MagiaSteam
【楽土陥落】Agent! 機国から来た潜入工作員!



●歯車騎士団
 イ・ラプセルがシャンバラ聖王都に攻め入るより数日前――
「我々歯車騎士団がミトラースを討つ」
 ファルスト小管区を占拠しているヘルメリアから、聖王都に向けて刺客が放たれた。ヘルメリア正規軍歯車騎士団。その中でも隠密に特化した部隊だ。イ・ラプセルとシャンバラがぶつかり合っている最中、闇から神を討とうとする計画だ。
 無論、両軍ぶつかり合っているとはいえ相手がいる場所は最奥。最も警戒されている場所に踏み入るのだ。暗殺ルートを確保する事は容易ではない。
「全く……そんな重要任務にわざわざ借り出さなくても」
 シルクハットをかぶった男は、作戦を聞いた時そうこぼしたと言う。唐突に軍本部に召喚され、気が付けば船を渡ってファルスト小管区。状況を説明されてさあどうすると詰問されていた。
「この手の任務に貴様以上の適任はそうはいまい? 『CaD』――クロークアンドダガーの名を夜の世界に浸透させたのだからな。汚れ仕事と策謀はお手の物だろう?
 それに元をただせばお前が名を譲った『CaD』が失敗しなければ、カーネイジの稼働率は50%を超えていたんだ。先代として、責任を取る必要があるだろう」
「私は既に退役した身ですからね。メイドに囲まれて軟弱になってますよ」
 高圧的に迫る歯車騎士団の一人。従う兵士を見れば階級は高いのだろうが、シルクハットの男は素知らぬ顔でそう帰す。
「黙れ。貴様が『F』と通じていることは分かっているんだ。目をつぶってほしければ頭を回せ」
「ミクソン二等には叶いませんね。ではまあ、折角ですので先の海賊襲来を利用させてもらいましょう」
 シルクハットの男は、過日に攻めてきた『赤髭海賊団』の事件を利用する策をあげる。シャンバラを狙おうと迫った二大海賊の一つ。彼らが今度は聖王都を狙っている。そんな噂を流し、湾岸で爆発を起こせば両軍ともそちらに注目するだろう。
「その隙を縫って潜入。あとは『新型』の英雄様にお任せしますよ。デビュー戦で神を討ったとなれば、いい宣伝です」
「成程、その爆破を待てばいいわけか。しかし上手くいくのか?」
「ええ、行きますよ。作戦がばれてなければ」
 奇襲のキモは『あるかもしれない』と思わせることだ。シャンバラは先の『赤髭海賊団』だけではなく『乙女とキノコ海賊団』等海賊被害は少なくない。国の混乱を狙って海賊が攻めてくる、という不安の種があれば成功率は高い。
 そう。作戦がばれてなければ――

●自由騎士団
「バレてるので押さえに行ってほしいのである」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003) は集まった自由騎士に向けて説明を開始する。
「シャンバラ聖王都ウァティカヌス攻略中、湾岸にて火薬を乗せた船が大爆発を起こす。
 その以前に噂が流布され、海賊の存在が懸念されている所での轟音だ。皆が襲撃を警戒するだろう。その隙を縫って歯車騎士団が動き出す」
 噂は既に広く浸透し、今から払拭するのは難しい。となればその爆発を押さえなければならない。そしてどの船に火薬が仕掛けられているかがわからないため、火を点ける者を押さえなくてはいけないのだ。
「街にいるヘルメリア兵、これを押さえて船の爆破を止めてほしい。解除も含めて時間はそう多くない。戦闘にかけれる時間は4分程度か。
 港だが既に一般人は避難済みだ。周りを気にする必要はない。思う存分戦ってくれ」
 戦時中のため、一般人は避難している。ウァティカヌス湾岸にも人気はなく、この段階で見かけた人間は軍人関係者であることはほぼ確定だ。
「任せたぞ。相手の詳細はこちらに書してある」

●ダブルクロス――機国の二重スパイ
「先生、大丈夫でしたか? あ、これシャンバラのお茶だそうです」
「ありがとうレティーナ君。これはいい香りですね。
 いろいろ疑われてますが、概ね予想通りです。まだフリーエンジンを探る為に泳がされている段階ですね」
 シルクハットの男――ジョン・コーリナーと呼ばれる男は、奴隷として連れてきたネズミのケモノビトの質問にため息をついて答えた。
「それでどうするんです?」
「やらないといけないでしょうね。そしてイ・ラプセルとぶつかることになる。――どうせ彼らにはバレるでしょう」
「イ・ラプセルさんですか? あの、私あまり戦いたくないんですけど……予知とかもありますけど、心情的に」
「ですが手は抜けません。手加減がばれれば軍からこちらへの糾弾も激しくなりますから。それに――」
「それに?」
「この程度を止められないなら、それまでです。幾多あった国家の如く、彼らも強国に押しつぶされて歴史の中に消え去るのみでしょう」



