MagiaSteam
Island! 潮風と緑が薫るこの島で



●戦いの喧騒から離れて
「たまにはゆっくりとするのもいいだろう。泳ぐにはまだ早いかもしれないが、森林浴も悪くはない」
『ペストマスクの医者』サイラス・オーニッツ(nCL3000012)は、暑苦しそうな格好でそう言い放った。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常γ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.島の旅行を楽しむ
 どくどくです。
 ここらで一息ついておきましょう。

●説明っ!
 イ・ラプセルとシャンバラ間にある小さな島、ヘイガル。イ・ラプセルはそこを海路の中継点として確保し、施設を作りました。敵対的な動植物や幻想種がいないことは確認できています。
 島には民間施設も存在し、小さな村程度の賑わいとなっています。施設から少し歩けば海と森があり、人をあまり恐れない幻想種なども見受けられるとか。
 シャンバラとの戦争が終結して次の戦いに移る前に骨休めをしよう、という事でサイラスの招待された自由騎士達。気候も夏に向けて熱くなりつつある中、1泊2日(朝一出発→島に正午到着→次の日の昼に島を出て、夕刻に帰宅)の小旅行となりました。

●スポット紹介
 島にあるスポットの紹介です。行きたい場所をプレイングの冒頭、もしくはEXプレイングに記載してください。書かれた場所以外を冒険したい場合は、その旨を書いてください。概ね碌なことにはなりません、とだけ告げておきます。
 書かれていない場合は、プレイングから判断して適当に割り振ります。

・施設『泉の息吹』
 海岸沿いに作られた施設です。船を止める港と、10件ほどの建物からなっています。宿泊施設や食事処といった一般的な店や、釣り具や森歩きの装備を売る店まであります。

・海
 穏やかな海です。イ・ラプセル関係者以外はいません。少し離れれば釣りもできます。
 ミズビトなら海に潜ることもできるでしょう。運がよければ水棲の幻想種『人魚』に会えるかもしれません。

・森
 広葉樹の森です。木漏れ日などがあり、明かりには困りません。澄んだ空気が特徴的で、鳥や小動物などが住んでいます。運がよければ森の小型幻想種『フェアリー』に会えるかもしれません。

●参加NPC
・サイラス・オーニッツ(nCL3000012):森で薬草を探しています。
・アミナ・ミゼット(nCL3000051):海で泳いでいます。
 などが参加します。関わらなければ基本空気です。また、上記以外の場所に呼び出す事も可能です。

人魚:下半身が魚の人型幻想種です。陸には上がれませんが、水中で遊ぶなら付き合ってくれます。綺麗なおねーさんからロリまでより取り見取りです。

フェアリー:体長30センチほどの半透明の羽根を持つ人型幻想種です。人間に慣れていることもあり、友好的です。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  1個  0個
19モル 
参加費
50LP
相談日数
8日
参加人数
31/∞
公開日
2019年06月19日

†メイン参加者 31人†

『Who are You?』
リグ・ティッカ(CL3000556)
『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『ペンスィエーリ・シグレーティ』
アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)
『アイドル』
秋篠 モカ(CL3000531)
『望郷のミンネザング』
キリ・カーレント(CL3000547)
『おもてなしの和菓子職人』
シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)
『永遠のアクトゥール』
コール・シュプレ(CL3000584)


