MagiaSteam
BlazeOrge! 延焼!燃焼!大炎上!



●喰らう都市
『ロンディアナ』はヘルメリアの街を喰らい、取り込みながら北上する。その道中にある物も、逃げ遅れれば『喰われて』しまう。
 そして『喰らった』幻想種は機械と融合させられ――

●炎と、肉を喰らうモノ
「燃えろ燃えろ! ヒャッハー!」
「焼け! 今日の飯はウェルダンだ!」
「機械の身体は最高だぜー!」
 炎の蹂躙が村を襲う。『ロンディアナ』の進行からそれて、どうにか難を逃れた人達が集まったコミューン。そこに数体のオーガが現れたのだ。
「オーガ……!? いや、なんだあれは!」
 最初にそれを見た人達は困惑と動揺で初動が遅れた。そしてその後れを巻き返すこともできず、彼らの暴虐を許すこととなった。
 あれがオーガであることには変わりない。大きさ2mほどの巨躯な人型。人を喰らう幻想種。
 だがその右手には巨大な銃器が融合している。そこから噴出される炎が村を焼き払い、逃げ惑う者達は鋼のような顎でかみ砕かれる。振動して回転する歯は食べられた者に痛み苦しませながら、効率よく分解していく。
 オーガはヘルメリアでも注意されている幻想種だが、歯車騎士団を恐れて人の生息範囲には近づこうとはしなかった。だが歯車騎士団は先の戦争で借り出されている。最低限の騎士はいるが、それもこの炎の前では無力だった。
「ヘルメス様には感謝だな! 好きに食らっていいってよ!」
「歯車騎士団もいねぇ! 人間食い放題だ!」
「そう言えば、イ・ラプセルってやつらがいるらしいな。そいつらも頂こうぜ!」
 村人すべてを焼き、そして食らったオーガ達は南にある街に目をつける。

●自由騎士
「――と言う『融合種』よ」
 メアリー・シェリー(nCL3000066)は集まった自由騎士を前にそう切り出した。同郷の人間が殺されている話はあまり気分がいいものではないのか、僅かに声に陰うつが混じる。
「『人機融合装置』で火炎放射器と粉砕機を融合させられたオーガ達がこっちに向かっているわ。簡易だけどスペックは纏めてあるから道すがら確認して」
 メアリーが渡した羊皮紙には、びっしりと兵器の詳細が書かれてあった。作成者の経緯と傾向まで書かれてある。簡易とは。
「元々人を喰う種族で、機械と融合したことでタガが外れた様ね。仮に融合を解除できたとしても、人間に敵対的であることには変わりはないわ」
「『討伐』が目的か」
「そうね。仮にキジン化による苦痛で粗暴になっているとしても、同情の余地はないわ」
 キジン化は激しい苦痛と精神への影響が見られる。ノウブルであってもキジン手術は回を重ねるごとに危険を伴う。他の種族であれば先ず耐えられないものだ。『人機融合装置』を使ったとしても、歯車騎士団のメンテナンスなしでは長くは生きられない。
「同行したいけど私はメンテナンスと『ロンディアナ』対策で手一杯なの。
 よろしく頼むわ」
 メアリーの頼みに頷いて、自由騎士達はオーガ討伐に向かった。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
他国調査
担当ST
どくどく
■成功条件
1.『融合種』ブレイズオーガの討伐
 どくどくです。
 融合種その二。ひゃっはー。

●敵情報
・ブレイズオーガ(×4)
 幻想種と機械が融合した『融合種』。人を喰らうオーガの腕に火炎放射器が付き、顎が粉砕機になっています。
 もともと粗暴だった彼らは融合や世情の変化により制御が外れ、人を襲う暴威となりました。人間をエサとしか見ておらず、説得は無意味です。

攻撃方法
剛腕 攻近単 力任せに殴ってきます。
粉砕 攻近単 鋼の顎で噛みついてきます。【致命】
火炎 魔遠範 火炎放射器で広範囲に焼き払ってきます。【バーン2】
加虐  P  人が傷つく様を見て高揚します。6ターンごとに攻撃力増加。

●場所情報
 ヘルメリア。『ロンディアナ』により荒野となった平原。時刻は夕刻。夜襲を仕掛けようとしたオーガを待ち伏せする形です。広さや明るさは戦闘に影響なし。
 戦闘開始時、『ブレイズオーガ(×4)』が敵前衛にいます。
 事前付与は一度だけ可能です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
7/8
公開日
2020年03月13日

