MagiaSteam
Vane! 雪山に羽根を求めて!



●クロックワークタワーの発明品
 飛空船――
 その技術と理論は既に各国(シャンバラ除く)に存在している。だが空路は空を飛ぶ幻想種のテリトリーであり、数少ない安全なルートも通商連により強く制限されている。1818年5月にイ・ラプセルを強襲したヴィスマルクも、その後通商連にに関税強化などの罰則を受けたという。
 閑話休題。空を飛ぶ輸送船の必要性は各国共通だ。事、イ・ラプセルからシャンバラという遠方に出向く際には大きな荷物を輸送できる船があるに越したことはない。そう言ったことも含め、飛空船作製は蒸気機関開発を行う『クロックワークタワー』創立当初から進められていたプロジェクトだった。
 既存の木造船に気球のような袋を付けた構造。単純ともいえる構造だが、コスト等を考慮すればこの形が一番浮かびやすいのである。強度などをミニチュアを用いてトライアンドエラーで計算し、船を浮かべる算段は立った。問題は――
「どうやって浮かんだ船に方向性をもたせるか、だ」
 空を飛ぶ。要するに目的地に向かうためには一定方向に力を出し続けなければならない。だがこれは容易ではない。歩くなら大地を蹴り、泳ぐなら水をかく。しかし空は空気しかない。翼などの様々なアイデアが議論され、最終的に残ったのは。
「プロペラを使って推進力を得よう!」
 となった。そうと決まれば材料探しだ。長い回転に耐えられるほどに硬く、加工しやすく、そして上空の低温に耐えられる素材。できる事なら軽量であることも望ましい――
「ウルブレスの木が一番なんだけど……」
「あそこには『アレ』がいるからなぁ……」
 がっくりと肩をすくめる技師達。
 そんな様子を 『発明家』佐クラ・クラン・ヒラガ(nCL3000008)が耳にして――

●ヒラガさんのお願い
「フュリュー山に生えているウルブレスの木。これを取りに行くルートを確保してもらいます」
 集まった自由騎士前に佐クラが説明を開始する。
「イ・ラプセル西部にあるフュリュー山は高度と海流などが相まって一年中冷えた山です。そんな環境で生えている木材をプロペラの材料にしたい、という依頼なんです。
 ただ、そこをテリトリーとしている暴れ幻想種がおりましてなあ」
 ほう、と頬に手を当てて佐クラは物憂げな表情を浮かべた。
「イエティ言いまして白い毛むくじゃらの巨大サルです。獰猛なパワーファイターかと思いきや冷気の魔術? を扱ったりともう大変。これは名うての自由騎士に頼むしかないと言う流れになりまして」
 成程、と自由騎士は納得する。その幻想種を退治すれば、その材木を安全に確保できるという事か。
「少し痛めつければ山の奥に引っ込むと思います。せやけど油断してたら返り討ちにあいいますようて、気ぃ抜かんようにお願いします。
 あと、寒いんでおべべはしっかり着ていきなさいな。時期的に雪は少ないでっしゃろうが、足元すくわれるかもしれへんよ」
 おべべ、って何? と問い返す間もなく、佐クラは一礼して去っていった。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
資源発掘σ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.イエティ3体の撃破(生死問わず)
 どくどくです。
『おべべ=着物』……は書かなくても分かる……よね?

●敵情報
・イエティ(×3)
 幻想種。身長2mのサルです。白い体毛を生やし、二足歩行で雪山を跳びまわっています。人語を解し会話も可能ですが、暴れん坊な性格のため説得は不可能です。

戦闘方法
剛腕    攻近単 太い腕で殴ってきます。【二連】
ドラミング 自   胸を叩きいて咆哮し、自らを鼓舞します。攻撃力、命中up
氷雪投擲  攻遠単 雪を硬く握り、氷の塊のようにして投げてきます。【スクラッチ2】
吹雪ブレス 魔遠範 冷たい吐息を吐き、動きを封じてきます。【フリーズ1】
調子乗り  P   すぐに調子に乗ります。誰かのHPを0にするたびに、攻撃up、回避down(フラグメンツなどで復活しても効果は発揮)。
寒冷適応  P   雪山の自然に対応しています。雪山のペナルティは受けません。

●場所情報
 イ・ラプセルフュリュー山中腹。まだ雪が残る山道です。足元が雪で滑る為、相応の対応が無ければ回避にペナルティが付きます。また寒さのため毎ターンMPが減少します(相応の対応で、減少量が減ります)。時刻は昼。明かりは不要です。
 馬での移動は可能です。
 戦闘開始時、敵前衛に『イエティ(×3)』がいます。
 事前付与は一度だけ可能とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
12モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年03月24日

