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Phony! 自由騎士、参上?



●俺達は自由騎士だ!
 ヘルメリア南部地方にあるサウスポートを選挙したイ・ラプセル。
 敵国の侵略に怯えるヘルメリア民だったが、奴隷解放以外の強要をしなかったこともあり不満がたまっているようには見えなかった。奴隷を失ったノウブルが愚痴るかヘルメリア領内に行くぐらいで、元々奴隷を持たない人達やノウブルに捨てられた亜人達は、思っていたよりも優しい対応に安堵したという。
 ともあれ、暴動が起きる気配はない。イ・ラプセルも暴動の気配に持を光らせながら、同時に捨てられた亜人達の為に仮設の住居を用意したりとてんてこまいであった。
 その為、サウスポートの治安維持が一手遅れる。元より地形を含めた土地勘が不明瞭な場所だ。警邏に当たっていた歯車騎士団が引継ぎなしで撤退してしまった以上、情報はゼロの状態での警察活動となる。故に発見が遅れてしまった。
「オラオラァ! 俺達は自由騎士だ!」
「お前達を守ってやるイ・ラプセルの為に金出せやぁ!」
 孤児院を襲ったのは、数名の武器を持った者達。性別や年齢等はバラバラだ。種族は全員ノウブルなのだろうが、一部ケモノビトやソラビトの扮装をしていた。
「ああん、逆らうのか? じゃあ皆殺しだ自由騎士ぱーんち!」
「歯車騎士団を退けた魔法の力を見せてやるぜきーっく!」
 どう見てもチンピラの強盗であった。魔法の力と言いながら蹴ったり、自由騎士の偉業を語りながら金を奪ったり。やりたい放題だ。
 しかもまあ、彼らが名乗っているのは――

●(本物の)自由騎士、参上!
「君達の名前なんだよね、彼らが名乗っているの」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)は集まった自由騎士達を前に説明を開始する。
「は? どういうこと?」
「うん。彼らは情報通りのただのチンピラ。軽戦士とガンナーで構成されていて、君達の名前を騙って悪事を行っているんだ。性別とか姿も君達っぽくして。
 全員ノウブルなんだけど、ケモノビトみたいに飾り物の耳をつけたり、ソラビトみたいに羽根をつけたり。変装具合はまー、温情つけて十点満点の二点? ツッコみどころ満載だけど襲われる側からすればそんな余裕もないわけで」
 実際に刃を突きつけられた状態で、噂でしか聞いたことのない相手の風貌を冷静に見極めろ、というのは一般人には酷な話だ。
「これまで強盗三件。ハイペースでやってくれるお陰で、足取りもすぐにつかめた。アジトも分かってるんで、本物の強さを教えてあげてくれ」
 ひらひらと手を振って自由騎士を見送るヨアヒム。
 めんどくさいなぁ、と思いながら自由騎士達は教えられたアジトに向かった。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
どくどく
■成功条件
1.自由騎士(偽)の全滅(生死問わず)
 どくどくです。
 有名になったんだから、こういう輩は出てきます。

●敵情報
・自由騎士(偽)(×参加人数分)
 ノウブル。男女様々。参加者の姿を真似たチンピラです。彼らは依頼に参加した皆様の名前を騙り、悪行を行っています。
 真似た、と言っても仮装に毛が生えた程度です。種族の特徴っぽい物を押さえている程度(ケモミミ尻尾とか、羽根とか、エラとか、その程度)。見る人が見れば大爆笑するでしょう。
 前衛系職業なら軽戦士。魔法使い系ならガンナーになります。初期戦闘配置も、皆様に合わせる感じです。使うスキルはランク1まで。
 混乱を避ける為『(真似ているキャラ名)』で描写させてもらいます。

●場所情報
 ヘルメリアの街、サウスポート。その下町にある廃屋。明るさ、広さ、足場などは戦闘に問題なし。
 初期配置は参加PCの配置と同様です。事前付与は一度だけ可能とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
1個  5個  1個  1個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年12月30日