●海
「うーみーだー!」
「うみぃ!」
『元気爆発!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)とアミナ・ミゼット(nCL3000051)は叫びながら海に真っ直ぐに向かって走っていく。そのまま勢いを殺すことなく跳躍し、水柱が二つ水から立ち上がった。そして互いに水をかけ合う。
 カーミラが着ているのは去年の水着だ。成長期という事もあって、少しきつい。身長ではなく、胸周りが。
「アミナ、競泳しよう! あそこの岩まで!」
「あーし敗けないからね!」
 二人は睨み合い、同時に水に潜る。そのまま全身を大きく使い、岩場に向かって泳ぎ出す。着いたのはほぼ同時。二人は何も言わず、次の目的地に向かって泳ぎ出す。
「人魚に会うには海底まで潜らないといけないみたいですわね。ソラビトの私にはちょっと無理でしょうね」
 沖合で泳ぐ『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)。寄せては返す波を見ながら、そんなことを思う。豊かな森と綺麗な海。そこに住む幻想種達も友好的なヘイガル島。戦争の喧騒も忘れそうなほどの静かな島だ。
 そんなことを考えているレオンティーナの元に、散々泳いだアミナ達がやってくる。その泳ぎを見て、思わず声をかけてしまう。
「はじめまして。とても泳ぎがお上手なのですね」
「あざましー! ティナっちの水着、きゃわゆよ!」
 アミナの言葉が理解できないレオンティーナだが、褒められたことはなんとなく理解できた。軽く手を振って、ありがとうを伝える。
 アミナもそれが理解できたのか、満面の笑みを浮かべた。
「泳ぐ……キジンの身体でなければ、考慮に入れてたのありますが」
 遠泳する者達を見てフリオ・フルフラット(CL3000454)は惜しむように拳を握る。泳ぎを楽しみたかった……のではなく、水泳によって肉体を鍛えられない状況を惜しんでいるのだ。
「ヘルメリア侵攻を控えている、現在。大事を為す前の休息、重要であります。そしてその備えもまた、重要であります。
 すなわち! 休みながら備えることこそ最良、なのではないかと!」
 と言う信念の元、フリオは砂浜で鍛錬を行っていた。走り込み、素振り、型の確認。足場の悪い砂地で行うことで肉体に負担をかけ、より一層肉体を鍛えようと言う考えだ。そして濡れてもいいように水着着用である。
「是、日々修練!」
「たくさん動いた後は~、たくさん食べないといけませんよ~」
 間延びする声をあげて『まいどおおきに!』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)がフリオに声をかける。鉄板や炭などは既に用意済みだ。銛で取れってきたハーブも充分にある。それを一つずつ確認し、作業に入る。
 森に海にと食材はたくさんある。とってきた肉の皮をはいで血抜きをした後で適度な大きさに切る。魚もはらわたを抜いて焼きやすい形にナイフを入れた。お菓子を作るのとは違った手間だが、作業が形になっていく様はやはり楽しい者がある。
「お肉に~お野菜に~、新鮮な素材ほど、おいしいものはありませんわよ~」
「うるさいなぁ……。まあ些末些末」
 聞こえてくる声に眉を潜めながら『博学の君』アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)はごろりと木陰に横たわる。聞こえてくる波の声、風で擦れる葉の合唱、海鳥の鳴き声と仲間達の声。最後は海の音とは異なるけど、大自然の中にあっては些末事だ。
(普段は頭脳労働、自由騎士になってからは肉体労働ばかりで、こうして好きに過ごせる時間は少なくなった気がするなあ……)
 潮風を頬に感じながらアクアリスは物思いにふける。自由騎士発足から一年とちょっと。怒涛のように過ぎていく日々の中、心穏やかに過ごせた時期がどれだけあったことか。もしかしたらこれが最後になるかもしれない――
「止め止め。今日はのんびり海に身を任せよう」
 潮風が心地良く、浜辺を撫でていた。

 そんな浜辺から離れた海底では、
「~♪」
 海底で歌う『追憶の奏』ミスリィ・クォード(CL3000548)がいた。空気は泡となって海上に向かい、歌は音波となって海に響いていく。空気とは違う音の響き。それに驚きながら、ミスリィは歌い続ける。
「~~♪」
 そんなミスリィの声に合わせるように、別の歌声が聞こえてきた。下半身が魚の幻想種。人魚の歌声だ。その美しさに見とれながら、ミスリィは高々と声をあげて歌い続ける。その音にさらに人魚が引き寄せられ、舞うように泳ぎ出す。
(なんて幻想的……)
 色とりどりの鱗が舞う海底の音楽会。ミスリィは楽しそうに歌い続ける。

