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DoubleDummy! 裏の裏さえ裏なりし!

●
1890年12月、イ・ラプセルはパノプティコン攻略の前準備として墓地4133を占拠。
この地自体に軍事的な拠点はなく、戦術的な意味は高くない。故にパノプティコンも多く兵を置かず、十数名単位を駐屯させていたに過ぎなかった。イ・ラプセルがこの地を占拠した時も、さほど驚きはなかったと言う。
だが、この地に一瞬で大量の騎士を派兵できるとなればどうだろうか?
聖霊門。そう呼ばれる大規模魔術。それがそこに建てられていた。かつてシャンバラ内部に一気に兵を送り込んだ魔術。それがそこにあるのだ。
故にパノプティコンは警戒せざるを得まい。本来の軍事拠点である港町3356と、墓地4113の両方に。現状は港町3356に軍が駐留しているが、ノータイムで全軍を墓地4133に移動し、そこからパノプティコンの拠点を攻めることが出来るのだ。
迂闊に攻めに出ることはできない。しかし手をこまねいているわけにはいかない。せめてどちらから攻めてくるかが分からなければ、不意を突かれてしまう。戦いにおいて『待ち』が有利な状況は多くないのだから。
イニシアティブは、イ・ラプセルが握っている。そしてイ・ラプセルの次の一手は――
●
「港町3356から攻める」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は作戦開始直前にそう言い放つ。
「聖霊門は使わないのか?」
「使用しない。そもそも墓地4133に設置したのは聖霊門に似せたダミーだ。悪用されて港町3356に攻められても困るしな」
唖然とする自由騎士を前にフレデリックは作戦のキモを説明する。
「この作戦はフェイントだ。『相手にどう攻めるかを迷わせ』た挙句、真正面から攻める。こちらが握った主導権を最後まで手放さず、一気に攻め入る」
「しかし、パノプティコンもそれぐらいは予想しているんじゃないか」
「うむ、だからもう一手打つ。ドナー基地で使った『アルタイル』を使う」
フレデリックは指一本立てて、そう告げた。
『アルタイル』……自由騎士が発案した強襲目的の飛行船である。視覚や聴覚などのステルス機能を有し、そこから兵を投下して強襲するのが目的だ。船自体に攻撃力はなく、装甲も高くはないので戦闘行為には向かない。
「成程、アルタイルを使って敵陣に直接兵を――」
「送り込まない。『アルタイル』の強襲もダミーだ。程度は不明だがドナー基地での戦いは相手も知っているだろうし、蒸気ドローンの監視も空をカバーしているだろう。
聖霊門とアルタイル。二つの『切り札』を囮とした正面衝突だ」
二重三重の策を練り、それら全てが本命の煙幕。
あまりと言えばあまりの作戦に、自由騎士の反応は様々だ。分かりやすい作戦に頷く者。非効率だとため息をつく者。ここまでしておいてそれかと肩透かしを食らう者。あまりのばかばかしさに大笑いする者――
だが、作戦内容に反対する者はいない。どうあれこれは神の蟲毒を進める為の一手なのだから。
パノプティコン軍事拠点、基地2091。ここを押さえれば、パノプティコン首都の地域1155は射程圏内だ。
イ・ラプセルとパノプティコン。両国の戦いは一つの正念場を迎えていた。
1890年12月、イ・ラプセルはパノプティコン攻略の前準備として墓地4133を占拠。
この地自体に軍事的な拠点はなく、戦術的な意味は高くない。故にパノプティコンも多く兵を置かず、十数名単位を駐屯させていたに過ぎなかった。イ・ラプセルがこの地を占拠した時も、さほど驚きはなかったと言う。
だが、この地に一瞬で大量の騎士を派兵できるとなればどうだろうか?
聖霊門。そう呼ばれる大規模魔術。それがそこに建てられていた。かつてシャンバラ内部に一気に兵を送り込んだ魔術。それがそこにあるのだ。
故にパノプティコンは警戒せざるを得まい。本来の軍事拠点である港町3356と、墓地4113の両方に。現状は港町3356に軍が駐留しているが、ノータイムで全軍を墓地4133に移動し、そこからパノプティコンの拠点を攻めることが出来るのだ。
迂闊に攻めに出ることはできない。しかし手をこまねいているわけにはいかない。せめてどちらから攻めてくるかが分からなければ、不意を突かれてしまう。戦いにおいて『待ち』が有利な状況は多くないのだから。
イニシアティブは、イ・ラプセルが握っている。そしてイ・ラプセルの次の一手は――
●
「港町3356から攻める」
『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は作戦開始直前にそう言い放つ。
「聖霊門は使わないのか?」
「使用しない。そもそも墓地4133に設置したのは聖霊門に似せたダミーだ。悪用されて港町3356に攻められても困るしな」
唖然とする自由騎士を前にフレデリックは作戦のキモを説明する。
「この作戦はフェイントだ。『相手にどう攻めるかを迷わせ』た挙句、真正面から攻める。こちらが握った主導権を最後まで手放さず、一気に攻め入る」
「しかし、パノプティコンもそれぐらいは予想しているんじゃないか」
「うむ、だからもう一手打つ。ドナー基地で使った『アルタイル』を使う」
フレデリックは指一本立てて、そう告げた。
『アルタイル』……自由騎士が発案した強襲目的の飛行船である。視覚や聴覚などのステルス機能を有し、そこから兵を投下して強襲するのが目的だ。船自体に攻撃力はなく、装甲も高くはないので戦闘行為には向かない。
「成程、アルタイルを使って敵陣に直接兵を――」
「送り込まない。『アルタイル』の強襲もダミーだ。程度は不明だがドナー基地での戦いは相手も知っているだろうし、蒸気ドローンの監視も空をカバーしているだろう。
聖霊門とアルタイル。二つの『切り札』を囮とした正面衝突だ」
二重三重の策を練り、それら全てが本命の煙幕。
あまりと言えばあまりの作戦に、自由騎士の反応は様々だ。分かりやすい作戦に頷く者。非効率だとため息をつく者。ここまでしておいてそれかと肩透かしを食らう者。あまりのばかばかしさに大笑いする者――
だが、作戦内容に反対する者はいない。どうあれこれは神の蟲毒を進める為の一手なのだから。
パノプティコン軍事拠点、基地2091。ここを押さえれば、パノプティコン首都の地域1155は射程圏内だ。
イ・ラプセルとパノプティコン。両国の戦いは一つの正念場を迎えていた。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.【門扉前】の制圧
どくどくです。
仕込みに仕込んで真正面。実はどくどく決戦で正面突破ってはじめてじゃね?
この依頼は『End of Edge! 例え勝利に届かずとも!』と同時期に行われています。その為両依頼に同時参加されていた場合、上記シナリオの依頼参加権利を剥奪させていただきます。
依頼料の返金などはできませんので、ご了承ください。
●敵情報
作戦内容は基地2091を陣取るパノプティコン軍。それを打ち倒し、門扉を開く形です。
各軍は互いをサポートし、それらを打ち倒すことで基地がせめやすくなる形になります。
パノプティコン軍は『相互管理』と『一糸連携』と呼ばれる権能を有しています。
相互管理:権能を活性化している者同士は互いの状態が分かり、意思疎通も可能になる。ジャミングなどで妨害されなません。
一糸連携:権能を活性化している者同士が同一ターンに同じスキル(レベルも同じ)を使った場合、それぞれの命中にプラス補正。
【重歩兵】
パノプティコン軍重歩兵部隊です。盾を持ち一糸乱れぬ動きで陣を組み、自由騎士達を迎え撃ちます。防御タンク五割、重戦士三割、軽戦士二割。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
それぞれランク2までのスキルを使ってきます。
連携を取ることで精度を増しています。逆に言えば、数が減るほどその脅威は少なくなっていきます。その為、全体攻撃で少しずつ削るよりも、単体攻撃で各個撃破していく戦術が望まれます。
充分にこちらを廃しなければ、【門扉前】に居る敵に与える物理ダメージが半減します。
・『鉄塊』将軍2091
ノウブル。35才男性。重戦士。巨大な鉄のハンマーを手にしています。
国家を守るために、退くことはありません。ランク3までの重戦士スキルを使ってきます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
EXスキル『鉄塊』を使用します。
・鉄塊(EX) 攻近単 ただ単純に、武器をまっすぐに振り下ろします。高火力。
・『蛇剣』兵士0081
ケモノビト(ヘビ)。20歳女性。軽戦士。ランク3までの軽戦士スキルを使ってきます。しなるような細い剣を使ってきます。引き際を感じれば逃亡を考えます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
遊撃隊として、隙あらば後衛を狙ってきます。
【魔導兵】
パノプティコン軍魔導兵です。魔術の結界を維持しながら、自由騎士達を攻めてきます。魔導士四割、防御タンク三割、錬金術師二割、ヒーラー一割。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
それぞれランク2までのスキルを使ってきます。
連携を取ることで精度を増しています。逆に言えば、数が減るほどその脅威は少なくなっていきます。その為、全体攻撃で少しずつ削るよりも、単体攻撃で各個撃破していく戦術が望まれます。
充分にこちらを廃しなければ、【門扉前】に居る敵に与える魔導ダメージが半減します。
・『星詠』導師0021
ソラビト。200才男性。白髭白翼のおじいちゃんです。パノプティコン魔導軍の長です。国家を守るために引くことはありません。ランク3までの魔導士スキルを使ってきます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
EXスキル『星詠』を使ってきます。
星詠(EX) 魔味全 星辰を司り世界の一部を垣間見ることで、心の備えを生む。【精耐】
・『白蛇』医師0081
ケモノビト(ヘビ)。。20歳男性。ヒーラー。杖を持ち、仲間を癒していきます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
引き際を感じれば逃亡を考えます。ランク3までのヒーラースキルを使ってきます。
【門扉前】
基地2091の門扉です。パノプティコン側の最終防衛ラインにして、イ・ラプセルの突破目的でもあります。ここを制圧することが、この決戦の目的となります。
兵力は物理魔導ごった煮です。重戦士三割、魔導士三割、防御タンク二割、ヒーラー二割。
それぞれランク2までのスキルを使ってきます。
パノプティコンも天王山である事を理解しているのか、最大戦力をこちらに投入しています。
・『パノプティコン国王』 王族1687
パノプティコンのハイオラクル。現在の国王です。魔導の炎と物理の炎の二種類を状況に応じて使い分けています。状況悪化を感じれば、撤退します。この国で唯一、大陸共通語での会話は可能です。最も、説得は意味を成しませんが。
攻撃方法
乾燥高原 攻遠範 水分を奪う乾いた炎風。【致命】【バーン3】
溶岩創竜 魔遠全 魔を喰らいつくす竜の炎。【魔力流転】【バーン2】
王の管理 遠味全 国民すべてを管理する王の采配。攻撃、魔導、防御、魔抗上昇。
・ノスフェラトゥ兵
王族を護る護衛兵です。ノスフェラトゥと呼ばれる青肌の種族です。防御タンク。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。ランク2までのスキルを使ってきます。
『不死性』を持ち、王族を守ることを最優先に動きます。
不死性:P HPが0になった時、一度だけ必殺を無効化してHPを全快します。
・『骸骨』騎士0900
ドクロの仮面をつけた格闘家です。格闘スタイル。ノウブル。150歳男性。格闘スタイルのランク3までのスキルを使ってきます。
大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
●フィールド条件
同時進行でイ・ラプセル軍の弾薬及び司令部に襲撃を受けています。
依頼『End of Edge! 例え勝利に届かずとも!』が失敗判定だった場合、弾薬や医療器具などの運搬が滞り、10ターン目以降イ・ラプセル軍全員に解除不可の【HPロス150】【MPロス150】がかかります。
●場所情報
パノプティコン領『基地2091』、時刻は夕刻。時刻は夕刻。足場や広さは戦闘に支障はありません。
便宜上、戦場を【重歩兵】【魔導兵】【門扉前】の3区画に分けます。プレイング、もしくはEXプレイングに行き場所を記載してください。書かれていない場合、孤立して狙われることになります。
他戦場への移動は可能です。ただし連戦になるので重傷率は高まります。
●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
仕込みに仕込んで真正面。実はどくどく決戦で正面突破ってはじめてじゃね?
