MagiaSteam
Fruits! たわわに実った果実のために!



●それはブレインストーミングの意見から始まった
「通商連と大口で取引できるみたいだし、夏も近い。
 他国が攻めてこないなら、そろそろ国内外から夏物の品々を取り寄せるってのもいいんじゃないか?」

●通商連と女傑部族
 夏――
 寒暖流と気流の影響により、イ・ラプセルには四季がある。周囲を海で囲まれた島国の夏は、他国よりも過ごしやすいと評判だ。
 そして夏に流通する品物の中に、果実がある。水分多めの果実を冷凍室で冷やした物は夏を過ごす嗜好品になる。甘味を含んだ夏の果実を取り扱う商人は、ここが売り時と大量に購入する。イ・ラプセルより南方にある小さな島々。そこから果実を採り、運ぶのだが――
「ちょ、ここはあーしらの島だし。勝手に持っていくとかマジありえない」
 近年、島を占拠した部族がその邪魔をする。褐色の肌。胸と腰だけを覆う衣服。女性中心で構成された独特の文化を持つ部族だ。
「ほんとマジ卍~。泥棒とかマジやばくない? アミナ激おこ!」
 部族が島を占拠していたことを知らなかった通商連の商人は返り討ちに会い、謝罪の後に釈放された。好戦的ではあるが残虐ではなく、礼儀を尽くした謝罪が通じないほど暴力的ではなかった。
 だが果実の取引に関しては首を縦に振ってくれなかった。曰く、
「お金とかいらないしー。そんなの貰っても意味ないしょ」
 貨幣社会から離れて過ごす部族のようで、お金の価値が低いようだ。
 困ったのは通商連だ。この島の果実は手に入れたい。だがガラス玉で騙して購入、というのは後味が悪い。商品には当価値のもので返すのが商人の信念。しかし価値観が違う相手に何を提供すればいいのか……。
「んー。おにーさん、コレ欲しいの? だったらさぁ……」
 そして交渉の末につきつけられた条件とは――

●港町アデレートにて
「南国の女傑部族とチーム戦をして、勝てば果物を譲ってもらえることになったわ」
『マーチャント』ミズーリ・メイヴェン(nCL3000010)は集まったオラクルに対し、説明を開始する。
「元々好戦的な部族で『もめ事があったら戦って勝った方が正義』という部族なの。果実の交渉もそうやって決着をつけよう、と向こうから提案してきたわ。
 ただ通商連の護衛では歯が立たなくて……」
 イ・ラプセルの自由騎士にお鉢が回ってきた、ということである。
「こんなところまで連れてこられて超不機嫌ー。これで満足いかなかったら激おこぷんだから!」
 相手は既に港にやってきている。日に焼けた金髪。健康的な褐色の肌。皮膚と肌の割合が8:2の際どい衣装。ぼんきゅっぼん。あとよく意味が分からない異文化っぽい独特の言語。
 そしてそんな女傑部族の闘いのために武舞台が設置され、その戦いを見ようと多くの観客が入り、その集まりに乗じて屋台が設置された。集められたお金の一部はアデレート復興に当てられるとか。ミズーリさん、なかなかの商売上手。
「相手はオラクルではないけど、相当の腕を持つ戦士よ。油断しないでね」
 ミズーリの声に頷き、自由騎士達は即席で作られた闘技場に向かった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
どくどく
■成功条件
1.女傑部族六名の戦闘不能
 どくどくです。
 このシナリオは『ブレインストーミングスペース#1 ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033) 2018年06月09日(土) 23:06:37』の発言より作成されました。

 決してギャルが書きたかったとかそういうわけではないのですよ。

●敵情報
・女傑部族(×6)
 南国の小さな島を占拠した女性中心の部族です。蒸気などの文化を使わず、自然のままに生きています。
 オラクルではありませんのでフラグメンツによる復活はしません。

