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【闇より還ルもの】Leathergarrot

●レザーギャロット
『レザーギャロット』と呼ばれた殺人鬼がいた。
その名の通り、革のひもを使って首を絞めて殺す殺人鬼である。獲物に狙われていることを示唆させ、姿を見せては首に触れる。そして精神的に追い込んで最後に首を絞めるといったやり方だ。
犠牲者は十四人。活動期間は六年。おおよそ一年に二人から三人のペースで殺していたという。最終的に絞首刑になったのは何かの皮肉だろうか。
そう。甚振るように人を殺す残虐な殺人鬼はもういない。
幽霊列車(ゲシュペンスト)の汽笛が鳴るまでは――
●トルストの街で
大量の還リヒトがイ・ラプセルに現れた。首都サンクディゼールと港町アデレードを結ぶ中間の街、トルストも例外ではない。
現れた霊型還リヒトのほとんどが、首に革で強く絞められた跡が残っており、窒息したかのような苦悶の表情を浮かべている。
そして唯一肉体を持つ還リヒトには、幻想種の革で作られた絞首紐(ギャロット)があった。それをちらつかせながら、逃げ惑う人たちの首を絞めていく。
これが水鏡階差演算装置で見られた惨劇。
そしてこれは過去の記録から分かった事。
『レザーギャロット』は首を絞めた相手にこう問いかけたという。
「このまま死ぬか。私の手下となって首絞めを手伝うか。選びなさい」
そのほとんどが命惜しさに殺人鬼の手伝いをし、しかし最終的にはその者も殺されたという――
●階差演算室
「大量に発生した還リヒトの原因追及は後回しだ。今は蘇った殺人鬼を止めるために戦ってほしい」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は自由騎士達に資料を渡した後、短くそう告げる。
――そこに見える疲労は、肉体的よりも精神的な疲労が多かった。
『レザーギャロット』と呼ばれた殺人鬼がいた。
その名の通り、革のひもを使って首を絞めて殺す殺人鬼である。獲物に狙われていることを示唆させ、姿を見せては首に触れる。そして精神的に追い込んで最後に首を絞めるといったやり方だ。
犠牲者は十四人。活動期間は六年。おおよそ一年に二人から三人のペースで殺していたという。最終的に絞首刑になったのは何かの皮肉だろうか。
そう。甚振るように人を殺す残虐な殺人鬼はもういない。
幽霊列車(ゲシュペンスト)の汽笛が鳴るまでは――
●トルストの街で
大量の還リヒトがイ・ラプセルに現れた。首都サンクディゼールと港町アデレードを結ぶ中間の街、トルストも例外ではない。
現れた霊型還リヒトのほとんどが、首に革で強く絞められた跡が残っており、窒息したかのような苦悶の表情を浮かべている。
そして唯一肉体を持つ還リヒトには、幻想種の革で作られた絞首紐(ギャロット)があった。それをちらつかせながら、逃げ惑う人たちの首を絞めていく。
これが水鏡階差演算装置で見られた惨劇。
そしてこれは過去の記録から分かった事。
『レザーギャロット』は首を絞めた相手にこう問いかけたという。
「このまま死ぬか。私の手下となって首絞めを手伝うか。選びなさい」
そのほとんどが命惜しさに殺人鬼の手伝いをし、しかし最終的にはその者も殺されたという――
●階差演算室
「大量に発生した還リヒトの原因追及は後回しだ。今は蘇った殺人鬼を止めるために戦ってほしい」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は自由騎士達に資料を渡した後、短くそう告げる。
――そこに見える疲労は、肉体的よりも精神的な疲労が多かった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.還リヒト15体の打破
どくどくです。
全体イベントでございます。お届けするのは、蘇る殺人鬼。