●泉の息吹
「このメニューの端から端まで全部頂戴!」
『泉の息吹』にある食堂。そこに腰掛けた『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は開口一番そう言い放った。面食らいながら確認するウェイターに無言で微笑んで返すカノン。その後、厨房は戦場となった。
「いただきまーす! わー、この味付けは初めて! この肉の食感もすごいや!」
 出てくるものは今日取れた魚介類と森の動物を使った料理だ。近くに菜園があったので、それも利用しているのだろう。特に珍しいわけではない料理だが、新鮮な味と丁寧な調理がカノンの舌鼓を打つ。
「ごちそうさまー! あー、食べた食べた。さて、腹ごしらえ終了!」
 デザートを食べ終え、満足そうな顔でカノンは微笑んだ。
「エールもういっぱーい!」
 その隣の席では『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)がジョッキ片手にエールを飲んでいた。つまみに出されたイカの和え物がエールの飲む賊度をさらに上げている。
「ぷはぁー! 青い空に白い雲、寄せるエメラルドグリーンの海に星の砂っ! 夏が近づいてきてるって感じがするわねー!
 はー、最高〜! ずっとこんな穏やかな日が続けばいいのに……」
 そこまで言って、ため息を吐くアンネリーザ。戦争はまだまだ続く。次にこうして楽しく酒が飲めるのはこれが最後かもしれない――
「エールおかわり―!」
 そんな気持ちを誤魔化すように、声を張り上げるアンネリーザであった。
「……理解し難いな」
 浜辺で亜人とノウブルが共に過ごすさまを見ながらライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)はため息を吐く。奴隷解放宣言から一年。未だにその光景になれることはない。注文したハーブティを飲みながら、本のページに意識を向ける。
「鬼はらぺこー。……およ?」
 そこに休憩にと帰ってきたアミナと目が合うライモンド。ライモンドも特に話すことはないとばかりに本に目を戻した。が、
「モンドっち、泳がないの? 本読んで楽しい?」
「非日常の中で普段と同じように本を読む。これを贅沢と言わず何だと言うのだ」
 アミナに話しかけられ、数秒は無視しようと思ったが、それも無礼かと思い答える。
「どんな本読んでるの? キュン死するコイバナ? 神対応な英雄モノ? ガチめな犬系男子モノ?」
「言っている意味は解らないが、これは礼儀作法の歴史が書かれたものだ。様々な場面での礼儀作法とその意味が事細かに書かれてある。たとえば――」
 ライモンドは説明を続ける。自由騎士に入ったノイマン派のトロイアの木馬。いずれ相対する予定の自由騎士と仲良くする理由はないのに。
 それを理解しながら、ライモンドは丁寧に言葉を重ねていた。

「おいしいものを【食べ隊】です!」
「よろしくお願いしますね」
「は、はい。その、初めてですけどお願いしますね」
『餓鬼』リグ・ティッカ(CL3000556)の敬礼の声に、ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)が頭を下げ、キリ・カーレント(CL3000547)が恥ずかし気に答える。
「時間は有限、さっそくごーごーです。先ずは何がおいしいのか聞きますのですよ。聞き込みは大事なのです」
 リグが先導するように泉の息吹の通りを歩きながら聞き込みを開始する。施設自体がそれほど大きくなかったこともあり、おおよその店は把握できた。後は二人に合わせてどう進むかを計算するだけだ。
「最初は魚介類です。じゅうじゅう焼いてるアツアツのお魚ですよ!」
 二人の腹具合と料理が出来るまでの時間を考えての焼き魚だ。貝類なども焼いており、量は確保できる。塩を振っただけの味付けだが、十分に美味しい。
「はふはふ……。おいしいです」
「あつ……っ、でもおいしい」
 勧められた料理を頑張って食べるキリ。人見知りを克服しようとして参加した【食べ隊】ツアー。最初はぎこちなかったキリだが、リグのポジティブな誘導とティルダの笑顔に引っ張られるように打ち解けていく。
「次は甘いものを食べませんか?」
 とティルダが別の店に誘導する。果物とそれを使って作られたお菓子の店。隠れ里にいた頃には食べたことのない味だった。魔術で十分に冷やされた果物は、甘さが閉じ込められたかのように凝縮され、口の中で甘さが一気に広がった。
「お菓子もいいですね。店主わかってるなって感じです」
「キリは、チョコミントがいい。……これも下さい、これも、これも……!」
「ふふ。わたしのと半分こしません?」
 和気藹々と【食べ隊】は店をはしごしていく。その際に、いくつかの食材を買いだめしていた。
「そろそろ行きましょう。準備もできているはずです」
 三人が向かうのは海岸。そこで集まっている仲間達の元に。
 笑顔が途絶えぬ【食べ隊】のツアーは、まだ終わらない。

