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【円卓の騎士】Inventor! 始まりの火を作りし者!



●その名は円卓蒸気騎士!
「マロリー司祭?」
「本名トマス・マロリー。司祭なんてついているけど、ヘルメリアにおいてその名称はヘルメス傾倒者か天才的な蒸気機関発明者の二種類よ」
 当然後者の方ね、とメアリー・シェリー(nCL3000066)は言い放つ。ヘルメスは神ではあるが、自分を崇める宗教組織を特に作ろうとはしなかった。そういったこともあり、ヘルメリアにおける信仰対象は神であるヘルメスと、過度に発展した蒸気文明である。
 前者は自発的にヘルメスを崇める組織であり、後者は『蒸気王』を追うように蒸気文明を発展させていった。そうマロリーは――
「プロメテウス、及び蒸気騎士を生み出した人よ」
 今から約180年前。蒸気国家として設立されたヘルメリアに現れ、軍事面でヘルメリアを発展させた人物だ。戦車と言った車両ではなくあくまで人型に拘り、兵装の発展に心血を注いでいた。そして――
「……で、そのマロリー司祭は人機融合装置で……蒸気騎士の工場と融合してしまったのか」
『その通り! 正確には工場の生産ラインを統括する制御装置だよ。いやぁ、自分の思うままのロボが作れるなんて、最高じゃないか!』
 スピーカーから聞こえてくる声。実に嬉しそうな声である。機械と融合したという悲愴さは全くない。むしろこのまま死んでも後悔しなんじゃなかろうか?
 さて、事の経緯を説明しよう。
 人機融合装置によって機械と融合したロンディアナの人達を救う目途は立った。最悪の結果を免れた自由騎士達の心にも余裕が生まれ、ヘルメリアで散々敵対した蒸気騎士の事に興味が出てくる。
 蒸気騎士を作っていた生産ラインはすぐにわかり、いざ向かってみると――
『ダンダンダーン、ダダッダー! ゆくーぞー、僕らのー、蒸気騎士ー♪』
 そんな軽快な音楽と共に工場内に声が響き渡ったのである。あ、テーマソングと名乗りの併用です。そしてその声をメアリーが看破し、冒頭に至る。
「その筋では有名な二足歩行系蒸気兵器の権威者よ」
「ヘルメリアはこんなのしかいないのか……?」
 ヘルメリアで出会った色濃い人達を思い出す自由騎士達。主に発明関係は碌なのがいない気がする。
 ともあれ交渉は可能なようなので、自由騎士達はマロリーに蒸気騎士のことを尋ねてみた。今後の戦いの為に蒸気騎士の技術を得たいと。
『いいよぉ。オーダーメイドで作ってあげる。鎧の形も武装もお好みでね』
 返事は予想以上の快諾だった。メタな事を言うと、イラスト関係も好きなデザインでOKである。
『でもぉ、君達に扱えるかどうかのテストをさせてもらうよ。あ、違うか。
 我が円卓蒸気騎士が汝らの力を試してくれよう。出でよ我がしもべ達!』
 派手な効果音と共に工場の一部にライトが当たり、蒸気音と共にスモークが生まれる。床の一部が開き、そこから四体の騎士鎧がせり上がってきた。フォルムから蒸気騎士だろう。
『円卓蒸気騎士、ガウェイン!』『同じくパーシヴァル!』『ガラハッド!』『ディンドラン!』
『我ら、聖杯を求めし誉れ高き騎士なり!』
 あ、声はマロリー司祭が当てています。あと蒸気騎士もマロリーがコントロールして動いているようです。
「勝たないと、蒸気騎士を作ってもらえないみたいだけど」
「ヘルメリアはこんなのしかいないのか……!」
 嘆く自由騎士達。しかし逆に言えば勝てば無条件で蒸気騎士の生産ラインが得られるのだ。そう思えば悪くは――
『なお、円卓蒸気騎士は合計で一二体いるからね』
 ……悪くはないが、疲れるなぁと意気消沈しそうになった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
シリーズシナリオ
シナリオカテゴリー
国力増強
担当ST
どくどく
■成功条件
1.円卓蒸気騎士4体との勝利
 どくどくです。
 たぢまCW「ブリテンに帰れ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 このシナリオは合計三回の一回目のシリーズシナリオとなります。シリーズ終了後、蒸気騎士ジョブを会得できることが出来ます。
 本シナリオ参加時、次回同タグの依頼の参加優先権が得られます。