この依頼は『End of Edge! 例え勝利に届かずとも!』と同時期に行われています。その為両依頼に同時参加されていた場合、上記シナリオの依頼参加権利を剥奪させていただきます。
依頼料の返金などはできませんので、ご了承ください。
●敵情報
作戦内容は基地2091を陣取るパノプティコン軍。それを打ち倒し、門扉を開く形です。
各軍は互いをサポートし、それらを打ち倒すことで基地がせめやすくなる形になります。
パノプティコン軍は『相互管理』と『一糸連携』と呼ばれる権能を有しています。
相互管理:権能を活性化している者同士は互いの状態が分かり、意思疎通も可能になる。ジャミングなどで妨害されなません。
一糸連携:権能を活性化している者同士が同一ターンに同じスキル(レベルも同じ)を使った場合、それぞれの命中にプラス補正。
【重歩兵】
パノプティコン軍重歩兵部隊です。盾を持ち一糸乱れぬ動きで陣を組み、自由騎士達を迎え撃ちます。防御タンク五割、重戦士三割、軽戦士二割。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
それぞれランク2までのスキルを使ってきます。
連携を取ることで精度を増しています。逆に言えば、数が減るほどその脅威は少なくなっていきます。その為、全体攻撃で少しずつ削るよりも、単体攻撃で各個撃破していく戦術が望まれます。
充分にこちらを廃しなければ、【門扉前】に居る敵に与える物理ダメージが半減します。
・『鉄塊』将軍2091
ノウブル。35才男性。重戦士。巨大な鉄のハンマーを手にしています。
国家を守るために、退くことはありません。ランク3までの重戦士スキルを使ってきます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
EXスキル『鉄塊』を使用します。
・鉄塊(EX) 攻近単 ただ単純に、武器をまっすぐに振り下ろします。高火力。
・『蛇剣』兵士0081
ケモノビト(ヘビ)。20歳女性。軽戦士。ランク3までの軽戦士スキルを使ってきます。しなるような細い剣を使ってきます。引き際を感じれば逃亡を考えます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
遊撃隊として、隙あらば後衛を狙ってきます。
【魔導兵】
パノプティコン軍魔導兵です。魔術の結界を維持しながら、自由騎士達を攻めてきます。魔導士四割、防御タンク三割、錬金術師二割、ヒーラー一割。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
それぞれランク2までのスキルを使ってきます。
連携を取ることで精度を増しています。逆に言えば、数が減るほどその脅威は少なくなっていきます。その為、全体攻撃で少しずつ削るよりも、単体攻撃で各個撃破していく戦術が望まれます。
充分にこちらを廃しなければ、【門扉前】に居る敵に与える魔導ダメージが半減します。
・『星詠』導師0021
ソラビト。200才男性。白髭白翼のおじいちゃんです。パノプティコン魔導軍の長です。国家を守るために引くことはありません。ランク3までの魔導士スキルを使ってきます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
EXスキル『星詠』を使ってきます。
星詠(EX) 魔味全 星辰を司り世界の一部を垣間見ることで、心の備えを生む。【精耐】
・『白蛇』医師0081
ケモノビト(ヘビ)。。20歳男性。ヒーラー。杖を持ち、仲間を癒していきます。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
引き際を感じれば逃亡を考えます。ランク3までのヒーラースキルを使ってきます。
【門扉前】
基地2091の門扉です。パノプティコン側の最終防衛ラインにして、イ・ラプセルの突破目的でもあります。ここを制圧することが、この決戦の目的となります。
兵力は物理魔導ごった煮です。重戦士三割、魔導士三割、防御タンク二割、ヒーラー二割。
それぞれランク2までのスキルを使ってきます。
パノプティコンも天王山である事を理解しているのか、最大戦力をこちらに投入しています。
・『パノプティコン国王』 王族1687
パノプティコンのハイオラクル。現在の国王です。魔導の炎と物理の炎の二種類を状況に応じて使い分けています。状況悪化を感じれば、撤退します。この国で唯一、大陸共通語での会話は可能です。最も、説得は意味を成しませんが。
攻撃方法
乾燥高原 攻遠範 水分を奪う乾いた炎風。【致命】【バーン3】
溶岩創竜 魔遠全 魔を喰らいつくす竜の炎。【魔力流転】【バーン2】
王の管理 遠味全 国民すべてを管理する王の采配。攻撃、魔導、防御、魔抗上昇。
・ノスフェラトゥ兵
王族を護る護衛兵です。ノスフェラトゥと呼ばれる青肌の種族です。防御タンク。大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。ランク2までのスキルを使ってきます。
『不死性』を持ち、王族を守ることを最優先に動きます。
不死性:P HPが0になった時、一度だけ必殺を無効化してHPを全快します。
・『骸骨』騎士0900
ドクロの仮面をつけた格闘家です。格闘スタイル。ノウブル。150歳男性。格闘スタイルのランク3までのスキルを使ってきます。
大陸共通語での会話は不可です。言葉が通じても、説得には応じません。
●フィールド条件
同時進行でイ・ラプセル軍の弾薬及び司令部に襲撃を受けています。
依頼『End of Edge! 例え勝利に届かずとも!』が失敗判定だった場合、弾薬や医療器具などの運搬が滞り、10ターン目以降イ・ラプセル軍全員に解除不可の【HPロス150】【MPロス150】がかかります。
●場所情報
パノプティコン領『基地2091』、時刻は夕刻。時刻は夕刻。足場や広さは戦闘に支障はありません。
便宜上、戦場を【重歩兵】【魔導兵】【門扉前】の3区画に分けます。プレイング、もしくはEXプレイングに行き場所を記載してください。書かれていない場合、孤立して狙われることになります。
他戦場への移動は可能です。ただし連戦になるので重傷率は高まります。
●決戦シナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼相当です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『アクアディーネ(nCL3000001)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
皆様からのプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
5個
5個
3個
3個




参加費
50LP
50LP
相談日数
9日
9日
参加人数
32/∞
32/∞
公開日
2021年01月30日
2021年01月30日
†メイン参加者 32人†
●
鬨の声が響き、武器がぶつかり合う音が響きあう。
戦争。それを思わせる空気が周囲を支配していた。
「対話も捕虜もなしなら、すり潰していくだけだな」
『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は言って武器を構える。国の方針で大陸共通語を喋れないパノプティコンの国民とは話し合うことが出来ず、デウスギアの効果で捕虜にすることもできない。ならば取るべき手段は一つだ。
「そらよ! コイツを喰らいな!」
拳銃を手にして戦場を進むウェルス。迫るパノプティコンの兵士に銃口を向け、躊躇なく引き金を引いた。着弾を確認し、目の端で倒れたことを確認した後に更に走る。経験とそして持ち前の慎重さ。それが確実に結果を生み出していく。
「アイツはカウンターの気配がするな。ならこっちだ」
「…………」
黙々と仲間を癒し続けるフロレンシス・ルベル(CL3000702)。一歩引いた場所に立ち、仲間の様子を見ながら傷を癒していく。アクアディーネに受け入れられた恩に報いるために、仲間の自由騎士達を助けるために戦火に挑む。
「…………」
爆風が戦場を撫でる。フロレンシスの白い髪が大きく揺れた。それを押さえる事をせず、ただ仲間を癒すことのみに集中する。ここで手を止めるわけにはいかないと動かぬ表情で示し、虹色の瞳で戦場で戦う仲間達を見る。
「ありがとね! それじゃあ、ガンガン行くわよ!」
回復を受けた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は手甲を装着してパノプティコン兵士に挑む。練度の高い兵士達を前に防御の構えを取り、その構えを維持しながら拳を振るっていく。
「ここに居る兵士達を削り切って、門の戦いを有利にしないと!」
連携を取るパノプティコン兵士達。彼らの動きを断つために、ここに陣取る兵士達を早く倒さなければならない。その為に前のめりになって戦うエルシー。道は仲間達が開いてくれる。それを信じて今は拳を振るうだけだ。
「さあ、かかってきなさい! 言葉は通じなくても意味は分かるでしょう!」
「せやなあ。口にせんでもわかるやろ?」
『鬼神楽』蔡 狼華(CL3000451)は蛇のようにしなる剣を持つ兵士を前にして笑みを浮かべる。戦場の空気は熱く、互いの視線は鋭い。呼吸するだけでも相手の戦意が体内に入りそうな状況だ。ただ静かに、二人はにらみ合う。
「――――しっ!」
動いたのはどちらが先か。或いは同時か。兵士の剣が不規則に揺れながら狼華に迫る。だが踏み込む兵士の動きは狼華の予測範囲内。円を描くように足を動かして突きを回避し、回転の勢いを殺さぬように刃を振るう。
