MagiaSteam
六番目のエニグマ




 手綱を操り、街道を馬車で進む。
 荷台にはたくさんの手紙と、配達物。都市間には気送管と呼ばれる圧縮空気圧で専用の容器にいれた手紙を輸送するが、あくまでもそれは大まかな都市間での話。
 そこからは荷馬車で宛先まで運ぶのが基本だ。
 それ以外にも運び屋は貨物も運ぶことがある。
 今日は貴族からの仕事である。それなり以上に高価な陶器の荷運びでもあり、街道の凹凸にも心を跳ねさせながら、彼は目的地に向かう。
 目的地についたら貨物を引き渡して代金をもらい、また集荷場に帰る。それが彼のルーチンワークである。
 いつもと変わらない道。だがその日は違った。
 破裂音が馬の足元に突き刺さる。
「うわっ!」
 慌てて配達屋の男は馬の手綱を引くが、銃弾に怯えた馬は落ち着きを取り戻すことはない。
 続けざまに銃声が荷台の幌に着弾する。
「やあやあ、ごきげんよう、おとなしく荷馬車を渡しな、そうしたら命だけは助けてやるよ」
 街道を挟む森から現れた男たちが、いっそう愉快げに、配達屋に話しかける。
 ――盗賊だ。
 ここ暫くは現れたことは聞いたことがないが、王国襲撃によるゴタゴタによって、動きがでてきたのだろう。
 しかし配達屋とてプライドがある。はい、そうですかと渡すわけにはいかない。
「お前ら、盗賊だ……」
 声を上げた瞬間、配達屋の頭が容赦なく弾け飛んだ。
「はーーい! 残念! 反抗の意思あり! ぶっぶー、よっし野郎ども! 荷物は持って帰れ! 闇市で売りさばく」
 盗賊のリーダーは人殺しをしたあとだというのに何の感慨もなく声のトーンすら変えることもなく手下達に指示をだす。
「で、頼まれた手紙っつーのは……ああ、これか」


「諸君。お集まりいただき恐縮である」
 片眼鏡をくいと上げながら、『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003) がバリトンの声で挨拶をする。
 水鏡階差運命演算装置より算出した未来を解析し自由騎士たちに依頼を紹介する。それがプラロークの仕事だ。
「さて、昨今の情勢の変化により、盗賊団が現れるようである」
 クラウスは手元のメモを読み上げる。

 イ・ラプセルの街道沿いで配達屋が盗賊に襲われると運命予測された。
 その配達屋の護衛が今回の仕事である。
 人数は6人。亜人とノウブルの盗賊たち。その全員がガンナーである。
 彼ら盗賊団を制圧し、無事配達先に貨物を届けるというのが今回の任務だ。

「それほど強い相手ではないとは思うが、リーダーのノウブルは手下たちより手練である。努々油断をせぬように努めてくれたまえ」
 クラウスは、そう言い終えると、情報を書いたメモを渡し、演算室のブリーフィングルームから出ていく。イ・ラプセル宰相殿はなんとも忙しいことだ。彼はまた水鏡階差運命演算装置に向かうのだろう。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
■成功条件
1.盗賊団の撃退
2.配達屋と荷物を無事配達先に送り届ける
 †猫天使姫†です。
 依頼がはじまります。
 今回は盗賊団をやっつけてください!

 クラウスの言う通りそれほど強くはありませんが、周囲の森の木を遮蔽物にして連携したりと
 少々厄介かもしれません。
 全員ガンナーでランク1のスキルはどれも使ってくることでしょう。
 他のバトルスタイルのスキルは使ってはきません。
 全員オラクルではありません。

・ロケーション
 両側が森の街道です。時間は夕方。灯りの準備はあったほうが安心です。
 それなりに整備はされていますので、森の中で戦うとしないかぎりは足元に問題ありません。
 街道の広さは馬車の両隣に二人ずつ並んで戦える程度になります。
 街道を歩いている時に外に4人以上いると盗賊たちは警戒した行動になり、数人はすぐにはでてこないかもしれません。

 
・配達屋
 20代のノウブルの青年です。
 馬車の馬は2頭。軍用の馬ではないので、攻撃されたら怯えますし逃げようとします。
 貨物は絶対に壊さないようにご注意ください。
 貨物はとある貴族への高価な陶器と手紙がいくつかです。
 自由騎士の皆さんの言われたことには従います。
 