 アミナ(×1)
 部族のリーダー的存在です。一〇代女性。種族はノウブル。獣の骨を加工して作った格闘武器を手に、前線で戦う格闘スタイルです。
『龍氣螺合 Lv2』『震撃 Lv2』『剛撃 序』『陽炎 序』『マジ卍』『縄張り 破』等を活性化しています。

 戦士系女傑(×2)
 部族の戦士です。一〇代女性。種族はノウブル。鈍器を手に戦う重戦士スタイルです。
『ウォーモンガー Lv1』『バッシュ Lv2』『命活 序』『マジ卍』『大工』等を活性化しています。

 弓系女傑(×2)
 部族の戦士です。一〇代女性。種族はノウブル。弓を手に戦うガンナースタイルです。
『ダブルシェル Lv1』『サテライトエイム Lv1』『鷹眼 序』『マジ卍』『サバイバル』等を活性化しています。

 術式系女傑(×1)
 部族の祈祷師です。一〇代女性。種族はノウブル。儀礼用ナイフを手に戦うヒーラースタイルです。
『ハーベストレイン Lv1』『クリアカース Lv1』『法撃 序』『マジ卍』『星詠み』等を活性化しています。

●場所情報
 港町アデレート。そこに作られた広さ20×20メートルほどの武舞台の上。足場や明るさは戦闘に支障がないものとします。周囲に観客とかがいますが、意図して狙わない限り攻撃は観客に当たらないものとします。
 戦闘開始時、敵前衛に『アミナ(×1)』『戦士系女傑(×2)』が、敵後衛に『弓系女傑(×2)』『回復系女傑(×1)』がいます。
 事前準備は不可。開始の合図とともに戦闘開始となります。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
21モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2018年07月03日

†メイン参加者 8人†




「え? ……ええ?」
 アデレードの服屋はやってきた自由騎士達の注文に二度ほど再確認したいう。
「女性の方々、本当にこれを着るのかい?」


「こういう腕試しは楽しいよね!」
 闘技場の熱気にほだされるように『豪拳猛蹴』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は元気よく拳を振り上げる。普段着ている服のお腹周りだけを外しての登場だ。一二歳の白い肌が太陽を受けて輝く。幼いながらも豊満な胸が飛び跳ねて揺れた。
「南国の文化の本を読んで挨拶を学んできたのだ。では行くぞ……『チョリーッス!』」
 勉強の成果を見せてやると『ビッグ・ヴィーナス』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は笑顔で挨拶する。敬意を表し、胸と腰周りのみを隠す南国スタイルも取り入れていた。鍛えられた身体は大人の魅力と機能美を感じさせる。
「戦闘中捲れたり取れたり破けたりしないかな?」
 胸と腰回りの布を確認しながら『見習い騎士』シア・ウィルナーグ(CL3000028)は歩く。果物のためというよりは強さを求めての参戦だ。すらっとしたシアの身体はまだ見ぬ将来性を感じさせる。しかしそれよりも戦い前の輝かしい笑顔が特徴的だ。
「大人の色気と言う奴を見せてやろう!」
 何か文句でもあるか、と言いたげに『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)が胸を張る。イ・ラプセルでも珍しい東方系の幻想種とのマザリモノ。物珍しさが先に立つが、十分に成長した女性の肉体は見る者を魅了する。
「さて出番ですね。見世物ではありますが、見世物のみでないことを示しましょう」
 周囲の視線を感じながら『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)は武舞台を歩く。胸部と腰周りを覆う布は他女性と変わらないが、その柄が東方の意匠が凝らされている。花が歩くかのようなカスカの歩みに、思わず観客からため息が漏れた。
(こ、これもアデレート復興のため……)
 顔を赤く染める『蒼の審問騎士』アリア・セレスティ(CL3000222)。興業のためにと着た女傑部族の衣装。それを着た自分を見たら、羞恥が爆発しそうになった。89・54・84のボディラインがハッキリと晒される。平静を保とうと心の声を繰り返していた。
「その、女性方にはもう少し布面積を上げて欲しいな!?」
『清廉なる剛拳』アダム・クランプトン(CL3000185)は顔を手で覆いながら叫ぶ。相手方も味方の自由騎士も露出度が高く、何処を見ても肌色空間なのだ。同じ衣装で友好を深めるためとはいえ、その、目のやりどころに困っていた。
「ちょっとしたお祭りみたいなものだ。楽しんで行こうじゃないか」
 サングラスの位置を直しながら『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)はアダムの肩を叩く。負けたところで悲劇が起きるわけではない今回の闘い。確かに肩の力を抜いた方がいいのだろう。勿論、負けてもいいというつもりで戦う気はない。
「んー。焼き足んなくない? つーか、早く始めよーよー」
 曰く、褐色度が足りないというのが相手の反応だ。そんな事よりも早く戦いを始めたいらしく、女傑部族のリーダーは屈伸運動をしていた。
 勿論自由騎士達も待たせるつもりはない。マキナ=ギアから武装を取り出し、戦闘開始の位置につく。
 審判の旗が振り下ろされる。開始の合図と同時に、両者は武舞台の床を蹴った。


