MagiaSteam
【アクアフェスタ!】Play! 赤の弾丸解き放て!



●血のように赤くぬるりと舌に絡みつく粘性と喉を焼く酸の味。汝の名は――
 トマト――
 かつてはその赤さと酸味から『毒林檎』と呼ばれていたが、太陽光を浴びたりすることで硬さや酸味などが変化することが分かり、様々な種類のトマトが市場に出回った。食品として売り出されるようになるまで、実に二百年の年月を有したと言われている。
 さてここは王都サンクディゼールの南商店街にあるちいさなアパルトメント。名前を『Room No.500』。ここでは『管理人さん』リド・エンピス(CL3000340)を中心として、自由騎士達がトマト栽培を行っていた。
「と、いう訳で! とりあえず雑草抜いたり、耕したりしてだね、畑を作ろう!」
「トマトは湿気が強すぎると駄目になるため、水捌けの良い排水向きの高畝にすると……ああ、高畝というのは――」
「栽培だったら種まきか。俺の手のばい菌のせいで全然育たなかったらごめんなトマトの皆。俺なんかより強く生きるんだよ……!」
「………わあ…。たくさんお手伝いありがとうねえ。
 これだけあったら投げるの困らなそう。食べても困らなそう」
 ――とまあ、たくさんのトマトを収穫することに成功する。
 投げる? そう、トマトは投げるのである。

●Queer Festival(奇妙なお祭り)
「トマト祭りだよ!」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は拳を振り上げ、祭りの開催を告げる。この日が来るのを待っていた! と体全体で表現しているようだ。
 トマト祭り。ざっくり言えば、熟したトマトをぶつけ合うお祭りの事だ。誰が何時どう言う経緯で始めたかはわからない。だが毎年アクアフェスタでは必ず行われる祭なのだ。祭が終わった後にはトマトの赤い泉が出来るほどである。
 勝ち負けなどない。ただぶつけ合い、楽しむ。それだけの祭りだ。だがトマト祭りのためだけにサンクディゼールに訪れる猛者もいる。最低限のルールさえ守れば無礼講のため、身分の差を気にせず楽しめる催しとなっていた。
 トマトを積んだ蒸気トラックが中央公園にやってくる。参加者は持てるだけのトマトを持ち、街のあちこちに散った。
「さーん! にー! いーち!」
 カウントダウンするクラウディア。カウント0のタイミングで、公園の鐘が鳴った。
 一斉に投げられるトマト。トマトでトマトを洗う祭りの始まりである。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
日常γ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.トマトを投げろ!
2.トマトをぶつけろ!
3.トマトを投げつけろ!
 どくどくです。
 くっ、流石に「T」でタイミングよくとはいかなかったか……!

●説明!
 トマト祭り。熟したトマトをぶつけ合う奇妙なお祭りです。はい説明終わり。
 禁則事項として、トマトをぶつける以外の暴力行為、種族やジョブ、一般スキルの使用などです。技能の使用、水着着用はOKとします。サマードレスは禁止じゃないけどやめとけ(笑顔)。
 戦闘区画はサンクディゼール中央公園内を中心とした町一ブロック。屋根の上や窓からもトマトが飛んできます。トマトの補充は様々な場所にある蒸気トラック等からいつでも可能です。
 時間は正午から三時まで。終了後は放水用タンクや仮設シャワーなどでトマトを洗い流します。

 有利不利など考えて戦略を練るもよし。何も考えずにトマトを投げ合うもよし。要はお祭りです。楽しんでください。

●場所情報
中央公園:憩いの広場です。障害物は少なく、見晴らしがよいです。
街中:商店街です。屋根の上にも人がいます。窓からもトマトが飛んできます。障害物多し。
空中:障害物もなく、飛べばいい的です。

●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の33%です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『エドワード・イ・ラプセル(nCL2000002)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】という タグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  1個  0個
18モル 
参加費
50LP
相談日数
6日
参加人数
24/∞
公開日
2018年09月02日

