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【アクアフェスタ】蒼のうみのひととき




 水の国イ・ラプセルのさらなる豊穣を祈って。
 戦争の最中でも人の心を潤す祭りは欠かせないとは王の言葉。
 この日は水着に着替えて海ではしゃいでも誰も文句をいわない。
 露店だって深夜まで営業して夜通し遊べるのだ。


 青い海! 白い雲。
 ここはイ・ラプセル最南端のビーチだ。
 エメラルドグリーンの海は陽光にきらめき君を誘っている。
 通商連の屋台だってたくさん。よりどりみどり!

 沖合に少し潜ればそこには美しいきらきらのサンゴ礁。

 今だけは戦争を忘れてもかまわない。

 神暦1819の夏。
 それは今だけなのだから!


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常σ
■成功条件
1.夏を楽しむ。
 たぢてんです。
 
 ヘルメリアの奴隷マーケットをやっつけ中ではありますが、夏のリゾートをおたのしみください。
 
 ビーチでできるようなことならだいたいどんなことでもできます。

 すこし沖合に潜ればサンゴ礁があります。
 30分だけ呼吸をしなくても大丈夫な魔法を使ってもらえばゆっくりと潜ってサンゴ礁をたのしめます。
 破壊は禁止です。

 王族の皆さんと敵以外のちょころっぷNPCとたぢまNPCを呼ぶことができます。

 
 基本的に通商連の露天は食べ物飲み物、果ては宝石など、いろいろなものが用意されてますのでよっぽどのもの以外はそろっていると思ってくださってかまいません。
 氷を細かく削って、甘い蜜と果物を添えた氷菓がどうも人気のようです。
 一気に食べるときーんとなるみたいなのでお気をつけください。

 とはいっても警備も一応必要とアーウィンは警備をしています。
 ムサシマルも一緒だったんですがいつのまにか、探さないでくださいというメモをアーウィンの背中に貼って、遊びにいきました。
 ビーチのどこかにいます。たぶんでけえ砂の城を作っています。
 アルヴィダもお呼ばれしてエールかっくらいながら適当に楽しんでいます。
 メモリアは特別に今日だけはビーチに移動しています。
 だいたいおきのほうでおきあみもぐもぐしてます

 ●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  0個  1個
8モル 
参加費
50LP
相談日数
7日
参加人数
23/100
公開日
2019年09月13日

†メイン参加者 23人†

『ペンスィエーリ・シグレーティ』
アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)
『薔薇色の髪の騎士』
グローリア・アンヘル(CL3000214)
『望郷のミンネザング』
キリ・カーレント(CL3000547)
『蒼光の癒し手(病弱)』
フーリィン・アルカナム(CL3000403)



 蒼いうみのひととき。
 それは一度しかない時間。
 ゆらりたゆたう。ゆらり、ゆらりと。
 
 それでは氷菓子を食べ歩きましょうか?
 アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は露店をめぐる。
 しゃりしゃり。
 氷菓子は暑い夏を少しだけ涼しくしてくれる。
 急いで食べると頭痛がするけれど。
 それでもこの季節にはぴったりだと思う。
 さあて、次のお店はどんな味の氷菓だろうか?
 
 「青い海、照りつける太陽、灼ける砂浜
 そ☆し☆て
 輝く肢体!!」
 オルパ・エメラドル(CL3000515)は叫び声をあげる。海には水着姿の女性の姿。
 ぽいんぽいんたゆんのその素晴らしい光景に涙を流す。
「ミトラース倒してほんとによかった」
 そんなことを思うのがこの場でいいのかは疑問ではあるがまあ、それはそれということで。
「一年中アクアフェスタでいいと思う
 とはいえ、この時間、お嬢さんの美しさを永遠にとどめておきたい!!!」
 蒸気カメラを構えるオルパは速攻通報されてて巡回していた騎士に連行される。
「お嬢さんの水着姿はこの脳裏に!! ヨウセイの記憶力なめてもらっては困る!」
 記憶力がいいとかいうヨウセイの設定しらない。
 鼻血をたらしながらオルパは引きずられていく。
 