「行きます!」
 最初に動いたのはシアだ。持ち前の速度を活かし、相手が動き出すより前に行動する。レイピアを二本構え、全身の力を解放していく。より速く、より鋭く。理想の戦闘スタイルをイメージし、それに近づくために肉体が活性化していく。
 女傑部族の後衛に迫るシア。狙いは敵の祈祷師。相手の儀式用ナイフを押さえるようにレイピアを突き出し、敢えて受けさせたところにもう一本のレイピアを突き出した。二刀流の利点は攻撃方法の増加。持ち前の速度と変幻自在の動きで敵を翻弄していく。
「出し惜しみはしません! 全力で攻めさせてもらいます!」
「いいしょいいっしょ! あーしそういうのらぶよ!」
「なにを言っているのかわかりませんが、言いたいことは理解できました」
 南国の言葉を聞きながらカスカが頷く。事の経緯を聞く限り、彼女達が好戦的であることは間違いない。こちらの戦い方を好意的に受け取っているのだろうことは、言葉がなくとも理解できる。
 一気に踏み込み、抜刀の構えをとるカスカ。極東にまだ神がいた時の剣術。彼女はその技術を受け継いでいた。重要なのは力ではない。抜刀のタイミングで全てを解放することだ。抜くと同時に越すを回転させ、相手に刀を振るった。
「アマノホカリの剣客とケンカをしたことはないでしょう。存分に楽しんでください」
「あま……ほか? どこそれ?」
「ああ、知りませんよね」
 遠く極東の国名は、閉鎖的な女傑部族には届いてなかったたようだ。然もありなん、とアリアは苦笑する。羞恥も落ち着いたのか、観客に手を振りながらアリアは戦う。踊り子のように優雅に舞い、アピールするように笑顔を向けて。
 勿論、メインが戦いであることはアリアも忘れてはいない。弓を使う女傑部族に近づき、刃を振るう。踏み込みは軽やかに。そして優雅に回転するように。虚と実を混ぜて翻弄しながらの攻撃は、相手どころか見るもの全てを困惑させていく。
「この動きについてこれますか?」
「速っ。猫並みじゃん! でもそんくらいじゃ、当てれるってーの」
「おっかねぇなぁ。南国の獣って……」
 女傑部族のセリフを聞いてウェルスはため息を吐くように肩をすくめる。フェンサーの動きと同等の猫とかどんだけ機敏なんだ。そんな環境で育っているからこの部族も強いんだろうなぁ。そんなことを思っていた。
 サングラスで目線を隠し、小さく呪文を唱える。手の平に集まる冷気。その冷気をウェルス自身の魔力で凝縮し、氷の弾丸を生み出す。弾丸はウェルスの意志に従って飛び、弓を持つ女傑部族の肩を貫いた。弾丸の冷気が肩の動きを鈍くしていく。
「不慣れな得物だが、何とかなりそうだな」
「ん? クマさん殴ってこない系? 祈祷系?」
「その代わりに私が殴りに行くよ!」
 元気よく手をあげてカーミラが宣誓する。銀色の髪を風に吹かせ、女傑部族のリーダーの前に立つ。同じ格闘タイプということで戦う前から目を付けていたのだ。どう勝つか、ではなくどう戦うか。カーミラの頭の中はそれでいっぱいだった。