「おもろい剣やけど、姉さんに個性がないわ。画一された動きはつまらんで」
「回復が要らない人は言ってくださいねー」
リィ・エーベルト(CL3000628)は言いながら仲間を癒していく。戦うスタイルによっては体力が低い方が有利な場合もある。相違撃った人を考慮しての問いかけだ。基本的には倒れそうな人を優先してリィは仲間を癒していく。
「一人ずつ確実に、っと」
回復に余裕が生まれれば、リィも攻撃の余裕が出来る。精霊に攻撃を頼み、パノプティコン兵士に襲わせた。凍てつく山の精霊が冷気を吹き出し、相手の体力を奪うと同時に動きを拘束していく。
「マザリモノを敵に回すと怖いぞー!」
自由騎士達の攻勢が、少しずつパノプティコンの牙城を崩していく。
●
魔力の炎が交差し、それを弾く魔力の壁が光る。
魔導兵。そう呼ばれる軍隊が展開する陣に挑む自由騎士達。
「我がシルヴァネール家は魔導により栄えし家系……ならばパノプティコン魔導兵と魔導勝負しかないでしょう!」
『水銀蛇と共に』クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)は『冥王鎌タルタロス』を手にパノプティコンの魔導兵の前に立つ。国家を支える魔導兵相手なら相手にとって不足なし。そのまま魔力を練り上げていく。
「黄昏の灯より生まれし羽根を広げ、天高く舞い上がれぇ! 全てを燃やせ、大精霊トワイライトフェニックス!」
服装も含めて見た目も動作も道化師のようなクレヴァニールだが、編み出す魔力は一級品の魔術師。インディオの祈祷師でも簡単には呼び出せない火の鳥を呼び、敵兵を焼き払う。業火の後に、ポーズを決めるクレヴァニール。
「インディオより伝授されしこの技術(わざ)で……この地をパノプティコンから解放してみせましょう!」
「でもパノプティコンの神様がいなくなったら、この人達はどうなるんだろう?」
『祈りは歌にのせて』サーナ・フィレネ(CL3000681)は剣を振るいながらそんなことを思っていた。管理されることが当然と言うパノプティコンの国民達。それが突然自由を得たとして、生きていけるのだろうか?
(……それは今考えることじゃない、よね?)
サーナはかぶりを振って、その考えを頭の中から打ち消す。今は剣を振るう時だ。盾を構える防御タンクに向かい突撃し、エストックを構える。胸元で固定し、腕を突き出すようにして剣の先を敵に突き刺す。速度と手数。それがサーナの武器。
「殺しはしないですから、大人しくしてください」
「ドドーンとやりたいですけど、半端に残ると厄介なんですよねぇ~」
不満げに呟く『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。パノプティコンの兵士達は全員が連携して動く。全員まとめて倒せるなら大火力で押すのもありだが、そうでないなら確実に数を減らす方が望まれる。厄介だけど、大魔術は控えよう。
「でもでもぉ~。チームワークはこちらも負けていませんからぁ~」
権能での繫がりこそないが、協力して戦う事は自由騎士の十八番だ。互いが互いの役割を理解し、それに準じて戦う。いってシェリルは仲間を護るために魔力を解き放つ。魔力は壁となり、仲間達を護る盾となる。
「アデルさ~ん、行きますよ~」
「感謝する。さあ、ここからは正面突破だ。進め!」
シェリルの援護を受けた『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が鬨の声をあげる。槍を手に敵陣を突き進み、そして兵士達を攻め立てる。相手の言葉は理解できないがこの状況だ。言葉なくとも意図は伝わる。
「語るまでもない。これが戦争だ。互いの国家をかけて雌雄を決する時だ」
国を想う心。仲間を守ろうとする心。それはパノプティコンも持っているのだろう。故に必死に戦い、故に刃を振るう。アデルはそれを理解したうえで、敵兵を打ち破っていく。他者を踏み抜き勝利を得る。それが戦争なのだ。
「武器を持って戦場に立つ以上、加減はしない。共に国を護る覚悟あり。その覚悟を俺は軽視しない」
傭兵として自由騎士として、この戦火の時代を生きる人間としてアデルは槍を振るう。
それ皆同じこと。戦場に立つ者達は、互いの信念を胸に戦っていた。
●
基地2091の門扉。この軍事基地の最終防衛ライン。
策によりパノプティコン兵を困惑させた自由騎士達はそこにたどり着く。
「巡り巡って力押しとはな」
『現実的論点』ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)は呆れるように呟く。策を重ね、最後の最後は真正面からの力押し。それを悪いと言うつもりは毛頭ない。どうあれ国のために戦わねばならないのだ。
「チェックメイトを行うにしても、道筋は必要だろう」
いってライモンドは門扉に集うパノプティコン兵士を攻撃する。王族をいきなり狙うのは難しい。何よりも王と語らうのは戦時ではなく戦後だ。今はこの場を制することに注力するのみだ。
「パノプティコンには苦手意識があるんですよね」
ため息と共に『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)が呟く。権能で互いの意思疎通を行い、連携を取ってくる。その練度も高いことが厄介だ。とはいえ戦わないと言うわけにはいかない。泣き言を言って相手が権能を控えるわけがないのだ。
「ともあれ数を減らしましょう。連携する数が減ればなんとかなります」
マリアは言って魔力で冷気を形成し、氷の弾丸を撃つ。攻撃に気付いたパノプティコン兵士が防御の構えを取るが、構わず氷を解き放つ。幾多の戦いを超えてきたマリアの魔力は、防御されてもなおパノプティコン兵士を低温の檻に閉じ込める。
「長丁場になりそうですね。魔力補給も行わなくては」
「こういうのは嫌いやないで」
正面突破。その言葉に『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は頷いた。策を弄して勝利するのも悪くはないが、こういう力と力のぶつかり合いは分かりやすくてスカッと来る。
「ま、その分敵さんと殴り合う覚悟はいるけどな!」
当然正面突破の作戦にはリスクがある。力と力のぶつかり合いである以上、相手に攻撃されるのは避けられない事だ。複数のパノプティコン兵士に囲まれながらも、持ち前の機動力で包囲を突破しながら機械の足を振るうアリシア。高速の足技が戦場に舞う。
「気ぃぬかんと、ガツンと気合入れていくで!」
「うむ、サシャも頑張るのだ!」
元気に叫ぶ 『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。パノプティコンの勢いはけして油断できるものではないが、それでもサシャは勝てると信じていた。それはサシャ持ち前の陽気さもあるが、共に戦った仲間への信頼でもある。
「頑張るみんなの為にサシャはみんなを癒しまくるんだぞ!」
言ってサシャは癒しの術式を展開する。魔力を体内で循環させて浄化させる。清らかになった魔力を手のひらに集め、傷ついた仲間の為に解き放った。清浄な風が戦場に広がり、サシャの真っ直ぐな気持ちを示すように仲間の傷を治していく。
「どんどん癒すんだぞ!」
「そうですね。さすがにここは激戦区ですので」
セアラ・ラングフォード(CL3000634)は封とため息をつく。敵の守りも強く、同時にパノプティコンの精鋭が集まる門扉前。それに合わせるように兵士の質も高く、自由騎士達も攻めあぐねていた。
「皆さん、死なないでください……!」
祈るように言葉を口にしながらセアラは癒しの呪文を展開する。何度も繰り返した癒しの呪文。何度繰り返しても傷つく人の減らない癒しの術式。それでも止めるわけにはいかない。戦いに勝ち、平和な世界を築くために。
「神の蟲毒が終われば――」
「はい。平和な世界になると、信じましょう」
セアラの声に応えるように『円卓を継ぐ騎士』たまき 聖流(CL3000283)は口を開く。白紙の未来。それを回避すべく始めた戦争。その戦争も少しずつ終焉に近づいてきている。多くの命を守るために、ここで止まるわけにはいかないのだ。
「できるだけ多くの人が傷つかないように……!」
たまきは静かに願う。だが平和的に戦いが終わることはない。目の前で戦う人達を見ながら、そこから目を逸らすまいとたまきは自らを律する。戦いから逃げる事はしない。癒し手だから傷つけていないというつもりはない。自分が癒した仲間が。敵を傷つけているのだから――
「矛盾しているかもしれません。それでも、誰も傷ついてほしくはないです……!」
「そうだね……。矛盾を抱えるのがヒトだ」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は言って静かに頷く。理屈や正義だけが人間ではない。様々なものを抱え、それでも進んでいくのがヒトだ。パノプティコンの人間はそれを神の管理に委ねた。神が定め、神が管理する。正義も法も神に委ねている。
(パノプティコンの管理にはそれがない。シャンバラの神の愛による支配とは違う。管理し、そして統括する。魔術による洗脳ではなく『管理されることの利便性』による安寧)
マグノリアはパノプティコンの統括をそう判断していた。人は安心を求める。病めず、殺されず、日々を平和に過ごしたい。パノプティコンの管理はそれに最適だった。誰もが不安を抱えず、誰もが悩まない。神が管理しているから大丈夫だ。
「うん……。そんな所かな。悪いけどそれ以上の興味はない。今の僕の興味は『水晶の神殿』だ」
「でしょうな。神の蟲毒を進めている以上『彼女』の元に向かうのは当然でしょうとも。となれば『古きもの』への対策も無論なされているでしょうな」
マグノリアの言葉に大陸共通語が返される。自由騎士のものではない。そしてパノプティコンでこの言葉を喋れる人間は一人しかいない。