「泳ぐ前には準備運動すること! そこ、面倒臭がらない!」
「珊瑚を見に行くヒトたちはちゃんと準備を忘れずに! 30分経つ前に帰ってきてネ!」
「ゴミは家に持ち帰る! 海を汚したら酷いんだからね!」
「え? ゴミ持ってたのになくした?? 血眼になって探しなさい!!」
 本日のアクアリス・ブルースフィア(CL3000422)は非番ではない。
 哨戒しながら口うるさく指示をかける。水難事故の防止にゴミの回収、サンゴを見に行く人の監視とアクアリスは忙しい。
「というか、この一連の行動をマニュアル化する必要はあるわね」
 メモに内容を書つけ、彼女は唸る。
 そも、イ・ラプセルは海洋国家である。だというのに水難についてのマニュアルの整備が追いついて居ないのではないかと、治水研究家である彼女は思う。
 水辺の事故というものは存外に多い。
 自由騎士たちであればなんとかなるだろうが、問題は子供の事故だ。
 ミズヒトを中心にした海難事故救済の専門的な機関を構築する必要があるのではないかと思う。
 さあて、明日からはその論文をかきはじめよう。タイトルは――。
 その思想がいつかライフセービングという概念につながるのはもう少し先のお話。
 
 サンゴ礁の海をまるで空を飛ぶかのように泳ぐことはレオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)にとっては初めてで、そして楽しいことだった。
 少しだけ背伸びした水着は恥ずかしいけれどそれでもせっかくのお祭り。
 珊瑚を指先で突けばクマノミがびっくりして現れてにげる。
 レオンティーナはごめんなさいと謝って、泳げばいつの間にかエイが一緒に泳いでいてくれていた。
 たくさんの色とりどりの魚にいろいろな色と形の珊瑚の迷路は遊び場所としては最高だとおもう。
 イルカに髪を引っ張られたレオンティーナが振り向く。
 大きな桃色の珊瑚が海にたゆたい、一つのコロニーを作っている。それはとても美しい光景。
「これをみせてくれたんですの?」
 目で尋ねれば、イルカはきゅい、と鳴いた気がした。
 そんなイルカをなでると、少し息苦しい気がした。そうだ、もう制限時間いっぱいだ。たった30分では足りない!
 海上に向かいながらサンゴ礁を見下ろしレオンティーナは思う。この美しいイ・ラプセルの海は絶対に守るべきであると。
 
「いらっしゃいませ~」
 あきんどの朝ははやい。シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)は今日も朝から仕込みだ。
 こんな暑い日なのだから喉が渇くはず。開放的な海辺に開放的なお財布――閑話休題。
 彼女の今日のおしながきは、氷菓子。
 とはいってもそのあたりで売られているシロップをかけただけのものとは一味違う。さすがにちょっとお値段もちがうけれど海辺の高級志向狙いなのだ。
 朝早くからしこんでおいたあんこは氷菓子に最適化。
 甘いお抹茶も丁寧に点てたものだ。
「さあさ、いらっしゃいま~せ~
 オプションであんこ増量、ミルクがけもおいしいですよぉ~」
 物珍しさにシェリルの海の家は大繁盛!
「たくさんご用意してますからねぇ~」
 
 露店巡りは蜜の味。
 新しく購入した水着はすこしセクシーで恥ずかしいけれど、堂々としないから恥ずかしく思えるのだとティラミス・グラスホイップ(CL3000385)は周囲の視線を感じつつもそう結論づける。
 ナンパもされたけれども大人の対応。……できてたとは思う。
 ちょっと艶めかしい目つきと仕草で大胆に。きっとそれはこの夏の陽気がさせるもの。お祭りだからしかたないのだ。
 なんて調子にのっていたらしつこいやつもいて、えいやと氷菓子を投げつけてにげてきた。
 あの氷菓子の果実のせまだ全部食べきってなかったのにとあとで後悔する。
 でもまあ、それはそれ。
 気を取り直して今度は違うお店で焼いたイカを買う。タレがしみててほんとに美味しい。
 また声がかかる。こんどはイカを投げるわけにはいかない。
 
