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Oversea! 外国が気になる好色武将!



●「俗物」イエナリ
「はっはっは。余はトクガワ家の武将なるぞ。もそっとちこうよれ」
 そこでは多くの男女が入り混じった宴が開催されていた。多くの酒と多くの色が混じった、いわゆる乱痴気騒ぎだ。その主催者であるイエナリは、多くの女性に囲まれていた。
「よいよい。子は宝。良き血を残すことも武将の仕事よ。ノウブルでなくとも子は残せるゆえ、大歓迎じゃ。ああ、何なら女でなくとも構わぬぞ。色事に境なしじゃ」
 と言った感じで、日毎に女や男を変えるほどの色情魔であった。その節操のなさもあり『俗物』として宇羅幕府内でも鼻つまみにされていたという。
「大陸の娘もいいものじゃな。ヴィスマルクとか言ったか? 如何なる女を好み、如何なる情事を好むのか、知りたいものよのぅ」
 口調と台詞こそただの変態助平だが、その瞳の奥には相手を探る様子があった。異国の存在の弱点を知り、そこから何かを得ようとする光。相手がこちらを『色事にしか興味のない俗物』と思ってくれるのなら、警戒心も薄れてくる。
 さて、そんなイエナリの耳に朝廷軍と繋がったとされる異国の存在を知る。水の女神を奉じる軍事国家。神の蟲毒のもう一つの候補。
「ほうほう、そういう輩がいるのか。それはお相手してみたいものだな。あわよくば懐柔したいが、さてそう上手くいけばいいのやら。
 ……トクガワ義兄弟も何名かやられたし、此方も本腰を入れねばなぁ。どうだろうか、ホクサイ殿。異国の民はいい刺激になると思うが?」
 その言葉に答えたのは、タコの幻想種だった。八本の足に筆を持ち、十六の絵を描いている。
「てやんでぃ。こちとら絵を描く時間が足りないんだ。八本足全部使ったって、足りないぐらいなんだぞ!
 これでトンチキな相手だったら、お前さんを絞って赤い墨にしてやるからな!」
「いやはや、武将相手にその啖呵。むしろ心地良い。それでこそアマノホカリ天下の画家、ホクサイ様だ。
 では上手く誘いこむとしよう。ふむ、彼らはこちらの動きに妙に敏感だ。その理由も探れればいいのだが、はてさて。ともあれ適度に動いてみるか」
 こうしてイエナリは朝廷側の街に潜入し、数名の女性に狙いを定める。彼女達をかどわかし、手籠めにする為に。
「フリっちゃフリだが、上手くいくならめっけものだな。このまま誘拐するのも一興か。
 ああ、お嬢さんたち。大人しくしていれば痛い目には合わないぜ。何なら天国を見せてもいい。勿論、乱暴にしてほしいならその要望も聞くぜ」
「けっ。この女たらしが。武将ならもう少しこの国の為に動いて見せろってんだ!」
「改革なんざ上も下も迷惑千万なんだよ。こうして享楽に耽る方が、文化も発展するってもんさ」

●自由騎士
 朝廷曰く――
「宇羅幕府による女性誘拐事件が発生した。名のある女性の武士達がさらわれ、宇羅幕府の兵力として行動しているという」
 相手の素姓や目的はともかく、誘拐事件は本当に起きていることだ。その居場所を突き止めた自由騎士達は根城としている山小屋に迫る。
「おおっと! 朝廷軍のお出ましか。美女はいるかな? 何なら美少年でもいいぜ」
「けっ。ようやく本命のお出ましか。絵になる動きをしてくれよな!」
 イエナリとホクサイ、そして――なぜかイエナリに従う女性武士が自由騎士達を出迎えた。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
対人戦闘
担当ST
どくどく
■成功条件
1.イエナリとホクサイの打破
 どくどくです。
 史実では53人の子供を残したお方です。

●敵情報
・イエナリ(×1)
 ノウブル。男性30歳。宇羅幕府所属。トクガワと呼ばれるアマノホカリ武将の義兄弟の一人。ジョブはガンナー。手裏剣を投げつけてきます
 女や美少年に目がありません。隙あらば口説こうとします。プレイングによっては上手く誘い出せるかもしれません。
『ピンポイントシュート Lv3』『ダブルシェル Lv4』『ヘッドショット Lv3』『ハーレムマスター』『モテキ』等を活性化しています。

・ホクサイ
 幻想種。この国では妖怪とも呼ばれています。全長3mのタコです。8本の足を巧みに使ってきます。イエナリに誘われた用心棒。本業は画家だとか。
 イ・ラプセル民の動きを観察しようとします。具体的にはジョブとかその辺を。戦闘大好き(というか戦う姿を見るのが好き)なので、説得不可。