†メイン参加者 7人†




「歯車騎士団はもう機能していないに等しいか。致し方あるまい」
 融合種に殲滅された村の情報に目を通し、『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はため息をついた。ヘルメリアは敵国ではあるが、そこにすむ人民の犠牲を喜びはしない。それが神によって放たれた存在ならなおのことだ。
「……ちッ!」
 苛立ちを隠そうともせず、『二人の誓い』ザルク・ミステル(CL3000067)は吸っていたタバコを捨てた。落ちた煙草を踏みつけながら、かつて見た光景を思い出す。いやな事を思い出したと眉をひそめて銃を抜いた。幸か不幸か、相手に手加減は不要だ。
「オーガか……。融合とか関係なく人間を襲うんだよね」
『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は言って頷いた。幻想種の中には人間を襲うモノもいる。機械と融合させられて粗暴になる以前にヒトの敵である存在だ。放置すれば力のないものが喰われてしまう。それは明らかな事だった。
「そうだな。情けは無用だぜ!」
 斧を担いで『砂塵の戦鬼』ジーニー・レイン(CL3000647)が獰猛な笑みを浮かべる。融合種と聞いた時はヘルメスの犠牲者かと思ったが、オーガ達はその力で暴れまわっている。そのような相手にかける情けはない。
「見敵必殺。シンプルな仕事だ」
『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は無感情に呟いた。やるべきことは単純で、そして分かりやすい。戦争という政治的な要素もなく、傭兵として気楽なオーダーだ。他の感情を押し込め、敵を倒すというだけに集中する。
「外道を行う敵は勝てる分には気楽だが……負けてしまえば最悪極まるか」
 頭を掻きながら『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をついた。ヒトの敵、というのは排除するのに心は痛まない。だが排除できなければ虐殺現場の完成だ。これはこれで気が重くなってくる。
「そうだね。まあ出来る事はやっておかないと、ね」
 試験管を振りながら頷く『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。人機融合装置。それによって生まれた融合種。それが神造兵器デウスギアの産物と言うのなら、それなりに興味はわいてくる。
「もうすぐメシだぜ。おやぁ? 粋がよさそうなのがいるじゃねぇか」
「イ・ラプセルの奴らか。自分から食われに来るなんて、礼儀正しいじゃねぇか!」
 やってくる融合種オーガ。自由騎士達を見て、食欲を隠そうともせずに顎の粉砕機を開き、嗤う。聞く耳もたないとばかりに武器を構える自由騎士達。
「お、抵抗する気か? 本当に粋がいい奴らだな!」
「生きたまま喰らって、悲鳴をあげさせてやるぜ。それまで死ぬなよ!」
 高い嗜虐性は機械融合した結果か、はたまた元からか。どうあれ情報通りの幻想種のようだ。
 通すわけにはいかない。自由騎士達は武器を構え、融合種に挑む。