†メイン参加者 8人†




「初仕事です、腕が鳴ります!」
 馬の上で拳を握りユリカ・マイ(CL3000516)は防寒具の襟をしめた。自由騎士に入団しての初仕事が雪山の素材集め。イ・ラプセル王国にて代々国防騎士団員を輩出する家系に生まれた者としてそれは如何なものか――と言う不満はない。元気よく任務をこなしていく。
「飛空船の材料に適切な木、ですか。満たす条件を聞くに、他にも色々役立ちそうですね」
 靴で雪を踏みしめながらコジマ・キスケ(CL3000206)は頷いた。冷所に強い木材となればそれこそ北部での建築物などに役立つだろう。あるいは極寒の地区に植林して防風林としてに生かすことも可能だ。
「気球系の飛行船か。……ヴィスマルクやヘルメリアにべちゃお粗末なもんだが、それでも段階を踏んでいかないとな」
 ヘルメリアの飛空船『オルティマ』を思い出しながら『RED77』ザルク・ミステル(CL3000067)はため息を吐く。技術力と素材の差があるとはいえ、イ・ラプセルの飛空船は少しずつ形を整えつつある。ザルクの言う通り、これからなのだ。
「イ・ラプセルは蒸気の他に魔法も錬金術もある。それらをうまく融合させたらもっと優れた飛行船が作れるかもね!」
 うんうんと空を見ながら『ノラ狗』篁・三十三(CL3000014)は頷いた。ヘルメリアの飛空船が蒸気機関に特化しているかのように、イ・ラプセルにはイ・ラプセルの文化がある。それら全てを組み合わせれば、また違った船が出来るのだろう。
「飛空船かー。空を飛べたらきっと楽しいよね!」
 マフラーで首元を隠しながら『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は雪道を進む。山を超えたり海を超える際の利便性もあるが、何よりも空は自由の象徴だ。そこを進むと言うのは血を歩く者の渇望に似た何かがあるのだ。
「おねえちゃんがあんでくれたマフラー。これがあればわたしはけっこうむてき」
『溶岩(ラヴァ)カバ』と書かれたシャツを着た『リムリィたんけんたいたいちょう』リムリィ・アルカナム(CL3000500)が、マフラーを握りしめて呟く。依頼の場所を聞いた姉が夜通しで作ってくれたのだ。その気持ちだけで胸が熱くなってくる。
「おべべ=OBB=おっぱい、ぼいん、ぼいん……そういう事か!」
 はっ、と何かに気付いたかのように『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は叫ぶ。あのふくよかな胸。それに抱けれる事で幸せになれと言う誘いだったのか。そこまで妄想して、仕事の方に頭を切り替える。それにつけてもあの胸は――
「イエティからしたら、私達の方が彼らのテリトリーを侵す悪者なんだろうけどね」
 防寒具の状態を確認しながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はため息をついた。ウルブレスの木が欲しいのはこちらの都合で、イエティから見ればそこに立ち入った侵入者だ。あまりいい気分はしない。
 そしてイエティが出ると言われた区域にたどり着く自由騎士達。ほどなくして白い体毛の幻想種が現れる。
「おっぱい三名と子供二名ウキ!」
「持ち帰ってウホウホするうほ!」
「男はお帰りくださいウキキ! 崖はあっちウキキ!」
 自由騎士達の姿を見て興奮するように喋るイエティ。ああ、これは手加減いらないよな、と自由騎士達は深く頷いた。
 まだ雪残る山の上、自由騎士達と幻想種はぶつかり合う。


