MagiaSteam
Zebra! 白と黒の馬盗賊団! ……団?



●二人はプリk……ゼブラ盗賊団!
「吾輩の名前はホワイト!」
「拙者の名前はブラック!」
「二人!」「合わせて!」「ゼブラ盗賊団!」
「お。アレを見よブラック。あんなところに城があるでござる!」
「無限軌道がついておりますな。動くのであろうか?」
「まあ、俺達の足にはかなわないでござるがな!」
「この健脚、正に竜のごときで候!」
「ブヒヒヒヒヒ!」「ボヒヒヒヒヒ!」
「そんじゃさくっと襲って」「さくっといただくで候!」

●自由騎士
「…………なんだろう、あれ?」
 動く城『ティダルト』で移動中の貴方達は、背後から迫る二匹のケンタウロスに気付く。体中に奇妙な文様を塗っており、奇声を上げながらこちらに迫ってくる。
「このままだと追いつかれるぞ。迎撃した方がいいんじゃないか? 武装とかは……」
 言いかけた自由騎士達は、この城で作られた武装が『自爆マニア』『暴走上等』な御方が作った物だと思い出し、口をつぐんだ。あまりにギャンブル過ぎる。
「とまれそこの城! 大人しく止まるなら吾輩らゼブラ盗賊団の拠点として使ってやろう! ヒト類は当然召使! 美女たちは温泉ハーレムでござるブヒヒン!」
「拙者、美少年には目がないでござるゆえ。素直系、ツンデレ系、おしゃま系、口悪い系、ありとあらゆるタイプを受け入れるで候ボヒヒン!」
 ……まあ友好的になりたい相手ではないようだ。
 ともあれ、このまま放置はできない。伝声管を開けて報告し、戦いの準備を整える。
「お、戦う気満々のようでござるよ」
「ふふん、そこいらの木っ端戦士が拙者たちに勝てる道理なし!」
「然り。せめて歯車騎士団や自由騎士のような名高い輩であるなら話は別なのでござるがな!」
「ブヒヒヒヒヒ!」「ボヒヒヒヒヒ!」


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
どくどく
■成功条件
1.ゼブラ盗賊団の打破
 どくどくです。
 キャラ構成五秒。

●敵情報
 ゼブラ怪盗団(×2)
 二匹のケンタウロスによる盗賊団です。大きさ3mほど。馬の下半身と筋骨隆々の男の上半身。シマウマっぽく白と黒の紋様を体中に描いています。
 団ちゃうやんけ、コンビやんけ。そんなツッコミは笑い流されます。一人称『吾輩』『ござる』『ブヒヒン!』がホワイト。『拙者』『候』『ボヒヒン!』がブラック。
 両方とも同スペックです。倒れるまで戦いを止めないでしょう。

 攻撃情報
馬パンチ! 攻近単 ワンツーパンチです。四本足で支えられた拳の一撃は、それなりに重いです。【二連】
馬キック! 攻近単 後ろ足で蹴ってきます。まともに食らうと致命的です。【致命】
馬毒矢   攻遠単 素早く毒の矢を放ちます。卑怯? 狩りの基本です。【ポイズン2】
縞々紋様舞 魔遠範 紋様と踊りによる催眠術。【ヒュプノス1】
笑い声   魔遠全 聞くと気分が悪くなる笑い声です。【ダメージ0】【ウィーク2】【スロウ2】
朋友    P   相棒が戦闘可能であるなら、攻撃力、魔導力UP
義憤    P   相棒が倒れた時、その魂を受け継ぎHPが二割回復。

●場所情報
 ヘルメリア。動く城『ティダルト』の近く。見渡す限りの荒野です。人が通りかかる可能性は皆無です。足場や広さなどは戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、敵前衛に『ゼブラ怪盗団(×2)』がいます。
 事前付与は一度だけ可能とします。

 皆様のプレイングとお待ちしています。
 
状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年09月23日

†メイン参加者 8人†

『イ・ラプセル自由騎士団』
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)
『水銀を伝えし者』
リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『英雄は殺させない』
マリア・スティール(CL3000004)



