MagiaSteam
港町カプリチオ




「さぁて私掠免許ねぇ」
 赤い髪の女海賊は船のデッキで手すりに肘を預けてその免許を記された羊皮紙を揺らし憂鬱な顔をしている。
「あんときは勢いでOKしちゃったけど、はぁ、首輪付きかぁ~」
「いうても、あの熊野郎も非公式ながらヘルメリアのを持ってるんじゃないですか?」
「まあ、そうなんだけど、なんかさあ、こうなんていうか。センシティブな話なんだよ」
「口説かれたことですか?」
「違う!! あれはそうじゃなかっただろ?!?!?」
「姐さん口説くとか、正直気が触れてるとおもいましたしね……あああああ~~~~」
 言った瞬間船乗りは船からけり落された。
「はぁあ、よし! 気を取り直すよ」
 海賊団の長、アルヴィダ・スカンディナは両の手でぱしんと頬をたたくと、私掠免許を胸の間に挟み船長の顔に戻る。
「んじゃま、イ・ラプセルに行って、特典の格安での資材の調達の権利を行使するかね」
 なお、くだんの海賊は仲間による浮き輪の投擲救助で無事である。スカンディナ海賊団においては、よくある日常なので、ずいぶんと慣れたものなのだ。

「ってわけで、おっぱいちゃん、もとい、アルヴィダ・スカンディナがアデレード港に入港するって連絡がきたのさ」
 『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)が軽薄な声で君たちに伝える。
「まあ、相手は海賊だ。得になにもしないだろうとはいえ、トラブルってのは起きるものだよね。ってわけで、君たちには警備の仕事についてもらいたいんだ」
 今回の仕事内容はアデレードの町に降り立つ彼らの警備という名前の事実上監視員である。
 もちろん免許である程度は縛っているとはいえ、彼らは海賊。いわゆる悪党だ。
 町の人々もおびえるのは仕方がない。
 故に自由騎士団にその緩和のためのお鉢が回ってきたということだ。
 彼らは食料や燃料をこの国で補給する権利を得ている。
 海の荒くれものである彼らはちょっとしたことでいさかいを起こすだろう。それを前もって止めるのが君たちの役割だ。
「それとは別に、船長は海を渡るプロフェッショナルさ。なんなら気になることを聞いてもいいんじゃない?」
 ヨアヒムはついでにこれは俺のマキナ=ギアの連絡先。これを船長にわたしておいてよ! っといって紙切れを手渡してきた。
 君はそのメモを破り捨ててもかまわない。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
他国調査
■成功条件
1.5件以上のトラブルの回避、仲裁
 ねこてんです。
 今回はアデレードの港の警備のお仕事をしてもらいます。
 海賊たちは食料などを買い込んでいますが、なんとも面倒なことに注意してもいちいちトラブルを起こします。
 ぶんなぐってもかまいませんので、それを止めてください。
 どんなことをするかというと、かわいい女の子にちょっかいをかけたり、いきってそうな若者に喧嘩をしかけたりと海上でのストレス解消を目的としています。
 あとは買い付けでもっとやすくしろよーと絡んだり、がらがわるいので少々迷惑行為をすることが起きます。
 そのたびにアデレードの住民に呼ばれるので解決してあげてください。物理で殴ってもいいです。むしろそのほうが言うことを聞きやすいです。それなりに戦闘したら勝てる程度になります。
 
 プレイングの書き方としては
 上記のようなトラブルを見つけました(トラブルの内容は指定してくださっても構いません)。
 彼らをこのように対処します。
 のようなかんじでお願いします。

