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Flower! あなたを待っています



●黄色い花の絨毯に立つ女性
 クロッカス。
 早春に咲く球根植物だ。観賞用としても有名で、春を告げる花の一つとしてあげられる。
 その日、とある大地にクロッカスの花が咲いた。草原一面に広がる黄色い花。その中心ともいえる場所に、一人の女性がいる。
 否、それは女性ではない。女性の姿を模したイブリース。還リビトと呼ばれる故人。それは腕を組み、静かに何かを待つかのように佇んでいた。
 イブリースは凶暴性が高い。自由騎士に連絡をとる傍ら、その動向を見過ごすまいと常在の兵士はそこから目を離さずにいた。職務に忠実で真面目な彼は、イブリースとその周囲を余すことなく観察する。
「ジミー」
 イブリースの口が動く。還リビトと呼ばれる存在は、生前の記憶に基づいた行動をとることもある。おそらくその残滓なのだろう。ジミー。男性の名前だろうか。兵士は冷静にそう判断する。なのに、
「フランチェスカ……」
 それは兵士の妻の名前。違う、目の前の存在は妻ではなく、イブリースだ。そんな事は解っているのに、なぜかそう口走り体は前に出てしまう。職務よりも大事な何かの為に槍を捨て、そのままクロッカスの中に入っていく。
「お帰り、ジミー。ずっと、待ってた」
 違う。自分の名前はジミーじゃない。だがそんなことはどうでもよかった。彼女が名を呼んでいる。ただそれだけで幸せだった。兵士はそのまま無防備にイブリースに近づき――

「ジミー……まだ、帰ってこないの?」
 数分後、イブリースの傍らにはこと切れた兵士が横たわっていた。
 赤く染まったクロッカスの花びらは、その血を吸うようにすぐに黄色に戻っていく。

●その花言葉は
 かつて、戦いがあった。
 人に害為す幻想種達との戦い。人々は立ち上がり、武器を持つ。その中にジミーと呼ばれる男がいた。
「泣くなよデイジー。きっと帰ってくる。その時は……結婚しよう」
「戦いが終われば俺はドラゴンスレイヤーの英雄だ。もう、お前を不安にさせない」
 だが、ジミーは帰ってこなかった。
 デイジーはただ男の約束を信じ、待ち続ける。その想いを花に込めて。
 クロッカス。
 早春に咲く球根植物だ。観賞用としても有名で、春を告げる花の一つとしてあげられる。
 その花言葉は『あなたを待っています』――


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
どくどく
■成功条件
1.イブリースの全滅
 どくどくです。
 決戦執筆の合間に気晴らしにOP作成しています(はよ書け

●敵情報
・デイジー(×1)
 還リビト。300年以上前に死んでいます。かつて結婚を誓った人を待ち続け、そのまま未婚のまま死亡しました。
 直接攻撃する術がありませんが、言葉により精神を惑わすことが出来ます。

攻撃方法
ささやき  魔遠単 愛する者の名を囁きます。何故か抗えません。対象は前衛に移動してしまいます。【ダメージ0】
いのり   味魔遠全 クロッカスの花よ、あの人のために咲いて。HP回復&BS一つ除去
えいしょう 魔近単 戦いなんて嫌い。私の為に剣を下して。【ダメージ0】【ブレイク1】
ねんじろ! P   あの人も貴方のように蘇ってくると信じてる。誰かがフラグメンツ復活もしくはドラマ復活した時に自動発動。全BSを解除し、デイジーのHPを回復します。 

・クロッカス(×5)
 イブリース。一面に咲いたクロッカスの一部が巨大化しました。動くことはできませんが、デイジーを守る壁のように展開しています。
 狂暴化しており、血を求めています。

攻撃方法
葉の刃  攻近範 硬化した葉で切り刻んできます。【スクラッチ1】
花びら  攻遠単 黄色い花が矢となって飛び、突き刺さります。【スクラッチ2】
不動    P  大地に根を下ろし、移動が出来ません。常に【移動不可】【ノックB】無効。
吸血    P  狂暴化した花は養分を求めている。【スクラッチ】状態のPCの数だけ、攻撃力増加。