「ゼブラ盗賊団……って二人しかいねーじゃねえか!」
 皆の気持ちを代弁する『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)。誰もが同じことを思いながら、あの性格ならどうせ無視されるだろうと口にしなかった言葉である。予想通りゼブラ盗賊団の反応は笑ってスルーである。
「ヘルメリアというのは、ああいう風な思考回路というか、振る舞いをする者を多く産み出す風土でも整っているのだろうか?」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は眉にしわを寄せてそう呟く。ちがうんだきいてくれシャンバラで洗脳系真面目キャラ作り過ぎた反動が各STに出ててだからどくどくはわるくな――抑圧された社会故に、、歪んだ性格がうまれたのである。よし、完璧。
「ケンタウロスか……。馬刺しって久しく食べてないよね」
 迫る健脚を見ながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は馬刺しの味を思い出す。口の中に入れた時に広がるとろりとした感覚。それでいて重厚な肉厚。香辛料で包み込むか、発酵させた汁につけるか。3mの巨躯だ、ティダルト全員いきわたるだろう。
「あのフットワークは殺すには惜しいかもね」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)はそんな事を考える。ヘルメリアの地理に詳しく、そして歯車騎士団に捕まることのない健脚。利用できるなら今後の活動に大きく役立つだろう。……あの性格はどうかと思うが。
「少年少女がどうとか言ってるけど……幻想種でもそういう感覚があるんですね」
 ケンタウロスの言葉を聞いて顔をしかめるティラミス・グラスホイップ(CL3000385)。なんというかコメントに困る相手である。どうあれこちらを襲おうというのなら返り討ちにするだけだ。ホムンクルスを生成しながら、緻密な計算を開始する。
「よくわからないけれど、楽しそうだね」
 フードの奥から声を出す『元魔女狩り』アリス・ドンナー(CL3000609)。ミトラースの庇護の下では、ああいった自己の欲望に忠実な盗賊は生まれにくい。そういう意味では新鮮な相手だった。最も、好き勝手させるつもりはない。
「このティダルトの少年少女を奪われるわけにはいかぬ!」
 どん、と機械の腕を構えて前に立つ『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)。ここにはスレイブマーケットの決戦で助けて、精神的に治療中の少女達が乗っている。そんな子達をこんな幻想種の欲望に汚させるわけにはいかない。
「さあ、悪い子にはお仕置きしないといけませんね」
 たおやかな笑みを浮かべて『空飛ぶナポリタンの使徒』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が武器を構える。イ・ラプセルとしては他国の盗賊等放置しても問題ないが、アンジェリカ個人としては悪を赦すつもりはなかった。
「ブヒヒン! 吾輩あのフードの子とボーイッシュキジンがストライクでござる!」
「ボヒヒン! 拙者の眼鏡にかなう相手はいないで候! されど我が盟友の為にこの拳を捧げん!」
 戦う前からやる気をくじく盗賊団。この数を見て引くことがないあたり、相応に戦闘力に自信がありそうだ。
 自由騎士達は武器を構え、戦いに挑む。