 強く拳を握り、真っ直ぐに相手に向かって突き進む。フェイントや言葉による駆け引きはしない。自分が持つ技と力をぶつける。それがカーミラの戦い方だ。拳で殴打すると同時に足で相手のすねを蹴る。動きを一瞬封じ、頭突きを相手の顔に叩き込む。
「ガンガン行くよ! どうだぁ!」
「いちちちち……。バイブス上がってきた!」
「本気にさせてしまったか。まさに『チョベリバ』というやつだな」
 南国の言葉を引用して、状況を伝えるシノピリカ。だがなんというか。誰も聞いていないうえに理解できている者はいなかった。南国育ちのアミナでさえ『あ、それママが使ってた気がする』的な顔をしていたという。
 意志伝達の齟齬はさておき、シノピリカは敵の正面に立って女傑部族の足止めしながら攻撃を加えていた。キジン化した腕で相手の鈍器を受け止め、弾くと同時に機械の腕を叩き込む。確かな手ごたえを感じたが、相手が倒れる気配はない。
「ふむ。この程度では手折れんか。流石だのぅ」
「当然っしょ。次はこっちから行くよ!」
「来るがいい。女傑部族の諸君! 騎士アダム・クランプトン、参る!」
 正々堂々と名乗りを上げて敵前に立つアダム。仲間を守るように立ちふさがり、籠手を構える。元々はイ・ラプセル騎士団所属だったこともあり、その立ち回りは優雅で声は朗々と戦場に響き渡る。一瞬戦いの手を止めて見惚れそうになる。
 キジン化した身体から蒸気を排出し、女傑部族の前に立つ。攻撃する女傑部族の動きを見ながら、籠手の最も固い所でその鈍器を受け止めた。そして反撃とばかりに反対側の腕に装着している籠手で、女傑部族の腹部に拳を突き立てた。
「女傑とはいえ相手は女性なんだ。美しい顔を傷付けるワケにはいかないよ」
「ふむ……。このイケメン度はあとでアピールしておこう」
「何にアピールするのかな!?」
 ツボミの言葉に確認をとろうとするアダム。気にするな、と会話を打ち切って戦場を見渡した。こちらより人数が少ない女傑部族だが、かといって戦力がこちらが劣るということはない。現に自由騎士達のダメージは少しずつ蓄積されていた。
 柑橘類の香りのする木刀を手にツボミは呼気を整える。自分を中心とした『世界』の認識を強めていく。陰と陽の二極。回転する黒と白の魚。イメージと共に魔力を高め、それを一気に解き放つ。ツボミの魔力が仲間の傷を癒していく。
「気にするな。少し女傑部族の男性問題について思考していただけだ。若いイケメンとケモノビト。いい組み合わせではないか? 果物のために、ほれ」
「「酷いな、アンタ!」」
 あまりの発言に男性陣は総出でツッコんだ。
 女傑部族六名に対し、自由騎士は八名。数的に有利だけど、と言う思いは試合開始一分後に消え去る。全力で挑まなくてはこちらが危ない。
 武舞台の上、戦闘は加速していく。


