MagiaSteam
ZigzagShark!? 南方に素材を求めて



●ブレインストーミングより。
「南国フルーツを輸入する際に一悶着あった部族の方が特徴的な服装だったかと。
 戦士クラスすらその格好だったのなら何か特別な加工技術があってもおかしくないのではないでしょうか」

●女傑部族の若き長
 イ・ラプセルより南方海域には国と呼ばれるほどの大きな集合はない。百に満たない人数同士がそれぞれのコミューンを形成し、独自の文化を形成していた。
 そんな集団の一つに女傑部族がある。小麦色の肌を隠すことのない女性だけの部族だが、冬が来れば流石に着る者も増える。とはいえ南方海域は暖流の影響もあって寒気は強くなく、動物の毛皮を羽織る程度だ。
 そこの部族長――アミナと自由騎士達はそれなりに交流を持っていた。とはいえ明確な条約を結んでいるわけではなく、良き隣人程度の仲だ。戦闘行為自体が目的である女傑部族と戦闘が平和の手段であるイ・ラプセルとでは根本的に手を結ぶことは難しい。傭兵として雇うことも、金銭の価値観がない彼女達には不可能なのだ。
「んー、いみふだけどデコの仕方でおけ?」
 そんな彼女達に武器の加工技術を聞いたところ、以上のような回答が返ってきた。言葉の意味はともかく、加工技術自体はさほど特殊なものではないようだ。狩った動物をなめして衣服にし、牙や骨を武器にする。きわめて原始的な技術だ。
 だが――その動物自体が特殊だった。
「これがミツメトラの牙で、こっちがキンピカオットセイの皮、あとゼブラペガサスの皮と、その羽根で作った矢」
 説明された動物名は聞いたことがなく、出された素材も自由騎士達が知っている者とは毛色が違うものばかりだった。
 ガラパゴス現象――この命名自体はもう少し未来の話なのだが――孤立した環境において独自の進化がうまれ、大陸の動植物とは異なる系統が生まれ育つ現象である。そしてその中でもかなり特殊で狂暴な生物こそが、彼女の使う格闘武器となっていた。
「あーしのこれがジクザグサメの歯。皮も硬くて戦士の防具になるの」
 牙は格闘武器に、皮は防具に、骨は占いの道具にするという。内臓などは腐る前に調理し、余すことなく使用するとか。
「そろそろ現れる時期と思うけど、見てく? それともあーしらと一緒に狩る?」
 彼女が指さす先には、海岸線の砂浜。そこにジグザグサメが現れるという。
「鬼速で飛ぶからまじやばばよ。見た目もこわたんだから、超気合い入れないとぶるってさげさげになるかも」
 相変わらず言っていることはわからないが、一つだけ確実にわかることがあった。
「サメが……飛ぶの?」
「飛ばないサメっているの? そんなの超かわわなんだけど」
 言って頬に手を当てて喜ぶアミナであった。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
資源発掘σ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.ジグザグサメ3体の打破
 どくどくです。
 サメは飛びます(真顔)。

 この依頼は『ブレインストーミングスペース#1 リンネ・スズカ(CL3000361) 2018年11月09日(金) 22:02:55』を元に作られました。なお該当PCに優先参加権などはありません。ご了承ください。


●敵情報
・ジクザグサメ(×3)
 大きさ2メートル台のサメです。分類するなら幻想種? 尾びれ、背びれがノコギリのようにジグザグになっています。またその歯も鋭く、女傑部族で扱う武具の材料となります。
 女傑部族的には島を荒らす害獣であると同時に、戦士の証と言う扱いです。倒すことに抵抗はありませんし、素材をもって行くのも問題ありません。
 地上でも普通に呼吸が出来ます。