「少女ではありませんが、お相手願いますわ」
 一番最初に動いたのはアンジェリカだ。巨大な武器を手に、ホワイトの前に立つ。体内に宿した龍の力が体を循環する。心音と共に回転する力を制御するように心を沈め、深く息を吐いて力を開放していく。
 心に一つの暗示をかける。我が身全てが武器である。アンジェリカの足、腰、肩、腕、そして手にした武器。それら全てが一つであるかのように意識する。相手を破壊する武器と化したアンジェリカの鉄槌が、ホワイトを強く穿つ。
「強い女性は御嫌いですか?」
「ブヒヒン! その程度の一撃で強さを誇るなど笑止千万! でも次は遠慮して頂けるとありがたく。具体的にはウィーク3とか!」
「凄く効いてるみたいね」
 ホワイトの言動を聞いて、エルシーは頷いた。まだ余裕はありそうだが、それでも無傷と言うわけではなさそうだ。『古き紅竜の籠手』を手にして、一気に相手との距離を詰める。滑るような重心移動と、それを殺さない鋭い動き。
 丹田にため込んだ力を開放するように息を吐く。同時に足を半歩前に動かし、その移動に合わせるように拳を突き出した。各棟の鍛錬で習う基礎の動き。それと呼吸法を混ぜた一撃。基礎+基礎。エルシーのたゆまぬ鍛錬あっての鋭い一打だ。
「ちょうどよかった。新しい技を試してみたかったのよ」
「このゼブラ盗賊団相手に新技の試しなど片腹痛い! 物理的に打たれた腹が痛いでござる!」
「アリス・ドンナー」
 戦う前に名乗るアリス。相手はこちらの者を奪おうとする盗賊なのだが、それはそれとして礼節は尽くすのがアリスのスタイルだ。蒼と紅の刃を組み合わせ、一つの武器とする。それを回転させながらアリスは敵に向き直る。
 ふわり、とアリスのローブが翻る。同時に振るわれる蒼と紅の双剣。縦横無尽に戦場で振るわれる二色の風刃がケンタウロス達を襲う。若くして魔女狩りとなり、国が潰えるまで戦い続けた元魔女狩り。その動きは今なお健在だ。
「よろしく御願いします」
「あ、こちらこそお願いするで候。拙者、生まれはヘルメリア北部のフロスレクタ草原。字はブラック。二腕四足格闘術『レボルバ』の使い手――みぎゃあああ! 斬られたぁ!」
「うーん、よくしゃべるお馬さんですね」
 律儀に自己紹介を返すブラックを見ながらティラミスは頬をかいた。精製したホムンクルスを投げようとして、空気抵抗やら重量やらで相手まで届かない未来を見て諦める。ホムンクルスは武器にするには流石に不適切だ。
 ティラミスは『炎寒の腕輪』に魔力を込め、ケンタウロスを見る。生まれた炎と氷を弾丸ように形成した。錬金術はイメージ。知識の数だけ武器が存在する。細く鋭く絞った温度の弾丸が、ケンタウロスの足を焼く。
「これで踊りとかが出来なくなれば――!」
「ボヒヒン! 足が無くとも上半身で踊る! 体が動かずとも魂で踊る! そう、ダンスとはソウルで候!」
「滅茶苦茶言ってるけど本気でやりかねねぇな、こいつら!」
 ブラックの言葉に頭を抱えるマリア。なんというか掴みどころがないというか、変な奴である。ガッツはあるのだろうが、仲間にはあまりしたくない……と言うかホワイトからの視線が普通にキモかった。
 怒りを押さえながら二枚の盾を構えるマリア。迫る毒矢やケンタウロスの蹴りをガードしながら、時折襲い掛かってくる眠気に抵抗していた。殴るために仲間を守る。血気盛んに見えて、マリアは冷静に戦局を見て、守るべき相手を守っていた。
「ブヒヒン! この子、マジ固いでござる! ガードの硬い幼女とか新鮮で吾輩ドキドキ!」
「何がドキドキだ! とっと倒れろ!」
「この人格面はともかく、面倒な連携だな」
 ゼブラ盗賊団の会話を聞きながらリュリュは判断する。攻撃の所作や動きを見ながら何をするかを判断しようとして……まあ、その、大抵二匹は変な行動をするので予備動作の判断がつきかねなかった。大笑いしたかと思うと、いきなりシリアス顔で蹴りを放ったりするのだ。
 相手の動きを見ながら、リュリュは同時に味方の傷具合も見ていた。ケンタウロスの攻撃で受けた毒や雄叫び、それに直接的な打撃。癒しの手が止まることはない。錬金術を駆使し、矢次に癒しの術を行使していく。
「とはいえ、集中攻撃は効いているようだ。あと少しで倒せるぞ」
「ドキッ! 吾輩のプライベート情報を暴くなんて、そこの男エッチでござるな! ああん、こぉまぁるぅ~!」
「そういう情報はともかく、彼らの生態には興味が沸くね。このヘルメリアで、どうやって生き延びているのか」
 ふざけたように叫ぶホワイトの言動を、クールに受け流すマグノリア。機械文明が発達したヘルメリア。そこに住む幻想種はイ・ラプセルよりも生きづらいだろう。彼らは狩人だが、魔法寄りの幻想種ならなお生きづらいだろう。
 そう言った興味をいったん横に置き、聖遺物を手にして魔力を体内で循環させるマグノリア。ケンタウロスの踊りが生む眠気を耐えながら、紅色の強毒を精製する。生まれた毒はマグノリアの意志に従い、ヘビのように相手に絡みつき染み入っていく。
「他の仲間はいるのか。生きる為に水や食料はどうしているのか」
「その詮索は無意味也。時代がヒトを選び、そうでないものは淘汰される。それが適者生存の理で候。ならば記録なく消えるも、美学」
「急にシリアス口調でそんなこと言うのやめろ!」
 シリアス顔となって虚空を見ながらつぶやくケンタウロス。それにツッコむ自由騎士。
 戦いは一進一退。バッドステータスを駆使して攻めるケンタウロス。そのバッドステータスを解除しながら、着実にダメージを重ねる自由騎士。その均衡は未だに揺れている。
 勝利の女神は、どちらにもほほ笑む可能性を持っていた。


