MagiaSteam
Dealing! 戦後復興始めます



●ブレインストーミングより
「近く制圧する予定のシャンバラ領地は聖櫃ないし停止する事になるだろう。そのため、シャンバラの一般国民が困窮しない道は模索したい。
 聖櫃の恩恵に頼っていたのは自業自得と言えばそうだが、ワタシは犠牲は最小限にしたい」

●鍛冶と鉱山
 ミトラース消滅後、元シャンバラ民の在り方は大きく揺れる。困惑する者、占領された他国に翻弄される者、いまだ事実を受け入れられない者、受け入れた者。
 ただその混乱を収めるより先に、食料問題という事実があった。今までシャンバラの農耕は聖櫃による自然コントロールに頼っていた。聖櫃がなくなったシャンバラの農耕技術は、お世辞にも高いとはいえない。ただ種をまけば芽が出る、なんて都合のいいものではないのだ。
 当然食料は無限ではない。備蓄された量はそれなりにあり、すぐに飢餓状態になるわけではないが、いつかは尽きる。それは誰もが分かっている事だ。その事実から目を背けるわけにはいかない。
 何時か尽きる食料の不安を解放する方法はイ・ラプセルから食料を与える事――ではない。それは一時的な緊急対応にはなるが、解決策ではない。働かざるもの食うべからず。人として生き、そして生活するのなら働かなくてはいけないのだ。いつまでもおんぶだっこでは共倒れしてしまう。
 何名かの自由騎士もそのことを懸念しており、それを受けていたイ・ラプセル側の対応も迅速なものだった。様々な議論を重ね、商取引の地盤は用意済みである。
 解決策として与えられたのはグレイタス小管区およびムートリアス小管区に存在する鉱山と製鉄技術で生産された物を、イ・ラプセルで買い取るという方法だった。そうやって経済を回し、活力を取り戻していこうというものだ。
 さて、ここで問題が生じる。
 シャンバラは魔導国家である。もう少し言えば、蒸気技術を忌み嫌っていた。つまり、武器の技術レベルはお世辞にも高いとは言えないのだ。銃に至っては旧式でライフリング技術があるかどうかが怪しいほどである。作製技術はあるが、知識がない状態だ。
 アイデアさえ出せばその通りに作れるのだろうが、その発想が無い。
 逆に言えば、アイデアを与えればいいのである。だがイ・ラプセルの技術屋が教えに行くのも問題がある。他国の者から上から目線で指導されて、気持ちよくその案を受け入れられる者はそういない。経緯上仕方ないが、軋轢はできるだけないに越したことはない。
 ならアイデアを出すのが実際に武器を使う顧客の立場なら?

●自由騎士
「そういうわけで、ネタ出しよろしく」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は集まった自由騎士達にそう言って去ろうとする。もう少しきちんと説明しろ、と言われて渋々言葉を続けた。
「この間の闘いでイ・ラプセル領となったシャンバラの戦後復興だね。そこに居る鍛冶屋さんに作ってほしい武器の説明をしてほしいんだ。
 ただしあまりにも構造が難しい武器はアウト。彼ら、蒸気機関とか不慣れなんで」
 せいぜい銃が限界だ。だがシャンバラの鍛冶屋ならではの技術力もある。
「魔力を込めた武器とかを作れる鍛冶屋がいるようだよ。元奴隷の中にもそういった場所で従事していた人もいるし」
 炎や氷、毒などの魔術的な効果を武器に付与する技術。それを大量生産し、自由騎士に使えるようにすることが出来るという。
「そんなわけで、改めてよろしく。
 俺? 落ち込んでる女の子を元気づけてくるから。これも戦後復興だしね」
 ああ、ナンパか。呆れる自由騎士に軽く手を振るヨアヒム。
 数分後『姉御』に瓦礫除去の為に連行されるヨアヒムを見ながら、自由騎士達はどうするかと考えていた。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
国力増強
担当ST
どくどく
■成功条件
1.新しい武器のアイデアを出す
 どくどくです。
 この依頼は『ブレインストーミングスペース#1 ヨーゼフ・アーレント(CL3000512) 2019年03月11日(月) 02:11:56 』から発生しました。
 名前のある方が参加することを強要しているものではありません。参加を確定するものでもありません。