 攻撃方法
体当たり 攻近列 縦横無尽に飛び、体当たりを仕掛けてきます。
ひれ   攻近単 ノコギリ状の背びれとびれで切り裂いて、体勢を崩してきます。【ブレイク1】
噛みつき 攻近単 鋭い歯で噛みつき、深い傷を負わされます。【スクラッチ2】
歯飛ばし 攻遠単 複数の歯を矢のように飛ばします。歯はすぐに生えてきます。【二連】
威圧   魔遠単 凶悪な顔と叫び声で怯ませてきます。【不安】
浮遊    P  地面より10cmほど浮いた状態です。ぬかるみ、水上などの地形効果を受けません。

●NPC
・アミナ
 部族のリーダー的存在です。一〇代女性。種族はノウブル。獣の骨を加工して作った格闘武器を手に戦う格闘スタイルです。仲間ですが、指示を出しても聞いてくれません。好戦的なため、倒れるまで攻撃を続けます。一応仲間を範囲攻撃に巻き込まない、程度の常識はあります。
『震撃 Lv3』『旋風腿 Lv2』『豪鬼』『一騎当千 序』『陽炎 序』『マジ卍』『縄張り 破』等を活性化しています。

・弓兵
 後方から援護します。戦場にはいませんが、毎ターン全てのジグザグサメに50点のダメージを与えます。

●場所情報
 イ・ラプセルより南方の島。そこの砂浜。サメは海からエサを求めて砂浜にやってきます。時刻は昼。明るさ、足場、広さなどは戦闘に支障ありません。
 戦闘開始時、敵前衛に『ジグザグサメ(×3)』がいます。味方前衛に『アミナ』がいます。
 事前付与は一度だけ可能です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
  
状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
12モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2018年11月25日

†メイン参加者 8人†




「アミナ久しぶりっ!」
 言って拳を突き出す『全力全開!』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。それに合わせるようにアミナは拳を突き出して、合わせた。同じ格闘スタイル同士、何か通じるところがあるのだろう。
「凄いわよねー。これ全部動物の皮なんだ」
 アミナの着ている物を見ながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は頷いていた。エルシー自身も動きやすさを重視したコスチュームを着ているが、アミナが着ている者はそれとはまた方向性が違っていた。
「ええ、実にその……独特的な文明ですね」
 アミナの格好を見ながら『静かなりしもののふ』サブロウ・カイトー(CL3000363)はうむうむと頷いていた。健康的な褐色の肌。すらりと伸びた足。弾けそうな胸。それを隠す僅かな革防具。実に爆発的だとジローは満足する。
「女だけの戦闘部族とはね。いろんな噂を聞くことはあったが、こんなのは初めてだな。……空飛ぶサメも含めて」
 初めて触れる異文化に『蒼影の銃士』ザルク・ミステル(CL3000067)は感嘆のため息をつく。傭兵として各地を回ってきたが、戦争地域から離れた場所に来るのは稀だ。海から浮かんでくるサメを見て、さらなるカルチャーショックを受ける。
『理解。体の各所に浮きのような器官発見。気球の原理で浮遊』
 浮かんでいるサメを見て『口封じ』大噛・シロ(CL3000400)はその原理を推測した。口が封じられているため、テレパシーで仲間に伝える。体の各所に空気を溜める器官があり、そこに特殊なガスを内包しているようだ。移動の推進力もおそらくそれだろう。
「ふむ。ということは地上で動きが遅くなる、ということはなさそうですね」
 なるほど、とシロの言葉を聞いて『飢えた白狼』リンネ・スズカ(CL3000361)は頷いた。水中の生物は地上に上がれば動きが制限される。だがあのサメはそういったことはなさそうだ。その事実にむしろ嬉しさを感じていた。
「おーーっほっほっほ! サメ狩りですわー! サメ日和ですわ!」
 腰に手を当てて高笑いする『高潔たれ騎士乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)。サメ日和って何だろう、という疑問すら彼女の笑う姿の前には消え去ってしまう。華やかなオーラを振りまき、ポーズを決める。
「このサメを倒す事が出来れば、彼女達部族に戦士として認めてもらえるのかな」
 凶悪なジグザグザメを見ながら『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)はそんなことを考える。初戦は闘技相手。二度目は三つ巴。そして三度目は共闘。自由騎士として恥ずかしくない戦いを示し、部族と良い関係を結べればいいのだが。
「まじやばかったらドロンしていーよ。噛まれるとゲロ痛いから」
 戦う前にアミナは自由騎士達に忠告する。おそらくこちらの身を案じての事だろう。元よりサメは島の問題。自由騎士達が係わる義務はない。あくまで加工技術を聞きに来たついでなのだ。
 だが、ここで引く者はいなかった。それぞれの武器をマキナギアから取り出し、構える。
 サメの咆哮が浜辺に響く。その轟音を合図に、戦いは始まった。


