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【潜入調査】平穏な日々の裏側で

●ニルヴァン小管区より南南西、メルキュール小管区 モンモランシーの街
「最近ニルヴァンが敵兵に落とされたとかなんとか」
「いや、大丈夫だ。我が国には全能たる白き神がおわす。聖堂騎士様たちもわたしたちを守護してくださる」
「ああ、そうだな。この平和に。豊穣に。ミトラース神に感謝を」
「感謝を」
酒場で食事をするシャンバラ人たちはテーブルに載せられた豊かな食事の前でエールで神に乾杯する。
聖堂騎士が神の名においてこの国を守っている限り不安はない。
聖櫃が豊穣を約束してくれる。不安に思うことはないのだ。
事実隣接する大国、ヴィスマルク帝国すらこの国の守りを超えてくることはないのだ。彼らはミトラースの作った箱庭の中で幸せに暮らしている。
●
「諸君。「聖域」がはられたことは水鏡の情報で君たちに伝えたとおりだ。
まったくもってどうにも厄介な事になった」
少々疲れをかくしきれていない 『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)が深刻な顔で、そう切り出した。
「そこで君たちには潜入捜査をしてもらう。場所はニルヴァンより南南西のメルキュール小管区。モンモランシーの街だ」
フレデリックは広げたシャンバラ地域の地図のニルヴァン要塞を指してから南南西の方向に指をすすめ、ある一点で止まる。
そこがモンモランシーということだろう。
「もちろんであるが君たちが自由騎士で有ることが発覚すれば……」
フレデリックは意地悪な表情で首元にもってきた手を水平に移動させた。
「……となるだろうな。つまりは変装や欺瞞も必要になってくるということだ。君たちならできるだろう?」
そういって、彼は詳細資料が書かれた書類を君たちに手渡した。
「最近ニルヴァンが敵兵に落とされたとかなんとか」
「いや、大丈夫だ。我が国には全能たる白き神がおわす。聖堂騎士様たちもわたしたちを守護してくださる」
「ああ、そうだな。この平和に。豊穣に。ミトラース神に感謝を」
「感謝を」
酒場で食事をするシャンバラ人たちはテーブルに載せられた豊かな食事の前でエールで神に乾杯する。
聖堂騎士が神の名においてこの国を守っている限り不安はない。
聖櫃が豊穣を約束してくれる。不安に思うことはないのだ。
事実隣接する大国、ヴィスマルク帝国すらこの国の守りを超えてくることはないのだ。彼らはミトラースの作った箱庭の中で幸せに暮らしている。
●
「諸君。「聖域」がはられたことは水鏡の情報で君たちに伝えたとおりだ。
まったくもってどうにも厄介な事になった」
少々疲れをかくしきれていない 『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)が深刻な顔で、そう切り出した。
「そこで君たちには潜入捜査をしてもらう。場所はニルヴァンより南南西のメルキュール小管区。モンモランシーの街だ」
フレデリックは広げたシャンバラ地域の地図のニルヴァン要塞を指してから南南西の方向に指をすすめ、ある一点で止まる。
そこがモンモランシーということだろう。
「もちろんであるが君たちが自由騎士で有ることが発覚すれば……」
フレデリックは意地悪な表情で首元にもってきた手を水平に移動させた。
「……となるだろうな。つまりは変装や欺瞞も必要になってくるということだ。君たちならできるだろう?」
そういって、彼は詳細資料が書かれた書類を君たちに手渡した。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.なんらかの情報を入手してくる
ねこてんです。
潜入調査です。スパイ大作戦です。所謂シティ・アドベンチャーですので今回においてあえて戦闘しない限りは戦闘は起こりません。
貴方たちの潜入についてはバレていません。
潜入期間は1日。
モンモランシーの街には定期的に『ミトラース神の愛をうけていないものを感知する指輪をもった』聖堂騎士が巡回にきますので、彼らに会ってしまうとすぐにシャンバラ人ではないことがバレてしまうので潜入する日程は決まっています。
決行日の天気は晴れです。
モンモランシーはそれほどに大きい街ではありません。
とは言え調査にはそれなりの時間がかかります。
調査ができる場所は5箇所。一箇所につき、四半日かかりますので、全員で同じ場所で行動するのであれば最大で4箇所しか調査できません。
ですが全員で行動する場合は必ず情報を得ることができます。
手を分けることは可能ですが、その分情報を得る可能性が低くなります。分ければ分けるほどにその可能性は減っていきます。
最悪情報を得ることができなくなる可能性があります。
(具体的には2班に分けることで情報を得る確率が50%に 3班で25%… と減っていく形になります。ポイント制ではありません)
時間的な順番も重要です。
深夜帯に住宅地や市場に向かってもだれもいません。
市場は大凡18時過ぎには店じまいをすることでしょう。
酒場は朝方まで営業しています。
小教会にはどの時間にいっても誰かはいることでしょう。
行動できる時間帯は
朝7時~12時、12時~18時 19時~24時、24時~6時と大まかに別れています。