 自由騎士は範囲攻撃で一気に眠らされるのを恐れて、後衛はある程度の距離を取って行動していた。そうすればリュリュ、ティラミス、マグノリアが一気に眠らされることはなく、戦線が崩壊することはないはずだ。
「なあ、あそこ離れてない?」
「なんで前衛の後ろから離れてるの? 庇えないけど狙ってくれってこと?」
 だが10mと言う距離は大きい。ケンタウロスを押さえている前衛が、一足飛びで守りに行ける距離ではないぐらいに。
「毒矢でござる!」「毒矢で候!」
 互いに距離を離すように意識していた後衛のティラミス、マグノリアは二匹のケンタウロスの毒矢を受けてしまう。リュリュはマリアが庇ったお陰で無傷だが、ティラミスとマグノリアの二人は体力の低さもあって、一気にフラグメンツを削られるほどのダメージを負ってしまった。
「ほらほら、こっちよ。偶にはおねーさんもいいんじゃない?」
「ふ、少年に魂を売った拙者にそんな色香などボヒヒン!」
 後衛を狙うブラックにエルシーがポーズをとって挑発する。その挑発にブラックは鼻息荒く食いついて、攻撃の矛先を変えた。何とか後衛瓦解の危機を免れた自由騎士は、その間にホワイト集中攻撃を敢行して打ち倒すことに成功する。
「ば、ば、馬鹿なあぁ! あ、馬だけに馬鹿というギャグでござる!」
「ホワイトォ! お前の意志、俺が受け継ぐ! ベットの下の本とか!」
「やめろおおおおおおお!」
 そんな叫び声と共にホワイトは倒れる。
「オレはガードに回るぜ!」
 マリアは狙われている後衛に迫り、癒し手の一人を庇うように前に立つ。馬の蹴りを受けながら、何とか付与の張り直しを行った。守りを主体に置くために攻勢に出れないが、その献身もあって癒し手のダメージは軽減される。
「ここまでくると、体力の削り合いか。回復が切れれば倒れるな」
 リュリュは大きく息を吐いて、回復の術式を行使する。敵はバッドステータスで相手の動きを止めるよりも、一気に攻めた方が良しと判断したようだ。暴れるケンタウロスを見ながら、最善手を求めて思考を回転させる。
「野生で鍛えられた戦闘勘、見事ですがここまでですわ」
『断罪と救済の十字架』を手にアンジェリカがブラックに迫る。冷静に考えればヘルメリアの地でたった二人で生き延びて来たのだ。生存こそが強さの証とするならば、この二人はかなりの強者。そこには敬意を示し、武器を振り下ろす。
「そうだね。彼らの強さは称賛しよう。だからこそ惜しい。挑む相手を間違えた」
 マグノリアもダメージを受けた個所を押さえるようにして呼吸をする。生と死のはざまを潜り抜けてきた彼らは、相応の勝負勘と実力を兼ね備えている。だからこそここで賊の一つとして消すのは惜しいと考えていた。
「一気に癒します」
 全体の疲弊具合を見ながら、ティラミスは術式を選択する。大きな回復術は気力消費は激しいが、それ相応の効果を持つ。疲弊が激しい時はその差が響いてくるのだ。脳内で錬金の式を構築し、それに伴い魔力を展開していく。
「……っ! 意外とモーションが小さい! 正中線の場所を読み違えてたわ!」
 ケンタウロスは下半身が大きいため、お尻を見せて蹴る行為には時間がかかる。そう思っていたエルシーは予想外の速さに驚いていた。動きの軸である正中線。その位置が体ではなく、馬の胴あたりにある。その為、軽いステップで振り向くことが出来るのだ。
「うん、強いねきみ達。じゃあもう少しギアをあげるよ」
 アリスは言うなら身体強化を切り替える。速度増加に使っていた魔力を瞳に回し、刹那の動きすら見逃さぬ魔眼を生み出す。魔眼が見るブラックの隙を逃すことなく双剣を束ねて振るう。束ねられた一閃がケンタウロスの腹を裂いた。
 だがケンタウロスも負けてはいない。四肢を振るい、矢を放って、時折不思議な踊りを踊りながら自由騎士を攻め立てる。
「くッ……!」
「畜生。馬のくせに!」
「うん。つよいね」
 ブラックの抵抗によりティラミスが倒れ、マリアとアリスがフラグメンツを削られることになったが抵抗もそこまで。相棒を無くした彼に逆転するだけの火力はなかった。
「フリーエンジンと知ってかどうかは知らないけど、私達を狙うなんて運が悪かったわね」
 二腕四本の動きの隙を縫うようにエルシーが迫る。何処まで四肢が多くとも動かす足は一つで、重心も一つ。そこを理解すれば隙を生むことも不可能ではない。拳を握り紅色の手甲を強く叩きつける。
「ごめんなさいね。温泉には興味があるけど、御一緒するつもりはないわ」
 どん、と鋭い音を立ててエルシーの拳がケンタウロスの腹に叩き込まれる。その一撃で、ゼブラ盗賊団最後の一人が地に伏した。