 今回陸に降りる海賊は20人ほどですので、皆さんで手分けしてトラブルの回避をお願いします。

 また、酒場の一角をアルヴィダと5人ほどの海賊が占領して割とご迷惑をかけているようです。
 
 アルウィダは近隣諸国のうわさ話はそれなりに収集していますので世界観マニュアル内の地図をみて色々質問してくださっても構いません。
(ちゃんと警備のお仕事もこなしてからのお話ですので、バランスはしっかりと考えてください)
 ヘルメリア周辺は熊の海賊の縄張りですので、あまりわからないかもです。
 アマノホカリ、央華大陸あたりはたまにしかいかないのでそれほど詳しくないです。
 各地にそれなりに入港できる港はもっているので(非合法ですが)ある程度は現地組織については知らないわけではありません。シャンバラ南からぐるりとイ・ラプセル近海を通りパノプティコンの南側あたりがアルヴィダの縄張りになります。
 質問の仕方は具体的であればあるほど、効果的です。
 たとえば世界にはどんな組織がある? などとざっくりしすぎてると「えー、いっぱいあって答えきれない」みたいな反応になります。
 パノプティコンの砂漠のあたりってどんな感じ? など首都以外の情報のほうが聞きこみやすいと思います。(首都には入れてもらえてないです)
状態
完了
報酬マテリア
1個  1個  1個  5個
16モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年09月13日

†メイン参加者 8人†




(ヨアヒムっての こんな美人をスルーしてどこに目をつけてるのかしら)
 『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)はヨアヒムから渡されたメモを見ながら苛立ちを感じていた。
「ワシにかしてみぃ。悪いようにはせんのじゃ!」
 『揺れる豊穣の大地』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)が後ろからそのメモを預かるとにんまりと笑い、『いつかそう言える日まで』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)と一緒に酒場への道をゆく。
 
「おーっほっほっほっほっほ!」
 ひときわ高い声がアデレードの街に響く。
 海の男に言い寄られている少女を守るべく絢爛華麗に動くのは『命短し恋せよ乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)。
「そこな海賊! 街の女性達に不用意にちょっかいを掛けるのはおやめなさいな!」
「なんだと? じゃあねえちゃんが相手してくれるのかい?」
 びしり! と指をさせば、男は下卑た笑みを浮かべジュリエットの肩に手を置く。
 瞬間、投げ飛ばされるは男。
「!?」
 男は何をされたのかはわからない。投げられた姿のまま目を白黒とさせている。
「女性に飢える気持ちはお察し致しますけれど、迷惑行為に発展しているとなると看過できませんわ!
 ところでよろしければキャプテンアルヴィダのもとまで案内してくださらない? ……とても大切な用事がありますの」
「ひえっ」
 ジュリエットの瞳の奥にともる昏い、とても昏い光に海の男は悲鳴をあげた。
 
 一方『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)は、裏街通りであるリブラ地区を慣れた足並みで闊歩もといパトロールする。
 その歩みはセクシーな女優のように艶やかで妖しい。
 ハーレムマスター。その能力を得ているローラにとって異性を惹きつけるのは十八番なのだ。
「よう、ねえちゃん」
 はい引っかかった♪ 長い航海から陸に上がった男はいろいろ溜まっているものがあるのだ。それを発散するために女の子をひっかけたり、そういうお店にいくのはよくある話だ。
 現にあっさりと誘惑の香りに引き寄せられた犠牲者(おとこ)はなれなれしくローラの腰元に手を伸ばす。
 ローラはステップで軽く避けると、唇に指をあて悩ましく眉を顰め「せっかちなのはよくないよ」とつぶやく。
 逃げられれば男は追いたくなるもの。
「そういうお店、ローラが紹介したげるよ? それとも」
 ローラは細い路地に体を隠し、裸足の白い脚だけを見せる。
 ごくりと男がのどを鳴らす。
「ローラと遊んでくれる?」
 その言葉に吸い込まれるように男は路地裏に向かう。裏街の蝶々はいたずら気にほほ笑むと小さな声でさんにんめ♡とほくそ笑むのだった。