(一箇所で聞き込みをすることで、この時間がすぎるという意味です)
※(追記)
時間帯ごとの情報に違いはありません。重なった場所を調べても得ることのできる情報は同じです。
また、この街は一般市民が平和に暮らしている街ですので、無茶なことはしないでください。
戦場に出ているような者はいませんので、顔バレの可能性はとても低いです。
派手なことをすればするほどバレやすいのでご注意を。
モンモランシーの街の住人はニルヴァン陥落の情報は薄っすらと聞いてはいますが、詳しいことは知りません。
ニルヴァンを奪還しに聖堂騎士が向かったことはしっていますが顛末については知りません。
(ある程度の情報統制はされていることでしょう)
この話題については彼らは知りたがるでしょう。しかして、その情報の取扱は細心の注意でもってご利用ください。翌日に来る巡回の騎士に詳細を尋ねることで、この街に自由騎士が侵入したことが発覚する可能性があります。
調査ができる場所は
・北部住宅地
・南部住宅地
・市場
・酒場
・小教会
の5箇所になります。
すべての場所に重要な情報があるわけではありません。
また、マザリモノ、ヨウセイ、キジンの皆様はシャンバラ人の認識においては異端です。ばれたら通報されることになります。
参加の際はより一層ばれないようにご注意くださいませ。
変装などをされることを推奨します。
潜入調査です。スパイ大作戦です。所謂シティ・アドベンチャーですので今回においてあえて戦闘しない限りは戦闘は起こりません。
貴方たちの潜入についてはバレていません。
潜入期間は1日。
モンモランシーの街には定期的に『ミトラース神の愛をうけていないものを感知する指輪をもった』聖堂騎士が巡回にきますので、彼らに会ってしまうとすぐにシャンバラ人ではないことがバレてしまうので潜入する日程は決まっています。
決行日の天気は晴れです。
モンモランシーはそれほどに大きい街ではありません。
とは言え調査にはそれなりの時間がかかります。
調査ができる場所は5箇所。一箇所につき、四半日かかりますので、全員で同じ場所で行動するのであれば最大で4箇所しか調査できません。
ですが全員で行動する場合は必ず情報を得ることができます。
手を分けることは可能ですが、その分情報を得る可能性が低くなります。分ければ分けるほどにその可能性は減っていきます。
最悪情報を得ることができなくなる可能性があります。
(具体的には2班に分けることで情報を得る確率が50%に 3班で25%… と減っていく形になります。ポイント制ではありません)
時間的な順番も重要です。
深夜帯に住宅地や市場に向かってもだれもいません。
市場は大凡18時過ぎには店じまいをすることでしょう。
酒場は朝方まで営業しています。
小教会にはどの時間にいっても誰かはいることでしょう。
行動できる時間帯は
朝7時~12時、12時~18時 19時~24時、24時~6時と大まかに別れています。
(一箇所で聞き込みをすることで、この時間がすぎるという意味です)
※(追記)
時間帯ごとの情報に違いはありません。重なった場所を調べても得ることのできる情報は同じです。
また、この街は一般市民が平和に暮らしている街ですので、無茶なことはしないでください。
戦場に出ているような者はいませんので、顔バレの可能性はとても低いです。
派手なことをすればするほどバレやすいのでご注意を。
モンモランシーの街の住人はニルヴァン陥落の情報は薄っすらと聞いてはいますが、詳しいことは知りません。
ニルヴァンを奪還しに聖堂騎士が向かったことはしっていますが顛末については知りません。
(ある程度の情報統制はされていることでしょう)
この話題については彼らは知りたがるでしょう。しかして、その情報の取扱は細心の注意でもってご利用ください。翌日に来る巡回の騎士に詳細を尋ねることで、この街に自由騎士が侵入したことが発覚する可能性があります。
調査ができる場所は
・北部住宅地
・南部住宅地
・市場
・酒場
・小教会
の5箇所になります。
すべての場所に重要な情報があるわけではありません。
また、マザリモノ、ヨウセイ、キジンの皆様はシャンバラ人の認識においては異端です。ばれたら通報されることになります。
参加の際はより一層ばれないようにご注意くださいませ。
変装などをされることを推奨します。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
2個
2個
6個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年03月02日
2019年03月02日
†メイン参加者 8人†
●
2月某日。モンモランシーの街に風変わりな避難民が尋ねてきた。
どうにも北方の戦乱により、南下してきたようだ。シャンバラ皇国は今近隣の邪教の国に襲われているという。なんと哀れな。しかし、ミトラース様が守ってくださる。聖堂騎士様たちもまた、守ってくれるのだ。心配することはない。この不幸はミトラース様が彼らに課した試練なのだ。その試練を超えれば彼らはきっとより幸せになれるだろう。ここはそう、神が与えし豊穣と幸福の国なのだから。(市場の商人の日記より)