攻撃方法
触手 攻近範 触手で乱打してきます。【六連】 反動:1ターン
墨吐 魔遠範 口から墨を吐いてきます。【ウィーク3】
模写 自   直前に使用したスキルをコピーし、使用します。反動:1ターン
巨体 P   大きな体と触手で攻撃を塞いできます。5名までブロック可能。

・武士(×3)
 イエナリに攫われたアマノホカリの兵士です。全員女性。いろいろあったのか、顔を赤らめてイエナリの言いなりになっています。割と自主的に。説得は不可能。

攻撃方法
一刀両断 攻近単 持ってる武器でバッサリいきます。【必殺】
心眼   自   心の眼を開くことで己の知覚能力を上昇させます。命中、回避、速度が上昇します。

●場所情報
 アマノホカリ山中にある山小屋。そこに敵が待ち構えています。時刻は昼。視界や足場は戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、敵前衛に『ホクサイ(×1)』『武士(×3)』が、敵後衛に『イエナリ』がいます。
 事前付与は一度だけ可能とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
2個  6個  2個  2個
3モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
6/8
公開日
2020年10月18日

†メイン参加者 6人†




「トクガワ義兄弟も3人目ですか。あと12人と戦わなければいけないとは、まだまだ先が長いですね」
『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)は言って気合を入れる。アマノホカリに来た理由は別にそう言う事ではないのだが、ともあれ気合は十分である。きっとイベント戦とかで数名まとめて出てくるんじゃないかなぁ?
「ふふーん! 八本足があるからってまけやしないからね!」
 拳を握り、『元気爆発!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は叫ぶ。こちらの手足は四本。タコは八本。しかし二刀流が一刀流に勝るとは限らない。どれだけ鍛錬を積み、そして戦いを重ねてきたか。それが大事なのだ。
「救助対象の女武士が敵に居るのは厄介だな。……何したんだ、あのイエナリとかいう奴は」
 明らかに自主的に幕府側についている女達を見て、『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は頭痛を堪えるように頭に手をやった。何をしたかが想像できるだけに、余計に頭が痛い。ともあれ、どうにかしなければならないのは事実だ。
「イカ墨ならざるタコ墨……パスタに使えるのでしょうか?」
『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)はタコ幻想種を見てそんなことを呟いた。タコ墨はイカ墨と違う味わいだが、イカ墨ほど多くは取れない。それが大量にとれるのなら……そこまで考えて頭を振った。今は戦闘が優先だ。
「国を治める立場にある者が色欲に溺れるなどあってはなりません! ええ、色恋ならともかく!」
 イエナリの素姓を聞いて『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は怒りの声をあげる。確かに血族を絶やさない努力は高貴な家柄なら必須と言えよう。しかしそれにも限度がある。何事にも、節度は重要なのだ。
「アマノホカリはその辺りはオープンだと聞いていたけど。……うん」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)はイエナリの態度と行動を見て、頷きだけを返した。他国の文化というより、彼だけが特別なのだろうと思った方がいいようだ。そうだと思いたい。
「やってきたなぁ。あれが外国の輩か。びすまるく、とかとは毛色が違うみたいだぜ。判で押したような軍服ノウブルじゃなく、色とりどりな種族の混合部隊か! 絵になるねぇ!」
「おいおい、趣味にかまけて本業を疎かにするなよ、ホクサイ」
「てやんでぃ。それはこっちのセリフだ! そっちこそいつものすけべえで失敗するんじゃねぇぞ!」
「はっはっは。そんなことあるわけないじゃないか。このイエナリはむしろ女にモテモテなんだから」
 そんなフラグを立てながら、イエナリ達も戦いの準備にかかる。
 自由騎士とトクガワ家、天津朝廷と宇羅幕府。その両雄が、いま激突する。


