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Peacemaker! その技術、明日の為に!

●『鉄の』BBAがやってきたお話
蒸気国家ヘルメリアは消え、一部の技術者はヴィスマルクに逃亡したりもしたがその多くはヘルメリアに残っている。
とはいえ、残った多くの技術者は自分の技術に自信がある者で、個人主義の者が多い。ありていに言えば、我が強い。
「Realy!? 飛ばない椅子とかありえないだろうが! スイッチ一つで100m移動が出来るんだぞ。着地? 知らん」
こんな人とかである。
そんな自分勝t……組織的に動かない者ばかりではたとえ技術があったとしても、方向性が定まらない。好き勝手やられては時間と技術の浪費である。そうすることで才能が開く事もあるが、いかんせん自由騎士達には時間がないのである。
そんな葛藤を察知したのか、或いはあまりの自由奔放さに重い腰をあげたか、イ・ラプセルから一人の女性がヘルメリアに渡航してくる。
「よーしお前ら! 先ずは規則正しい生活と整理整頓から始めようか!」
「それが出来るまでは工具使用禁止だ!」
イ・ラプセル蒸気技術研究所『クロックワークタワー』の長、『鉄の』ニーア・ナイチンゲイルである。もう少しで200歳に届こうとする老女だがその気骨は強く、一説ではプロメテウス開発者のトマス・マロリーの師匠筋に当たるとかなんとか。
ともあれ彼女は個人主義のヘルメリア技術者を『教育』し、鍛え上げる。その性格が治ったわけではないが、ナイチンゲイルの名前を聞くと震えあがって押し黙るぐらいには意識統一できたという。
「いいねぇ。それじゃあ自由騎士達に御礼参りだ! ヘルメリア根性を見せてやりな!」
物騒な事を言っているが、要するに自由騎士への技術還元である。移動用の蒸気自動車を生産し、さらには余ったパーツで何か発明品を作ってくれるという。どういうのが役に立つかはわからないので、自由騎士に意見を求めるという。
そんなわけで集められた自由騎士達。技術者と話し合い、どのような物を作るのだろうか?
蒸気国家ヘルメリアは消え、一部の技術者はヴィスマルクに逃亡したりもしたがその多くはヘルメリアに残っている。
とはいえ、残った多くの技術者は自分の技術に自信がある者で、個人主義の者が多い。ありていに言えば、我が強い。
「Realy!? 飛ばない椅子とかありえないだろうが! スイッチ一つで100m移動が出来るんだぞ。着地? 知らん」
こんな人とかである。
そんな自分勝t……組織的に動かない者ばかりではたとえ技術があったとしても、方向性が定まらない。好き勝手やられては時間と技術の浪費である。そうすることで才能が開く事もあるが、いかんせん自由騎士達には時間がないのである。
そんな葛藤を察知したのか、或いはあまりの自由奔放さに重い腰をあげたか、イ・ラプセルから一人の女性がヘルメリアに渡航してくる。
「よーしお前ら! 先ずは規則正しい生活と整理整頓から始めようか!」
「それが出来るまでは工具使用禁止だ!」
イ・ラプセル蒸気技術研究所『クロックワークタワー』の長、『鉄の』ニーア・ナイチンゲイルである。もう少しで200歳に届こうとする老女だがその気骨は強く、一説ではプロメテウス開発者のトマス・マロリーの師匠筋に当たるとかなんとか。
ともあれ彼女は個人主義のヘルメリア技術者を『教育』し、鍛え上げる。その性格が治ったわけではないが、ナイチンゲイルの名前を聞くと震えあがって押し黙るぐらいには意識統一できたという。
「いいねぇ。それじゃあ自由騎士達に御礼参りだ! ヘルメリア根性を見せてやりな!」
物騒な事を言っているが、要するに自由騎士への技術還元である。移動用の蒸気自動車を生産し、さらには余ったパーツで何か発明品を作ってくれるという。どういうのが役に立つかはわからないので、自由騎士に意見を求めるという。
そんなわけで集められた自由騎士達。技術者と話し合い、どのような物を作るのだろうか?
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.何か作れ!
●
どくどくです。
ヘルメリア後日談のような何か。要するに幕間。
●説明っ!