 夏のビーチでデートを楽しみのはウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)と、佐クラ・クラン・ヒラガ。
 佐クラのかわいい水着すがたにクマの鼻の下は伸びる。
 夏の日差しは明るくて気分も高揚する。
 波打ち際で水の掛け合いなんてやったのはいつぶりだろうか?
「ウェルスさん水に濡れるとちょいほそくなるんやね」
「セクシーだろ?」
「いややわぁ。ふだんふさふさすぎるんちゃうん?」
 お腹が空いたら露天めぐり、キンキンに冷えたエールは体にしみる。
 また海にでて浮き輪にのってふたりでふわりふわり。
「沖にながされないように手でもつなぐか」
「そんなん言って、やらしいわあ」
「いや、まじで! そういうんじゃないからな」
「ほんまかなぁ?」
 ゆらりゆらりとゆられて、見上げれば青空には大きな雲。蒼と青の間のその空間はとても広く感じる。
 そんな青の中でふたり。
「好きだぜ、佐クラ」
「はいはい、またウェルスさん冗談いう」
「冗談じゃねえよ」
 そういったウェルスの目は真剣そのもので――どこか遠くへ行ってしまいそうで――。

 
 サンゴ礁の海に誘おうとおもったけど、そうするとヨアヒムさんも水着なわけで――そんなの見たら心臓がもたない!
 なんてちょっぴりヘタれたレネット・フィオーレ(CL3000335)は当の本人、ヨアヒム・マイヤーを露店に誘う。
 水着の上にパーカー姿。この水着はヨアヒムさんに見せたくて新調したもの。気づいてくれるかな?
「あ、水着かわいいね、あたらしいの?」
 気づいてくれた! 凄く嬉しくてはしゃぐ気持ちはとまらない。
「はい、ヨアヒムさんのため……――なんでもないです。あ、あれ、イチゴののった氷菓子、たべましょう」
 はっきり言えないのは乙女心。ごまかすようにレネットは氷菓の屋台を指差す。
「おっけー、おごるよ」
「ええっ?! そんなそういうつもりじゃなくて」
「女の子にはおごらないとね。水着姿のお礼!」
 どきりとする。さっきの聞かれちゃった? とはおもうけどきっとヨアヒムに深い意味はない。女の子みんなにいってるんだろうけど今だけは私のために言ってくれたとおもっていいよね?
「その、ヨアヒムさんは水着ないんですか?」
「男の水着なんてどーでもいいっしょ」
 よくないもん。
「ナンパどれくらい成功しましたか?」
「うう……厳しいこと聞くなあ」
「私は成功しましたよ」
「ええっ!? レネットが?」
「はい、今、ヨアヒムさんをナンパしてデート中です」
「うええぇえ? えっと、そうなの?」
「そうなんです!」
 だから、とデートだから手を繋ぐんだって一歩踏み出す。
「あの、レネット」
 ヨアヒムが繋がれた手を指差す。
「デートですから」
「デートだからか」
「しかたないんです」
「しかたない、よねえ」
 繋いだ手が熱い。手汗とかかいてないかな? 気持ち悪いって思われたらどうしよう! なんだか恥ずかしくなって、氷菓子を頬張ったら。
「あいたたた」
「レネット?! 大丈夫? 一気に食べるから」
 