†メイン参加者 24人†

『黒砂糖はたからもの』
リサ・スターリング(CL3000343)
『ReReボマー?』
エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『戦場に咲く向日葵』
カノン・イスルギ(CL3000025)
『君も勇者のひとり』
ジョシュア・サザランド(CL3000360)
『望郷の士』
島津・豊太(CL3000134)


●トマト祭り開始!
『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)は新品の水着を着て通りを歩いていた。パレオに透けて見える白の水着がローラの肌を強調し、エロスと健康さを際立たせていた。
「なんか知らないけど水着になって集まればいいイベントだって聞いたから来たよぉ♪ 
ウフフ、ローラの水着姿でみんなメロメロにし――」
 べちゃ。ローラのお腹に何かが当たる。ぬるりとした感覚が肌を通して伝わってきた。人肌に似た温度と、纏わりつく粘性。そう、ローラはこの感覚をよく知っていたこれは……。
「ギャアアアア! トマト!? TOMATO!? なんなのこの騒ぎィいいい!?」
 集団でトマトを投げ合う祭り。それがこの国にあることを知っていた。だが知識と経験は大違いだ。
「え? なんかローラめちゃくちゃ狙われてない? ハーレムマスターの影響なの!?」
 寄って来た男達に(トマトを投げつけられて)ぬるぬるのぐちょぐちょにされてしまうローラであった。
「飛べばいい的って言われてる――からあえて飛ぶわ」
 エル・エル(CL3000370)はアゲハ蝶の翼を広げ、宙を舞う。羽根があるとはいえ、空中でとっさに速度を増すことは難しい。遮蔽物もなく目立つためいい的になる。案の定、エルに大量のトマトが投げつけられた。
「さぁさぁ! 当ててごらんなさい! うふふふ」
 実ったトマトの自然を全身に受けて笑うエル。夏の日差しを受けて育ったトマト。大地と太陽、そして畑を耕した人の結晶だ。エルはそれを想像しながら自然の息吹と人の営みを全身で感じていた。
「さあ、子供たち。生粋のサンクディゼールっ子であるこの私が、祭りの楽しみ方を教えてやろうじゃあないか……!」
 がはは、と笑いながら『いつかそう言える日まで』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は子供達とトマトを投げ合う。大人げない、という言葉は今はない。身分も性別も種族も関係なくトマトを投げ合う。それがこの祭りなのだ。
「やーい、自由騎士のおじさんトマトまみれー!」
「バナナの皮で滑ってやんのー!」
「おのれ小僧共が! こうなったら本気で相手してやろう!」
 子供に野次られて両手でトマトを持つボルカス。子供のためにあえて負ける、ということはしない。子供も楽しませ、自分も楽しむ。その両方を選ぶ傲慢さ。蒸気トラックに陣取って、次々とトマトを投げつける。
「ついでにお前もだ! くらえ!」
「あははははは! やったなー!」
 ボルカスから投げられたトマトは『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)の頭に当たる。子供と言っていい背丈だが、はち切れんばかりの胸。それを包むような水着でカーミラはトマトを投げていた。