なんか作れ!(雑な説明)
場所はヘルメリア首都ロンディアナ。そこにある工場です。数十名の技術者が蒸気自動車を作っています。そして時々自由騎士達と話をしたりします。
依頼が成立した時点で、蒸気自動車の大量生産は成功します。成功した場合、参加依頼制限数が解除されます。
また、技術者と話し合って新たなアイテムを作ってもらえます。あるいは自分で作ってもいいでしょう。ぶっちゃけると、『技能』相応の効果を持つアクセサリーを作れます。(『鷹の目』の代わりになるズームゴーグルとか、『器用』相当のマニュピレーターとか。段階がある者は序まで。アレイスター魔法に属する者は不可)。武器や防具は作れません。あくまで『アクセサリー』の範疇のアイテムです。
●NPC
・ニコラ・ウィンゲート(nCL3000065)
自爆装置にロマンをかける技術屋です。得意分野は丸っこい兵器。感性120%で物を作ります。頼めば手伝ってくれますが、自爆装置は後で取り外す必要があります。あーあ。
アドバイスの9割9分は自爆装置の作り方です。
・メアリー・シェリー(nCL3000066)
機械人形作製者です。得意分野は球体関節。ヘルメリア技術科の中では、比較的真っ当です。
よく言えば他人を疑わず、悪く言えば何でも信じる朴訥なので、たいていのウソは信じてしまいます。
以下の発明品テンプレートを使うと、どくどくが楽出来ます。必須ではありませんが、参考になれば幸いです。
発明品テンプレート
名称:
ふりがな:
相当技能:
その他:
例1
名称:シンデマス
ふりがな:しんでます
相当技能:フェイクデス
その他:わたしはもう、しんでいる。そう思わせる立て看板とかなんやかんや。
例2
名称:ヴァナルガンド1890
ふりがな:でんせつのつりざお
相当技能:釣り上手
その他:ヘリメリアの技師たちが作り上げた蒸気で動く釣り竿。
皆様のアイデア……プレイングをお待ちしています。
どくどくです。
ヘルメリア後日談のような何か。要するに幕間。
●説明っ!
なんか作れ!(雑な説明)
場所はヘルメリア首都ロンディアナ。そこにある工場です。数十名の技術者が蒸気自動車を作っています。そして時々自由騎士達と話をしたりします。
依頼が成立した時点で、蒸気自動車の大量生産は成功します。成功した場合、参加依頼制限数が解除されます。
また、技術者と話し合って新たなアイテムを作ってもらえます。あるいは自分で作ってもいいでしょう。ぶっちゃけると、『技能』相応の効果を持つアクセサリーを作れます。(『鷹の目』の代わりになるズームゴーグルとか、『器用』相当のマニュピレーターとか。段階がある者は序まで。アレイスター魔法に属する者は不可)。武器や防具は作れません。あくまで『アクセサリー』の範疇のアイテムです。
●NPC
・ニコラ・ウィンゲート(nCL3000065)
自爆装置にロマンをかける技術屋です。得意分野は丸っこい兵器。感性120%で物を作ります。頼めば手伝ってくれますが、自爆装置は後で取り外す必要があります。あーあ。
アドバイスの9割9分は自爆装置の作り方です。
・メアリー・シェリー(nCL3000066)
機械人形作製者です。得意分野は球体関節。ヘルメリア技術科の中では、比較的真っ当です。
よく言えば他人を疑わず、悪く言えば何でも信じる朴訥なので、たいていのウソは信じてしまいます。
以下の発明品テンプレートを使うと、どくどくが楽出来ます。必須ではありませんが、参考になれば幸いです。
発明品テンプレート
名称:
ふりがな:
相当技能:
その他:
例1
名称:シンデマス
ふりがな:しんでます
相当技能:フェイクデス
その他:わたしはもう、しんでいる。そう思わせる立て看板とかなんやかんや。
例2
名称:ヴァナルガンド1890
ふりがな:でんせつのつりざお
相当技能:釣り上手
その他:ヘリメリアの技師たちが作り上げた蒸気で動く釣り竿。
皆様のアイデア……プレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
5個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2020年06月02日
2020年06月02日
†メイン参加者 8人†
●
「こういうモノづくり大好き! さーて、何を作ろうかな」
興味を隠せないと言った顔で『特級尋問官』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は笑みを浮かべる。使い慣れた器具を手にして、歯車を大きさ毎に並べ替えていく。蒸気機関の構造は頭の中にある。そして様々なアイデアも。
「バナナの皮……そう、バナナの皮です!」
何を言っているんだお前は。そういう視線が突き刺さるが気にしない『ベルなんとかオリジナル』エリシア・ブーランジェ(CL3000661)である。よくわからないがバナナの皮を強く熱弁していた。
「すっげー。これが蒸気機関か! 中は結構ごちゃごちゃしてるんだな!」
蒸気機関の基礎を教えてもらっている『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)。ついさっきまで蒸気自動車とは何かさえよく分かっていなかったのである。素人ではあるが、だからこそできる発想がある。
