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Yours! ニルヴァンデザイア村作り!

●陳情内容
『黒縋騎士団や経験不足で復興や開拓のスピードが鈍ると思われる二ルヴァン領地にてデザイアの受入れを行い、新規の村を立ち上げたい。
ヘルメリアでの自由騎士の活動によりフリーエンジンが保護するデザイアの人数は増加傾向にある。彼らが保有する『村』に匿うにしても限度があり、イ・ラプセルも同様である。
また、デザイアたちの経験はシャンバラ民の知識不足を補い、デザイアも新たな地で自由を得れるであろう。――――テオドール・ベルヴァルド(CL3000375) 』
●デザイアの村
ニルヴァン領主のテオドールが申し出た陳情内容は、ニルヴァン領民やフリーエンジン双方に有益な内容だった。
シャンバラの開墾や土地開発など、現状ニルヴァン領地は人手が足りない。またヴィスマルクやヘルメリアと隣接していることもあり、兵士が農業を手伝いに行ける余裕もなかった。人手不足をどう解決するかと悩んでおり、猫の手も借りたい状況だったのだ。
フリーエンジンからしても新たな技術を学べる機会は逃したくない。それが将来性が高く、かつそこで新たな『生き方』を得られるならそれに越したことはない。自由を得るにしても、何らかの道筋はあるべきなのだ。
陳情内容にもあるように、シャンバラの農耕技術の不足分をヘルメリアの機械技術で補う事は可能だろう。またそうすることでデザイア達も新たな土地の人とコミュニケーションを取るきっかけとなり――問題は、ここである。
デザイア――ヘルメリアの解放奴隷達は、その経緯もあってノウブルに対して恐怖心を抱いている者も少なくない。ノウブルに強く出られれば怯えてしまうだろう。イ・ラプセル領民がそれを盾にして不当な要求をするとは思えないが、それでも摩擦は生じる。少なくともコミュニケーションの不具合は生まれるだろう。
となれば、ワンクッション置く必要がある。デザイアとニルヴァン領民。両者をつなぐ架け橋が。
例えば、ニルヴァン解放と亜人解放の両方を行った自由騎士のような――
●自由騎士
「というわけで、諸君らには村づくりを手伝ってもらう」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達に向けて説明を開始する。数枚の資料を渡すと同時に、それを読む間沈黙を保つクラウス。資料はニルヴァン領の地図と、十数名の名前が書かれたリストがあった。
「ベルヴァルド卿の提案により、ニルヴァン南西の山付近に新たな村を作る事となった。鉄鉱石なども採掘できるため鍛冶施設などを用意することで相応の機械産業が可能となるだろう。
リストには農業用の機器開発が行えるデザイア達が書いてある。先ずはシャンバラの農耕技術向上とデザイア達のイ・ラプセルでの足場となる村づくりが目的だ」
移民受け入れには幾つかの障害がある。その中でも『仕事の奪い合い』は経済的にも治安的にも厄介な問題だ。だが今回に至ってはそれをクリアしている。それどころかいい相互関係となる可能性もあった。
「諸君らにはデザイア達と周囲村人との橋渡し。並びにデザイア達のノウブル克服の支えとなってほしい。心配することはない。諸君らの活躍は彼らも知っている。デザイア達の信頼は確かに得られているだろう。その言葉が届かぬはずがない。
そして彼らに機械技術以外の何かを教えてやってほしい。内容は何でも構わない。戦闘でもいいし、魔導でもいい。歌や踊りもいいだろう。新しいものに触れることで何か得られることもある。そしていつか『彼らだけの物』を作ってほしい」
今まで命令されていた亜人達が、自分の力で何かを生み出す。それでようやく、彼らは自由になったと言えるのだろう。
「宜しく頼むぞ」
クラウスの言葉に頷いて、自由騎士達は村へと向かった。
『黒縋騎士団や経験不足で復興や開拓のスピードが鈍ると思われる二ルヴァン領地にてデザイアの受入れを行い、新規の村を立ち上げたい。
ヘルメリアでの自由騎士の活動によりフリーエンジンが保護するデザイアの人数は増加傾向にある。彼らが保有する『村』に匿うにしても限度があり、イ・ラプセルも同様である。
また、デザイアたちの経験はシャンバラ民の知識不足を補い、デザイアも新たな地で自由を得れるであろう。――――テオドール・ベルヴァルド(CL3000375) 』
●デザイアの村
ニルヴァン領主のテオドールが申し出た陳情内容は、ニルヴァン領民やフリーエンジン双方に有益な内容だった。
シャンバラの開墾や土地開発など、現状ニルヴァン領地は人手が足りない。またヴィスマルクやヘルメリアと隣接していることもあり、兵士が農業を手伝いに行ける余裕もなかった。人手不足をどう解決するかと悩んでおり、猫の手も借りたい状況だったのだ。
フリーエンジンからしても新たな技術を学べる機会は逃したくない。それが将来性が高く、かつそこで新たな『生き方』を得られるならそれに越したことはない。自由を得るにしても、何らかの道筋はあるべきなのだ。
陳情内容にもあるように、シャンバラの農耕技術の不足分をヘルメリアの機械技術で補う事は可能だろう。またそうすることでデザイア達も新たな土地の人とコミュニケーションを取るきっかけとなり――問題は、ここである。
デザイア――ヘルメリアの解放奴隷達は、その経緯もあってノウブルに対して恐怖心を抱いている者も少なくない。ノウブルに強く出られれば怯えてしまうだろう。イ・ラプセル領民がそれを盾にして不当な要求をするとは思えないが、それでも摩擦は生じる。少なくともコミュニケーションの不具合は生まれるだろう。
