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【楽土陥落】Zombiewall!土葬返し三姉妹!



●その三つ子、忌み嫌われし魔女狩りなり
『土葬返し』と呼ばれる三つ子の魔女狩り姉妹がいる。
 現枢機卿ゲオルグ・クラーマー同様、魔女を狩ることで聖央都入りを許された魔女狩りである。そしてその後もヨウセイを狩り続けた魔女狩り――なのだが、『土葬返し』の評価は低い。
 なぜなら、『土葬返し』がシャンバラに渡したヨウセイの数は、実際に狩った数の半数にも満たなかったからだ。彼女達は狩ったヨウセイを渡すことなく、自らの家に招き入れていた。それはけして『ヨウセイも人族である』という倫理的なことではない。『魔女狩り将軍』のように身に着ける為でもない。
「さあ、出陣よ。立ちなさい」
「しっかり盾になるのよ」
 それはとあるヨウセイの里での戦闘。
 命令を受けた首輪と手錠を付けられたヨウセイ達はそれ以外の寸鉄すら持たず、蒼白な表情で同胞の村に向かって進んでいた。その後ろに居る『土葬返し』の姿を認めて里のヨウセイは敵だと判断するが、ヨウセイ達は恐ろしい表情で進んでくるヨウセイ達に恐怖していた。
「許してくれ……許してくれ……こうしないと、娘が……」
「死にたくない……死にたくない……」
「殺してくれ……もう、あの姉妹に弄られるのは……」
 つぶつぶと呟くヨウセイ達。その表情と声から、里のヨウセイは何があったかを察する。厳密には、理解できないほどの仕打ちを受けたことを察する。向かってくる以上は敵なのだが、弓を撃つ指が止まってしまう。
 そして『土葬返し』はそれを意に会することなく攻めてくる。里のヨウセイも応戦するが、射た奴隷のヨウセイが人形のように甦るのを見て心が折れる。二度も仲間を撃てと言うのか。その葛藤が戦局に影響し――彼らもまた魔女狩りの手に落ちる。
 ヨウセイを奴隷とし、盾とする魔女狩り。捕まれば国の糧となるはずのモノを世界に返した魔女狩り。
 故にその二つ名は『土葬返し』。シャンバラに置いて生命ですらない存在を扱う穢れた姉妹。聖王都でも鼻つまみとされる存在だが、それでも成果をあげている以上は――つまりヨウセイを消費している以上にヨウセイを確保している以上は――目をつぶられている存在だった。
 そんな彼女らに命令が下った。
『聖王都に攻め入る自由騎士達を駆逐せよ』
「はーい」
 にっこりと笑う3姉妹。その姿はあどけない少女のようだ。
「ヨウセイ苛めるのって楽しいよねー」
「希望をもたせてあげて、足搔くさまが無様で笑っちゃう」
「私は痛めつけて泣いて詫びるのを見るのが好き。誇りを砕いた時のあの感覚、最高……!」
 だが、内に秘めた狂気は深い。彼女達もまたヨウセイをモノとしか考えていないシャンバラの魔女狩りだった。

●聖王都ウァティカヌス門前
「二百を超えるヨウセイの奴隷」
 自由騎士達が報告を聞いた時、まず最初に思ったことは何の冗談かという事だ。そしてそれが誇張でない事もすぐに知れた。
 聖王都ウァティカヌスの門の一つ。そこを陣取る首輪と手錠と衣服のみのヨウセイ達。そしてその奥に居る幼女ともいえる三つ子。ヨウセイの奴隷が肉の壁としてイ・ラプセル騎士団を足止めし、気を失ったヨウセイはネクロマンサーの魔術で強制的に起こされる。足止めされている間に攻めた騎士達は死霊魔術で一斉掃射されていた。
「真正面から突っ込めば、互いの被害が大きくなる。かといってこの門を閉ざしたままだと侵攻に問題が出る。
 こちらが陽動として牽制するので、その間に迂回して横から攻めてくれ。それでもかなりの数のヨウセイが阻むことになるが――」
 それでも、このまま真正面から力押しするよりは被害が少ないだろう。イ・ラプセルもヨウセイ達も。
「三分で決着がつかなかったら撤退する。それ以上は泥沼だ」
 戦争において時間は金。事、陽動に関しては相手が布陣を切り替える前に決着をつけるのがベストだ。
 相応の覚悟と実力、そして作戦が求められる。さて貴方は――