潜入調査は経験が無いわけではないが得意、とまではいかない。
『演技派』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)は帽子を深くかぶり直す。戦争で暴力を振りかざすよりは、ずいぶんとやりやすい良い仕事だ。彼はハミルトンと名乗り護衛係として行動する。
彼ら自由騎士は戦火を逃れ南下する難民とその護衛としてモンモランシーの街に潜入する。
折しも明日は聖堂騎士様の視察がある日だ。心なしか住民たちにも緊張の色があるが、彼ら『難民』の来訪にはソレほどまでには警戒はない。門番からはむしろ大変だったねぇ、だけどミトラース様は守ってくれるよと声を掛けられる。
自由騎士たちはまずは市場に赴いた。
市場には新鮮な野菜や切り分けられた肉などが多く並ぶ。朝から昼の時間帯は、もっとも市場が活性化する時間帯である。
鮮やかに色づいた野菜や果物は見るだけでそれが上質なものだとわかる。金額もイ・ラプセルより少し安いくらいだ。
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)……もとい『シエル』と名乗った女が、「このお野菜はどこでとれたものか」と聞けば、商人は笑顔で「ミトラース様のお恵みだよ」と答えた。
エルシーはその言葉に少しだけ眉を顰めるが、それを隠すようにルークが「よい店に巡り会えた、ミトラース神に感謝を。大所帯で避難してきたから、物資は多く必要でね」とフォローする。
彼は見事にミトラース信者を演じる。それは自分すら騙すほどの作り込みなのだ。今の彼は敬虔なミトラース信者そのものだ。
「それは大変だねえ。いいよ、お安くしておくよ。そっちのぶっちょづらのお兄さんも。そんなに警戒しなくてもここは聖堂騎士様がまもってくださるから少しは気をお抜き」
『護衛対象』たちの後ろで顰め面の『信念の盾』ランスロット・カースン(CL3000391)に商人の老婆が微笑めばランスロットは軽く会釈する。
「おやおや、恥ずかしがりさんかい?」
「その、果物ほしいのだわ」
シャンバラの市場で購入した白いローブを纏った『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)が指をさせば老婆は嬉しそうに渡してくれる。
「これはね。私のりんご園で今日収穫したものだよ。甘くて美味しいからね。少しおまけしておくよ」
きゐこはてにしたりんごを見つめる。イ・ラプセルで食べるりんごと何ら変わりはない。強いて言えば少し大ぶりで甘みは強いということくらいだ。持ち帰り調べたところで真新しい情報を得ることはできないだろう。無理やり育てた、ではなく豊穣の力によって季節問わず肥沃な大地でより良く育ったというだけである。
『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は老婆の側でお金を数えている少年に話しかける。
「商売の勉強大変だねー。カノンも師匠に武芸を習ってるんだけど理不尽な事言われたりしてさ」
「そうなの? おばばはそんなこといわないよ」
彼らは一様にして愚痴などはない。恵まれた大地。そこにある豊穣は神の恵み。それが平等に与えられているのだ。もちろんそこには階級もあるだろう。その階級に応じた恵みは彼ら『恵まれた』シャンバラ人に穏やかな生活を与える。
そう、神のご意思によって与えられる日常に不満も愚痴もなにもないのだ。ちょっとした不幸は神の試練。しかし神はその試練を乗り越えればさらなる幸福を与えてくれるのだ。
「うちの依頼人がしたたかにも戦火を逃れつつ一旗上げたいみたいなんだけど、商機じゃない?」
「なんだいなんだい、この街で市場でもだしたければ自由にすればいいんだよ。その商品に欲しいものがあればみんな買ってくれるさ」
カノンはまるでカーテンを押しているような気分になる。もしくは泥沼に釘を打っているような気分といえばいいのか。
『少年聖歌隊』ティア・ブラックリップ(CL3000489)は駆け出しの聖職者の格好でマイナスイオンを振りまきつつも、市場を慎重に見つめる。穀物や青果、織物など不足しているものはない。何もかもが潤沢に揃っている。価格だってイ・ラプセルより少し安いくらいだ。
商人たちの表情は一様に明るく、客もまた明るい表情で売買を行っている。穏やかに人々は豊穣(ミトラース)に感謝し、その恵みを受取る。飢えはない。苦しみもない。まさにここは地上の楽園そのものなのだろう。
――その地盤が何でつくられているかを思えばうんざりしてしまうが。
『密着王』ニコラス・モラル(CL3000453)はいつの間にか食事をとりながら美人の花売りと楽しそうに会話をしている。
彼らの流通は、自分の畑で取れた果実などをそのまま市場に持ってきて売っていることがほとんどのようだった。季節問わず、どんな果物や野菜も見事に実る土壌を有している彼らは、各々違う野菜を育てそして販売し流通させているという。
肉なども牧場主が安く供給しているのだ。おおよそにおいて管区ごとに農耕が盛んで地産地消が基本となっているらしい。
たまに聖央都や通商連を通じて遠い管区からの変わった商品が届くこともあるらしいと聞いた。その日は大いに市場は盛り上がるという。
時計はいつしかてっぺんを超えていた。
彼らは南北の住宅地に分かれて散策する。