●場所情報
 イ・ラプセルにある山中の草原。かつてそこには村があったと聞いたことがあります。
 戦闘開始時、敵前衛に『クロッカス(×5)』が敵後衛に『デイジー』がいます。20mギリギリの場所から遠距離攻撃……という戦略は兵士の二の舞になることが想像されますので、ご注意を。
 事前付与は一度だけ可能とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
5/8
公開日
2020年04月04日

†メイン参加者 5人†




 黄色いクロッカスの中に立つ一人の女性。
 還リビト。死んだ人間のイブリース化。その本人は既に亡く、此処に在るのはその残渣。ただそれだけの現象。
 されどその想いは人の天敵。愛した人が帰ってくると信じて、ただ想う。
「……浄化を始めましょう」
 女性の話を聞いた『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は静かにそう告げる。どれだけ長い間彼女が待ち、どれだけ苦しんだかを知る由はない。アンジェリカに出来る事は、還リビトを無に帰すだけだ。
「死者は蘇りません。……ええ、それは歴然とした事実です」
 ただ待つ女性を見て『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は静かに告げる。死んでいった者に会いたい、という気持ちはミルトスも理解はできる。そしてそれがかなわない事も、理解していた。
「まー、帰ってこなかった男が悪い。約束を破るとか男の風上にも置けん」
 ばっさりと言い放つ『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。置いていかれる者の怒りと悲しみ。それはどんな理由があれど薄まるものではないし許せるものではない。頭を掻きながらツボミはクロッカスの花園に足を踏み入れる。
「待ち人来ず、ですか。悲しいものですね」
 諸刃を構え『愛の盾』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は静かに告げる。誰かを愛し、そして待つ。その気持ちは理解できなくもない。何年も待ち続けたデイジーを愚かと笑う事はできなかった。同情でも憐憫でもなく、ただ悲しい。
「まったく、女の涙は見たくないんだよな」
 言って肩をすくめる『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)。女性は笑顔が一番だ。泣いている女の顔なんて見たくはなかった。相手がすでに死んでいて、ここにいるのはその影法師だと理解したうえで、やはり涙は見たくはない。
「ジミー……そこにいるの?」
 自由騎士の気配を察したのか、還リビトはそう呟く。明らかに女性の自由騎士もいるのに。誰かを認識する能力はなく、ただ盲目的に待ち続ける彼女。それがイブリース化した影響なのか、はたまた長く待ち続けて壊れた心をイブリースが写したのか。それは分からない。
 ただいえる事は、イブリースは人に害をなす。放置することはできないという事だ。
 武器を構える自由騎士達。その戦意に反応し、クロッカスの花が蠢き始める。
 イブリースと自由騎士。その両者がぶつかり合う。