「クソが。テメェらに食わせる人間はいねぇよ!」
 一番最初に動いたのはザルクだった。持っていた拳銃を構え、引き金に指を添える。オーガの腕に備え付けられている火炎放射器が動くより先に、ザルクの弾丸は放たれていた。動きを封じる魔力が込められた弾丸が、オーガ達の動きを止める。
 弾丸の着弾よりも早く、ザルクは弾倉を交換する。指先でロックを解除し、流れるように懐に入れていた弾倉と入れ替える。銃口から放たれたのは炎の弾丸。弾丸に圧縮された炎が尾を引いて飛び、オーガ達を焼いていく。
「熱ぃ! 何だこれは!?」 
「焼く立場はお前達だけだと思ってたか? 残念だったな」
「おもちゃを手に入れたガキ大将か。おめでたい連中だ」
 オーガ達を挑発するよう言葉を放ち、槍を構えるアデル。怒りに顔を赤くするオーガ達を見て、良しと頷く。予想通りのガキだ。少し武器を得ただけでいい気になり、調子に乗る。弱い相手を蹂躙することしか知らない奴だ。
 槍を構え、オーガ達の動きを見るアデル。剛腕と銃と破砕機の顎。その届く範囲を目測で測り、意識する。大事なのはその圏内を見切る事。アデルは迫る顎を槍で払い流し、その勢いを殺さないようにオーガの脇腹を突き刺した。
「俺が戦争の仕方を教えてやる。最もその知識を生かすことはないだろうがな」
「ふざけっ、エサの分際で偉そうに!」
「カノン達を食べるのは無理だよ。諦めな」
 ガントレットでオーガの攻撃をかわしながらカノンが叫ぶ。オーガの力は確かに脅威だが、動きそのものを見切る事は容易い。格闘動作を習ったカノンからすれば挙動が分かりやすく、次に何処に狙うのかわかってしまう。
 風にそよぐ柳のように。カノンはそれを意識して体を動かす。柔軟に手足を動かし、遠心力を最大限に生かして鞭のようにオーガに打撃を与えていく。迫るオーガの剛腕も、しなやかな動きで回避し、そしてオーガの予測できない打撃を加えていく。
「くそ、ぐにょぐにょして狙いにくい!」
「力任せじゃカノンは捕まえられないよ! どうだ!」
「まあ、そんな程度のパワーじゃ私にも勝てないだろうがね!」
 轟、と戦斧を振るうジーニー。彼女が振るう斧はオーガの背丈ほどに長く、材質も鋼という事もあって重量もある。それを意のままに奮うジーニーの力は、確かにオーガを凌駕していた。
 仲間が回りにいなければ、大きく斧を横回転させて多くのオーガを斧の軌跡に巻き込み、味方に当たりそうなら縦回転で叩きつける。ジーニーの真価は技ではなく力。力を効率よく振るう事こそが、彼女の戦術。彼女自身、それをよく理解していた。
「吹き飛べ! どうしたどうした! オーガってのは力自慢じゃなかったのか?」
「なんだこいつら……! 歯車騎士団並に強いぞ!」
「残念だったな。その歯車騎士団を倒すべく上陸したのが、我ら自由騎士だ」
 押されて焦るオーガに静かに告げるテオドール。ヘルメリアを、そしてヘルメスを歴史から消す。それが今のイ・ラプセルの目的だ。そしてそこに住むヒト達を守る。それが貴族としての責務だと理解していた。
 渦巻くマナが光を帯び、テオドールの魔力と混合する。シャンバラで生まれた冥府の魔術。地の底から伸びる凍える茨。それがオーガ達に絡みつく。魔力がオーガを蝕み、その動きを封じていく。
「はああああ!? 敵国の奴らを守るとか頭おかしいだろうが!」
「敵味方など関係ない。民を食わせることなどさせぬよ」
「まあ、考え方は色々だよね」
 フラットに言っていなずくマグノリア。テオドールの言い分もオーガの言い分もマグノリアには理解できる。どちらが正しい、というつもりは今のところない。マグノリアはマグノリアの考えのもとで、動くだけだ。
 知は武器になる。それが錬金術の秘奥。マグノリアは知識の中にある魔導書を読み上げ、この世の理をわずかに歪める。オーガ達に付与される『負』の回転。血の巡りを乱し、神経の流れを狂わせる概念。それを埋め込み、オーガを不調に追い込む。
「実のところ、僕も僕の考えがあるんだ。そんなわけで死んでもらうよ」
「お前らの都合なんて知るか! そんなもので殺されるなんて御免だぜ!」
「まー、その言い分は正しい。だがお前らも散々自分の都合で食ってきたわけだしな」
 うんうんと頷くツボミ。確かにマグノリアの意見は暴論だが、オーガも同じようにじとを喰らってきたのだ。ついでに言うと、ツボミもツボミの都合でオーガ達を生かすつもりはない。倫理面もあるが、医学的な見地が大きい。
 オーガが後衛に突撃するなら前に出るつもりだったが、アデルが上手く挑発してくれたおかげでそれもなさそうだ。ツボミは安堵し、回復に徹する。傷ついている者を診て、癒しの魔力を解き放つ。暖かい光が仲間達の傷を癒していく。
「しかしお前ら。その機械の身体は歯車騎士団が癒さないと半月程で死ぬんだが……」
「はぁぁぁ!? 適当なこと言ってるんじゃねぇよ。ヘルメス様がくれた機械だぜ。そんなわけねぇよ!」
「……やはり聞いてはいないか。あの神らしいな」
 オーガの答えに肩をすくめるツボミ。融合させて使い捨て。運が良ければ自由騎士の足止め程度にはなるだろう。そんなヘルメスの笑う顔が想像できた。事実、放置できない状況になっているわけなのだから、馬鹿にはできない。
「お前らを殺して、肉を食う!」
「そのムカつく態度が泣き叫ぶまで生かして、後悔させてやる!」
 怒りと加虐から力を増すオーガ達。脳のリミッターが外れたのか、オーガの動きは更に暴力的になっていく。