 
 青い空、白い雲、そして海と砂浜!
 THE 夏!
 とりあえずかんぱーい!
 海辺でエールを嗜んでいるアルヴィダ・スカンディナをみつけたアンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)はキンキンに冷えたエールのグラスをアルヴィダのグラスに当てる。
「うわっと、なんだい、あんたか」
「ぷは~~、太陽の下でのむエールさいっこうね!」
「まあね、それは同感」
 女海賊はエールを飲み干す。
「あ、貴方もいける口ね、よっしのみましょ――」
「海だぁああああああああああああああああああああああ、夏だああああああああああああああああああああああ
 アルヴィダさんだああああああああああああああああああああああああああああああああ」
 注いだエールで乾杯というところで、向こうの方から猛ダッシュのアダム・クランプトン(CL3000185)がいつもアレな感じでやってくる。
「ちょ、アダム」
 夏の暑さでちょっとアレになってるアダムはアルヴィダを見かけてテンションが上りきっていたのだ。
「おちつきなって、坊や」
「元気ですか~~~~~~~~~~ボクは元気でえええええええええええええす!
 何飲んでるんですか? OSAKE!!?? O・SA・KE・DESUKA!!??
 僕も大人になったら飲みたいです!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 エールをみてさらに謎のテンションアップ。ほんとになんでお酒でそんなにテンションあがったの?
「いやそれでいいけどさ、教えもするけどさ!」
「アダム、ステイ。ステイ!」
「うわあああああ! 夏、たのしぃいいいいいいいいいい!!!」
 嵐のような少年は去っていく。実は彼、アクアフェスタが楽しみで目が冴えて眠れなかったのだ。寝不足の中強い日差しに頭がやられてしまっていたのだ。
「あの子、ちょっと貴方にあえて嬉しかったのかも知れないわね」
 アンネリーザが苦笑する。
「…あのね、私賊は嫌いよ」
 そして、ポツリと呟く。
「そりゃ普通の感性だろ。当然さ。海賊なんて悪党だからね」
「でもね、そういう人たちもいろんな理由があるんだって、最近ちょっとわかった。
 でもだからって悪いこといったらゆるさないろー」
「なんだよ、あんたもおかしくなったのかい? それは約束はできないね。あたしらは悪党さ。悪党は悪いことをするのが商売だ」
「だめーーー。そんなことより飲んでのんで~~~~~」
「あ~、なんだいこっちも悪い絡み酒かい」
 
「ああ、アダムはそのへんに転がしとけばいい。しっかりと脇と太ももに氷をおいて冷やしてやってくれ」
 医療テントは忙しい。溺者、日射病、熱中症。
 さっきも金髪の少年がテントの前で倒れたところだ。病名熱中症。自分からテントに飛び込んでくる患者は殊勝ではないか。
「わかった、冷やしておけばいいんだな?」
 非時香・ツボミ(CL3000086)の指示にアーウィン・エピが答える。
「ところで貴様、ずっと警備しとらんか? というか病人の運び込みはお前の仕事じゃないだろう」
「ああ、別に。たまに氷菓子食べて適度にサボってるし」
 どこが適度だ。そういうのは休憩というのだ。どうせサボるといっても五分も休んでないんだろう。
「それにしてもあんた、愛想の悪い医者だな。もっとなんとかならないのか?」
「うるせ、こうみえても若い頃は愛想よかったんだぞ。しんじれんだろー」
「その藪睨みのいやらしい笑い意外の笑いできんのか?」
「まあな、私は亜人の――マザリモノだからな。当時はやっぱり色々無意識な遠慮をしててな。せめて、と愛想笑いだけは得意だったよ」
「――」
「お前みたいにな」
「俺は愛想笑いなんかしてねえだろ」
「ちがうわ、無意識な遠慮ってところだ。
 ほら、ムサシマルみならえよ。いや、あれは流石にちょっとアレだな」
「なにが言いたいんだよ」
「お前は自分の欲を優先することも覚えろって話だ。あー、そうだな。医者として命ずる。熱中症対策のためちょっとここでサボっとれ。
 飲み物はだす。弁当もまあ、だしてやる」
 アーウィンは一瞬なにか言いたそうな顔をしてから何を言っても言い負かされると諦めてその場に座る。
「やっぱり医者は嫌いだ」
「そうかそうか、で、甘いのでいいか?」
「うん」
 その後特に会話なんてものはなかった。アーウィンはぶすっとした顔で落ち着かなさそうに座っている。
 ツボミにとってはそれで構わない。会話などなくても妙に居心地がいいのだ。ホッとするというのとは、違うな。落ち着く――それもまたちがって。
 和む。
 そうだ、それが一番しっくりくる。
 