「それでは行きますよ」
 宣言と共に気合を入れるアンジェリカ。掛け声と共に体内に力を込めて、武器を持つ手に力を籠める。たおやかな声の裏に秘めた闘争本能を発起させ、全身に行き滞らせる。嵐の前の静けさを感じさせる、そんな立ち様。
 大きく息を吸って踏み込み、呼気と共に武器を振るう。武器の勢いを殺すことなく、ベクトルを変えるようにして流れる欲に軌跡を変えてさらに追撃を。振るわれる三筋の打撃が、ホクサイを穿つ。
「手足が多いなら、こちらも手数を増やさねば無作法というものでしょう」
「いてぇなぁ、このキツネ。しかしいい毛並みと瞳の色をしてるじゃねぇか。外国のキツネはみんなそうなのか?」
「成程……画家としての観察眼が高い、みたいだね」
 ホクサイの言葉を聞いて、マグノリアは納得したように頷いた。こちらのことを調べようとしている節が見られたが、冷静に考えてみれば、軍人でもないホクサイが軍事情報に興味を持つはずがない。強い職人気質ゆえの、興味だったようだ。
 戦場を上から見るようなイメージで見渡し、状況を再認識する。味方のダメージ、敵のダメージ。何を優先すべきかを考え、同時に魔力を練り上げる。味方の傷を癒すために魔力を解き放ち、そして次手の為に思考を展開する。思考こそ、錬金術の基礎なのだから。
「問題は、トクガワ家か。宇羅幕府の中で、地位はそれほど高くはないのだろうけど……それゆえかフットワークの軽さもある、のかな」
「兄弟が多いだけの使い走りなのかもな。俺達の戦力を測るための捨て駒の可能性もあるぜ」
 マグノリアの言葉に肩をすくめるウェルス。推測だけならいくらでも意見は言える。だがそのどれも真実味は薄い。分かっているのは、トクガワ家は自分達の敵だと言う事だ。彼らの組織がヴィスマルクに力を借りている以上、手を結ぶのは難しいだろう。
 敵の内情まではさすがにわからないと割り切り、戦闘に思考を戻すウェルス。ホクサイの真正面に立って銃を撃ち放ち、その動きと視線を自分に向けるように仕向ける。拳銃でタコ足を狙い、引き金を引いた。
「くそ、ちょこまかと動いて狙いずらいぜ」
「にゃあああ!? 何処触ってるんだよー!」
 タコ足に身体を絡みつかれたカーミラが大声をあげる。ぬるぬるした足と吸盤の凹凸が体を這い、くすぐったいような感覚に背筋をゾクゾクさせた。タコ足を振り払い、拳を放って弾き返す。着崩れた服はそのままにカーミラは戦い続ける。
「お嬢ちゃん。キミみたいないいおっっぱいがタコ触手にまみれるとかいけない。やはりヒト族同士でないと」
「あ。なんかよくわからないけど前に出てきた。とりゃー!」
 そんな様子を見ていたイエナリがカーミラを口説こ……というかえっちぃ事しようと前に出てくる。見た目も発するオーラも相まって、カーミラに魅かれたようだ。これ幸いとカーミラは触ってくるイエナリに拳を叩き込む。
「男の人ってどうしておっぱい触りたがるんだろう?」
「貴族が家の血を絶やさないために多くの子を残すのは、通例なのでしょう」
 言って肩をすくめるマリア。相続問題と言うのはいつの時代でも耐えない問題だ。それが貴族となれば問題は家族内だけでは収まらない。そもそも子供が病気に犯されずに成人する可能性も高くはないため、子沢山であるメリットはそれなりにあるのだ。
 とはいえ、節度もあろう。マリアはそう思いながら魔力を練り上げる。魔術の杖に意識を傾け、そこにマナを注ぎ込む。青く発光した杖の先端から、凍てつく風が生まれる。マリアは杖を振るってそれを解き放ち、ホクサイを凍らせる。
「この魔術ならコピーされてもそれほど痛くはない……とは思いますが」
 自由騎士達はホクサイに技を見られてコピーされるのと、トクガワ家に探られるのを恐れてか、技を制限して戦っていた。
「けっ、面白みのねぇ。おい、イエナリ! 外国の奴ってのは根性なしか! こんなこそこそ自分を隠すようなやつらがこの国をひっくり返せるとは思えねぇな!」
「あちらの大陸でも覇を争い、破竹の勢いを持つと聞いてはいたが……。となるとやはり戦術眼の高さが柱か。広目天でもいると見るべきだな」
 そんな自由騎士達にホクサイは憤り、イエナリは自由騎士達の評価を『まるで未来が見えるかのような』見識の高さがキモだと判断する。
「僕達のことが気にかかるようだけど、こっちもトクガワ家のことは気にかかっているんだ」
 そんなイエナリに会話を行うマグノリア。
「トクガワ家は宇羅幕府ではあまり重用されていないみたい、だね。なのになんで幕府側に、つくのかな?
 僕達が朝廷側にとりなして上げてもいいけど……?」
 探りを入れるように言葉を放つマグノリア。実際の所は、彼らに地位を与える確約はできないし、朝廷側も今まで敵だったトクガワ家を受け入れれるかというと、そこは話し合いだ。
「いやいや、俺達はこの国を護りたいだけだ。宇羅様は外国と手を結んだけど、この国を戦場にするつもりはないはずだぜ。
 むしろアマノホカリ擁する朝廷がこちらに下ってくれれば、万事解決。そう思わないかい?」
 アマノホカリで生まれたトクガワ家からすれば、国内で戦争はあまりしたくない。幕府について内戦をできるだけ早く収めたいと言うのが心情のようだ。
「つまり、俺達イ・ラプセルとは相いれないか」
「そちらもお国の事情、っていうのはあるだろうしいろいろお察しはするけどな。どっちにつくかと言われれば幕府だ。少なくとも今の戦いを見る限り、貴国が幕府に勝てるかは判断付かないのでな」
 これで会話は終わりだ、とばかりにクナイを構えるイエナリ。
「……視線がカーミラさんの胸元に向いてなければ決まったのでしょうけど」
「個人の能力はそれなりに高いのでしょうが、残念ですね。二重の意味で」
「いや、こんな立派な子に声を掛けないとか失礼と思わない!?」
 そんな一面もありましたが。
 自由騎士とイエナリの手勢との戦いは加速していく。