「歯車の組み合わせは、数字です。それぞれの大きさと歯の数には、意味があります」
基礎を教えているのは『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)。細かなギア比は置いて、基礎の基礎をかみ砕いて説明する。大事なのはその意味と役割。全ての歯車が組み合わさって機械は回るのだ。世界が、人なしでは回らないように。
「そっか、そういうふうに動くのか。じゃあこの棒は?」
『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)は蒸気技術にこうして触れるのが初めてとばかりに感動する。歯車が回転し、それがシャフトを動かしてまた別の歯車を動かす。様々な形の歯車を見ながら、そのたびに喜びの声をあげる。
「カノンは蒸気機関とかわからないけど、こういうのはワクワクするね!」
わいわいと騒ぐ相談所で『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)はうんうんと頷いた。新しい蒸気自動車に様々な発明品。新しい何かを生み出す状況に思わず心躍ってしまう。戦うだけが自由騎士ではないのだ。
「蒸気自動車……どのようなものになるのでしょうか?」
『カレーとパスタを繋ぐモノ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は組み上がっていく蒸気自動車を見ていた。山道などの急勾配では流石に訓練された馬に劣るが、搭載人数等を考慮すれば自動車が軍隊向けになるのだろう。
「リュエル様が女心チェッカーがどのような物か気にされていたので、実機を使用し実演します。前回参加されていない方もいますし、過去作品のデモンストレーションには丁度良いでしょう。
さあ! 今日こそジョン様の本当の気持ちを教えるのです!」
言って『春近し乙女』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は以前作った『女心チェッカー』のスイッチを押し、
『おおっと、ようやく姐さんにも男を疑うって言う心が芽生えたか。いい傾向だ。そりゃあの男はハニートラップを平気で提案する男。その手管もオレの知る限りではマダムから生娘まd――めぎょ』
何事もなかったかのように(物理的に)止めて、笑顔を見せた。うん、聞かなかったことにしよう。全員の意見は無言で一致する。
ともあれ始まる発明の場。さて、どのようなものが出来上がるのだろうか?
●
「バランスは重要だと思うのですよ!」
デボラは近くに居たメアリーを捕まえ、そう告げる。
「馬に乗っている時、不安定なバランスの時、そういう時にあると便利なのです! そう、メアリー様のオートマタ! あの動きは非常に参考になります!」
「オートマタのバランサーを人体に取り入れると水銀が漏れた時に危険だと思うわ」
「意外なものでバランスとってるんですね。ですが原理は同じ!
あとニコラ様! 以前暴走した人形ですが、服を着せる人形もありますか?」
「Serious!? 服を着せるとかなんでそんな物を作らねばならんのだ! 破壊こそ創造の原点だろうに!」
色々駄目なヘルメリア技術師であった。
「ええ。大事なのは意味のある創造。すなわちパスタです」
また出たよ、という他の人の視線をスルーしながらアンジェリカは頷く。まあ、言っていることは正しい。
「こちらには蒸気人形作りに長けたメアリー様と、ティダルトを作り出したニコラ様がいるのです。お二人の力を合わせ、さらには私の知識も融合させれば――」
広がる図面は音楽レコードの作り方。ガラスに針で溝を作り、その振動により音を鳴らす最新技術。――まあ、現実の1820年ではまだ未完成なのですが、そこはそれという事で。
「そう。パスタを尊ぶ音楽がいつでも再生できるのです。絡み合う全ての人間がフォークですくわれ、そして等しく同じ場所に運ばれる。ああ、なんという喜び」
言いながらもまじめに作っているあたりは、流石である。
「あ、あ、ああああ、ああー」
カノンは作った物を首に装着し、声を出す。隠密性を高めるために小型にしたかったが、機能の多さを考慮すれば口元を覆う大きさになるのは仕方なかった。声が口から発せられる以上、人体に影響ないようにするにはこうするしかなかったのだ。
「むー、声帯を喉の上から押さえ込んで……無理か。潰れちゃうしね」
「でも」「これはなかなか」「面白いことに」「なりそうかも!」
一言一言ごとに声色を変えていくカノン。ダイヤルで発せられた音質を変え、老若男女様々な声を出しているのだ。
「ありがとうね! お礼にカノンが作ったタルトを食べてね!」
お礼とばかりに技師達に枇杷のタルトを振舞う。今が旬の甘い果物をお菓子として食べやすいようにしたカノンの一品である。
「ヘルメリア脅威のメカニズム! ああ、敵であった時は恐ろしかったのに味方になるとなんと頼もしい! そうこれこそが人類融和。技術の発展にこそ未来があるのだ!」
芝居かかった口調でリュエルが口上を述べる。胸に『静かに!』というカードが掲げられているが、それでも興奮が止まらないのか口を開いてしゃべり続ける。二枚目のイエローカードが突きつけられるのも、時間の問題か。
「成程、この形が猿に似ているからモンキースパナ! 見事な発想! 野生の猿が想像できそうだ! それでいてこの利便性! 叡智とは実に見事だ!