「おひさしぶりです、メモリアさん」
 キリ・カーレント(CL3000547)は海でおきあみを食べていたメモリアにお辞儀する。
「ひさしぶり、キリもおきあみたべる?」
「いえ、さすがにそれは……!」
 丁重におきあみは断ったあとキリはゴールドティアーズの礼を言うととある依頼で覚えた曲を一緒にどうかと誘う。
 まずは最初に自分がその曲を奏でた。
 静かな波の音が聞くものの心を海へ誘う。そんな穏やかな曲だ。
 古い楽曲家が作ったうみのうた。キリは失われるはずだったその楽譜を得た今広めなくてはという義務感がある。
「友達と一緒に演奏するためにその、まだ練習中なんですけど、なかなか」
「練習不足?」
「うう、おっしゃるとおりです。なので! その、胸をかしていただけませんか?」
「へたっぴだとはずかしいものね。いいわ。一緒にうたってあげる」
「わぁ! じゃああの、重ね重ねで申し訳ありませんが、背中も貸していただけませんか? 背中にのってみたくて……!」
「キリ、贅沢」
「うう、だめですか?」
「だめじゃない。乗っていいわ。そのかわり上手に弾いてね」
「はい! できるかぎりがんばります!」
 ちゃぷんちゃぷんと波が踊る。その音に負けないようにキリはプレールをかき鳴らす。
 もちろんミスはあった。それでもめげずに音を一つ一つ紡いで編んで。
 その紡いだ音を邪魔しないようにメモリアが合わせてウタう。
 ウタうクジラとプレールはユニゾンを奏で海を渡る。
「あの、凄く弾きやすかったです!」
「そう、前より音を紡ぐのが丁寧になったわね。キリ」
 フォローはしてもらった形になったけど。それでも最高の演奏ができてキリは太陽より明るい笑顔で笑ったことを本人は気づいただろうか?
 
 水着姿のティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)はビーチで楽しむ。
 海を見たこと無いとは言わないけれど、こんなきれいな海は初めて見る。
 遊ぶ場所であるなんて思った事自体なかった。けれど今日は海で遊ぶという初めての経験に心がおどる。
「ひゃあ!」
 波打ち際を歩けば波に足が引っ張られそうになってつい悲鳴をあげてしまう。
 でも慣れたら不思議なかんじで面白い。寄せては返す波は月の影響を受けているとは聞いたけれどよくわからない。
 けれどその不思議が気持ちよくて海が好きになる。
 露店で買った氷菓を手にしていた事を思い出す。きらきらしていてきれいで思わず買ったもの。
 いつのまにかすこし溶けていて、焦って舐めれば口の中がきんと冷える。
 ひやっこくてあまくて、こんなおかし食べるのは初めて!
 いっぱいの初めてだらけでティルダは嬉しくてしかたなかった。
 
 毎年訪れる暑い夏。
 それは戦争中であっても変わらない日常。
「なんで宿題をためちゃうんですか!
 お姉ちゃんきいたらやってるって言ってましたよね?」
 フーリィン・アルカナム(CL3000403)の小言もまた一つの日常。
 孤児院の子どもたちはみんなそろって勉強はいやだと逃げ回る。
 明日は皆で海に行く予定も中止だと怒れば子どもたちはわかんないんだもんとべそをかく。
 はあ。
 フーリィンは大きなため息をつく。
 毎年恒例のこの流れ。
 子どもたちの成長はまだもうすこし先なのかなと思う。
「はいはい、教えますから。
 全部じゃなくてもできる限りみんなががんばれば明日の予定はそのままですよ」
 なんて言えばげんきんにも子どもたちは鉛筆をもつ。
 本当に愛らしい子どもたち。
 呆れるほど繰り返されたこんなやり取りが愛おしい。
 だから守るのだ。
 全部、全部。
 この子達のみらいとこの日常を。
 
 アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)は警備に回る。
 アーウィンばかりに警備を任せるのは忍びない。時間があれば遊んでもいいという余裕を少しでもあげれたらと思う。
 あいつは苦労性でほんとに不器用だとおもう。ねぎらいの意味をこめて氷菓子をおごってやれば一瞬だけ子供みたいな嬉しそうな顔をしたのがおかしい。そのあと遠慮されたが、自分の分を買うついでだといえばなんとか受け取ってもらった。
 ほんとに不器用なやつだ。
 さてと。
 開放的な場所だからこそ理性の箍が外れてしまうものもいるだろう。さっきも蒸気カメラをもって女性を写そうとしていたものを取り締まったところだ。
 そんな中海難事故の報告が届く。
 アリスタルフは軍服を脱ぎ、水着姿になると走り出す。溺れたものを助けるために。準備運動はすでにしてある。
 やたらチラミされた理由はよくわからないがまあいい。
 今日は忙しい一日になるはずだ。
 
 ザルク・ミステル(CL3000067)とエル・エル(CL3000370)は海辺を探索する。
 すこしだけ若作りした水着姿はすこし照れるけど、妙にザルクが喜んだからいいとしよう。
「すごくよく似合ってるよ、その水着」
 ジロジロと見過ぎだ。変なところはないはずだ。お店の人に勧められた若い子用の水着はちょっとやりすぎたかもだけど変ではないと――思う。
「変かしら?」
「いや! いいよ、すごくいい、それにしてもお前、前に触ったときも思ったけど、着痩せするんだなあ」
 視線はむなもとや腰回り。こつんとおでこを弾いてやる。
「そう言えばキジンって海水や潮風でメンテは大変だったりしない?」
「まあ、この国のカタフラクトなら仕様で大丈夫だけど、俺のは大変じゃないって言ったら嘘になるけどエルエルと海にこれたからぜんぜん問題ないぞ」
「……ばかね。――あたしも、よ」
「なんかいったか?」
「いいえ、なにも。それより、せっかくだからかき氷が食べたいわ」
「ああ、いいぞ!」
 実はテンションの上がっているザルクは蒼いかき氷と赤いかき氷を買ってきて、エルに赤い方を渡す。
 しゃくしゃくしゃく。
 スプーンが氷をすくう音。
「なあ、エルエル。買ったときになガキンチョが舌に色がつくっていってたんだけど、ついてるか?」
 ふと思い立ったようにザルクがあーんと口を開けた。蒼くそまった舌が見える。
「ほんと、蒼いわね、じゃああたしも――」
 しゃくしゃくしゃく。エルはザルクのかき氷をスプーンですくってたべる。
「おい、エルエル」
「……蒼い? どうせ色がつくならザッくんと同じがいいわ。それに赤いのよりは蒼いほうがわかりやすいでしょ?」
 べーっと蒼い舌を出すエル。
 なるほどこんなふうになるのか、なんてすました顔で言うけれど。ザルクは舌を見せるエルをみて内心妙にエロチックな気持ちになるのを抑えるのに少々手をやいていたのである。

「歩くの早いよ」
 少し手前を歩くアレイスター・クローリーに文句を言うのは水着姿のマグノリア・ホワイト(CL3000242)だ。
「君が小さいからだろう? マグノリア・ホワイト」
「わかっているのなら僕にあわせてよ」
 いってマグノリアはクローリーのローブを引いて前を歩く。
「ねえ、アレイスター、この暑い中にそんな暑苦しいローブで平気なの?」
「涼しくなる魔法を使っているからね」
「君なんだかずるいね」
「生活の知恵さ」
「あ、かき氷。一緒にたべよう」
 やたら繁盛しているかき氷の店に並んであんこののった抹茶かき氷を二つ買ってきたマグノリアはクローリーに押し付ける。
 しゃくしゃくしゃく。きーん。
 頭が痛くなる。急いで食べたらそうなるとは知識ではしっていたが実践してみれば――。
 本当に痛い。
「どう
 アレイスター。
 「不死の呪い」をかけられている君だけれど、少しは「痛み」を感じられたかい?」
「いいや? その頭痛、ゆっくりたべればおきないんだぜ? てか、君わりと子供っぽいところあるんだね」
「……」
 マグノリアはなにか感じとってくれたらいいなと思ったが、当の魔法使いは涼しい顔だ。痛む頭をもみほぐしながらあんこを食べればすこし痛みが引いた。
「痛みなんてずっと昔から味わってるさ。
 だからこそ痛みをなくす魔法を知っているんだぜ」
「そう」
 冗談めかしていうそれがなんだか悲しいことにマグノリアは思えた。
 