●説明っ!
 食料問題が予測されるシャンバラ。何はなくともお金を稼いで食料を買わなくてはいけません。
 そこに活気を戻す為に、鍛冶と製鉄にテコ入れします。具体的には自由騎士が彼らの作った武器を購入し、経済を回していこうと言うものです。そうして得たお金で食料を買い、生計を取り戻していこうと言う計画です。
 参加された皆様には『こういう武器が欲しい』という希望を(キャラの立場で)シャンバラに残った人たちに説明してもらいます。
 ぶっちゃけ『(PLが)【フリーズ】系の武器が欲しいから』『命中上げたいんで』というのは駄目です。『自分(PC)は』『こういう理由で』『こういう武器を作ってほしい』と言った感じで説明してください。その言葉に感銘を受ければ、シャンバラの鍛冶屋も動いてくれます。また、技能があれば説明の精度にプラス補正がつきます。
 OPでもヨアヒムが言っていますが、蒸気機関が関与した物は作れません。歯車が限度。銃もライフリング技術がギリギリです。
 出来た武器は最大三種類がショップに並ぶ予定です。

●武器につけられる要素
 シャンバラの鍛冶屋は炎や冷気と言った魔術要素を付与できます。強さは1まで。ですが付与を行った分、武器としての精度が落ちることになります。
【ウィーク1】【スロウ1】【グラビティ1】:近距離系しか作れません。
【バーン1】【ポイズン1】:速度が減少します。
【フリーズ1】【カース1】:命中が減少します。

●場所情報
 ムートリアス小管区城内。解放された奴隷達や管区に残った人達は、いったんここで生活しています。食料の備蓄は現状問題ありません。
 鍛冶などの道具は一通りそろっています。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
3個  3個  1個  1個
11モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
6/8
公開日
2019年05月11日

†メイン参加者 6人†




 ムートリアス小管区城内――
 かつてこの小管区をめぐって隠密侵入戦を仕掛けたイ・ラプセル。堅牢な守りを誇る城だが、今は解放されて住居なき人達の仮宿となっている。他の管区を追われたシャンバラ民もその噂を聞き入れ、一時的な移民受け入れ所となっていた。
 移民問題は(別シナリオか他STがやるかもしれないので)さておき――
「始めまして。ワタシはヨーゼフ・アーレントと言う。今日はよろしく頼むよ」
 一礼してシャンバラの鍛冶屋に歩み出るヨーゼフ・アーレント(CL3000512)。イ・ラプセルの政治家として恥じぬ振る舞いを見せなければと胸を張る。シャンバラの国の在り方には否定的だが、その他には罪はない。彼らとうまくやっていければ良いのだが。
(権能がなくなったとはいえ、ワタシたちと彼らの間に遺恨が無いとは言えない。その払拭もふくめて今回のことを上手く行かせなければな)
 ヨーゼフは特別強い愛国心があるわけではない。彼の信念はあくまで互いの幸せを求めることだ。戦争という事もあり国を滅ぼしたが、負けた国を蔑ろにするつもりはなかった。
「テオドール・ベルヴァルドだ。貴方達の技術、期待しています」
 言って頭を下げる『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。テオドールは帰属というよりはマギアスとしてこの場に立っている。魔法的な見地と実際に戦う魔術師として、どのような武器が必要の意見を述べる事が出来れば。
(とはいえ、我々魔術師が武器を必要とするときは前衛が崩壊している時。その時を想定しての武器となると、さて)
 テオドールは純粋な後衛型魔術師だ。その立場であるなら武器はあまり使用しない。逆に言えば武器を使用する状況で必要な事は何かを考えなければならないのだ。
「魔法付与できる鍛冶……面白そうね!」
 自分の知らない技術に興味津々とばかりに『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)は目を光らせる――もっともその目はフードの奥に隠れて見えないのだが。ともあれこれを機会に色々聞いてみようとワクワクしていた。
(うーん。イ・ラプセルの職人と連携が取れるなら当てがあったんだけど……今回は流石に無理よね。軋轢は少ない方がいいって言ってたし)
 顎に指を当ててきゐこはアイデアの一つを放棄する。今回の主役はシャンバラの鍛冶屋であって、こちらはアドバイザーなのだ。経済的にも利権が分かれるような事は避けた方がいい。
「こんにちはぁ! あたしクイニィー! よろしくお願いしまーす!」
 元気全面で挨拶をする『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)。ミトラース亡き今、シャンバラの人達はミトラースへの忠誠がない。とはいえ戦争相手への遺恨が無いともいえないのは確かだ。友好的にするに越したことはない。
(まぁ、ついこの間まで戦争してた相手だしねぇ。ヘソ曲げられて作らないなんて事になったら困っちゃうし、仕方がないから持ち上げておくか)
 そんな打算的な所はご愛敬。ともあれ問題なく使える武器を作ってもらわなくてはいけないのだ。その上で自分の趣味が加味出来れば恩の字だ。
「カノンも欲しい武器があるし、上手くいけばシャンバラの経済も活性化するなら一石二鳥だよね」
 うん、と頷く『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。事、現在のシャンバラに至っては食料不足が予想されているのだ。お金をため込んでおくに越したことはない。通商連に借りを作ると言うのは正直ぞっとしない。
(格闘武器って手が主体ばかりだもんね。そりゃ手の方が使いやすいんだから仕方ないんだけどさ)
 軽く手を動かしながらカノンが眉にしわを寄せる。蹴り技は重心移動が激しいため、連続攻撃につなげにくい難点がある。だがそれを考慮しても有用な蹴り技があるのも事実だ。それを生かせる武器が出来れば。
「とりあえず設計図はこっちで用意しておくぜ」
 羊皮紙を束ねて用意する『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。口頭で説明するよりは、目で見れる図があれば理解度も高まる。齟齬をできるだけ少なくするためだ。
(今活躍している自由騎士には愛用の武器があるが、それ以外にも需要があるかもしれないしな。市場を広く取れるかどうかだな)
 最前線で動く自由騎士の武器を思い出しながらウェルスは頷く。状況に応じて武器を変えるものでなければ、基本的に手武器は決まっている。そういう意味では自由騎士用に対する商売としては需要は少ないが、宣伝の場所にはなる。後はどう展開するかだ。
「宜しくお願いします」
 自由騎士の挨拶を受けて、頭を下げる鍛冶屋たち。彼らもこのまま自分の技術が使われず腐っていくことに我慢できなかったのだろう。今回の申し出に二つ返事で応じてくれた。
 見慣れた鍛冶道具と、見慣れない鍛冶道具。そこに用意された簡易の会議場所。自由騎士と元シャンバラ民は、そこで頭を突き合わせる事となった。