あ、オレはこんなのを作ったんだ。当然自爆装置は外してあるぜ」
リュエルが指差したのは、髪飾り。テンションが高まった声に反応して音を奏でるものだ。まだまだ調節が必要だが、完成は近い。
「ネックは大きさ……ですね。あとは、性能を高めれば……」
自分で引いた図面を前に、たまきは思案する。おっとりしているようで技術者としてはしっかりとしたたまき。先ずは形から……の前に作るべきものの方向性を示すメモがそこら中に書かれてあった。
「人の役に立つもの……平和を作る……その為に……」
アイデアは多く、しかしそれを全て作り出すには時間も人でも技術も足りない。しかし創造できるという事は作れるという事だ。今はまだ無理でも、いずれ人類はたどり着く。その為に挑戦し続けることは間違いではないとたまきは信じていた。
「そうです。これもわたしの戦い……技師の戦いなのです」
「アイデア……アイデアかー。うーん……」
言われてうなりをあげるアデル。田舎暮らしで蒸気機関の便利さを知らないこともあり、具体的な『便利』が思いつかないのだ。蒸気の力がなくても生活できる以上、蒸気に頼るとどうなるかのイメージがつきにくいらしい。
「あ。でも水を運ぶためにああいうのがあると便利だよな……ええ、水その者を井戸からくみ上げられる? あと、冷凍技術? うわ、すごい!」
だがひとたび例を示すと、田舎暮らしであったために様々な問題点が見えてくる。年老いて畑を耕せなくなった人の補助具や、まだ幼い子供が出来る事。自分が歯がゆい思いをしてきたからこそ、アイデアが湧いて出てくる。
「そっか。こういう事もできるんだ。すっげー!」
「バナナの皮。あのバナナの外側で。ヌルヌルした。踏むとツルンと滑る。そして何故かここぞと言う時に必ず落ちてて踏んでしまう摩訶不思議な物体と現象の事ですわ!」
? よくわからない事を言うエリシア。だが当人は真剣そのものという感じで熱弁を振るう。
「ニコラ様からご教授いただきました! 先ずは火薬!」
大爆発が起きた。
「火薬だけで足りないのなら、てこの原理でシーソー投擲!」
大爆発が起きた。
「落下エネルギーでさらに二倍!」
大爆発が起きた。
「エネルギーを逃がさないために鉄板で包み込む!」
大爆発が起きた。
「こんなこともあろうかと!」
大爆発が起きた。
「その髭オシャレですね!」
大爆発が起きた。
「バナナ」
大爆発が起きた。
成功とは数多の失敗の上から生まれる。そうエリシアが起こした爆発もまた、成功の為の数多の失敗なのだ。
「ふふーん。できることなら武器とか作りたいよねー」
そんな失敗(ばくはつ)を予期していたのかクイニィーは鉄板を用いて防御壁を作っていた。備えあれば憂いなし。自爆装置を重んじるニコラと、トラブルメイカーな人間が重なればこうなるという分かりやすい例であった。
「名前つけるの苦手なのよね~……。誰かつけてくれない?」
いくつかの品物は完成したが、名前を付けるのが面倒くさいとばかりに放置するクイニィー。その辺りをどくどく……もとい、ヘルメリア技師に任せるととんでもないことになるのだが、作ることに没頭しているクイニィーには想像つかない事であった。
「これはどうなんだろう? もっともっと尖ったものがいいかな!」
その方向性は、クイニィーの性格を模したように悪戯っぽいことになっていくのだが。
そして調整を終え、自由騎士達は発明を終える。
さあ、発表の時間だ――
●
自由騎士達は壇上に上がり、作った物を発表していく。技師や他の騎士達が注目する中、一番最初に踊りり出たのは――
「バナナの皮で……ほわぁ!?」
爆発でシスター服が焦げているエリシアだった。よく生きてるなー、という視線を気にすることなく作り出した機械を置く。サルっぽい小さな人形だ。かってに動いてエリシアの足元にバナナの皮を置く。しかもちょうどエリシアが足をあげた先に投げるように。
「バ、バナナの皮を他人に使えればいいと思ったのに、どうしてこうなるんですかぁ?」
それはもともとの技能もそんな感じだからです。
「転びそうになる時はこれです! メアリー様のオートマタ技術の応用品!」
デボラが用意したのは天秤に複数の手がついたような装置だ。背中に装着し、バランスが崩れそうになるとそれを身体に伝えて真っ直ぐ安定するように、天秤から伸びた手が身体を動かしてくれるという。
「これで不安定な足場でも大丈夫! まあそれでもどうしようもない時はありますが」
「すっげー! オレのリズエモも反応してるぜ!」
