MagiaSteam
マギアスティームグランドオープニング 神殺し



●???
 はじまる宴。神殺しの幕開けだ。

●ヴィスマルク
「神殺し、といったか? 笑わせる。神を殺すことができるものか」
「なれば、なればヴィスマルクの神よ。貴方がその証明の先陣を斬るというのは? 貴方は私が何者かは理解しただろう? ヴィスマルクの女神■■■■。創造神が生んだ神■の■■よ。緑の■■■■」
「その名で呼ぶな。汚らわしい」
「*が迫っている。早急に神殺しを。神の蠱毒を。――さあ! 水の国の王が死んだ。此れは好機、戦争を始めよう」
「は? 戦争、戦争といったか。魔術師よ、お前は何を言っている。戦争など、戦争というものは拮抗する国同士が行うものだ。それを『私』に論ずるのか? 笑止」
「……ほう?」
「蹂躙だよ、蹂躙。あの水の国の神など、所詮は殺さずなどという甘い理想論に酔っている神だ。戦争? 馬鹿にするな。わが愛しいヴィスマルクの力をもてば、蹂躙し、染めてやるよ。『私』の色でな」
「戦の女神は随分と勇ましい」
「魔術師よ、いや道化師よ。興が乗った。今回は貴様の口車に乗ってやるよ。戦争ではない、蹂躙というものを見せてやるさ」
「では、ではでは。話のわかる、女神には助言を。まずは北側から竜牙艦隊で、領海を侵犯し対応をさせる。その隙を縫って、南側から例のモノを最も警備が薄くなるであろうここを上陸点とする。ここから蹂躙をはじめるといい」
「……王都に、ではないのか? 王都蹂躙で派手に神の蠱毒とやらの始まりを飾るのではいかんのか?」
「ああ、例のモノを着陸させる場所がなければ話にならんだろう? 王都周辺の地域から蹂躙し絶望を与えることも勝者の特権というもの」
「道化師、随分と口が上手いではないか、いいぞ。いいぞ。乗ってやろう。貴様の道楽に。それに『アレ』の存在をシャンバラに見せつけるのもまた一興」
「気に入っていただけたのなら、それはなにより。君たちヴィスマルクの可能性<オラクル>の力、見せてくれたまえ」

●イ・ラプセル
 その日のイ・ラプセル王国は動乱していた。数日前の前国王の崩御から、現国王、エドワード・イ・ラプセルの即位が完了したばかりの矢先だ。
――イ・ラプセル王国。この世界ビオトープの南方に位置する、海に囲まれた水の国とも呼ばれる資源豊富な国家であり――我々が暮らす大地である。

「まさか、こんなに早く動くとは、想定外だ。クラウス! 間違いはないのか?」
「そのとおりでございます。陛下。エドワード王」
「くそっ、準備なんてまだ完全ではないのに」
 その日水鏡階差演算装置で感知した未来はヴィスマルク帝国からの侵略。未知の飛空艇と共に降り立つ兵士たち。
「とはいえ、エドワード王。陛下の直属の自由騎士団を立ち上げるには最高のタイミングと愚考しますが?」
 焦りをあらわにする年若き王に進言するは壮年の紳士。
 ――イ・ラプセル国王、エドワード・イ・ラプセル。そして演算士の長にしてイ・ラプセル王国の宰相を務めるクラウス・フォン・プラテスだ。
 イ・ラプセル自由騎士団。それはエドワードは数年前から構想していた組織の名前。来る戦争に備えて強制的に集められていたオラクル――神の声を聞ける。稀有な存在――を自由なる意思で国に尽くしてもらうための組織。
 もちろん不安要素もはいて捨てるほどにあった。前王の統治ではノウブル以外の種族のオラクルの扱いは苛烈を極めていた。
 それはどの国でも対して変わりはしないが、亜人種や混血種は最も激しい戦場に送られることが多い。同じ世界に住む種族であるのに、何故彼らは此れほどまでに酷使され続けているのだろうか? それはエドワードが幼少の頃から胸にいだいてきた疑問である。

 だからこそ、エドワードは彼らを、ひいてはオラクルだけではなく全ての種族における差別もなくし、自由であることを掲げようとしたのだ。
 しかし、そんな幻想にも近い信念はイ・ラプセルの元老院にも猛反発をうけた。奴隷階級がなくなるということは、一部の者にとっては大きな損害を齎すことにもなる。
 それでも数年前から少しずつ、少しずつこの構想を実現させようとクラウスと共に裏工作もしてきた。
 完全というには無理があるが後少しで基盤が出来上がるというその矢先だったのだ。
「エド」
 ふいに彼の周りの空気が柔らかなもので満たされる。
「アクアディーネ様」
 イ・ラプセルの神。青のアクアディーネが姿を表わす。一見只の少女にしかみえない彼女は紛れもなくこの国の神である。
「ヴィスマルクは動き出したわ。私も、戦うのは嫌だけど、でも」
 憂いを帯びた青い瞳は今にも雫を落としそうな程に潤んでいる。
「私はこの国を滅ぼすわけにはいかないわ。だから、戦わないとダメだと思う」
 クラウスは目の前の少女の声は聞こえない。しかしその表情で何を言いたいのかは理解はできる。
「号令を、陛下。今こそその時でございます」
 眼の前に見える大きな脅威に国として立ち向かうため、それは大きな動きを、国を変えることのできるチャンスでもあるのだ。然し、まだエドワードにはその勇気が無かった。
「……」
 女神がそっとエドワードの手を握る。幼きころからの話相手であり、母のようであり姉のようであり妹のようでもあった麗しきも愛しき女神が自分の言葉をまっている。そこで答えないのは、彼女に選ばれたハイオラクルとして、いや男として不甲斐ないにも程がある。
「まったく、本当に胃が痛い話だ」
「ご安心ください。胃薬はしっかりと用意しておきますので」
「厳しいな、クラウス」
「そのとおりでございます。厳しい状況、故に今でございます」
 窓の外の工業区の蒸気の音が高らかに、まるでエドワードを急かす鬨の声のように国中に響いた。

 そして――。

●自由騎士団発足
「イ・ラプセル国民よ! エドワード・イ・ラプセルである」
 数万の聴衆が集まる水の広場を見下ろす王城より、エドワードの国王演説がはじまる。遠くにいるものにも声と姿がよく見えるように蒸気スクリーンもいくつか設置されている。その蒸気のスクリーンに魔導でもって描かれた王の姿が映る。エドワードの朗々とした声は、拡声の魔導で国中に響き渡った。
「水鏡にてヴィスマルクのオラクル軍による進軍を感知した」
 その絶望的な事実に国民たちは怯える声をあげた。ざわざわと民衆が不安の声をだす。
「私は、全ての種族が、一貫となり、此の国を守るために『オラクル自由騎士団』を立ち上げる!」
 その不安を吹き飛ばすようにエドワードは言を続ける。
「オラクルであれば10歳から。亜人であっても混血であっても立場は同じだ! 此の国のため立ち上がってほしい」
 基本的にこの世界はノウブルという純血種が支配し亜人種や混血種を虐げ、奴隷化し労働力や戦力として使ってきた。ある程度までならば亜人種でも高いポストにつけるとはいえ、その数は皆無に等しい。混血種が重要なポストにつけることなんてありえないことだ。
 イ・ラプセルはもともと人種差別が薄い地域ではあるが根底にあるその人種差別がないとはお世辞にもいえない。その差別を撤回し、オラクルであればその貢献によって地位を約束されるという、それが今回のオラクル自由騎士団計画なのである。
 オラクル自由騎士団の存在によって、自然オラクルではない各種族への差別も薄れていってほしい、そんな思いもエドワードにはあった。彼は美声でもってその計画を民衆に説いていく。
 ざわつく民衆の声はやがて歓声に変わる。その政策事態に不安はある。しかしその理想が叶ったら? 数年前からの根回しにより、国民たちにはその理想は決して夢ではないと期待させるものはあった。
 エドワード王の言葉は民衆にじわりじわりと拡がっていく。その第一歩が今回におけるイ・ラプセル防衛戦だ。
「我こそはと思うものは王城に集え! 我らが神、アクアディーネの名の元に誓う。この戦争に勝利すると!!」
 ォオオオオオオ!!! 
 歓声が割れんがばかりに轟いた。

●水鏡神殿にて
 神殿内には多くのオラクルが集まっていた。
 神殿中心。女神の玉座には青の女神、アクアディーネの姿。
「イ・ラプセルのみなさん。戦いは目の前です。国を守ってください」
 そして死なないで。彼女が思う一番の想いは飲み込む。これは戦争だ。今はまだ防衛戦争だが、いつかは他の国を自分たちの国が侵略する侵略戦争に発展するだろう。
 戦争においてだれも死なずになんて理想論ですらない夢物語だ。
 だけれども彼女は願うのだ。彼らの無事を。

