろう?」

⇒「クローリーの答え合わせ」
※7/4までの期間限定スレッドです。


【関連依頼】
『ZERO/ALL 決戦ヴィスマルク』(たぢまよしかづST)
※シナリオ結果により、権能「勇猛」「苛烈」が追加されました


【ソフ00関連依頼】
『【ソフ00】YoreGod!『滅びよ』と神は言った』(どくどくST)
『【ソフ00】神威顕現、虚無到来、いざ尋常に終焉を』(吾語ST)

アレイスター・クローリー (VC:えまる・じょん

大陸弾道砲、発射阻止!

[2021/06/28]

 王城を攻められて混乱するヴィスマルク首都、ヴェスドラゴン。
 その混乱の合間を縫うように、自由騎士達は移動していた。大陸弾道砲が鎮座するクラーゲン基地。弾道砲発射の為に人払いしていたこともあり、移動は予想以上にスムーズだった。
 だがまあ、自由騎士自体はかなり疲弊している。それだけ戦いが激しかったのだ。
「全く、傷を塞ぐ余裕もないとはな! 医者として忸怩たる思いだ!」
 怒りの声をあげる非時香・ツボミ(CL3000086)。医者の知識からすれば、ここにいる自由騎士達の傷具合は数日は安静にした方がいいレベルのものだ。だがそんな余裕はない。今王城で世界の運命を決める戦いが行われている。戦力は多いに越したことはないのだ。
「……すまん。オレがもっとうまく守れていたら」
 ツボミの言葉に悔しそうな声を出すナバル・ジーロン(CL3000441)。守り手として仲間を守ることを使命とするナバルは、ここまで怪我人が出たのは自分のせいだと気負っていた。オレがもう少しうまくやれば、オレがもう少し強ければ――あいたっ!
「つまらんことを言うな! 次そんな弱音を吐いたらぶん殴るぞ!」
「いや、もう殴ったじゃねーか!?」
「ツボミの言う通りだ。誰の責任というわけでもない。いや、どうあっても無傷と行かない相手だった。それだけだ」
 ツボミとナバルのやり取りを見ながらアデル・ハビッツ(CL3000496)が口を挟む。相手はかつて自分の上司だった男が結成した歩兵部隊。多くの死線をくぐった選りすぐりの精鋭達。むしろ勝利できたことを誇るべきだ。
 そう。自由騎士達は大陸弾道砲をめぐる戦いに勝利し、その発射を止めることに成功した。弾道弾はどこにも発射せずに留めてある。モリグナを倒せば、デウスギアの効果は消えるから問題はない。
「そういうわけだ、ナバル。むしろ城で恥をさらすなよ。世界で一番強い盾とかほざいたんだ。そこまで豪語して死んだら、いい笑いモノだぞ」
「はっはっは。いやだなぁ、先生。田舎者のオレが恥をさらすなんて、いつものことじゃないか。皇帝の城なんて始めて入るんだぜ」
「気にする事はない。どうせ滅びる国だ。土足で入って皇帝と女神に無礼を働こう。
 突入前に傷を癒し、万全の態勢で挑むぞ」
 アデルの言葉に頷く自由騎士達。その声には何かを乗り越えた冷静沈着さが宿っている。

 ヴィスマルクとの最後の戦い。九人の自由騎士はなんとか体制を整え、参戦するのであった――

『Xenoforce! 大陸弾道砲を止めろ!』(どくどくST)

ナバル・ジーロン (VC:nori
非時香・ツボミ (VC:藤丸あお
アデル・ハビッツ (VC: 柿坂 八鹿

決戦ヴィスマルク

[2021/06/18]


 ヴィスマルク王城は、蜂の巣をつついたような騒動となっていた。
 街中より自由騎士を名乗る反抗勢力が現れ、破竹の勢いで門を開き場内に乱入したのだ。
「馬鹿な!? 今までどこにいたんだ!」
「潜入していたのに誰も気づかなかったのか!?
「憲兵隊は何をしている!? 食い止めるなり背後をつくなりできるだろうが!」
「連中、城に通じる橋を落してやがる! こっちに来るのに時間がかかる!」
「大陸弾道砲はどうなった!? アクアディーネ神殿を落せば連中の戦意も落ちるはずだ!」
「クラーゲン基地に自由騎士が潜入しただと!? くそ、あそこの守りは――」
 喧々囂々とするヴィスマルク軍。情報は交錯し、焦燥が愚手を導いていく。