となれば、ワンクッション置く必要がある。デザイアとニルヴァン領民。両者をつなぐ架け橋が。
例えば、ニルヴァン解放と亜人解放の両方を行った自由騎士のような――
●自由騎士
「というわけで、諸君らには村づくりを手伝ってもらう」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達に向けて説明を開始する。数枚の資料を渡すと同時に、それを読む間沈黙を保つクラウス。資料はニルヴァン領の地図と、十数名の名前が書かれたリストがあった。
「ベルヴァルド卿の提案により、ニルヴァン南西の山付近に新たな村を作る事となった。鉄鉱石なども採掘できるため鍛冶施設などを用意することで相応の機械産業が可能となるだろう。
リストには農業用の機器開発が行えるデザイア達が書いてある。先ずはシャンバラの農耕技術向上とデザイア達のイ・ラプセルでの足場となる村づくりが目的だ」
移民受け入れには幾つかの障害がある。その中でも『仕事の奪い合い』は経済的にも治安的にも厄介な問題だ。だが今回に至ってはそれをクリアしている。それどころかいい相互関係となる可能性もあった。
「諸君らにはデザイア達と周囲村人との橋渡し。並びにデザイア達のノウブル克服の支えとなってほしい。心配することはない。諸君らの活躍は彼らも知っている。デザイア達の信頼は確かに得られているだろう。その言葉が届かぬはずがない。
そして彼らに機械技術以外の何かを教えてやってほしい。内容は何でも構わない。戦闘でもいいし、魔導でもいい。歌や踊りもいいだろう。新しいものに触れることで何か得られることもある。そしていつか『彼らだけの物』を作ってほしい」
今まで命令されていた亜人達が、自分の力で何かを生み出す。それでようやく、彼らは自由になったと言えるのだろう。
「宜しく頼むぞ」
クラウスの言葉に頷いて、自由騎士達は村へと向かった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.新たな村を起こす
どくどくです。
時系列的にはデザイア決戦前ということで。
●説明
ヘルメリアで奴隷として扱われていた亜人達。彼らをこっそり国外逃亡させ、ニルヴァンの村(未完成)に宛がい、村づくりをしてください。
廃村を利用したもので住居や生活施設などはありますが、ほぼ野ざらしだったため、手入れは必要です。掃除に補修に草刈りや道の舗装など、やるべきことはたくさんあります。
同時に、近隣の村への挨拶も必要になります。話は通っているのですが、ノウブルに恐怖心を抱くデザイア達は単独でコミュニケーションを取るのは難しいでしょう。自由騎士がワンクッション置くと同時に、デザイア達に安心できるという事を示す必要があります。
あと余裕があれば彼らに新たな技術を教えてあげてください。そうすることで自信が増し、自立心の芽生えになります。
<やるべきことのまとめ>
・廃村となった村の復興
野犬の襲来で廃村となった村です。問題となった野犬は既に退治されています。
家は野ざらし穴だらけ。草は生え放題。畑も見る影もありません。井戸も掘りなおさないといけないでしょう。
・近隣への村の挨拶。それに伴い、ノウブルへの恐怖を克服させる。
近隣のシャンバラ民への挨拶。事情は知っており、自由騎士達に友好的なた目よほどのことでなければ対応してくれます。
送られてきたデザイア達も自由騎士を信頼しており、恐怖心こそありますがノウブルとの会話は可能です。上手く仲裁を取れば、円滑な関係になると思われます。
・技術提供(可能であれば)
ノウブルに従う事しかできなかったデザイア達に、新たな技術を教えます。なんでも構いません。
●送られたデザイア達
こっそり密航という事で20名ほど。ケモノビト6名、ソラビト5名、ミズビト5名、オニビト4名。
工場で働いていた事により、基本的な家事や機械作製等が行えます(スチームノウレッジと蒸気機関取扱技術 序)。子供のころに親の畑を手伝っていた経験もあり、農業が不得手と言うわけではありません。
●その他備考
ニルヴァン領主からの陳情という事もあり、ある程度の資金が国から渡されています。
具体的には家の修繕費や機械の作製費用などは気にしなくて構いません。必要性があれば、若干の無茶は通るかもしれません。移動用の馬車や車を村に常備させるぐらいなら問題なしです。
皆様のアイデアで、村は変化していきます。いい方向か、悪い方向か。それはプレイング次第です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
時系列的にはデザイア決戦前ということで。
●説明
ヘルメリアで奴隷として扱われていた亜人達。彼らをこっそり国外逃亡させ、ニルヴァンの村(未完成)に宛がい、村づくりをしてください。
廃村を利用したもので住居や生活施設などはありますが、ほぼ野ざらしだったため、手入れは必要です。掃除に補修に草刈りや道の舗装など、やるべきことはたくさんあります。
同時に、近隣の村への挨拶も必要になります。話は通っているのですが、ノウブルに恐怖心を抱くデザイア達は単独でコミュニケーションを取るのは難しいでしょう。自由騎士がワンクッション置くと同時に、デザイア達に安心できるという事を示す必要があります。
あと余裕があれば彼らに新たな技術を教えてあげてください。そうすることで自信が増し、自立心の芽生えになります。
<やるべきことのまとめ>
・廃村となった村の復興
野犬の襲来で廃村となった村です。問題となった野犬は既に退治されています。