●海 その二
「海じゃあああ!」
「この旅行期間、従者にアレコレ言われないのが素晴らしい!」
(え、えと……釣りってしたことないですけど……でも自由騎士の皆さんと仲良くなるチャンスですっ)
 釣り用の船を借りて『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)と『花より──』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)とリリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)の【釣り】三人は浜に出ていた。テンション高めのシノピリカとデボラ、そしてそのテンションに置いていかれそうなリリアナ。
「キジンは水中適性が低いからのぅ。なにぃ? 漁師用の水中用のキジンボディもある? まあワシのボディは低いという事で!」
 などと言いながらシノピリカは釣り糸に針を付ける。漁師の人達が怪我した用に錆にくくコーティングされたキジンボディもあるのだ。武人であるシノピリカは頑丈さを求めたから、そういう方向には興味がなかったようだ。
「そこをそうです。リリアナ様はどうですか?」
 慣れた手つきでデボラは釣り糸を付けて餌を付ける。昔家から飛び出したときに色々あったようである。ちょいちょいと釣竿を用意し、釣った魚を入れるようのバケツに水を入れた。
「ひゃああああ、虫は苦手です……。こっち使いますね」
 デボラが用意した釣竿につけられた虫を見て、リリアナは怯えるように別の竿を用意して、練り餌を付ける。シノピリカやデボラがの様子を見ながら、釣竿を振って糸を海に垂らした。釣りは初めてだけど、そつなくこなせたはずだ。
 静かに時が流れる。穏やかな波、穏やかな風、穏やかな日差し。三人は釣れるかどうかはよりも、この空気を楽しんでいた。
「そういえばお誘いして下さった方、サイラス・オーニッツ様でしたか。マスクで分かりにくいですが、それ相応の歳の方ですよね」
「む、デボラの白馬のおじさま願望が出たか。確かもうすぐ四〇に届くとかいっておったな」
「あ。そういう趣味なんですか? 王子様ではなく?」
「何ですかその名称!? ……そう言えばオーニッツ家は確か――ってシノピリカさん引いてますよ!?」
「ぬおおおおおお!? 結構大きい! 皆、手伝ってくれ!」
「は、はいっ!」
 その日の夕食に、魚料理が三皿追加されたと言う。