「諸君、招集に応じてくれて痛み入る。近くヴィスマルクが我が国に襲いかかるという未来予測がでた」
 クラウスがオラクルたちに厳粛な声を張り上げれば、しーんと場は静まり返る。
「彼らはヴィスマルクの神とともに強襲蒸気飛空艇で我が国に向かってくる」
 言えば、水鏡のスクリーンに巨大な飛空艇が映し出された。
「うそだろ? こんなでっかいのが浮かぶのかよ」
 自由騎士団の誰かが呟いた。無理もない。師団単位で兵を送り込む事ができそうな巨大な飛空艇。そんなもの今まで見たことなんてない。その巨大兵器の出現はこれからの戦争が様変わりすることを予感すらさせる。
「そして、制海権を超えて軍艦部隊もまた攻め込んでくる」
 切り替わった画面には海を埋め尽くすほどの艦影。
「この絶望的状態を看過すれば、我が国は蹂躙されるだろう。然し此れは好機! 神が来るのであれば、結構。神を屠ることができる!」
「神を屠る?」
「私には神殺しという権能もあります。ある、ようです。とはいえ、私以外の神もまたそんな事ができるとは知らなかったというのが事実ですが。ですのでヴィスマルクの彼女は早速攻め込んできた、ということでしょう」
 一歩前にでてアクアディーネが説明する。その隣でクラウスはそばに遣えるオラクルから彼女の言葉を通訳してもらっている。
「遺憾ながら……。神殺しの蠱毒が始まりました」
 その聞いたこともない言葉にあなた達は訝しげな表情をする。
「……この世界にタイムリミットが発生しました。創造神がこの世界を壊すことに決めたようです。それを回避するためには私達神が、他の神達を殺し、権能を奪い唯一神にならなくてはいけません。私が殺されれば、他の国の神に此の国も飲まれ塗り替えられていくでしょう」
 伝えられた言葉はスケールが大きくてすぐには理解はできない。それでも。
「私は、私は、この国が大切です。私の、私のイ・ラプセル。ずっとずっとこの国を見守ってきた。大きくはないけれど、水に囲まれ、花がさいて、全ての人が幸せじゃないかもしれないけれど、それでもきらきらしていて。私はイ・ラプセルがなくなるのはいや!! みんなが他の国に飲まれるのは嫌!! だからお願い! 戦ってください」
 その悲痛な国を思う叫びはストレートに伝わる。
「と、言うわけだ。来るべき時がきたということである」
 クラウスは告げ、イ・ラプセル周辺の地図を広げると説明をはじめる。
「まず、この制海権警戒ラインにヴィスマルク海軍軍艦が接触をはたした。ここをミハイロフ卿が率いる人員で防衛する」
 イ・ラプセル北方の制海権に並ぶ敵を表わす赤い陣地印(シャトー)の前に並べた自陣を表わす青いシャトーを手把(レーキ)で押し上げ、言葉を切った。
「そして、強襲艦は西側を迂回し、南方のアデレード湾に地上上陸部隊として着艦することになる。彼らはアデレードに上陸し、アデレードを蹂躙した後そのまま北上するとみられる。アデレード市民の避難、護衛はミズーリ君に、アデレードでの戦闘、及び最前線基地である強襲艦への侵入のための強襲作戦は王国騎士団のヴィント卿に一任してある」
 クラウスはこほんと小さく咳払いしてから続ける。
「そして、此の作戦室に集合した諸君らへの使命は、この強襲艦を制圧し、神殺しを果たしてもらうことである」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
大規模シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
■成功条件
1.規定ターンまで、防衛戦で護り切る。
2.飛空艇内部にて彼らの神を撃破。
 †猫天使姫†です。今作では初めまして。CL3「MagiaSteam(マギアスティーム)」の世界にようこそ! 

 拙いながらもCWをさせていただいています。
 早速あなた方、オラクルの皆様にはヴィスマルク帝国との戦争をしていただきます。
 
 イ・ラプセル前王が崩御という情報が、ヴィスマルク帝国に流れ、彼らは我々の国、イ・ラプセルを蹂躙すべく攻め込んできました。
 かのヴィスマルク帝国は巨大な軍事国家。今回は彼らの虎の子である強襲蒸気飛空艇と海軍である竜牙艦隊を率いてイ・ラプセルに攻め込んできます。
 彼らの侵略を許せばイ・ラプセルは蹂躙されることでしょう。

 
 今回の作戦は
 
 ・海上部隊との戦闘(どくどくST担当)
 ・周辺地域の避難、及び上陸したヴィスマルク帝国兵侵火槍兵団への対応。
  上陸した最前線基地である強襲艇への侵入の強襲作戦(吾語ST担当)
 ・強襲艇(飛空艇)への侵入を果たし、ヴィスマルク女神の打破(当依頼)
 の3つになります。

 勝利条件は
 1、規定ターンまで、防衛戦で護り切る。
 防衛戦を守りきった場合、ヴィスマルク軍は撤退します。
 2、飛空艇内部にて彼らの神を撃破。(但しそれより前に規定ターンに到達すると神は逃げ帰ります)。
 1,2のどちらか、ないし両方を満たせば成功になります。

 なお今回は敵軍兵士の捕虜化、兵器の鹵獲は出来ません。撤退する兵は殺傷若しくは逃してください。
 
 彼らはイ・ラプセルの戦力を未だ知りません。随分と過小評価をしていますので、そこが彼らにつけ入る隙になることでしょう。

 ルール
 必ず書式を守りプレイングをかいてください。書式が守れていない場合、描写ができない可能性があります。
 また【】でくくることを忘れないようにおねがいします。
 2行目で指定せずに行動内でご一緒に参加する方の名前を書かれていた場合は迷子になる可能性はあります。
 ご一緒に行動される方は必ず同じ戦地でお願いします。

 ・指定書式

 【A】(向かうパートをアルファベットでかいてください)
 【一緒に参加する方のフルネームとID/若しくはチーム名】
 【行動】
 
 宿業改竄・アニムスは最初から使用することができます。


★皆様の工作により、ニ次ボーナスが加えられました。

 薬品の搬入により此方の回復力が向上しています。入り口近くの火災の発生で、入り口近くの兵が少人数対処に回りました。
 強襲艇の大まかな内部通路の地図(手書き)を入手しました。スムーズに目的地を目指すことができます。
 女神の位置、機関室の位置が判りました。
 後方より送り込まれた遮蔽物の盾を利用することができます。



 A:入り口退避ポイントの確保
 神を撃破後迅速に撤退するための退避ポイントをつくっていただきます。
 一般オラクル兵がいます。銃撃や剣などでの攻撃が主になっています。
 *数人のルクタートルがいます。(工作により人数の減少、及びバトルスタイルが判明しました)

 推奨行動『迅速なる入り口ポイントの制圧』

 B:中央区画の制圧
 中央区画で警備する兵を制圧してください。なおAよりは練度の高い兵がいます。

 ・ネームド
 侵火槍兵団 炎獄戦闘団
 ヴィドル・スプラウト少佐 キジン バスター
 その名の通り炎熱の特殊スキルももつ、炎獄戦闘団の団長です。
 部下の信頼も厚く、彼を司令塔に練度の高い連携をみせてきます。
 推奨行動『スプラウト少佐の部隊の制圧』
 
 C:神の撃破
 あなた方はオラクルですので彼女の言葉を聞き会話することもできます。
 彼女の護衛も練度の強い兵士が小隊単位(20人)でいます。
 基本的に神は直接戦闘は出来ないことがほとんどですが彼女は戦女神なので、小隊に特殊スキルのバフをかけて強化したり、本神も範囲攻撃をつかえたりします。

 ・ネームド
 ヴィスマルク女神
 周囲の小隊に強化をかけ、彼らを武器に防衛します。
 全集範囲に渡るダメージ及びショックやウィーク1、パラライズ1を付与する攻撃があります。
 ある一定時間を経過すると撤退指示をだします。
 また、好戦的な性格をしています。
 *強襲戦奥の玉座のような場所にいます。(水鏡により判明しました)

 エッケハルト・エビングハウス准将 キジン・バスター オラクル
 本作戦の指揮官であり、強襲艇の艇長です。思慮深く今回の作戦には多少の疑念を持ってはいますが、上層部からの命令により作戦を遂行しにきました。武人らしい武人です。
 単体を吹き飛ばす攻撃、体力が減ると火力の上がる自己強化スキルを使用します。
 *女神とは少し離れた、機関室のドアの手前にいます。(水鏡により判明しました)