「術具扱いの暗殺針が欲しいです!」
 開始一番挙手をしたのはクイニィーだ。目をらんらんと輝かして、意見を出す。
「魔導力を練り込んでオーラを視覚化して、見た目でヤバいって相手に思わせるような術具的な物になると更にいい感じだなぁ! まぁ、そのオーラ的なものはハッタリで充分なんだけど!」
 クイニィーの言葉を聞いて、鍛冶屋たちは眉を顰める。
「針だと暗器にしかならないなぁ」
「針っぽい術具は作れるけど、そうなると大きくなるし」
「毒を持たない昆虫が毒持ってますアピールで毒々しい色してたりするでしょ? そんな感じで!」
「まあ術具にするのは無理っぽいけど針ならそれほど難しくないからすぐにできるぞ」
「3~6本セットで指で挟んで片手3本同時投擲とかできるといいなぁ!」
 ここぞとばかりに要求するクイニィー。その熱を受けて鍛冶屋もどうしたものかと思案する。
「次はカノンだね! カノンはねー、蹴り技の威力を上げる武器があればいいなって思うんだよ」
 次に挙手したのはカノンだ。軽く足を蹴り上げながら、意見を述べる。
「格闘用の武器って基本的に腕に着けたり手に持ったりする物しかないんだよね、これみたいに。でもカノンが使う技には蹴り技もあるから」
「足用のプロテクターか硬いブーツ辺りか……。仕込みダガーがついたブーツとかもあるぞ」
「んー。どっちかっていうと鋼鉄製の脛当てとか鉄板入りの靴とかみたいな?
 あと格闘家はスピード命なので、相手の動きを遅くする魔術があるといいな」
「相手の動きを止めるのは重要だな」
 テオドールはカノンの言葉に頷くように首を縦に振る。
「我々が武器を必要とする事態とは、戦線が決壊した時だな。そういう時は前衛は既に倒れ、こちらも力尽きかけている事が多い。
 つまり撤退がよい場合や生き延びれば戦況を覆せる、起死回生の一手として提案する。弱体化や遅延効果がある武器があると望ましいだろう」
「俺は大砲が欲しいな。今の時代なら、船にも砦にも飛空艇にもどこだって欲しいから数も必要だろう」
 羊皮紙に絵をかきながらウェルスが説明を開始する。
「数をそろえれば兵の武器よりも目立つからな、威嚇や抑止力としても効果があるだろうぜ。
 それに、やっぱり国を攻めるとなると相手の国にある強力な兵器なりが出てくる。今までの戦いだって、できるなら大砲を担ぎたいシーンは何度もあったな」
「個人で扱える大砲なら難しくはないが、船に積む大砲となると時間がかかるぞ」
「確かになぁ。弾や火薬だって安くはないだろうし」
 鍛冶屋の言葉に同意するウェルス。船に積むレベルの砲となると、使用する鉄の量も多くなる。大量生産するにはもう少し大きな規模の工房が必要になるだろう。
(ついで言うとオラクルには矢避けの加護があるからなぁ。砲撃で破壊できそうなのは建築物破壊ぐらいか。……まあ『アイツ』もそれを分かって持ってるんだろうがな)
 仮想敵が他国のオラクル兵団であるのなら、砲撃による一斉射撃は効果が薄い。ある程度の距離まではオラクルに遠距離攻撃が当たらないからだ。
「ワタシが作って欲しい武器は、強い者を援護する武器だ。新兵用の武器と考えても良い」
 今まで議事録を書いていたヨーゼフが手をあげて、意見する。
「ワタシのような新兵は歴戦の戦士ほどの戦果はどうしても出せない。ならば彼らが効率的に動けるよう援護する武器がほしい。
 新兵ゆえに耐久力も乏しい。それ故遠距離攻撃可能な武器が望まれる」
「弓や銃といった武器か?」
「そうだな。あと付与する内容は敵の動きを鈍らせるものが好ましいな。マギアスのスキルでコキュートスというものがあるらしいね。それを参考にしてもらえるといいな」
「その魔術を見たければ、私が使ってあげるわ」
 言って胸を張るきゐこ。武器自体にこだわりはないが、魔術的な見地や技術には興味がある。
「私はお気に入りの武器があるからそっちはいいけど、防具が欲しいわね!
 体力が回復する鎧とか特殊攻撃に耐性がある服とかあると嬉しいわ!」
「防具か……。そっちは打たなくちゃいけない部分が多いからなぁ」
「自動回復魔術も……なあ」
 きゐこの言葉に歯切れ悪そうに返す鍛冶屋たち。鎧のパーツは各部位ごとに打たなければならず、数も多くて手間がかかるのだ。そしてその後の言葉――
(んー? よく分からないけどできないって明言しないのは何かあるってこと? それとも言いにくい事情があってできないってこと? 少し詳しく聞いてみた方がいいかも)
 声のニュアンスからそのどちらかだろうとあたりをつけるきゐこ。どちらにせよ、お互いの理解の為に聞いてみるのは悪くない事だ。
(それに他にも提案してみたいこともあるし)
 きゐこの瞳がきらーんと光る――もっとも、その目はフードに隠れて見えないのだが。