「そりゃー!」
 子供ぽい掛け声と共にトマトを投げるカーミラ。戦略などない。ただ全力で体を動かし、全力でこの奇妙な祭りを楽しむ。既に全身トマトで真っ赤だが、気にすることなく笑いながらトマトを投げ、時々食べていた。
「酸っぱくておいしー!」
「だろう? あとでうちの食堂に来れば、おいしいトマト料理を作ってあげるよ!」
 言って胸を叩くトミコ・マール(CL3000192)。トマト料理のレピシはたくさんあるよ、と豪快に笑う。色々な人においしいものを食べて笑顔になってほしい。そんな母性溢れる豪快な笑いだ。
「それはそれとして、いまはアタシのトマトを喰らいな! どっせぇぇぇぇぇぇいい!」
 だが祭りの趣旨を忘れるつもりはない。扱いに慣れたトマトを手に、戦場に躍り出るトミコ。料理で培った体力をベースとして、力の限りトマトを投げる。トミコの腕が振るわれるたびにトマトが爆ぜ、街が赤く染まっていく。
「トマトの扱いは誰にも負けないよ! そら!」
「サシャの赤い魔球、くらうとい――ぐふぅ!」
 投げようとしたところにトマトを受けるサシャ・プニコフ(CL3000122)。司祭様に隠れてこっそり参加したトマト祭り。最初は後ろめたさもあったが、トマトを投げていくうちにどんどんはまっていき、テンションがあがってきたところでの被弾である。
「サシャが投げる前にぶつけるなんて卑怯な……ぷぎゅ! 許せないんだぞ、正々堂々と……ぴぎゃ!」
 指を立てて投げた誰かを叱ろうとしたところで一撃。さらに叫ぼうとしたところにさらに一撃。これがトマト祭りというデスゲーム。隙あらば襲われる(いじられる)イ・ラプセルの祭典。顔を涙目にして、サシャはトマトを掴む。
「もう怒ったぞ! こうなったら手当たり次第に投げまくってやるんだぞ! えいえい!」
「わおーん! こっちこっちー!」
 走り回りながらトマトを投げる『いっぽいっぽすすむみち』リサ・スターリング(CL3000343)。喜びを示すように尻尾を振って走り回り、人を見つけるたびにトマトを投げる。作戦も何もない、手当たり次第の突撃だ。
「たのしいおまつりだねー!」
 全力で走り、全力で投げる。集中砲火されても怒らない。ただ体を動かし、この祭りの空気を楽しむ。リサはこのトマト祭りを全力で駆け抜けていた。足を止めることなく、赤い祭り場を走り回る。
「ぎゅんぎゅーん!」
「体力のまま進むもよかろう。しかし騎士なら兵站を整えてから挑むべし!」
 言って『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は腕を組んで胸を張る。そう、彼女は入念な準備をもって戦に挑んでいた。トマトを投げて失った体力を補充するため、トマトにかける塩を用意しマルカジリしているのだ。
「美味い! さて、体力充填したところで……全軍突撃じゃ!」
 この場合の『全軍』はシノピリカの持つトマトを指す。彼女に率いられた赤の軍勢は突撃の声と共に敵軍に迫る。赤の爆発が戦場を染めるが、シノピリカもまた(トマトで)赤く染まっていく。
「この身に弾けるトマトの感触の心地よい事よ……おお、しかし勿体無い! 我が身に被弾したトマトは残らず喰らうてくれるわ!」
 トマト祭りは、まだ始まったばかりだ。