・盗賊団
リーダー ノウブル/ガンナー
     テンションの高い男です。何をするかわからないタイプです。そのクレイジーさでこの団をまとめているようです。3以上の数字を数えることができません(面倒で)
 
狼のケモノビトが1人、トカゲのケモノビトが1人、ソラビトが2人、ミズヒトが1人配下にいます。
全員ガンナーです。
リーダーの言うことに従います。

リーダーは危なくなれば逃げるか、逃げれなければ荷馬車への攻撃を始めます。
荷馬車は味方ガードで防御することができます。

 少々面倒かもですが、よろしくおねがいします。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
25モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2018年06月06日

†メイン参加者 8人†





(盗賊が暴れる前に、その情報を察知する…本当、水鏡階差運命演算装置って便利やなぁ)
 『疾走天狐』ガブリエーレ・シュノール(CL3000239) は心の底からそう思う。
「配達屋が盗賊団に襲われるのを事前に予測できてそれを自分らで守ることができるなんてすごい事やない?」
 まるでそのガブリエーレのモノローグをよんだかのように、ゴーグルを持ち上げ一層楽しそうにアリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)が、自由騎士達に呼びかけた。折しも訛り口調が此の二人はよく似ている。
(……おっと。慌てて口調が乱れないよう、心の中でも貴族らしく振舞いませんと……うっかり地が出るのは避けたいところですわ)
その口調に思考まで乗せられそうになってしまい、ガブリエーレはこほんと咳払いした。
(それにしても、貴族の手紙が関わっている……私も貴族ですし、貴族同士の争いが原因じゃないと良いのですけど)
 馬車の前では『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)が、馬をなでながら配達人に馬の性格や宥め方をレクチャーされている。もともと彼女は乗り物に対する親和度が高い。其の上で配達人のレクチャーをうけるのである。対策は十全に取られていると言えよう。
「どーうどうどう、かわいいなあ。ちょっと怖い目にあうかもしれんが、がまんするんだぞう」
 シノピリカが言われたとおりに馬を撫でればおとなしく彼女に鼻先を擦り付けた。
 このご時世いつだってどこにだって悪い奴らはいる。今回のそいつらが只の盗賊なのか。何故か心のどこかがざわつく。配達人姿の『ノラ狗』篁・三十三(CL3000014)はどうにも胸元のタイがきになるようでなんども直しながら動物交流で馬にも話しかける。この人が多くピリピリした空気を敏感に感じているのか怯えてる気配がある。
「大丈夫。俺がそばをあるいてあげるから」
 同じく配達人の姿に扮する『護神の剣』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)。まだ夕刻の少し前。照らすほどではないが、直ぐに灯りをつけることができるように松明の準備を整える。
(荷馬車護衛って騎士の仕事でしたっけ? まー、上からやれって言われりゃやるしかないんですけどね)
 流石に材質まで揃えることはできなかったが、馬車の幌に似た色のフードを身に着けたコジマ・キスケ(CL3000206)が馬車の保護材を確認する。それなり以上に高価な貨物であるゆえに十分な緩衝材は用意されている。