 ある程度の要望を出した後、
「一応の確認になるが魔力回復の武器や防具を作る事は可能だろうか?」
 テオドールが鍛冶屋たちに質問する。
「聖堂騎士団と戦った折、体力を回復する鎧を見かけた事はある。それとは別の形の付与になるのだろうが、これの実用化の糸口があるあろうか」
 テオドールの言葉に後衛で動いている魔術師組はうんうんと頷いた。高火力になればその分魔力消費も大きい。それを補う事が出来ればいいのだが。
「あれはアルス・マグナの魔力転換の応用だからなぁ」
「ミトラースさ……ミトラースが消滅した以上、その力もなくなったし」
 鍛冶屋達の言葉に自由騎士達はため息をついた。
 ミトラース消滅後、シャンバラで使用されていた魔導技術が使えなくなった。技術と言うよりは法則そのものが消失したのだ。
(アルス・マグナでの戦いの時、力を吸われたわ。その力がアルス・マグナの力になってたみたいね。聖櫃もヨウセイの生命を土地の力に変換してたわけだから……魔力を回復する鎧もその系列なのね。
 そう考えると聖霊門も片方の門でエネルギーに完全変換されて、もう片方の門で再構成されると言う形なのね……)
 実体験から推測するきゐこ。門の解析が上手くいったからよかったものの、少しでも理論を間違えていれば大事故が起きていたかもしれない。
「話は変わるけど、私は魔法効果を付与できるって、量産品よりも一品物向きな能力な気がするわ!」
 自分の武器を手にしてきゐこが話を切り出した。
「この武器はとある洞窟の内の古代遺跡で手に入れた武器で、現在だとロストテクノロジーかなと思ってるのだけど。
 こう言う物を復活させて作るのとか面白そうと思わないかしら?」
「古代遺跡かー」
「イ・ラプセルの、だよな」
「? そうだけど?」
 自前の杖を見せたきゐこに対して、鍛冶屋の反応は薄かった。
「その……アクアディーネの神様がいい悪いとかではないんだけど、シャンバラの技術はミトラースから分け与えられてたわけなんだ」
「端的に言えば『分からないことがあればミトラース様と大司教様に教えてもらえる』状態だったんだ。事、魔導に関しては」
「古代遺跡とか、ロストテクノロジーとかそういう感覚は少なくて。どっちかっていうと今ある技術を発展させる方に目が向いてたな」
 技術の途絶えとは、引継ぎの不備である。
 では引き継ぐ者が常に存在していれば? そしてその者が与える物事が常に尊敬され、皆が頼りにするものだったなら? 反発も継承不備もない永遠楽土の完成である。
(強いて言えば今こそがシャンバラの魔道技術欠損時期なのか。歴史の転換点を目の当たりにしているわけだな。ワタシたちは)
 成程、とヨーゼフは頷く。良くも悪くもミトラースに依存してきたシャンバラという国は、これから神なき道を歩まなくてはいけないのだ。楽な道ではないな、と肩をすくめた。
 そしてだからこそ生まれる技術もある。