「祈りましょう。貴方の人生に。愛する人に会えますように」
 言いながらアンジェリカは『断罪と救済の十字架』を構える。イブリースはあってはならない存在だ。だが、その元となったデイジーはそうではない。故にアンジェリカは祈る。その魂が正しい形で弔われんことを。
 デイジーの邪魔をするクロッカスを睨み、武器を横なぎに払う。奮われた十字架から放たれた衝撃波が戦場に広がり、イブリースを薙ぐように走った。初手に制圧的かつ圧倒的な火力を叩き込み、戦局をこちらの流れに向ける。
「行きましょう、皆様。あの方を浄化するのです」
「言われるまでもない。女を救うってことは世界を救うよりも大事だからな」
 ダガーを両手に構え、オルパが笑みを浮かべる。始終ナンパなオルパだが、決して軽薄と言うわけではない。女好きではあるが、だからこそ女性を大事にする。先ほどのセリフも、演技ではなく心の底からそう思っていることだ。
 ヨウセイ直伝の秘技。オルパのダガーはその秘技の軌跡を描く。幾何学的にして魔術的、一筆書きだが複雑怪奇な紋様。それは仲間の武器に付与され、漂うマナを取り込んで威力を増幅させていく。
「勿論、女性に花を持たせることもな。よろしく頼んだぜ」
「了解しました。先ずはクロッカスを」
 オルパの支援を受けたミルトスがクロッカスに迫る。大地に根を張り動かないクロッカスは格好の壁でもあるが同時に的でもある。イブリースである以上油断はできないのは確かだが、クロッカス単体で見れば組し易くはあった。
 白い金属製の籠手と、魔術強化された靴。ミルトスの手足を強化する武具が風を切って唸る。回転する様な武術の動き。一つの動作が次の動作の予備動作となり、繋がるように連撃を叩き込む。
「生前も彼が帰ってこないのは分かってはいたのでしょうね。それでもこのような花を育てていたと言った所でしょうか」
「その気持ちは、理解できます」
 ミルトスの言葉に頷くデボラ。愛する者を待つ気持ち。自分の元に戻ってこないと知りながら、しかし諦めることのできない心。もし諦めてしまえば、彼は自分の心の中で本当に死んでしまう。それが怖かったのだろう。だから――
 構える諸刃は守りの要。自らの立ち位置を基点として、デボラは陣形を構築する。如何なる刃、如何なる魔をも塞ぎ切る位置に立つ。仲間を守り、敵を穿つ。その為にこの刃はあり、我が身はある。
「きっとセフィロトの海で、ジミー様も待っています」
「つーか、300年もの超遅刻野郎相手に何を暢気に待っとるのだか」
 クロッカスの花園に立つ還リビトを見ながら、怒りの表情を浮かべるツボミ。あれがデイジー本人ではない事は解っているのだが、それでも納得がいかないのが人間と言うものだ。未だにジミーを待つデイジーの姿に苛立ちを感じていた。
 感情は怒りのままに。だけど手の動きは何度も繰り返された医療の動きに。ツボミは魔術を展開し、癒しの術式を展開する。周囲のマナを取り入れ、癒しの力に変換して解き放つ。医療知識に乗っ取った冷徹な判断が確かな戦術となって仲間を癒していく。
「とっとと虚無の海に還れ。時効とかしらん!」
 酷い言い方だが、ツボミを始めとした自由騎士のメンバーの意見は概ねデイジーがジミーに会えることを祈っていた。
 すでにデイジーは故人で、此処に在るのはその残留思念。それがイブリース化しただけの、現象。だが、そうと割り切って作業する自由騎士は此処にはいなかった。例えデイジーの残渣だとしても、そのパーソナリティを疎かにはできなかった。
「いい女にはハッピーエンドになってほしいからな」
 オルパは女性に対する真摯な想いから。
「早くジミー様に会いに行ってください」
「散々待たせたんだ。ビンタの一つでもしてこい!」
 デボラとツボミは女性としての感情から。
「ええ。その想いを受け継ぐことが生きている者の務めかと。人の心にこそ、永遠に残るものがあります」
「貴女が愛する人の所へ安らかに行けるのなら……私は精一杯祈りましょう」
 ミルトスとアンジェリカはそれぞれが持つ信仰から。
 五人の自由騎士はそれぞれの想いで武器を持ち、そしてそれぞれの思いで浄化を行う。
「ジミー」
 それに応えるのは過去の想い。届かなかった思いを口にし、魔の力と化すイブリース。その在り方は歪んではいるが、人の想いでもあった。
 過去の想いと現代の想い。共に誰かを憎むでもなく、しかし相容れることなくぶつかり合う。