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
EXシナリオ
シナリオカテゴリー
自国防衛強化
担当ST
どくどく
■成功条件
1.『ジョン』『レティーナ』両名の戦闘不能
2.『潜水兵』『暗殺兵』のうち8名の戦闘不能
3.条件1,2を4分以内(24ターン)に終了させる。
 どくどくです。
 ヘルメリア乱入――未遂に留めるお話。

 この共通タグ【楽土陥落】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
 また、本依頼が失敗した場合ヘルメリア軍が【楽土陥落】決戦に介入します。以上のことをご理解の上で参加宜しくお願いします。

●敵情報
・『先生』ジョン・コーリナー
 シルクハットにモノクルをかけたノウブル男性。軽戦士のスキル(ランク2まで使用)と併用して『ガジェット』と呼ばれるモノを補助的に使います。『退役してヘルメリア軍とは関係ない』存在のため、捕まえてもヘルメリアは知らんぷりします。
 煙幕(ウィーク系)や特殊薬剤(フリーズ系)を範囲にばらまく小型爆弾を放ったり、モノクルに内蔵された歯車が視覚調整を行ったりします。

・『六つ穴』レティーナ・フォルゲン
 頭に生えたネズミ両耳に三つずつ穴があいているネズミのケモノビトです。ジョンの奴隷。『ガジェット』と呼ばれるモノをメインに使います。『シャンバラに密航した奴隷』扱いのため、捕まえてもヘルメリアは知らんぷりします。
 背中のカバンからアームが伸びて【二連】で殴ってきたり、ドリル付きのアームで貫通攻撃をしてきます。

・『潜水兵』(×5)
 ヘルメリアの工作兵です。全員ミズビト。ヘルメスの権能によりハーフのキジンとなっています。一定期間毎に特殊なメンテナンスを受けないと死亡しますので、捕虜にしても情報を引き出すことはできません。その前に死にます。
『スパルトイ Lv3』『メディケイション Lv2』『パナケア Lv3』等を活性化しています。

『暗殺兵』(×5)
 ヘルメリアの工作兵です。全員ケモノビト(キツネ)。ヘルメスの権能によりハーフのキジンとなっています。一定期間毎に特殊なメンテナンスを受けないと死亡しますので、捕虜にしても情報を引き出すことはできません。その前に死にます。
『影狼 Lv3』『柳凪 Lv2』『龍氣螺合 Lv2』等を活性化しています。


●場所情報
 シャンバラ聖王都ウァティカヌス湾岸。人気はなく、場所状況に戦闘に支障のあるペナルティは存在しません。時刻は昼。
 戦闘開始時、敵前衛に『六つ穴』『先生』『暗殺兵(×5)』が、敵後衛に『潜水兵(×5)』がいます。
 事前付与は一度だけ可能とします。ホムンクルスも作成可能。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
 
状態
完了
報酬マテリア
3個  3個  7個  3個
11モル 
参加費
150LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2019年04月21日

†メイン参加者 8人†



●邂逅
「まっさか、くまさんのアレをこう使おうとしてくるなんてな」
 海賊騒動を利用しての横槍。『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)はその作戦に素直に感心していた。予知できなければ間違いなく誰かが向かっていただろう。その隙をつかれた可能性は、否定できない。
「漁夫の利を得る為には悪くない考えだと思うが、許容は出来ん」
『実直剛拳』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はため息と共に吐き捨てる。これは戦争だ。正々堂々だろうが卑怯だろうが、勝てば官軍なのだ。だからこその潜入工作員である。そしてそれを予知した以上、止めるのが自由騎士だ。
「うーん、イ・ラプセルだけじゃなく当然他の国も狙ってくるよね、神殺し」
 あたりまえか、と『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は頷く。形式上の国主は大司教ヨハネスだが、シャンバラの象徴は言うまでもなくミトラースだ。そしてその権能を奪えば今後の戦争にも有利になる。それは誰しも考えることだ。
「ヘルメリアによこからじゃまはさせない」
 無表情に答える『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)。ミトラース大聖堂には義理の姉も向かっている。ヘルメリアの介入が成功すれば、姉の危険度が増すのだ。それだけはさせないと気合を入れるように武器を握る。
(迷わず進めよアダム・クランプトン。この道の先に『優しい世界』は必ずある)
 暗示をかけるように『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)は心の中で呟く。ノウブルも亜人も関係なく笑い合って過ごせる『優しい世界』。そこにつながる道は困難だけど、それでも歩みを止めるつもりはない。それは祈りに似た誓いでもあった。
「いいねぇ! 隠密部隊、カッコイー。まぁでも、させないけどね!」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)はテンション高めに叫ぶ。他人の秘密を暴き、それを自分の物にする。それ以上の悦楽などあろうものか。クイニィーはその欲望に忠実だった。
「いいぜ、ヘルメリアのクソども。全て返り討ちにしてやる」
 拳銃を握りしめ『RED77』ザルク・ミステル(CL3000067)は笑みを浮かべた。状況的に厄介な介入だが、それでもヘルメリアの戦力を潰せるのなら悪くない。復讐の炎がちりちりと身を焼くのを感じながら、その熱にほだされるような歪んだ笑み。
「しかし『この程度を止められないなら』ねぇ?」
 水鏡で聞いた『先生』の言葉を思い出しながら『パーペチュアル・チェッカー』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は苦笑する。それは水鏡を意識した挑発だったのかもしれない。だが止めなくてはいけないのは事実だ。存分にやってやる。
「やはり来ましたか、イ・ラプセル。こちらの構成は理解されている前提で動きましょう」
「それって面倒ですよね。こっちはまだあちらの構成わからないのに」
「いや全く。相手の駒の動きが分からないままチェスをするようなものです」
 こちらの動きを捕らえたのか、『先生』と『六つ穴』がそんな会話をする。一度水鏡の予知で痛い目を見て、そこからの予測なのだろう。
 イ・ラプセルとヘルメリア。その戦局を決める戦い。それが舞台裏で蠢いていく。