家は野ざらし穴だらけ。草は生え放題。畑も見る影もありません。井戸も掘りなおさないといけないでしょう。
・近隣への村の挨拶。それに伴い、ノウブルへの恐怖を克服させる。
近隣のシャンバラ民への挨拶。事情は知っており、自由騎士達に友好的なた目よほどのことでなければ対応してくれます。
送られてきたデザイア達も自由騎士を信頼しており、恐怖心こそありますがノウブルとの会話は可能です。上手く仲裁を取れば、円滑な関係になると思われます。
・技術提供(可能であれば)
ノウブルに従う事しかできなかったデザイア達に、新たな技術を教えます。なんでも構いません。
●送られたデザイア達
こっそり密航という事で20名ほど。ケモノビト6名、ソラビト5名、ミズビト5名、オニビト4名。
工場で働いていた事により、基本的な家事や機械作製等が行えます(スチームノウレッジと蒸気機関取扱技術 序)。子供のころに親の畑を手伝っていた経験もあり、農業が不得手と言うわけではありません。
●その他備考
ニルヴァン領主からの陳情という事もあり、ある程度の資金が国から渡されています。
具体的には家の修繕費や機械の作製費用などは気にしなくて構いません。必要性があれば、若干の無茶は通るかもしれません。移動用の馬車や車を村に常備させるぐらいなら問題なしです。
皆様のアイデアで、村は変化していきます。いい方向か、悪い方向か。それはプレイング次第です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
4個
4個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年09月16日
2019年09月16日
†メイン参加者 8人†
●
「デ、デザイアの方々の新しい村がニルヴァンに出来るのですね……!」
緊張した面持ちで『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は拳を握る。ヘルメリアで奴隷として虐げられていた亜人達。彼らが新しい生活を開拓するのだ。関わった者として、喜びを感じずにはいられない。
「ウム。力仕事なら任せろー!」
機械の腕をぐっと突き上げ『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は声をあげる。自ら力仕事をかって出るアグレッシブ溢れるニルヴァン領主である。適材適所ともいえるが、他にやるべきことがあることも理解している。
「最初のあいさつは重要だな。事情は知っているとはいえ、しくじるわけにはいかない」
今回の提案を発起した『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が大きく頷く。ミトラース消滅後のシャンバラ地域は黒鉄槌騎士団と言う懸念こそあるが、概ねイ・ラプセルに好意的だ。とはいえ、礼節を欠くわけにはいかない。
「事前連絡は済ませてある。後はスケジュールの調整だな」
先に近隣の村々を回っていた『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が合流し、報告する。異国の者と新旧領主。それらが訪問するとなると何事かと混乱を受けかねない。その懸念を取り除くために、アデルは前もって連絡を行っていた。
「事前にサンプルが用意できたのは僥倖だな」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はデザイアの人達が作った鍛冶の品物を見ていた。鍬や鋤の先端と言った簡素なモノだが、それでもあるとないとでは大違いだ。ツボミに鍛冶の知識はないが、土を耕すのに十分な物だという事は理解できる。
「土地は大分荒れているが……一から切り開くよりはマシだな!」
生い茂る草を見ながら『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)は無理やり自分を納得させるように頷いた。やるべきことは多いが、それでもゼロからのスタートよりはずっといい。脳内でスケジュールを展開し、時間を計算する。
「元気な草を刈るのは気が引けるけどな」
言って苦笑する『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。草木の声が聞けるヨウセイならではの悩みである。とはいえ、これも自然の摂理。やり過ぎなければ自然も許してくれるだろう。ヒトもまた、この自然の一部なのだから。
「そうだな。先ずは寝泊まりする場所か」
数年間手入れされていない家々を見てウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はため息をつく。自由騎士含めて三十人近くが寝泊まりできる場所となると、それなりの数になる。冬でなくてよかったぜ、と呟き作業に取り掛かる。
「あの……いいんでしょうか。こんな広くていい所に住んで」
村についたデザイア達の一言は、差異こそあれど概ねこんな感じだった。狭い部屋にすし詰め状態で生活していた彼らにとって、広々とした空間は贅沢な環境だった。
「ああ。むしろ大助かりだ。むしろ胸を張ってくれ」
この村作りのテストケースが上手くいけば、それを基点に多くのデザイア達をこちらに迎え入れる可能性が高まる。そうなれば農耕技術不足のシャンバラに、新たな風を導入することが出来るだろう。
かくして、デザイア達の新たな村づくりが始まるのであった。
●