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
国力増強
担当ST
どくどく
■成功条件
1.18ターン以内に『土葬返し』三名を戦闘不能にする
 どくどくです。
 シャンバラ最終章、魔女狩りとヨウセイという原点回帰でございます。

 この共通タグ【楽土陥落】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。

●敵情報
・『土葬返し』ララ・オリオール
 聖王都入りした三つ子の魔女狩り。(見た目は)12才女性ケモノビト(イヌ)。狩ったヨウセイの数は多いが、聖櫃に捧げた数は少ないという稀有な存在です。最もそれは倫理的な理由ではなく、奴隷として使役し、苦しむ様を見たいと言う理由です。
 ネクロマンサーと呼ばれるスキルを使います。混沌の門を開いて怨霊を呼び【グラビティ2】を範囲で与えたり、戦闘不能になったヨウセイを一度だけ復活させて戦わせることが出来ます。純後衛タイプ。

・『土葬返し』リラ・オリオール
 聖王都入りした三つ子の魔女狩り。(見た目は)12才女性ケモノビト(イヌ)。ヨウセイに希望をもたせ、それを目の前で砕いて楽しむ思考をもっています。 
 ネクロマンサーと呼ばれるスキルを使います。『回復効果を逆転』させるバッドステータスを振りまいたり、足元を泥にしたりとバッドステータスを振りまいてきます。純後衛タイプ。

・『土葬返し』ロラ・オリオール
 聖王都入りした三つ子の魔女狩り。(見た目は)12才女性ケモノビト(イヌ)。ヨウセイのプライドを砕いて、屈服させる嗜好をもってます。
 ネクロマンサーと呼ばれるスキルを使います。『与えたダメージの10%HPが回復する』の効果を自分に付与し、格闘スキル(ランク2まで使用)で殴り掛かってきます。純前衛タイプ。

・ヨウセイ(×10~)
『土葬返し』に使われる奴隷です。手錠と首輪を嵌められており、精神的にも屈服しています。
 攻撃手段はありませんが、『土葬返し』への行く手を阻んだり、盾となったりします。また、戦闘不能になれば『土葬返し』の手によりマリオネットのような状態で蘇ることもあります。
 5ターン毎に5名、敵後衛に増援として現れます。

●場所情報
 聖王都ウァティカヌス門前。騎士団と真正面からぶつかっている横合いから『土葬返し』を攻める形です。足場や広さは戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、敵後衛に『ララ』『リラ』『ロラ』が、敵前衛に『ヨウセイ(×10)』がいます。
 急いでいるため、事前付与は不可とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
5個  5個  3個  3個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2019年04月20日