●敵情報
・『レザージャケット』(×1)
六年にわたり首絞め殺人を繰り返してきた極悪人です。生前はノウブルの女性だったようです。
幻想種サラマンダーの皮をなめして作った絞首紐を用いて首を絞める殺人スタイルです。またそれ自体が武器(ウィップ相当)となっています。
生前の行動をなぞるように、人々の首を絞めていきます。
攻撃方法
ヒートアクセルLv3 攻近単 軽戦士の技の一つです。【ピヨ】
ブレイクゲイト Lv2 攻遠単 軽戦士の技の一つです。【ブレ1】
アイアムロウ! 破 P 俺が法律です。
セクシー P 生前は妙齢の美女だったようです。
・ゴースト(×14)
『レザーギャロット』に殺された犠牲者です。殺人鬼に恐れるように従っています。生前は彼らも殺人の手伝いをしていたようです。
攻撃方法
「ごめんね」 魔近単 冷たい手で押さえ込んできます。【ウィーク1】
「許して」 魔近単 纏わりついて動きを鈍くします。【スロウ1】
●NPC
逃げ惑う人たち(メイン参加者+2名ほど)
逃げ遅れたトルストの人達です。
相応の対応をしない場合、斜線に割って入り遠距離攻撃の命中にマイナス修正がかかったり、地面で震えて邪魔なため回避にマイナス修正がかかったりします。
範囲攻撃を放った場合、巻き込まれます。
●場所情報
夜の街。そのメイン街道。そこに還リヒトたちはやってきます。街灯があるため、灯に問題はなし。メイン参加者人数+2名ほど逃げ遅れた人がいます。
戦闘開始時、敵前衛に『ゴースト(×14)』、敵後衛に『レザーギャロット(×1)』がいます。『レザーギャロット』は隙を見ては前に出る戦いをするようです。
急いでいるため、事前付与は不可とします。
この共通タグ【闇より還ルもの】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
すべての依頼の成否によって、決戦の結果に影響を及ぼします。
倒しきれなかった敵は決戦のカタコンベに集合することになります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
全体イベントでございます。お届けするのは、蘇る殺人鬼。
●敵情報
・『レザージャケット』(×1)
六年にわたり首絞め殺人を繰り返してきた極悪人です。生前はノウブルの女性だったようです。
幻想種サラマンダーの皮をなめして作った絞首紐を用いて首を絞める殺人スタイルです。またそれ自体が武器(ウィップ相当)となっています。
生前の行動をなぞるように、人々の首を絞めていきます。
攻撃方法
ヒートアクセルLv3 攻近単 軽戦士の技の一つです。【ピヨ】
ブレイクゲイト Lv2 攻遠単 軽戦士の技の一つです。【ブレ1】
アイアムロウ! 破 P 俺が法律です。
セクシー P 生前は妙齢の美女だったようです。
・ゴースト(×14)
『レザーギャロット』に殺された犠牲者です。殺人鬼に恐れるように従っています。生前は彼らも殺人の手伝いをしていたようです。
攻撃方法
「ごめんね」 魔近単 冷たい手で押さえ込んできます。【ウィーク1】
「許して」 魔近単 纏わりついて動きを鈍くします。【スロウ1】
●NPC
逃げ惑う人たち(メイン参加者+2名ほど)
逃げ遅れたトルストの人達です。
相応の対応をしない場合、斜線に割って入り遠距離攻撃の命中にマイナス修正がかかったり、地面で震えて邪魔なため回避にマイナス修正がかかったりします。
範囲攻撃を放った場合、巻き込まれます。
●場所情報
夜の街。そのメイン街道。そこに還リヒトたちはやってきます。街灯があるため、灯に問題はなし。メイン参加者人数+2名ほど逃げ遅れた人がいます。
戦闘開始時、敵前衛に『ゴースト(×14)』、敵後衛に『レザーギャロット(×1)』がいます。『レザーギャロット』は隙を見ては前に出る戦いをするようです。