「あ、そうだ。村の名前付けろ貴様ら。貴様等の村だ。貴様等が考え、貴様等で決めよ」
作業を始める前にツボミがデザイア達にそんな題材を出した。ニルヴァンデザイア村はあくまで仮の名前だ。村の名前を自分達でつけることで、初めて自立が成立するといえよう。
スケジュール的に先ずは村の整地から始まる。住む場所の確保、井戸などのライフライン確保、道などの動線の整地、やることは多い、
「よっしゃあ、気合いを入れよー!」
率先して井戸掘りを行ったのはシノピリカだ。持ち前のパワーを生かし、井戸の周りにある瓦礫をどけていく。現領主を働かせるのは如何なものか、とデザイアの人達が意見する気も起きぬほどの勢いである。
「ふむ。削岩の機械はそういう感じなのか。
この様子を近くの人に見てもらうのもいいやもしれんのう。人出の供出と、デザイアの技術供与。これすなわちウィンウィンじゃ。機械もウィンウィン言っとるし!」
言ってシノピリカは大笑いする。渾身の領主ジョーク。体を動かしながら笑いを取ることでなごませることも忘れない。心技体全てにおいて民の為にあるのが領主と言えよう。
「機械もウィンウィン言っとるし!」
反応が薄いので、もう一回繰り返した。きんちょうをとくのはたいへんなんだなぁ。
「この家がよさそうだな」
村を見て回ったウェルスが目につけたのは、村中央にあった大きな家だ。おそらく村長のような村長が住んでいただろう家で、緊急時に備えての倉庫や人が住むスペースがある。作りもしっかりしており、補修工事さえしっかりすれば仮宿にはなりそうだ。
「街に砦に、そして村か。なんでもこなすよな、自由騎士は」
むしろ嬉しそうに呟くウェルス。戦争ばかりでは気が滅入る。民を守るという意味では、これも国防騎士の仕事だった。デザイアの人達に指示しながら、図面にそって修理をしていく。このままいけば、夕方にはどうにかなりそうだ。
「草を刈り、畑を耕し、水路の確保か。やはり農耕用機械の作製を先にした方がいいな」
やることを紙にまとめたテオドールは、人手不足解消が問題だと結論付ける。井戸掘りや草刈りなどは今の人数で事足りるが、土を耕したり水を引き込むとなれば容易ではない。それようの機械を作り、マンパワーを増すことが先決だ。
「流石に手慣れたものだな。完成までそれだけかかるという事は……」
機械作製を行っているデザイアの様子を見に行くテオドール。既に図面は書き終え、作成段階に移っている。機械完成の予定日を聞き、頭の中で計画を練り直すテオドール。悪くないスケジュールに、思わず笑みが浮かぶ。
「私は草刈りをするとしよう」
スコップを手にウィリアムは村の敷地を見る。獣道すら存在しない村の姿を見て気が折れそうになるが、何とかやる気を出して腕をまくる。こういったフィールドワークスも研究になる。レポート名は『効率の良い開拓計画』あたりか。
「村の入り口と住む場所を繋ぐ道から作って、取り除いた草は家畜の飼料に。そうなると家畜の飼育場所も必要か」
体を動かしながら、村の産業のことを考えるウィリアム。畑を耕し、鉄を掘るだけではお腹は満ちない。家畜などを飼い、栄養を補給することも大事だ。やることが決まれば次はどうするか。考えるのは研究者の努め。自然と計画が立ち上がっていく。
「皆さーん、御飯ですよー」
作業に熱が入ったころにティルダが食事を持ってきた。掃除や荷物運びなどをこなしながら作っていたのだ。人数が人数なだけに大きな鍋で煮込むシチュー系になってしまったが、栄養は満点だ。疲れた体を癒すには十分な食事と言えよう。
「水分補給は忘れないでくださいね。あとおやつ……いえ栄養補給も大事ですね」
井戸で出た水をろ過した水を用意しながらティルダは付け加える。秋になって涼しくなってきたとはいえ、まだ陽気は残っている。肉体労働をするうちに汗だくになっていることもある。あとおやつは……うん、重要だよね!
「めまいがする前に自己申告だ。我慢はするな。お前達はもう労働を強要される身じゃないんだからな」
一人一人の顔を見ながらツボミが口を開く。デザイア達はもう奴隷ではない。納期優先で体を壊されては意味がないのだ。彼らが生活するための村で、彼らの身体を壊してしまっては本末転倒だ。
「まあそうなったら医学の実地訓練だ。そうならない事を祈っておくが、怪我と病気ばかりはいつ起きても仕方ないからな」
言って笑みを浮かべツボミ。細心の注意を払おうが、どれだけ道具を用意しようが、怪我をするときは怪我をする。医者が不要になる時代はおそらくなくならないだろう。それは幾多の治療現場を見てきたツボミが一番よくわかっている。
「運搬用の荷馬車と厩舎が要るな。この村で加工した物を運ぶ用だ」
鍜治場設立予定の建物近くで、スペースの確認をするアデル。この村で作りだした製品を他の村に運ぶための流通経路を想像していた。鉄鉱石を採掘して作ったものを売る。それがこの村の収入源になる事を考えれば、その効率化は必然だ。
「後は念のために狼煙台が欲しい。火急の際は、これで自由騎士に知らせてくれ。必ず駆けつける」
ニルヴァンの昨今の事情を鑑みて、アデルが建築物に追加する。不要となるなら問題はない。だが万が一の可能性は否定できない。幸いにしてデザイア達はそれを作り出す技術を有している。
「良し。今日の作業はここまでだ!」
汗をぬぐい、オルパが作業終了を告げる。日が沈む前に帰宅を促し、ランプに火を点けた。日が落ちれば周囲は真っ暗になる。そうなる前に明かりを用意しておかなくては。そう習慣づけることも、大事な事なのだ。
「こうみえて、アーティストなんだぜ?」