『先制』
 短く告げてシロが飛び出す。集落の蔵から勝手に拝借した刀を手に、ジグザグザメに迫る。軽戦士である自分が撃たれ弱いのは自覚している。故に足を止めず、常に動き回って攻めるのみ。砂浜を蹴り、一気に距離を詰める。
 大きく開かれる鮫の口。それに恐れることなくさらに踏み込み、交差すると同時に刀を振るう。手に伝わるのは硬い皮の感触。そしてそれを裂く感触。しかしその余韻に浸ることはない。
『求む、連撃』
「いいでしょう。戦士の誉れ、いただきますよ!」
 太刀を掲げるポーズをとり、サブロウが宣誓する。アマノホカリ出身の下っ端騎士。祖国でも負けた側の一族だったサブロウだが、決して負け犬ではない。その闘争心を示すように、獰猛な笑みを浮かべて戦いに挑む。
 シロが斬ったジグザグザメに向かって一気に迫り、砂浜を蹴る。両腕を組んで構えるアミナをみて、その意図を察して跳躍した。組んだアミナの手に足を乗せ、女傑部族の力で一気に跳躍するサブロウ。剣を下に向け、サメを上から貫く。
「ははっ、これはいい! 狩るも狩られるも、覚悟は出来ているぞ!」
「ノリノリね。いいわ、シャークハンター☆エルシーの技のキレ、魅せてあげるわ!」
 体内で『龍』の力を巡らせながらエルシーが構えを取る。地上で飛び回る鮫。最初は直線的な動きしかできないと思っていたが、細かに飛び回る鮫を見てその認識を改める。瞬間的にガスを出し、動きを調整しているのか。
 どちらにせよ、やることは変わらない。真正面から拳を打てば硬い皮膚に阻まれ衝撃は通らない。ならば、とばかりにスライディングするように地面を滑り、サメの腹を蹴り上げるように攻めるエルシー。如何なる生物も、鍛えられない部位は存在するのだ。
「喰らいなさい! これが鍛え抜かれた私の拳よ!」
「しかし頑丈な皮だな。まあ、その分良い防具が作れるんだろうけど」
 銃を手にしてザルクがため息をつく。真正面から銃を撃っても、ジグザグザメに怯む様子が見られない。傷具合を見る限り、単に痛みを感じないというわけではないようだ。何から何まで規格外だな、と皮肉気に笑みを浮かべる。
 瞳に魔力を集中させ、銃を構えるザルク。無敵の鎧などない。無敵の生物などいない。どこかに隙があり、それを見つけるのが人の生き方。ガスがたまった浮袋めがけて放たれる弾丸。着弾と同時にジグザグザメが大きく揺らし、その動きを止める。
「動きは封じたぜ、後は頼む!」
「うん! いっくよー!」
 央華大陸風の服を翻し、カーミラが一気にジグザグザメに迫る。サメの強さを肌で感じながら、むしろ喜々として戦いに挑む。強い相手は嫌いじゃない。動物でも幻想種でも人間でも。思いっきりぶつかって、気持ちよく勝つのだ。
 アミナと背中合わせになって構え、背中でその動きを感じ取る。拳を繰り出すアミナに合わせて蹴りを繰り出し、アミナが下方から攻めれば、カーミラは上方から穿つ。流れるような格闘の連携。考えるな、感じろ。思うがままにカーミラは連携を繰り出していく。
「とー! やー! たぁ!」
「カーミラ様が央華系の動き。そしてアミナ様は肉食獣を模した動き、ですか」
 後ろから仲間の闘いを分析しながらリンネは頷く。訓練と勝負を繰り返したリンネにとって、他者の動きを分析するのはもはや癖のようなモノだ。仲間として尊敬し、そしていずれ戦う時の参考にする。武術家の血が疼くのを感じていた。
 勿論それで攻撃の手を止めることはない。服の裾から滑らせるように二本の針を手の平に運び、気を乗せる。瞬きの内に放たれた二つの針は、異なる軌跡でジグザグザメに迫った。一つ目の針で動きを制し、迫る二つ目の針が鮫の口に突き刺さる。
「手合わせする時が楽しみです。幸い、アミナ様は頼めば突き合ってくれそうですし」
「その時はこのわたくしが審判を務めさせていただきますわ! おーっほっほっ!」
 楽しそうに笑うジュリエット。一定のルールにのっとった陰惨ではない戦いなら歓迎だ、とばかりにリンネの提案に同意する。戦争だの犯罪だのに関わることの多い自由騎士にとって、心が晴れやかになる戦いは貴重なのかもしれない。
 仲間の傷を確認しながら、ジュリエットは『乙女の外套』を翻す。ピンク色を基調とした外套が南国の風に乗ってふわりと舞った。同時に放たれた癒しの光が仲間達を包み込む。マントが再びジュリエットを包むころには、仲間の傷は癒えていた。
「これが! わたくしの力! サメ如きにわたくしの仲間は傷つけさせはしませんわ!」
「そうだね。誰かを守ることが騎士の本懐だ」
 ジュリエットの言葉に頷くようにアダムが言葉を放つ。世界はいつだって残酷で、手を伸ばさなければ尽きる命がたくさんある。だからこそ騎士は誓うのだ。それがどれだけ荒唐無稽な事だろうと、全身全霊をかけて。
 蒸気で動く体と両腕。この体を悔いたことはない。硬い体は誰かを守るのに最適だからだ。矢のように飛んでくるサメの歯を、機械化された腕でガードする。ダメージが信号となって脳に届くが、それを堪えてアダムは笑みを浮かべる。
「我が名はアダム・クランプトン! 騎士として、戦士として貴女方女傑部族と共に歩む為に! ……えぇと、ずっともでいる為に! この場で戦わせていただく!」
 聞きかじりの部族の言葉を乗せてアダムが宣誓した。
(共に歩むために、とか……求愛か!)
(他意はないんだろうけど、聞きようによってはこれは……!)
(さすが天然。さすがイケメン騎士。イケメンなら許されるとはまさにこのこと……!)
(そういう人だとはわかってすわ! でも……いろいろ忸怩たる思いが!)
 それを聞いた自由騎士の面々ば一瞬固まり、口にこそ出さないが様々な思いと共に視線がアダムに突き刺さる。
「え? あーし、もうズッ友だとおもってたけど?」
 当のアミナ本人はむしろきょとんとした顔で言葉を返した。
 様々な思いが交錯する中、ジグザグザメとの戦いは激化していく。