『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)は図書館、のような場所をなんとか見つける。
司書にお辞儀をして幻想種や神話に関する本を探すが、そもそもにおいて存在していない。
薬草などを記した図鑑や童話。農業の指南書。そしてミトラースを称える本。そういったものばかりだ。
図鑑はイ・ラプセルでみるのと対して変わらない。童話においてはヒトはどうあるべきかを説くようなどこにでもあるようなもの。ただ一様に全てはミトラース様のおかげで締められているのは気持ちがわるく感じた。
ミトラースを称える本にはミトラースがどれほど素晴らしいかなどが書かれている。聖櫃が支えてくれる。その聖櫃の源はミトラースである。
そして所謂神話などの本は「ない」。古代神しかり、他国の神について筆記されている本はない。
神とはミトラース唯一神であるのだから。
「探している本はありませんか?」
「え、ええ、そうみたいです。でも参考になりました。この本についてききたいことがあるのですが」
ミトラースの教えと書かれた本をさしだせば司書は嬉しそうに応えてくれる。如何にミトラースが素晴らしいかを。感情探査を走らせるが彼らの中にあるのは『幸福』である。
不安などはない。全てはミトラース神が私達を守ってくださるのだから。
夕方になり彼らは集合する。住宅地にはスラムと呼べるものはなかった。まったく居心地がわるいのだわとはきゐこの言。
すべて同じような住居によく整備された道。目星にひっかかるようなものはなかった。
カノンが歌をうたってもかれらはキョトンとするばかり。
ミトラース聖歌とよばれる歌を逆にきかされて歌わされてしまった状態だ。聖歌の大筋はみなヒトはミトラースを称えれば幸せになれる。そういったものだ。
童謡と呼べるものは彼らには存在していないようであった。カノンとティアが子供たちと話すが、子供だけが知っていることなどはない。みな聖堂騎士様がかっこいいだの未来は聖堂騎士になるだの言っているだけだ。
ニコラスも奥方様と世間話をするものの、ニルヴァンの話になって口を濁した程度で特に情報は得ることができなかった。
どうにも情報統制がされているというよりは、必要ではない情報を住民に徹底して触れさせていないということなのだろう。だから彼らは何も『知らない』のだ。
エルシーが戦力調査をすれば、多少の兵士はいるが、それはあくまでも自警団だと言われた。たまに聖堂騎士が視察に来て変化がないかを確認する。戦闘力が必要なことで問題があれば聖堂騎士がそれに対処する。 管区教会とこの街は少々離れてはいるが彼らは教会に行くことを許されてはいない。管区教会に騎士や管区長はいるだろうけど、詳しくはわからないとの答えだった。
彼らはいわば箱庭で守られているだけで、ソレ以上のことを知らない、知りたいともおもわない。知る必要がないからだ。
恵みはいつだって、等しく神が与えてくれるものなのだから。
次は酒場に皆で向かう。
酒場は聖堂騎士に向けた宿も経営しているらしい。明日の聖堂騎士の出迎えのために掃除もしっかりとされている。
子どもたちが入ってくるのも特には止められない。マスターの出す食事はとても美味しいらしく、家族連れで食事にくるものもいるらしい。
「聖央都には聖域が、なによりミトラース神がおられるシャンバラは安泰ですわ」
エルシーはいつのまにかシャンバラ人の座るテーブルに相席し、談笑している。
「私、聖域をみたことないのですが、どのような物なのかご存知でしょうか?」
「ああ、神が齎す何をもを拒む壁さ。もし聖央都に攻撃されても神の御手で防がれるのさ、まあ俺たちみたいな田舎者に見る機会は無いだろうけどな」
カノンは教えてもらった『聖歌』を披露すれば、酔客たちは手を叩いて喜ぶ。美しい歌声の聖歌は彼らにとって大きな癒やしを与えたのだろう。
「この平和に。豊穣に。ミトラース神に感謝を」
ルークは近くの酔客を集めて乾杯の音頭をとる。労働のあと疲れを癒やしに来ている彼らは嬉しそうにその乾杯の音頭にグラスを掲げた。
普段の目つきの悪さはどこへやら、ルークはひとのいい笑顔で彼らと話す。
「土地勘が無くてね。この後行く宛もないので情報が欲しい。連れに子供も多いからな、安全なところまでは送ってやりたい。
聖堂騎士様方の邪魔になるのは不本意なので、軍事施設のある方は避けたいんだ」
「そうかい、此処にすんでもいいとおもうんだけれどもな。南の方なら鉱山もある仕事先には困らんだろうよ。そりゃあ軍事施設となりゃあ大管区方面だろう。聖央都や大管区に聖堂騎士は集まっている」
同じテーブルに座るティアは両手でお茶を行儀よくくぴくぴと飲んでいる。
「で、最近どうよ。噂話とかさ」
ニコラスがずいぶん酔っ払っている客に話しかける。
「ニルヴァンが陥落したっていうけど、どうなんだろうねえ。魔女があの近くにいたっていうけど」
その言葉にニコラスは食いつく。
「魔女だって?! 汚らわしい」
「でも安心しな、にいちゃん。聖央都の下には「獄層」ってのがあるらしい」
「獄層?」
「ああ、世の中の罪人がその罪を焼かれて浄化される場所だそうだ。魔女の連中もきっとそこで焼かれて悔い改めてるんだろう。全ては聖騎士様に任せればいいのさ。怖がらなくていいよ。魔女は全部そこで焼き払うのさ」