†メイン参加者 8人†




「かんぱーい!」
 ヘルメリアのスラム。そこにあるさびれたアパートメントの一室で祝杯が挙げられる。
 彼らは自由騎士を名乗り、押し入り強盗を行った八名のノウブルだ。襲撃の成功を祝し、馬鹿みたいに騒いでいた。
「あー、最高! あいつらの名前出すだけで皆ビビりまくり! どうよ『レイラ』?」
「ええ、最高よ『アンジェリカ』。自由騎士様々ね!」
「こーんな仮面付けて名乗るだけで、ガタガタふるえるんだもん!」
「サイコーだよね!」
 狐の面をかぶった『アンジェリカ』と、狼の尻尾を腰につけた『レイラ』が大笑いする。
「ちょっと銃を突き付けて撃つだけで、何も言えなくなるからな。ネームバリューは大事だぜ」
「流石『ザルク』の二丁拳銃だ。シャンバラで名を馳せただけのことはある。孤児院のババア、過呼吸でぶっ倒れたもんな!」
「そういう『ナバル』も大したもんだ。盾持って立つだけで、歯向かう奴の心が折れたもんな。ありゃ傑作だったぜ!」
「なにが『アンタは弱い者を守る人じゃなかったのか!?』だ。そんなヤツいねぇよ!」
 二丁拳銃をもつ『ザルク』と赤髪の『ナバル』が言って酒を飲む。
「おらおら、酒を注げ! お前達ケモノビトが奴隷から解放されるわけないだろうが! 自由騎士も見えない所でこういうふうに扱ってるんだよ!」
「『ウェルス』の言う通りだ。私のような貴族が世間から隠しているだけで、イ・ラプセルも本質的には同じなのだよ」
「へっへっへ。『テオドール』の旦那にはいつ重世話になってますぜ。ほらお前ら! あのお方にも酌をしろ! その後は俺と一緒に……へっへっへ」
「夜は長いんだ。じっくり楽しもうじゃないか。『ウェルス』」
 奴隷の首輪に繋がる鎖を引っ張りながら叫ぶクマ耳ヘアバンドをした『ウェルス』と、ふとましい格好をした『テオドール』が薄く笑う。
「次襲う場所は何処するアルかね、『カーミラ』」
「そーだねー。央華の輸入品が置いてある店とかどうかな『ルー』?」
「アイヤー。『カーミラ』は変装グッツもらえるけど、あたしは襲ってもメリットないアルよ」
「『ルー』に似合うチャイナバニーとかあるかもよ?」
 バニー服を着た『ルー』と、胸を強調した服を着た牛角(手作り)の『カーミラ』が地図を手に悪だくみをする。
 偽自由騎士達は自分達の本物が近くにいることなど知る由もなく、大騒ぎしていた。


「あれが俺か……。楽ニハ殺サナイゾォ」
 ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は自分の名前を名乗るチンピラを見て、凍った笑みを浮かべた。クマ耳のヘアバンドをつけた程度の仮装で、ケモノビトの女性奴隷(違法)を侍らせている。そうか、そういうイメージか。ウェルスは無言で銃を握りしめた。
「流石にあれはないな」
 自分の偽物を見て苦笑する『灼熱からの帰還者』ザルク・ミステル(CL3000067)。髪の色と二挺拳銃以外は、どう見ても別人のチンピラだ。最初は『ヘルメリアの工作兵か?』と考えたが、ここまで劣悪だとそれもあり得ない。
「成程、あれが私か」
 無表情で『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が呟く。恰幅のいい……というよりは不摂生な腹周りと魔術師っぽい杖。それが自分の偽物なのだと気付いて、瞑目する。貴族の名を騙った不埒者には、しかるべき処置を施そう。
「…………あれか」
 同じく『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)も、赤髪に汚れた盾と言う自分の偽物を見てうんざりしていた。最初は自分も有名になった者だと内心喜んでいたが、あまりのクオリティの低さに僻僻していた。
「雑ですね」
 狐のお面と十字架を身に着けたノウブル女性を見て、『慈悲(物理)』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は酷評する。申し訳程度に聖職者の服を着て、酒とパスタを下品に食らっている。もはや説教(物理)しかあるまい。
「そういえば最近、自由騎士の仕事はバニースーツ着てばっかりだったヨ……!」
 頭を抱える『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)。ウサギ耳にレオタード。まごうことなきバニーガール衣装(Not カジノ製品)。それが自分の偽物だと気付いてしまった。だってこれ強いんだし! ええ、バニーだから仕方ない。
「無理! あれであたしを名乗るとか大迷惑!」
 声を押さえて怒るレイラ・F・月宮(CL3000620)。狼の尻尾をつけた程度のワイルドな女性。喋る会話も粗野で乱暴な感じだ。あれが自分を名乗ってそのイメージがヘルメリアに広がっている、と想像すると許せなくなる。
「なんで私のマネっこするヤツはみんな軽戦士なのさ! せめて格闘スタイルで来なよ!」
『限界へのあくなき挑戦』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は二度目のじぶんの偽物を見て、怒りの声を上げた。牛の角をつけて、胸を強調された自分の偽物。騙られたこと自体に怒りはないが、格闘家としてはかなり不満があった。
「俺達は自由騎士だぞ。しっかり奉仕しろよな!」
「酒だ! 酒持ってこーい!」
「次は何処を襲おうかしら? そろそろ大きく儲けたいねぇ。何せ、天下の自由騎士なんだからさ!」
 そんな会話で盛り上がる偽自由騎士達。
 退路を完全に封鎖し、自由騎士達は頷きあう。指を三つ立て、突入の準備を整えた。指折り減っていく指は、偽物へのカウントダウン。
 カウント0と共に扉を開けて雪崩れ込む自由騎士達。不意を突かれて、驚く偽自由騎士達。
 戦歴を培った者と、それを騙る者。その両者がぶつかり合う。