王族1687。パノプティコンのハイオラクル。
「無論、神の蟲毒を成立させるわけにはいきません。アイドーネウス様を殺されれば、この国の管理は不可能となりますゆえに。
意外に思われるかもしれませんが、吾輩はそれなりに戦えるのですよ」
●
重戦士が集まるパノプティコン兵士の陣営。そちらの戦いは佳境に入っていた。
『鉄塊』将軍2091。基地2091を守る要の将軍。自由騎士達はそこまで突き進むことが出来たのだ。
「ナナンは『鉄塊』ちゃんをやっつける!」
『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)は将軍の前で武器を構える。『ナナンの勇者ソード』と銘打たれた大きな金色の大剣。小柄なナナンが振り回すとは思えないほどの大きな剣を構え、敵に挑む。
「真っ直ぐ敵にぶつける! ナナンも得意だよぉ!」
将軍の戦闘スタイルを見ながら、ナナンが喜ぶように口を開く。力任せに武器を振り下ろす。シンプルであるがゆえに他の追随を許さない攻撃法。ナナンも同じく無心で武器を振るい続ける。
「おりゃああああああ!」
「エイラ、撃ち続ケル。全力で撃ツ」
魔力の矢を放ちながら『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)は口を開く。敵を見る。撃つ。移動して敵を見る。また撃つ。何度も何度もそれを繰り返す。自分にはそれしかできないと言い聞かせ、ただひたすら射撃を繰り返す。
(仲間の為ニ、エイラができるコトはこれダケ。コレだけ全力でスル)
ただ身を削り、ただ己を削り。エイラは無心にそれを続ける。無心になろうとする。そうすることで仲間を助けられるのなら、そうすべきなのだと。自分は誰にも受け入れられなかった。だけど自由騎士達は仲間と扱ってくれた。だから、己を削るように戦う。
「戦争キツイ。だから終わらセル。エイラが全力デ撃ッテ」
「いやまあ、そこまで気負うのもどうかって思うっすけどね」
エイラの必死さを見ながら『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)は静かにため息をつく。素行不良で勤務タイマンなジャムにとって、勤勉は信じられない思考だ。人生適度に誤魔化さないと、辛いだけである。
「……ま、戦争だから仕方ねぇ、って言われたらそれまでっすけど」
戦場を見ながら肩をすくめるジャム。ジャムも遊撃的に動き、敵兵に銃弾を叩き込んでいた。移動しては相手の額めがけて撃ち、また移動しては撃つ。自分が狙われることになっても構わない。そうすれば、仲間が付け入るスキが生まれるだろうから。
「囲まれたら死ぬっすかねぇ。まあ、それも戦争か」
「ぶっ潰れろおおおお!」
気合と共に『鉄鬼殺し』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は敵の将軍に拳を叩き込む。獣の力を開放し、ただ真っ直ぐに拳を撃ち放つ。持ちうる武器を全てをぶつけるように敵将軍に挑む。
「ソ・ス・ナ・ト・ク!」
「まだまだぁ! ケモノビトの根性ナメんなァ!」
敵将軍の攻撃を受けたカーミラだが、四肢に力を込めて起き上がる。相手が力で押してくるなら、こちらも力で押し返す。血が流れ、息絶え絶えになりながらもカーミラは将軍に立ち向かう。
「これで、終わりだああああああああああ!」
「ハ・ニ・ミ・ニ・ト・ク!」
言葉なく振るわれる将軍の一打。気合を込めて拳を突き出すカーミラ。
二人が交差し、激しい打撃音が響き渡る。一瞬の静寂の後、カーミラの身体が揺れる。
「ニ・カ・ャト……テ・ラ・ミ・シ・イ・ス・ハ・ナ・リ……!」
「私の勝ちだああああああああ!」
揺れた後に足を踏ん張り、突き上げられたカーミラの拳。崩れ落ちる将軍2091の体躯。
勝者は天に、敗者は地に。それを象徴するような一幕であった。
●
そしてもう片側の戦場も、少しずつ戦局が傾いてきていた。
「敵側にも医者はいる。そりゃそうだわな。どんな国にも医者はいる、か」
敵のヒーラーを見ながら『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をついた。医者がどの国に居るのも当然塔えば当然のことだ。そして医者が戦場に居るのも。安全な場所で治療している医者もいるだろうが、戦場を走り回る医者も当然いる。
「どの国も変わりはしないもんだ。管理国家の医術都やらを見てみたくはあったが」
仲間を癒しながらツボミはそんな事を口にする。同盟の話がある時に詳しく聞いてみてもよかったかもしれない。だがそれはもう戻らぬことだ。この国を亡ぼすと決めた以上、その夢はもう叶わない。神を殺せば、管理国家はなくなるのだから。
「……違うのは言葉が通じぬことか? 立場が違うことか? 同じ命を救う立場だと言うのに。全く因果なものだ」
「因果、因果か。うん、そうだよな」
『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)はツボミの言葉に頷く。原因があるから結果がある。戦争だって同じことだ。互いに譲れないというモノという原因があるから、戦うしかないのだ。
(大事なモノを捨てて従え、なんて誰だって納得できないよな。それでも――)
リュエルはまだ割り切れない。恐らくは一生割り切れないだろう。それでも進んでいくしかないのだ。ここで止まれば世界は白紙の未来となる。その未来を回避すべく、今ここで戦わなければならないのだ。
「こいつは戦争だ。どっちが正しいなんてない。だから語り継いでやるよ。あんた達の戦いぶりもな!」
「はっはっは。豪気豪気。だがそんな結界で余をどうにかできると思うてか?」
敵の導師を前にして『酔鬼』氷面鏡 (CL3000665)が呵々大笑。そして酒を口にして嚥下した。熱い感覚が五臓六腑に染み入り、酒を含んだ血流が全身を駆け巡る。そのまま央華大陸に伝わる構えを取る。
「よくもまぁパノプティコンみたいなつまらぬ国でその年齢まで生きたものよ。そろそろいいじゃろ。余が引導を渡してやろう」
迫る兵士達の攻撃を千鳥足でいなしながら、魔力を展開する天輝。前に出てくるのなら殴ってやるが、後ろに居るのなら魔術で攻めるのみ、両腕で円を描くようにして魔力を展開し、一気に氷の矢を解き放つ。
「その白髭白翼もそろそろ見飽きたわ! 冥途の土産に余のとっておきを拝ませてやろう」
「中々やるわね! それじゃあこっちもいくわよ!」
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』猪市 きゐこ(CL3000048)はフードの奥で笑みを浮かべる。その瞳は見えないが、口元の表情からこの状況を楽しんでいることが見て取れる。魔術による戦争。その状況を、きゐこは確かに楽しんでいた。
「折角の縁だし魔導比べしましょう。私に年の功って奴を見せて頂戴!」
「ン・イ・ト!(よかろう!)」
魔導で言語変換し、相手に通じるように言葉を放つきゐこ。帰ってきた答えは短く、同時に穿たれた魔術こそが真の返事とばかりに鋭かった。星を詠むよ言われた魔導士の実力。きゐこはそれに手数で応じ、そして鬼の武具を展開して攻め立てる。
「さすがにパノプティコンの最高峰の魔導士ね! 未来を読んでもその上をいくとか!」
「ト・イ・イ・ニ・ミ・キ ニ・ト ミ・ラ・カ カ・ク・イ カ・ス・ナ・カ・ク(見えるは真理に非ず)。ニ・ミ・タ・ナ・ニ・ス・ン ニ・ト カ・ク・イ テ・チ・ン カ・ラ カ・ス・ナ・カ・ク(探求する事こそ、真理への道也)」
安易に見える道は真理に見えて真に非ず。己の努力と行動で導いた結果こそが真理なり。魔導により星を詠める導師でさえ、真理は実践においてしか得られないのだ。
その言葉を口にして、導師0021は意識を失い力尽きた。きゐこはそれを見て、笑みを浮かべる。
「言ってくれるわね! そうよ、私達も白紙の未来を吹き飛ばすんだから!」
「はい。わたくし達は勝たなくてはいけませんから」
『轍を辿る』エリシア・ブーランジェ(CL3000661)は静かにそう告げた。待機中のマナを取り入れ、氷の弾丸をただひたすら打ち続ける。何度も何度も。己を殺し、機械のように呪文を繰り返し、敵を廃していく。
「はい。勝ちますとも。攻撃あるのみです。勝ちます。結果を出します。そうでないと――」
殺す。自分を殺す。エリシアという人格はそこにはなく、ただ敵を打ち倒すための魔導を放つ存在としてそこに立つ。攻撃あるのみ、避けるのは二の次。そうでなければ勝てない。そうでなければ結果は出せない。結果を出さなくては。意味がない――
気が付けば、エリシアの前に敵は立っていなかった。全てのパノプティコン兵は伏している。エリシアはそれを見て、別の戦場に目を向ける。エリシア自身も多くの魔術攻撃を受けて傷ついているが、気にしている様子はない。
「役に立ちませんと。家族に誇れるように。成しませんと。前に、前に進んで――」
エリシアはただひたすら戦場に向かう。結果を出すために。
エリシア・ブーランジェにそれ以上の――それ以外の望みはない。
●
基地2019の戦いは佳境に入っていた。
二つの陣からなる守りは崩壊し、門扉は激戦区となっていた。他の陣営の戦いを終えてこちらに加戦する。
「対パノプティコン戦略の、これまでのすべての積み重ねがこの瞬間のために!」
『積み上げていく価値』フリオ・フルフラット(CL3000454)は門扉前のパノプティコン兵士に砲撃を繰り返し、その数を減らしていた。王族を守る親衛隊を中心に攻撃し、王への活路を開いていく。
「イ・ラプセルとパノプティコン。その力は似ているものの、目指すものは全く違うのであります!」