「惰弱」

 そんな騒動を納めたのは、冷たい一言。
 ヴィスマルクを統治する鉄血の女神――モリグナ。
 ミトラースは神の慈愛で民を導いた。
 ヘルメスは有能な王似た身を任せた。
 アイドーネウスは民を徹底管理した。
 アクアディーネは民を平等に扱った。
 モリグナは――

「敵を討たぬ軍人など蟷螂の鎌に劣る。まだ岩場で蠢く虫の方が有能だ。
 自らの無能を証明し続けるなら道化も同じ。汝らも道化師と同様に扱おうか?」

 恐怖。場を支配した空気を表現するなら、その一言。
 冷たい目。言い争う軍人をその一言で黙らせる。それは言葉通り、虫以下のモノを見る目。
 否、神にとってはヒトなど動植物や虫と同列。潰せば消えるゴミ程度。神がその気になれば、このヴェスドラゴンの生きとし生けるものは全て滅びを迎えるだろう。ヒトが生かされているのは、唯一人の存在の為にすぎない。
 場が冷水を浴びたかのように静まり、そして軍人達は自由騎士を討つために動き出す。
「城の兵士を全員動かせ。出し惜しみをするな」
「プロメテウスを起動させろ。こういう時の為に自由にさせていた機械工だ。働いてもらうぞ」
「今のアドルフの守りは宮廷魔術師殿か。親衛隊を急がせろ!」
 動き出したヴィスマルク兵を前に、物憂げにモリグナは息を吐き、その場から消える。空間転移。移動したのは城にある女神の間。そこに置いてある矛槍を手にする。
「神殺し。それはただ、神を殺せる可能性があるにすぎぬ」
 神は殺せない。流星の衝撃でも、皇帝白龍の光線吐息でも傷を受ける事はない。だが、神を殺せる者は存在する。だが――
「私を殺せるものなどいない。創造主(ちちうえ)以外にはな」
 モリグナは笑みすら浮かべない。如何なるヒトも、虫同様。ただ潰し、ただ殺し、ただ蹂躙するだけ。自分を殺せる可能性など、ただそれだけの可能性。その攻撃が届くとさえ思っていない。ましてや自分を殺せるなど。
「見誤ったな、アクアディーネ。力なきヒトなど無価値。遊戯盤の駒に思いを込めても、明日には露と消える存在。
 ヒトなど愛するものではない」
(そうかしら? ねえさま。私はヒトを愛おしく思うわ。大切な大切な子どもたち。私の子どもたちが世界で健やかに生きることを願うわ。
 そして、自由騎士たちを殺してアクアディーネにその首をみせてあげましょう? そして取り返すの。私達のネヴァンを。
 全部ぜんぶ私達のものにしましょう。)
 内なる声は三位のうちの一翼ヴァハネ。豊穣と愛を司るもう一つの内面。
 しかし、今その愛はいらない。戦いに必要なのは苛烈な闘争心だけでいい。

【関連依頼】
『ZERO/ALL 決戦ヴィスマルク』(たぢまよしかづST)
『Xenoforce! 大陸弾道砲を止めろ!』(どくどくST)

モリグナ (VC:えまる・じょん

[2021/06/08]