「さあ武器を構えなさい、勝った方が本物のアンジェリカです!」
 開幕と同時に突っ込んだのはアンジェリカだ。自分の偽物である『アンジェリカ』に向かって迫り、武器を振りかぶる。相手が狐の仮面をかぶるのを待ったのは温情か、それとも偽物を完膚なきまで叩き潰したいというアンジェリカの想いからか。
『アンジェリカ』が動く――のを見た後でアンジェリカが動く。先に動いたはずの『アンジェリカ』の武器を弾き、返す刀……十字架でさらに追撃を加える。反応することすら許さない速度で『アンジェリカ』を圧倒する。
「重戦士とは何たるかを、その身体に教えてあげましょう」
「なんで重戦士なのにそんなに速いのよ!」
「ふふふ。教えるのはラッシュの速さだけではありませんよ」
「お前がザルク・ミステル役か」
 二挺拳銃を持った『ザルク』を前に、ザルクは向き直る。麻痺の魔弾を撃ち込み、充分な身動きが取れなくなっている『ザルク』だが、それでも抵抗しようと両手で銃を構えていた
 震える『ザルク』の手が引き金を引く。ザルクはそれを半歩動いただけでかわし、両手の銃を『ザルク』に向けた。片方の銃は『ザルク』の足元を狙ってバランスを崩し、もう片方の銃で相手の銃を弾き飛ばす。
「お、お前が本物のザルクなのか……!」
「いや、俺は……ジュリアン・スミスでいいや」
 隠していた本名。これを口にするのに抵抗がなくなったのは、如何なる心境か。しばらく前までなら考えられなかった、と苦笑するザルク。
「行くわよ偽物!」
「あまり気負い過ぎるなよ」
 レイラとウェルスは自分達の偽物と相対していた。レイラは怒りの表情を隠そうともせず、ウェルスは冷静に相手を見ていた。とはいえ、ウェルスも怒っていないわけではない。むしろどうしてやろうかと内心では残虐な仕打ちを考えていた。
「ところで、なんであたしの名前を名乗ったのかしら?」
 自分の偽物に問うレイラ。『レイラ』は戸惑った後に、素直に答える。
「え? アウトローで性格悪そうだから演じるの楽かなぁ、って」
「舐めるんじゃないわよ!」
 殺気を放出しながらレイラがマンゴーシュを抜き放つ。地面を蹴ると同時に刃を振るい、『レイラ』のナイフと交差させる。刃越しに相手を睨みながら、もう片方のマンゴーシュで相手の太ももを切り裂いた。力が緩んだと同時にレイラは踏み込んでいく。
「『私』の毛並みは毎日ちゃんと整えてるの! 狼がかわいくして何が悪いのよ! ……じゃなくて、今の無し。違うから」
「確かにお嬢の毛並みはいつも綺麗だからな。手入れが整っている」
 ウェルスはレイラの全身を見ながら深々と頷いた。ノウブルには解らないが、ケモノビトなら共感できるのだろう。軽口を叩きながら、レイラとその周辺への観察は怠らない。彼女をサポートするのがウェルスの目的だからだ。
『ウェルス』をけん制しながら、銃を構えるウェルス。レイラの腕を信じているため、サポートは最低限にするつもりだ。回復の術式を展開し、傷ついた箇所を癒していく。余裕を見て『ウェルス』に攻撃を仕掛け、相手を追い詰めていく。
「しかし風評被害も甚だしいな。ケモノビトの奴隷を買って侍らすとか」
「ほ、本物……!? あ、奴隷が欲しいのなら、お一人融通しますよ」
「そうだな。じゃあ頂こうか。お前を奴隷にして、死ぬまでこき使ってやるぜ!」
「奴隷を禁ずるイ・ラプセル国の騎士が、そのような冗談を言うのはいただけないな」
 ウェルスの言葉に苦笑するテオドール。勿論テオドールも、ウェルスが本気でそうしようとしているとは思っていない。だが彼らを許さないという一点においては、テオドールも同様だった。奴隷はともかく、獄中で労働に勤しんでもらおう。
「先ずは罪状だ。強盗および暴行。更には身分査証」
 言いながらテオドールはスワンプで足止めし、