 『子リスの大冒険』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は表通りを歩く。すれ違った軍服の青年と会釈を交わした。
 その青年は喧嘩を見つけたようでそちらに向かうようだ。その先ではちっちゃな少女と海賊が大騒ぎをしている。クィニイーはそっちは任せて、表通りから一本ずれた道を歩き船着き場に向かえば――。
 いた。
 そもそもイ・ラプセルは商人ギルドの尽力もあってほかの地域より物価は高くはない。だというのに屋台の商人に対して強面の水夫が値切り交渉をしているようだ。
 その下げ幅の法外さはどうにも上がる様子はない。
「んもー、めんどくさいなあ」
 クィニイーは腰に手を当てながら話しかける。
「あたしはイ・ラプセル自由騎士だよ! もめ事はいけないなあ。そもそも、適正価格よりそれなりに安いものをさらに値切るとかどんなけケチなの?」
「ああ? このトマトに傷が入ってるから安い金額で買い取ってやろうっていってんだよ」
「あわわ、傷をいれたところみましたからね!」
「んだとう?」
「んもー! いちいちトラブル起こされたら免許はく奪になっちゃうよ! ちゃーんと考えて接した方がいいなぁキミ達そんなに馬鹿じゃないでしょ?」
「あぁ! んだ! ガキが商売にくちだすんじゃねえよ!」
「しかたないなあ」
 その後、物理(せっとく)でとっちめられた海賊は適正金額で物資を得ることになるのである。

「まちなさい! 陸でストレス発散したい気持ちもわかるけど、誰彼構わず喧嘩を売るのはダメよ」
 武闘派シスターエルシーは港で海賊の喧嘩の仲裁に入る。
 もちろん彼らがそんなことを聞くわけがない。エルシーはため息をつく。
「よし、わかった! なら私が相手よ!」
 
 
 『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)は『蒼影の銃士』ザルク・ミステル(CL3000067)と共に表通りの警邏だ。
 ちびっこと海賊の喧嘩の仲裁を横目に歩けば、またもや喧噪。
 犬も歩けば棒にあたるとは故郷の言葉でありましたね、とカスカがぼやけば、ザルクがこれもまたお仕事とフォローする。
「まあ構いませんよ、ナンパでも喧嘩でもカツアゲでもお好きなものを。いずれにしても解決法は同じですから」
 とカスカが鯉口を鳴らせば違いないとザルクが笑う。
「おい、海賊ども、騒ぎ起こしすぎだろ!」
 多少手荒でもOkと聞いた。海賊たちはこの先長い付き合いになるだろう。この国にはこの国の流儀がある。つまりは躾だ。
 不幸にもイ・ラプセルでも随一の武闘派であるカスカとザルクの警邏に引っかかった海賊たちは荒々しい口調で、二人に突っかかる。
「はい、やめてくださーい」
 棒読みでカスカが念のための警告を投げかける。
「んだぁ? コノチビどういう……」
 海賊が大声を上げた瞬間ザルクのパラライズショットが飛び海賊は強制的に動きを止める。喧嘩をしていたイ・ラプセルの水夫もついでに強制的に動きがとまる。
「犯行の意思ありですね。わかりました。せっかくの静止の声も届かないとは残念です。ああ、残念です」
 言ってカスカはヒートアクセルを容赦なく海賊に叩き込む。治安側の立場上絡んできた相手が悪い、それを一度は止めたというポーズは必要なのだ。その静止が一瞬に満たないものであったとしてもそれを為したということが大事なのである。
 不殺の権能は生きている。どれだけ殴っても死にはしない。
「お、おい、カスカ! ストップ! 気絶してるぞ!」
 その容赦ない(一方的な)お仕置にザルクもさすがにストップをかける。躾ってものはやりすぎてもだめなのだ。
 