「ちょっと話をきいてもらえない? 私達は木を……駄目か」
 戦う前にイエティに話をしようとするエルシー。だがこちらの言うことなど聞くことなく襲い掛かってくる。聞く耳もたないかー、と諦めて拳を握りしめる。任務と自分の身を守るため。そう心の中で呟いて、戦闘のスイッチを入れる。
 かんじきで雪を踏みしめ、イエティの動きを見るエルシー。ごう、と振るわれる大ぶりの拳を上半身の動きでかわして、そのまま攻撃に移る。半歩踏み込み『古き紅竜の籠手』を突き出した。鋭い音と共に幻想種の腹に叩き込まれる一撃。
「イエティに色仕掛けは有効そうだけど……やだなぁ……」
「幻想種と友好的な関係になるのは損ではないのですが、流石にねえ」
 エルシーの言葉に苦笑するコジマ。仮に仕事で命令されたとしても、そういったことは遠慮したい。幸いにして自由騎士はそう言ったことを強要する組織ではない。先ずは身の安全、をこっそり心の中で掲げるコジマからすればありがたい話だ。
 さてお仕事お仕事、と思考を切り替えるコジマ。細かく移動しながら仲間の様子を観察し、傷の具合を見計らいながら魔力を集める。コジマから放たれた魔力が仲間の傷に触れ、痛みと共に傷を癒していく。
「でもまあ、関係は可能な限り良好に保ちたいですねー。今後のことを考えると」
「自然をコントロールし自然を利用するのが人の業なら、自然と調和し自然と共生するのも人の道、かと」
 盾を構え、ユリカが口を開く。ウルブレスの木を取るために障害となるイエティ。今退けてもまたやってくるかもしれない。そうなれば殺すしかないと言う意見は理解できる。それでも流れる血が少ないに越したことはない。
 ともあれ今はこの戦いを制しなければならない。構えるは盾。掲げるはユリカ自身の騎士道。如何なる艱難辛苦もまた試練。ただ真っ直ぐに前を向き、そして進んでいこう。仲間に振るわれる幻想種の剛腕を受け、不屈の精神で立ち尽くす。
「体の差が力の差でないこと、その身で思い知りなさい!」
「張り切るのはいいが、無理はするなよ」
 初任務に気合を入れるユリカに声をかけるウェルス。白いローブと魔術で寒さに耐えながら、戦場を上から見る様に意識して観察する。前に立つだけが戦いではない。冷静に戦場を見て仲間を支援する。これもまた戦いだ。
 狙撃の要領で戦場を見、敵味方全ての動きを見やる。傷ついた仲間を保護し、動き回る幻想種を足止めするウェルス。大事なのは機を逃さない事。退く判断と進む判断。それは商人の修行で培ってきた。その成果が仲間達を護っていく。
「悪いな、これも可愛いウサギちゃんとついでに飛空船の為だ」
「そっちがついでかよ」
 ウェルスの言葉にツッコミを入れるザルク。とはいえ個人の優先順位にとやかく言うつもりはない。誰にだって大事な事や物があり、それは他人からすればくだらないと言われることもある。その最たる例が――復讐。
 クロックワークタワー製の回転式拳銃と改造したリボルバーを手にするザルク。接舷を走り回るイエティに向かい、遠慮なく弾丸を叩き込んでいく。手慣れた動作で予備のシリンダーを取り出し、再装填。銃声は途切れることなく戦場に響いていく。
「お帰りはあちらだ! 大人しく帰るなら命はとらないぜ」
「うん。できるなら命は取りたくないね」
 刀を振るいながら三十三が頷いた。命を奪う武器を振るってはいるが、こちらからイエティのテリトリーに入り込んだと言う感はぬぐえない。だからと行って大人しくやられるつもりはなかった。こちらにも引けない事情がある。
 マフラーをなびかせながら、雪原を走る三十三。跳び回るイエティの動きを先読みするように刀を投擲し、相手の気勢を削っていく。その横を駆け抜ける様に走り抜け、刀を回収してさらに投擲。止まることのないその動きは猟犬の如く。
「でも邪魔するなら容赦はしない!」
「うんうん。とりあえず大人しくしてもらうよ!」
 言いながら拳を振るうカノン。自分達は幻想種の命が欲しいのではない。ここに生えているウルブレスの木が欲しいのだ。最も説得できる状況ではないのは確かだ。だから今はおとなしくしてもらおう。
 イエティの攻撃を受け流しながら、もう片方の腕の筋肉と肩の筋肉を捻じるように力を籠め、引き絞る。攻撃して防御、ではない。攻撃と防御が一連の動作となる。円を描くような体の動き。それによりカノンは途切れることなく攻め続ける。
「アクアディーネ様の権能で殺すことはないから、遠慮なくいくよ!」
「じゃくにくきょうしょく。よわいとうばわれるのはおきて」
 無表情のまま呟くリムリィ。強い者が弱い者から奪う。それは真理だ。御託や綺麗事を並べても、世界にその一面がある事は否定できない。アルカナム孤児院に来るまで、リムリィ本人がその犠牲者となっていたのだから――
 雪を踏み、ハンマーを構えてイエティに迫るリムリィ。強く、強く、強く。自分の持つ力全てを使って幻想種に迫っていく。回避は考えない。急所で受ける事を避け、ただ一撃を叩き込むだけ。フル下ろされる一撃が、イエティの肩に叩き込まれる。
「やられたら――やりかえす」
「こいつら強いウキ!?」
「やばいウホ! 予想外ウホ!」
「こうなったら本気でやるウキキ! 俺、後ろからブレス吹くからお前らは盾になるウキキ!」
「ずるいウキ! 俺が後ろウキ!」
「ウホ! 喧嘩してる隙に後ろは貰うウホ!」
 自由騎士の強さを前に、驚くイエティ。混乱もあって仲間割れのようなやり取りまで発生した。
「もしかして今がチャンス? 大人しく帰るなら命はとらない――」
「うるせー。意地でもお持ち帰りするウキー!」
 降伏勧告するも、言う事を聞いてくれそうにないイエティ。やはり大人しくさせるしかなさそうだ。
 雪山での闘いは、少しずつ熱気を増していく。