急いでいるため、事前付与は不可とします。
この共通タグ【闇より還ルもの】依頼は、連動イベントのものになります。同時期に発生した依頼ですが、複数参加することは問題ありません。
すべての依頼の成否によって、決戦の結果に影響を及ぼします。
倒しきれなかった敵は決戦のカタコンベに集合することになります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年08月14日
2018年08月14日
†メイン参加者 8人†
●
「いやぁ、しかし、中々の美人だな、はっはっは! どれだけ見目が良くても、中身が腐りはてていては、これほど醜く映るものなのだな……!」
蘇った殺人鬼を前に『いつかそう言える日まで』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は豪快に笑う。相手は自分の快楽のために命を奪う殺人鬼。見た目がどれだけ美しくとも、醜悪な心だけは隠せない。
「これだけの犠牲者が……辛かったろうに」
『レザーギャロット』を守るように漂う幽鬼を見ながら『イ・ラプセル自由騎士団』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は目を伏せる。彼らは殺人鬼に弄ばれた犠牲者。追い詰められて殺人に加担し、その罪を抱えて尽き果てた者達。早く解放してあげなくては。
「急ぎ殲滅し、カタコンベに戻るぞ」
軍務に忠実な『女傑』グローリア・アンヘル(CL3000214)は短く自分がやるべきことを告げる。死んだ人間の素性など今は関係ない。王都を狙う還リヒトの方がグローリアにとっては重要だ。ここを制圧し、前線に戻るのみ。
「レザーギャロット……いや、今は」
忌々しい殺人鬼の記録を思い出しながら『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)は歯を食いしばる。殺人鬼に抱く感情は怒りしかないが、今ここでそれを爆発させるつもりはない。イ・ラプセル騎士団として、まずやるべきことがある。
「おれだって一人でがんばれるんだ」
別の戦場で戦う親友のことを想いながら『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)は武器を握る。戦友の援護はここにはないが他の自由騎士がいる。仲間を信じ、足を前に踏み出した。
「この手の犯人って夜のお仕事の人間をよく狙うイメージあるしねぇ」
軽くため息をつき『もてかわハーレム♡マスター』ローラ・オルグレン(CL3000210)は『レザーギャロット』を見る。夜道で客を引く商売を狙う殺人鬼は多い。それは視界や治安の悪さもあって狙いやすいからなのだ。事実、この殺人鬼も夜道を狙うことが多かった。
「これ以上犠牲者を出させはしねーぜ!」
ガシャガシャと鎧の音を響かせて『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)がトルストの道を進む。全身を包む鎧。小さな体躯にしては大きすぎる手甲。それが街灯に照らされてぼんやりと光る。
「ふふ、折角蘇ってきてもあたし達と対峙したが運の尽きだよ」
薄く笑う『知りたがりのクイニィー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)。知識欲旺盛な彼女は、殺人鬼の事も知っていた。イ・ラプセルを恐怖に貶めた快楽犯罪者。怒りよりも好奇心の方が高まっていく。伝説の殺人鬼は、どんな動きをするのか。
「――――」
殺人鬼の還リヒトは言葉なく自由騎士に向き合い絞首紐を向ける。多くの人を葬ったサラマンダーの皮をなめして作ったモノ。生前と同じようにそれを生きている者に向ける。その殺意を感じ取ったのか、付き添うゴーストたちも動き出す。
「うわあああああああ!」