●敵情報
・円卓蒸気騎士(×4)
 自動で動く蒸気騎士です。正確には人機融合したマロリーがコントロールしています。分類は……イブリース化した器物が一番近いんじゃないですかね? 当然権能とか持ってません。バッドステータスも普通に効きます。
 生物ではありませんのでフラグメンツ復活はしません。
 
・ガウェイン
 太陽を模した紋様が入った緑色の騎士です。

攻撃方法
ガラティーン 攻遠単 なんか豪華そうな剣で切り裂きます。防御-20% 溜1
五月の鷹  自付 魔女の呪いを跳ねのける聖者。【魔耐】【浮遊】
緑の騎士  P  品性方向な騎士。あらゆる惑わしを無力化する。【精神無効】

・パーシヴァル
 紅い鎧を着た槍の蒸気騎士です。

ジャベリン 攻遠範 機内に装填された槍を射出します。【三連】【スクラッチ2】
谷を貫く者 攻近単 あらゆる鎧を貫く槍の一撃。【防無】

・ガラハッド
 白い盾を持つ騎士です。

白の盾    魔味遠全 穢れなき守りが仲間を守ります。防御、魔抗上昇
ダヴィデの剣 魔近単  柄だけの剣。マナを取り込み、刃となります。

・ディンドラン
 女性を模した騎士鎧です。

血の献身 攻味遠全 血を捧げ、仲間の傷を癒します。HP回復、BS回復 自分に【致命】
聖杯の聖女 P   あらゆる病魔や呪いは彼女には届かない。【呪無】

●NPC
メアリー・シェリー(nCL3000066)
 工場への案内人としています。戦闘に参加するつもりはないようです。
「え? こんなことになるなんて思ってなかったから、人形置いてきたし」

●場所情報
 元ヘルメリア首都、ロンディアナ。そこにある工場跡。そこに用意された闘技場で戦います。マロリーノリノリだな、おい。
 戦闘開始時、敵前衛に『ガウェイン』『パーシヴァル』『ガラハッド』が、敵後衛に『ディンドラン』がいます。
 事前付与は不可。ゴングと同時に試合開始です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
4個  4個  2個  2個
13モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2020年04月22日

†メイン参加者 8人†




「プロメテウスに蒸気騎士の生みの親、か……」
 プロメテウスに色々思う所はあるのか『機神殺し』ザルク・ミステル(CL3000067)は複雑な表情をした。兵器によって故郷を失った身である故に、その兵器を生み出した人間にも何かしらの感情はある。戦力のため、と割り切ろうと頭を掻いた。
「まー、タダで蒸気騎士の技術を提供してもらえるのならそれに越したことはないな」
 うんと頷く『森のホームラン王』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。損得勘定で動くのは商人ゆえか。どうあれ戦って勝てばいいというのは解りやすい。教えてもらった円卓蒸気騎士のスペックを確認し、どう戦うかを思案していた。
「技術者として、お話がしたいですね」
『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)は工場と一体化したマロリーのことを考えていた。技術を重ね、一つの完成品に至った技術者。どれだけの努力を重ねてきたのだろうか。その話が聞けるのなら、それは今後の糧となるだろう。
「コレでアレでアレなわけか。……ヘルメリアって自由だよなぁ」
『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)は蒸気騎士の関係者を思い出しながら、苦笑する。ノリノリテーマソングのマロリー、キチキチ笑うウィリアム、うおおおおおお!なマリオン。よし、帰ろう。一瞬だけそう考えた。
「この司祭ノリノリである。まあ現状を受け入れているのはポジティブといったところか、成程ヘルメリアな思考だ!」
 最後は芝居かかった口調で『永遠のアクトゥール』コール・シュプレ(CL3000584)が口を開く。どうあれ、蒸気騎士の技術が手に入るのならそれに越したことはない。あと二回も戦うというのは少し辛くはあるが。
「そうですね。どういう形であれ、前向きなのはいいことです」
 はい、と頷く『祈りは強く』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。相手のノリはとりあえず考えない事にした。これからの戦いに向けて、選択肢が多いという事はいいことだ。散々相対した蒸気騎士の力、それに値するかどうか見極めてもらおう。
「あれが騎士か。形だけ整えればいいと思っているようだな、マロリー司祭。アダムよ、あれをどう思う?」
「何という事だ。思わず心がウキウキしてきたぞ!」
「ア、アダム?」
「はっ、この高揚感。これも蒸気騎士スキルなのか!?」
 キース・オーティス(CL3000664)の問いかけに『朽ちぬ信念』アダム・クランプトン(CL3000185)は聞いてなかったかのように拍手をしていた。騎士とは心である。あのような心のない人形など……しかしあのノリはアダムの心を凄く刺激した。
「分かっているとも、キース。ここで負けるわけにはいかない」
「そうとも、騎士としてあのような相手に負けるわけにはいかない」
 思惑はずれているが、蒸気騎士に負けるつもりはないというのは共通していた。
『それでは準備はいいかい。円卓Fight第一戦……レディィィィィィィィゴォォォォォォォ!』
 マロリーの声と同時に戦いが開始される。
 蒸気騎士と自由騎士。怨恨のない純粋な勝負が幕を開けた。