●第1回☆どらまてぃっくトマト投げ大会!
「第1回☆!」
「どらまてぃっく!」
「「「「「トマト投げ大会!」」」」」
 ポーズを決めてトマトを手にする【RN500】のメンバー。アパルトメントの管理人たる『管理人さん』リド・エンピス(CL3000340)を始めとし、そこに住む『極彩色の凶鳥』カノン・T・ブルーバード(CL3000334)、レネット・フィオーレ(CL3000335)、『フェイク・ニューフェイス』ライチ・リンドベリ(CL3000336)、ジョシュア・サザランド(CL3000360)達の集まりである。彼らは協力してこのトマト祭りを戦おう――というのではなく、
「この大会はトマトを当てられた時にどれだけどらまてぃっくに倒れることが出来るかっていう大会だよお」
「どうしてこんな大会を開催することにしたのか、深く考えたらダメなんですよね……」
「さーて、そんなわけで! れっつトマッティーナ! いってみよー!」
 とまあ、そういう趣旨だ。
「序曲は僕が奏でよう。さあ、イッツ、ショー・タイム!」
 言ってカノンは虹を映すミノバトの羽を広げて宙を舞う。その服装は白く、七足と白の美しい姿――逆に言えば、超目立つ。
「敢えて問おう。こんな僕にトマトを投げつけられるか、と」
 容赦なくトマトが飛んできて、白いタキシードが赤く染まっていく。しかしカノンは反撃することなく、演奏を開始した。
「投げる側も投げられる側も等しく痛い。それを学ぶことできっとこの国の人々は一つ前に進める筈だ。それこそが芸術の芽生え。芸術の始まり。さあ罪を知らぬ良い子諸君。戦いの無価値を知り、芸術愛に目覚めるが良い!」
(トマトで)傷つきながらも抗うことなく歌うカノン。その姿に何を見ただろうか。
「カノンさんの芸術を邪魔するようでごめんなさい!」
 謝りながらトマトを投げるジョシュア。しかしトマトは正確に相手の頭に当てていく。ガンナーの容赦なさがあった。
「調子に乗ってごめんなさい。やっつけちゃってごめんなさい。育てたときの俺の手のばい菌のせいで、なんか変なトマトになってたらごめんなさい。巨大化して襲ってきたらごめんなさい! そんなトマトを思いっきり皆にぶつけてごめんなさいー!」
 ネガティブな事を言いながら、しかしぶんぶんトマトを投げるジョシュア。そんなジョシュアの頭にトマトが当たり、ばたりと倒れる。
「もう動けない……ごめんなさい――えい」
 近づいてきた人に向けて、持っていた最後のトマトをぶつける。
「へへへ、だまし討ち大好きでごめんなさい!」
「大丈夫です、ジョシュアさん……まだ、倒れません!」
 ジョシュアのトマトを頭に受けながらもレネットは気丈に立っていた。オラクルとして神の祝福ともいえる何かを燃やし(妄想)、斬れそうな糸を何とか保つ。肉体が精神を凌駕したのか、レネットは限界を超えて立ち上がる。
「わたしは……倒れるわけにはいきません……っ!」
 ここは戦場。赤が赤を洗い流す非情の場。冷血に徹するのが最適だと知りながら、しかし情熱を失うまいとレネットは決意する。騎士は屈せず理想は高く。掲げた旗に集った仲間を見捨てるような真似はしない。最後の最後まで民を守る盾たらんこと。以上、全てレネットの妄想です。
「はぐぅ、ぶるーたす、おまえもか……もはやレネットもここまでだ……!」
「レネットさーん!」
 むねにトマトを受けて倒れるレネット。倒れたレネットを抱くようにして叫ぶライチ。その涙が頬を伝い、地面に落ちる。しかし悲しんでいる余裕はない。戦場は刻一刻と悪化していく。大体そんなノリでライチは拳を握った。
「皆、ここは私に任せてトマトを!」
 言って皆の盾になる為に手を広げるライチ。容赦なく飛んでくるトマトを受けながら、皆の無事を祈っていた。ここで倒れても皆が目的を果たしてくれる。その礎になるなら私は喜んでこの身を捧げよう。そんなノリで以下省略。
「……後は頼んだよ。私の分までトマトを……投げて! がく」
「カノンくん……ジョシュアくん……レネットちゃん……ライチちゃん……!」
 倒れたアパルトメントの皆を見て、悲愴な声をあげるリド。赤く染まった皆を見て、手にしたトマトを潰さない程度に強く握りしめる。そして――
「わーい、勝ったー!」
 喜びの声を上げた。
「これは裏切りの戯曲!」
「っていうか管理人さんが一番私達にぶつけてましたよね!」
「だって最後まで立ってみんなの勇士を見たいなって! てへぺろ! ……あれ? どうしてみんなトマトをこっちに向けるの? きゃん!」
 言って可愛くポーズをとるリド。それに還ってきたのは、大量のトマトだった。トマトまみれになり、倒れるリド。
「ごめんなさいごめんなさい集中砲火でごめんなさい」
「うう……。一緒に死んでくれるって、約束したよねえ?」
 地面を這うようにして近寄りながら、リドは呻くように口を開く。
「ひどい! 全部嘘だったなんて……! 化けて、化けてでてやる……」
 言って力尽きるリド。もはやホラーである。