●激突
「こちとらクソ忙しいんだ。お前らはロンディアナに引っ込んでろ!」
 二挺の拳銃を構え、ザルクが吼える。ヘルメリアの王都ロンディアナの光景を思い出し、さらに怒りを募らせる。蒸気文明の栄華と暗黒面を内包した街。霧と煤煙が覆い隠す人間の暗部。頭を振ってその光景を打ち消す。
 形状の違う二つの銃。その特性と弱点を常に脳裏に留めながら、ザルクは引き金を引く。時に交互に弾丸を放って互いの欠点を補い合い、時に同時に引き金を引き互いの特性を生かす。ただ銃が二つあるのではない。二挺を生かした戦いをするのが二挺拳銃スタイルだ。
「容赦はしないぜ、ヘルメリア!」
「嫌われましたね。まあ、平和的になるはずもありませんが」
「シャンバラ取りあう仲だもんね。ライバル関係?」
 指を唇に当て、考えるように首をかしげるクイニィー。イ・ラプセルとヘルメリアの現状の関係を語れば『シャンバラを討つまでの一時的な同盟関係』が適切だ。だが互いに出し抜こうと工作を繰り返している。今この戦いも、その一環だ。
 練り上げた魔力に従い、クイニィーの手から水銀が蠢く。水のような金属は形に捕らわれること無く変化し、敵の動きを封じていく。同時に水銀そのものが持つ猛毒で肉体を蝕み、体力と魔力をじわじわと奪っていく。
「とにかく美味しい所は貰っちゃうよ。色々お話しない、センセイ?」
「おや以外。平和的に話が通じそうかもしれませんね」
「それが成し得るように僕は努力する」
 キジンの肉体を振るいながらアダムは胸を張る。戦わずしてすむならそれに越したことはない。それは戦争のコストリスク的な意味もあるが、アダムが目指す世界でもある。そしてそれが言葉だけでなしえないことも理解している。
『六つ穴』の侵攻を塞ぐようにしながらアダムの腕部蒸気鎧装を変形する。何本かの砲身が生え、体内の熱を排出する管がむき出しになった。砲身から無数の弾丸が射出され、戦場を穿っていく。排熱の煙が晴れたと同時にアダムは声を張り上げる。
「私は自由騎士アダム・クランプトン。貴殿らの目論見は既に看破されている。
 それでもなお戦うのならば貴殿らの誇りを見せるが良い!」
「誇りはないが、戦いを止めるつもりはない」
「だろうな。ならばこちらも加減はしない」
 暗殺兵の言葉を受けてアリスタルフが頷く。相手は工作兵。軍の暗部を渡り歩く存在だ。そう簡単に降伏はしないだろう。警棒を強く握りしめ、足を半歩進める。戦いの構えを取り、意識を戦闘に移行していく。
『先生』の前に立ち、そのまま踏み込むアリスタルフ。相手の動きを封じるように回り込みながら、身体ごとぶつかるように打撃を放つ。貫通する衝撃が『先生』とその後ろに居る潜水兵を穿っていく。
「俺はイ・ラプセルの騎士、アリスタルフ・ヴィノクロフ。貴殿らにも名があるなら聞こう」
「そう言われて名乗ると思うか?」
「名乗りはしないよねえ。まあ、そこはおじさんどうでもいいので」
 ひらひらと手を振るニコラス。相手はまっとうな騎士階級ではない。キジン化されて使い捨てられる存在だ。ヘルメリアでは『兵站軍』と呼ばれる彼らはメンテナンスが無ければ死亡する。まさにこういった任務にうってつけだ。
 大気中のマナと自分の魔力を同期させるニコラス。繋がった魔力は水が高い所から流れるように体内に注がれていく。入り込んだマナを利用してニコラスは癒しの魔力を解き放つ。回復力を高め、仲間全体の傷を自動治癒していく。
「やれやれ大変だ。手が足りないや」
「ふむ、そちらが回復手ですか」
「まあ戦ってればいずれバレるわな」
 自由騎士の構成を見極めようとする『先生』に対し、ウェルスは肩をすくめる。水鏡と異なり事前にこちらの情報を知りえない野だから、今この場で判断するしかない。情報面でのアドバンテージ。これをどう生かすかがイ・ラプセルの闘いのキモか。
 そんなことを考えながら白銀の大型拳銃を構えるウェルス。装填された球は跳弾を起こしやすいように設計されたもの。周囲の壁や柱を視界にとらえ、弾丸を四方八方に打ち放つ。弾丸は壁に当たって跳弾し、ヘルメリア兵の足を止めた。
「この弾は俺からの奢りだ。ノウブルの玩具(ガラクタ)共!」
「ガ、ガラクタとか酷いです! その、この人達だって――望んでキジン化した人もいますけど!」
「のぞんだ、の?」
『六つ穴』の怒りの声に首をかしげるリムリィ。キジン化した亜人は、どこか違和感を感じる。生命力が歪というか、無理やり鋳型に注ぎ込んだかのような不安定さ。武器で潰さなくとも自壊しそうな脆さを感じていた。そんな状態を望むと言うのは如何なることか。
 疑問には思ったが、今はそれを考えている時間はない。リムリィは真っ直ぐに敵に突っ込み、ハンマーを構える。自分の中の獣性を解放し、あふれ出る力のままに武器を振るう。回転する鉄槌が敵陣で荒れ狂う。
「カノン」
「うん、行くよ!」
 リムリィの言葉に頷き、カノンが戦場を進む。リムリィの鉄槌が戦場をかき乱している隙を縫い、敵陣中心に滑り込むようにたどり着く。キジン化された亜人に悲し気な視線を向け、そして意を決したかのように唇を引き絞って気合を入れる。
 上半身を捻じり、足に力を籠める。跳躍と共に捻じった体を解放するように体を回転させ、蹴りを放った。その勢いを殺すことなくさらに回転は続く。時に空を時に地を回転し、カノンを中心とした蹴りの嵐が敵陣を支配していく。
「ヘルメリアの野望は食い止めさせてもらうよ!」
「いやはや、皆さん気合十分ですね」
 自由騎士の戦意を受け流すように笑みを浮かべて頭を掻く『先生』。
 戦いはまだ始まったばかりだ。