未来を知ることが出来るデウスギアを有してはいるが、アクアディーネはそれを使って人を助け、アイドーネウスは人を管理する。神の在り方が違うだけで、こうも国家は違うものか。画一化された兵士の動きにフリオは改めてその差に身を震わせる。
「こんな個性を失った兵隊が正しいなんて、認めないであります!」
「ノスフェラトゥ……彼らは一体……!」
言葉なく王を守る青肌の種族を前に、『白騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)は苦悩する。イ・ラプセルでは見られない希少な種族達。彼らがどのような思いでパノプティコンに従っているのか。それを知ろうと拳を握りしめる。
「確かに彼らとは言葉が通じない。だけど、理解することを諦めるつもりはない!」
同じ守り手同士、理解できることがある。アダムは戦いを通じてノスフェラトゥの思いを理解しようとしていた。彼らは確かに守ろうとしている。それは王族1687というよりは、このパノプティコンを。そして――
「パノプティコンの北にある、水晶の神殿。彼らの故郷を――守ろうとしている?」
「……成程な。デウスギアか神の権能かで精神を操られている、っていうわけでもないわけか」
『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。シャンバラのような洗脳ではなく、管理。ノスフェラトゥ達は自らの意志でアイドーネウスの管理下に入ったのだ。自らの目的のために。
「どちらにせよ、容赦をするつもりはないな」
ダガーを振るい敵を攻撃していたオルパは、突如魔術による攻撃に切り替える。斬撃と魔力矢。二種類の切り替えこそがオルパの真骨頂。タフネスと不死性を持つノスフェラトゥに少しずるダメージを加えていく。
「故郷を守りたい、か。そいつは理解できるな」
「やっぱり年の功かなー」
構えを崩さぬようにしながら戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は呟く。目の前にはパノプティコンの格闘家、騎士0900。ドクロの仮面をかぶった格闘家。無言で構えたその様に、カノンは相手の実力を悟る。
「でもまあ、止まってもいられないからね!」
山のように動かない騎士を前に、カノンは持ちうる技術全てを使って挑む。相手の攻撃を柔軟に避けながら、虚を突くように相手の死角から拳を振るう。一進一退の打ち合いに、カノンはむしろ喜びの笑みを浮かべていた。
(通じる……! センセーの教えは、確かに負けていない! なら次は――)
「ねえねえ、なんでわざわざ前に出てくるの。王様? もしかして、権能とか実行する人がいないと起動しないとか?」
『トリックスター・キラー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は敵の攻撃が薄まったタイミングを見計らって、王族1687に話しかける。積極的に攻撃をする気はない。そもそもクイニィーは戦争自体にあまり興味はない。彼女の興味は面白いか否かだけだ。
「いえ、権能は皆様がお使いするように神からたずさったモノ。貴方達とてアクアディーネ様に命令されているわけではないでしょう?。私が前に出ても非難されないのは役割ゆえ。ありていに言えば私が死んでも次の『王族』が繰り上がるだけでして。
あ、先ほどから私の精神に干渉しようとしているのは解りますが、権能はアイドーネウス様のお力なので人のみでの関与は難しいかと」
クイニィーの質問に律儀に答える王族1687。その会話の最中にパノプティコンの権能を通じて他国民に何かしようとするクイニィーに、そっと忠告する。
「なんだ残念。王様本当に偉くないんだ」
「恥ずかしながらその通りでして。現に貴方達にここまで踏み入られましたしな」
はっはっは、と戦場に似合わない笑いを浮かべる王族1687。
「直接対峙するのは、あの日の海戦以降でしょうか」
「できる事なら、別の形でお会いしたかったですなあ。貴方の盾は硬すぎる」
『いと堅き乙女に祝福を』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)の言葉に一礼でもしそうな口調で答える王族1687。イ・ラプセルがはじめてパノプティコンを攻めた時の話だ。待ち伏せ、撤退を余儀なくされた戦い。
「約束の為にも、ここは退いていただきます!」
「おや意外ですね。ここで倒すと宣言されると思いましたが」
「貴方を倒すのは私の役目ではないですからね。ですが、倒すつもりで挑ませていただきます!」
言って仲間を守るために展開するデボラ。防御の構えを維持しながら、隙を見て攻撃を加えていく。仲間を守ることを重視しているためか、デボラ自身が攻勢に出る事は少ない。
「王として貴方が『正しい』のは理解しています。ですがそれで納得できないのが人間なんです!」
「その妥協点を見出すのもまた『王』の務めなのですよ。
秩序や平和は様々な意見のバランスを無理矢理繋ぎとめて得られる事。『理想』の清らかさに住めない人も、『効率』の冷たさに納得できない人もいます。逆もしかり。そう言った全ての民を様々な手法で暴れさせないようにしているに過ぎないのです。
パノプティコンはそれを神の管理という形で成し遂げました」
「管理から外れたものをあんな風に見捨てるのが正しいわけないだろうが!」
セーイ・キャトル(CL3000639)はパノプティコンの管理からはずれたマイナスナンバー達の事を思い出す。土地だけを与えられ、放置同然に捨てられた彼ら。管理されない者は不要とばかりに切り捨てた政治。
「俺はあんたの……この国のやり方が正しいなんて思えない!」
「でしょうな。だからこそここに居る。その決断と勇気は賞賛しましょう。だからこそ、吾輩はそれに応じましょう」
王族1687から放たれる炎。それに応じるようにセーイも氷を解き放つ。低温が相手の動きを封じ、イ・ラプセルが攻め入る隙を生み出していく。少しずつ、だけど確実にパノプティコンを追い詰めていく。
「――などと言いましたが、この辺りが頃合いですか。撤退させていただきましょう。啖呵を切ったのに恥ずかしい限りですなぁ」
親衛隊の疲弊を見て、王族1687は戦場からの撤退を決意する。
「出て来ておいて、ここでの未来は諦めるんだ。ここでお前が諦めてるなら、この先もパノプティコンに未来は無いよ」
「この世界に未来など、始めからありませんよ。世界は終わり、そして繰り返す。それがこの世界。それがこの呪い。パノプティコンに未来がないと言いましたな。それは正鵠ではありますが不十分。未来がないのはイ・ラプセルも同様です。
仮に貴方達が神の蟲毒を完成させて神の力を束ねたとしても――そこからが本番なのですから」
それは去り際の捨て台詞か。セーイの言葉に対し、そんな言葉を返す王族1687。同時にパノプティコン兵士達も殿を残して撤退を開始する。一糸乱れず流れるような撤退軍務。徹底管理されたパノプティコンならではの軍事行為だった。
イ・ラプセルも追撃軍と基地の占拠に軍を分け、それぞれの作業に入る。
かくして基地2019にイ・ラプセルの旗が立つのであった――
●
基地2019を占拠したことにより、パノプティコン首都、地域1155は射程圏内となった。丘一つ隔てて見える巨大な塔。そこに管理国家パノプティコンの神、アイドーネウスがいる。
地域1155には未だ抵抗戦力は残っているだろうが、それでも主要な戦力はこの戦いで抑え込んだ。何よりも基地2019ほど防衛に特化した施設ではない。パノプティコンの命運は風前の灯火といってもいいだろう。
だが、イ・ラプセル軍も無傷ではない。二重三重の囮を労してもなお、兵士達の疲弊は無視でくるものではない。しばしの休養が必要だろう。
戦いの気配が完全に消え去った基地2019。
まだ冷たい冬の風を感じながら、自由騎士達は体を休める為に帰路につくのであった。
戦いの終わりは近い。神への塔は目前だ。
しかし平和な世界への道筋は、いまだ見えない――
鬨の声が響き、武器がぶつかり合う音が響きあう。
戦争。それを思わせる空気が周囲を支配していた。
「対話も捕虜もなしなら、すり潰していくだけだな」
『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は言って武器を構える。国の方針で大陸共通語を喋れないパノプティコンの国民とは話し合うことが出来ず、デウスギアの効果で捕虜にすることもできない。ならば取るべき手段は一つだ。
「そらよ! コイツを喰らいな!」
拳銃を手にして戦場を進むウェルス。迫るパノプティコンの兵士に銃口を向け、躊躇なく引き金を引いた。着弾を確認し、目の端で倒れたことを確認した後に更に走る。経験とそして持ち前の慎重さ。それが確実に結果を生み出していく。
「アイツはカウンターの気配がするな。ならこっちだ」
「…………」
黙々と仲間を癒し続けるフロレンシス・ルベル(CL3000702)。一歩引いた場所に立ち、仲間の様子を見ながら傷を癒していく。アクアディーネに受け入れられた恩に報いるために、仲間の自由騎士達を助けるために戦火に挑む。
「…………」
爆風が戦場を撫でる。フロレンシスの白い髪が大きく揺れた。それを押さえる事をせず、ただ仲間を癒すことのみに集中する。ここで手を止めるわけにはいかないと動かぬ表情で示し、虹色の瞳で戦場で戦う仲間達を見る。
「ありがとね! それじゃあ、ガンガン行くわよ!」
回復を受けた『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は手甲を装着してパノプティコン兵士に挑む。練度の高い兵士達を前に防御の構えを取り、その構えを維持しながら拳を振るっていく。
「ここに居る兵士達を削り切って、門の戦いを有利にしないと!」