「では最初からフルスロットで行きましょう」
 戦いの一番槍はアンジェリカだ。新しく得た権能で自らを強化し、自らの力を増す。全身に力がみなぎるころには、既に相手の懐に飛び込んでいた。一手も無駄にしないその動きは、正に狐。最速で最適解を穿つしなやかな獣のように。
『断罪と救済の十字架』と『贖罪と解放の大剣』を組み合わせ、アンジェリカは敵の目の前で腰をかがめる。力を込め、全身の力を使って武器を振るった。黄金の光を放つ祈りが込められた武器が、嵐のように振るわれる。その暴風に蒸気騎士達の動きが止まる。
「初動は封じました。後はお任せします」
「そんじゃ。予定通りいかせてもらうぜ」
 アンジェリカの言葉に頷き、ウェルスが銃を構える。精密射撃を重視した改造銃。そしてそのコピー。その二つを構えながら意識を集中した。円卓の騎士の前衛は仲間が押さえる。ならば狙うべきは回復手の後衛だ。
 自己強化をしている時間は惜しい。ウェルスは狙いを定めてディンドランに向かって引き金を引いた。弾丸に込められたのは銀の魔力。魔を退け、決定打となる魔物殺しの弾丸。それを用いて蒸気騎士の動きを足止めしていく。
「動きは封じていくぜ」
「私は全員まとめて攻撃しよう。さあ、わが劇団を見よ! 円卓の騎士達よ、舞台に踊れ!」
 タンバリンを叩いてリズムを整えるコール。イ・ラプセルの自由騎士とヘルメリアの蒸気騎士。この戦いはかなりの興行になるのではないだろうか。そう考えてしまうのは演劇団の悪い癖か。ともあれ、面白くなってきたと笑みを浮かべる。
「さあ、ここは『迷惑舞唱』の出番だ! 迷いて惑え、円卓の騎士たちよ!」
 言って楽器を打ち鳴らすコール。音に魔力を乗せ、声に意味を乗せる。二重の音が重なり合い、合わせ絵のように意味をなして一つの結果となる。音の魔力が声の意味を受け取り、複雑怪奇な迷宮となって蒸気騎士達の足を止めた。
「我が舞台は予測不能の迷宮なり! さあさ、騎士達よ。その勇をもって迷いを打ち払え!」
「怪我人は、お早く治しますので」
 杖を手にたまきが仲間に声をかける。技術者として、ヒーラーとしてここに立つたまき。蒸気騎士の技術力は素晴らしいと思うが、その兵器が仲間に向けられて傷ついていくと思うと複雑ではあった。
 勿論、それを理由に回復の手を止める事はない。呼吸を整えて大気中のマナを取り入れ、体内で癒しの力に還元してから解き放つ。体内で純化された癒しの力が大気を伝って仲間に宿り、体内から悪影響に対する抵抗力を増していく。
「皆さん、頑張ってください」
「あいあい。適当に頑張りますよー」