混乱するトルストの住民達。逃げ遅れ、泣き叫び、絶望のままに座り込み。パニックに陥ったまま、事態は進んでいく。
還リヒトと生者の闘いが、今切って落とされた。
●
自由騎士達は避難誘導を行う者と、還リヒトと交戦する者に分かれる。
「いくよ。避難誘導はまかせた」
短く言ってイーイーは武器を手にする。相手は快楽殺人者とその手伝いをしたと思われるゴースト達。数は多く、逃げ遅れた人もいる。だけど挫けるつもりはない。その前に出来ることがある、と念を込めてフランベルジュを振り上げた。
雄たけびと共に振るわれる一閃。大上段から叩き下ろすように大剣がゴーストに迫る。恐怖を与える鬨の声と剣の重量感がゴーストの気勢を削ぐ。それはレザーギャロットの命令を一瞬打ち消すほどの恐怖。動きがとまった隙に叩き込まれるイーイーの一撃。
「逃げ遅れたひとたち、全員助ける」
「伝説の殺人鬼とこんな所で会えちゃうなんてドッキドッキしちゃうねっ!」
不謹慎だとわかっていながらも好奇心が押さえられないクイニィー。もしレザーギャロットが喋ることが出来たら、色々聞いてみたいとさえ思っていた。勿論、やるべきことは解っている。仕事をわきまえてこその趣味だ。
錬金術の材料を振りまき、クイニィーはコマンドワードを告げる。大気中のマナと材料が混じり合い、言葉により反応が加速する。生まれた人形兵士が戦場を縫うように走り、ゴーストに襲い掛かった。
「どんどん行くよ!」
「ここを通すわけにはいかない」
剣を構え、グローリアが敵前に立つ。威風堂々とした立ち様がゴースト達の足を止め、戦意を向けさせる。刺すような戦意すら涼しいとばかりにグローリアは目を細めた。剣に生き、剣に殉じる。その覚悟がある者が出せる鋭い気迫があった。
しゃがみながら逃げ惑う人達。そこに襲い掛かるゴースト。グローリアの剣はその光景を見た瞬間に動いていた。最小限の動きを最速で。それは一つの剣の極み。振るわれた刃はゴーストの腕を裂き、しゃがんで逃げていた人はそのまま走り出していた。
「私の大義に曇りはない、この剣にかけて」
「無理はするな。敵は多いからな」
無愛想に口を出すリュリュ。一歩引いたところで戦場全体を見回し、突出している者に注意を促していた。だがそれは冷静沈着というよりも、仲間が傷ついてほしくないという思いが大きい。
戦場全体を見回し、仲間の位置を正確に把握する。大気中のマナを強く意識しながら、マナを誘導するようにリュリュ自身の魔力を仲間につなげた。大気のマナを取り入れ、癒しの力に変換して仲間に伝える。傷の痛みが引き、活力が戻ってくる。
「相手は極悪人だ。早く倒してカタコンベに急ごう」
「そうだな。女だからと言って容赦するつもりにはならねぇな!」
唇を歪ませてボルカスは軍服の埃を払う。逃げ遅れた人達を庇うことを優先していたため、攻撃を受けて汚れが目立ってきた。傷は痛むが今はそれを気にしている時ではない。優先順位を定め、それを元に行動するのだ。
自他ともに認める強面を逃げ遅れた人達に見せる。華で空気を吸い込み、腹に力を籠めた。彼らはイ・ラプセルの国民。それを還リヒトなどに傷つけさせやしない。全てを守る傲慢。引き絞った弓を放つように、堂々と口を開く。
「逃げろ逃げろ! あんな腐った女など目に毒だ! 俺の顔の方がよっぽどマシだぜ」
「あんなオバさんと比べるとかもったいねーぜ!」
ケタケタと笑うようにマリアが答えた。相手は生前から腐りきった精神を持つ殺人鬼。目的のために殺すのではなく、殺すこと自体が目的の異常者。そんな輩が腐ったままで復活したのだ。何処に美点を求めればいいのやら。
手甲でゴーストの視界と侵攻を妨げながら、マリアは周囲を見る。逃げ遅れた人、動けない人、逃げるタイミングを計っている者。その全てを把握し、どうしたらいいかを考える。
「そこのアンタ、目の前にいる子供を抱えて逃げろ! そっちで這っている人はそこの影に隠れてる二人でやってくれ!