「やれやれ。男手が必要と聞いたが、ここまで大荷物になるとはな」
「予想よりも大掛かりだな。買い出しも含めるとかなりの量だぞ」
『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)と『砕けぬ盾』オスカー・バンベリー(CL3000332)がぼやきながら荷物を運ぶ。料理を焼く鉄板と金串。燃料用の材木、複数。調理用具や組み立て用の野外キット。そして食材と飲み物。ざっと数えただけでもこれだけだ。
「何を作ってるんだ?」
「着火用のフェザースティックを作っている。すぐに火を起こせるようにな」
 オスカーの問いにルークが答える。おれた枝の樹皮をはぎ、枝を割くようにナイフで削る。まるで鳥の羽根のような細かな形の木の枝が作り上げられる。
「これがあれば小さな火で着火が出来る」
「手慣れたものだな。さて、場所はあの岩場だったな」
 オスカーが見た岩場には、既に【焚火】の皆が待っていた。木の枠組を作り、魔術で火を点ける。最初は小さかった火が瞬く間に大きくなった。
「さてがここからが私の本番。新米の稚拙な演技だけど、賑やかしにはなるだろう。
 楽しい宴に相応しい、歌と踊りを披露しようじゃないか!」
 演技かかった声でコール・シュプレ(CL3000584)が一礼する。前準備では役に立てなかったが、宴は始まれば出番開始だ。アーティストとして演者として、夜の炎に負けないように皆の目を引こう。
「歌と踊りがなきゃね! 伴奏は任せろー」
 楽し気にリズムを刻むカーシー・ロマ(CL3000569)。親指と中指に装着するフィンガーシンバル。カーシー自身も踊りながら、リズムに合わせてシンバルを鳴らす。円運動を中心とした異国のダンス。炎がカーシーの踊りを映し出す。
「その踊りはカーシーさんの民族舞踊か何かですか? こう、こんな感じかな?」
 カーシーの踊りを見た『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)もその動きを真似るように踊る。衣装もそれを真似るようにビキニ水着にパレットを纏って踊りだす。最初はぎこちなかった動きも、少しずつ軽やかになっていく。
「さて美味しい浜焼きを頑張ります♪」
 料理担当とばかりに『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)がガッツポーズを取る。買い出しによる材料選びから調理まで。出来る孤児院のお姉さんなフーリィンであった。
「たきびのひをみてるとなんかわくわくする」
『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は焚火の火を見ながらそう呟いた。皆で歌ったり踊ったり、同じ料理を食べたり。表情や態度にこそ現れないが、リムリィのテンションは上がっていた。
「もう始まっていたか。しかしすごい盛り上がりと料理だな。食べられるのか?」
「あーし、一杯もぐるよ?」
 カーシーに呼ばれたサイラスとアミナが遅れて到着する。カーシーは喜びの声を上げ、早く早くと手招きした。
「後、人魚とフェアリーが来れば完璧ね」
「にんぎょはわたしがこえをかけた。ほら、そこ」
「流石に地上には来れませんよねー。はい、人魚さん用に作っておいたお魚料理です。『泉の息吹』で聞いて作ってきましたっ」
「人魚と人の宴。これもまた一つの演目だ。彼女達が地上で活動できれば、さぞ世界は広がるだろう。あるいは私達が海に潜れれば!」
「よーし、私は鉄板で塩やきそばを作るわ! 私が! みんなに! 麺類の素晴らしさを、この素晴らしい大自然の中でお伝えするわ!」
「エルシー、勢いと火力だけで料理をするのはやめた方がいいぞ」
「オスカーさんは黙ってて! こういうシチュエーションで食べる料理は、味とか関係なく美味しいものなのよ!」
「……お互い、知り合いには難儀するな。一杯どうだ」
「すまない、ルーク殿。しかしこういう平和こそ、騎士が護るに値することなのだろうな」
「ああ。たまにはこういうのも悪くない」
 焚火を囲んだ宴は続く。人魚たちの水芸やアミナの部族の踊りなども混ざり、笑い声が途絶えることはなかった。

 一方その頃、
「俺は潜ってくるから後はヨロシクな! 予定としては夜戻る。無理でも明日の昼までには戻るからよ!」
 と、到着した瞬間に海に向かって飛び出した『密着王』ニコラス・モラル(CL3000453)。彼が求めるのは人魚。一晩のアバンチュールを求めてである。そして捜索する事一時間弱。ニコラスの視界に移る下半身が魚の女性型幻想種。
 よっしゃ、ちゃんと女性。しかも美人! ガッツポーズを決めて近づいていくと、向こうも友好的に体を寄せてくる。頬を染め、腕に抱き着き豊満な胸を押し当てた。
「よっし、一夜の思い出パターン! もう行きつくところまでいk………あれ?」
 腕に抱き着かて、引っ張られるままに連れてこられたニコラスは、岩場に大量に隠されてある魚卵を見つけた。そしてにっこり微笑んでさらに身を寄せてくる人魚。そう言えば魚って体外受精だっけ? つまり男として求められているのはこの卵に向かって<マギアスティームは全年齢>。
「ちょ、脱がさないでー。うおっぅ、この人魚、手馴れてるっ!? あーれー……」
 ニコラスがこの夜どうなったか。それは彼のみぞ知る。