●交差する思い
「あのガンナーとキジンのガーディアンから攻めます。届くなら回復のミズビトも」
『先生』の指示と同時にザルクとアダムに攻撃の矛先が向く。レティーナのカバンから機械のアームが伸び、アダムに叩きつけられる。そして錬金術の技と『先生』の投げナイフと小型爆弾がザルクに向けられる。
「高火力の遠距離持ちを優先的に狙ってきた……?」
 敵の動きに疑問符を浮かべるが、その理由はすぐに理解できた。ヘルメリアは時間を耐え抜けば勝利であり、イ・ラプセルを全滅させることに拘りはしない。となればダメージディーラーを削るのは納得のいく理由だった。
「いっきにたたみかける」
 ハンマーを振るい、敵陣を進むリムリィ。乱戦状態で味方を巻き込まないように注意しながら、一撃一撃に力を込める。大きく動けばたくさんのヘルメリア兵を巻き込めるが、味方も巻き込んでしまう。そのジレンマに悩みながらハンマーを振り上げる。
「なんだろう。みょうにしぜんじゃない」
 キジン化した亜人を見て、リムリィは首をかしげる。
「いろいろ事情があるのですよ」
「そういえば、のぞんでああなったひともいる?」
 リムリィは先ほどの会話を思い出す。ウェルスの言葉に激昂する『六つ穴』の言葉。ヘルメリアのことはよくわからないけど、そうせざるを得ない理由があったのだろうか。
「ええ。イ・ラプセルとは違い、ヘルメリアでは亜人は誰かの奴隷になるか、日陰で暮らすしかありません。キジン化された亜人は国家が有する奴隷なのです」
「そうだな。少し聞かせてほしいぜ。キジン化された亜人はメンテナンスされないと死ぬんだろう?」
 魔力を充填しながらウェルスは『先生』に問いかける。前に『先生』から聞いた話だ。だとすれば何故自らそれを望むのか?
「ええ、死にます。ですが彼らは『国』に立場を保証されます。その代償が記録に残らない軍務なのですが」
「はっ! 国に飼われているのと同じじゃないか。そんなのの何処が――」
「――その方がマシ、というのがヘルメリアです」
『先生』の言葉にウェルスの言葉が詰まる。忘れたわけではない。世間で亜人がどのような目で見られるか。そしてヘルメリア等の大国は更にそれがシステム化していることを。イ・ラプセルが特殊なだけで――
「国に飼われる。まさにその通り。ある者は主に四肢をもがれて命からがら軍に逃げ、ある者は口きけぬ娘を養うためにキジンとなり。大部分は国に捕まって改造された方々ですが、そこにいる理由は様々です。ですが共通しているのは兵站軍に居た方が『安全』だからです」
「あの国で安全なのは、安全な主に雇われた亜人なんだよねー」
『先生』の言葉に苦笑するニコラス。かつてヘルメリアの貴族の元で動いていたニコラスは、その貴族の恩恵もあって軍からのアプローチはなかった。だが貴族の庇護が無ければ立場は危うかったかもしれない。
「その言葉が出るという事は、ヘルメリアで誰かの私兵だった、という事でしょうか。ミズビト私兵で有名なヴェルヌ卿あたりですかね?」
 亜人が大きな傷を負わずに生きていける環境はそう多くない。その中でありえそうなことに当たりを付けたのだろう。
「さてね。おじさん昔のことはわすれたよー」
 探るような言葉にとぼけて返すニコラス。気が抜けたような笑顔からは答えは探れない。本当に忘れたとも取れるし、誤魔化しているようにも見える。
「なんだよ! ヘルメリアは亜人を何だと思っているのさ!」
 聞こえてくる言葉に怒りを感じるカノン。聞けば聞くほど、ヘルメリアでの亜人の立場は惨めなものだと印象付けられる。イ・ラプセルでは種族の差など関係なく笑い合えるのに。
「あ、あはは。凄いですね。そんな事、怒れるなんて」
「なにさ! カノンのこと、馬鹿にしてるの!?」
『六つ穴』の遠慮がちな言葉に、反論するカノン。そんな事、といわれてカチンときたようだ。
「だって、亜人の立場は、当たり前のことですし。怒るとか、もうできません」
 笑みを浮かべながら答える『六つ穴』。その笑みは可笑しいのではない。諦念の笑みだ。もうどうしようもない現実を前に、抗うことなく受け入れてしまった笑み。
(そうか。それがヘルメリアなんだ……)