 自由騎士達はホクサイを倒すことを主眼として戦っていた。イエナリに味方する武士の攻撃をいなしながら、八本足を幻想種を相手する。
「中々頑丈ですね……。イエナリの射撃も侮れませんし」
 マリアは氷の弾丸を放ちながら、戦場の動きを見ていた。自由騎士の火力はホクサイに向かっている。その為、イエナリはほぼフリーの状態で動いていた。時折飛んでくるイエナリのクナイによってフラグメンツを削られるほどのダメージを負うマリア。
 呼吸を整え、冷静に場を見回す。ホクサイさえ倒してしまえば、その火力は他の元に向かう。そうなればイエナリもすぐに押さえることが出来るだろう。問題は、それまで此方が耐えられるかどうかだ。
「とはいえ、問題はありません。このままいきましょう」
「そうだね……。イエナリは僕が受けもつよ」
 マグノリアは頷き、銀の弾丸を撃ち放つ。聖別された銀の弾丸は魔性を貫く。イエナリはイブリースではないが、その一撃で動きを止められることには変わりはない。狙い外さず弾丸はイエナリの足に当たり、動きを封じる。
「僕としては、フットワークの軽いトクガワ家が恐ろしく思うけど、ね」
「俺達はどうなろうと構わない、って思われている節もあるからな。いい捨て駒さ」
 マグノリアの言葉に綱を吐き捨てるように答えるイエナリ。女性であるかどうか分からない相手には、男性同様そんな態度を取るようだ。
「言葉を鵜呑みにするには、トクガワ家は強すぎると思うけどね」
「そう思うのなら、今のうちに引き上げな。宇羅様は俺らの比じゃないぜ」
「成程、肝に銘じておきましょう」
 イエナリの言葉に頷くアンジェリカ。ヴィスマルクに与する宇羅幕府を倒すためには、避けては通れない相手。その情報を喋りはしないだろうが、今戦っている人間よりも強い、というのは物差しの一つとなる。
 ホクサイを狙っていたアンジェリカは、誘われて前に出てきたイエナリに矛先を変える。手にした武器に祈りを込めて思いっきり振りかぶった。後衛から射撃を行う専横が主体のイエナリはそれを避けることが出来ず、そのまま吹き飛んで倒れ伏す。
「ふう。この方がずっと後ろに控えていたのなら、それなりに苦戦したでしょうね」
「ホントに前に出てくるなんて、そんなに触りたかったのかな?」
 何度か胸に手を伸ばそうとしてきたイエナリを見ながら、カーミラは首をかしげる。ガンナーなのに前に出るとかわけわかんない、という顔である。あどけない顔に暴力的な胸囲。そして人を引き付けるオーラ。天然ともいえるあどけなさがそこにあった。
 だがカーミラの魅力はそこに留まらない。幼い肉体に秘められた力強いパワー。それをいかんなく発揮する央華大陸から伝わった武術。それらが融合して生まれる戦闘力がホクサイに穿たれる。重い一撃がタコの身体に叩き込まれ、その意識を奪い取った。
「ちくしょうめ、ここまでか……」
「どうだ! そっちからしたらつまらない技かもしれないけど、突き詰めればここまでやれるんだぞ!」
「そうだな。派手さはかけるが俺達を甘く見過ぎたようだぜ、タコの旦那」
 白目をむいたホクサイを見下ろしながら、ウェルスは告げる。強い技を持つ者が勝つのではない。勝つために戦術を練ったものが勝つのだ。派手さや珍しさを求めるホクサイと、勝つために知恵を絞った自由騎士達。その差がここに出ていた。
 残りは元々朝廷側だった女武士達。彼女達を見ながら銃を構えるウェルス。元はこちら側だったが、敵対すると言うのなら手は抜けない。後で説得しないとなぁ、と思いながら引き金を引いた。
「ま、敵側に着いてこちらに剣を向けたんだ。怪我するぐらいは勘弁してくれよな」
 そのまま自由騎士達は一気呵成に攻め立てる。幕府側の主力であるイエナリとホクサイを倒され、残された武士達に逆転するだけの戦力はない。一人、また一人と倒れていく。
「これでお終いだ! くらえー!」
 カーミラが最後に残った女武士に迫る。相手の刀を避け、その流れを殺さないように体を回転させながら踏み込む。そのまま真っ直ぐに拳を突き出し、相手の腹部に拳を叩き込んだ。
「結構強くて楽しめたよ! また戦おうね!」
 幕府側に与したことを責めることなく、カーミラは戦った相手に笑みを浮かべた。