●森
「フェアリーかぁ。あたし見たことないんだよね〜」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は森を歩きながら笑みを浮かべていた。絵本や図鑑などで見たことはあるが、実際に見たことはない。そして好奇心の塊ともいえるクイニィーは、当然本物を見たくて仕方なかった。
「小さい? 中身はどうかなぁ? ふふっ、捕まえてみようかな!」
 言うなりリスに変化して木陰に隠れるクイニィー。待つこと数十分。飛んでいるフェアリーを見つけ、ゆっくりと近づいていく。そして飛びかかって――
「クイニィー嬢、よさないか!」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)に捕まれた。フェアリーは慌てて空気に溶けるように消え去った。
「ああああああ!? あれ絶対フェアリー特有の魔法だよ! 捕まえて研究すれば自由騎士でも使えたかもしれなかったのにぃ!」
「仮にそうだとしても、後に禍根が残る方法を見過ごすわけにはいかん」
 何するのよ、と叫ぶクイニィーに断固とした態度で応えるテオドール。イ・ラプセルの貴族としてそんなことを見過ごすことはできない。
「島の今後を考えればあのような行動は慎むべきだ。
 こら、ちゃんと聞きなさい! 追いかけまわすのはダメだと――」
「じゃあ罠を仕掛けるね。トリモチとかありかも。あ、魔法を封じないといけないから、それようのカゴもいるのか」
「そうじゃない。全く分かっているのかね。国と言う看板を掲げた自由騎士が――」
 テオドールの説教などどこ吹く風、と言う態度のクイニィー。会話の隙を見つけて、一気に走り出す。
「はいはーい! わかりましたぁ〜。もうしませーん! 多分ね」
「こら、待ちたまえ!」
 そのまま森の中を走り回る二人であった。
「何やら騒がしいがどうでもいい。行くぞ、サイラス! 事前に図書館でこの島の植物分布や地形傾向は調べてある!
 後は医学知識を組み合わせて全力で探すのだ!」
 薬草採取に気合十分の『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。地図には赤色で印がつけられており、束になった羊皮紙には薬草の形状が書かれてあった。もう、ガチガチである。
「たまにはゆっくりしろ」
「分かっている。貴様は正しい。一時の休息が必要なのは医者として十分に理解している。
 だが貴様も分かっとろ。薬の類は徐々に高騰して来ている。戦争が続くのだから当然だ。自給出来るならそれが一番だ。本気にならざる得んよ」
 呆れる様なサイラスの言葉に一瞬納得しかけるツボミ。しかしすぐに医者の火が燃え上がっていた。
「私はこのチャンスを逃さんぞ! 貴様も気合を入れよサイラス! 」
 ツボミの言葉にやれやれ、と肩をすくめるサイラス。せめて採り尽くさないようにしなくては。
「大変だね、お医者さんも」
 そんな様子を見ていたコウ・イディア(CL3000571)はため息をついた。正義だの命の尊さとかに興味はないが、何かに対して気合を入れる人間の気持ちは理解できる。岩に腰掛けて持ってきた弁当を食べながら、森の景観に目を向ける。
「孤児院の小僧共と一緒に来れないのは、一寸名残惜しいな……。お?」
 緑のカーテンと表現してもいい森の景色。聞こえる鳥の声と淡い木漏れ日。自然が生んだ一枚絵に心奪われるコウ。そんなコウの視線に小さな何かが映る。噂に聞いた幻想種フェアリーだ。
「へっ、意外と人懐っこいな」
 落ちていた小枝を拾い、フェアリーの前でくるくる回す。その動きに合わせて飛ぶフェアリーを見て、コウは笑みを浮かべる。孤児院の土産話に一つ追加だ。
「~♪」
『新緑の歌姫(ディーヴァ)』秋篠 モカ(CL3000531)は森の中で歌っていた。最初は楽器を使おうと思っていたけど、森から聞こえる音を聞いてリラを引く手を止める。そして木の葉が風で揺れる音で唄を歌う。
(風の音、木の音、川のせせらぎ、鳥の鳴き声……うん、そうだね。これが森の声なんだ)
 背中の羽根を広げ、軽く羽ばたく。重力から解放される感覚に包まれながら自由な心で歌う。いつだってどこだって、世界は音にあふれている。そこで奏でる音だからこそ、そこに合わせる歌もある。
「フェアリーさん? そうですね、一緒に歌いましょう」
 モカの歌に誘われるようにフェアリーが現れる。曲に合わせて踊るように飛ぶフェアリー。それを見てモカは微笑んだ。
「ふむ。君達も絵本が好きなのかい?
 僕も好きなんだ。結構好きなんだ。 真実や大事な事を書かれている事も多いから……」
 言いながら絵本のページをめくる『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。広葉樹の近くにあった岩場に腰を掛け、ゆったりと絵本を読んでいた所に、本をのぞき込むようにフェアリーが現れたのである。
「ふふ。これは君達へおお土産さ。そうだ、本を読んであげようか?」
 マグノリアが渡したのはビーズで作ったフェアリーサイズのヘヤアクセ。大きさを聞いていたから作るのは難しくなかった。そのアクセサリーを受け取り、フェアリーは喜ぶように飛び回る。感謝の抱擁を右頬に受ける。
「ありがとう。それじゃあ読むよ。大昔、城に住んでいたお姫様は――」
 朗々と絵本を読むマグノリア。その声に惹かれるように別のフェアリーがやってくる。
「どうだ、この島は? 暮らしやすいか?」
 森の木々に話しかける『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。ヨウセイの共感能力で意思疎通を試み、その返事を聞く。植物からの答えに満足げに頷くオルパ。最近あった依頼で心がすさんでいるのを実感していたので、救われた気持ちだ。まったく、ひどい事件だった。
「っと。やぁ、美しい方。ココは良い森だな」
 目の前を通りかかったフェアリーに声をかけオルパ。その声にこたえるようにフェアリーはオルパの周りを飛び交う。優しく触れようと手を伸ばした指にチョンと乗るフェアリー。その様に思わず微笑んでしまう。
(しかしフェアリーか。……もしかして、この島には何かあるんじゃないか?)
 そう思ったオルパはフェアリーに問いかけてみた。フェアリーに関する言い伝えを。
 その問いにフェアリーは――
<ここにはフェアリーの隠れ里があるの>