連携を取るパノプティコン兵士達。彼らの動きを断つために、ここに陣取る兵士達を早く倒さなければならない。その為に前のめりになって戦うエルシー。道は仲間達が開いてくれる。それを信じて今は拳を振るうだけだ。
「さあ、かかってきなさい! 言葉は通じなくても意味は分かるでしょう!」
「せやなあ。口にせんでもわかるやろ?」
『鬼神楽』蔡 狼華(CL3000451)は蛇のようにしなる剣を持つ兵士を前にして笑みを浮かべる。戦場の空気は熱く、互いの視線は鋭い。呼吸するだけでも相手の戦意が体内に入りそうな状況だ。ただ静かに、二人はにらみ合う。
「――――しっ!」
動いたのはどちらが先か。或いは同時か。兵士の剣が不規則に揺れながら狼華に迫る。だが踏み込む兵士の動きは狼華の予測範囲内。円を描くように足を動かして突きを回避し、回転の勢いを殺さぬように刃を振るう。
「おもろい剣やけど、姉さんに個性がないわ。画一された動きはつまらんで」
「回復が要らない人は言ってくださいねー」
リィ・エーベルト(CL3000628)は言いながら仲間を癒していく。戦うスタイルによっては体力が低い方が有利な場合もある。相違撃った人を考慮しての問いかけだ。基本的には倒れそうな人を優先してリィは仲間を癒していく。
「一人ずつ確実に、っと」
回復に余裕が生まれれば、リィも攻撃の余裕が出来る。精霊に攻撃を頼み、パノプティコン兵士に襲わせた。凍てつく山の精霊が冷気を吹き出し、相手の体力を奪うと同時に動きを拘束していく。
「マザリモノを敵に回すと怖いぞー!」
自由騎士達の攻勢が、少しずつパノプティコンの牙城を崩していく。
●
魔力の炎が交差し、それを弾く魔力の壁が光る。
魔導兵。そう呼ばれる軍隊が展開する陣に挑む自由騎士達。
「我がシルヴァネール家は魔導により栄えし家系……ならばパノプティコン魔導兵と魔導勝負しかないでしょう!」
『水銀蛇と共に』クレヴァニール・シルヴァネール(CL3000513)は『冥王鎌タルタロス』を手にパノプティコンの魔導兵の前に立つ。国家を支える魔導兵相手なら相手にとって不足なし。そのまま魔力を練り上げていく。
「黄昏の灯より生まれし羽根を広げ、天高く舞い上がれぇ! 全てを燃やせ、大精霊トワイライトフェニックス!」
服装も含めて見た目も動作も道化師のようなクレヴァニールだが、編み出す魔力は一級品の魔術師。インディオの祈祷師でも簡単には呼び出せない火の鳥を呼び、敵兵を焼き払う。業火の後に、ポーズを決めるクレヴァニール。
「インディオより伝授されしこの技術(わざ)で……この地をパノプティコンから解放してみせましょう!」
「でもパノプティコンの神様がいなくなったら、この人達はどうなるんだろう?」
『祈りは歌にのせて』サーナ・フィレネ(CL3000681)は剣を振るいながらそんなことを思っていた。管理されることが当然と言うパノプティコンの国民達。それが突然自由を得たとして、生きていけるのだろうか?
(……それは今考えることじゃない、よね?)
サーナはかぶりを振って、その考えを頭の中から打ち消す。今は剣を振るう時だ。盾を構える防御タンクに向かい突撃し、エストックを構える。胸元で固定し、腕を突き出すようにして剣の先を敵に突き刺す。速度と手数。それがサーナの武器。
「殺しはしないですから、大人しくしてください」
「ドドーンとやりたいですけど、半端に残ると厄介なんですよねぇ~」
不満げに呟く『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。パノプティコンの兵士達は全員が連携して動く。全員まとめて倒せるなら大火力で押すのもありだが、そうでないなら確実に数を減らす方が望まれる。厄介だけど、大魔術は控えよう。
「でもでもぉ~。チームワークはこちらも負けていませんからぁ~」
権能での繫がりこそないが、協力して戦う事は自由騎士の十八番だ。互いが互いの役割を理解し、それに準じて戦う。いってシェリルは仲間を護るために魔力を解き放つ。魔力は壁となり、仲間達を護る盾となる。
「アデルさ~ん、行きますよ~」
「感謝する。さあ、ここからは正面突破だ。進め!」
シェリルの援護を受けた『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)が鬨の声をあげる。槍を手に敵陣を突き進み、そして兵士達を攻め立てる。相手の言葉は理解できないがこの状況だ。言葉なくとも意図は伝わる。
「語るまでもない。これが戦争だ。互いの国家をかけて雌雄を決する時だ」
国を想う心。仲間を守ろうとする心。それはパノプティコンも持っているのだろう。故に必死に戦い、故に刃を振るう。アデルはそれを理解したうえで、敵兵を打ち破っていく。他者を踏み抜き勝利を得る。それが戦争なのだ。
「武器を持って戦場に立つ以上、加減はしない。共に国を護る覚悟あり。その覚悟を俺は軽視しない」
傭兵として自由騎士として、この戦火の時代を生きる人間としてアデルは槍を振るう。
それ皆同じこと。戦場に立つ者達は、互いの信念を胸に戦っていた。
●
基地2091の門扉。この軍事基地の最終防衛ライン。
策によりパノプティコン兵を困惑させた自由騎士達はそこにたどり着く。
「巡り巡って力押しとはな」
『現実的論点』ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)は呆れるように呟く。策を重ね、最後の最後は真正面からの力押し。それを悪いと言うつもりは毛頭ない。どうあれ国のために戦わねばならないのだ。
「チェックメイトを行うにしても、道筋は必要だろう」
いってライモンドは門扉に集うパノプティコン兵士を攻撃する。王族をいきなり狙うのは難しい。何よりも王と語らうのは戦時ではなく戦後だ。今はこの場を制することに注力するのみだ。
「パノプティコンには苦手意識があるんですよね」
ため息と共に『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)が呟く。権能で互いの意思疎通を行い、連携を取ってくる。その練度も高いことが厄介だ。とはいえ戦わないと言うわけにはいかない。泣き言を言って相手が権能を控えるわけがないのだ。
「ともあれ数を減らしましょう。連携する数が減ればなんとかなります」
マリアは言って魔力で冷気を形成し、氷の弾丸を撃つ。攻撃に気付いたパノプティコン兵士が防御の構えを取るが、構わず氷を解き放つ。幾多の戦いを超えてきたマリアの魔力は、防御されてもなおパノプティコン兵士を低温の檻に閉じ込める。
「長丁場になりそうですね。魔力補給も行わなくては」
「こういうのは嫌いやないで」
正面突破。その言葉に『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は頷いた。策を弄して勝利するのも悪くはないが、こういう力と力のぶつかり合いは分かりやすくてスカッと来る。
「ま、その分敵さんと殴り合う覚悟はいるけどな!」
当然正面突破の作戦にはリスクがある。力と力のぶつかり合いである以上、相手に攻撃されるのは避けられない事だ。複数のパノプティコン兵士に囲まれながらも、持ち前の機動力で包囲を突破しながら機械の足を振るうアリシア。高速の足技が戦場に舞う。
「気ぃぬかんと、ガツンと気合入れていくで!」
「うむ、サシャも頑張るのだ!」
元気に叫ぶ 『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)。パノプティコンの勢いはけして油断できるものではないが、それでもサシャは勝てると信じていた。それはサシャ持ち前の陽気さもあるが、共に戦った仲間への信頼でもある。
「頑張るみんなの為にサシャはみんなを癒しまくるんだぞ!」
言ってサシャは癒しの術式を展開する。魔力を体内で循環させて浄化させる。清らかになった魔力を手のひらに集め、傷ついた仲間の為に解き放った。清浄な風が戦場に広がり、サシャの真っ直ぐな気持ちを示すように仲間の傷を治していく。
「どんどん癒すんだぞ!」
「そうですね。さすがにここは激戦区ですので」
セアラ・ラングフォード(CL3000634)は封とため息をつく。敵の守りも強く、同時にパノプティコンの精鋭が集まる門扉前。それに合わせるように兵士の質も高く、自由騎士達も攻めあぐねていた。
「皆さん、死なないでください……!」
祈るように言葉を口にしながらセアラは癒しの呪文を展開する。何度も繰り返した癒しの呪文。何度繰り返しても傷つく人の減らない癒しの術式。それでも止めるわけにはいかない。戦いに勝ち、平和な世界を築くために。
「神の蟲毒が終われば――」
「はい。平和な世界になると、信じましょう」
セアラの声に応えるように『円卓を継ぐ騎士』たまき 聖流(CL3000283)は口を開く。白紙の未来。それを回避すべく始めた戦争。その戦争も少しずつ終焉に近づいてきている。多くの命を守るために、ここで止まるわけにはいかないのだ。
「できるだけ多くの人が傷つかないように……!」
たまきは静かに願う。だが平和的に戦いが終わることはない。目の前で戦う人達を見ながら、そこから目を逸らすまいとたまきは自らを律する。戦いから逃げる事はしない。癒し手だから傷つけていないというつもりはない。自分が癒した仲間が。敵を傷つけているのだから――
「矛盾しているかもしれません。それでも、誰も傷ついてほしくはないです……!」
「そうだね……。矛盾を抱えるのがヒトだ」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は言って静かに頷く。理屈や正義だけが人間ではない。様々なものを抱え、それでも進んでいくのがヒトだ。パノプティコンの人間はそれを神の管理に委ねた。神が定め、神が管理する。正義も法も神に委ねている。