 小隊の兵士は練度が高く、女神を守る行動をします。どのバトルスタイルも揃っていると考えて構いません。
 
 推奨行動『小隊兵士の殲滅』『エビングハウス准将のおさえ』『ヴィスマルク女神の撃破』
 

 A、Bに向かう人数が足りない場合Cから補填される場合があります。

 なお、この強襲艇はヴィスマルクの重要戦略兵器でもありますので、壊されることを嫌がります。
 スキルで艦内を破壊することは不可能です。
 また、今回この強襲艇を鹵獲することは不可能です。本作戦では敵兵士の撃破を最優先してください。
 敵の撤退の際には、入り口退避ポイントを使い此方も撤退していただきます。強襲艇に残ることは不可能です。


 *沢山の皆様の参加が想定されます。
 全てのPC様が描写できるわけではないということをご理解いただけますようよろしくおねがいします。



■■■重要な注意■■■
 こちらは決戦シナリオになります。プレイングを白紙状態で提出した場合、リソース(フラグメンツ及びアニムス)を著しく減少するおそれがあります。プレイングの送り忘れにはくれぐれもご注意ください。

 *なお、この3種類の決戦依頼に重複して参加することは出来ません。参加する内容をよく確認のうえ参加ボタンを押してください。(途中での変更は不可能です)。


 新ゲーム開始のスタートダッシュキャンペーンとして、各依頼の参加人数によって報酬リソースにボーナスが追加されます。50人まで基礎EXPとGPが1.2倍、それ以上の場合は参加数にあわせて倍率が上昇し、オラクルの結束力によって成功時の報酬リソースが大きく変動致します。
ぜひお誘い合わせの上、ご参加ください。
状態
完了
報酬マテリア
3個  7個  3個  3個
35モル 
参加費
50LP
相談日数
14日
参加人数
30/∞
公開日
2018年05月29日

†メイン参加者 30人†

『果たせし十騎士』
柊・オルステッド(CL3000152)
『英雄は殺させない』
マリア・スティール(CL3000004)
『ヴァージンナイト』
ユニ・ダグラス(CL3000251)
『マッチョを宿したキジン』
ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)
『花屋「アイリス」店主/殺戮人形』
アイリス・キリングドールズ(CL3000270)
『幸運の首狩り白兎』
ハクト・カキツバタ(CL3000253)



 ぱち ぱち ぱち 
 その場に突如場違いな拍手が響いた。
 オラクルたちは振り返る。
「やあ、可能性<■■■■■ス>」
 怪しげなローブの男が、いつの間にかそこにいた。気配はなかった。この状況で誰も気づかなかったのだ。
「はじめましてかな? 僕ぁ、道化師、魔術師、あとなんだっけ? 錬金術師、トリスメギストス? 葛 洪にアルヴェストゥス、ニコラにパラケルスス、カリオストロにサンジェルマンとも名乗ったことがあったかな? 当代においてはアレイスター・クローリーっていうんだ! 僕ぁね!」


 入り口近辺の火災で、ヴィスマルク兵はその対応に囚われることになる。火の勢いは対処しているにもかかわらず衰えることはない。支援者たちが物資の油を遠慮なく注ぎ込んでいるからだ。
「助かる!」
 強襲艇に飛び込みながら、ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)は味方に短い礼を述べると愛用のロングスピアを一振りし、自らの体に龍氣を巡らせて体のリミットのスイッチをいれる。
 対するは敵軍のルクタートル。
「さてさて、いきなり戦争とは……帝国も何を考えてるのかのォ」
「さてはて、私もそれはしりたいところだ。そもそも、論文をかいていた最中だったんだ。締切が近いというのに。早く机にもどりたい」
 構えるウィリアムの背を自らの盾にするかのような足取りで、『嗤う悪鬼羅刹』 糸杉 牡丹(CL3000248)は目を細めた。
「それはそれは、その論文とやらも生きて帰れなければ出せぬぞ?」
 ウィリアムが龍氣を巡らせているところに突っ込んでくる敵兵に対し牡丹はその体躯にそぐわないほどの大きさの両手剣でもって、斬りつける。気合を込めたその一撃は言葉にして苛烈。
「クハッ! クハハハ! では、神の名の元に「キリングドール」活動開始じゃ!」
 同時に殺気を放てば、周囲の敵兵がピクリと反応する。
「さあ、帝国兵共。今逃げるなら見逃そう……だが抵抗するなら貴様等全員この地で屍を晒すがいい。さあ、蹂躙の開始じゃ。疾く死ぬがいい。 さあさあ、殺戮の時間じゃ! 楽しむがいい皆の衆、ここが地獄じゃぞ」
 そりゃあ、なんとも景気のいい話だ。ウィリアムはそう思う。敵は軍事国家ヴィスマルクの兵だ。自分よりも練度が高い。ともすれば萎えそうになる気持ちだってあった。それを吹き飛ばすその一喝に彼は笑みを浮かべる。
「負けてはいられないな」
 彼らの周囲を兵が囲む。ウィリアムは一歩踏み込み、牡丹が傷つけた兵士にその穂先を向け龍氣の巡るままに貫く。
「私には此の後にも、これより怖い戦いが待っているものでね。レポートっていう。提出をのがしたらとんでもないことになる」
「小僧、やるではないか」
「お褒めに預かり恐悦至極ってもんだ、オニヒトの姉さん、次はあちらだ」
「これ! 調子にのるな! 指示をするでない!」

 彼は旅人だ。暗殺者としての対人経験もあった。しかし此のように、他国の兵との『戦争』など、経験したことはない。真っ直ぐに向けられる殺気。ナショナリズムの元戦うことがこんなに重責があるのだと、今知った。
 『ノラ狗』 篁・三十三(CL3000014)はゴクリと喉を鳴らす。いつもはピンと立っている耳も少々伏せられている。ともすれば震えているのかもしれない。
「お前、大丈夫か? 震えてるのか?」
 そんな彼にツナギ姿の少年が声をかけた。
 彼、『技師見習い』 ルーク・シエロ(CL3000144)は、このイ・ラプセルで技師見習いとして過ごしてきた。兵役は一年後でオラクルである自分も騎士になるのだろうとは思っていたが、その前に襲い来るこの戦争という暴力に戸惑いを隠すことはできない。
 とは言え、好奇心の強いマシーナリーである彼は蒸気技術の塊であるその飛空艇を間近でみれる心の高鳴りを隠すことも出来ていないのが現状だ。
「震えてるんじゃないでござるよ!?」
 声をかけられた子犬はビクリと体を跳ねさせて、三十三は答えた。
「……『ござる』? ぷっ、ぷははっ、そっかそっか」
「武者震いだよ!」
 三十三も年頃の男の子である。そんな風に笑われることにかちんとは来る。だからいつもより張った声でいいわけする。震えてなんかいない! 絶対に! 
「おっけ、おっけ、大丈夫ならいいんだ。余計な事言ったな、ごめんな、ござる君!」
 ルークは笑いながらも直ぐに謝罪する。彼もまたこの戦争にたいして緊張していなかったわけではない。生命のやり取りが行われるその場所。其処は異界だ。そんな異界で自分と同じように緊張しているものをみかけ自分だけがそうではないと思いホッとして笑った。
「ご、ござる君!? 俺は篁三十三って名前があるんだ!」
 気持ちがほぐれた。自分だけじゃなく眼の前の少年も。ならば十全だ。
「了解、三十三! 俺はルーク・シエロ、よろしくな!」
 名乗り合う彼らの横合いから敵兵の一撃が飛んでくる。
「挨拶してる場合じゃないな、行くぞ、三十三!」
「オーケー! ルーク」
 まるで、旧来からの友人だったかのように彼らは同時に己がリミットを外し、お互いの背を守るように構える。当たり前のように、自然に。
「ルーク、退路を作るでござるよ」
「了解、任せるでござる!」
「ルーク、俺のこと、馬鹿にしてるだろ!」
「そんなことないって!」
 軽口を叩きながらも彼らの攻撃はコンビネーションをみせ的確に敵を屠っていく。彼らは出会ったばかりだ。だというのにともに戦う高揚感は彼らを強く刺激し、相手よりもよい攻撃をと思ってしまう。それが戦場で培う友情であるということに気づくのは今ではないかもしれないが、今日感じた高揚感を彼らは忘れることはないだろう。