 せっかくの水着、見せびらかさなきゃ損!
 褐色の肌に白い水着姿のエルシーは夏のビーチで大はしゃぎ。
 いえ、監視員をするんですよ。水着美女の監視員がいたなんて噂を陛下のお耳に届けるために!
 見張り台から見下ろすセクシー&フェロモンキュートな監視員に見とれて転ぶ男性がやたらいたのは――黙っておこう。
 置き引き対策迷子の対応! 酔っぱらい対策に溺れる人はいないか!
 病人の看病からなんでもやるわ!
「アーウィンさん、一緒に海の平和をまもりましょう!」
 なんてアーウィンに声をかけたけど、そっちは頼むっていって、走って何処かにいった。
 うん、私の噂をながしてくれるつもりね! よし! たのんだわよ! アーウィンさん!
 ぴぴー。
 危険な泳ぎ方をしようとした子供をホイッスルを吹いて止める。
 意外とそういう子供は多くて右往左往するはめになった。
 生意気ながきんちょがお尻をさわってきたのをげんこつしてやった。
 とっても忙しい今日一日。でも頑張ったから!
 きっと! きっと! 陛下にこの噂は届くはず!
 
 夏ですよ夏!
 青い空に白い雲!
 デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は鍛え抜かれた男子を探すべく浜辺に降臨する。
 うなれシックスパック。上腕二頭筋と上腕三頭筋のすばらしいオジサマは何処!
 夏の水着姿を楽しみにしているのはなにも男子だけではないのだ! 日頃から鍛えぬかれた尊い鋼の筋肉! それを見ることを楽しみにしない女子などいない!
「あーーーフレデリック様発見!」
 鎧姿の下のバディは何処まで鍛えられてるの? どうせなら脱げよと思うけれどかのお方は妻子もち。妻子持ちには用はねえ!
 しかし聞くべきことはある!! めっちゃあるのだ。
「あのあの!! 王国国防騎士さんに程よい条件のおじ様いらっしゃいませんか?」
 鼻息荒く警備中のフレデリック・ミハイロフに声をかける。
「ディートヘルム卿か。いや、君ならもっと若い男性でいいだろう?」
「だめっ! なん! です!」
 その勢いに押されてフレデリックが一歩下がる。
「夏で開放的なおじ様に声をかけて出会いのきっかけを!」
「まあ、落ち着きたまえ、卿。その鼻息のあらさでは逃げてしまうぞ!」
「まあまあ、えへへ。で、いませんか?」
「まあ探してはみるが、期待はしてくれるなよ」
「はい! 期待してまってます!」

「よ、お嬢ちゃん」
 ナンパをしようと海まででかけた、ニコラス・モラル(CL3000453)は見覚えのある蒼い髪の女性――ミズーリ・メイヴェンに声をかける。
「ナンパはノーサンキューです」
「そんな寂しいこというなよぉ~」
 かけた声のタイミングは完璧なもの。
「今日はお仕事? 休憩? どっち? どっちでもいいや泳ぎにいこー」
「今日は非番だけど」
「ならなら、泳ぎにいこー! 珊瑚みにいこー。おじさんまだ見てないんだよね~みたいみた~い」
 ミズーリははぁとため息をつく。
「これ断るほうが面倒なやつよね、わかった。わかりました」
「やった~、若い美人さんとデート。ちゃーんとエスコートするからねえ」
「変なことはしないこと」
「変なことってなぁに~、おじさんわかんな~~い」
「そういうことをいうことよ!」
 ミズーリはニコラスの鼻筋に指を突きつける。
「了解、了解。じゃあ紳士的にいくさ」
 ニコラスはこのなぜだかちょっかいをかけたくなる女が気に入っている。
 娘より少し年上のこの女を娘代わりに思っているのだろうか? ――いやそれはない。
「ああ、そうだ、誕生日9月18日だったよな」
「ええ、よく覚えてるわね」
「仕事柄物覚えはいい方でな。で、欲しい物あるか? リクエストなんでも叶えちゃうよ」
「気にしなくていいわよ。無事で帰ってきていい商材みつけてきてくれたらいいわ」
「そういうのじゃなくてさ~~お嬢ちゃん」