 ジグザグザメは獰猛さをむき出しにして自由騎士達に襲い掛かる。本能のままに噛みつき、牙を飛ばし、巨体をぶつけてくる。
「想定内。打たれ弱さ、自覚」
「悪くない。悪くないですよ、この感覚!」
「まだ倒れるわけにはいかないね」
 前衛で戦うシロとサブロウ、そして仲間を庇い続けているアダムがサメの猛攻を受けてフラグメンツを削られる。
「これで、どうだー!」
 乱戦状態の中、カーミラが細かく足を動かし回転するようにしながら拳を放つ。体内のパワー全てを解き放つように両拳でサメを穿つ。足を止めることなく強引に力を振り絞り、さらに両手を動かし、双拳をぶつける。
「ジグザグザメの牙、如何ほどのものか試させてもらいますよ」
 大技を放ったカーミラを庇うようにリンネがサメの前に立つ。後方で回復を行うヒーラーであると同時に、修行を絶やさぬ求道者。仲間を守る理由もあるが、戦士の証と言われた幻想種の強さを肌で感じてみたくなった。
「サポートは任せていただきますわ! この! わたくしを! 信じてくださいまし!」
 サメの形相に怯えることなくジュリエットが胸を張る。実際のところ、怖くないと言えば嘘になる。だが仲間がいるから、その恐怖は軽減されていた。前で戦う人達や守ってくれる人達。その絆を感じることが出来るから。
「ヒレだけじゃなく、動きもジグザグするのね! だったらこうよ!」
 両手に嵌めたスカーレットナックルを強く握りしめる。横に動くサメにフックを叩き込み、追撃のストレートをお見舞いした。そのまま息を吸って酸素を体内に取り入れ、吐き出すと同時に突き当てた拳を基点に至近距離からインパクトを加える。重く響く一打。
「どれだけ固いって言っても、『アレ』に比べれば柔らかいもんだろうよ!」
 言いながらザルクは銃の引き金を引く。脳内で描く己の敵。それを撃ち砕くために生み出された武技をサメに向かって放つ。弾丸は寸分違わずサメの脳天に当たり、その皮を貫いた。痙攣の後にサメが地面に落ち、動かなくなる。
『交差法、有効。サメの思考、動物並』
 シロは挑発するように念波を送って攻撃を誘発し、カウンターを当てながらダメージを蓄積していく。百発百中とはいかないが、それでも有効打と言える程度には成功していた。とはいえ失敗時のリスクが高いのは否めない。サメから受けた傷は軽くはなかった。
「ゥオオオオオオオオオオオオオオ!」
 度重なるダメージを受け、防御に徹していたアダムが攻撃に転じる。隠していた攻撃性をむき出しにして、肉体のダメージを気にすることなく敵陣に突っ込んでいく。全身から煙を吹き出し、魔力を込めた一撃でサメを穿つ。
「これはアミナさん的に言えばアガるという奴ですな!」
 額から流れる血を拭うことなく太刀を振るうサブロウ。普段の『街のお巡りさん』の雰囲気は今はなく、闘争心のままに武器を振るう一人の剣士。懐島の先祖もこのように生きてきたのか、と思うと少し羨ましくなる。
 ジュリエットとリンネの回復に支えられ、自由騎士達は一体一体確実にジグザグザメを落としていく。自然で鍛えられたサメの力は脅威だが、人の団結力がそれを上回ったのだろう。サメは徐々に体力を削られ、倒れていく。
「あいたたた……!」
「やったなー!」
 エルシーとカーミラが噛みつかれてフラグメンツを削られるが、残ったサメは一匹。自由騎士と女傑部族の攻撃を受け、その疲弊は激しかった。
「最後の一撃はこのわたくしが貰いますわ! おーーーっほっほっほっほ!」
 もはや回復の必要なしと判断したジュリエットが攻撃に転じる。二条の流れ星が天に輝き、ジグザグザメに向かい降り注ぐ。赤い軌跡を煌めかせ、轟音と共にサメの背中を撃ち貫いた。
「サメ狩り完了! 南の島の砂浜に、深紅の勝利を刻ませてもらいましたわ!」
 口に手を当てて高笑いするジュリエット。その宣言が戦いの終わりを告げていた。