「やあ、アドルフ。元気そうだね」
 どこからともなく現れた道化師は楽しそうに言う。
「そのようにみえるのであれば卿の目は節穴だな」
 ヴィスマルク5世は忌々しげに口元を拭った布を捨てる。赤に染まったその布は彼の命の儚さを表していた。
「城下にはもう自由騎士が潜んでいるよ。
 ここまで追い詰められるとはね。で、アドルフくん。キミあとどれくらい生きれるの?」
 道化師の楽しげな口調に反してその目は悲しげに揺れているようにも見える。
「我らが女神は最後の10日程度はお前として生きろと仰せだ」
「ああ、だからキミは開放されているのか」
 いつ倒れてもおかしくないという状態だというのに気丈にも王座に座し皇帝たらんとする哀れな青年。
「安心するといい。第二后妃の子が嫡男としてわが女神のハイオラクルとなるだろう」
 はっきり言おう。今やヴィスマルクは風前の灯にも等しい。
 モリグナの次のハイオラクルなど――。
「そうかい。それならば安心だ」
 本当に哀れな王。哀れなハイオラクル。
 生まれたときから肺病に侵されていた。故にそれを憐れに思った女神は己が彼の中に同化することで今まで生きながらえてきた。
 それももう、終わりだ。
「そうかい。残りの10日がキミにとって福音たらんことを」
「思ってもないことを」
「僕ぁ、ヴィスマルクを守ったほうがいいかい?」
 道化師はつぶやく。
「……けて、くれ」
 絞り出すような声。
「アレイスター・クローリー。余を助けてくれ」
 呻くような声はいつかのクローリーの記憶に重なる。
 自分は誰にも助けてなどもらえなかった。
 だから。
「いいよ、アドルフ。僕にまかせてよ」
「本当か」
「本当だよ。僕ぁね、哀れなアドルフ。君のことわりと好きなんだぜ」
「もっと早くその言葉を聞いていれば余はおまえと――友人になれていたかもしれないな」
 心底安心した表情で微笑むとアドルフは気を失った。
 
 ああ、ユウジン。安心したまえ。
 僕ぁ「君を」守ることにするよ。

アレイスター・クローリー (VC:えまる・じょん
ヴィスマルク5世(VC: 神崎恭一

ヴェスドラゴン

[2021/05/30]

 ヴィスマルク首都、ヴェスドラゴン。
 女神モリグナがいる王宮を中心に広がる街は、中央に近ければ近いほど地位の高い人間が住むという『一般的』な形式だ。王宮までの往来は可能だが、女神がいる場所への侵入は容易ではない。
 そんなヴェスドラゴンの外周近くにある寂れた教会。戦車部隊を突破した自由騎士達はそこに潜伏していた。先の戦いで亜人部隊で戦医だった女性から教えられた場所だ。元は孤児院を兼ねた教会だったが、戦争で子供を労働力として奪われて廃屋となっている。
 潜伏して三日。慎重に調査を重ね、ヴェスドラゴンの地形や住んでいる人間の生活などはある程度理解できた。
 意外な事だが、亜人差別はそれほど酷くはない。より正確に言えば、ノウブルでも一定の条件においては酷く差別された。――ヴィスマルク軍に忠実であるか否か、だ。軍に協力的か否かで、扱いは大きく変わる。軍に反抗的な人間は警察機構を兼ねた兵隊から守ってもらえず、結果犯罪に巻き込まれるのだ。
 結局のところ、亜人や立場の弱い移民などは兵士になるしかなく、そこでも劣悪な環境を生き抜かなくてはならないのだ。それでも『まだマシ』なのである。
 軍人として国に奉仕しなければ、ヒトに非ず。それが鉄血国家の形のない法律だった。
 ヴィスマルク軍が自由騎士の首都潜入に気付いた様子はないが、時間の問題だろう。動くなら早い方がいい。しかし焦って足を出せば見つかってしまう。慎重に、しかし大胆に女神モリグナに刃を届けなければならない。
 石のように硬いパンと塩スープ。ヴェスドラゴン外周で売られている朝食メニュー。それを口にした後で自由騎士達は動き出す。

戦車隊突破!

[2021/05/23]