リュエルのテンションの高さに応じるように髪飾りがメロディを奏でる。感情の高ぶりを超えや動きで感じ取り、それに合わせて音楽が鳴るようになっていた。酒場などで使えば、かなり騒々し……楽し気な状況になるだろう。
「オレのもすごくない? 勿論みんなもすごいけどさ!」
「派手だよなー。オレは結構地味になったかな」
ナバルが作ったのは、水をくみ上げるポンプだ。ポンプ自体は空気圧を利用したくみ上げポンプだが、水を通す場所にひと工夫置いて浄化できるようにしてある。これで泥水や毒などで汚染された水でも飲み水に帰ることが出来る一品だ。
「農作業してると、こういうのあるといいなっておもっだだけなんで」
「いいえ……困ったことを、解決するのが、発明です」
うん。と頷きたまきがナバルに応える。たまきが作り出したのは熱源を感知するブレスレットと、テレパスを妨害する曲を奏でるオルゴールだ。双方ともにこれからの戦いに役立つと信じて作り出された品物だ。
「派手さはありませんが、こういうのも大事です」
「そうそう! 遊び心も大事だよね」
声の質と高さを変えながら。カノンが微笑む。とはいえその口はマスクに覆われて見えないが。さまざなな声色を出せるマスク。カノンのような歌姫が使えばそれは素晴らしいパフォーマンスになるだろう。あるいは隠密でも使えそうだ。
「ら、らー、ら~。バッチリだね!」
「ふむ、その曲もいいですね」
カノンの歌声をメモ取るアンジェリカ。彼女が作ったのは音楽を鳴らす機械(10秒後に爆発)と、料理を作る機械だ。動力と関節部分はメアリーに任せ、料理のレシピなどはアンジェリカが設定する。何故かパスタ系が多いのだが、まあやんぬるかな。
「来るべき戦いに備え、食事を用意するのは重要なのです」
「作ったよ、満足!」
正に作り切って満足した、という顔でクイニィーは微笑む。テーブルの上に置かれたのは蒸気機関に繋がったモノクルと、小さな人形だ。モノクルは情報収集用の一品で、人形は小物を運ぶための蒸気人形だ。
「名前……名前かぁ? まあ適当につけといて!」
「YES! 運搬人形(キャリー)と――」
「つよさみえーるくん、で」
たまたまいたニコラとメアリーが命名する。センスとか色々アレだが。
●
「お疲れ様。甘いものをどうぞぉ」
魔剣士のオニビトがアマノホカリのお菓子を用意し、それに会うお茶を淹れてくる。甘味が疲れた頭に染み入るようだ。
今回自由騎士が作った物を原型とし、大量生産してショップに並ぶ予定だ。その日を楽しみにしながら、歓談に耽る。
完成した蒸気自動車も、今後の自由騎士輸送に役立つだろう。何せこれから大陸中を駆け巡ることになる。言葉通り、世界をかけた戦いになるのだ。
だが、今は平和を享受する時。ゆるり疲れをいやそう。
自由騎士達の笑い声が、楽し気に響いていた。
「こういうモノづくり大好き! さーて、何を作ろうかな」
興味を隠せないと言った顔で『特級尋問官』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は笑みを浮かべる。使い慣れた器具を手にして、歯車を大きさ毎に並べ替えていく。蒸気機関の構造は頭の中にある。そして様々なアイデアも。
「バナナの皮……そう、バナナの皮です!」
何を言っているんだお前は。そういう視線が突き刺さるが気にしない『ベルなんとかオリジナル』エリシア・ブーランジェ(CL3000661)である。よくわからないがバナナの皮を強く熱弁していた。
「すっげー。これが蒸気機関か! 中は結構ごちゃごちゃしてるんだな!」
蒸気機関の基礎を教えてもらっている『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)。ついさっきまで蒸気自動車とは何かさえよく分かっていなかったのである。素人ではあるが、だからこそできる発想がある。
「歯車の組み合わせは、数字です。それぞれの大きさと歯の数には、意味があります」
基礎を教えているのは『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)。細かなギア比は置いて、基礎の基礎をかみ砕いて説明する。大事なのはその意味と役割。全ての歯車が組み合わさって機械は回るのだ。世界が、人なしでは回らないように。
「そっか、そういうふうに動くのか。じゃあこの棒は?」
『ウインドウィーバー』リュエル・ステラ・ギャレイ(CL3000683)は蒸気技術にこうして触れるのが初めてとばかりに感動する。歯車が回転し、それがシャフトを動かしてまた別の歯車を動かす。様々な形の歯車を見ながら、そのたびに喜びの声をあげる。