 亜人を人ではなくノウブルの道具に使う国。それが当たり前の国。ノウブルも、亜人も、全てそれが常識だと思っている国。羽根が無い者が空を飛べないのが当たり前のように、亜人がそうであるのは当たり前なのだ。
「そうだとも。そんなことを怒らないといけないんだ」
 はっきりと言い放つアダム。ノウブルが亜人を支配すること。差別がある事。その差異を間違っていると主張しないといけない。
「以前僕は君達に約束したね。『何時か君達を助けに行く』と」
 助ける。それは『正しくない状況』から『正しい状況』にもっていこうとすること。逆に言えば、相手の状況を否定すること。それはひどく傲慢な言葉だ。価値観を否定し、自分の『正しさ』を押し付けるのだから。
 そんなことは解っている。それでもアダムは目指すのだ。
「ここからだ。ここから君達を助ける。たとえ偽善と罵られようとも、僕は『優しい世界』を目指す。
 まずは僕が君達を助けるに相応しい男か確かめてくれ。この戦いに勝利し認めさせてみせるから」
「い、イケメンです! しかもメイドとか言わない残念じゃない人です! 騎士イケメンです!」
「センセイ、残念とか言われてるけどいいの?」
 レティーナの言葉に指さして問いかけるクイニィー。問われた『先生』は『はっはっは。後で話がありますよ』と受け流した。
「そうそう、センセイ。これは提案なんだけど、センセイ、うちにへルメリアの情報売る気は無い?」
 他の人には聞こえないように、小声でクイニィーは交渉を仕掛ける。
「さて。捕まった時にかなり問い詰められた気はしますが」
「あれはあれ。これはこれ。情報は日々変化するんだから、継続的に情報が入るに越したことはないでしょう?」
「確かに。しかしシャンバラの次はヘルメリアですか。ヴィスマルクもびっくりの進軍スケジュールですね」
「さー? 上が何を考えているかはあたし分からなーい」
 互いに探るように会話を繰り返すクイニィーと『先生』。
(探りはこんなものかな。後は『六つ穴』ちゃんを人質に取るあたりすればいけるかも。その為にも――!)
 いったん交渉を切り上げ、戦いに意識を移行するクイニィー。
「『新型』って言ったな? ウァティカヌスに攻め入る部隊」
 予知の内容を思い出し、ザルクが口を開く。
「『キュニョーの砲車』の射程を考えればウァティカヌスにプロメテウスを直接打ち込めるとは思わない。むしろ『プロメテウス/カーネイジ』の蒸給率をあげた方が効率的だ。
 ってことは――蒸気騎士か!」
 ザルクの問いに、驚きの表情を浮かべる『先生』。まさかイ・ラプセルの人間からその単語を聞けるとは思ってなかった、という顔だ。
「ふむ、ヘルメリアの軍部に詳しいようで。しかしそのキジンボディは軍属では――いや、詮索失礼。
 お察しの通り。プロメテウスの小型化。『纏う』蒸気兵器こと『蒸気騎士(スチームナイト)』です。実物は拝見していませんが、排気管の改良で排熱効率が増し、実戦投入の目途がたったとか」
「狂ってやがる。あの出鱈目コンセプトを突き詰めやがったのか……!」
 かつてヘルメリアの奴隷商人の船と戦ったときのことを思い出すザルク。常に高熱を発していたキジン達。過剰蒸気による半ば自爆に近いコンセプト。あれをさらに戦闘型にしたのが――蒸気騎士。
(ヘルメリアの潜入工作員。元とはいえその手並みは今も衰えず、か)
『先生』と相対しながらアリスタルフはその実力を測ろうとしていた。単純な戦闘力というだけではなく、見識や作戦指揮などといった戦闘力以外の部分もだ。
(海賊襲撃に見せかけた突撃作戦。水鏡の予知が無ければこの作戦は成っていただろう。事前に流布された流言、爆破のタイミング、そういったことをこの短時間で終わらせたのか)
 騎士や軍人の闘いは、イブリースなどの外敵等に振るわれる時に発揮される。だが『先生』の闘いはそれとは違う。戦う前に終わらせる、言わば情報戦のプロだ。
(我が国の現状を考えれば敵を増やすより戦力を増やしたい。
 さて、その為には……)
 思考するアリスタルフ。相手の性格や目的を軸に、どうすればいいかを考える。国のため、そして騎士団の為に――
 時計の針は、少しずつ進んでいく。