 ヴィスマルク戦車部隊――
 亜人達を特攻させ、敵のリソースを消耗させたのちに本命の戦車を突撃させる戦車部隊の突破力。自由騎士達はその突破力を止めることに成功した。捕らえたヴィスマルク兵はイ・ラプセルに捕虜として輸送し、自由騎士達は傷を癒した後に進軍を開始していた。
 略奪を続けながら突き進むヴィスマルク軍。その戦端は広く、各部隊が勝利することを大前提としていたため連携は皆無だった――というより、この時代において水鏡やマキナ=ギアを重視した通信による連携をとっているイ・ラプセル軍が希少なのだ。
 ともあれ、進軍するヴィスマルク軍の穴を突くように進む自由騎士達。目指すはヴィスマルク首都、ヴェスドラゴン。
「地図によるとあと二つ山を越えればヴェスドラゴンだ。敵の喉元に一気に刃を突き立てることができる」
 地図と方位磁石を見ながらアデル・ハビッツ(CL3000496)は首を縦に振った。過去、ヴィスマルク軍の傭兵部隊として戦ったことのあるアデル。その経験もあって、この周辺は若干の土地勘があった。
 兜の奥にあるアデルの表情は見えないが、ヴィスマルクに近づくにつれてその声は硬く、そして警戒心を増していく。ここは敵の土地。不意を打たれる可能性は大きい。ましてや自分が知るあの男なら――
「……首都には沢山のヨウセイが奴隷として働かされているのかしら」
 剣の手入れをするサーナ・フィレネ(CL3000681)の興味はそこにあった。シャンバラ戦役の際、分割確保された土地。そこに囚われていたヨウセイは聖櫃解放後にヴィスマルクに輸送された。
 ……酷い目に遭ってなければいいのだけれど。サーナの心臓は早鐘のようになり、剣を持つ力が強くなる。あともう少し。焦ってはいけないけど、早く助けてあげないとという想いがある。今日何とか助けたミキュアも、まだ心の闇は晴れていないのだから。
「大丈夫。ヴィスマルクも悪い人ばかりじゃないわ。……きっと、大丈夫」
 サーナを安堵させるようにステラ・モラル(CL3000709)は告げる。ヴィスマルクの人間すべてが悪人ではない。楽観的な希望だという自覚はあるが、先の戦いで亜人を癒していた医者のように、優しさを持つ人もいるのだろう。
 彼女が自由騎士達に託した癒しの結界術。それを思い出しながら唇を強く結ぶ。戦争。かつてはヘルメリアでその流れに身を任せていたステラ。人がどれだけ残虐になれるかなんて嫌になるほど知っている。だけど同時に、父のように優しくなれる人がいる事も知っている。
「そろそろ寝るぞ。ここから強行軍だ。その後には敵本陣での戦いが待っている。ヴィスマルク軍、デウスギア、女神モリグナ。やるべきことは多い」
「はい。でもここで頑張れば白紙の未来は回避できるんですよね」
「そうね。ここで勝って、そして――」
 ステラの言葉の後を紡げるものは、いなかった。
 女神モリグナに勝利して、神の蟲毒に勝利する。それで世界の白紙化――アイン0が止まるというわけではない。神の蟲毒勝利はあくまで前提条件なのだ。滅びの未来はまだ止まらない――
「――寝よう。今はヴィスマルクに全力を投じるべきだ」
 アデルは不安を断ち切るように言って、立ち上がる。サーナもステラもそれ以上の言葉を紡ぐことなく、眠りについた。

 時代が動く。
 イ・ラプセルか、ヴィスマルクか。或いは世界の消滅か――
 

アデル・ハビッツ (VC: 柿坂 八鹿
ステラ・モラル (VC:ロミナ毅流
サーナ・フィレネ

その村の名は――

[2021/05/18]


「キリが皆さんを守りますから!」
 そう言って常に前に出て仲間を庇っていたキリ・カーレント(CL3000547)。小さい体で敵前に立ち、仲間を守るために戦い続けていたマザリモノ。
 あのディレスト海戦でも、変わらずヴィスマルクの前に立ち、戦っていた。ローブを振るって銃弾を逸らし、傷を受けても立ち上がり。その奮闘に助けられたものは多いだろう。その献身に命を救われた者は多いだろう。
「キリは大丈夫です! 治療は後でいいですよ」
 海戦後、そんなことを言って近くの椅子に座り込む。心地良い睡魔に身をゆだね――
「よし、終わった。次はキリだな。……おい、キリ?」
 
 墓地4133。パノプティコンという国がそう命名したその場所に、キリの遺体は運ばれていた。
 かつてここには一つの村があった。
 パノプティコンの管理から逃れた者が集まり、つつましいながらも穏やかに過ごしてきた村。だがその平和は業火に包まれて消えた。そこから逃げることが出来た一人のマザリモノがいた。
 そのマザリモノは復讐を誓い、同時に自分と同じ境遇者を生み出さないように戦った。村を焼いた景色を忘れることなく歩き続け、時にその哀しみに苛まれ、それでも信じあえる仲間と出会い、そして村を焼いたものを倒し、復讐を果たした。
 そう、復讐は果たした。ここはもうパノプティコンの領土ではない。かつてプレールと呼ばれた村だ。
 キリ・カーレントの遺体はここに埋められる。誰が言い出したわけではないが、ここにしようとキリを知る者はそう意見した。イ・ラプセルから遠いが、それでも故郷に返してあげようと。