「カノンは蒸気機関とかわからないけど、こういうのはワクワクするね!」
わいわいと騒ぐ相談所で『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)はうんうんと頷いた。新しい蒸気自動車に様々な発明品。新しい何かを生み出す状況に思わず心躍ってしまう。戦うだけが自由騎士ではないのだ。
「蒸気自動車……どのようなものになるのでしょうか?」
『カレーとパスタを繋ぐモノ』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は組み上がっていく蒸気自動車を見ていた。山道などの急勾配では流石に訓練された馬に劣るが、搭載人数等を考慮すれば自動車が軍隊向けになるのだろう。

「リュエル様が女心チェッカーがどのような物か気にされていたので、実機を使用し実演します。前回参加されていない方もいますし、過去作品のデモンストレーションには丁度良いでしょう。
さあ! 今日こそジョン様の本当の気持ちを教えるのです!」
言って『春近し乙女』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は以前作った『女心チェッカー』のスイッチを押し、
『おおっと、ようやく姐さんにも男を疑うって言う心が芽生えたか。いい傾向だ。そりゃあの男はハニートラップを平気で提案する男。その手管もオレの知る限りではマダムから生娘まd――めぎょ』
何事もなかったかのように(物理的に)止めて、笑顔を見せた。うん、聞かなかったことにしよう。全員の意見は無言で一致する。
ともあれ始まる発明の場。さて、どのようなものが出来上がるのだろうか?
●
「バランスは重要だと思うのですよ!」
デボラは近くに居たメアリーを捕まえ、そう告げる。
「馬に乗っている時、不安定なバランスの時、そういう時にあると便利なのです! そう、メアリー様のオートマタ! あの動きは非常に参考になります!」
「オートマタのバランサーを人体に取り入れると水銀が漏れた時に危険だと思うわ」
「意外なものでバランスとってるんですね。ですが原理は同じ!
あとニコラ様! 以前暴走した人形ですが、服を着せる人形もありますか?」
「Serious!? 服を着せるとかなんでそんな物を作らねばならんのだ! 破壊こそ創造の原点だろうに!」
色々駄目なヘルメリア技術師であった。
「ええ。大事なのは意味のある創造。すなわちパスタです」
また出たよ、という他の人の視線をスルーしながらアンジェリカは頷く。まあ、言っていることは正しい。
「こちらには蒸気人形作りに長けたメアリー様と、ティダルトを作り出したニコラ様がいるのです。お二人の力を合わせ、さらには私の知識も融合させれば――」
広がる図面は音楽レコードの作り方。ガラスに針で溝を作り、その振動により音を鳴らす最新技術。――まあ、現実の1820年ではまだ未完成なのですが、そこはそれという事で。
「そう。パスタを尊ぶ音楽がいつでも再生できるのです。絡み合う全ての人間がフォークですくわれ、そして等しく同じ場所に運ばれる。ああ、なんという喜び」
言いながらもまじめに作っているあたりは、流石である。
「あ、あ、ああああ、ああー」
カノンは作った物を首に装着し、声を出す。隠密性を高めるために小型にしたかったが、機能の多さを考慮すれば口元を覆う大きさになるのは仕方なかった。声が口から発せられる以上、人体に影響ないようにするにはこうするしかなかったのだ。
「むー、声帯を喉の上から押さえ込んで……無理か。潰れちゃうしね」
「でも」「これはなかなか」「面白いことに」「なりそうかも!」
一言一言ごとに声色を変えていくカノン。ダイヤルで発せられた音質を変え、老若男女様々な声を出しているのだ。
「ありがとうね! お礼にカノンが作ったタルトを食べてね!」
お礼とばかりに技師達に枇杷のタルトを振舞う。今が旬の甘い果物をお菓子として食べやすいようにしたカノンの一品である。
「ヘルメリア脅威のメカニズム! ああ、敵であった時は恐ろしかったのに味方になるとなんと頼もしい! そうこれこそが人類融和。技術の発展にこそ未来があるのだ!」
芝居かかった口調でリュエルが口上を述べる。胸に『静かに!』というカードが掲げられているが、それでも興奮が止まらないのか口を開いてしゃべり続ける。二枚目のイエローカードが突きつけられるのも、時間の問題か。
「成程、この形が猿に似ているからモンキースパナ! 見事な発想! 野生の猿が想像できそうだ! それでいてこの利便性! 叡智とは実に見事だ!