 イブリースの構成は前衛にクロッカス、後衛にデイジーと言うものだ。クロッカスが火力源となり、状況を乱すデイジーと言った戦術である。
 対し自由騎士はデボラとアンジェリカとミルトスを前衛に置き、ツボミとオルパが後衛に陣取っている。クロッカスの方が数が多いが、移動することのないクロッカスが後衛に向かう事はない。だが――
「ジミー」
 発せられるデイジーのささやき。それに引っ張られるように、後衛が足を前に進めてしまう。
「師父……いや、いかんいかん! 分かってはいるが抵抗できんな、これ!」
「お美しいお嬢さん。俺の愛でよければ、受け取ってくれ。……まあ、俺はジミーじゃないんだが」
 前に出てしまうツボミとオルパ。そこを襲うクロッカスの攻撃。相性は悪いが、その間デイジーの動きを封じれると思えばイーブンだと自由騎士達は割り切った。
「流石に攻撃に回る余裕はありませんね」
 クロッカスの攻撃を受け流しながらデボラが肩で息をする。血に飢えた植物の鋭い攻撃で血を流しながら、ゆっくりと呼吸を整える。守りの陣形を維持しながら、なんとか意識を保とうと自らに活を入れた。
 待ち人が来なかった女性。かつて婚約破棄されたデボラは、デイジーに何を見たのだろうか。明確に拒絶されたのではなく迎えに来る可能性が残っていたデイジー。それは不幸だったのか幸せだったのか。それは――
「……待ち人が来なかった、というのは結果論です。悲しいけど、そこには確かに愛があったんですね」
「ええ。誰かを想う気持ちが悲劇を生むとは、皮肉な事です」
 静かに言葉を紡ぎ出すアンジェリカ。デイジーがジミーのことを早々に諦めていれば、今このイブリース事件はなかった。だからと言って、デイジーに愛を捨ててほしいとは思わない。誰かを想う事こそが、生きている証なのだから。
 愛に祝福を、地に平和を、魔に鉄槌を。祈りは短く、そして確かに弾丸に。アンジェリカの祈りを込められた一撃がイブリースを薙ぎ払う。憎むべきは彼女の想いを歪ませたこと。誰かを待つ思いを血に染めた悪魔に、浄化をもって答えよう。
「貴女が待っている方は、もうここにはいません。そこに送り届けましょう」
「ジミーは俺ほどイケメンではなかっただろうがな」
 言ってウィンクをするオルパ。冗談めかした言動はデイジーに笑ってほしいから。そこにいるのはデイジー本人ではないにしても、悲しい顔はしてほしくない。オルパが戦う理由はまさにその一点だった。
 ヨウセイの共感能力でクロッカスに語りかけ、イブリース化した仲間へのの苦悩を感じ取る。任せておきなと返事をした後に、ダガーを振るい、魔力の斬撃でクロッカスを切り裂いていく。浄化の力が働いて、クロッカスの魔を払いのけた。
「クロッカスに血は似合わないぜ」
「花が野郎に対する怒りを受け取ったのかもしれんがな」
 仲間の傷を癒しながらツボミが告げる。イブリースが発生する理由や意味は未だ解明されていない。男を一途に待つデイジーの傍らに咲く花が血を求めるのは、もしかしたらデイジーの中に男を恨む気持があったのかもしれない。それを感じ取ったか。
 つまらん推測だ、と切って捨てるツボミ。人間だから愛憎あって当然だ。どの道この場に彼女はなく、イブリースは倒さなければならない。仲間の傷を癒しながら疲れを吐き出すように息をつく。まだ予断は許さないが、戦いはこちらの流れになっている。
「あとひと息だ! きついと思ったら申告しろよ!」
「クロッカスさえ倒してしまえばほぼ終わりです。デイジーは攻撃手段を持ちませんので」
 最前線でクロッカスと打ち合いながらミルトスが口を開く。円を描くような脚と腕の動きでイブリースの攻撃をかわし、直線的な動きで敵を穿つ。円と直線。柔と剛。相反する二極のバランスこそが武の肝要。
 身体を動かすたびに、かつて相対した敵との戦いを思い出す。信念ゆえにぶつかり合い、そして斃した相手。その事に後悔はないが、それでももい一度会えるなら――また殺し合うのだろう。彼らの信念を乗り越えたからこそ、今の自分がいるのだから。
「悪い癖だとはわかっています。どの道、死者は蘇りません」
 自由騎士の攻撃は、確実にイブリースの数を減らしていく。
 だがイブリースもただ立っているわけではない。その凶暴性で自由騎士を穿ち、囁かれる言葉が攻撃のリズムを崩していく。
「まだひざを折るわけにはいきません」
「……ここまで、ですか」
 繰り返される攻撃にアンジェリカがフラグメンツを燃やし、デボラが膝をついた。
「すまんな。あともう一息頑張ってくれ」
 だが倒れたデボラはツボミの治療により意識を取り戻す。防御の要が崩れなかったことで、自由騎士にそれ以上の被害はなかった。そのままクロッカスを倒し、そしてデイジーに迫る。
「ただいま、デイジー。遅くなってすまなかった」
 オルパはジミーを真似る様にしてデイジーに語りかける。その言葉にデイジーはわずかに反応した。このまま安堵させてやりたくもあったが、それでは彼女は救われないとオルパはダガーを手にする。
「もう泣かなくていい。これからはずっと一緒さ」
 突き立てられたダガーが、還リビトを浄化させた。