(パノプティコンの管理にはそれがない。シャンバラの神の愛による支配とは違う。管理し、そして統括する。魔術による洗脳ではなく『管理されることの利便性』による安寧)
マグノリアはパノプティコンの統括をそう判断していた。人は安心を求める。病めず、殺されず、日々を平和に過ごしたい。パノプティコンの管理はそれに最適だった。誰もが不安を抱えず、誰もが悩まない。神が管理しているから大丈夫だ。
「うん……。そんな所かな。悪いけどそれ以上の興味はない。今の僕の興味は『水晶の神殿』だ」
「でしょうな。神の蟲毒を進めている以上『彼女』の元に向かうのは当然でしょうとも。となれば『古きもの』への対策も無論なされているでしょうな」
マグノリアの言葉に大陸共通語が返される。自由騎士のものではない。そしてパノプティコンでこの言葉を喋れる人間は一人しかいない。
王族1687。パノプティコンのハイオラクル。
「無論、神の蟲毒を成立させるわけにはいきません。アイドーネウス様を殺されれば、この国の管理は不可能となりますゆえに。
意外に思われるかもしれませんが、吾輩はそれなりに戦えるのですよ」
●
重戦士が集まるパノプティコン兵士の陣営。そちらの戦いは佳境に入っていた。
『鉄塊』将軍2091。基地2091を守る要の将軍。自由騎士達はそこまで突き進むことが出来たのだ。
「ナナンは『鉄塊』ちゃんをやっつける!」
『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)は将軍の前で武器を構える。『ナナンの勇者ソード』と銘打たれた大きな金色の大剣。小柄なナナンが振り回すとは思えないほどの大きな剣を構え、敵に挑む。
「真っ直ぐ敵にぶつける! ナナンも得意だよぉ!」
将軍の戦闘スタイルを見ながら、ナナンが喜ぶように口を開く。力任せに武器を振り下ろす。シンプルであるがゆえに他の追随を許さない攻撃法。ナナンも同じく無心で武器を振るい続ける。
「おりゃああああああ!」
「エイラ、撃ち続ケル。全力で撃ツ」
魔力の矢を放ちながら『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)は口を開く。敵を見る。撃つ。移動して敵を見る。また撃つ。何度も何度もそれを繰り返す。自分にはそれしかできないと言い聞かせ、ただひたすら射撃を繰り返す。
(仲間の為ニ、エイラができるコトはこれダケ。コレだけ全力でスル)
ただ身を削り、ただ己を削り。エイラは無心にそれを続ける。無心になろうとする。そうすることで仲間を助けられるのなら、そうすべきなのだと。自分は誰にも受け入れられなかった。だけど自由騎士達は仲間と扱ってくれた。だから、己を削るように戦う。
「戦争キツイ。だから終わらセル。エイラが全力デ撃ッテ」
「いやまあ、そこまで気負うのもどうかって思うっすけどね」
エイラの必死さを見ながら『stale tomorrow』ジャム・レッティング(CL3000612)は静かにため息をつく。素行不良で勤務タイマンなジャムにとって、勤勉は信じられない思考だ。人生適度に誤魔化さないと、辛いだけである。
「……ま、戦争だから仕方ねぇ、って言われたらそれまでっすけど」
戦場を見ながら肩をすくめるジャム。ジャムも遊撃的に動き、敵兵に銃弾を叩き込んでいた。移動しては相手の額めがけて撃ち、また移動しては撃つ。自分が狙われることになっても構わない。そうすれば、仲間が付け入るスキが生まれるだろうから。
「囲まれたら死ぬっすかねぇ。まあ、それも戦争か」
「ぶっ潰れろおおおお!」
気合と共に『鉄鬼殺し』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は敵の将軍に拳を叩き込む。獣の力を開放し、ただ真っ直ぐに拳を撃ち放つ。持ちうる武器を全てをぶつけるように敵将軍に挑む。
「ソ・ス・ナ・ト・ク!」
「まだまだぁ! ケモノビトの根性ナメんなァ!」
敵将軍の攻撃を受けたカーミラだが、四肢に力を込めて起き上がる。相手が力で押してくるなら、こちらも力で押し返す。血が流れ、息絶え絶えになりながらもカーミラは将軍に立ち向かう。
「これで、終わりだああああああああああ!」
「ハ・ニ・ミ・ニ・ト・ク!」
言葉なく振るわれる将軍の一打。気合を込めて拳を突き出すカーミラ。
二人が交差し、激しい打撃音が響き渡る。一瞬の静寂の後、カーミラの身体が揺れる。
「ニ・カ・ャト……テ・ラ・ミ・シ・イ・ス・ハ・ナ・リ……!」
「私の勝ちだああああああああ!」
揺れた後に足を踏ん張り、突き上げられたカーミラの拳。崩れ落ちる将軍2091の体躯。
勝者は天に、敗者は地に。それを象徴するような一幕であった。
●
そしてもう片側の戦場も、少しずつ戦局が傾いてきていた。
「敵側にも医者はいる。そりゃそうだわな。どんな国にも医者はいる、か」
敵のヒーラーを見ながら『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をついた。医者がどの国に居るのも当然塔えば当然のことだ。そして医者が戦場に居るのも。安全な場所で治療している医者もいるだろうが、戦場を走り回る医者も当然いる。
「どの国も変わりはしないもんだ。管理国家の医術都やらを見てみたくはあったが」
仲間を癒しながらツボミはそんな事を口にする。同盟の話がある時に詳しく聞いてみてもよかったかもしれない。だがそれはもう戻らぬことだ。この国を亡ぼすと決めた以上、その夢はもう叶わない。神を殺せば、管理国家はなくなるのだから。
「……違うのは言葉が通じぬことか? 立場が違うことか? 同じ命を救う立場だと言うのに。全く因果なものだ」
「因果、因果か。うん、そうだよな」
『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)はツボミの言葉に頷く。原因があるから結果がある。戦争だって同じことだ。互いに譲れないというモノという原因があるから、戦うしかないのだ。
(大事なモノを捨てて従え、なんて誰だって納得できないよな。それでも――)
リュエルはまだ割り切れない。恐らくは一生割り切れないだろう。それでも進んでいくしかないのだ。ここで止まれば世界は白紙の未来となる。その未来を回避すべく、今ここで戦わなければならないのだ。
「こいつは戦争だ。どっちが正しいなんてない。だから語り継いでやるよ。あんた達の戦いぶりもな!」
「はっはっは。豪気豪気。だがそんな結界で余をどうにかできると思うてか?」
敵の導師を前にして『酔鬼』氷面鏡 (CL3000665)が呵々大笑。そして酒を口にして嚥下した。熱い感覚が五臓六腑に染み入り、酒を含んだ血流が全身を駆け巡る。そのまま央華大陸に伝わる構えを取る。
「よくもまぁパノプティコンみたいなつまらぬ国でその年齢まで生きたものよ。そろそろいいじゃろ。余が引導を渡してやろう」
迫る兵士達の攻撃を千鳥足でいなしながら、魔力を展開する天輝。前に出てくるのなら殴ってやるが、後ろに居るのなら魔術で攻めるのみ、両腕で円を描くようにして魔力を展開し、一気に氷の矢を解き放つ。
「その白髭白翼もそろそろ見飽きたわ! 冥途の土産に余のとっておきを拝ませてやろう」
「中々やるわね! それじゃあこっちもいくわよ!」
『日は陰り、されど人は歩ゆむ』猪市 きゐこ(CL3000048)はフードの奥で笑みを浮かべる。その瞳は見えないが、口元の表情からこの状況を楽しんでいることが見て取れる。魔術による戦争。その状況を、きゐこは確かに楽しんでいた。
「折角の縁だし魔導比べしましょう。私に年の功って奴を見せて頂戴!」
「ン・イ・ト!(よかろう!)」
魔導で言語変換し、相手に通じるように言葉を放つきゐこ。帰ってきた答えは短く、同時に穿たれた魔術こそが真の返事とばかりに鋭かった。星を詠むよ言われた魔導士の実力。きゐこはそれに手数で応じ、そして鬼の武具を展開して攻め立てる。
「さすがにパノプティコンの最高峰の魔導士ね! 未来を読んでもその上をいくとか!」
「ト・イ・イ・ニ・ミ・キ ニ・ト ミ・ラ・カ カ・ク・イ カ・ス・ナ・カ・ク(見えるは真理に非ず)。ニ・ミ・タ・ナ・ニ・ス・ン ニ・ト カ・ク・イ テ・チ・ン カ・ラ カ・ス・ナ・カ・ク(探求する事こそ、真理への道也)」
安易に見える道は真理に見えて真に非ず。己の努力と行動で導いた結果こそが真理なり。魔導により星を詠める導師でさえ、真理は実践においてしか得られないのだ。
その言葉を口にして、導師0021は意識を失い力尽きた。きゐこはそれを見て、笑みを浮かべる。
「言ってくれるわね! そうよ、私達も白紙の未来を吹き飛ばすんだから!」
「はい。わたくし達は勝たなくてはいけませんから」
『轍を辿る』エリシア・ブーランジェ(CL3000661)は静かにそう告げた。待機中のマナを取り入れ、氷の弾丸をただひたすら打ち続ける。何度も何度も。己を殺し、機械のように呪文を繰り返し、敵を廃していく。
「はい。勝ちますとも。攻撃あるのみです。勝ちます。結果を出します。そうでないと――」
殺す。自分を殺す。エリシアという人格はそこにはなく、ただ敵を打ち倒すための魔導を放つ存在としてそこに立つ。攻撃あるのみ、避けるのは二の次。そうでなければ勝てない。そうでなければ結果は出せない。結果を出さなくては。意味がない――
気が付けば、エリシアの前に敵は立っていなかった。全てのパノプティコン兵は伏している。エリシアはそれを見て、別の戦場に目を向ける。エリシア自身も多くの魔術攻撃を受けて傷ついているが、気にしている様子はない。
「役に立ちませんと。家族に誇れるように。成しませんと。前に、前に進んで――」
エリシアはただひたすら戦場に向かう。結果を出すために。
エリシア・ブーランジェにそれ以上の――それ以外の望みはない。
●
基地2019の戦いは佳境に入っていた。