 
 戦場での出会いは一つではない。
「戦争…シュノール家の名前を売り出すチャンス! うちの華麗な戦闘で、少しでも良い印象を……!」
 ラピットジーンで遺伝子を書き換え速度をあげる銀髪橙眼の幼女に見える『疾走天狐』 ガブリエーレ・シュノール(CL3000239)は貴族である。お家の名前を売り出すチャンスとばかりにこの戦争に参加することをきめた。
 成人したばかりの彼女はお家の方針で住み慣れた実家から追い出されたばかりだ。だからこそ今回の戦争で名前を売り出すことが彼女にとっての最初の自立でもあるのだ。
 そんなドレス姿で戦う彼女を目ざとく見つけたのはベルナルト レイゼク(CL3000187)である。
(戦争とかきな臭いこって。俺は好きなときに好きなように歌でも歌っていたいんだが……お、なんか身なりの良さげなねーちゃんがいるな)
 彼は音もなくガブリエーレの後ろにつく。あれはどう見ても世間知らずのお子様だ。身なりを見る限りはかなりのお嬢様だろう。大方名前を上げるために要請に応じたってところか。ベルナルトは脳内で計算をする。このくそったれな時代で生き抜くための。
「よー。あんた。俺の事飼わねぇ?いつでも歌ってやるからさ」
 飼う? 歌う? なに?
 突然の声掛けに目を白黒とさせるガブリエーレ。歌うといえば吟遊詩人かなんかやろか……彼は主人を欲しているってことやろうか? ……詩人のパトロンになるってこと? それって、貴族っぽい!
 一瞬でそんな判断をした彼女は訝しがりながらも返答する。
「不躾な対応やけど……げふんげふん…不躾ですが、良いですわ!貴方を雇いましょう!」
 自分でも胡散臭いと思っていた。ふざけるなと返されると思っていたのになんだこれは? この脳天気なお嬢様は人を疑うということを知らないのだろうか?
「ねーちゃん。ほいほい人を信用すると、いつか酷い目にあうんじゃね?」
 つい思わず老婆心ながらの声をあげてしまう。
「ねーちゃん! それっておねーさんってこと? こほん。失礼な、これでも私、人を見る目には自信がありますの!」
 ドヤ顔でいう暫定主人の顔を晴れやかだ。やったー仲間ができたー。という気持ちをかくしてすらいない。冗談のつもりだったのだがまあ良い、コレもまた何かの縁か。
「じゃあ商談はこの戦いが終わってからな」
 ベルナルトは周囲を見回すと、状況を俯瞰する。視界を宙見に切り替える。パトロン様が切りかかっていった兵士にたいして、援護射撃をする。随分と大胆で華麗な剣筋だ。だからこそ隙がある。彼はその隙きを埋めるように立ち回る。パトロンへの媚売も大事な仕事だ。
「貴方、お名前は?」
「失敬、ベルナルト レイゼクだ」
「そう、ベルナルト、いきますわよ!」
「へいへい、お嬢様」
 そうだ、まだ名前を聞いていなかったな。

 アリア・セレーネ(CL3000180)は後衛位置から、緋文字を跳ねさせる。前衛の切込みに合わせて慎重に、確実な一撃を。魔力を練り上げ共鳴増幅されたその緋文字は芸術的ですらある。
 彼女の目的は殺害ではない。制圧だ。
 自分の能力は理解している。痛い程に。そして相手であるヴィスマルクがどれほど強大な相手かもわかっている。
 だから情報がほしい。少しでも吉報でもそうでなくても構わない。今は勝てないだろう。冷静にそうおもう。だから後の先。未来につながる情報が欲しかった。
 戦いながらも飛空艇の壁面近くに配置し、その素材を手で確かめる。構造の無理はないか、弱点はないか。入り口近辺でみるその構造に無理はない。ただ蒸気だけではなく魔導の力も感じる気がする。
 もっと奥にはいって調べてみればなにかわかったかもしれないが、自分の配置する場所はあくまでも入り口で、それ以上でもそれ以下でもない。制圧後はここを守る必要もある。
 中空に赤い文字を浮かべる。放つ。そのルーチンをなんど繰り返したかわからない。それでも彼女は仲間のためにここを護り続けるのだ。

 【工作隊】の朱火 ローズ デスパジレア(CL3000264)、『惑う騎士』 ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)、アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)の三人は朱火を中心にして、味方の支援やフォローにまわる。
「変な鳥の女神? 見た目で判断したらあかんって思うけど強そうに見えん」
「確かにな、とはいえ油断はできん」
「もちろんや」
「俺達の仕事はここを制圧し、守ることだ」
 ボルカスの隣を自由騎士が駆け抜け奥に向かう。
「彼らは神殺しとなる。それは、どれほど困難で、どれほど偉大なことか。 ならば、我らは、それ以外の全てを片付けてやる気概で臨まなくてはな! これぞ本懐というものだ!」
 その背を守るために男は鉄壁となる。
 自らを強化してアリシアとボルカスはお互いの攻撃の邪魔にならない、かつフォローをし合うことができる距離感覚で兵の制圧を進めていく。時に遮蔽物も利用し、射線を塞ぐことでダメージをコントロールする。朱火は周囲全体の味方に自動修復の術を展開し、アタッカーをガードするという作戦だ。
 アタッカーの防衛という行動は最大火力を温存したまま状況をコントロールするという意味では有効に働く。体力と防御を固めている朱火を落とすのは確かに難しい。
 多数対多数での戦闘における重要事項の一つにダメージコントロールが上げられる。ごく単純に前衛後衛と分かれることで、体力の多いものに被弾を集めることで、体力の低いものへの攻撃を減らすということも、重要なファクターのひとつになる。
 彼らはその役割分担を十全に果たせていたと言えるだろう。
 
 入り口を守る敵兵は一人、一人と戦闘不能になっていく。アリシアのヒートアクセルが敵兵をショック状態に陥らせれば、ボルカスがその隙にバッシュで屠る。そのコンビネーションは即席とは思えないほどの効果をみせた。
 
 彼ら自由騎士団は入り口の制圧に成功する。戦闘不能になったヴィスマルク兵を縛り上げまとめておく。火事対応から戻る兵たちは単発的にくるが、戦闘不能になっていない自由騎士たちは果敢に戦いを続ける。
 その隙間を縫い、朱火は工作を進めていく。
 アリシアはその作戦要綱が書かれた手紙をギュッと握りしめ朱火を手伝う。しかし、入り口はそれほど広いわけではない。確かに油などの物資は届いてはいるが、邪魔にならない場所というのも難しいだろう。その物資が邪魔で速やかに脱出できなくなっては本末転倒である。
 せめてもと蒸気カメラで内部を撮影していく朱火を守るアリシアの瞳は真剣だ。蒸気カメラは露光に時間がかかる。撮っている間は動くことはできない。
 この写真を専門家に見せることができれば、重要な情報になるだろう。未来への布石。今はどうなるかわからない。しかしそれは後に続く道への道標になるだろう。
 ボルカスもまた朱火の元に戻って朱火の防衛を続ける。二人のナイトに守られたカメラマンは、やきもきしながらもいくつもの情報という尊い戦果を手に入れるのだった。