明かりの中、オルパのハープが鳴り響く。デザイアを歓迎するための歌だ。艱難辛苦を乗り越えて、この土地までやってきたデザイア。その未来に待つ者は何か。明るくまとめるオルパの歌に、デザイア達は拍手で感動を伝えた。
明日も早い。自由騎士とデザイア達は明日に備えるために、床につく。
●
ある程度村の整備が整った後に、周囲の村に挨拶周りとなった。
「――という事だ。詳しい話は、元ニルヴァン領主のテオドールと現領主のシノピリカらがやってくるから、彼らから聞いてくれ。何、悪い話じゃないから安心しろ」
アデルが前もって連絡をしていたこともあり、滞りなく村人達はデザイアを受け入れるだろう。となれば、やはりデザイアたち自身の問題だ。ノウブルを怯え、自分に対する評価が低い元奴隷。その心をどう切り替えていくか。
「シャンバラは常春の国だった。神が滅んだ事で他国と同様気候の変化が現れた。そしてじきに初めての冬が訪れる。
知識の乏しい状態だ、当然冬を越せぬ者も出るだろう」
テオドールが語るのは、ニルヴァンを含めたシャンバラ地域の問題だ。聖櫃に頼っていた彼らが越冬できるとは思えない。常春の楽園はもうないのだ。
「そこで諸君らが役立つことになる。縫製を行い、服や防寒具の準備を行ってほしいのだ。
ミシン針の作製や本格的な足踏みミシンを作って、それ自体を産業としてシャンバラ中に広げてほしい」
テオドールは技術面から彼らの必要性を語る。ヘルメリアで培った機械作製技術が、ここでは宝となるのだと。
「領主たるワシが保証する! この者らは必ずや、良き友となりえることを!」
シノピリカはデザイア達が挨拶する前に近隣の村人達にそう宣言していた。現ニルヴァン領主の保証、というのはかなり大きい。この土地のことを考えて行動している人が保証するのなら、その眼鏡にかなった人材なのだと受け入れられるからだ。
「皆苦しい時じゃ。隣人を助ける余裕など無い。じゃがいずれ必ず、情けが還ってくる日が訪れる!」
苦しい時に助け合う事。その恩自体が財産になる。そうして助け合うことで恩が報いとなって帰ってくる。シノピリカの熱弁は、秋を迎えるシャンバラの民の心に強く残った。
「今や貴様等は人間だ。自分達の為に働き飯を作り自分達で食う人間だ。堂々としてろと迄は言わんが、怯える必要がない事位は覚えて置け」
引率についてきたツボミはデザイア達に告げる。かつてはノウブルに『買われた』亜人達。その時受けた心と体の傷は様々だろう。だがそれはもう過去のものだ。今はこうして同じ大地に立つ同じ存在なのだ。
「今すぐに慣れろとは言わん。根治に時間がかかることは解っている。気長にやればいい」
傷は簡単に癒えない。その事をツボミはよく理解していた。自然に任せてゆっくり癒すしかない。他人に出来る事はその補助だ。環境を整え、躓きそうになったらそっと支える。後は自分達で立ち上がって歩き出すのを待つだけ。ツボミもその未来を信じていた。
●
挨拶や復興のはざまに、自由騎士達は様々な技術をデザイア達に教えていた。
「このシャンバラに住むヨウセイ特製のリンゴ酒の製造法だ」
オルパが教えたのは、リンゴ酒の作り方だ。熟した林檎を外気に晒してさらに熟成させ、果汁を絞って樽に詰める。果肉を取り除きながら果汁だけをさらに熟成させる。そうして作り出される透き通ったリンゴ酒だ。
「熟成までは3ヶ月ぐらいか。もう少し時間をかければ、より味わいがあるものが出来るぜ」
樽の作り方や果肉の取り除き方。作るための道具かややり方までを身振り手振りで教えていく。苦労もあるがそうして生まれたリンゴ酒は祭りの時に振舞われて人々を笑顔に導くのだ。
「わたしは小物やアクセサリーの作り方を教えますね」
ティルダは加工で余った針金等をもってきて、布で磨く。その後に円を描くように曲げながら一つの形を生み出していく。出来たのは小さなワイヤーバスケット。その中に綺麗な石を入れれば、それだけでインテリアになる。
「修理した家にこういうものがあれば、仕事を終えて帰ってきたときに心が安らぎますよ」
言ってティルダはワイヤーを使って様々な形のワイヤーアートを作り出していく。壁にかける看板系の者や、机の上に置く小物系。アイデア一つで様々なものを生み出せる。そういった遊びが、心の余裕を生むのだ。
「錬金術は危ないし……あとは料理ぐらいかな」
頭を掻きながらウィリアムは鍋を用意する。栄養は生きる上で最も重要なことだ。何をするにせよ、飢えてしまえば動く気力がなくなる。簡単に作れてお腹が膨れる料理。そのレシピをいくつか頭の中に浮かべ、書き記していく。
「シチューと粉物。この辺りかな」
野菜や動物の骨を煮込んでダシを取った簡素なシチュー。小麦や大麦を粉にして焼いたり茹でたりする料理。味付けなどは好みでいい。特殊な技術がいらない料理を教えておけば、何かあった時に飢えて倒れるという事はないはずだ。
「俺は生きていく上で重要な事を教えよう。――俺が知る限りのイ・ラプセルにおける可愛い子いる店の情報を!」
ウェルスはイ・ラプセル首都サンクディゼールを始めとした主要都市の地図を広げる。そこについた赤丸と、念写した写真。その内容にデザイアの男性陣はうなりを上げた。あと数字や記号がいくつか書かれてある。
「この数字はケモノ率を示している。耳だけのケモノビト、顔や体の一部がケモノ、8割ケモノと言った所だ。ソラビトは羽の形と場所だな。ミズビトはウロコ率とその場所になる。おおっと、マザリモノは別紙参照だな。リスト化するには個性がばらばら過ぎる」
テキパキと内容を説明するウェルス。その細かなレポートは入念な調査と情報収集の賜物だ。いや、何の商売の話とかは言わないが。マギアスティームは全年齢!