「おー、あーし生きてる」
 ボロボロになったアミナが驚きの声をあげていた。戦いと死が表裏一体である彼女達にとって、戦いの後に生きているというのは運が良かったという証でもある。後方から弓を言っていた女傑部族たちが素材を得る為にやってくる。
「ねー、アミナ。サメってどうやって皮をはぐの?
「ここからこうして――」
 言いながら腰に差していた短刀を使い、ヒレを皮をはいでいく。アミナ自身が口で教えるタイプではないが、やり方は解った。
「えぐい! えぐい! えぐいですわ!」
「あ、でも上手くいくとアダムと共同作業できるかもよ」
「わたくし、頑張りますわ!」
 解体している所を見て料理に不慣れなジュリエットは拒絶反応を示すが、エルシーの一言でやる気を出す。ムードはないけどね、と言う言葉を飲み込むエルシー。
『肉は柑橘類に漬ける。味付けと同時に臭みを抑える手法、合理的』
 サメの肉を壺に入れる女傑部族。壺から漂う香りをかいだシロが頷いた。サメ肉は死後独特の香りがするため料理には向かないと言われている。だが、その香りを押さえれば、良質の肉となるのだ。
「成程な、基本的には速度重視か。なめしに使うのは……未熟なバナナか? そいつは珍しいなあ」
 ザルクは女傑部族の皮剥ぎ技術を見ながらメモを取っていた。イ・ラプセルにも漁師はいる。そこで見たことのある魚の捌き方とほぼ同じだ。なお、なめし技術はイ・ラプセルではワインを作る際のブドウの種子や皮を使い、その違いは場所特有かと納得する。
 てきぱきと皮についた肉や骨をはぎ取り、壺の中のなめし液につける。その間に火をおこし、肉を焼く準備を整えていた。
「ねー、アミナー。サメ、もらってもいい?」
「いぇあ。倒したんだし当然しょ」
 女傑部族の快諾も得て、ジグザグザメの皮や骨を貰うことが出来た自由騎士達。後は――
「一緒に食事をしよう! 折角共に戦ったんだ。なら食べるのも一緒じゃないとね」
「私は手合わせを願いましょう。勿論、傷を癒した後にですが」
「私もやるー!」
 肉が焼ける香りの中で、アダムが提案する。それに頷きながらリンネはアミナに勝負を挑んだ。それに乗るカーミラ。
「おけ。サメぱくついたら秒でやるよ」
「良い余興ですな。では僕はアマノホカリの剣舞でも見せましょうか」
「あの! この骨を使って……その、れ、恋愛に関する占いをすることはできるのかしら……!?」
「うわ。本当においしい! 白身がとろとろしてるわ」
『任務完了。宴、部族との交流に最適。即時帰還より有用』
 様々な思いを込めて、南の島で楽しむ自由騎士達であった。