あ、オレはこんなのを作ったんだ。当然自爆装置は外してあるぜ」
リュエルが指差したのは、髪飾り。テンションが高まった声に反応して音を奏でるものだ。まだまだ調節が必要だが、完成は近い。
「ネックは大きさ……ですね。あとは、性能を高めれば……」
自分で引いた図面を前に、たまきは思案する。おっとりしているようで技術者としてはしっかりとしたたまき。先ずは形から……の前に作るべきものの方向性を示すメモがそこら中に書かれてあった。
「人の役に立つもの……平和を作る……その為に……」
アイデアは多く、しかしそれを全て作り出すには時間も人でも技術も足りない。しかし創造できるという事は作れるという事だ。今はまだ無理でも、いずれ人類はたどり着く。その為に挑戦し続けることは間違いではないとたまきは信じていた。
「そうです。これもわたしの戦い……技師の戦いなのです」
「アイデア……アイデアかー。うーん……」
言われてうなりをあげるアデル。田舎暮らしで蒸気機関の便利さを知らないこともあり、具体的な『便利』が思いつかないのだ。蒸気の力がなくても生活できる以上、蒸気に頼るとどうなるかのイメージがつきにくいらしい。
「あ。でも水を運ぶためにああいうのがあると便利だよな……ええ、水その者を井戸からくみ上げられる? あと、冷凍技術? うわ、すごい!」
だがひとたび例を示すと、田舎暮らしであったために様々な問題点が見えてくる。年老いて畑を耕せなくなった人の補助具や、まだ幼い子供が出来る事。自分が歯がゆい思いをしてきたからこそ、アイデアが湧いて出てくる。
「そっか。こういう事もできるんだ。すっげー!」
「バナナの皮。あのバナナの外側で。ヌルヌルした。踏むとツルンと滑る。そして何故かここぞと言う時に必ず落ちてて踏んでしまう摩訶不思議な物体と現象の事ですわ!」
? よくわからない事を言うエリシア。だが当人は真剣そのものという感じで熱弁を振るう。
「ニコラ様からご教授いただきました! 先ずは火薬!」
大爆発が起きた。
「火薬だけで足りないのなら、てこの原理でシーソー投擲!」
大爆発が起きた。
「落下エネルギーでさらに二倍!」
大爆発が起きた。
「エネルギーを逃がさないために鉄板で包み込む!」
大爆発が起きた。
「こんなこともあろうかと!」
大爆発が起きた。
「その髭オシャレですね!」
大爆発が起きた。
「バナナ」
大爆発が起きた。
成功とは数多の失敗の上から生まれる。そうエリシアが起こした爆発もまた、成功の為の数多の失敗なのだ。
「ふふーん。できることなら武器とか作りたいよねー」
そんな失敗(ばくはつ)を予期していたのかクイニィーは鉄板を用いて防御壁を作っていた。備えあれば憂いなし。自爆装置を重んじるニコラと、トラブルメイカーな人間が重なればこうなるという分かりやすい例であった。
「名前つけるの苦手なのよね~……。誰かつけてくれない?」
いくつかの品物は完成したが、名前を付けるのが面倒くさいとばかりに放置するクイニィー。その辺りをどくどく……もとい、ヘルメリア技師に任せるととんでもないことになるのだが、作ることに没頭しているクイニィーには想像つかない事であった。
「これはどうなんだろう? もっともっと尖ったものがいいかな!」
その方向性は、クイニィーの性格を模したように悪戯っぽいことになっていくのだが。
そして調整を終え、自由騎士達は発明を終える。
さあ、発表の時間だ――
●
自由騎士達は壇上に上がり、作った物を発表していく。技師や他の騎士達が注目する中、一番最初に踊りり出たのは――
「バナナの皮で……ほわぁ!?」
爆発でシスター服が焦げているエリシアだった。よく生きてるなー、という視線を気にすることなく作り出した機械を置く。サルっぽい小さな人形だ。かってに動いてエリシアの足元にバナナの皮を置く。しかもちょうどエリシアが足をあげた先に投げるように。
「バ、バナナの皮を他人に使えればいいと思ったのに、どうしてこうなるんですかぁ?」