 かくして『第1回☆どらまてぃっくトマト投げ大会!』の優勝者……など決める事などなど忘れて【RN500】の面々はトマトを投げたり投げられたりしていた。

●トマトトマトトマト!
「トマトを投げる。実にいいお祭りです」
『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)はほんわかとした笑顔を崩すことなくトマトを投げていた。気が抜けそうな雰囲気だが、かといって投げるトマトまで緩やかではない。
「どんどん当てていいよー」
 トマトをぶつけられても、エミリオの放つオーラは変わらない。顔色一つ変えることなくトマトを放ち、投げ返されてもよけようともしない。投げ合うやり取りそのものを楽しんでいる。マイペースに祭りを楽しんでいた。
「普段なら食い物を粗末にする真似はせぬが、今日だけは楽しませてもらおう」
 アマノホカリの二世である島津・豊太(CL3000134)は言ってトマトを手にする。食べ物を大切にする教育を受けているが、そういう祭りなら仕方ないと受け入れるだけの器はあった。郷に入っては郷に従うものだ。
 障害物に隠れ、遮蔽物を利用しながら戦う豊太。トマトの弾幕が途切れた瞬間に顔を出し投擲をし、すぐに移動して隠れる。しかし相手が女性や子供であるとわかれば攻撃をしない。これもまた騎士道だ。祭りとはいえ、そこを違えることはしない。
「投げたりぶつけて良いのは、自分もやられる覚悟がある奴だ」
「せやな! やけど硬いトマトは投げたらあかんで!」
 トマトを手にして構える『イ・ラプセル自由騎士団』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)。トマト祭りに用意されたトマトは熟したものだが、たまに自家製の未熟なトマトを持ち出す者もいる。そう言った人への注意喚起だ。
 細かいことは考えず、目に映った人にトマトを投げる。こういった祭りでは考えるよりも動くが吉だ。そうやって自分の楽しめば、他の人も楽しませることが出来る。アリシアのこの性格は、祖母の教育の賜物だろうか。
「来年は新しい水着きて参加したるわー!」
「そいつはいいね。イ・ラプセルに新しい華が咲く」
 笑みを浮かべる『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。商人としてもイ・ラプセルの祭が華やかになることは望ましい。まあ個人的に、いろいろな水着を見たいという気持ちがないわけでもない。
 両手にトマトを持ち、四方八方に投げつける。八割熊のウェルスがラフな格好で立っていれば、それだけでかなり目立つ。その分トマトも投げられるがそれを気にすることはない。むしろそれを楽しむようにトマトを投げていた。
「前進制圧! 夏の熊に逃走はないのだヒャッハー!」
「ガンナーとして、負けるわけにはいかないわね!」
 こちらも女性的な意味で目立っている。『白金の星』ヒルダ・アークライト(CL3000279)。金髪に豊満なボディと黒と白のビキニスタイルの水着。それが前線で動き回っているのだ。目を引かないわけがない。
 隠れている物を目ざとく見つけ、そこに向かってトマトを投げる。投げられるトマトを華麗に避けて、そのモーションのままにトマトを投げ返す。まさに戦場を舞う一輪の花。夏を彩る派手な乙女。惜しむべきは――
「……流石にトマトでぐちゃぐちゃね。元のデザインとか関係なくなったわ」
「…………」
 その横で無表情に仏頂面という書いているどくどくもなんだかなあ、という表情をする『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)。別にスク水に包まれた幼児体型を気にしているつもりはない。無いんだけど世の不公平を感じていた。
 フィールドを利用して、縦横無尽に跳ね回るカスカ。普通の人なら立つことすら難しい場所の上でも、バランスを崩すことなくトマトを投げて反撃する。足を止めることなく動き回り、戦場をかき乱す風となっていた。
「なんとも奇怪な祭りですが……やるからには全力でいきます」
「そうそう! 全力でやらなくちゃ!」
 トマトを手に笑顔を浮かべる『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。あえて三脱場所に陣取って、胸を張るように立ちあがる。狙われることなど恐れない。今ここで楽しむことが一番重要なのだ。
 べちゃりとぶつけられるトマト。しかしそのトマトを舐めながらカノンはお返しとばかりにトマトを投げる。手持ちのトマトがなくなったら蒸気トラックを占拠し、トラックから直接トマトを取って投げ始める。
「真っ赤なトマト ばんばんばん。全身ずぶ濡れ 真っ赤っ赤。これがほんとの赤鬼だー♪」
 元気よく歌うカノン。その歌に釣られるようにトマト投げは加速していく。
「ちょいとそこ行くお兄さん。準備万端な恰好してんのやねえ。僕はサクヤ・ミカヅキ。あんさんは?」
「私はアケチと申します。愛を求める紳士。誰よりも! 多くのトゥメイトゥを浴びるために! あえてこの格好をしているのです!」
 サクヤ ミカヅキ(CL3000006)は赤いふんどしに黒ブーツという祭じゃなかったら騎士団に通報される格好をした『ノンストップ・アケチ』タマキ・アケチ(CL3000011)に出会った。
「ええ顔立ちやねえ、美男は見てて飽きまへんぇ」
 その恰好に驚くころなくサクヤは笑うように言葉を返した。タマキも良き理解者を得た、とばかりにトマトを手にポーズを決める。
「さぁこれも何かのご縁です。貴女の紅い弾丸を私に……ください……ッ!」
 身を捩るように体をくねらせ、全身の筋肉を胡蝶すように力を籠めるタマキ。顔はこれから受けるであろう試練に恍惚となり、正に陶酔状態だ。うん、変態だ。
「トマトぶつけられたいとは、ええ精神どすなあ。ほな、遠慮なく真っ赤にしたるさかい」
「さあ! 早く! なんなら熟していないトマトでも――いいえ、むしろそのほうが――
 く、ふふ、ふふあははあははああ!」
 そしてたまきは朱に染まる。ふんどしと同色に染まった姿のまま悶絶し、地面に倒れ込んだ。あと嬉しそうだった。
「世界が朱と酸味ある香りに包まれる……ゾクゾクしてしまいます……!」
「トマトの香りがするお兄さん。それも一興やわ。
 舐めたいくらいに真っ赤なりましたわあ。味見してよろし?」
 そんなタマキを見て、薄くほほ笑むサクヤであった。