 ひらひらと手を振るニコラス。マロリーのいう事が本当なら、戦いはこれが序盤だ。今ここで全力を出して後半に倒れてしまっては意味がない。全力を出すタイミングを見計らわなくては――と理由をつければサボっていいかな、と考えて却下されそうだと諦めた。
 たまきが回復する相手を見てから、ニコラスも回復の相手を選ぶ。傷が深くて倒れそうな仲間を優先的に選び、魔力を解き放つ。放たれた癒しの魔術が仲間に降り注ぎ、蒸気騎士から受けた傷を癒していく。
「ま。おじさんが一番倒れそうなんだけどね」
「俺達も回復優先で狙うからな」
 ニコラスの言葉に苦笑するザルク。戦略上、回復を断つのが一番効率のいい戦い方だ。こちらはそれを行うが、相手にそれをしないでくれ、というのは都合のいい話である。この戦いは殺し合いではないが、それでも手を抜くつもりはなかった。
 トリガーに手をかける。それだけでザルクの心は静かに鋭くなっていく。呼吸するように相手に標準を合わせ、構えて足場の安定を感じると同時に引き金を引く。右と左、両方の引き金を交互に引き、蒸気騎士の装甲を穿っていく。
「簡単には崩れないか。やれやれ厄介だな」
「流石は蒸気国家が誇った最新の武装。放置する手はないな」
 蒸気騎士の一体と切り結びながらキースは笑みを浮かべる。かつてヘルメリア攻略時に相対した蒸気武装。その技術が手に入ると言うのならそれは願ったりだ。イ・ラプセルの為に。そして自由騎士の為に。
 瞳に魔力を込め、認識能力を高める。同時に刃を振るい、手数で相手を押し切っていく。一撃のパワーではなく、数の戦術。キースは一撃一撃に思いを込め、その想いを伝える為に踏み込んでいく。ヒトの心は、不屈であると。
「アダム、防御は任せたぞ」
「了解した、わが友キース! 我が名は自由騎士アダム・クランプトン! 我、全てを守る盾とならん!」
 名乗りを上げ、蒸気騎士達――というよりはマロリーの注意を引くアダム。相手がヘルメリアの技術の粋を集められた円卓蒸気騎士なら、こちらは艱難辛苦に全身全霊で挑む信念の騎士。そこに貴賎はないが、かといって負けるつもりもない。
 視界は広く、そしてそして心は熱く。仲間の位置を常に把握し、多くを守れるように立ち挑むアダム。蒸気騎士の槍と刃を受け流し、同時に相手の侵攻も食い止める。痛みを堪えながら、しかし気丈に笑みを浮かべていた。
「ダンダンダーン、ダダッダー! ゆくーぞー、僕らはー、自由騎士ー♪」
 それにしてもこの騎士、ノリノリである。いや、マロリーもなんだが。
 ぶつかり合う自由騎士と円卓騎士。鋼同士が重なり合い、魔力がカタチとなって振るわれる。
 二種類の騎士の戦いは、少しずつ終局に向かっていく。