ティアはアリアと目を合わせ、こころのメモにその獄層という言葉を記す。この楽園であるシャンバラにおいて異質なその単語は重く、ティアの心にのしかかる。
『きゐ子さん、獄層という存在は怪しいと思いませんか?』
つなげたままのテレパスでアリアはきゐ子に話しかけた。
『この果実酒おいしいのだわ!』
『きゐ子さん!』
『わかってるのだわ。魔女が焼かれる……聖櫃の親玉みたいなのがあるってことなのかしら?』
「ねえ、その獄層を詳しく教えてほしいのだわ」
きゐ子が先を促す。
「俺も悪しき者が焼かれる場所ということくらいしか知らないさ。悪いことをすりゃ魔女でなくても放り込まれるらしいから悪いことはするもんじゃないっていうことだ。神のご意思にしたがっていれば、悪いことなんてするはずもないだろう、なあお嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんじゃないのだわ! 大人なのだわ!」
酒場から出た彼らは最後に教会に向かう。
「こんな夜更けに、いかがされましたか?」
深夜灯りのつく教会にいけば修道女が迎えてくれた。
「いえ、子供が寝れないから、祈りを捧げたいと泣き出しはじめまして。なあ? 坊主」
ランスロットが背にティアを背負いそう言えば、ティアはうなずく。
「胸騒ぎがするのです。ですがミトラース様に祈ればそれは解決するかと」
「我々は戦火から逃れて来たものでして、子供にとってはソレは不安でしかたないのでしょう」
「それは難儀でしたね。ええ、ええ、祈りましょう。ミトラース様はその憂いを払拭してくれます」
彼らは教会の礼拝堂に案内される。
ランスロットは見よう見まねのシャンバラの祈りをミトラースの像に捧げる。
きゐ子が教会の入り口で逡巡していれば修道女に優しく促される。
(ああ~~~シュウキョウって苦手なのだわ。でも否定すれば怪しまれるし。うう、居心地悪いわ)
アリアがキョロキョロと絵などの美術品をみていたら修道女がミトラース様のお姿が描かれたものです。ごえんりょなくご覧くださいなと勧める。その言葉に従ってアリアは絵を眺めるが、神々しいそのミトラースの姿がやけに胸に引っかかる。
有り体にいえば『気持ちが悪い』。
それは図書館でも感じたそれだ。
カノンが聖歌をねだれば、少しだけと修道女はオルガンを弾く。内容は同じ。新しい情報はない。
ニコラスが祈れば、その酒精の香りに修道女は飲みすぎですよとたしなめる。
「そりゃ申し訳ない。ここの酒が旨くて」
「それはようございました。ミトラース様の豊穣の果実酒はおいしゅうございますから」
「早朝にはでかけるので、なんというか、酔冷ましの祈りってところで」
「うふふ、そんな祈りなんてあるのかしら?」
ティアは祈りながら周囲を見渡すが特に怪しい痕跡はみつからない。至って普通の礼拝堂だ。
「ミトラース様ばんざーい、聖域もばんざーい……んで、聖域って結局なんなんだ?」
「こら、すみませんまだ酔っ払ってるみたいで」
バンザイと祈りがごっちゃになったルークをエルシーがたしなめる。探るべきことは彼とエルシーは同じだ。だからそんなルークにエルシーはアイコンタクトする。
「いえいえ、よいお酒を飲まれたのですね。あら、あなたは神職の方?」
「ええ、駆け出しですが。その――信心深ければ私もいつか聖央都に行けますでしょうか?」
「ええ、祈りはきっと届きます」
「その、お聞きしてもいいですか?」
「ええ、よしなに」
「彼も言っているのですが私も聖央都の聖域がどのようなものなのかわからないのです。いつか聖央都に向かいたいと思っている以上それがなにか知りたくて」
「熱心ですね。聖域とは、聖央都を包む防御結界。その源は不浄なる魔女の罪。魔女が罪深ければ罪深いほどにその力は大きくなります。
最近魔女を見つけたという報告がありました。魔女の罪を断罪し業火に焚べ、罪を聖域として贖わせるのです」
そう言った修道女の目は冷たい。
「貴方がたには関係のないお話ですが。それではみなみなさまに神のご加護がありますように」
修道女は微笑む。明るい太陽に微睡むような幸せそうな笑みで。それはこのシャンバラの民と同じ、全く同じ笑顔だ。
自由騎士の中でいろいろな情報がつながっていく。
聖央都の地下にあるといわれる獄層、そして――源の魔女の罪とは聖櫃を指すのだろう。
彼らはシャンバラを守るすべてがヨウセイの犠牲の上に成り立っているのだと気づき、吐き気を催す。
シャンバラの民はその怖気のするようなからくりには気づいていないのだろう。そして彼らは神に豊穣を感謝する。
彼らシャンバラ人の笑顔が歪にみえて、彼らは言葉をなくした。
2月某日。モンモランシーの街に風変わりな避難民が尋ねてきた。
どうにも北方の戦乱により、南下してきたようだ。シャンバラ皇国は今近隣の邪教の国に襲われているという。なんと哀れな。しかし、ミトラース様が守ってくださる。聖堂騎士様たちもまた、守ってくれるのだ。心配することはない。この不幸はミトラース様が彼らに課した試練なのだ。その試練を超えれば彼らはきっとより幸せになれるだろう。ここはそう、神が与えし豊穣と幸福の国なのだから。(市場の商人の日記より)
潜入調査は経験が無いわけではないが得意、とまではいかない。