 自由騎士達はアダム、カーミラ、シノピリカで相手の前衛をブロックしていた。そしてシア、カスカ、アリアがそのブロックを縫うように後衛を攻め、ツボミとウェルスが後衛から攻める形だ。
 最初は女性の肌色率も高くイロモノ的な目で見られていたが、試合開始と同時の攻防がその雰囲気を吹き飛ばす。事、アミナと相対しているカーミラとの攻防は激しいものとなっていた。
「まだまだ負けないよ!」
 アミナの拳を受けて膝をつきそうになるカーミラ。しかし英雄の欠片を燃やしてなんとか立ち上がる。アミナの動きは野生で生き延びるための格闘術。柔軟な動きと隙を逃さないラッシュ。カーミラの動きもそれに合わせるように加速していく。
「おおっと、それ以上はやらせないよ。仲間が傷つくのは耐えられなくてね」
 そんなアミナの動きに割って入るアダム。キジン化した肉体で骨の手甲を受け止める。機械の肉体がその衝撃で揺らぐが倒れることはない。この身を支えるのは騎士としての献身。仲間を守る盾として守り抜くとおのれの胸を叩く。
「しかしマジ卍……うむぅ、分からん。関節技か何かか?」
 女傑部族の言葉に首をかしげるシノピリカ。彼女が調べた資料にはなかった言葉だ。疑問に思いながらも『Etupirka』を振るう。軍から支給された使い慣れた武器。それは思うままに女傑部族の肩を打ち、戦闘不能に追い込む。
「次、行きます。危なくなればブロックに戻りますのでそれまではお願いします」
 カスカの一閃が祈祷師を倒す。そのまま流れるようにその剣先を向けた。敵陣に入り一気にかき乱す。アマノホカリの兵法書にあった動き方だ。兵力の分断は相応のリスクが伴うが、今はかき乱す効果の方が上回る。
「一気に行きますよ!」
 二本のレイピアが武舞台の上で舞う。シアは息つく暇も与えないとばかりに高速で女傑部族にレイピアを振るっていた。速く、そして正確に。騎士団の訓練を思い出すように体を動かす。続けてきた訓練が形となり、相手を追い詰めていく。
「全力でいきますよ!」
 女傑部族の周囲を走り回りながらアリアは武器を振るう。けして止まることなく走り回り、相手の狙いを定めさせずに攻める。相手を翻弄しながら隙を伺い、生まれた隙を逃すことなく疾駆して切り裂く。その一撃を受け、弓使いの一人を地に伏した。
「いててて……やはり杖じゃダメか」
 肩に刺さった矢を抜きながらウェルスはぼやく。弓からツボミを守るために前に立った為、その被害を受けることになった。慣れない武器だから仕方ないか、とぼやきながら尻餅をつく。
「おお、すまん。助かったぞ。その献身も女傑部族に伝えておこう。……何、いらんだと?」
 ツボミはウェルスにそう告げ、視線での拒絶を受けて不満そうな顔をした。面白そうなのに、と不満げに呟いたのちに魔力を練る。放たれた回復の術式が、女傑部族の猛攻で受けた傷を癒していく。
「エーリはそのまま弓で後ろ狙って。あーしらは突破! もう少しでイケるから!」
 アミナの指示が飛ぶ。前衛を突破して回復を止めた後に、後衛に廻った自由騎士を叩くという作戦のようだ。
「流石だ。だがこの程度では倒れないよ!」
「まだ倒れはせぬぞ。むしろ『テンションアゲアゲ』だな!」
 女傑部族の攻撃を受け、アダムとシノピリカが英雄の欠片を燃やす。
「流石に狙われるか。まあよい」
 弓で撃たれてツボミも英雄の欠片を削られた。
 しかしシアが弓使いを倒してしまえば、戦いの趨勢はほぼ決する。残ったアミナと戦士では自由騎士七人を倒し切ることはできるはずもない。猛攻を前に女傑族の戦士が倒れ、
「武勇高き南国の戦士よ。これで討ち取らせてもらいます!」
 アダムの拳がアミナに迫る。獣のように体を低くしてそれを交わし、アダムに飛びかかるがそれを予測していたとばかりにアダムは反対の腕を振り上げる。骨の手甲とキジンの腕が交差し――
「危ない危ない。思わず顔を殴ってしまう所でした」
 直前で軌跡を逸らしたアダムの拳がアミナの肩を穿つ。カウンター気味に叩き込まれた一撃が、女傑部族リーダーの意識を刈り取った。