『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)は騎士である。だがそれより前に男である。
「冒険だーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー! わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 そして男であるという事は冒険心を持つことである。故に、
「海でも森でも施設でもなく! どこかへ! 行くよ!」
 島に着くなりそう言って走っていったアダム。その冒険心と叫び、それがこの島のマナと月と太陽の星辰的な要素とかエーテルとかと反応した結果、時空が捻れ――アダムは本来人が入れないはずのフェアリーの隠れ里へとたどり着く。そしてそこで、フェアリーの姫と出会った。
<ああ、騎士様!? リボルバーケルベロスからフェアリーの里を救ってください!>
「分かった、任せてくれ!」
 これが七つの里をめぐる大冒険の始まりである。幾度の死闘を潜り抜けて冒険を終えたアダムは、フェアリー達の平和の為に敢えて記憶や冒険の最中に得た『聖剣・レインボーソード』とか経験値とかを全て放棄して帰路につく。あ、イベシナ分は普通にもらえますので。
「ただいま!」
 帰る直前にボロボロになって帰還するアダム。島で何があったのか。それはアダム自身すら分からないことだった。


 かくしてつつがなく(?)時間は流れ、自由騎士達は帰路につく。
 のんびりとした時は終わりを告げ、自由騎士達は戦いに身を投じることとなる。それが彼らの務めなのだから。
 だが自由騎士達は時折不思議な現象に首をかしげる事となる。ふと目を離した間に、物が修理されてたり家事が一つ終わっていたりするのだ。誰がやったのかわからないが、悪意は感じられないので、誰も気にならなくなった。
 1819年6月、今日もヘイゼル島は穏やかな空気に包まれていた。


†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『ナーサリーライムの語り手』
取得者: マグノリア・ホワイト(CL3000242)
『炎の踊り子』
取得者: カーシー・ロマ(CL3000569)
『『泉の息吹』メニュー制覇者』
取得者: カノン・イスルギ(CL3000025)

†あとがき†

どくどくです。
やー、こういうのは筆が乗るなぁ。

このような休暇になりました。楽しんでいただければ幸いです。
夏ぐらいに出すのが妥当なのでしょうが、平和な時の方が無理がないよね、ということでこのタイミングで。ヘルメリア行ったらそんな余裕が(おそらくどくどくSTに)ないので。
MVPは各パートから一人ずつ。選考理由はエモかったから。
あとフェアリーをたくさん楽しませてくれたので、技能スキルのお土産を。ほっこりしてください。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済