「神殺しだか、なんだか……。そちらの女神様は、ずいぶん。勝ち気みたいだね」
 中央区画で陣取る侵火槍兵団のうち、炎獄戦闘団に属するヴィドル・スプラウト少佐を睨みつけ、マリア・ベル(CL3000145)はゴーグルの位置を治した。
 彼女のゴーグル越しの目に映るのは炎を宿す戦士。
「弱小国が我が帝国(ライヒ)に楯突こうなど、生意気な!」
 ヴィドルが腰からスラリと抜いた剣には炎が揺らめいている。
「いけ!我がライヒの栄光を見せつけよ!」
 ヴィドルの号令一喝、部下もまた動き始める。一つのブレインに対する手足。まるで一個の機械のように彼らはヴィドルの命令に従う。
「……ん、神敵がこの地を侵そうとしているんだね?……それは……許せないね。この地は……いつか私の神様が来てくださる場所だもの」
 『花屋「アイリス」店主/殺戮人形』 アイリス・キリングドールズ(CL3000270)が無表情で呟く。ほとばしる殺気は尋常なものではない。
「……神敵は討滅しなきゃ……「キリングドール」……活動開始。敵は殺す」
 駆け出し、目の前の敵兵に震撃を放つ。多少のたたらを踏むがなるほど、自らの練度よりは随分と上のようだと思う。
「私は……アイリス。アイリス・キリングドールズ。「キリングドール」筆頭殺戮人形です。以後、お見知りおきを。では、殺戮を開始します」
 その手応えにもまるで臆することもなくアイリスは名乗る。我が神のための殺戮を。
 狂信者は跳ねる。哀れな異教徒を屠るために。
「強そうだなぁ。喰い甲斐は満点だ」
 同じく殺気をはらむは『春風』 篁・無頼(CL3000140)。
 少年には記憶がない。だというのに。この飛空艇になぜか見覚えがある。なぜだ? なぜだ? なぜだ? 俺は誰なんだ? 
 混乱する記憶を引き裂くかのように、敵兵のバッシュが自らに放たれる。既のところで持ちこたえ大太刀の刃と兵のバスタードソードが噛合い不快な金属音を立てることに少しだけ顔をしかめた無頼は自らの遺伝子を書き換え速度のギアを上げる。
「速きこと風の如く」
 自分たちは陽動班だ。とにかくこの炎獄戦闘団の気を引きその隙に神殺しに向かう仲間を奥に送り込むのが自分の役割だ。
 『エイビアリー』 柊・オルステッド(CL3000152)は圧縮させた気をヴィドルに向かって放つ。
「少佐! 俺たちの色に染めてやるぜっ!」
「ほう?」
「少佐の遊び相手はオレたちだ!」
 鋭い炎熱の眼光にひるむこともなくオルステッドはカラフルな羽根を震わせ、威勢よく叫ぶ。
「ははははははっ! 聞いてはいたが本当に女子供ばかりなのだな。いいぞ、小娘。あそんでやろう! いけ!」
 号令にあわせ、オルステッドに攻撃が集中する。とっさに遮蔽物の壁に隠れるがあっという間にボロボロになってしまう。
 その火力に冷や汗が流れるがオルステッドは気付かれないように次の遮蔽物に移動する。その際にボロボロになった遮蔽物を艇内にぶつけるがダメージをうけた気配もない。相当に頑丈に出来ているのだろう。
 ホーンドランスを構えたユニ・ダグラス(CL3000251)は敵陣に向かい前進し、敵陣系の真ん中にその愛用の武器を叩き込み衝撃波を穿つ。
「女神に向かった皆様の邪魔はさせません」
 回復手を探す。ヴィドルの後方の杖持ちがそうであると当たりをつけるが射線は通らない。
「この、混血が! 忌まわしい!」
(そう、忌まわしい。わたしのような忌み子にはきっと、このような戦場にしか存在価値はないのでしょうね けれども、それでこの国を護れるのなら……わたしは、この自身の存在と運命を喜んで受け入れます!)
 ユニの行動は危うい。ともすれば自分すらも打ち砕くかのような戦い方だ。それは彼女の出生にも関わっているのだろう。
 母から忌み子として放逐された。そんな自分を救ってくれたのはイ・ラプセルの軍人だ。騎士として戦いを知った。戦えば育ての親は褒めてくれた。彼女は戦いの中にしか自分を見出すことができなかったのだ。美しい少女の外見とは裏腹にユニは熾烈にランスを振るう。
 意味を。意味を。意味を。ユニは生きる意味がほしかった。
「敵さんが炎獄なら~あたしは氷獄かな~♪」
 そんなユニとは一転、のんびりとした声の『氷河の星乙女』 リンシス・ノア・シャルディ(CL3000171)はユニの対応している兵に対して、蒼きマナを術杖に集中させ、ふわりとその杖を振る。穏やかで優雅にすらみえるその動きに騙されてはいけない。その杖から発せられるは死の氷。
「えへへ~、こおっちゃえ~」
 兵の腕が凍り動きを阻害する。
「助かります!」
「どういたしましてぇ~」
 リンシスを守る位置取りに移動したユニは敵兵の攻撃をその身に受けた。思ったよりも重い攻撃に少しだけ眉をひそめるが、リンシスがこの攻撃をうけるよりはマシだと思う。
 そのユニを援護するように マグノリア・ホワイト(CL3000242)の示した相手に即席で組み上げた竜牙兵が爪を振るい、その役目を果たしその場に消える。
「大丈夫かい?」
 マグノリアの問いに短くはいと答えたユニは頼もしい背後にいる仲間の存在に、此の場を護り、そして国を護ることをもう一度強く誓った。
 マグノリアもまた、思う。
(……国王の崩御……他国からの侵攻……そして神殺し……。物事が一気に動き出したね。長く生きてきた僕だけど、僕なりのやり方で今回は力を尽くさせて貰うよ……)
 たった数日でまるで地盤がひっくり返るような程に物事が進行した。神を殺す。神の元長くすごしてきたマグノリアにとっては青天の霹靂のような話だ。
 この先また世界は大きく動き出す。マグノリアが感じた予感はきっと現実になるだろう。
 未来がどうなるかはわからない。だから小さなことでもいい。自分のできることを一つ一つこなしていくのがこの老人にとっての正解だ。聖遺物を振るい二度三度と竜牙兵を呼ぶ。
 中央区の戦いはその火蓋をあけた。相手は甘い相手ではない。
 此の場で戦う彼らとて簡単に倒せるなどとは思ってはいない。一進一退の攻防が続く。
 ヴィドルの炎熱の雨が降り注いだ。命中率が低いとは決して言えないその全体攻撃は彼らを打ち据え、深い火傷を齎す。
 リンシスとマグノリアは顔を見合わせ自分たちは回復に徹することをアイコンタクトで伝え合う。
「そういう、スキルか」
 無頼が、身に受けたその炎の雨を情報収集の能力をもってして解析する。ダメージ事態はそれほどでもない。しかし火傷の深度が違う。
 もし彼が、何らかのリソースを払っていれば、もっと深くこのスキルを得るための緒を掴んでいたかもしれない。
 アイリスが鉄山靠を手前の兵もろともにヴィドルを穿つ。当たらなければ当たるまで穿てばいい。なんとも単純なロジックだ。
 単純だからこそ、強く響く。前衛に守られている敵将に届く技を持つ彼女が狙われてしまうのは仕方ないといえよう。集中攻撃に彼女は一度膝をつくが、英雄の欠片はそれを許さない。
「神のご意向ってところ……ね」
 一度倒れた以上、その先もう一度立ち上がる可能性は低い。だからアイリスは苛烈に、熾烈に攻撃を重ねていく。この場所を護るために。
「私ね。新しい王様ね。少しだけ、期待してるんだ」
 宙見の狙撃術でもって、後衛から援護射撃を続けていたマリアがポツリとこぼす。
「今、私がいるがらくた番地ね。みんな変わってて、楽しいんだよ」
 サンクディゼールの片隅。その番地すらないその区画が彼女の大切な場所だ。そこには無愛想な自分でさえも包み込んでくれる仲間がいる。亜人だとかそんなの関係ないその温かい空間。
「ね、そっちの、国はどう? 亜人の私が、楽しい、って思える国?」
 亜人も、混血もこの世界においては迫害される立場だ。その迫害はこのイ・ラプセル以外では深刻である。だからわかっていっているのだ。
「亜人は、ノウブルに支配される存在でしかない。楽しい? 許されるわけがないだろう?」
 ヴィスマルクの軍人がそう答えることを。
 だから。かちりとスナイパーライフルの安全装置を外す。内部の蒸気タービンが回る音。心地いい音だ。
 同時に運命を。魂を震わせる安全装置も外れる。魂が燃える。
「こういう船が作れるの、すごく羨ましいけど。私は、此の国を選ぶ!」
 アニムスを燃やすことにより揮われる奇跡による身体強化。マリアの体を青いオーラが包む。いつもより視界はクリア、エイムも良好。オールグリーン。
「私の国から! でていって!」
 指先が引き金にふれる。重い銃身は今や自分の手足のように思える。スコープの向こうがやけに近くに感じる。この距離であれば外すことはない。レティクルが告げる今だ、の合図に引き金を引けば、瞬間ヴィドルの耳朶を貫通し、彼は耳を抑えてその場に蹲った。
「貴様! この亜人が! 亜人がああああ!!」
 耳を抑える機械の手を伝い鮮血が床に落ちる。
 再度引き金を引けば、ヴィドルをかばった兵士が膝をついた。
 趨勢は未だ変わらない。しかし少しだけ、その天秤は傾いていく。彼らは必ずしも戦闘に勝利する必要はないのだ。此の場を護り続け保ち続け時間を稼ぐことができれば御の字なのである。
 マリアは引き金をひき続ける。レティクルの呼び声のままに。


「なんだと、ヴィドル少佐、止めれなかったのか! それにしてもなんだ、奴ら的確にこの場所を……これが水の女神の予測演算というものなのか……」
 エッケハルト・エビングハウス准将はギリギリと歯を噛みしめる。機械化した両腕で回るタービンが蒸気を排出する。ともすれば蒸気のように吹き出しそうになる怒りを揺れて音を立てる勲章が押し止める。今回の作戦の将たる自分が激高し焦るなどとんでもない話だ。
『なぁに、逸るな、オラクル。大した兵でもないさ。自らが送り込んだ兵が失われる様をアクアディーネに見せるのもわるくない。またメソメソとあの女は泣くだけさ』
 王座にとまる鴉――ヴィスマルクの女神は嘲るように答えた。
 船艇の床を叩く足音が近づきつつある。
『わが帝国の子らよ! 揮え! 帝国の威光を見せつけん』
 そう言って女神は権能でもって彼らを鼓舞し、強化する。