†メイン参加者 8人†




「汚い手とはいえ常套手段だな。それやられたら悩むヤツもいるわな」
 奴隷にしたヨウセイを盾にして戦う『土葬返し』。その戦い方を前に『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)はうんざりとした声をあげた。単純な物量的にも心情的にも厳しい状況だ。
「はー。弱いもの虐めはよくないよーぅ」
 ヨウセイの姿を見て『黒闇』ゼクス・アゾール(CL3000469)は三姉妹に言う。ゼクスの趣味としてはああいった強者を屈服させるのが趣味なのだが、それは嗜好の違いだろう。それを語りあう時間は今はない。
「三姉妹に捕らえられていたおかげで聖柩の薪にされずに済んだ……ともいえるが」
 心折れた表情で歩くヨウセイを見ながら『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は憎々し気に拳を握る。死は不可逆だ。だが死んでなければいい、というわけではない。『土葬返し』が行った仕打ちは決して許されるものではない。
「……何故、同じように生きる者相手にこんな仕打ちが出来るんだ」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は言って奥歯を強く噛みしめる。冷静な部分ではそれがシャンバラの価値観だと理解しながら、目の前の光景に怒りを覚える。如何なる理由があったとしても、許すわけにはいかない。
「嫌やわぁ……こないに仰山居はったら薙ぎ倒すにも苦労しそうやないの」
 物憂げにため息を吐く『艶師』蔡 狼華(CL3000451)。倒すことは難しくないだろうが、それでも手間なことには変わりない。奴隷として扱われているヨウセイに、特に感慨を覚えることなく武器を構えた。――あの程度のこと、裏社会ではよくあることだと割り切って。
「……ん。じゃまするなら、とっぱする」
 巨大なハンマーを構えて『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は頷いた。辛い現実に負けて、心が屈したヨウセイ。好きで『土蔵返し』に味方しているわけじゃない事も理解している。それを分かったうえで、リムリィは決意した。
「あいつらはあの時の……!」
『土葬返し』の姿を見て『極光の魔法少女』モニカ・シンクレア(CL3000504)は怒りの声をあげる。かつて自分の集落を襲った魔女狩り。その中にあの三姉妹の姿があったのは覚えている。何とか逃げおおせたが、あの顔と戦い方を忘れはしない。
「力なき者たちを盾にするなど外道にも程があるわね」
『魔女』エル・エル(CL3000370)は魔女狩りのやり方に怒りを覚える。倫理観に関して他人のことをどうこう言うつもりはないが、許す許さないは別問題だ。魔術刻印を起動させ、復讐の瞳で『土葬返し』を睨む。
「あらあら。横から来た?」
「そっちからは弱いのよ。貴方達、お願いね」
「あたらしいヨウセイが、二人。いいわ、あの目。壊したい……!」
『土葬返し』も自由騎士の存在に気付き、そちらに注意を向ける。陽動となっている騎士団は一旦奴隷に任せ、自由騎士に攻撃の矛先を向ける。ネクロマンサーと呼ばれる魔術を。
 聖王都ウァティカヌスをめぐる攻防が、今切って落とされる。