「我々自由騎士は金銭の要求などしていない。これまで手に入れたモノはきっちり返してもらおう」
 じわじわ苦しめる為の因果逆転。
「弁明があるなら聞いておこう。最も、罪科が晴れる事はないのだが」
 さらに『大人しく』話をする為にコーリングコネクト。カースの上書き禁止ってやーね。
「鬼かよ!」
「当然である。今後同じ輩を出さぬために、徹底的にやらせてもらおう。命は奪わぬゆえに安心してほしい」
『テオドール』の叫びに、淡々と答えるテオドール。ついでに今の一言でコキュートス追加。
「もしかしてオレの護衛要らないんじゃないかな、これ」
 徹底的に相手を攻めるテオドールを見ながらナバルはそんなことを思う。実際のところはナバルがいなければ前衛を突破されているため、護衛が不要というわけではない。
「で、なんでオレを仮装対象に選んだんだ?」
「田舎臭いから。髪を赤く染めて盾持つだけで十分と思ったんで」
「へー」
 にこにこ笑いながらナバルは『ナバル』の言葉を受け止める。そうか、それがヘルメリアに伝わるオレの印象か。海を隔てた他国故に仕方ないかもしれないが、逆に海を隔ててもその印象が届いていることに言いようのない感情があふれていた。
 目の前の『ナバル』を視線で捕らえながら、同時に戦場全部を俯瞰するように見るナバル。一人守るならただ敵の動きを遮ればいい。二人護るなら敵の配置さえも計算に入れて動き必要がある。ナバルの強い情熱と訓練が、その防衛を可能としていた。
「お前達に本物の自由騎士と言うものを教えてやるぜ!」
「ふざけるな、田舎臭いガキのくせに……! くそ、ただのガキじゃないのか!?」
「うるさい! お前らなんかそのガキを騙る程度の奴じゃないか! しかも全然似てないし! 反省しろ!」
「ウンウン。央華キャラだからって、なんでもかんでも『アル』とかとかつけてちゃいけないネ」
 偽自由騎士のクオリティの低さに、深々と頷くルー。目の前の『ルー』を見ながら、その想いは更に強くなる。裏道で客を引いているようなバニーガール衣装。確かに際どさはあるが、華々しさはそこにない。露出が高いだけがバニーガールじゃないのである。
「央華キャラ……え……? え? バニーじゃないの?」
「二度も聞いたネ! 名誉棄損ヨ! ダブルアップで二百万GP要求するネ!」
「えええ!? そんな大金奪ってくなんて酷い! 極悪人だ!」 
「問・答・無・用! 今必殺の商人一流掌!」
 怒りのゼロレンジバースト(拳)が見事に『ルー』に突き刺さった。
「だーかーらー! 私のまねっこをするなら拳でかかってきなよ!」
 カーミラは拳を振りかざし『カーミラ』と接敵する。ナイフを持ったその姿は何処をどう見ても軽戦士だ。チャイナドレスと円月刀。頭の角と強調された胸だけがかろうじて本物の痕跡を示していた。
「自分がマネしようしたのがどんなものか、味わってみなよ! うっだらぁぁー!」
 踏み込みと同時に拳を放ち、『カーミラ』の腹部に拳を叩きつけるカーミラ。深く踏み込み強く打つ。何のことはない。拳打の基本だ。基本だからこそ、それを極めればその威力は絶大となる。カーミラにあって『カーミラ』にない鍛錬の差。それを示す。
「この技は姿をマネっこしただけじゃあ、絶対に辿り着けない境地だ!」
「つ、強い……!」
 当たり前だが、自由騎士と偽物との実力差は明白だ。
 培ってきた戦歴が違う。刻んできた覚悟が違う。武器を握る重みが違う。
 偽物が自由騎士に勝っていたのはヘルメリアと言う地の利程度で、それはもう意味をなさない。偽物は逃げる間もなく攻め入られ、そして倒される未来しかなかった。
「ま、こんな所だろう」
 自分の偽物を地に伏すテオドール。周りを見回せば、他の偽物は全て倒されていた。
 時計の秒針は、ようやく半分回った程度だった。