『ようこそ! 水の女神の使徒よ。そして、ごきげんよう。ここで貴様らは終わりだ』

 駆け込んでくる自由騎士たちに黒鴉の女神は揚々と挨拶をする。
「はーい、戦女神サマ! 早速だけど、アナタの力(どく)を見せてよ!」
 聞くが早いか『マザり鴉』 アガタ・ユズリハ(CL3000081)は竜牙でもって速攻をかける。しかしその攻撃は女神を護る兵によって遮られる結果に終わる。
「まあそんなもんだよねー」
 女神への攻撃はまずは兵たちの除去からになるだろう。
「よくわかんないけどケンカだ! そっちが売ったんだぜ、売り切れても文句言うなよ! さいっこーの見せ場が初陣で来るなんてついてるよな」
 マリア・スティール(CL3000004)の作戦は至ってシンプルだ。まっすぐ突っ込んでいって殴る! 弾丸のようなそのあり方は歪みない。
「負けたら国が終わり! 普段のケンカは負けたらパン奢りだもんなレベルが違うぜ」
 柳凪の構えでもって敵陣中央に乗り込み全力防御の姿勢になる。流石にその行動にはヴィスマルク兵も面食らうが戸惑いは一瞬、集中攻撃を受けることになる。攻撃力は半減しているとはいえ、女神の加護が彼らにはかかっている。また防御力がどれほど高いとはいえ、集中攻撃されるということはその分攻撃の試行回数が増えることである。その回数が多ければクリティカル攻撃を受ける可能性もあるということだ。防御をしても100%ヒットすればBSは入る。じわじわと入るスリップダメージは彼女を苛む。
 しかし、火力の高い攻撃が彼女に集中するということは他のものへの攻撃機会が失われるということである。
「かっこいいとこみせてやるぜー」
 少女は嘯く。周囲の者たちにとってはその宣言はなによりも心強いものであった。
 『蜥蜴混じり』 グウェン・スケイリー(CL3000100)は言葉もなく、踏み込み、目の前の重武装の兵士に向かって、ありったけの力で、剣を振り下ろした。
 まるで、まるで卵の殻のように兵士の武装が砕け散る。――頭蓋砕き・乙。それが彼女が持つ彼女だけの業。一撃で屠るとまではいかないが致命的なダメージを与えたのは確かだ。
 次いで使用するはマリアを囲む兵たちに向かってのオーバーブラスト。もちろんマリアには当たらぬように細心の注意は払っている。
 グウェンは正直エドワード王の掲げる「平等政策」には然程期待はしていない。所詮は理想論。人々から差別というものはなくならないとおもっている。
 自分の白い鱗のこの異形の姿は何度疎まれたかもわからない。それでもイ・ラプセルは一番『まし』なのだ。せっかくの安住地をみすみす潰すのはおもしろくない。もし、此の国がなくなれば前と同じ、傭兵家業に戻るだけだ。とは言え、この異形を蔑む目の兵士の国に潰されるのはもっと面白くない。
 だから彼女は剣を振るう。
「あっけないな。 軍事大国のオラクルと言ってもこんな物か。 次はどいつが相手だ?」
 剣を肩に担ぐ彼女を狙おうと剣を振りかぶる敵兵をフレア・ガストン(CL3000208)は二連射でもって撃ち抜く。
「危なかった」
「ああ、すまない」
 小柄なオニヒトのガンナーの少年はへへっと笑い、グウェンをフォローするように牽制射撃を続ける。
「ここが正念場だもんね! 頑張ろう!」
 フレアのダブルシェルに合わせるように、またユークリウッド・V・カデンツァ(CL3000098)も銃弾をヘッドショットに乗せて撃ち続ける。
 女神に届くまでにはまだ時間は掛かりそうだ。弾丸の数は十分だ。たとえ長期戦になっても耐えうる数は用意してある。もっともそれまでに女神が逃げそうな気もするけど。回転式拳銃に弾丸を詰め直し、ぐるりと一周させて、ウインクする。
「あーしにお任せあれ。まぁ、悪いようにはしないからさ」
 彼女の目にうつるものは黒い鴉。あの黒い鴉を穿つために彼女は銃を撃ち続ける。
 『銀の潮騒亭の赤い花』 ローラ・オルグレン(CL3000210) は思う。あの帝国は何もかわらない。ローラの生まれは帝国である。だというのに愛することの出来ない祖国。その祖国を敵に回すことには未練も後ろめたさもない。
 彼女はノートルダムの息吹を皆に付与した後は、せっせと回復に励む。回復役というものはとかく狙われるものではあるが前衛のブロックとアガタの防御によって致命的なダメージは負わないでいれることに、感謝する。
 やっぱり戦うのは苦手だ。そう思う。アガタが盾になると宣言してきた時はらっきーと思ったものだ。しかし、自分をかばい傷つくアガタを見ていく内に、そんな気持ちも萎えていく。悪女を装うが彼女の根は小心者なのだ。
 だからアガタへの回復は少しだけ、ほんの少しだけいつもより丁寧に編み上げた。
 一方のアガタは女神の攻撃(どく)を受け「その時」を待つ。
 イ・ラプセルと央華大陸の錬金術と煉丹術。そのふたつの知識と、水の権能と祝福。
 大陸には水毒という概念がある。アクアディーネの優しい水(しゅくふく)も、滞れば腐り毒となる。 陽(万能の癒しと浄化の権能)も過ぎれば陰(万能の毒)に転ず――そのための宿業改竄(レシピ)をアガタは望む。
 しかしそれにはまだ何かが足りない。虚っぽの殻は未だ欠けたまま。まだその真理の深奥はもっと先に――。

 一方ヒダカ ヒヨウ(CL3000229)は鉄塊の先を、ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)はバスタードソードの切っ先をエッケハルトに向けていた。
「ひよっこ共がこの先に『なにがあるのか』識っているようだな」
「それはどうかな?」
 敵は多勢、こっちは寡兵。それに神殺しがなにかも自分たちは識らない。だからルシアスは問いには答えず、問いを重ねた。
「アンタたちは、勿論”神殺し”の仕方を知ってて来てるんだよな? だからここで、アンタにゃ俺の相手をしていてもらうぜ」
 神殺し。そんな物騒なものを神暦からこっち1800年もの間神が知らなかったという事実が肝要だ。
 彼らもまたそれをできるのか確かめに来ているのだろう。
 自分以外の4柱のうちまずは弱小国であるイ・ラプセルを狙ってくるとは。なんとも合理的な帝国らしい。
 しかし一つわかることがある。喪失した5柱の神は『殺されていない』のだ。だから神が殺せるものだとは理解していなかった。そういった概念がそもそも無かったのだろうと推察できる。
「魔術師殿は言った。神が神を屠ることによって神殺しが成ると」
 エッケハルトが答えた。
 何かがずれている。ルシアスは思う。我らが神アクアディーネは自分たちオラクルに神殺しのちからが宿っていたようだといっていた。それは端的に自分たちが神を殺せるということだろうとは思ってはいたが。
「神が、神を屠る?」
 アクアディーネはそんなことは一言も言ってはいなかったはずだ。彼女が嘘を付いているとは思えない。かといって目の前の軍人が嘘を付いているとは思えない。なぜならアクアディーネを殺すために此の場に他国の神が現れているのだ。<彼らは自分の神が自由騎士たちに殺せるとは思ってはいない。>
「臓腑に刻んデいけ!わたしはヒダカが末子、ヒヨウ!」
 ルシアンの思考を破るように、ヒヨウが名乗りをあげる。今は戦闘中だ。思考することは正しい。しかしこのままでは答えの出ない迷宮に嵌ってしまうだけである。
 ルシアスは下がりかけていたバスタードソードを持ち直す。
 ヒヨウは知った風な理屈や手前味噌の涙で戦を始める神々が好きではない。いっそ食い合いでも神の蠱毒でも好きにすればいいとも思う。
 だが、この戦いは家のしがらみを気にせず勲を収める好機でもあるのだ。彼女とて、この謎が多い戦について気にならないわけではない。
 武人として眼の前に立たれてわかる。自分では目の前の准将に勝つことはできない。隣にいるルシアスもしかり。ここにいる何者も勝てることは無理だろう。
 この准将が女神のもとに戻ったら。きっと女神を護り切るだろう。嫌な話だ。
 たとえ勝つのは無理であっても仲間が女神を屠るまでならもたせることは可能かもしれない。そんな皮算用で彼女は准将の前に立つ。
「守るノは船か?神か?」
 ヒヨウは問う。同時に奮起し、闘争本能を高めていく。
「ヴィスマルク帝国戦軍鋼炎機甲団が准将、エッケハルト・エビングハウス。護るは神も、船もだ」
 ルシアスとヒヨウが同時にバッシュで畳み掛けるが両の機械の腕に阻まれる。
「かかってこい、イ・ラプセルの兵よ」