●水と機と
 ガジェットと呼ばれる技術を駆使する『先生』と『六つ穴』。小型爆弾が適度に自由騎士を足止めし、『六つ穴』のカバンから伸びたアームが叩きつけられる。
「油断ならないな」
「まだこの程度で負けるつもりはないよ」
『先生』と『六つ穴』を押さえているアリスタルフとアダムがフラグメンツを削られた。
「テメェらには負けやしねぇよ……!」
「お。こっちもねらう?」
「あいたたた! もう、怒ったぞ!」
 また、高火力を狙うヘルメリアのキジン達が火力の高い者を攻め立てる。ザルク、リムリィ、カノンもフラグメンツを削られていた。
 だが、自由騎士も負けてはいない。自由騎士達は先ず回復を行う潜水兵を狙う。目的が相手の制圧のため、回復役を押さえるのは妥当な行動だ。
 だが後衛に陣する潜水兵を狙えるのは遠距離攻撃持ちになる。『先生』が高火力の遠距離攻撃手を狙うのは、それを封じる意味もあった。数で優るヘルメリア側は物量で近距離攻撃持ちを足止めできるのだ。
 ――と、いう戦術は一瞬で瓦解する。ウェルスがヘルメリア兵を足止めし、ブロックを封じたからだ。足止めされたことを確認した自由騎士は、一旦間合から離れて隙間を縫うように後衛に迫る。
「おおっと、こういう技があったのですね」
 ヘルメリア兵に立て直す余裕は与えないとばかりにカノンとリムリィが潜水兵がいる敵後衛に突撃する。回転しながら放つ蹴りと、ハンマーの一撃がそこで荒れ狂う。
「いくぞー」
「カノンの蹴りを受けて見ろ!」
 直線的なリムリィのハンマーが敵陣を二分し、その片方を遮るようにカノンが動く。リムリィの一打が力の領域なら、カノンの動きは技の領域。柔よく剛を制し、同時に剛よく柔を制する。互いの動きなど確認するまでもない。ただ自らを示せば、相手はそれに応じて動いてくれる。
「流石に消費が激しいぜ。だが四分で決めなきゃいけないんだからな!」
 ヘルメリアの攻撃でフラグメンツを燃やしたウェルスが、口についた血を拭いながら呟く。高火力の技は自然と消耗が激しくなる。ましてやそれが本来自分のスタイルでないのなら当然だ。だがそれを惜しんでいては勝機はない。長年の商人経験がそう告げていた。
「狙われないっていうのは楽でいいけど。逆に言うとそんだけ守り切らないといけないってことだよな」
 首の後ろに手を当てながら、ニコラスは癒しの魔力を展開する。自分に向かってくる弾丸が少ない事は、逆に言えば自分以外の存在を優先して攻撃していることだ。状況を押し切れる火力を出せる仲間を優先して癒し、戦線を維持していく。
「そのモノクル狙わせてもらうぜ! ――何っ!?」
 神経をとがらせ、針を通す精密な射撃で『先生』のモノクルを狙う撃つザルク。弾丸は狙い通りに『先生』のモノクルを砕いた――が、『先生』の持つトランクからアームが伸び、新たなモノクルを装着させた。
「狙ってくるとわかっているのなら、当然対策を立てますよ」
「何そのトンデモトランク!? みーせーてーよー!」
 謎ギミックというかトンデモギミックに興味津々のクイニィー。自分の知らない事を知るために努力は惜しまない。戦闘の手を止めるほどではないが、キラキラした瞳でカバンを見ていた。分解したーい、と言いたげな顔である。
「時間がない。一気に攻める!」
 残り時間が半分を切ったあたりからアリスタルフは衝撃を『通す』ように打撃を繰り返す。『先生』を押さえながら、同時にその後ろ側にいつヘルメリア兵に打撃を加える為だ。少しでもダメージを積み重ね、戦いを早く終わらせるために。
「思ったよりも重い……! だけどまだだ!」
『六つ穴』の攻撃を受けながらアダムは必死に耐えていた。『六つ穴』の攻撃を受けると同時に仲間の攻撃も受けているせいもあって、疲弊は激しい。。自由騎士の中で倒れるなら自分が先。それが騎士の信念。そう言いたげに矢面に立つ。
 攻める自由騎士、守るヘルメリア。この戦いの構図はそれだ。数の優位性で後衛を守り、回復で耐えるのがヘルメリアの戦術。それが瓦解した以上、ヘルメリア側は攻勢に出るしかない。
「痛い痛い痛い……!」
「あー。おじさん貧弱なんでつらいのよね」
 ヘルメリアの猛攻を受けて、クイニィーとニコラスがフラグメンツを消耗する。
「あとは……任せたよ」
「……ん。よろしく」
「きゅう……」
「ここまでか……」
 既にフラグメンツを削られていたアダムとリムリィとカノンとアリスタルフが力尽きた。
だが――
「あはは、もう、むりぃ……」
 ウェルスの射撃で『六つ穴』が倒れ、潜水兵はリムリィとカノンの波状攻撃で伏している。ザルクの射撃が暗殺兵をほぼ伏していた。状況は既に自由騎士側に傾いていると言ってもいい。
「いやお見事。水鏡で情報優位を取っただけではなく、それを生かしてここまで作戦を組み立てるとは」
 負けを認めるような発言をしながら、しかし『先生』の戦意は衰えない。最後の最後まで抵抗するつもりのようだ。
「お褒めの言葉、素直に受け取っておくぜ。それじゃあ――」
 白銀の大型拳銃に弾丸を込めるウェルス。枯渇寸前の魔力を弾丸に込め、『先生』に銃口を向ける。慣れた所作で標準を合わせ、無心で引き金を引いた。乾いた火薬音が響き、そして『先生』が倒れ伏す。
「こいつでシメだ。弾丸代はツケといてやるぜ。お前達はどうする?」
 銃を手に脅すように問いかけるウェルス。まだ動けるヘルメリア兵は勝機なしと武器を捨てて投降した。