 準備を整えた彼らは街道を馬車で移動する。
 外には御者に扮したシノピリカと配達人見習いに扮したカスカと三十三。配達人含め残りの6人は馬車に乗り込む。貨物の所為もあって、少々狭い。その上女性が多いのだ。『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)は少々居心地悪そうにしている。なにぶん、その。いい匂いがする。うん。何を話していいのかわからないのもまた苦手なのだ。それを振り払うように、アダムは怯えているようにも見える配達人に声をかけた。
「僕らは騎士だ。貴方も、貴方の荷も、守り抜くと誓うよ」
「はい、ありがとう、頼りにしているよ」
 ずいぶんと緊張しているようだ。無理もない。自分の荷馬車が襲われると事前にわかっているのだ。護衛はあるとは言え、怯えるなというのは酷な話だ。
「心配しなくてもいいよ。私たちは、私たちの仕事をするから」
 キジンであるアダムの整備を終えたマリア・ベル(CL3000145)もまた配達人に話しかける。アダムは整備にたいしてありがたくは思うが、近づかれているのは落ち着かなかったので、彼女に気づかれないようにほっと息をつく。
「どうかしはったん?」
 続いて整備をうけるアリシアがアダムに話しかければ、アダムはビクリとしてなんでもないよと笑みを浮かべる。
「貴方が、自分の仕事を全うできるようにする。約束する」
 マリアが、目を隠しているゴーグルを少しだけずらして配達人に約束をする。それは自分と同じようにプライドを持って仕事をするものへの敬意と誠意。目を見て話すのはすごく恥ずかしい。機械だったらどうしたら調子がよくなるかは識っている。だけど、ヒトは複雑怪奇。わからないのだ。
「ありがとう、君は綺麗な目をしてるんだね。隠してるのもったいないよ」
 配達人がほう、とため息をついてマジマジと見つめ返してくれば更に恥ずかしくなってずらしたゴーグルを戻しアリシアの整備を続ける。
「ほんとやね、綺麗な桃色やったわ」
 本当に、本当にヒトって複雑怪奇。恥ずかしくて、そう。とだけ短く返した。