 当たり前と言えば当たり前だが、自由騎士が肉体的に受けたダメージは少ない。
 そして当たり前と言えば当たり前だが、自由騎士が精神的に受けたダメージは大きかった。
「あたしってこういうイメージだったんだ……」
 尻尾とあんな態度程度で変装できたと思われていたレイラは自分の偽物を見て落胆する。見た目の印象が歪んで伝わったとはいえ、流石に耐えきれないものがあった。
「奪った金は此処にあるみたいネ。足りない分はムショで労働奉仕してもらうヨ」
 アジトを探っていたルーは、偽物達の金庫を見つける。これを被害者に返せば、いくばくかの補填になるだろう。ちょっぴり着服……しようとして自分を律した。
「いや、いっそ奴隷商人に売り払うのもいいだろうな。碌でもないノウブルに売るように指示しておくぜ」
 言ってにらみを利かせるウェルス。通商連を通せば、そういった奴隷商人に伝手を取ることが出来るだろう。脅しか本気かわからないウェルスの言葉に震えあがる偽物達。
「しょーかふりょーだっ!」
 物足りない、とばかりにカーミラが頬を膨らませる。仮にも自分の偽物なのだから、もう少し強くてもよかったのに。ほぼワンパンで決まったため、不完全燃焼状態だ。
「ま、こいつ等はその辺にたむろするのチンピラだ。そんなもんだろ。
 それよりも似たようなやつらが出ないようにしないとな」
 煙草に火をともし、肺一杯に煙を吸い込むザルク。その辺に入るチンピラ。それは逆に言えば誰でも自由騎士を名乗り悪事を行うことが出来ることになる。再犯防止をしっかりしなければいけない。
「議題の一つに挙げておこう。治安維持は優先度が高いからな」
 ザルクの言葉に浮かぶかと頷くテオドール。後手に回したつもりはないが、このような事件が起こるなら街の警邏にもう少し力を注ぐべきか。
「檻の中でしっかり反省して、ちゃんと更生して下さいね」
「ちゃんと償いを終えたら、今度は本物の自由騎士を目指してみたらどうだ?」
 やってきた警邏に偽物達を引き渡す自由騎士達。偽物達にアンジェリカとナバルはそう言い放った。彼らが本当に反省し、更生するかは分からない。どうあれしばらくは法の下で罰を受けることになるだろう。
 その後彼らがまた犯罪行為に走るか。あるいは本物の自由騎士になるか。それは別の話――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
クズいチンピラ書くのたのしー!

以上のような結果になりました。
偽物に関してはイラストおよびステシを曲解した感じになります。酷い。
これは相手を遠慮なくボコるための前置きでありけしてどくどくがそう思っているわけではふじこふじこ。

MVPは自覚あったんですね……ではなく、分かりやすい偽物設定をしてくれたシェーファー様に。ある意味、偽物達の方向性がこれで決められました。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済