「概ね、要望は出そろったようだな」
 議事録を書いていたヨーゼフがまとめに入る。いろいろ意見は出たが、すぐに実現可能な物として三案が挙げられた。
『毒術を刻んだ針』
『減速の魔を込めたブーツ』
『氷呪を打ち放つ砲』
「すべての要望は無理なんで、妥協点としてはこんな所だな」
「よし。図案を書くぞ。修正する所があれば言ってくれ」
 羊皮紙に念写するウェルス。その隣で鍛冶屋と自由騎士が構造を煮詰めていく。
「投擲可能! 投擲可能!」
「投げるとなると長さがなぁ。重心の問題で隠密性は――」
「ねえねえ。作業する処見てていい?」
「私も興味ある! 武器に付与するって初めて見るし!」
「そうだな。他国の採鉱冶金には興味がある。何かの土産話になるかもな」
「でしたら見ていきますか?」
 そんな様子を遠くから見るヨーゼフとウェルスがいた。
「出来る事なら諍いなくすべての人々が協力しあい良い未来を構築したい、と思っていたのですが……あの姿を見るとそれも可能なのかもと思えるよ。
 つい先月は戦争をしていたと思えないほどだ」
「まあな。だが今回偶々うまく言っただけかもしれないぜ。次にどこを攻めるかはまだ決まっていないが、そこの戦後処理は反発があるかもしれない。
 シャンバラだって皆が諸手を挙げて歓迎するかなんて――」
「だが、可能性は生まれた。今はそれでいいではないか」
 ヨーゼフの言葉に、ウェルスは肩をすくめてそれ以上の言葉を止めた。
 争いなく過ごせるのなら、それに越したことはないのだから――
 
 そしてムートリアスの鍛冶屋は総出で武器作成に取り掛かる。
 作っては修正、作っては修正を繰り返し、形になったのは数週間後。そこから大量生産に取り掛かる。
 神なきシャンバラの民が作った最初の魔道武器。それが自由騎士達の手に渡るころ。
 イ・ラプセルを取り囲む事情は、大きく変化しつつあるのであった――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
あ、防具作れてもよかったかも……まあいいや(OP提出数秒後の事)。

以上のような結果になりました。色々な意見があるなあ、と頷くばかりです。
そんなに文字数かからないと思ってましたが、あれよあれよとこの文字数。これもプレイングの熱のおかげでございます。
MVPはもっとも熱のこもった主張をしていただいたアルジェント様に。全要望を飲むことはできませんが、お気に入りの武器になれば幸いです。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済