「はいはい。収容しますよー」
「なーん!」
「デカいケンタウロスだな。さばくなら道具もってくるぜ」
 戦いが終わったことを確認し、サポートのミズビトとケモノビト二人が治療と怪我人搬送のために『ティダルト』から降りてくる。
「ブヒヒン! 吾輩食べても美味しくないでござる!」
「ボヒヒン! 拙者、こうなれば自害するが本望! できるなら故郷の桜の下で少年たちに囲まれて!」
 潔いのだか往生際が悪いんだかよくわからないケンタウロスコンビ。自由騎士達はそんな彼らをどうするか議論していた。
「差別は良くないが……この性格はなぁ……」
 リュリュは盗賊団が喋るたびに生かして帰そうと思う気力が失せていくのを感じていた。自分に被害はなさそうだが、その、まあ、女性と少年は大変だなぁ。
「他のケンタウロスとかはいないのかい? 水場がある拠点とかそういう所をもっているとか?」
「ブヒヒン! 飲み水はあるけど普通の人が飲んだらお腹壊すでござるよ」
「ボヒヒン! 拙者ら、友達少ないからな! あ、涙出てきた」
 マグノリアの問いに胸を張ってこたえる二匹。納得いく答えではあるが、胸を張って言う事ではない。
「いままで盗んだお宝とかは……なさそうね。お金よりも色気と食糧ってとことか。因みに攫った人はどうなったの?」
「無論、町まで送り届けて候。少年は世の宝故に」
「然り。ぶっちゃけ、世話するだけの水と食料が無いでござるからなぁ!」
 エルシーの問いに同じく胸を張って答えるケンタウロス達。根っからの悪人ではないが、かといって善性のある存在でもなさそうだ。いうなれば行き当たりばったり。
 さてどうしたものか、と自由騎士達は考える。出来る事なら利用……もとい、協力関係を結びたいのだがこの性格である。命を助けるから協力しろ、と言った所で約束を反故する可能性は高いだろう。食料や水で留める手もあるが、そうするとつけ上がりかねない。
 悩んでいる所に、前に出るアンジェリカ。
「本来であれば貴方達は此処で終わる定め。ですが失うには惜しい実力の持ち主です。どうか私達の奴隷解放にお力添え願えないでしょうか?」
 そう切り出すアンジェリカ。ケンタウロス達は怪訝な顔をして『あ、これに乗るふりして逃げれそうじゃん』と視線で会話していた。だがそれを察したのか、さらにアンジェリカが言葉を重ねる。
「モテますよ」
 ビク、と体を震わすウマ二匹。
「もうすっごいモテますよ奴隷解放。
 絶望の淵に産み落とされた美少女や美少年を颯爽と救出。希望の光が如き貴方達を見た奴隷達は多分恐らくきっとメイビー『素敵! 乗せて!』となる事間違いなし」
「マジか!? わ、吾輩がモテモテ! 『ああ、その毛並み、最高!』とか言われてたてがみ撫でられるでござるか! ブヒヒン!」
「少年が好みそうな鞍と鐙の最新モードを調べたいで候! あ、腹筋も鍛えなおさねば!」
 めっちゃ乗り気である。
「ちょっと盛ってみましたが、こんな感じで宜しいですかね」
 味方に向かって微笑むアンジェリカ。雄たけびを上げるケンタウロスは、確かに裏切りそうには見えなかった。

 かくして、フリーエンジンに新たな協力者が生まれた。
 機動力と戦闘力を生かした斥候は以外にも役立ち、情報面で自由騎士達を大きくサポートすることになる。
 今日も二匹の(キモい)雄叫びが、ヘルメリアの荒野に響き渡るのであった。

 なお、彼らが本当にモテたかどうかは――想像にお任せする。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†


どくどくです。
あー、たのしかった。久しぶりにはっちゃけた。

以上のような結果になりました。ギャグな相手ですが、判定は相応に。
MVPはケンタウロス説得をドストライクに決めていただいたヴァレンタイン様に。そう言われたら、まあしょうがないかなぁと思わせるプレイングでした。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済