 円卓蒸気騎士はガウェイン、パーシヴァル、ガラハッドを前衛にして後衛のディンドランを守るような陣形を組んでいる。ガラハッドが守りに入り、ガウェインとパーシヴァルが攻撃。ディンドランが回復と言った構成だ。
「流石、伊達はありませんね」
「心なくとも、騎士と名乗るだけのことはあるか」
「見るがいい円卓蒸気騎士、これが自由騎士の意地だ!」
 前衛に立つアンジェリカ、キース、がフラグメンツを削られていた。アダムも集中砲火を受けるが、不屈の精神で立ち上がる。
 無論、自由騎士達もやられっぱなしではない。相手の陣形を崩すように動き、同時に自らの利点を生かすように攻め立てていた。
「おやおやおや? 女をバカスカと撃たれるなんて、円卓の騎士道なんて所詮はこの程度か」
 マロリーを挑発するように悪役風に大仰に叫ぶウェルス。そのままディンドランに弾丸を叩き込んでいく。
『いいね、そういうの大好き! あ、ごめん、素に戻ってた』『おのれ、そこまで言われて騎士として黙ってられん! このガウェインの太陽の剣を喰らうがいい!』
 ウェルスの挑発にガウェインの剣がうなり、奮われる。鋭い一撃がウェルスのフラグメンツを削るが、相手の意識は引けたようだ。
「出来ればパーシヴァルの範囲攻撃を俺一人に向けてほしかったが……まあいいさ」
「予想以上に、籠手が硬いですね……!」
 アンジェリカはパーシヴァルの手を狙い、武器を叩き落とそうとしていた。だが針を通す程の射撃で正確に手を狙っても、機械の籠手は痛みを感じないのか落とす様子はない。仕方なく断念し、攻撃に移る。
「さあ、ガラハッド! 共に守りの騎士同士打ち合おうじゃないか!」
『良かろう。この聖なる白盾にかけて汝に打ち勝つ!』
 白い盾を持つ蒸気騎士を挑発し、一騎打ちを挑むアダム。守りを崩すことは戦略上優位ではある。だがそれよりも、同じ守りを重視する騎士として戦い方を参考にしたい所もあった。その心をくみ取ったのか、ガラハッドは剣先を向けてアダムに挑む。
「太陽を撃ち落とさせてもらうよ!」
『馬鹿な、五月の守りを砕くとは!?』
 加護を受けたガウェインに向けて、コールが矢を放つ。魔術で構成された非実体の矢。魔術で覆われたヴェールをはがし、真実を暴き出す解呪の一閃。それがガウェインの加護を撃ち砕き、宙に浮いていた騎士を地に堕とす。
「しかしとんでもない性能だな。天才とナントカは紙一重、か」
 弾倉を交換しながらザルクが唸る。ヘルメリアで蒸気騎士と相対し、その性能は身に染みて知っている。それを生み出した発明者には個人的に思う所はあるが、蒸気騎士自体の性能は侮れない。気を抜いている余裕はない、と自らに活を入れて銃を構える。
「はい。次はそちらですね。すぐに癒します」
 円卓蒸気騎士の火力に比例するように、回復役のたまきの忙しさが増していく。消耗していく体内の魔力を意識しながら、背筋を伸ばして癒しの術を解き放つ。呼吸を整えながら状況を把握し、次の行動を予測していく。
「円卓の蒸気騎士、たしかに強い。だが、卿らの剣は軽い!」
『我が槍を愚弄するか。ならば汝らの剣を見せてみよ!』
 パーシヴァルと切り結びながらキースが口を開く。騎士とは民と共にある。民の想いを受けて戦うからこそ、騎士の剣は重いのだ。円卓蒸気騎士に従う民はいない。形だけの騎士の剣など、取るに足らない。
「発明品自慢をしたいタイプにしてはましな方かな。あいたたた……!」
 パーシヴァルの槍を受けて脱力するニコラス。倒れた相手を攻撃しないのはマロリーの性格からか。ヘルメリアの科学者としてはましな性格だろう。酷い相手になると、動けなくなった相手を捕らえ、自らの研究材料にするのもいるのだから。そうなれば、生きて日の目は見られない。
 円卓蒸気騎士の陣形はアダムとウェルスにより崩れ、そこを突く形で自由騎士は攻勢に出る。ディンドランが機能停止してからは円卓蒸気騎士のダメージが蓄積し、少しずつ追い込まれていく。
「マロリー司祭よ知るがいい、これが自由騎士! 人間の力なんだぁぁぁぁぁぁぁ!
『蒸気変形・連射の型』!」
 最後まで立っていたガウェインに向き直るアダム。魂を振り絞るように声ををあげ、裂帛と共に兵装を開放する。蒸気を輩出しながら弾丸を撃ち放ち、戦場を圧倒していく。
『まさか太陽の剣が堕ちるとは……。見事、騎士アダム!』
 その言葉と共にガウェインが倒れ、自由騎士の勝利を示す鐘が鳴り響いた。