「ハン! 初っ端から喧嘩を売ってくるたァ……嗚呼、神に復讐してぇ俺には格好の相手って事だ! つー訳だ、ちょっとテメェ等の親玉ぶっ殺すからどけや、三下ども!」
 鋭い金銀妖瞳を輝かせ、『幸運の首狩り白兎』 ハクト・カキツバタ(CL3000253)が啖呵を切る。
 状況は変わらず、玉座を護る兵士たちの練度は高く、数人落とすことと引き換えに此方の軍勢は膝をつくものが出始めている。
 ハクトは奇声をあげつつ、目の前の兵士を二連の剣閃でもって切り刻んでいく。
「キリングドール」活動開始……ギャハハハ! 首狩り白兎のハクトだ! 神殺しを目指す者とシクヨロ!! じゃあ、一著首狩ってこようか!」
 その隣を、『黒翼の騎士』 クーレリア・フローリー(CL3000207)が静かに歩を進める。
 彼我の戦力差に加え、女神の支援。状況は絶望的と言っても、間違いないだろう。ならば勝ちを得るにはどうすればいいのか? 
 ――簡単なことだ。ああ、とても簡単な話だ。クーレリアは思う。
 祖国のために命を捧げればいい。命の欠片を天に捧げ、どれほど無様であろうとも奇跡を乞えばいい。
「神ともあろうものが臆病にも程がある」
 このままではたどり着けないと思った。そう思った瞬間祖国の両親と友人の顔が浮かんだ。自分に向ける微笑みは暖かく。それを護ると騎士の誓いにした。
 宿業改竄。それは定められた運命すらも力づくで変えてしまう魂の奇跡。これを使えば失われるリソースは多大なものになる。そんなことは識っている。もとより生きて帰るつもりなど無かった。
 その強い想いは自らへの強化ではなく、船艇を伝い仲間たちにも注がれていく。
 宿業を変えるほどの力は自分個人だけには収まらない。
「かっこいい真似! ひとりだけにはさせんよ」
 自分は放浪者だ。イ・ラプセルもまたその中で立ち寄った一つの国だ。一宿一飯の恩がある。
 サクヤ ミカヅキ(CL3000006)もまた、宿業を歪め命を燃やす。
 自分は此の国に所属した。だからこの地は自分にとって故郷であり、家だ。
 大切な自分の居場所になったそこをないがしろになどできない。
「アクアディーネ様、貴方を我が主としましょう! なれば、貴方を悲しませる全てを屠る事を誓いましょう」
 その誓いは宿業の改竄という奇跡でもって、果たされる。
 もとより戦いに惜しむ命などはない。覚悟などできている。我が生命は弾丸。そして何より。神殺しはサクヤの野望でもあるのだ。この好機を逃す手立てはない。
「さあ、参りましょう。鬼が出るか蛇が出るか? はたまた邪悪な悪魔がでるか。 神殺しの鬼ならここに サクヤミカヅキ、参る!!」
 太刀に浮かぶは慚愧の三日月。真昼の空に突如浮かぶ大きく白い三日月。飛空艇の窓の外のまるで空に傷跡が付いたような三日月に気づいた者が、はたと息を飲む。
 美しいのに、邪悪。であるのにもかかわらず、なぜ、儚くみえるのだろう。それは少女の宿業。
 彼女もまた願うは神殺し。自らだけでなく三日月の奇跡の恩恵は他の皆にも伝わり、ふたえの恩恵となり、自由騎士たちに降り注いだ。
「この水の国、舐めてもらっては困るんよ。因果応報、その文字を刻んで冥府へ堕ちろ!」
 サクヤはまっすぐに神に斬りかかった。
「ふむ。私より命知らずがいたとは」
 『護神の剣』 カスカ・セイリュウジ(CL3000019)は手をぐっぱぐっぱとして、自らに宿るふたえの力に目をぱちくりとさせた。
「とまれ、僥倖ですね。屠る力があるなれば!」
 眼の前の敵兵と斬り合う。先程までとは俄然切れ味が違う。敵兵と同じか、其れ以上の強さを実感する。コレが宿業の力か。カスカは少しだけ羨望と嫉妬を感じてしまう。
「わ、すごい!」
 同じく眼の前の敵にでやー!と掛け声をかけながら頭突きをした『豪拳猛蹴』 カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)がその威力の差に目を輝かせる。
 姉貴分のカスカに目配せしたカーミラは、カスカの攻撃に合わせて鉄山靠で女神を狙う。
『なに?』
 それは初めて届いた女神への攻撃。
 自分を傷つけるものは同じ神ではなかったという事実に黒翼の女神は驚愕する。
『どういうことだ! 道化師! それになんだ、この、此の者たちの力は……!』
 バサバサと羽根を広げ黒翼の女神が明確な焦りを見せる。
『オラクル! 妾を守れ! オラクル!』
 悲鳴でもってエッケハルトを呼ぶが彼は今二人のオラクルに足止めされ近づくことはできない。
 吹き飛ばしでもって向かおうと対応するが、彼らは粘り強く、食いついている。
「逃さん」
 此の場で最も強く女神を殺すという意思が強かったのはクーレリアその人だろう。
 強化されたその能力をもって女神を屠るため、兵士を凪いでいく。一秒ごとに確実に女神に近づいていくその姿はまるで戦いの神の化身。
「負けてられませんね。これは」
 カスカはカーミラと合わせながら兵士を屠っていく。その太刀筋に、拳筋に迷いはない。
 全く違う二人であるのに彼女らを見たものは揃ってこう言うだろう。なんて似ているのだと。
「女神さまッ! かかってこないんならこっちからいくよ!」
『生意気な』
 降らせるは呪いの雨。
 しかし、ローラの回復が癒やしていく。千日手。たとえローラの気力がつきたとて、『奇跡』の効果が続いている限りジリ貧になるのはヴィスマルク側である。
『撤退だ! 許さんぞ! 絶対に』
 しかし黒翼の女神は引き際という明確な分水嶺をとっくの昔に越えていたのだ。
 押し止められていたエッケハルトがようやく二人のオラクルを戦闘不能にし、女神に近寄ろうとするが、この場所を離れれば小癪な自由騎士たちは機関部を狙うことだろう。
 女神を護ることと艇を護るそのジレンマの天秤は揺れ続ける。その逡巡が運命を切り分けた。
「ヒャハハハハ」
 甲高い兎の笑い声。とうとう神殺しの兎が女神にたどり着く。
「なあ、クソ女神、テメェ等、神様は俺達の事をどう思ってる?」
『答える価値などない』
「なら死ねや!」
 ハクトの二刀流の小太刀が二閃でもって女神を穿つ。
「へぇ、神様の血も赤いんだな」
『おのれ、おのれ、おのれ』
「ケモノビトの根性なめんな!」
 カーミラは一度膝をつくが、額に流れる血を片手で払って立ち上がった。鉄山靠を繰り出す気力は復活することで少しだけ回復した。だから彼女は残りの膂力でもって、ボロボロの体を無理やり動かして、ガントレットからギリギリで庇うバスターの兵士ごと撃ち穿つ。もうダメだ、これ以上動けない。
そのまま倒れる。後は姉貴分がやってくれる。そんな期待を込めてカスカを見つめれば、首を縦に振ってくれたのを見た。
「まあ、アニムスを燃やせなかったのは残念ですが。一回得をしたと思えばいいですね。それにしても」
 カスカはヒートアクセルの手とそして言葉を一旦止める。
「御神の剣が神を殺すとは、なんとも皮肉な話ですよね。そういえば貴女の名前さえも我々は知らないのですが、それは別に構いませんよ。これから死に逝く者に名前など必要ないですからね。さようなら、名乗らずの神よ」
 放つは天理真剣流・発破。愛刀の逢瀬切乱丸はこの最後の一撃に耐えてくれるだろうか?
 キィン……と高い金属が砕ける音がする。その直後遅れて破裂音が響く。
『そんな、そんな、まさか、わら…』
 名乗らずの女神はその場に崩れ落ち、末端から塩に変わっていく。
「女神……!」
 まさか女神が殺される? 塩の塊になった女神を見てエッケハルトはその場に崩れ落ちる。
 作戦は失敗だ。このままライヒに戻れば自分はどうなってしまうのか。
「やった、の?」
 サクヤがあっけない終わりに、呆然とした声を上げる。そして時同じくして奇跡も彼女から消えていく。
 ずん、と体にかかる負担。宿業を改竄したその代償。もう立っていることもできない。
 ふらりと、体がかしぎ、地面に激突……しなかった。
 彼女はローブの男に抱き上げられている。