 葬儀を終え、別れを告げる自由騎士達。
 戦いはまだ終わらない。世界は確実に終わりに近づいているのだ。
 背を向けた自由騎士達を、一陣の風が吹き抜ける。
 その風が、村に生えていた土筆を小さく揺らしていた。


【ヴィスマルク関連依頼】
『Quell! 竜牙艦隊を鎮圧せよ!』(どくどくST)

Chocolopゲームズをお楽しみ頂きまして誠にありがとうございます
大きな5つの国のうち、3つの国が消滅し残すところあと1か国との戦いとアフターストーリーを残すのみとなりました
残りの時間はおよそ半年程度となるかと思います
最期までお付き合い頂けますと幸いです

※コンテンツ完全終了までのスケジュールはまた後日お知らせいたします
※最終戦が終わった後「SS付き思い出ピンナップ」の発注を開始いたします

ディレスト海戦

[2021/05/16]


 ヴィスマルクの竜牙艦隊とイ・ラプセルの海軍。その交戦はにらみ合いを含めて数日の砲撃と白兵戦の擦れに決着がついた。
「撤退したナ。モウ戻ッテ来ナイカ?」
 遠く消えていくヴィスマルク艦隊を見ながらエイラ・フラナガン(CL3000406)は安堵の息をついた。襲撃船の敵将の一人を討ち取ったエイラだが、そこに驕りはない。激戦を思い出し、今更ながらに震え出してきた。
「そうっすね。向こうもこれ以上の損害は嫌でしょうっすし」
 言いながらも銃をいつでも抜ける様にしているジャム・レッティング(CL3000612)。ない、と言いながらもそこで油断していったものから死んでいくのが戦争だ。最後の最後まで油断なく。その強かさこそが、ヴィスマルクの『雷帝』を討ち取ったジャムの強さの一つだ。
「そりゃ艦隊を指揮する少将がいきなりいなくなれば、とりあえず国に戻るんじゃない?」
 笑うクイニィー・アルジェント(CL3000178)。彼女が敵の司令艦に忍び込み、敵の少将を誘拐した結果ヴィスマルク艦隊は撤退したのだ。その少将は上に引き渡している。捕らえた捕虜をどうするかは国が判断することだ。
「もしかしたら指揮官不在で混乱して、ヴィスマルク達死ぬまで戦ったかもしれないけどね! そうなったら阿鼻叫喚だよねー」
「アー……少将返セ、って特攻して来タカモ?」
「ないっしょ。そんな人望ある軍人には見えなかったし」
 ケタケタと笑うクイニィー。そうなったら泥沼だよなと嫌な顔をするエイラ。呆れた口調で肩をすくめるジャム。こんな『もしも』話が出来るのも、戦闘が終わったからだ。常に気を張っていてはいつか途切れてしまう。メリハリは重要なのだ。
 何故なら、ヴィスマルクの侵攻はまだ終わったわけではないのだから。
「次はシャンバラ地方だって。戦車部隊と亜人部隊?」
「休ム暇、無イ。敵、本気」
「酒飲む時間ぐらいは欲しいっす。あ、お腹痛いんで休暇貰っていいっすか。駄目っすか。はあ」
 休む間もなく自由騎士達は次の戦場に向かう。ヴィスマルクの波状攻撃は、熾烈を極めていく――

 そして同時に、少しずつ世界は崩壊していく。
崩壊の兆しは、ついにこの大陸にも迫りつつあった――


【ヴィスマルク関連依頼】
『Quell! 竜牙艦隊を鎮圧せよ!』(どくどくST)

Chocolopゲームズをお楽しみ頂きまして誠にありがとうございます
大きな5つの国のうち、3つの国が消滅し残すところあと1か国との戦いとアフターストーリーを残すのみとなりました
残りの時間はおよそ半年程度となるかと思います
最期までお付き合い頂けますと幸いです

※コンテンツ完全終了までのスケジュールはまた後日お知らせいたします
※最終戦が終わった後「SS付き思い出ピンナップ」の発注を開始いたします

クイニィー・アルジェント (VC:
ジャム・レッティング (VC: くずもちルー
エイラ・フラナガン (VC:撒菱ロンバス

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