 雪山の戦闘に慣れたイエティに対し、積み重ねた文明で雪山対策を行った自由騎士。その対策は十分なもので、イエティに後れを取ることなく動き回る。
 だが、単純なパワー差は覆らない。剛腕が振るわれ、凍える吐息が荒れ狂う。
「まだ、倒れません!」
「あいたたたた……!」
 前に立って攻撃を受け止めていたユリカと、後ろから援護射撃をしていた三十三がフラグメンツを削られる。
「うほー! 俺達強い!」
「ウキキ! 俺達無敵!」
 調子に乗るイエティ。精神的な高揚が肉体のリミッターを外していく。
「んー。回復手を狙うと言う知恵はなさそうですね。手当たり次第に殴ってるって所かな」
 コジマはイエティの闘い方を見て、そう判断する。戦術という考えはなく、感情の赴くままに攻撃をしてきていた。集中砲火されないのはいい事だが、逆に言えばまんべんなく殴ってくるのだから広範囲回復を連続で撃つことになって、気力消費が激しくなる。
「紅竜の炎は、この程度の雪に負けないわ!」
 イエティの吹雪ブレスに耐え、エルシーが叫ぶ。ブレスを断ち切るように籠手を振るい、そのまま殴りかかる。地下に雪山にと様々な場所に赴いたエルシー。この籠手もその冒険の結果得た物だ。雪山に紅蓮の手甲が映えて光った。
「――――――…………っ!」
 無表情だったリムリィの頬が笑みに変わり、瞳の色が変わる。ケモノビトの血に流されるようにリムリィの闘争心が高まっていく。より激しく、より野生的に。赤い汗腺を流しながら、声なき咆哮と共に獣の一打が叩き込まれる。
「はああぁぁぁぁ……っ、やああ!」
 一瞬の勝機を見出し、カノンは呼気を整える。息を吸い込みながら全身の筋肉を凝縮させ、力をため込んでいく。ため込んだ力は流れるように拳に凝縮され、カノンが長年繰り返してきた神父の教えた型にそって打ち出される。音と衝撃が大きくイエティを揺らした。
「――よし、前に出るよ!」
 イエティが倒れたことを見て、三十三は前に出た。相手の数が減ったここが攻め時。機を見て一気呵成に叩き込むのは戦術の基本だ。手に盛った刀が日を浴びて光る。救いあげるような刀の軌跡が、三日月を描いた。
「動きを予測し……ここです!」
 盾を構えながら、イエティの動きを見るユリカ。目や顔の向き、手の動き、そして足の向く先。挙動一つ一つが仲間を守る情報となる。守るために培った鍛錬と、一瞬の集中力。それがユリカを動かし、仲間を守る盾となる。
「お前は動くな!」
 イエティが雪を投げる動きを見せた瞬間にザルクの銃が火を吹いた。魔力を込めた弾丸がイエティの足元に着弾し、そこから魔法陣が展開されていく。一瞬で描かれた陣はマナを回転させ、陣の中に居るイエティの動きを止める。
「さて、動いてくれるなよ!」
 ウェルスは踊るようにイエティとの間合いを計り、その動きを制限していく。相手が前に出ると同時に前に出て出鼻をくじき、下がると思ったときに銃を鳴らして気勢を削ぐ。直接的な火力ではないが、その支援がイエティの動きを制限していた。
「ウホ、やばいウホ! なんか気づいたらおれ一人!?」
 残り一体になったイエティに自由騎士の火力が集中する。イエティも最後まで抵抗するが、コジマの回復とユリカの献身とウェルスの支援に阻まれ、思うようにダメージが通らない。そのままエルシーとカノンの拳と三十三の刀、リムリィのハンマーとザルクの銃によりダメージを重ねていく。
「そんじゃ、カノンキックを喰らえ!」
 よろめくイエティの懐にもぐりこんだカノンが笑みを浮かべる。雪原を強く踏みしめ、その反動で跳躍すると同時に足を蹴り上げる。鋭い一撃がイエティの顎を打ち、トドメとばかりにカノンは体を回転させて、幻想種の胴を打ち据えた。
「いぇい! カノンの勝ちー!」
 着地し、Vサインをするカノン。イエティが倒れ込んだのは、すぐ後だった。