 試合終了の合図とともに湧き上がる歓声。互いの健闘を称える拍手と歓声のなか、大の字になって倒れるカーミラ。
「つっかれたぁ……! ああ、楽しかった!」
 全力を出し切った、とばかりに放心するカーミラ。他の自由騎士も同じ感想なのか、その場に座り込んで拳をあげる。
 審判やその他スタッフに抱えられ、武舞台を降りる自由騎士と女傑部族。用意されていた控えの部屋で傷を癒した後で、お話がしたいと女傑部族に会いに行こうということになった。
「うわー。負けたー。萎えぽよー」
 部屋に入るなりそんな言葉が聞こえてくる。言葉の意味はよく分からないが、負けて落ち込んでいるのだろうことは理解できた。
「まあ、彼女達は単純にケンカしたかっただけでしょうし。負けて悔しがる程度には自分達の実力に自信があったんでしょうね」
 とはカスカの見解。カスカ自身は『剣客は闘い以外に示す必要はない』とばかりに女傑部族に何かを言うことはなかった。
「む。何? つーしょーれん? とかいう人の約束は守るわよ」
 通商連の約束。それは島の果物との取引の話である。自由騎士もそれ自体に口出しをするつもりはない。
「ふむ、確かに美味。一足先にいただいておるぞ」
 シノピリカは魔術で冷やしたバナナを口にしていた。通商連が無理をしてでも入手したい果物なだけのことはあり、甘く柔らかいものだった。
「いや。それはそれとして、今後僕たち自由騎士と試合をするという形で交流できないかな?
 お互いにとって良い訓練になるだろう」
 アダムの提案に首をかしげるアミナ達。
「貴様らの文化も独自特化してそうだが多様性た加工、生産力は広く人の多い此方が長じよう。……何、話がややこしい?
 えーと……面白いモンあるから付き合えということだ!」
 ツボミが補足しようとして、面倒になったのかそう言って説明をしめる。『面白いモン』とばかりにアクセサリーを渡した。
「おお……」
「こういったアクセサリーはイ・ラプセルには大量にある。文化交流も含めての交流をしようということだ」
「うんうん。やっぱり女の子だからこういうのは似合うよね」
 シアは頷きながらアミナにヘアアクセをつける。金髪につけられた赤い花のアクセサリーはワイルドな雰囲気を打ち消すような可愛らしい印象を与える。
「ねえねえ、南の島ってどんなところ? 蒸気技術も使われてないんじゃ空気も海もキレイなんだろうなー!」
「勿論、次戦う時もよろしくね! 今度は一対一でやろうよ!」
 拳を突き出しカーミラが笑みを浮かべる。今回はチーム戦で仲間の守りがあったから最後までたっていられた。次戦う時は一人でも最後まで立っていられるように鍛えておこう。その誓いを含めての宣告だ。
「ふん。あーしらにもう一回勝とうっていうの? 上等じゃん!」
 カーミラの拳に自分の拳を重ねるアミナ。他の女傑部族もやる気のようだ。

 ――これを機会に定期的に南国の部族とも交流を深めることになったイ・ラプセル。国家ともいえない小さな部族との交友は軍事的・経済的な影響こそ少ないが、見識を広めるという意味でプラスとなるだろう。
 そう、例えば――
「あのあたりの海図が欲しいんですか? ええ、あの女傑部族の口伝を纏めた者ならありますよ」
 ウェルスは通商連を通して、南国周辺の海図を要求した。それによると、
「なんだこのうねうねは?」
「さあ……? 確かめに行った船は一様に『うねうねしていた』としか言わず……」
「この黒塗りは?」
「奇妙な幻想種がいるようで、正確な海図が書けないのです。足の長さだけで一キロもあるタコが催眠術をかけて――」
 世界は広い。ウェルスは諦めたようにため息をついた。


†シナリオ結果†

大成功

†詳細†

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