はやくしねーと紐より痛いゲンコツで殴るぞ!」
「もー。乱暴ねぇ。でも効果はあったみたい」
マリアに指示されて動いていく人たちを見ながら、ローラは息をつく。レザーギャロットと同質、あるいはそれ以上の揺さぶりだ。効果がないはずがない。人の機微を感じることに長けたマーチャントだから、その均衡が崩れたことが理解できた。
負けてられない、とマリアも避難誘導に精を出す。傷ついて動けない者に癒しの術を施し、右往左往する者に優しく声をかけて逃げるように促していく。王都なら裏道とか教えれたのになぁ、と思いながら安全な場所に誘導していく。
「妖艶、ってああいうのを言うのよね。殺人鬼のオーラみたいなものかな?」
「かもね。だけど決して惹かれちゃいけない美しさだ」
ローラの言葉にアダムは唇を結んで頷く。どれだけ殺人鬼が美しくとも、国を守る騎士として許してはいけないことがある。レザーギャロットは確かに許せないが、最も許せないのは国民が徒に殺されることだ。先ずはそれを止めなくては。
「自由騎士アダム・クランプトン! 貴方達の救助に参りました!
僕らは自由騎士として貴方達を守ります。そして叶うならば! 貴方もこの国住まう一人の勇気ある民として隣人に手を貸し、出現した敵とは逆側に避難して下さい!」
名乗りを上げ、敵の注目を受けるアダム。堂々たる態度は味方を鼓舞し、やるべきことを思い出させる。
「貴方達は決してただ蹂躙されるだけの弱き民ではありません! 一人一人がイ・ラプセルの勇者です!」
アダムの言葉と共に歓声が沸き、パニックの波が引いていく。瞬く間に戦場から離脱していく一般人達。
「後は任せておけ!」
サポートに廻った人達が手を振り、誘導を手伝う。動けない者に肩を貸したり、外科治療を行ったり、キジンの身体で盾になったり、目を引くオーラで目印になったり、怪我人を担いだり。
「これであとはお前を倒すだけだ!」
レザーギャロットに向けられる自由騎士達の武器。意思もたぬ殺人鬼はその宣告を静かに受け止め、愛用の絞首紐を手にする。
トルストの戦いは、少しずつ終局に向かいつつあった。
●
トルストの住民避難が終わったとはいえ、還リヒトの数は多い。たとえレザーギャロットに脅されて行動しているとはいえ、イブリース化した者は元の存在よりも強化される。絞首紐が短く音を鳴らしただけで、恐怖におびえるように霊体が自由騎士達を攻め立てる。
「流石悪党だな。ワンパターンな手法だぜ!」
「……っ! 自分の趣味を他人に手伝わせるなんて、面白くないと思わないのかい?」
ゴースト達の猛攻を受けてボルカスとクイニィーが膝をつく。英雄の欠片を削って何とか意識を保ち、殺人鬼に立ち向かう。
「役割は果たした。後は任せる」
ゴーストの攻撃を受けて、開戦から戦線を保っていたグローリアがよろめいた。言葉通り役割は果たした。仲間を信頼し、意識を手放す。
「一体ずつ、確実に」
自分に言い聞かせるように言いながら、イーイーは大剣を振るう。いつも背後から援護してくれる戦友はいない。いつもの連携通りに動こうとした自分に笑いながら、再度剣を握りなおす。大丈夫、虚勢を張れるぐらいには経験を積んできたつもりだ。
「レザーギャロット。お前に同情の余地はない。セフィロトの海に還れ」
回復の術式を飛ばしながらリュリュは鋭く言い放つ。還リヒト自体は死体が操られるという悲しい存在だが、極悪人が相手ならその感情は薄い。新たな死をまき散らす前に、その魂をあるべき場所に還るのみだ。
「どっけー! お前らもあんなオバサンのいうこと聞いてるんじゃねーよ!」
巨大な拳を振るいながらマリアが叫ぶ。ゴーストの攻撃は魔法的なモノなのか、マリアの盾をすり抜けて活力を奪っていく。だがそれを気にせずにマリアはゴースト達に立ち向かっていた。脅されて謝るように戦う被害者を叱咤するように。