「落ち着いたら本国に遊びに来いよ。いい店紹介するぜ。
もう俺たちは家族(ファミリー)みたいなもんだからな!」
●
ある程度村の復興が軌道に乗ったことを確認し、自由騎士達は村を出立する準備を始める。ここから先は彼らの自立心を促すためにも、任せた方がいいだろう。定期的な見回りは必要だろうが、過剰な保護は妨げとなる。
「で、村の名前は決まったか?」
ツボミの問いかけに、デザイア達は作っておいた村の看板を掲げる。
『ようこそ! フリーグラウンドへ!』
自由への地盤。旅立つための大地。
そう名付けられた村の繁栄は、まだ始まったばかりだ――
「デ、デザイアの方々の新しい村がニルヴァンに出来るのですね……!」
緊張した面持ちで『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は拳を握る。ヘルメリアで奴隷として虐げられていた亜人達。彼らが新しい生活を開拓するのだ。関わった者として、喜びを感じずにはいられない。
「ウム。力仕事なら任せろー!」
機械の腕をぐっと突き上げ『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は声をあげる。自ら力仕事をかって出るアグレッシブ溢れるニルヴァン領主である。適材適所ともいえるが、他にやるべきことがあることも理解している。
「最初のあいさつは重要だな。事情は知っているとはいえ、しくじるわけにはいかない」
今回の提案を発起した『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が大きく頷く。ミトラース消滅後のシャンバラ地域は黒鉄槌騎士団と言う懸念こそあるが、概ねイ・ラプセルに好意的だ。とはいえ、礼節を欠くわけにはいかない。
「事前連絡は済ませてある。後はスケジュールの調整だな」
先に近隣の村々を回っていた『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が合流し、報告する。異国の者と新旧領主。それらが訪問するとなると何事かと混乱を受けかねない。その懸念を取り除くために、アデルは前もって連絡を行っていた。
「事前にサンプルが用意できたのは僥倖だな」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はデザイアの人達が作った鍛冶の品物を見ていた。鍬や鋤の先端と言った簡素なモノだが、それでもあるとないとでは大違いだ。ツボミに鍛冶の知識はないが、土を耕すのに十分な物だという事は理解できる。
「土地は大分荒れているが……一から切り開くよりはマシだな!」
生い茂る草を見ながら『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)は無理やり自分を納得させるように頷いた。やるべきことは多いが、それでもゼロからのスタートよりはずっといい。脳内でスケジュールを展開し、時間を計算する。
「元気な草を刈るのは気が引けるけどな」
言って苦笑する『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。草木の声が聞けるヨウセイならではの悩みである。とはいえ、これも自然の摂理。やり過ぎなければ自然も許してくれるだろう。ヒトもまた、この自然の一部なのだから。
「そうだな。先ずは寝泊まりする場所か」
数年間手入れされていない家々を見てウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はため息をつく。自由騎士含めて三十人近くが寝泊まりできる場所となると、それなりの数になる。冬でなくてよかったぜ、と呟き作業に取り掛かる。
「あの……いいんでしょうか。こんな広くていい所に住んで」
村についたデザイア達の一言は、差異こそあれど概ねこんな感じだった。狭い部屋にすし詰め状態で生活していた彼らにとって、広々とした空間は贅沢な環境だった。
「ああ。むしろ大助かりだ。むしろ胸を張ってくれ」
この村作りのテストケースが上手くいけば、それを基点に多くのデザイア達をこちらに迎え入れる可能性が高まる。そうなれば農耕技術不足のシャンバラに、新たな風を導入することが出来るだろう。
かくして、デザイア達の新たな村づくりが始まるのであった。
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「あ、そうだ。村の名前付けろ貴様ら。貴様等の村だ。貴様等が考え、貴様等で決めよ」
作業を始める前にツボミがデザイア達にそんな題材を出した。ニルヴァンデザイア村はあくまで仮の名前だ。村の名前を自分達でつけることで、初めて自立が成立するといえよう。
スケジュール的に先ずは村の整地から始まる。住む場所の確保、井戸などのライフライン確保、道などの動線の整地、やることは多い、
「よっしゃあ、気合いを入れよー!」
率先して井戸掘りを行ったのはシノピリカだ。持ち前のパワーを生かし、井戸の周りにある瓦礫をどけていく。現領主を働かせるのは如何なものか、とデザイアの人達が意見する気も起きぬほどの勢いである。
「ふむ。削岩の機械はそういう感じなのか。
この様子を近くの人に見てもらうのもいいやもしれんのう。人出の供出と、デザイアの技術供与。これすなわちウィンウィンじゃ。機械もウィンウィン言っとるし!」
言ってシノピリカは大笑いする。渾身の領主ジョーク。体を動かしながら笑いを取ることでなごませることも忘れない。心技体全てにおいて民の為にあるのが領主と言えよう。
「機械もウィンウィン言っとるし!」
反応が薄いので、もう一回繰り返した。きんちょうをとくのはたいへんなんだなぁ。
「この家がよさそうだな」
村を見て回ったウェルスが目につけたのは、村中央にあった大きな家だ。おそらく村長のような村長が住んでいただろう家で、緊急時に備えての倉庫や人が住むスペースがある。作りもしっかりしており、補修工事さえしっかりすれば仮宿にはなりそうだ。
「街に砦に、そして村か。なんでもこなすよな、自由騎士は」
むしろ嬉しそうに呟くウェルス。戦争ばかりでは気が滅入る。民を守るという意味では、これも国防騎士の仕事だった。デザイアの人達に指示しながら、図面にそって修理をしていく。このままいけば、夕方にはどうにかなりそうだ。
「草を刈り、畑を耕し、水路の確保か。やはり農耕用機械の作製を先にした方がいいな」
やることを紙にまとめたテオドールは、人手不足解消が問題だと結論付ける。井戸掘りや草刈りなどは今の人数で事足りるが、土を耕したり水を引き込むとなれば容易ではない。それようの機械を作り、マンパワーを増すことが先決だ。
「流石に手慣れたものだな。完成までそれだけかかるという事は……」
機械作製を行っているデザイアの様子を見に行くテオドール。既に図面は書き終え、作成段階に移っている。機械完成の予定日を聞き、頭の中で計画を練り直すテオドール。悪くないスケジュールに、思わず笑みが浮かぶ。
「私は草刈りをするとしよう」
スコップを手にウィリアムは村の敷地を見る。獣道すら存在しない村の姿を見て気が折れそうになるが、何とかやる気を出して腕をまくる。こういったフィールドワークスも研究になる。レポート名は『効率の良い開拓計画』あたりか。
「村の入り口と住む場所を繋ぐ道から作って、取り除いた草は家畜の飼料に。そうなると家畜の飼育場所も必要か」
体を動かしながら、村の産業のことを考えるウィリアム。畑を耕し、鉄を掘るだけではお腹は満ちない。家畜などを飼い、栄養を補給することも大事だ。やることが決まれば次はどうするか。考えるのは研究者の努め。自然と計画が立ち上がっていく。
「皆さーん、御飯ですよー」
作業に熱が入ったころにティルダが食事を持ってきた。掃除や荷物運びなどをこなしながら作っていたのだ。人数が人数なだけに大きな鍋で煮込むシチュー系になってしまったが、栄養は満点だ。疲れた体を癒すには十分な食事と言えよう。
「水分補給は忘れないでくださいね。あとおやつ……いえ栄養補給も大事ですね」
井戸で出た水をろ過した水を用意しながらティルダは付け加える。秋になって涼しくなってきたとはいえ、まだ陽気は残っている。肉体労働をするうちに汗だくになっていることもある。あとおやつは……うん、重要だよね!