 たまの休みは家族サービスとテオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は張り切る。
 今は休憩所で休憩だ。部下には氷菓を買ってこいと命令しておいた。
 彼が買ってきたのはひとつだけ。妙な気を利かせた部下はすでに姿を消している。
「あの、テオドール様。えっと、たべますか?」
 気を使う妻は氷菓の皿を差し出してくる。
「いや、かまわない。カタリーナだけで食べればいい」
 進めれば少し逡巡するもののスプーンにすくった氷菓を口に含み幸せそうな顔をする。
「なあ、カタリーナ。
 若い者をみていると思うのだが、まだ遊び足りないのではないか?」
 その言葉にカタリーナはきょとんとする。
「妻として家庭に入ることがどういうことか、わからないでもないだろう?」
「わかっております。あなたは家をあけることも多いですが大事なときはいつだって連れ出してくれます。
 それはきっと私をきにしてくれているからだなんて私だってわかっております。
 そんなテオドール様の妻になれたことが嬉しくないと思っているんですか? そんな意地悪いうテオドール様は嫌いです」
 前に比べて随分と素直な言葉をかけてくることが多くなった。完全に自分の杞憂に過ぎないことに気づく。
「ありがとう……すまない。意地悪すぎた」
「そうです。なので、テオドール様にはバツです! はい、あ~ん」
「えっ?」
「あ~ん、です。恋人同士がやるとディルに聞きました。私の我儘です。やってください」
「あいつ……」
 渋々ながらに氷菓をあ~んしてもらうテオドール。誰かに見られたらどれだけからかわれることだろうか?
 しかして、なんとも愛おしいことか。
 愛しているよ、カタリーナ。囁いたその言葉は妻には聞こえなかったようだったが。

「今日はもう警備のしごとは終わりだろう」
 黄昏色に染まる海辺でアーウィンをみつけたグローリア・アンヘル(CL3000214)は声をかける。勤務表も見てきた。ちょうどおわるころのはずだ。
「馬子にも衣装か?」
「なんでそんな言葉をしっているんだ? ちなみにそれは褒め言葉ではないぞ」
 例年この日は警備意外の選択肢はなかった。だけれども今年は休みを申請し、ユカタに袖を通して祭りに参加している。
 そんなふうに変われたことはきっとアーウィンのおかげだと思う。
「で、おまえはどうだアーウィン。婦女子の水着姿には慣れたか?」
「なななな、大丈夫だし、慣れたし???」
 くすりと笑って誂えば思ったとおりの反応。今年も慣れて居ないんだと思う。ちょっとくらいは水着を考えたが今年はユカタでよかった。
 祭りの日に真面目に警備、なんて損な役回りを自ら望んでやるのはきっと目標とか価値観とか、罪悪感なのだろう。
 少しくらい変わればいいのに。私みたいに。
 私が変えることできればいいのに。
「よしアーウィン、警備が終わったならちょっと付き合え。屋台で食事してムサシマルに負けない砂の城を作って最後に花火をするんだ!」
 だから一歩踏み出す。こんな言葉自分が言えるなんて信じられない。それは小さな勇気。
「いや、もう仕事おわったからいいけどヘトヘトなんだって」
「いいか、アーウィン祭りの日は今日だけなんだ! いままでがんばった分楽しむんだ
 それに――。私も、遊びたいんだ。たまには」
 グローリアはしゅんとした顔をする。それが計算であったらなんとも悪女になれる素養はあるが、残念ながら彼女はそのままの本心でそれを言っている。
「しかたねえな、最初は屋台だったな。えっと、たしか、肉の串が美味しい店があったんだ」
「かき氷がいい」
「腹壊すなよ」
「失礼だな。君は」
「そのあとは砂の城で花火だな。忙しくなるな」
「ああ、覚悟しておけよ」

 祭りはまだ、終わらない。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

 参加ありがとうございます。
 楽しい一日になっているのなら幸いです。
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