『演技派』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)は帽子を深くかぶり直す。戦争で暴力を振りかざすよりは、ずいぶんとやりやすい良い仕事だ。彼はハミルトンと名乗り護衛係として行動する。
彼ら自由騎士は戦火を逃れ南下する難民とその護衛としてモンモランシーの街に潜入する。
折しも明日は聖堂騎士様の視察がある日だ。心なしか住民たちにも緊張の色があるが、彼ら『難民』の来訪にはソレほどまでには警戒はない。門番からはむしろ大変だったねぇ、だけどミトラース様は守ってくれるよと声を掛けられる。
自由騎士たちはまずは市場に赴いた。
市場には新鮮な野菜や切り分けられた肉などが多く並ぶ。朝から昼の時間帯は、もっとも市場が活性化する時間帯である。
鮮やかに色づいた野菜や果物は見るだけでそれが上質なものだとわかる。金額もイ・ラプセルより少し安いくらいだ。
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)……もとい『シエル』と名乗った女が、「このお野菜はどこでとれたものか」と聞けば、商人は笑顔で「ミトラース様のお恵みだよ」と答えた。
エルシーはその言葉に少しだけ眉を顰めるが、それを隠すようにルークが「よい店に巡り会えた、ミトラース神に感謝を。大所帯で避難してきたから、物資は多く必要でね」とフォローする。
彼は見事にミトラース信者を演じる。それは自分すら騙すほどの作り込みなのだ。今の彼は敬虔なミトラース信者そのものだ。
「それは大変だねえ。いいよ、お安くしておくよ。そっちのぶっちょづらのお兄さんも。そんなに警戒しなくてもここは聖堂騎士様がまもってくださるから少しは気をお抜き」
『護衛対象』たちの後ろで顰め面の『信念の盾』ランスロット・カースン(CL3000391)に商人の老婆が微笑めばランスロットは軽く会釈する。
「おやおや、恥ずかしがりさんかい?」
「その、果物ほしいのだわ」
シャンバラの市場で購入した白いローブを纏った『真理を見通す瞳』猪市 きゐこ(CL3000048)が指をさせば老婆は嬉しそうに渡してくれる。
「これはね。私のりんご園で今日収穫したものだよ。甘くて美味しいからね。少しおまけしておくよ」
きゐこはてにしたりんごを見つめる。イ・ラプセルで食べるりんごと何ら変わりはない。強いて言えば少し大ぶりで甘みは強いということくらいだ。持ち帰り調べたところで真新しい情報を得ることはできないだろう。無理やり育てた、ではなく豊穣の力によって季節問わず肥沃な大地でより良く育ったというだけである。
『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は老婆の側でお金を数えている少年に話しかける。
「商売の勉強大変だねー。カノンも師匠に武芸を習ってるんだけど理不尽な事言われたりしてさ」
「そうなの? おばばはそんなこといわないよ」
彼らは一様にして愚痴などはない。恵まれた大地。そこにある豊穣は神の恵み。それが平等に与えられているのだ。もちろんそこには階級もあるだろう。その階級に応じた恵みは彼ら『恵まれた』シャンバラ人に穏やかな生活を与える。
そう、神のご意思によって与えられる日常に不満も愚痴もなにもないのだ。ちょっとした不幸は神の試練。しかし神はその試練を乗り越えればさらなる幸福を与えてくれるのだ。
「うちの依頼人がしたたかにも戦火を逃れつつ一旗上げたいみたいなんだけど、商機じゃない?」
「なんだいなんだい、この街で市場でもだしたければ自由にすればいいんだよ。その商品に欲しいものがあればみんな買ってくれるさ」
カノンはまるでカーテンを押しているような気分になる。もしくは泥沼に釘を打っているような気分といえばいいのか。
『少年聖歌隊』ティア・ブラックリップ(CL3000489)は駆け出しの聖職者の格好でマイナスイオンを振りまきつつも、市場を慎重に見つめる。穀物や青果、織物など不足しているものはない。何もかもが潤沢に揃っている。価格だってイ・ラプセルより少し安いくらいだ。
商人たちの表情は一様に明るく、客もまた明るい表情で売買を行っている。穏やかに人々は豊穣(ミトラース)に感謝し、その恵みを受取る。飢えはない。苦しみもない。まさにここは地上の楽園そのものなのだろう。
――その地盤が何でつくられているかを思えばうんざりしてしまうが。
『密着王』ニコラス・モラル(CL3000453)はいつの間にか食事をとりながら美人の花売りと楽しそうに会話をしている。
彼らの流通は、自分の畑で取れた果実などをそのまま市場に持ってきて売っていることがほとんどのようだった。季節問わず、どんな果物や野菜も見事に実る土壌を有している彼らは、各々違う野菜を育てそして販売し流通させているという。
肉なども牧場主が安く供給しているのだ。おおよそにおいて管区ごとに農耕が盛んで地産地消が基本となっているらしい。
たまに聖央都や通商連を通じて遠い管区からの変わった商品が届くこともあるらしいと聞いた。その日は大いに市場は盛り上がるという。
時計はいつしかてっぺんを超えていた。
彼らは南北の住宅地に分かれて散策する。
『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)は図書館、のような場所をなんとか見つける。