二つの陣からなる守りは崩壊し、門扉は激戦区となっていた。他の陣営の戦いを終えてこちらに加戦する。
「対パノプティコン戦略の、これまでのすべての積み重ねがこの瞬間のために!」
『積み上げていく価値』フリオ・フルフラット(CL3000454)は門扉前のパノプティコン兵士に砲撃を繰り返し、その数を減らしていた。王族を守る親衛隊を中心に攻撃し、王への活路を開いていく。
「イ・ラプセルとパノプティコン。その力は似ているものの、目指すものは全く違うのであります!」
未来を知ることが出来るデウスギアを有してはいるが、アクアディーネはそれを使って人を助け、アイドーネウスは人を管理する。神の在り方が違うだけで、こうも国家は違うものか。画一化された兵士の動きにフリオは改めてその差に身を震わせる。
「こんな個性を失った兵隊が正しいなんて、認めないであります!」
「ノスフェラトゥ……彼らは一体……!」
言葉なく王を守る青肌の種族を前に、『白騎士』アダム・クランプトン(CL3000185)は苦悩する。イ・ラプセルでは見られない希少な種族達。彼らがどのような思いでパノプティコンに従っているのか。それを知ろうと拳を握りしめる。
「確かに彼らとは言葉が通じない。だけど、理解することを諦めるつもりはない!」
同じ守り手同士、理解できることがある。アダムは戦いを通じてノスフェラトゥの思いを理解しようとしていた。彼らは確かに守ろうとしている。それは王族1687というよりは、このパノプティコンを。そして――
「パノプティコンの北にある、水晶の神殿。彼らの故郷を――守ろうとしている?」
「……成程な。デウスギアか神の権能かで精神を操られている、っていうわけでもないわけか」
『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。シャンバラのような洗脳ではなく、管理。ノスフェラトゥ達は自らの意志でアイドーネウスの管理下に入ったのだ。自らの目的のために。
「どちらにせよ、容赦をするつもりはないな」
ダガーを振るい敵を攻撃していたオルパは、突如魔術による攻撃に切り替える。斬撃と魔力矢。二種類の切り替えこそがオルパの真骨頂。タフネスと不死性を持つノスフェラトゥに少しずるダメージを加えていく。
「故郷を守りたい、か。そいつは理解できるな」
「やっぱり年の功かなー」
構えを崩さぬようにしながら戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は呟く。目の前にはパノプティコンの格闘家、騎士0900。ドクロの仮面をかぶった格闘家。無言で構えたその様に、カノンは相手の実力を悟る。
「でもまあ、止まってもいられないからね!」
山のように動かない騎士を前に、カノンは持ちうる技術全てを使って挑む。相手の攻撃を柔軟に避けながら、虚を突くように相手の死角から拳を振るう。一進一退の打ち合いに、カノンはむしろ喜びの笑みを浮かべていた。
(通じる……! センセーの教えは、確かに負けていない! なら次は――)
「ねえねえ、なんでわざわざ前に出てくるの。王様? もしかして、権能とか実行する人がいないと起動しないとか?」
『トリックスター・キラー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は敵の攻撃が薄まったタイミングを見計らって、王族1687に話しかける。積極的に攻撃をする気はない。そもそもクイニィーは戦争自体にあまり興味はない。彼女の興味は面白いか否かだけだ。
「いえ、権能は皆様がお使いするように神からたずさったモノ。貴方達とてアクアディーネ様に命令されているわけではないでしょう?。私が前に出ても非難されないのは役割ゆえ。ありていに言えば私が死んでも次の『王族』が繰り上がるだけでして。
あ、先ほどから私の精神に干渉しようとしているのは解りますが、権能はアイドーネウス様のお力なので人のみでの関与は難しいかと」
クイニィーの質問に律儀に答える王族1687。その会話の最中にパノプティコンの権能を通じて他国民に何かしようとするクイニィーに、そっと忠告する。
「なんだ残念。王様本当に偉くないんだ」
「恥ずかしながらその通りでして。現に貴方達にここまで踏み入られましたしな」
はっはっは、と戦場に似合わない笑いを浮かべる王族1687。
「直接対峙するのは、あの日の海戦以降でしょうか」
「できる事なら、別の形でお会いしたかったですなあ。貴方の盾は硬すぎる」
『いと堅き乙女に祝福を』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)の言葉に一礼でもしそうな口調で答える王族1687。イ・ラプセルがはじめてパノプティコンを攻めた時の話だ。待ち伏せ、撤退を余儀なくされた戦い。
「約束の為にも、ここは退いていただきます!」
「おや意外ですね。ここで倒すと宣言されると思いましたが」
「貴方を倒すのは私の役目ではないですからね。ですが、倒すつもりで挑ませていただきます!」
言って仲間を守るために展開するデボラ。防御の構えを維持しながら、隙を見て攻撃を加えていく。仲間を守ることを重視しているためか、デボラ自身が攻勢に出る事は少ない。
「王として貴方が『正しい』のは理解しています。ですがそれで納得できないのが人間なんです!」
「その妥協点を見出すのもまた『王』の務めなのですよ。
秩序や平和は様々な意見のバランスを無理矢理繋ぎとめて得られる事。『理想』の清らかさに住めない人も、『効率』の冷たさに納得できない人もいます。逆もしかり。そう言った全ての民を様々な手法で暴れさせないようにしているに過ぎないのです。
パノプティコンはそれを神の管理という形で成し遂げました」
「管理から外れたものをあんな風に見捨てるのが正しいわけないだろうが!」
セーイ・キャトル(CL3000639)はパノプティコンの管理からはずれたマイナスナンバー達の事を思い出す。土地だけを与えられ、放置同然に捨てられた彼ら。管理されない者は不要とばかりに切り捨てた政治。
「俺はあんたの……この国のやり方が正しいなんて思えない!」
「でしょうな。だからこそここに居る。その決断と勇気は賞賛しましょう。だからこそ、吾輩はそれに応じましょう」
王族1687から放たれる炎。それに応じるようにセーイも氷を解き放つ。低温が相手の動きを封じ、イ・ラプセルが攻め入る隙を生み出していく。少しずつ、だけど確実にパノプティコンを追い詰めていく。
「――などと言いましたが、この辺りが頃合いですか。撤退させていただきましょう。啖呵を切ったのに恥ずかしい限りですなぁ」
親衛隊の疲弊を見て、王族1687は戦場からの撤退を決意する。
「出て来ておいて、ここでの未来は諦めるんだ。ここでお前が諦めてるなら、この先もパノプティコンに未来は無いよ」
「この世界に未来など、始めからありませんよ。世界は終わり、そして繰り返す。それがこの世界。それがこの呪い。パノプティコンに未来がないと言いましたな。それは正鵠ではありますが不十分。未来がないのはイ・ラプセルも同様です。
仮に貴方達が神の蟲毒を完成させて神の力を束ねたとしても――そこからが本番なのですから」
それは去り際の捨て台詞か。セーイの言葉に対し、そんな言葉を返す王族1687。同時にパノプティコン兵士達も殿を残して撤退を開始する。一糸乱れず流れるような撤退軍務。徹底管理されたパノプティコンならではの軍事行為だった。
イ・ラプセルも追撃軍と基地の占拠に軍を分け、それぞれの作業に入る。
かくして基地2019にイ・ラプセルの旗が立つのであった――
●
基地2019を占拠したことにより、パノプティコン首都、地域1155は射程圏内となった。丘一つ隔てて見える巨大な塔。そこに管理国家パノプティコンの神、アイドーネウスがいる。
地域1155には未だ抵抗戦力は残っているだろうが、それでも主要な戦力はこの戦いで抑え込んだ。何よりも基地2019ほど防衛に特化した施設ではない。パノプティコンの命運は風前の灯火といってもいいだろう。
だが、イ・ラプセル軍も無傷ではない。二重三重の囮を労してもなお、兵士達の疲弊は無視でくるものではない。しばしの休養が必要だろう。
戦いの気配が完全に消え去った基地2019。
まだ冷たい冬の風を感じながら、自由騎士達は体を休める為に帰路につくのであった。
戦いの終わりは近い。神への塔は目前だ。
しかし平和な世界への道筋は、いまだ見えない――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
MVP
重傷
称号付与
†あとがき†
どくどくです。
パノプティコン陣営は名前を考えるのが楽でいい!(能力とバックストーリーは別)
以上のような結果になりました。
管理国家という存在が軍を為した時、こうなると言う面倒なフィールドにしたつもりです。いや、初回はもう少し酷かったんだけど文字数の都合でバッサリと。
ともあれお疲れさまです。パノプティコン攻略まであと一歩。もう都市がいきなり歩き出したりはしません。真っすぐに攻めるだけです(すんなりいけるとは書いていない)。
それではまた、イ・ラプセルで。
パノプティコン陣営は名前を考えるのが楽でいい!(能力とバックストーリーは別)
以上のような結果になりました。
管理国家という存在が軍を為した時、こうなると言う面倒なフィールドにしたつもりです。いや、初回はもう少し酷かったんだけど文字数の都合でバッサリと。
ともあれお疲れさまです。パノプティコン攻略まであと一歩。もう都市がいきなり歩き出したりはしません。真っすぐに攻めるだけです(すんなりいけるとは書いていない)。
それではまた、イ・ラプセルで。
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