 還リビトが消え、残ったのはクロッカスの花園。
 黄色い花を咲かせるクロッカスの真ん中。デイジーがいた場所でアンジェリカが祈る。
 死の瞬間を見る力でアンジェリカが見た者は、老いたデイジーがクロッカスの花園で水をあげている姿だった。いつか帰ってくるだろうジミーの為に。寂しさに心が折れないように。……最後の最後まで、彼女はこの地に花を植え続けた。
「貴女の魂が、愛する人との元へ辿り着けますように」
「お前達はいい人に育てられたんだな」
 オルパはクロッカスにそう語りかける。ヨウセイは植物と共感できる。アンジェリカの見た過去を聞くまでもなく、鼻の育てられ方を見ればそれが分かる。オルパの言葉に応えるように、クロッカスの花は小さく揺れる。
「俺が三〇〇年前にいれば、泣かさなかったんだがな」
「行きやがったか。とっとと男を探して来い。もう三〇〇年あれば見つかるだろうよ」
 ツボミは還リビトのいた場所を見ながらため息をついた。三〇〇年前の男の事情など知らないし、知ったところで許すつもりもない。散々待ったのだ。その恨みをぶつけて来ればいい。
「じゃーな」
「ええ、では私達も行きましょう。もうここには用はありません」
 言って踵を返すミルトス。イブリースはもう浄化され、戦う相手はいない。事後処理も終わり、ここに留まる理由はなかった。思いは受け継ぎ、生きている者は歩き出す。それが人生と言うモノだ。ミルトスは黙とうを捧げ、歩を進めた。
「それでは。次に咲くクロッカスが『青春の喜び』になるますように」
『青春の喜び』……それはクロッカスの花ことば。春を告げる喜びの花――

「…………」
 デボラは最後に振り返り、デイジーがいた場所を見る。
 愛した人が戻ってこなかった。
 そんな悲劇は、この時代どこにでもある。戦争と無縁の国など、イ・ラプセル周辺には存在しない。大陸全土が戦場で、どこかで誰かが死んでいる。愛する人が、親しい友が、幼い子供が――
『自分もそうならないとは限らない』
『戦いの中で倒れて、誰かを待たせてしまうかもしれない』
 頭を振って、その不安を振り払う。そんな不幸を生み出さないようにするために、戦おう。
 それが騎士の、そしてこの時代に生きる人間の務めなのだから――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
最後の理性で名前を「カント」にしなかったどくどくえらい(謎

以上のような結果になりました。しんみりしたなぁ。
ジミーが本当にロクデナシだったらまた違ったかもしれませんが、そういう時代だったのです。
MVPは還リビトを一人の女性として扱ったエメラドル様へ。
きっとセフィロトの海で二人は再会できているでしょう。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済