「確かに女性は苦手だけど、美人というだけじゃ僕は惹かれないよ」
一歩一歩レザーギャロットに近づきながらアダムは武器を振るう。コミュニケーション的な意味で女性には苦手意識があるが、相手が犯罪者なら話は別だ。騎士として対応し、職務を果たすのみ。
「自身の快楽のために人を殺める時点で間違いなくろくでなしなのだが、その中でもとりわけ質の悪い部類だな」
レザーギャロットの表情を見ながらボルカスは嫌悪感に満ちた表情をする。笑い。上から見下したようなそんな笑み。還リヒトに感情はない。ただ生前の行動をトレースするのみだ。つまりああやって笑いながら人を殺していたのだ。
(でも理解はできるのよね。自分の快楽を優先することが行動理念であるってことは)
レザーギャロットを見ながら、ローラは言葉なく思う。殺人を許容するつもりはないが、六年間自分の快楽のままに生きてきた殺人鬼に親近感に似たなにかを感じていた。違いは殺すか肉欲かでしかない。ローラはきゅっと口を結んで、言葉と思いを飲み込んだ。
「ヒトって弱い生き物だよね。死んだ後もこうして脅された相手に従ってなんてさ……」
怯えるようにレザーギャロットの命令を聞いているゴーストを見ながらクイニィーは寂しくつぶやいた。理解はできるが、かといって納得は出来ない。殺人鬼と協力者の間にどのような『やり取り』があったのか。……それはそれで知識欲が刺激されるのだが。
ゴーストの数が減ってくれば、それだけ自由騎士の怪我が少なくなる。そうなれば回復に回っていた者も攻撃に転じることが出来、少しずつ自由騎士の攻め数が増えてくる。
そしてゴーストが倒れて自由騎士の方が数が多くなれば、レザーギャロットへ刃を向ける者もいる。だがそれは、
「……ちっ! 庇いやがったか!」
「どちらかというと庇わせた、の方が正しいわね。だけど――」
幽霊がレザーギャロットを庇い、殺人鬼は難を逃れていた。だがそれとて長くは続かない。幽鬼の数も無限ではないのだ。自由騎士の攻め手を潰さない限り、レザーギャロットに勝機はない。影からじわりじわりと攻める殺人鬼と、経験を積んだ騎士。正面衝突すればその結果は火を見るより明らかだ。
殺人鬼の唯一の勝ち筋は、混乱に紛れての攻撃。しかしそれは逃げ遅れた人の避難が手早く終わったことで雲散霧消していた。最後のゴーストも消え去り、レザーギャロットを守る者はもはやなにもない。
「コイツで終いだ!」
マリアが拳を振り上げ、レザーギャロットに迫る。鈍重な動きだが、今の殺人鬼にそれを避ける余力はない。裂帛と共に精錬された一打が振り下ろされる。
「ゲンコで、殴る!」
一瞬の溜めの後、マリアは拳を振り下ろす。その威力に耐えきれず、還リヒトは頭から地面にたたきつけられて動かなくなった。
●
「これで全部ですね。カタコンベに流れた還リヒトはない様だ」
戦場を見回して、頷くアダム。この戦いの後に前国王との戦いが待っている。援軍を防ぐ意味でもこの戦いで還リヒトを絶つことは重要なことだ。仲間の傷の具合を確認し、倒れていた人間を起こす。
「還リヒト……穏やかな流れに乗って、その魂がセフィロトの海に戻れますように」
瞑目して祈るリュリュ。死者は何も思わない。思うのは生きている者の特権だ。還リヒトに対する感情を示すように、静かに祈り続ける。
「うん。ゆっくりおやすみなさい」
イーイーもここで戦った還リヒト達に祈っていた。レザーギャロットはともかく、ゴーストは脅迫された被害者だ。恐怖におびえる心がセフィロトの海で晴れますようにと手を合わせる。
「…………」