「たのもー!」
 大荒れの酒場に入ってくるは威圧感たっぷりの大柄のシノピリカとボルカス。
 酒場の主人はその顔をみて破顔する。助かったと。
「おお、あのねーちゃんのおっぱいうちのキャプテンとどっちがでけぇんだ?」
 がははと下卑た揶揄が飛んでくるがシノピリカはけろりとしたものだ。ボルカスは少しだけ眉を顰める。
「ミルクを頼む」
「おいおい、ミルクだってよ! そのでかいおっぱいから出してくれよ!」
「ああ、かまわんよ。ワシが貴様らのママじゃ。マスターその紳士どもにも同じものを出してやってくれ。まあ、本物のママにはなれぬが、まあ愚痴を聞く程度はできるぞ」
 ああ、また煽ってとは思うが、ボルカスはさり気なくマスターに合図をだし、客を外に誘導する。
 ボルカスの持つ威風におびえていた客は安堵すると誘導に従い退去していく。
「よっし! お前たち! ワシとアームレスリングで最強を決めようではないか!」
 偽ママはテンションがずいぶんあがっているようだ。
 そのテンションに乗せられた海賊たちは太い声で「「ママー」」と叫んでいる。
「なんだこれ」
 もしものことがあれば加勢をしようとしていたボルカスは呆れた顔をしているアルヴィダの隣に座る。今のところ破壊行為には移ってはいない。この分であればママにあやされている海賊たちが暴れることはないだろう。
「ハンデとして左腕は使わないでやろう、どうじゃ? ん?」
「「「ママ―――!!!!」」」
「いつもこんなのなのか?」
 ボルカスはアルヴィダに尋ねた。
「まあね。バカの集まりさ。だから楽しい」
「そんなものか。質問したいことがある」
「ん、なんだい?」
 ほろ酔いのアルヴィダの機嫌はいい。
「あ、あんたらの仲間も来たようだよ。うちのバカどもおいたをしたようだね。いいよ、その詫びもこめて、質問には答えるさ」