 戦い終わり、
「「「調子乗って襲い掛かってすみません(ウキ)(ウホ)(ウキキ)」」」
 イエティたちは一斉に土下座した。
「……むぅ。暴れん坊かと思ったが、本当に調子に乗ったサルだとは」
「殺さないといけないかも、というのは杞憂だったかな」
 イエティの態度に苦笑する自由騎士達。
「あー……私達ウルブレスの木が欲しいの。邪魔さえしなければ危害は加えないわ」
「つーか、むやみに人族に襲い掛かるな」
 エルシーとウェルスがイエティに向かって告げると、ものすごい勢いで首を縦に振った。疑うのもばからしいぐらいにあっさりと。これなら大丈夫そうだと、エルシーとウェルスは肩をすくめた。
「ありがとうございます。そして傷つけてしまい申し訳ありません」
「どうしても暴れたかったら、カノンたちを呼んでね。再戦ならいくらでも受け付けるから!」
 ユリカが頭を下げて傷つけてしまったことを詫び、カノンが言ってイエティの肩を叩く。命の取り合いでなければ、戦う事は問題ない。力強い拳に凍える吐息。近距離遠距離両方に対応できる相手だ。今日は勝てたが、次はどうなるか。
「なんだか君達の領域に勝手に入ることになったけど……いいのかな?」
「ウキ? 山は皆の者ウキ? 俺達の者じゃないウキ」
 三十三が申し訳なさそうに尋ねるが、何それと言いたげに首をかしげるイエティ。彼らは単純に山に入ったよそ者を攻撃していただけで、縄張りとかそういった観念はないようだ。そして山の自然は皆の物、という自然のルールがあるようだ。
「とりあえず一段落だな」
「ですねえ。とりあえず温まりません?」
 肩をすくめるザルク。経緯はどうあれイエティから邪魔されることなくウルブレスの木を伐採できるようになったのだ。一段落したとばかりに湯を沸かすコジマ。これから下山するのだ。体を温めておいて損はない。
「と言うわけで攻撃しなくていいっすよ」
「ん。りょうかい」
 コジマの言葉に頷くリムリィ。イエティが再度襲う可能性を考慮して、臨戦態勢をまだ解いてなかった。ここで息の根を止めれば後顧の憂いはなくなる。だが仲間が大丈夫というのなら大丈夫なのだろう。そう納得した。
「で、どれがその木なんだ?」
「あそこだ。下草にユキシタグサが生えてるってクロックワークタワーの連中に聞いた」
 ザルクが指さす先には雪をかぶった林があった。木の見た目も情報通りだ。間違いないだろう。
 ともあれこれで伐採の目途は立った。あとはクロックワークタワーの仕事だ。
 意気揚々として、自由騎士達は帰路につく。

 さて、飛空船にもさまざまなタイプがある。
 今回クロックワークタワーが作ろうとしている気球型の他に、多数のエンジンでプロペラを回すタイプや、翼を広げて揚力で『滑空』するタイプと多種にわたる。
 その中でも何故気球型になったかというと、材料や飛行場などの問題もあったがその開発速度の速さだ。布とガスと船、そして力を与える羽根さえあればすぐに完成する。
 通商連に空路の許可を得るとほぼ同時期に、飛空船の安全試験も終わる。

 船はゆっくりと、空に浮かび上がっていった――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
 ギリギリ雪山シナリオが出来る時期だったので、実は冷や汗かいてました。

 以上のような結果になりました。
 やべえ、移動不可めんどくさい。使われて初めて実感するバステでした。回避行為はできるからまだましだけど。
 そういう事も含めて、MVPは適切な支援で皆を助けたライヒトゥーム様に。

 それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済