もう動かないレザーギャロットを見ながらローラは複雑な思いを抱く。自分とは違う方向の『夜』の女性。その末路を見て、自分と重ねていた。だけどそれも一秒。いつも通りの笑みを浮かべ、仲間の元に戻る。
「よし、皆行くぞ! 戦いはまだ終わっちゃいないんだ!」
マリアの声と共に、自由騎士達は意識を再度戦いへと切り替える。各地に出没した還リヒト。そしてミッシェル・イ・ラプセルに従う還リヒトの一軍。イ・ラプセルの危機はまだ去ったわけではない。
自由騎士達は頷き、各々の戦場へと足を向けた。
――ありがとう。
そんな自由騎士達の耳に、謝礼の言葉が届く。
それは助けてもらったトルストの街の声か、それともレザーギャロットに脅されたゴーストの声か。
その言葉こそが、自由騎士達の最大の報酬だった。
「いやぁ、しかし、中々の美人だな、はっはっは! どれだけ見目が良くても、中身が腐りはてていては、これほど醜く映るものなのだな……!」
蘇った殺人鬼を前に『いつかそう言える日まで』ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は豪快に笑う。相手は自分の快楽のために命を奪う殺人鬼。見た目がどれだけ美しくとも、醜悪な心だけは隠せない。
「これだけの犠牲者が……辛かったろうに」
『レザーギャロット』を守るように漂う幽鬼を見ながら『イ・ラプセル自由騎士団』リュリュ・ロジェ(CL3000117)は目を伏せる。彼らは殺人鬼に弄ばれた犠牲者。追い詰められて殺人に加担し、その罪を抱えて尽き果てた者達。早く解放してあげなくては。
「急ぎ殲滅し、カタコンベに戻るぞ」
軍務に忠実な『女傑』グローリア・アンヘル(CL3000214)は短く自分がやるべきことを告げる。死んだ人間の素性など今は関係ない。王都を狙う還リヒトの方がグローリアにとっては重要だ。ここを制圧し、前線に戻るのみ。
「レザーギャロット……いや、今は」
忌々しい殺人鬼の記録を思い出しながら『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)は歯を食いしばる。殺人鬼に抱く感情は怒りしかないが、今ここでそれを爆発させるつもりはない。イ・ラプセル騎士団として、まずやるべきことがある。
「おれだって一人でがんばれるんだ」
別の戦場で戦う親友のことを想いながら『異国のオルフェン』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)は武器を握る。戦友の援護はここにはないが他の自由騎士がいる。仲間を信じ、足を前に踏み出した。
「この手の犯人って夜のお仕事の人間をよく狙うイメージあるしねぇ」
軽くため息をつき『もてかわハーレム♡マスター』ローラ・オルグレン(CL3000210)は『レザーギャロット』を見る。夜道で客を引く商売を狙う殺人鬼は多い。それは視界や治安の悪さもあって狙いやすいからなのだ。事実、この殺人鬼も夜道を狙うことが多かった。
「これ以上犠牲者を出させはしねーぜ!」
ガシャガシャと鎧の音を響かせて『おにくくいたい』マリア・スティール(CL3000004)がトルストの道を進む。全身を包む鎧。小さな体躯にしては大きすぎる手甲。それが街灯に照らされてぼんやりと光る。
「ふふ、折角蘇ってきてもあたし達と対峙したが運の尽きだよ」
薄く笑う『知りたがりのクイニィー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)。知識欲旺盛な彼女は、殺人鬼の事も知っていた。イ・ラプセルを恐怖に貶めた快楽犯罪者。怒りよりも好奇心の方が高まっていく。伝説の殺人鬼は、どんな動きをするのか。
「――――」