 ぱち ぱち ぱち 
 その場に突如場違いな拍手が響いた。
 オラクルたちは振り返る。
「やあ、可能性<■■■■■ス>」
 怪しげなローブの男が、いつの間にかそこにいた。気配はなかった。この状況で誰も気づかなかったのだ。サクヤを抱きとめながら器用に拍手し、ニヤニヤと笑っている。
「あなた、は?」
「はじめましてかな? 僕ぁ、道化師、魔術師、あとなんだっけ? 錬金術師、トリスメギストス? 葛 洪にアルヴェストゥス、ニコラにパラケルスス、カリオストロにサンジェルマンとも名乗ったことがあったかな? 当代においてはアレイスター・クローリーっていうんだ! 僕ぁね!」
 サクヤの問いに一層愉しそうにローブの男――アレイスター・クローリーは答えた。
「貴様、魔術師、殿! どういう、つもりだ?」
 仲間であった筈の魔術師のその軽口にエッケハルトは問う。
「神殺し、の見学かな?」
「何故、何故女神は『殺された』?」
「何故って、神殺しがなされたからさ」
「どういうことだ」
「ごめん! 僕嘘ついてた! 神が別の色の神を殺すことが神殺しってルールは大嘘! ほんとはね、正しくは、神の色のついた可能性<オラクル>がその色と違う色の神を殺すことができる。だからね、その鴉の女神を可能性<■■■■■ス>達の前に出させる必要があった。嘘ついちゃってごめんね!! いやー、僕の考えは正しかったってことだね、うんうん。実証実験って大事だよね」
「お前は何者だ?」
 クーレリアもまた己が身の喪失――魂の大凡66%が失われていく喪失感にとらわれていた。それでもこの闖入者が何者かを問わずに倒れるわけにはいかなかった。悪意は感じない。だけれどももっとそれとは違う何かがそこにあった。
「アレイスター・クローリー。錬金術のお兄さんと呼んでくれてもいいよ」
「ふざ、けるな」
 そこがクーレリアの限界だった。ショートソードを杖にするもズルズルと倒れてしまう。
「エビングハウス准将、ここで痛み分けにしよう。僕が可能性<■■■■■ス>たちをまとめてこの艇から撤去させる。それで、帝国には君のことフォローするよ。女神を守ろうとその身を呈した、准将!」
 言ってフィンガースナップの軽快な音が響けばエッケハルトの両の機械の腕が砕け散る。彼の機械の腕は特殊な材質を使った丈夫なものであるのに。
「ぐぁあ!!」
「そう、腕を失い、女神を失い……! それでも艇長としてこの飛空艇だけはまもったのだぁ!」
 演技がかった男のその声は如何にも愉しそうだ。
「ってわけで、悪い話ではないだろう? この茶番を告発するならすればいい。そうしたらどっちにせよ君は粛清されちゃう! あのライヒ★に。……で、君たちも帝国が逃げるんだから追わないよね」
 エッケハルトから一転、自由騎士団達に向き直る。それが手打ちの条件だというように。
「何のつもりだぁ! テメェエ!!」
 ハクトがクローリーを切り込もうと、飛びこむもすでにその場に彼はいない。そしてサクヤは未だ彼の腕の中だ。
 言外に自由騎士団の者に告げる。此の少女は人質だよと。
「これはお礼だよ。可能性<■■■■■ス>。 君たちが面白いもの<きせき>をみせてくれた、ね」
 パチン、とフィンガースナップの音が艇内にやけに大きく響いた。

 気がつけば、彼ら強襲艇に乗り込んでいたイ・ラプセル自由騎士団の面々はアデレードの砂浜に全員が移動していた。
「なんだ!? これ」
 戦闘不能にはなっていない者たちが騒ぎ始める。何をされたかわからないのだ。気がつけば砂浜だ。無理もない。
 サクヤはアレイスター・クローリーと名乗った男が身につけていたローブに包まれていた。彼がフィンガースナップをする直前、囁いた声が今も耳に残響している。

「また会おうね! 可能性<■■■■■ス>」

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: カスカ・セイリュウジ(CL3000019)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: マリア・ベル(CL3000145)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: アリア・セレーネ(CL3000180)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: 篁・無頼(CL3000140)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: 柊・オルステッド(CL3000152)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: 篁・三十三(CL3000014)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: クーレリア・フローリー(CL3000207)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: フレア・ガストン(CL3000208)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ユークリウッド・V・カデンツァ(CL3000098)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: アガタ・ユズリハ(CL3000081)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: マリア・スティール(CL3000004)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: リンシス・ノア・シャルディ(CL3000171)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ユニ・ダグラス(CL3000251)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ルシアス・スラ・プブリアス(CL3000127)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ルーク・シエロ(CL3000144)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: 朱火 ローズ デスパジレア(CL3000264)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: グウェン・スケイリー(CL3000100)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ベルナルト レイゼク(CL3000187)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ガブリエーレ・シュノール(CL3000239)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ヒダカ ヒヨウ(CL3000229)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: 糸杉 牡丹(CL3000248)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: アイリス・キリングドールズ(CL3000270)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ハクト・カキツバタ(CL3000253)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: サクヤ ミカヅキ(CL3000006)
『イ・ラプセル自由騎士団』
取得者: ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)

†あとがき†

マギアスティームグランドオープニングに参加いただきましてありがとうございます。

神殺しはなされました。今後の動きはストーリーをお楽しみください。
今作におけるアニムス使用、及び宿業改竄は、心情において強い想いがあった場合や状況によって発動すべきと判定された場合のみ発動します。
宣言をした時点で-5を消費します。(つまり未発動でもフラグメンツの減少は発生します)
使用は本当に、本当にお気をつけてください……!
決戦ではアニムス、宿業をあわせ最大3名選出されます。(通常依頼は1名です)
もちろん状況によっては1人も発動しないことはあります。
アニムス使用の心情はEXにかかれていても構いません。


今回、みなさんが頑張ってくださったおかげで、アレイスター・クローリーが此の場に引っ張り出されてしまいました。
アニムス使用、そして宿業改竄はPCの皆様しか持っていない奇跡です。
そんな奇跡を見せられてはクローリーもでばらずにはいられませんでした。クローリーもそんな奇跡が存在していることは知りませんでした。
(彼の登場フラグは宿業改竄の一人以上の使用、成功だったのですが、まさかの宿業7人アニムス6人という結果で皆様の本気度に驚かされました)
 クローリーは貴方達に対してとても友好的です。(皆様がどうおもうかは抜きにして……)

MVPはアニムスと宿業改竄が発動した三人のみなさま。
(念の為申し上げておきますが、アニムスと宿業改竄の有無だけがMVP選出理由ではありません)
エッケハルトを二人で抑えて、なおかつ神殺しについての疑念を表に出してくださった方に。
エッケハルトが自由に行動することができた場合、神殺しを狙ってくださった皆様にさらなる多大な損耗が
出る、若しくは神に逃亡されるところでした。



また、今回は経験値がベースが100、人数ボーナス補正で1.2倍されて120。それに決戦補正で1.5で180になっております。
GP報酬について、グランドオープニング3本で数値が違うのはその依頼にマーチャントが何人入っているかの差になっています。MVP補正は1.25倍とマテリア各種+1個追加になります。
当依頼が1人。どくどくSTの依頼が3人、吾語STの依頼が5人でそれぞれに差がでていますので、ご了承ください。

今回の全体の戦果は
エッケハルト・エビングハウス准将:生存
ヴィドル・スプラウト少佐:戦闘不能・生存(当依頼)

ガブリエーレ・クラウゼヴィッツ少将:生存
ロミルダ・アンテス大尉:戦闘不能・生存(どくどくST依頼)

イェルク・ヴァーレンヴォルフ准将・生存
ボーデン・生存(逃亡)
フェーア・死亡
ヴィント・死亡(吾語ST依頼)

となります。生き残った彼らとはまたどこかで会うことがあるかもしれません。



物語ははじまったばかりです。
これからのマギアスティームにご期待下さい!
FL送付済