●先輩と後輩と
 戦場は混乱し、敵も味方もぐちゃぐちゃだ。こうなればたとえどれだけ頭がいい軍師がいたとしても、状況を立て直すにはいったん退却するしかない。
 しかし騎士には引けない時がある。そう、それは――
「トマト祭りだ!」「トマト祭りですわー!」
 と叫ぶ『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)と『命短し恋せよ乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)の【先輩後輩】。自由騎士の先輩と後輩であるアダムとジュリエットは、いまはその立場を忘れてトマトを投げていた。
(トマト祭りデート……と言いたいところですけれど今回は後輩として親睦を深める為ですわ!)
 とはジュリエットの意気込み。それが功を為したかどうかはわからないが、二人はこの混迷極めるトマト祭りの中、はぐれることなく戦い抜いてきた。
「僕は逃げも隠れもしない。全力でかかってきたまえ!」
 あえて名乗りを上げるアダム。そうすることで注目を浴び、後輩のジュリエットを守るつもりだ。事実、多くのトマトがアダムに向かって投げられる。
「うおおおおおおおおおお! この程度のトマトに、僕は負けない!」
 お祭りに浮かれているのか、アダムはハイテンションでトマト投げに勤しんでいた。だがそんな中でも、
(アダムがわたくしを守ってくれている……)
 どんな状況にあっても女性を守る挺身。ジュリエットはアダムの揺るがぬ献身に――
「当然ですわ! アダムを盾に立ち塞がる人々をわたくし達の手でトマトまみれにして差し上げますわー! そう、アダムを盾に!
 おーっほほほほ!」
 高笑いしてトマトを投げていた。

●トマト祭り終了!
 三時の鐘が鳴り、トマト祭りも終焉する。
 興奮冷めやらぬ中、参加者は皆所定の場所にあるシャワーを浴びて、トマトを洗い流していた。その間にモップを持った清掃員が街中のトマト跡を掃除する。
 暫くトマトは見たくないという者もいれば、乾燥トマトを肴に一杯飲むかという者もいる。とにかく一日トマトの話題は止まらなかった。
 一陣の風が吹き、トマトの香りを巻き上げる。この風がなんの匂いもしなくなった時、イ・ラプセルに秋が訪れるのだ。
 
 アクアフェスタは、まだ終わらない――


†シナリオ結果†

大成功

†詳細†


†あとがき†

この祭で使用されたトマトは、スタッフがおいしくいただきました。

 みんな楽しんだということで、大成功です。
FL送付済