 戦い終わり、全員を縛り上げる自由騎士達。ホクサイは巨大な壺に押し込んで、ふたを閉めた。
「もー。服が汚れたじゃないかー」
 ホクサイに攻撃されて触手の粘液に塗れたり、イエナリにいろいろ触られたりと散々なカーミラだったが、当の本人はあまり気にしていなかった。むしろ服が皺だらけになったことの方が気にかかるようだ。
「変わった相手を描きたいのなら、むしろ私達についてヴィスマルクやパノプティコンと戦うと言うのは如何でしょうか?」
「けっ、この俺にアマノホカリを荒らす輩と手を組めってか! それこそ冗談じゃねぇ!」
 アンジェリカはホクサイを誘おうと声をかけるが、にべもなく断られる。ホクサイからすればヴィスマルクもイ・ラプセルもアマノホカリの内戦に力を貸す『外国』でしかない。内戦を激化させる要因と受け取られても仕方のないことだ。
「俺達が関与したから一方的な進軍は止められた、ともいえるぜ。下手すると朝廷側に着いたアマノホカリ人はヴィスマルクの奴隷になっていたかもだしな」
 そんなホクサイにウェルスが擁護するように告げる。現状、幕府と朝廷はパワーバランスの問題でにらみ合いの状態だ。一方的な進軍と凌辱が行われれば、影でヴィスマルクがどう動いたところで誰も咎める者はいないのだ。
(広目天、か。確か強力な瞳を持つ鬼の幻想種、だったかな? 未来視に当たらずも遠からじ、か)
 声に出さずにマグノリアはイエナリの推測に評価をしていた。未来を見る、という水鏡の特製に近いところまで読まれている。そういった神秘のケースがあるのなら、いずれは未来を見ると言う事実に到達されるのかもしれない。
「トクガワの義兄弟もあと十二名。戦いはまだまだ続きますね」
 謎の気合を入れるマリア。とりあえず将棋が得意と言われている者に会わなくては。アマノホカリの戦いはまだまだ続く。戦い続けていれば、いずれは会えるだろう。
 そして怪我の治療も終え、自由騎士達は朝廷の元に戻っていく――

「イエナリがやられただと?」
「だがイエナリは我らトクガワ義兄弟の中で最も俗物」
「しかしイ・ラプセルの力はやはり侮れぬ」
「間者の報告によれば、イエナリの弱点を的確についたと言う」
「分かりやすい弱点ではあったがな」
「うむ、しかしそれを読み切ったモノがいるのは確か」
「ならばその前提で動くのが肝要か」
「具体的にはどうするのだ?」
「…………どうするのだ?」
「……どうしようか?」
「まあ、どうにか、なるだろう、きっと」
「そう。我らトクガワ義兄弟の絆をもってすれば、多分」
「「「「イ・ラプセルなど、恐れるに足らず」」」」

「怖くないんなら、次お前な。俺は怖いんで」
「恐れはしないけどオレも怖いんだよ! 倒したけど復活するとか何それ!」


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
冷静に考えれば、イエナリは決戦向きだったなぁ。
女性武士ハーレム軍団とか息子武士沢山とかそんな軍隊で。

以上のような結果になりました。イエナリ、簡単に前に出すぎだろう。
リプレイ中では描写と演出の関係で後半にやられましたが、1ターン目で誘われて前に出て2ターン目の途中で脱落しています。
MVPは見事な誘い出しをしたローゼンタール様に。

イエナリのセリフが一部どくどくの本音だと言う事はありませんよ?

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済