●命の行方
 戦い終わって一息つく間もなく、自由騎士達は爆破予定の船を押さえ、無力化する。作業が一段落し、安全な場所まで移動した後に自由騎士達はヘルメリア兵に向き直る。
「ねえセンセイ。ヘルメリアの二重スパイしない? あたしと悪い事しようよ」
「はっはっは。無理です」
 クイニィーの誘いをにべもなく断るジョン。ならばと人質を、という前にジョンは言葉を続けた。
「今回の失敗でニクソン二等――歯車騎士団のシャンバラ侵攻責任者ですね――は私を切るでしょう。おめおめ戻れば口封じで殺されますよ」
 うぐ、と自由騎士達は押し黙った。失敗して戻った者に信用は得られない。そんな立場でスパイなどできやしない。事、暗部に至っては不要なら切るのが常道だ。
「あんたらの持ってるガジェットの技術を提供してもらいたいんだが」
 ウェルスはジョンのモノクルや小型爆弾を手に取りながら問いかける。どうやって動いているのか、触ってみても見当もつかない。
「それは構いませんが……作ったのは私ではないので今ここでというわけには。城まで行けば作った者に打診はしますが」
「城?」
「おおっと。まあフリーエンジンのアジトと思ってください」
 少し喋りすぎたか、と自制するようにジョンは話を打ち切った。
「そう言えば聞きたいんだが……軍以外でミズヒトの子飼いの私兵囲ってるヤツ、どれくらいいるんだ?」
 ニコラスが頭を掻きながら問いかける。キジン化したミズビトを見ながら、複雑な表情を浮かべていた。色々思う所があるのだろう。
「やはり海底探索者として有名なヴェルヌ卿ですね。ノーチラスチームは沈没船探索の代表格です。
 海洋学者のアロナクス教授や『ランサー』ネッド辺りもそれなりにミズビトの奴隷を有しているでしょう」
「あー……。ウン、ソウデスネ」
 視線を逸らし、適当に相づちを打つニコラス。いろいろ思い出したくない名前を聞いた、という顔だ。
「……正直言って、ヘルメリアの反政府組織は死ぬほど嫌いなんだよな。こういうやつらのせいで俺の故郷は焼けてなくなったわけだし」
「ではその恨みを晴らしますか? 今なら簡単な事です」
 ザルクの言葉を受け止めるようにジョンは口を開いた。事実、疲弊して縛られたジョンに抵抗する術はない。銃口を押し付け、引き金を引けばそれで終わる。
「……死にたいのか?」
「ここで私が死ねば『イ・ラプセルはシャンバラとの戦いでヘルメリアの国民を殺した』とヘルメリアは喧伝するでしょう。そうなれば反イ・ラプセルの空気を国内に広められる。
 そうなればフリーエンジンの圧力も弱まる、という思いはありますね」
「狸だな」
 言ってザルクは銃を構える。そのままそれをゆっくり持ち上げた。
「利用できるものは利用する。それは貴方も私も共通していると思いますよ」
「――ふん。正直に免じてやる」
 鼻を鳴らしてザルクは銃をしまう。ここで殺すメリットとデメリットを天秤にかけて、デメリット回避を選んだ……と自分を納得させる。ヘルメリア関係者は殺す。その炎はまだ消えない。
「卿、茶会はお好きですか?」
「ええ。イ・ラプセルのお茶は覚えていますよ」
 アリスタルフの言葉にジョンは首肯する。
「端的に聞きます。互いに利用しあって、一時的な協力はできませんか?」
「できますよ」
 真摯に問いかけるアリスタルフの言葉に、あっさりと答えるジョン。
「貴方は私達だけではなく、キジンの者達まで救おうと動いてくれた。その尽力に応えなければ、フリーエンジンの名が廃ります」
 ジョンは瞑目し、首を垂れるようにアリスタルフに礼を手向けた。
 そう。アリスタルフはキジン達に攻撃が加えられる度に衝撃を放ち、急所への攻撃をずらしていた。致命傷を避けたキジン達は、応急処置を施せば死なないだろう程度の傷で収まっている。
 それは不殺を貫いた騎士の奇跡。国を思い、人を思った拳の結果。
 故にその拳は『活殺自在』。生も死もその心のまま。水の女神の権能を示すが如くの在り方。
 フリーエンジンはヘルメリアの奴隷解放を目指している。軍役になったとはいえ、キジン化された亜人達も救いたい相手だ。それをあえて殺さずにいたという事は、フリーエンジンに尽力したも同然。
「俺は軍人なので戦うのが仕事ですが。無駄な仕事を増やす位なら、お茶を飲んでいたいんですよ」
 アリスタルフの行動が無ければ、この結末はなかった。ここで殺すか、あるいは人質を取っての交渉となれば禍根を残していただろう。最悪、土壇場での裏切りもあったかもしれない。
「……しかし、どうするんだ? このまま返すと言うのは情報をもって帰られるのも同然だぞ」
「ああ、それは大丈夫です。今回限りの裏技があります」
 眉を顰めるウェルスに、ジョンは事も投げに言い放った。