「華麗なるうちの剣舞、とくと見なしゃんせ!」
 一番最初に動いたのは狼華だった。二刀を構え、戦場を疾駆して一気にヨウセイまでの距離を詰める。やつれたヨウセイたちの目を見ながら、刀の柄を握りしめる。如何なる事情があろうとも立ちふさがるならすべて敵。一切の情をかけるつもりはない。
 戦場を見ながら、意識的に視界を閉じる。無音の舞台にただ一人自分がいるような感覚。そんな心象風景のまま、狼華は舞うように刃を繰り出していく。静と動、優雅と激動。鶴が飛び立つように美しく、そして鋭い舞がヨウセイ達を傷つける。
「命までは取らへんから、それを情けと思ておくれやす」
「そうよ。私達も命『は』とらなかったもん。情け深いよねー」
「ふざけんな! お前らが情を語るな!」
『土葬返し』の言葉に激昂するオルパ。確かに彼女たちはヨウセイの命を奪わなかった。だがそれとは別の、尊厳や心を壊していった。壊れた心を戻すのは難しい。心の傷を受けた同胞を思うと、胸が張り裂けそうだ。
 今すぐ三姉妹に攻め入りたい気持ちを押さえ、色違いのダガーを構える。魔力をダガーに乗せ、ヨウセイ達に切りかかった。『土葬返し』を攻める為にもヨウセイ達は排除しなくてはいけない。傷つく同族たちを見ながら、それでも手を止める事はない。
「ひどーい。ヨウセイさんかわいそー」
「文句ならお前らを倒したあとできいてやる。その覚悟ならできてるさ」
「出来る事なら避けたいがな」
 苦々しげにリュリュは呟く。敵対しているとはいえ、相手は無理やり盾にされているだけの存在だ。そんな相手を傷つける事はできるならしたくない。しかしそこを重視するあまり『土葬返し』を討てなかったのでは本末転倒だ。
 試験管に魔力を注ぎ、リュリュは戦場を見やる。傷ついている味方を冷静に判断し、癒しの術を行使していく。可能であれば傷ついたヨウセイも癒したいが、それをすれば敵を討つ速度が遅れてしまう。一秒でも無駄にできない状況に歯を食いしばって耐える。
「お前達を許すつもりはない。その腐りきった性根を叩き潰す」
「変なの。ヨウセイなんて人じゃないのにね。むしろ奴隷として扱ってあげるだけ有情なのに、それさえも許してくれないなんて狂ってるわ」
「ここでたおす」
 自分の身長を超えるハンマーをもちながら、リムリィはヨウセイを突破しようと前に進む。心が折れているヨウセイ達に退くように声をかけるが、彼らが止まる様子はない。自由騎士達が声をかけるたびに、三姉妹が声をかける。それだけで説得は届かなくなる。
 それでもリムリィは声をかけ続ける。絶望の淵にあっても、助けはある。送心る事が出来るのはリムリィ自身が助けられたから。助けてくれた優しい手を忘れぬようにリムリィは声をかけ続けていた。
「じゃましないで。にげて」
「逃げてもいいのよ。でも、その後はどうなるのかな? どうしてほしい?」
「奴隷の扱いに慣れてやがるな」
『土葬返し』を見ながらヘルメリアの奴隷商人を思い出しだすニコラス。恐怖の根源は想像力だ。そして想像とは経験から生まれる。三姉妹から受けた扱いが彼らの想像力を膨らませ、恐怖で縛っていく。