 戦いが終わり、サポートできていたマザリモノの錬金術師が傷を癒していく。
「そういえば……ヘルメスの紋章はもうないんだっけ……?」
「ええ。ヘルメスの死後、きれいさっぱりなくなったわ」
 メアリーとそんな話をしていたとか。
『すごいねー! ヘルメスを倒したとは聞いてたけど、ここまですごいとは!』
 勝利した自由騎士達に惜しみない勝算を送るマロリー。
「なんだ? 自分の発明品が壊されて悔しいとかないのか?」
『なんで? 失敗を分析して次の発明に活かせばいいだけじゃない』
 ウェルスの問いにそんな答えを返すマロリー。失敗すればまた次。そうやって発明家は次に進んでいk――
『それに敗けた後にパワーアップとかかっこいいじゃん。そうだなー。今度は槍をもう少し長くして光を放つようにして――』
 まあ、こういう側面の方が強いようだが。
「そうだね! ところで円卓蒸気騎士達と写真とかとっていいかな!」
 目を輝かせるアダム。この手のノリがアダムの心にストライクだったらしい。
『魂燃やせー♪』
「騎士の道ー♪」
 そして意気投合したマロリーと合唱を行うアダムであった。
「どうやら、第一の戦いは制したらしいな。お気に召しましたか、マロリーさん」
『うんうん! 直で戦いを見れて満足したよ』
 キースの言葉に首肯の言葉を返すマロリー。勝ち負けではなく戦いそのものが好きなようだ。かといって、手を抜いてくれるわけでもないのだろうが。
「遠隔操作で蒸気騎士を動かすって……ドールマイスターで動かせるんじゃないか、メアリー?」
「無理。お互い鍵を持ってるけど、円卓蒸気騎士を動かす専用の鍵はマロリー司祭しか持ってないって思って」
 そんなもんか、とザルクは頷く。もし動かせるなら楽にはなるのだが、そこまでうまい話ではないようだ。
「非力な人間でも鎧を動かせるシステムの延長なんだろうけど……着る蒸気兵器ってコンセプトらしいから」
「成程……。それを使えば子供でも中からコントロールできるようにできるわけですね……凄いです」
 メアリーの考察に頷くたまき。高重量の蒸気鎧を着こむ蒸気騎士。扱える人間は多くはないと思っていたが、そのような構造になっていたのかと納得した。
(つーことは、子供でも戦争に参加させられるって事か。……厄介だねぇ)
 心の中で呟き、ため息をつくニコラス。思い出すのは先日水鏡で得た情報。ヴィスマルクにウィリアムが亡命した話。鉄血主義のあの国が、効率的な兵器運用をしないわけがない。あーやだやだ、と頭を掻いた。
「円卓を模した方々との戦いですか……これは、長い戦いになりそうですね」
 武器を収め、一息つくアンジェリカ。騎士物語の代表ともいえる円卓騎士団。その強さを蒸気機関で再現しているのだと思うと、戦いは容易ではない。それを自らに刻み、気合を入れる。
「さて第二幕だ。次は如何なる騎士が我が道を阻むのだろうか!」
 そのまま一礼しそうな雰囲気のコールである。だがカーテンコールにはまだ早い。円卓蒸気騎士は後八名いるのだから。
『そうだね。次はトリスタン卿、パロミデス卿、ガレス卿、ディナダン卿の四人だよ。
 おおー、その矢は必中ー。そして二本の槍と美しきハーブ♪』
 歌うマロリー。その言葉と共にスポットライトが上がり、新たな円卓蒸気騎士が地面からせり上がってくる。
 円卓蒸気騎士三本勝負、第二戦、開幕――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

荒野に嘆きが響く時、悪鬼が跋扈する時代!
罪なき人が俯き、悪魔が微笑むそんな時ィ!
遠い異国の島国から、自由を掲げし騎士達が現れたァ!

次回『【円卓の騎士】Knuckle! これが女神のワンツーブロウ!』

(注意!:シナリオのタイトルは予定なく変更される可能性があります)
FL送付済