 ――タァン!!
 突如銃声が響きわたり、周囲の鳥たちがバサバサと飛び立つ音がする。
「みんな!」
 合図なくともわかる。ずいぶんの自己主張の激しい盗賊だ。
「大丈夫ですから、貴方はここでおとなしくしていてください」
 馬車内の自由騎士たちは直ぐに準備を整え外に飛び出す。キスケは配達人に一言告げると馬車の幌に幻想を纏わせてから飛び出す。
「ぬわっはっはー! かかったな賊め! 配達人殿と馬には指一本触れさせぬ! あと陶器とかも! ゆくぞ、戦術機動!」
 シノピリカが深く被っていた帽子を脱ぎ去り、御者台から飛び降りた。ジャキンと立ち上がった排気筒から、蒸気が噴出される。
「あれあれぇ??????? なんだなんだあ? 話が違うじゃねえかあ」
 街道を塞ぐように現れたのは6人の盗賊たちのうち、唯一のノーブルである男が両手の銃をくるくると回しながら、馬車から飛び出す自由騎士たちを見て不機嫌そうに眉を顰めた。
「おいおい、何人だぁ? 数えるぞ~ ひとーり、ふたーり、さん……めんどくせぇ!!!!!」
 3人数えた時点で男はそばにいた盗賊たちのうちの狼のケモノビトの太ももを連続して二回撃ち抜いた。
「ぁあああああああ!!」
「おい、どういうこったぁ? なんでお前倒れてんだ! うわーー! 悲しいことがおこったぞぉ!! 悪いのはお前らだな!」
「なんですか、あのヒト」
 突然眼の前で起こるその茶番にカスカは眉を顰めながらも、マキナ=ギアから取り出した刀を構えリーダーに向かう。
「ていうか、明らかにあんたが撃ったやん?!」
 銃声と同時に体のギアを切り替えていたガブリエーレが思わずツッコンでしまう。訛りが出てしまったのはご愛嬌。
「いや、いきなり一人戦闘不能になるのは都合はいいけど、意味がわからないよ!」
 銃声に怯える馬を動物交流で宥めながら三十三もツッコミを入れる。
 とはいえ、バカ正直に正面から出てきた彼らに対して全員が護るべき対象である馬車との間に入れたことは僥倖だろう。コジマは後衛に目立たぬよう配置しながら皆に前線を押し上げることを提案する。
「りょ、やで。相手遠距離得意やから、ちょっと厄介やねえ」
 アリシアは元気よく走り出すとリーダーを狙い飛びこむ。
「おい、お前ら! 盾! 盾キタ、かつる」
 リーダーは倒れこんでいたケモノビトの男を蹴り飛ばし自由騎士たちを牽制すると、後ろに下がった。
「まあそう上手くはいかないか」
 マリアがリーダーを狙うため銃口を向ければ仲間がカバーする動きをみせる。ならばと最も馬車に近いソラビトを狙い、二連撃をあびせかけた。シノピリカは慎重に馬車を護る射線を選びながら叫び声でもって自らを奮起した。
「自由騎士団、アダム・クラプトン! 盗賊へと身をやつしたその姿見るに堪えぬ! 恥を知れ!」
 アダムが前に出て、名乗りを上げる。
 アダムは思う。国が揺れているこのタイミングで盗賊団が現れるというのはおかしいことではない。しかしピンポイントに手紙が狙われていたのが気にかかる。これは同じく三十三も思っていたことだ。
「君たちの狙いは何だ? 手紙か?」
 アダムらしい真っ直線な問い。もし国内に不和の芽が芽生えようとしていたのなら……騎士としてそれを看過することはできない。
「はぁ??? なんで手紙のことをおまえらがしってる? まあいい、おい! おまえらコイツラやっちまえ!」
 リーダーが背後で訝しげな声をあげ、どうでもいいと思ったのか攻勢の指示を出す。
 盗賊団達は、リーダーの指示に従い動き始める。
 こちらの前衛はアリシア、カスカ、ガブリエーレ。対する盗賊団はガンナーであることもあり、全員後衛――というよりも距離を取られているだけであるが――。序盤にリーダーに倒され戦闘不能になっているケモノビトが転がっているが、残りは5人。
 もし彼らがもっと攻勢よりに配置していたら、下がったリーダーに近接することも可能であっただろう。しかし前衛を貼ることのできる3人が馬車のガードを優先してしまったのである。もちろんガードは必要である。しかし対象は一つ。過剰防衛であったとも言えるのだ。
 とまれ、戦闘は続く。こちらが前に出れば、盗賊団は木々を遮蔽物としさがる。
 馬車との距離はあいていく。馬車を護る3人との距離が開けば攻撃レンジを越えてしまう。かと言って離れることは危険だ。
 ままならないと思う3人の前に追いついた数人の自由騎士達が馬車の護衛を引き受ける。
 彼ら3人はうなずくと戦場に向かう。これで後顧の憂いはない。
「馬車はどうしました?」
 問うガブリエーレに三十三は短く「任せることできたから!」と応える。
「それはよろしいことですわね」
「あの木の陰!」
 コジマが目ざとく遮蔽物を使う盗賊をみつけ指示をかければマリアがそれを穿つ。三十三はコジマを庇える位置につき、柳凪で体機能を向上させた。これでコジマは狙われたとしても自分が盾になれる。
「森林戦は得意ですから」
 カスカは森に逃げ込む盗賊たちを見て目を細める。ああ、なんて親切。小回りの効く体と森林への融和性を盗賊たちは知らない。さあ、どちらが有利かなんて、わかるでしょう?
 手負いのソラビトを追い詰める狩人にあわせて、アリシアとガブリエーレが続けば、ソラビトが戦闘不能になる。まずは一人。
 街道上で銃を撃ち続けるトカゲのケモノビトにはアダムとシノピリカが左右から戦闘に特化した蒸気鎧装につながる武器、 戦時用蒸気鎧装【籠手】とS・THUNDERで挟み撃つ。
 マリアはゴーグルに隠れる目を細めトカゲのケモノビトの肩口を二度穿つ。
 こちらとてノーダメージというわけではない。盗賊団もまた単体相手に対しての過剰砲撃でもって倒す戦法で抵抗してくる。故にコジマの手番は精度の高い回復術を連続行使することになる。その分精神力に負担はかかる。
 しかし弱音ははいてはいられない。
 目立たないようにしていたとしても戦闘が始まれば回復手というものは直ぐにわかってしまう。盗賊団はコジマに攻撃を集中させる。
 三十三が柳凪で防御力を高めるも、ジリジリと体力は奪われていく。
「シノピリカとアリシア、アダムはお手数ですが、亜人を抑えておいてください、リーダーを抑えに行きます。森に入ったようですので、森林戦に長ける私とガブリエーレで追いかけます。森経由で馬車に向かうようですので止めます」
「わかった。私はその支援射撃に回るから、上手に射線上におびきだして」
「なあに、倒してしまってもよろしいのでしょう! CRAYFISH、イグニション! SIEGER、インパクト!」
「おっけーやで、こっちまかしとき!」
「承りました。このアダム・クラプトン! 騎士の誇りにかけて!」
 カスカがリーダーへの攻撃の好機を見出し指示をかけると彼らは異口同音に了解の意を表すると己の役割を全うするために動き始める。
 状況は変遷する。ガブリエーレとカスカが連携し、森から燻り出すように追い立て、姿を見せたところでマリアが援護射撃をかける。
 切れたリーダーの攻撃に二人は一度は膝を折るが、英雄であるその可能性を消費し、また立ち上がる。
(私の役目は最前線で彼らを掻き乱すこと! 此の程度では膝をつくわけにはいきません! ノブレス・オブリージュ……貴族たるもの、民を守るために先頭に立つべきですわ!)
 貴族としての誇り。それがガブリエーレの原動力だ。
(……後、目立てばシュノール家の名前も広まりますし! ますし!)
 どうやら、お家の名誉のほうが原動力らしい。
「なんだよ! お前ら還リヒトかなんかかよ! きもちわりぃ!」
 その特異性こそが彼らが選ばれた者(しゅじんこう)である証。英雄になるために生まれてきたその恩恵。
「くそ、くそっ!」
 いち早くリーダーの顔色に気づいたのは三十三だった。
「コジマさん、ちょっとだけ耐えれる?」
「はい、なんとか」
 後衛に位置し、比較的馬車に近かった三十三だからこそできたこと。それはリーダーの逃亡阻止である。
 インターセプトするように小夜時雨を構え、速度を斬撃力に変え、篁・三十三、三十三が一手『残月』を繰り出す。
「くそ…ッ!」
 ガブリエーレとカスカ、マリアによって大きくダメージを受けていたリーダーはそこで膝をついた。
 それによって盗賊団はこれ以上の抵抗は無駄と察知し、投降することになる。
 彼らは仲良くロープで縛られ、国防騎士団へ連行されることになった。
(はぁ、牢に入れるって、極論で社会に迷惑かけてるヤツを公費で養うってことでもったいない税金の使い方だなー)
 うんざりしながらコジマは思うが、顔には一切ださない。彼女はつい最近までその当の国防騎士団だった。実は徴兵をスルーしていたオラクルが思った以上にいたことに真面目な彼女は損をしたと思っていたのだ。
「まあ、関係ないけど愚痴にはなっちゃうよね」
 思わずこぼしたその言葉に、アリシアがどうしたの? と聞くが当のコジマは涼しい顔でなんでもないですと答えた。