 オシゴトダイジ、と呟いてニコラスは魔力を練り上げる。空気に満ちたマナを取り入れながら、ニコラス自身が持つマナを活性化していく。ネクロマンサーの術を警戒しながら淡い光を解き放った。癒しの光が仲間を包み込む。
「あの様子から考えると多分……死ぬよりも辛い状況だったってか」
「えー。私達『優しく』シテあげたのに。ねー?」
「あんた達いい趣味してるわね……屈服させがいがあるわっ!」
『土葬返し』の笑いを聞きながらモニカは唇を下で舐める。ヨウセイを自分の欲望を満たす為の玩具としか思っていない少女達。それがヨウセイに屈服した時、どのような声で啼くのだろうか。それを想像してモニカの鼓動が増していく。
 はやる心に乗るようにモニカは楽器を奏でる。魔力を込めた楽器とリズムに合わせたダンス。ステップそのものが魔法陣となり、戦場に広がっていく。不可視の大渦が戦場を支配し、敵の足に絡みついていく。
「犬っころには首輪をつけてしっかり飼育しないといけないわね」
「ふふ。私あの子気に入ったわ。ああいう娘が折れて泣き叫ぶ瞬間って、最高」
「んー。似た者同士?」
 モニカとロラを見ながらゼクスは煙管を撫でていた。他人の趣味にとやかく言うつもりはない。強気な人間を拷問したいという気持ちはよく理解できる。とはいえ趣味にかまけて仕事をおろそかにする気はなかった。
 煙管を口にして深く吸い込み、肺一杯に溜めた紫煙を長く噴き出すゼクス。魔力がこもった紫煙は物質的な重さをもち、ヨウセイ達に絡みついて縛鎖となる。ヨウセイっちの動きを封じたことを確認し、ゼクスは唇をゆがめる。
「つーか生きてるんだよな、お前ら。『土葬返し』って名前だから死んでると思ってたぜ、俺ちゃんは」
「当たり前じゃない。殺したら楽しめないんだし」
「ふうん、じゃあ死になさい」
『土葬返し』の返答に興味ないとばかりに受け流すエル。カラスアゲハの羽根をはためかせ、上空から見下ろすように『土葬返し』を見ていた。ヨウセイの壁を乗り越え、三姉妹を狙える位置を確保しながら魔力を練り上げる。
 二つの異なる魔術刻印が淡く光り、エルに魔力を供給していく。外と内。二方向から集められた魔力はエルによって力となる。魔女狩りに鉄槌を。復讐の怨嗟が込められた魔力は裁きの槌となり、『土葬返し』に叩きつけられた。
「魔女狩りは誰ひとりとして許さない」
「あははー。聞いてたけど、イ・ラプセルって変な人多いよね」
「『獄層』からヨウセイを略奪して、正義ぶってるの? 国からモノを取った泥棒なのに」
「さいてー。自分達の価値観押し付けて戦争して。シャンバラの平和を乱してるのにあたし達が悪いなんて」
 くすくすと笑う三姉妹。だがそれはシャンバラの立場から見たイ・ラプセルの姿だ。彼らからすればイ・ラプセルは侵略者だ。ヨウセイというシャンバラの『エネルギー源』を奪い取り、楽土を乱す蛮族だ。
 価値観の相違。今それを論じる余裕はない、互いに時間はなく、言葉でどうこうなるタイミングは既に逸脱している。賽はとっくに投げられているのだ。
 時計の針は刻一刻と、進んでいく。