 自由騎士達の戦略はオーソドックスだ。前衛がオーガを止めながら攻め、マグノリアとツボミの回復を基点にして攻め立てる。
 だが機械と融合したオーガの力は強い。炎の舌が戦場を舐め、暴力が自由騎士を襲う。
「ふん。この程度で勝ったつもりか」
 挑発して攻撃を受け続けたアデルがフラグメンツを削られる。だがその疲弊を表に出すつもりはない。なお挑発を続け、自らを狙うように手招きする。
「カノンはあるオーガを知ってるよ。そのオーガは決して人間を食べないんだ」
 オーガと戦いながら、カノンが口を開く。
「はぁ? そいつ馬鹿じゃねぇのか。イカれてるぜ」
「そういうと思った。カノンは彼を信じてる。手を結べると信じてる!」
 種族が違うから戦うのではなく、敵対するから戦う。たとえ種族が違えども、手を結べる可能性はあるのだ。カノンはそう信じていた。
「そこが火炎放射器の管か。狙い撃ちさせてもらうぜ!」
 ザルクはメアリーから聞いた兵器の詳細を読み、その構造から弱点を見つけていた。後はそこを穿つのみ。もはや手足のように動く二丁拳銃は、火炎放射器の僅かな隙も逃さない。弾丸は真っ直ぐその管を砕き、火炎放射器に不具合を起こさせる。
「逃がしやしない。散々焼いて食らったんだ。諦めな」
「そういうこった! 悪いがミンチにさせてもらうぜ!」
 オーガに殺意むき出しで迫るジーニー。最も、悪いなんて全く思ってはいないのだが。言葉通り、オーガを肉片によりすべく力を込める。弱者を殺して笑う輩にかける情けはもっていない。今ここで憂いを断つべく、鋼の斧は振るわれる。
「お前らを倒したら、次はヘルメスだ!」
「そうだな。そろそろ前座は終わりにしよう」
 槍を振るいながらアデルはオーガに聞こえるように言う。元よりヘルメリア攻略の最終目的は神殺しだ。『ロンディアナ』侵入の目途が立った以上、疾く攻めるが上策。手早く終わらせて、帰還するのみだ。
「いや、前座ですらない。火を噴くオモチャで遊ぶ馬鹿だ。火遊びは楽しかったか?」
「その遊びで民が殺されたのだ。それを許すことなどできやしない」
 ぴしゃりといい放つテオドール。他国とはいえ無辜の民を殺す幻想種を許してはおけない。たとえヘルメスと無関係であったとしても、テオドールは出向いただろう。それが貴族という者で、それがテオドール・ベルヴァルドと言う人間なのだ。
「これ以上の暴虐は許さぬ。ここで終わるがいい」
「まあ、ある意味こ奴らも被害者だ。同情の余地ぐらいはあるさ」
 言って肩をすくめるツボミ。『ロンディアナ』に巻き込まれ、ヘルメスに機械と融合させられた幻想種。そういう意味では同情の余地はある。だがそれは許そうというわけではない。最後の最後ぐらいは、名誉を与えようという意味合いだ。つまり――
「せめてこいつらを連れて帰って研究素材として使うのが供養だろう。治療法に繋がる可能性を1%でも上げるためにな」
「マナの混合比率だと……僕は考えるよ」
 ツボミの意見に頷くマグノリア。
「ノウブルが機械融合の適正率が高いのは……他の種族よりマナの質や量が異なるからだ、と考えている。生物の対極である器物と融合できるのは、そこだと。
『人機融合装置』は、そのマナの比率を変質させ、機械との融和性を高める……と思ってる」
 まあだから、と一拍置いて言葉を続けるマグノリア。
「彼らの肉体と機械の融合部分。それを調べたい。出来るなら『死』んで魂やマナが消える前に。死んでてもいいけど、新鮮ならなおいいよね」
「ふざけんな! だれがそんなことさせるか!」
 ツボミとマグノリアの言葉に猛反対するオーガ達。然もありなん。
 だが実際問題としてオーガ達は追い込まれていた。個としてはかなりの強さを持つ幻想種なのだが、自由騎士達の連携を前にそのパワーが生かせないでいた。
「流石に厳しいか。だが――」
 テオドールが炎の熱気で膝をつくが、オーガ達の猛攻はここまで。一体、また一体と自由騎士の攻撃の前に力尽きていく。
「待て待て待て! お前達の仲間になってやる! 一緒にヘルメスを倒そうじゃないか!」
「んなたわごとを聞くわけねーだろうが!」
 オーガの提言を一蹴するジーニー。その言葉は自由騎士全員の総意でもあった。それを示すかのようにジーニーは大きく斧を振りかぶる。これ以上何も言わせやしないとばかりに、加減なく斧は振り下ろされる。
「はっ! 大したことなかったな!」
 完全に沈黙したオーガを前に、ジーニーは勝鬨をあげる様にそう叫んだ。