「で、なんだい? 聞きたいことって」
 アームレスリングの喧噪の中、集まった自由騎士たちに囲まれアルヴィダが促した。
「はーい! ききたいことありまーす!」
 最初に手をあげたのは聞きたがりのクィニイー。
「はじめましてー! あたしクイニィー! 海の向こうのこと色々教えてくれるんでしょ?わくわくしちゃう!!」
「言ってみな」
「船長さんが行ったことある国で、1番美味しかった料理ってどこの国のどんな料理?」
「イ・ラプセル一択」
「パノプティコンの人ってみんなあの塔みたいな要塞に住んでるの? その周りの砂漠にヒトはいないの?」
「ずいぶん話が飛んだね。まああの国は気味悪くて近づかないさ。こっちが近づかなければなんにもしてこない箱庭の国さ。砂漠にはインディオって呼ばれる奴らがいるね。箱庭の国から自分たちの生存圏を死守してるようだが随分と領土は減ったときくね」
「そこにこの国にはいない種族って見たことある? インディオっていうのが種族なの?」
「インディオは種族ってか部族さ。体中に変な文様入れてるやつらはいるけど」
「はじめまして、キャプテン・アルヴィダ。お会いできて光栄です。私は自由騎士のエルシー。どうぞよろしく」
 二番手にはエルシー。彼女の目的はアルヴィダと友達になることだ。
「ほんとにあんたらぐいぐい来るね。知ってる? あたしらは悪党なんだよ?」
「これからは女も貴女のように強く美しくですよね。私、貴女に憧れます」
 目をキラキラさせたエルシーに、アルヴィダはまんざらでもなさそうな顔になる。人呼んで褒め殺しのエルシー。
「貴女と一緒にお酒を飲みたいと思っていたの。同席していいですよね? マスター、こっちにエール酒!」
「あんたらの国、遠慮って言葉しらないの?」
 ドンドンとテーブルにエールが乗せられていく。
「私のおごり! クルーのみんなも遠慮なく!」
 エルシーの言葉に沸き立つ酒場。
「ああ、一応断っておきますが貴女と喧嘩する意思はもうありませんよ」
 カスカがちびちびとエールを飲みながら言う。
「そうかい? あんたの剣はそうはいってないようだけど」
「友好的に接する相手には友好的に接しますよ」
「そうかい? そりゃ残念だ。あんたみたいな剣士あたしはすきだよ」
「そりゃどうも、ああ、シャンバラについてききたいのですが、あの国が今どうなってるのかって。ああ、私元シャンバラのオラクルでした」
 そのさらっと明かされた新事実に周囲の自由騎士たちも目を白黒させる。
「はいはい、いろいろあったんですよ。とにかく。かの国の海軍の動向、それと魔女狩り、ヨウセイについて知ってることを吐いてください」
「なんで尋問になってんのさ! そうだねシャンバラは魔道国家。船や機械は大したものじゃないさ。けどそれに魔導というブーストで何をしてくるかわからない感じだね。ミトラース一神教で神の名でもって好き放題してるってとこかな。魔女狩りとかあんま詳しいことはわかんないけど、ヨウセイが逃げ出したってのは耳にいれたよ。今頃は死んでるんじゃないのかね。そもそもヨウセイは引きこもってるから、そんなに知らないよ」
「なるほど、ではお礼に一句『追えば逃げ 逃げれば追うが 男かな』」
「は? なんのことだい?」
「いえ、貴方の望んだ姿が見当たらないでしょう?」
「なななななんのことかわからないね!」
「それですわ!!」
 沈黙を守っていたジュリエットが立ち上がる。
「なんだいなんだい!」
「ごきげんよう
わたくしはジュリエット・ゴールドスミス。貴女にどうしてもお聞きしたいことがありますの
先日の件は報告書で見ました。単刀直入にお聞きします!! あなた! 彼のことをどうおもっていますの!!?」
 すわった瞳に潜むのは嫉妬の炎。酒場はその剣幕に沈黙がおりる。
「彼って……ああ、あの金髪のぼっちゃん」
「どう! 思って! いま! す! の!!」
「べ、べつにどうとも思ってないよ、金髪の王子様だとかまったくおもってないですし!」
「その対応!! わーかーりーました! 
 わたくし! 貴女に! 宣戦布告を致しますわ!!
 わたくし、彼のことを心からお慕いしておりますの!
 貴女がどれだけ魅惑的な女性であろうとも、一切負けるつもりはありませんわ!
 そう、これは女と女のプライドを賭けた戦いなのですわー!」
 びしりと指さしされて告げられるは恋の宣戦布告。
 外野である海賊たちがヒューヒューと口笛を吹いてはやし立てる。
「俺たちはジュリエットちゃんを応援するぜ!」
「どっちが落とすか賭けようぜ! 俺ジュリエットちゃん!」
「俺も!」「俺も!」「賭けになんねえ!」
 当のアルヴィダは顔を真っ赤にしている。
「あんた! ここにトラブルを止めにきたんだろ!? あんたがトラブル起こしてどうすんのさ!」
「わたくしもそう思います!!! わたくし、アルヴィダ・スカンディナを恋のライバルに認定致しますわ!
 さあ! 愛する殿方への想いをわたくしに! 告げ! なさ! い!」
「しるかーー!」
「あ、ローラからアドバイス!」
 にやにやと意味深な笑顔でローラが話しかける。
「ローラ質問ないかわりに目当ての男を一発でモノにする方法おしえるね」
 ローラは指先でアルヴィダを呼ぶと耳元でこそこそとそのアドバイスを授けた。
 その瞬間さらにアルヴィダの顔が赤くなる。
「できるかーー!」
 その向こうで三つ目の少女? が煽りはじめ状況はさらに混乱の様相をみせるのであった。