それはもともとの技能もそんな感じだからです。
「転びそうになる時はこれです! メアリー様のオートマタ技術の応用品!」
デボラが用意したのは天秤に複数の手がついたような装置だ。背中に装着し、バランスが崩れそうになるとそれを身体に伝えて真っ直ぐ安定するように、天秤から伸びた手が身体を動かしてくれるという。
「これで不安定な足場でも大丈夫! まあそれでもどうしようもない時はありますが」
「すっげー! オレのリズエモも反応してるぜ!」
リュエルのテンションの高さに応じるように髪飾りがメロディを奏でる。感情の高ぶりを超えや動きで感じ取り、それに合わせて音楽が鳴るようになっていた。酒場などで使えば、かなり騒々し……楽し気な状況になるだろう。
「オレのもすごくない? 勿論みんなもすごいけどさ!」
「派手だよなー。オレは結構地味になったかな」
ナバルが作ったのは、水をくみ上げるポンプだ。ポンプ自体は空気圧を利用したくみ上げポンプだが、水を通す場所にひと工夫置いて浄化できるようにしてある。これで泥水や毒などで汚染された水でも飲み水に帰ることが出来る一品だ。
「農作業してると、こういうのあるといいなっておもっだだけなんで」
「いいえ……困ったことを、解決するのが、発明です」
うん。と頷きたまきがナバルに応える。たまきが作り出したのは熱源を感知するブレスレットと、テレパスを妨害する曲を奏でるオルゴールだ。双方ともにこれからの戦いに役立つと信じて作り出された品物だ。
「派手さはありませんが、こういうのも大事です」
「そうそう! 遊び心も大事だよね」
声の質と高さを変えながら。カノンが微笑む。とはいえその口はマスクに覆われて見えないが。さまざなな声色を出せるマスク。カノンのような歌姫が使えばそれは素晴らしいパフォーマンスになるだろう。あるいは隠密でも使えそうだ。
「ら、らー、ら~。バッチリだね!」
「ふむ、その曲もいいですね」
カノンの歌声をメモ取るアンジェリカ。彼女が作ったのは音楽を鳴らす機械(10秒後に爆発)と、料理を作る機械だ。動力と関節部分はメアリーに任せ、料理のレシピなどはアンジェリカが設定する。何故かパスタ系が多いのだが、まあやんぬるかな。
「来るべき戦いに備え、食事を用意するのは重要なのです」
「作ったよ、満足!」
正に作り切って満足した、という顔でクイニィーは微笑む。テーブルの上に置かれたのは蒸気機関に繋がったモノクルと、小さな人形だ。モノクルは情報収集用の一品で、人形は小物を運ぶための蒸気人形だ。
「名前……名前かぁ? まあ適当につけといて!」
「YES! 運搬人形(キャリー)と――」
「つよさみえーるくん、で」
たまたまいたニコラとメアリーが命名する。センスとか色々アレだが。
●
「お疲れ様。甘いものをどうぞぉ」
魔剣士のオニビトがアマノホカリのお菓子を用意し、それに会うお茶を淹れてくる。甘味が疲れた頭に染み入るようだ。
今回自由騎士が作った物を原型とし、大量生産してショップに並ぶ予定だ。その日を楽しみにしながら、歓談に耽る。
完成した蒸気自動車も、今後の自由騎士輸送に役立つだろう。何せこれから大陸中を駆け巡ることになる。言葉通り、世界をかけた戦いになるのだ。
だが、今は平和を享受する時。ゆるり疲れをいやそう。
自由騎士達の笑い声が、楽し気に響いていた。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
こー……キャラ性が出る発明品でした。
ショップにはしばらくした後に並ぶでしょう。
MVPは、まさかそれを選ぶとは、な貴方に。
それではまた、イ・ラプセルで。
こー……キャラ性が出る発明品でした。
ショップにはしばらくした後に並ぶでしょう。
MVPは、まさかそれを選ぶとは、な貴方に。
それではまた、イ・ラプセルで。
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