『土葬返し』はヨウセイの盾を使って身を守っているが、だからと言って『弱い』わけではない。魔道による遠距離攻撃やネクロマンサーを補助とする格闘技などで自由騎士を追い詰めていく。
「回復から狙ってくるか。まあ当然かな」
 ニコラスがララの怨霊を受けてフラグメンツを削られる。
「うちを狙うとか、ほんま意地悪いわ」
「お前なんかに、負けてられるか!」
 リラの拳が狼華とオルパの体力を削る。英雄の欠片を燃やしてなんとか意識を保っていた。
 だが自由騎士の尽力もあってか、『土葬返し』を護るヨウセイの数は減っていく。何名かが突破できるだけの隙間は生まれていた。
「罪に相応しい対価を支払ってもらうわよ……魂まで凍り付きなさいっ!」
 モニカは氷の魔術を放ち、『土葬返し』を攻め立てる。いったん魔術師から離れたがゆえに、余分にマナを消費してしまう。それでも構わないとモニカは魔術を放ち続けた。蒼のマナが『土葬返し』を物理的かつ魔術的に冷やしていく。
「魔女狩りは……けして許さないわ!」
 断続的に飛んでくる死霊魔術にエルがフラグメンツを燃やす。高度飛行を保っての攻防戦だ。足場なく不安定な空中では回避もままならない。纏わりつく怨霊に足を取られ、攻撃速度も落ちてくる。だがヨウセイを傷つけずに魔女狩りを攻めるにはうってつけだった。
「ああ、あああああ―――」
 抑揚のない声をあげリムリィが敵陣に突貫する。既にフラグメンツを燃やし、狂戦士となったリムリィはただ真っ直ぐに敵を討つ獣となる。武器の重さと狂気に振り回されるように攻め、自分の身を傷つけながらそれでも敵を倒していく。
「色々大変だぜ。おじさん若くないから手が回らないや」
 多方面に回復を飛ばすニコラス。時折やってくる回復逆転の呪いもあって、仲間への回復が一手遅れてしまう。何をどうするかを頭の中で整理し、それに沿って動く。いつ瓦解するかわからない不安を押さえ込みながら、癒しの術を解き放つ。
「ほいほい。それは付与させないよ」
 ロラが拳に体力吸収の呪いをかけると同時に、ゼクスは解呪の矢を放つ。動き回るロラに当てる事は楽ではないが、それでも相手の戦術のキモであるのなら解呪する必要がある。事実、ロラの継戦能力は大きく減り、その動きに疲れが見え始めていた。
「これでトドメだ!」
 疲弊したロラにオルパが向かう。逆手に持った二本のダガー。その一本で魔女狩りの肩を裂く。痛みでよろける相手に近づき、通り抜け様にその喉笛に向けてダガーを振るう。確かな手ごたえと、短い悲鳴。そして『土葬返し』が地面に倒れる音が確かに聞こえた。
「首輪も手枷も、使い方が三流やわ。色気もあらへん犬ころが、そないなもん使うてどないしはるん?」
『土葬返し』を挑発しながら、ヨウセイに切りかかる狼華。増援として現れるヨウセイを伏しながら、味方への道を確保する。死霊魔術で蘇らせられたヨウセイもふくめ、どれだけの数を倒しただろうか。
「流石に攻撃を仕掛ける余裕はないか……!」
 リュリュは『土葬返し』を睨みながら、回復の術を行使する。悪辣な相手に怒りをぶつけたい気持ちはあるが、今回復を放棄するわけにはいかない。攻める仲間を支える事。それが『土葬返し』を追い込むことになるのだから。
 一進一退の攻防。しかしその均衡は――
「魔女狩り……ころ……」
「…………ぅぅ」
 空を飛んで攻めるエルと狂気のまま敵陣深く踏み込んだリムリィ。二人が倒れる事で『土葬返し』に流れが向く。
「あー、危なかったわ……」
 ボロボロのララが、リラに支えられながら呟く。
「集中砲火されてどっちかが倒れていれば、負けてたかも」
 あともう少しララを叩く者の数があれば、あるいは連携だって各個撃破で来ていればララを倒せていただろう。そうなればバッドステータスを振りまくリラでは自由騎士を殲滅できず、攻めきれたかもしれない。そして――
「起きなさい、ロラ」
 ララの呪文と共に戦闘不能になって倒れたはずのロラが起き上がる。ネクロマンサーで操られているのだ。
 流れを取り戻そうと武器を振るう自由騎士。しかし『土葬返し』の攻撃で狼華とリュリュが倒れてしまい、この流れを返すことは難しいと重い現実に足が止まる。なんとかララを倒すことに成功するが、術で操られているロラが止まるわけでもない。
「退くしかないか。だが……!」
 敵陣で倒れたリムリィ。それはリラの足元に居る。上空で気を失って地面に落ちたエルも、少し離れているが敵陣寄りで回収は難しい。
「ヨウセイじゃないから趣味じゃないけど、腹いせにはちょうどいいかな」
 勝利を確信したリラは倒れているリムリィとエルの方を蛇のような瞳で見る。獲物を見つけたイヤラシイ目。ここまで傷つけられた恨みを晴らすための玩具として、二人をどう扱おうか。そんな目だ。
 そこに――甲高い笛の音が鳴る。
 同時に陽動役の騎士達が強引に突撃してきた。防御を考えない強引な攻めだが、そのおかげもあってか隙が生まれる。その隙を縫うようにサポートで来ていたクマのケモノビトが走り、リムリィとエルを回収する。
「退却するぞ! これ以上は犠牲が出るだけだ!」
 自由騎士達は頷き、倒れている者を背負って撤退する。『土葬返し』も追う余裕がないのか、追撃は仕掛けてこなかった。


 かくして門は開くことなく、イ・ラプセルの軍勢の侵攻は一部停滞する。聖王都を攻める部隊が補給面で苦悩することになった。
 そして『土葬返し』と彼女達が保有していたヨウセイ全てはこの後、ウァティカヌスから姿を消した。戦争中という事もあって、その足取りは誰にも掴めなかったと言う――


†シナリオ結果†

失敗

†詳細†

FL送付済