 閑話休題。大騒ぎになりつつも事態は収まりをみせた。
 ジュリエットは海賊たちに応援されやりますわー!と叫んでいる。
「その、すまんな。悪気はないとおもう」
 ボルカスがすまなさそうに言う。
「わかってるよ。で、あんたも聞きたいことあるんだろ? そこの片眼鏡も」
「まあな」
 水を向けられたザルクも答える。アルヴィダの隣ではほろ酔いのエルシーが腕に絡まってる。そのうち寝ちゃうだろうと放置している。
「では俺から。シャンバラは牧畜は盛んなのか? 特に馬や馬具を聞きたい」
「まあ、うちらはあんま馬にはのらないからねえ。牧畜ねぇ。あの国は環境保全を神が行ってるみたいでさ。詳しくはもうちょっと違うんだろうけど、あいつらは「何もしないでも最高の環境」を約束されている。牧畜はあったとしてもお粗末なものだろうさ。あんたらのほうがしっかりしてるくらいだね。
 馬具ってのは普通じゃないかな? あそこは魔導の国だ。際立ったところは魔道制御とかだろうね。それをつけられた馬がどうなるのかはわからないけど」
「俺からはヘルメリアについてだ」
「そっちはあの熊野郎の管轄さ。知ることはあんまりないね。てかなんで知りたいのさ」
「出身国だからな」
「ふぅん。まああの国の神は人当たりよさそうな顔をしてるが相当悪辣さ。あんたらも注意しておきな」
「そうか。それと」
 ザルクがメモをひらく。そこにはやけに丁寧な文字で書かれている質問事項。とある騎士に頼まれたものだ。
「国に所属していない何かしらの組織はあるのか? 例えば水晶の神がいた未開地」
「未開地には死なないヒトがいるって聞く。肌は青く……って、まあ、戯言だろうさ。死なないなんておとぎ話だ」
 ザルクは一瞬だけ、あのにやけた道化師を思い出した。
「きゃぷてぇん」
「ハイハイ、なんだい?」
 ほろよいのエルシーに呆れた様子でアルヴィダは頭をぽんぽんと叩く。
「実は私、ヴィスマルク帝国が気に入らないのよね。ぶっ潰す相談をしたいんだけど」
「へぇ?」
「あの選民しこーむかつく。内戦多いけど味方にできそうな勢力ってあゆ?」
「あるだろうね。あの国は選民と恐怖で統治している。逆らうものはつぶされる。それも国ごとね」
 アルヴィダの目がギラりと光る。その冷たさにエルシーの酔いが少し冷めた。
「例えば強制収容所、そいつらを開放したら、味方にできると思う?」
「思うね。けど強制収容所は内陸北にある。あのあたりの海はフィヨルドであたしらは入ることができない。アクセスするなら内陸からさ」
「上陸作戦を仕掛けるならどこがいいと思う」
「いくつかは心当たりはある。協力を仰ぐならまずは味方を作るところからだね。レジスタンスやパルチザンの組織はいくらでもある。だけどあんたらが協力に値する力をもつことが重要さ」
「女海賊殿」
 右手の凝りをほぐすようにぐるぐる回しながら偽ママシノピリカがアルヴィダに声をかけた。挑んできた海賊たちから彼女から勝利を得たものはいないようだ。
「貴殿の航海において、BEST3のツワモノとはいったいどんな人物であったか聞きたいのう!」
「そんなにいないよ。あたしは強いからね。でもね、あの熊野郎! ヘンリー・モーガンだけはライバルだ」
 そうだ。とシノピリカは胸元からメモを出すと、最もマッチョな海賊に渡す。余談であるが彼はシノピリカとのアームレスリングであわや勝ちを奪うかと思われた猛者である。
「健闘したご褒美じゃよ。かわいこちゃんの連絡先じゃ」
「ママ ありがとう!」


「あんたらももう気づいてるだろうけど各国は動き始めてるよ。きっと大きな戦争が起きる。心するんだね」
「ああ、恋の戦争ですか?」
「違う!!」

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『ライバルは女海賊』
取得者: ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)
『褒め殺しの』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『まま。』
取得者: シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『あるくじゅうはちきん』
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)

†あとがき†

みなさまお疲れさまでした。
文字数とひたすら戦っていました。

MVPは縁の下の力持ちのボルカスさんに。


今回はサポートでよい質問がありましたのでメモという形で
採用させていただきました。

楽しんでいただけたのであれば幸いです。
FL送付済