司書にお辞儀をして幻想種や神話に関する本を探すが、そもそもにおいて存在していない。
薬草などを記した図鑑や童話。農業の指南書。そしてミトラースを称える本。そういったものばかりだ。
図鑑はイ・ラプセルでみるのと対して変わらない。童話においてはヒトはどうあるべきかを説くようなどこにでもあるようなもの。ただ一様に全てはミトラース様のおかげで締められているのは気持ちがわるく感じた。
ミトラースを称える本にはミトラースがどれほど素晴らしいかなどが書かれている。聖櫃が支えてくれる。その聖櫃の源はミトラースである。
そして所謂神話などの本は「ない」。古代神しかり、他国の神について筆記されている本はない。
神とはミトラース唯一神であるのだから。
「探している本はありませんか?」
「え、ええ、そうみたいです。でも参考になりました。この本についてききたいことがあるのですが」
ミトラースの教えと書かれた本をさしだせば司書は嬉しそうに応えてくれる。如何にミトラースが素晴らしいかを。感情探査を走らせるが彼らの中にあるのは『幸福』である。
不安などはない。全てはミトラース神が私達を守ってくださるのだから。
夕方になり彼らは集合する。住宅地にはスラムと呼べるものはなかった。まったく居心地がわるいのだわとはきゐこの言。
すべて同じような住居によく整備された道。目星にひっかかるようなものはなかった。
カノンが歌をうたってもかれらはキョトンとするばかり。
ミトラース聖歌とよばれる歌を逆にきかされて歌わされてしまった状態だ。聖歌の大筋はみなヒトはミトラースを称えれば幸せになれる。そういったものだ。
童謡と呼べるものは彼らには存在していないようであった。カノンとティアが子供たちと話すが、子供だけが知っていることなどはない。みな聖堂騎士様がかっこいいだの未来は聖堂騎士になるだの言っているだけだ。
ニコラスも奥方様と世間話をするものの、ニルヴァンの話になって口を濁した程度で特に情報は得ることができなかった。
どうにも情報統制がされているというよりは、必要ではない情報を住民に徹底して触れさせていないということなのだろう。だから彼らは何も『知らない』のだ。
エルシーが戦力調査をすれば、多少の兵士はいるが、それはあくまでも自警団だと言われた。たまに聖堂騎士が視察に来て変化がないかを確認する。戦闘力が必要なことで問題があれば聖堂騎士がそれに対処する。 管区教会とこの街は少々離れてはいるが彼らは教会に行くことを許されてはいない。管区教会に騎士や管区長はいるだろうけど、詳しくはわからないとの答えだった。
彼らはいわば箱庭で守られているだけで、ソレ以上のことを知らない、知りたいともおもわない。知る必要がないからだ。
恵みはいつだって、等しく神が与えてくれるものなのだから。
次は酒場に皆で向かう。
酒場は聖堂騎士に向けた宿も経営しているらしい。明日の聖堂騎士の出迎えのために掃除もしっかりとされている。
子どもたちが入ってくるのも特には止められない。マスターの出す食事はとても美味しいらしく、家族連れで食事にくるものもいるらしい。
「聖央都には聖域が、なによりミトラース神がおられるシャンバラは安泰ですわ」
エルシーはいつのまにかシャンバラ人の座るテーブルに相席し、談笑している。
「私、聖域をみたことないのですが、どのような物なのかご存知でしょうか?」
「ああ、神が齎す何をもを拒む壁さ。もし聖央都に攻撃されても神の御手で防がれるのさ、まあ俺たちみたいな田舎者に見る機会は無いだろうけどな」
カノンは教えてもらった『聖歌』を披露すれば、酔客たちは手を叩いて喜ぶ。美しい歌声の聖歌は彼らにとって大きな癒やしを与えたのだろう。
「この平和に。豊穣に。ミトラース神に感謝を」
ルークは近くの酔客を集めて乾杯の音頭をとる。労働のあと疲れを癒やしに来ている彼らは嬉しそうにその乾杯の音頭にグラスを掲げた。
普段の目つきの悪さはどこへやら、ルークはひとのいい笑顔で彼らと話す。
「土地勘が無くてね。この後行く宛もないので情報が欲しい。連れに子供も多いからな、安全なところまでは送ってやりたい。
聖堂騎士様方の邪魔になるのは不本意なので、軍事施設のある方は避けたいんだ」
「そうかい、此処にすんでもいいとおもうんだけれどもな。南の方なら鉱山もある仕事先には困らんだろうよ。そりゃあ軍事施設となりゃあ大管区方面だろう。聖央都や大管区に聖堂騎士は集まっている」
同じテーブルに座るティアは両手でお茶を行儀よくくぴくぴと飲んでいる。
「で、最近どうよ。噂話とかさ」
ニコラスがずいぶん酔っ払っている客に話しかける。
「ニルヴァンが陥落したっていうけど、どうなんだろうねえ。魔女があの近くにいたっていうけど」
その言葉にニコラスは食いつく。
「魔女だって?! 汚らわしい」
「でも安心しな、にいちゃん。聖央都の下には「獄層」ってのがあるらしい」
「獄層?」
「ああ、世の中の罪人がその罪を焼かれて浄化される場所だそうだ。魔女の連中もきっとそこで焼かれて悔い改めてるんだろう。全ては聖騎士様に任せればいいのさ。怖がらなくていいよ。魔女は全部そこで焼き払うのさ」
ティアはアリアと目を合わせ、こころのメモにその獄層という言葉を記す。この楽園であるシャンバラにおいて異質なその単語は重く、ティアの心にのしかかる。