 かくして誰の命も失われることなく、この戦いは終結する。
 ヘルメリアのキジンは殺すしかない、と思っていたカノンとアダムはこの結果に喜び、自らの信念を固める。
 かくして歯車騎士団は立ち往生し、ウァティカヌス介入を諦める事となった。
 そして舞台は、ウァティカヌス内のミトラース大聖堂に移る――

●後日談
 時間軸は僅かに進み、歯車騎士団の駐屯地に移る。
「ニクソン二等、件の作戦に関わった兵站軍からの報告です」
「コーリナーは失敗して裏切ったか……兵站軍の報告は……。
『水鏡にあらかじめ予見されていた』『こちらの構成を水鏡で読まれていた』『足止め系の魔術』『束縛の弾丸』『ジョンとイ・ラプセルの会話』……成程な」
 ジョンはキジン達に『見たまますべて報告してください』と告げてヘルメリアに戻した。そしてそれはそのままヘルメリアの上部に伝わることになる。その報告を受けた上部はイ・ラプセルのデウスギアの索敵能力はそこまで強力であると聞き――
(――と、思わせるのがジョンの作戦か)
 ニクソン二等は言葉なく報告を切り捨てた。
(あれだけの作戦で兵站軍の誰一人欠けていないと言うのはおかしい。ならばジョンは作戦を行うとかこつけてイ・ラプセルと通じていた、と考えるのが妥当。戦闘はあったが、適度に切り上げたのだろう。
 口封じをしなかったのはこちらに偽情報を送り、困惑させようと言う作戦か)
 情報とは、その信頼度がモノを言う。その信頼度を著しく下げてしまえば、正しい情報も欺瞞と疑われることになる。真偽など関係ない。裏切り者が係わった可能性がある時点で、情報は傷がつくのだ。
(あの兵站軍を通じてジョンが何かを仕掛けてくる可能性はある。だが、それを利用して動きを掴んでやる。騙されたふりをして、騙してくれよう)
 嘘と欺瞞。その世界で生きてきたからこそ使える、たった一度の裏技――

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与

†あとがき†

どくどくです。
最後の敵は文字数……!

以上のような結果になりました。未知のスキル相手にお見事です。
ガジェットに関しては技術者のレシピを見ないと解読は難しい、という扱いです。技術の差、というのではなく基本構造の違いという意味で。
和食作れる人でも、ソースの味からフランス料理再現は難しい、といった感じです。

MVPは交渉に一役買ったヴィノクロフ様に。ジョンの裏切りルートとか普通にありえました。
アニムスは戦闘にではなく、その信念を貫いた形で使用させていただきました。

さて、ヘルメリアも佳境です。
皆様の闘いの結果を、どくどくも心待ちにしています。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済