 戦いが終わった後の自由騎士の行動は、様々だった。
 元よりオーガは討伐対象だ。伏した相手にかける言葉はない。騎士の任務としてはここで終わりである。
「こいつらの火炎放射器は使えるかもな。メアリーに頼めば武器にしてくれるだろうよ」
 ジーニーはオーガの腕から火炎放射器を引きちぎり、回収する。事態が落ち着けば新しい武器を作ってくれるだろう。何せ蒸気国家ヘルメリアの武装だ。ピーキーになるかもしれないが、あって損はないはずだ。
「待って。機械との接合部分を見てみたい」
 切除作業に入る前に、マグノリアの制止が入る。生物と無機物を融合させている人機融合装置。その接合部分を見ればあるいは何かわかるかもしれない。融合部位とそうでない部位を分けて回収し、その差異を調べ始める。
「そうだな。私は臓器関連だ。内臓(なか)をみれば身体の不具合はある程度見える」
 解剖道具を手に、ツボミは言う。検分は時間が勝負。時間が経てば死体は腐り、腐れば情報も劣化する。持ち帰れればそれなりの施設で検査もできるが、情報の精度を高めるなら今ここでやるべきだ。倫理を忘れたわけではないが、情報は欲しい。
「運がなかったな。俺たちは、お前たちにその力を授けた、ヘルメス神そのものを殺す自由騎士だ」
 だからお前達に負ける道理はない。アデルはそう言い放ち、槍を納める。『ロンディアナ』潜入の目途は経った。ヘルメスを倒すための道筋はもう見えているのだ。ならばあとは行動するのみ。
「このような事件が多くなるのなら、シャンバラ領への移民も考えておくのも手か」
 憂いの表情を浮かべるテオドール。ヘルメスを倒せば融合種の出没が止まるとはいえ、これまで作られた融合種が事件を起こさないとは限らない。ヘルメスの死後、融合種がどうなるかは未知数なのだ。もしもの時のことを考えておくに越したことはない。
「いつでも何処でも、一番被害にあうのは一般庶民なのかなー」
 街の方を見てカノンは呟く。力のないものが時代の奔流で死んでいく。そんな事はどの時代でも起きていた。その何割かを救うことが出来るのが、英雄なのだ。例えば今しがた守った街のように――

「……わかっちゃいたが、生存者なしか」
 ザルクは一人、ブレイズオーガの犠牲にあった村に出向いていた。かつての自分のように誰か生きているかもしれない、と思ったが現実は非情だった。深くため息を吐き、手にしたスコップで村人達のため墓穴を掘る。その作業が終わり、タバコを吸う。
「――ヘルメリア……。胸糞悪いぜ」
 言葉と共に吐き出した紫煙は、まだ冷たいヘルメリアの風に乗って消えた――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
ザコロール楽しい!(ものすごくいい笑顔

以上のような結果になりました。
分かってはいましたが、皆様容赦ない。誰か一人ぐらいは『彼らもヘルメスの犠牲者なんだ! 説得すればきっと分かり合える!』とかいう人が……いねーわな。
きっちり全員天に召されました。

MVPは少し迷いましたが、OPのメアリー資料から火炎放射器封じを行ったミステル様に。戦闘後の行動もベネでした。

ヘルメリアも決戦です。この戦いが皆様の景気づけになれば幸いです。
それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済