『きゐ子さん、獄層という存在は怪しいと思いませんか?』
つなげたままのテレパスでアリアはきゐ子に話しかけた。
『この果実酒おいしいのだわ!』
『きゐ子さん!』
『わかってるのだわ。魔女が焼かれる……聖櫃の親玉みたいなのがあるってことなのかしら?』
「ねえ、その獄層を詳しく教えてほしいのだわ」
きゐ子が先を促す。
「俺も悪しき者が焼かれる場所ということくらいしか知らないさ。悪いことをすりゃ魔女でなくても放り込まれるらしいから悪いことはするもんじゃないっていうことだ。神のご意思にしたがっていれば、悪いことなんてするはずもないだろう、なあお嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんじゃないのだわ! 大人なのだわ!」
酒場から出た彼らは最後に教会に向かう。
「こんな夜更けに、いかがされましたか?」
深夜灯りのつく教会にいけば修道女が迎えてくれた。
「いえ、子供が寝れないから、祈りを捧げたいと泣き出しはじめまして。なあ? 坊主」
ランスロットが背にティアを背負いそう言えば、ティアはうなずく。
「胸騒ぎがするのです。ですがミトラース様に祈ればそれは解決するかと」
「我々は戦火から逃れて来たものでして、子供にとってはソレは不安でしかたないのでしょう」
「それは難儀でしたね。ええ、ええ、祈りましょう。ミトラース様はその憂いを払拭してくれます」
彼らは教会の礼拝堂に案内される。
ランスロットは見よう見まねのシャンバラの祈りをミトラースの像に捧げる。
きゐ子が教会の入り口で逡巡していれば修道女に優しく促される。
(ああ~~~シュウキョウって苦手なのだわ。でも否定すれば怪しまれるし。うう、居心地悪いわ)
アリアがキョロキョロと絵などの美術品をみていたら修道女がミトラース様のお姿が描かれたものです。ごえんりょなくご覧くださいなと勧める。その言葉に従ってアリアは絵を眺めるが、神々しいそのミトラースの姿がやけに胸に引っかかる。
有り体にいえば『気持ちが悪い』。
それは図書館でも感じたそれだ。
カノンが聖歌をねだれば、少しだけと修道女はオルガンを弾く。内容は同じ。新しい情報はない。
ニコラスが祈れば、その酒精の香りに修道女は飲みすぎですよとたしなめる。
「そりゃ申し訳ない。ここの酒が旨くて」
「それはようございました。ミトラース様の豊穣の果実酒はおいしゅうございますから」
「早朝にはでかけるので、なんというか、酔冷ましの祈りってところで」
「うふふ、そんな祈りなんてあるのかしら?」
ティアは祈りながら周囲を見渡すが特に怪しい痕跡はみつからない。至って普通の礼拝堂だ。
「ミトラース様ばんざーい、聖域もばんざーい……んで、聖域って結局なんなんだ?」
「こら、すみませんまだ酔っ払ってるみたいで」
バンザイと祈りがごっちゃになったルークをエルシーがたしなめる。探るべきことは彼とエルシーは同じだ。だからそんなルークにエルシーはアイコンタクトする。
「いえいえ、よいお酒を飲まれたのですね。あら、あなたは神職の方?」
「ええ、駆け出しですが。その――信心深ければ私もいつか聖央都に行けますでしょうか?」
「ええ、祈りはきっと届きます」
「その、お聞きしてもいいですか?」
「ええ、よしなに」
「彼も言っているのですが私も聖央都の聖域がどのようなものなのかわからないのです。いつか聖央都に向かいたいと思っている以上それがなにか知りたくて」
「熱心ですね。聖域とは、聖央都を包む防御結界。その源は不浄なる魔女の罪。魔女が罪深ければ罪深いほどにその力は大きくなります。
最近魔女を見つけたという報告がありました。魔女の罪を断罪し業火に焚べ、罪を聖域として贖わせるのです」
そう言った修道女の目は冷たい。
「貴方がたには関係のないお話ですが。それではみなみなさまに神のご加護がありますように」
修道女は微笑む。明るい太陽に微睡むような幸せそうな笑みで。それはこのシャンバラの民と同じ、全く同じ笑顔だ。
自由騎士の中でいろいろな情報がつながっていく。
聖央都の地下にあるといわれる獄層、そして――源の魔女の罪とは聖櫃を指すのだろう。
彼らはシャンバラを守るすべてがヨウセイの犠牲の上に成り立っているのだと気づき、吐き気を催す。
シャンバラの民はその怖気のするようなからくりには気づいていないのだろう。そして彼らは神に豊穣を感謝する。
彼らシャンバラ人の笑顔が歪にみえて、彼らは言葉をなくした。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
必要な情報は得ることができましたので成功です。
MVPはニコラスさんへ。
おしかった方には少しだけ貢献を盛っておきました。
聖央都の地下にあるといわれる獄層
そして、聖域は聖櫃によって展開されているという情報を
得ることができました。
みなさんはこの後すぐに夜明けとともに出発したので
MVPはニコラスさんへ。
おしかった方には少しだけ貢献を盛っておきました。
聖央都の地下にあるといわれる獄層
そして、聖域は聖櫃によって展開されているという情報を
得ることができました。
みなさんはこの後すぐに夜明けとともに出発したので
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