 結論から言って、盗賊団のリーダーから大した情報を得ることはできなかった。
 彼いわくは知らない野郎に金を渡されて、手紙を焼き捨てろ、残った貨物は好きにしていいということで、誰の手紙を焼き捨てるのかまでは聞いていなかった。ただお前たちは6番目だと意味不明な言葉は伝えられたらしい。
 配達人に手紙の開示を求めたが、それは配達人のプライドとして断固断られた。だがしかし、配達先の名前だけは明らかにはなる。ロイエンタール伯爵宛とギモーブ伯爵宛。
 どちらも、奴隷制復権を求めるオスカー・フォン・ノイマン派の派閥の貴族の名前である。
 なんらかの思惑がそこにはあるようには思える。しかし、それ以上はわからない。
「これは推測だけれども、盗賊をけしかけたものは、ノイマン派の貨物に邪魔が入ったという事実を使いたかったのかもしれないね。それがどういう意味をもつのかは僕にはわからないけれど」
「そうですわね、貴族が政治的に利用するなら、奴隷制度の復権を邪魔しようとしている一派が過激な手を使ったとやり玉に上げて同情票を得る、なんてことができると思いますわ」
 アダムにガブリエーレは答え、コレだから貴族は、とため息を付いた。
「今回はそんな工作が失敗したっていうことで万事解決じゃのう。考えても今はなんともできんじゃろう」
 脳天気に馬に人参をあたえながらシノピリカが締める。
「ひゃあ、うちのゴーグルくうたらあかんよー! それはともかくいつも大事な荷物や手紙を届けてくれてほんまにありがとう。自由騎士団はいつでもみんなの為に頑張りますよってよろしゅうたのみますー!」
 同じく馬と戯れていたアリシアが配達人に如才なく自由騎士団の売り込みをして、今回の依頼は幕を閉じた。

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

というわけで、貴族同士の思惑にまきこまれつつも、今回は無事成功です! 
 ご参加ありがとうございました!
 MVPは森で暴れられたあなたに。ロープでの捕縛など如才なさもばっちりでした
FL送付済