「めまいがする前に自己申告だ。我慢はするな。お前達はもう労働を強要される身じゃないんだからな」
一人一人の顔を見ながらツボミが口を開く。デザイア達はもう奴隷ではない。納期優先で体を壊されては意味がないのだ。彼らが生活するための村で、彼らの身体を壊してしまっては本末転倒だ。
「まあそうなったら医学の実地訓練だ。そうならない事を祈っておくが、怪我と病気ばかりはいつ起きても仕方ないからな」
言って笑みを浮かべツボミ。細心の注意を払おうが、どれだけ道具を用意しようが、怪我をするときは怪我をする。医者が不要になる時代はおそらくなくならないだろう。それは幾多の治療現場を見てきたツボミが一番よくわかっている。
「運搬用の荷馬車と厩舎が要るな。この村で加工した物を運ぶ用だ」
鍜治場設立予定の建物近くで、スペースの確認をするアデル。この村で作りだした製品を他の村に運ぶための流通経路を想像していた。鉄鉱石を採掘して作ったものを売る。それがこの村の収入源になる事を考えれば、その効率化は必然だ。
「後は念のために狼煙台が欲しい。火急の際は、これで自由騎士に知らせてくれ。必ず駆けつける」
ニルヴァンの昨今の事情を鑑みて、アデルが建築物に追加する。不要となるなら問題はない。だが万が一の可能性は否定できない。幸いにしてデザイア達はそれを作り出す技術を有している。
「良し。今日の作業はここまでだ!」
汗をぬぐい、オルパが作業終了を告げる。日が沈む前に帰宅を促し、ランプに火を点けた。日が落ちれば周囲は真っ暗になる。そうなる前に明かりを用意しておかなくては。そう習慣づけることも、大事な事なのだ。
「こうみえて、アーティストなんだぜ?」
明かりの中、オルパのハープが鳴り響く。デザイアを歓迎するための歌だ。艱難辛苦を乗り越えて、この土地までやってきたデザイア。その未来に待つ者は何か。明るくまとめるオルパの歌に、デザイア達は拍手で感動を伝えた。
明日も早い。自由騎士とデザイア達は明日に備えるために、床につく。
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ある程度村の整備が整った後に、周囲の村に挨拶周りとなった。
「――という事だ。詳しい話は、元ニルヴァン領主のテオドールと現領主のシノピリカらがやってくるから、彼らから聞いてくれ。何、悪い話じゃないから安心しろ」
アデルが前もって連絡をしていたこともあり、滞りなく村人達はデザイアを受け入れるだろう。となれば、やはりデザイアたち自身の問題だ。ノウブルを怯え、自分に対する評価が低い元奴隷。その心をどう切り替えていくか。
「シャンバラは常春の国だった。神が滅んだ事で他国と同様気候の変化が現れた。そしてじきに初めての冬が訪れる。
知識の乏しい状態だ、当然冬を越せぬ者も出るだろう」
テオドールが語るのは、ニルヴァンを含めたシャンバラ地域の問題だ。聖櫃に頼っていた彼らが越冬できるとは思えない。常春の楽園はもうないのだ。
「そこで諸君らが役立つことになる。縫製を行い、服や防寒具の準備を行ってほしいのだ。
ミシン針の作製や本格的な足踏みミシンを作って、それ自体を産業としてシャンバラ中に広げてほしい」
テオドールは技術面から彼らの必要性を語る。ヘルメリアで培った機械作製技術が、ここでは宝となるのだと。
「領主たるワシが保証する! この者らは必ずや、良き友となりえることを!」
シノピリカはデザイア達が挨拶する前に近隣の村人達にそう宣言していた。現ニルヴァン領主の保証、というのはかなり大きい。この土地のことを考えて行動している人が保証するのなら、その眼鏡にかなった人材なのだと受け入れられるからだ。
「皆苦しい時じゃ。隣人を助ける余裕など無い。じゃがいずれ必ず、情けが還ってくる日が訪れる!」
苦しい時に助け合う事。その恩自体が財産になる。そうして助け合うことで恩が報いとなって帰ってくる。シノピリカの熱弁は、秋を迎えるシャンバラの民の心に強く残った。
「今や貴様等は人間だ。自分達の為に働き飯を作り自分達で食う人間だ。堂々としてろと迄は言わんが、怯える必要がない事位は覚えて置け」
引率についてきたツボミはデザイア達に告げる。かつてはノウブルに『買われた』亜人達。その時受けた心と体の傷は様々だろう。だがそれはもう過去のものだ。今はこうして同じ大地に立つ同じ存在なのだ。
「今すぐに慣れろとは言わん。根治に時間がかかることは解っている。気長にやればいい」
傷は簡単に癒えない。その事をツボミはよく理解していた。自然に任せてゆっくり癒すしかない。他人に出来る事はその補助だ。環境を整え、躓きそうになったらそっと支える。後は自分達で立ち上がって歩き出すのを待つだけ。ツボミもその未来を信じていた。