 充分に楽しんだ後、自由騎士達はなめした革と骨を貰ってイ・ラプセルに戻る。
 技術的な部分はともかく、いい素材を貰ったことで新たな武具や防具が作れるだろう。
 そしてズッ友の証として、もう一つ貰ったものがある。
「これは……際どいね」
「際どいですわ!」
「うん。僕も彼女達の衣服面積の少なさはどうかなと思ってる」
 女傑部族たちが着ている衣服である。胸と腰を隠す程度のデザインだ。
「しかし動きを制限しない防具としては理想的です」
 動き回っても大事な部分が見えることがないのは彼女達の動きを見ればわかるが、肌の九割以上を晒すのは衣服として如何なものか。と言うか下着の方がマシなレベルだった。友好の証を無下に断るわけにもいかず、受け取る形となった。

 後にデザインを見て感銘を受けたテイラーが大量生産し、際どい衣装がショップに並ぶことになる。
 だがプラロークではない自由騎士達には予測もできない未来だった。


†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『シャークハンター☆エルシー』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
特殊成果
『サメ肉』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員

†あとがき†

どくどくです。
 アミナ、作った時は一回限りの予定だったんだけどなぁ。

 以上のような結果になりました。一人ぐらいは倒したかったが……!
 革製品と骨の武具に関しては、加工後ショップに並ぶと思います。
 あと最後の水着はどくどくの趣味ではなくねこてんしCWのアイデアであることを主張しておきます。どくどく、わるくない。賛成したけど。
 MVPはサメの弱点を的確に推測したスカーレット様に。
 
 それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済