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挨拶や復興のはざまに、自由騎士達は様々な技術をデザイア達に教えていた。
「このシャンバラに住むヨウセイ特製のリンゴ酒の製造法だ」
オルパが教えたのは、リンゴ酒の作り方だ。熟した林檎を外気に晒してさらに熟成させ、果汁を絞って樽に詰める。果肉を取り除きながら果汁だけをさらに熟成させる。そうして作り出される透き通ったリンゴ酒だ。
「熟成までは3ヶ月ぐらいか。もう少し時間をかければ、より味わいがあるものが出来るぜ」
樽の作り方や果肉の取り除き方。作るための道具かややり方までを身振り手振りで教えていく。苦労もあるがそうして生まれたリンゴ酒は祭りの時に振舞われて人々を笑顔に導くのだ。
「わたしは小物やアクセサリーの作り方を教えますね」
ティルダは加工で余った針金等をもってきて、布で磨く。その後に円を描くように曲げながら一つの形を生み出していく。出来たのは小さなワイヤーバスケット。その中に綺麗な石を入れれば、それだけでインテリアになる。
「修理した家にこういうものがあれば、仕事を終えて帰ってきたときに心が安らぎますよ」
言ってティルダはワイヤーを使って様々な形のワイヤーアートを作り出していく。壁にかける看板系の者や、机の上に置く小物系。アイデア一つで様々なものを生み出せる。そういった遊びが、心の余裕を生むのだ。
「錬金術は危ないし……あとは料理ぐらいかな」
頭を掻きながらウィリアムは鍋を用意する。栄養は生きる上で最も重要なことだ。何をするにせよ、飢えてしまえば動く気力がなくなる。簡単に作れてお腹が膨れる料理。そのレシピをいくつか頭の中に浮かべ、書き記していく。
「シチューと粉物。この辺りかな」
野菜や動物の骨を煮込んでダシを取った簡素なシチュー。小麦や大麦を粉にして焼いたり茹でたりする料理。味付けなどは好みでいい。特殊な技術がいらない料理を教えておけば、何かあった時に飢えて倒れるという事はないはずだ。
「俺は生きていく上で重要な事を教えよう。――俺が知る限りのイ・ラプセルにおける可愛い子いる店の情報を!」
ウェルスはイ・ラプセル首都サンクディゼールを始めとした主要都市の地図を広げる。そこについた赤丸と、念写した写真。その内容にデザイアの男性陣はうなりを上げた。あと数字や記号がいくつか書かれてある。
「この数字はケモノ率を示している。耳だけのケモノビト、顔や体の一部がケモノ、8割ケモノと言った所だ。ソラビトは羽の形と場所だな。ミズビトはウロコ率とその場所になる。おおっと、マザリモノは別紙参照だな。リスト化するには個性がばらばら過ぎる」
テキパキと内容を説明するウェルス。その細かなレポートは入念な調査と情報収集の賜物だ。いや、何の商売の話とかは言わないが。マギアスティームは全年齢!
「落ち着いたら本国に遊びに来いよ。いい店紹介するぜ。
もう俺たちは家族(ファミリー)みたいなもんだからな!」
●
ある程度村の復興が軌道に乗ったことを確認し、自由騎士達は村を出立する準備を始める。ここから先は彼らの自立心を促すためにも、任せた方がいいだろう。定期的な見回りは必要だろうが、過剰な保護は妨げとなる。
「で、村の名前は決まったか?」
ツボミの問いかけに、デザイア達は作っておいた村の看板を掲げる。
『ようこそ! フリーグラウンドへ!』
自由への地盤。旅立つための大地。
そう名付けられた村の繁栄は、まだ始まったばかりだ――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
なまえ……ニルヴァンデザイア村。略してルヴァイア村でどうですか。センスないですか、はい。
以上のような結果になりました。
皆様のアイデアを元に、村は発展していきます。様々なモノづくりを基盤とした村は、少しずつニルヴァンを変えていくでしょう。
MVPはデザイア達にいらん宿題(褒め言葉)を出してくれた非時香様に。
ええ、デザイア達の心情とかネーミングセンスとかを想像するのに一苦労しましたとも。
それではまた、イ・ラプセルで。
なまえ……ニルヴァンデザイア村。略してルヴァイア村でどうですか。センスないですか、はい。
以上のような結果になりました。
皆様のアイデアを元に、村は発展していきます。様々なモノづくりを基盤とした村は、少しずつニルヴァンを変えていくでしょう。
MVPはデザイア達にいらん宿題(褒め言葉)を出してくれた非時香様に。
ええ、デザイア達の心情とかネーミングセンスとかを想像するのに一苦労しましたとも。
それではまた、イ・ラプセルで。
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