殺人鬼の還リヒトは言葉なく自由騎士に向き合い絞首紐を向ける。多くの人を葬ったサラマンダーの皮をなめして作ったモノ。生前と同じようにそれを生きている者に向ける。その殺意を感じ取ったのか、付き添うゴーストたちも動き出す。
「うわあああああああ!」
混乱するトルストの住民達。逃げ遅れ、泣き叫び、絶望のままに座り込み。パニックに陥ったまま、事態は進んでいく。
還リヒトと生者の闘いが、今切って落とされた。
●
自由騎士達は避難誘導を行う者と、還リヒトと交戦する者に分かれる。
「いくよ。避難誘導はまかせた」
短く言ってイーイーは武器を手にする。相手は快楽殺人者とその手伝いをしたと思われるゴースト達。数は多く、逃げ遅れた人もいる。だけど挫けるつもりはない。その前に出来ることがある、と念を込めてフランベルジュを振り上げた。
雄たけびと共に振るわれる一閃。大上段から叩き下ろすように大剣がゴーストに迫る。恐怖を与える鬨の声と剣の重量感がゴーストの気勢を削ぐ。それはレザーギャロットの命令を一瞬打ち消すほどの恐怖。動きがとまった隙に叩き込まれるイーイーの一撃。
「逃げ遅れたひとたち、全員助ける」
「伝説の殺人鬼とこんな所で会えちゃうなんてドッキドッキしちゃうねっ!」
不謹慎だとわかっていながらも好奇心が押さえられないクイニィー。もしレザーギャロットが喋ることが出来たら、色々聞いてみたいとさえ思っていた。勿論、やるべきことは解っている。仕事をわきまえてこその趣味だ。
錬金術の材料を振りまき、クイニィーはコマンドワードを告げる。大気中のマナと材料が混じり合い、言葉により反応が加速する。生まれた人形兵士が戦場を縫うように走り、ゴーストに襲い掛かった。
「どんどん行くよ!」
「ここを通すわけにはいかない」
剣を構え、グローリアが敵前に立つ。威風堂々とした立ち様がゴースト達の足を止め、戦意を向けさせる。刺すような戦意すら涼しいとばかりにグローリアは目を細めた。剣に生き、剣に殉じる。その覚悟がある者が出せる鋭い気迫があった。
しゃがみながら逃げ惑う人達。そこに襲い掛かるゴースト。グローリアの剣はその光景を見た瞬間に動いていた。最小限の動きを最速で。それは一つの剣の極み。振るわれた刃はゴーストの腕を裂き、しゃがんで逃げていた人はそのまま走り出していた。
「私の大義に曇りはない、この剣にかけて」
「無理はするな。敵は多いからな」
無愛想に口を出すリュリュ。一歩引いたところで戦場全体を見回し、突出している者に注意を促していた。だがそれは冷静沈着というよりも、仲間が傷ついてほしくないという思いが大きい。
戦場全体を見回し、仲間の位置を正確に把握する。大気中のマナを強く意識しながら、マナを誘導するようにリュリュ自身の魔力を仲間につなげた。大気のマナを取り入れ、癒しの力に変換して仲間に伝える。傷の痛みが引き、活力が戻ってくる。
「相手は極悪人だ。早く倒してカタコンベに急ごう」
「そうだな。女だからと言って容赦するつもりにはならねぇな!」
唇を歪ませてボルカスは軍服の埃を払う。逃げ遅れた人達を庇うことを優先していたため、攻撃を受けて汚れが目立ってきた。傷は痛むが今はそれを気にしている時ではない。優先順位を定め、それを元に行動するのだ。
自他ともに認める強面を逃げ遅れた人達に見せる。華で空気を吸い込み、腹に力を籠めた。彼らはイ・ラプセルの国民。それを還リヒトなどに傷つけさせやしない。全てを守る傲慢。引き絞った弓を放つように、堂々と口を開く。
「逃げろ逃げろ! あんな腐った女など目に毒だ! 俺の顔の方がよっぽどマシだぜ」
「あんなオバさんと比べるとかもったいねーぜ!」
ケタケタと笑うようにマリアが答えた。相手は生前から腐りきった精神を持つ殺人鬼。目的のために殺すのではなく、殺すこと自体が目的の異常者。そんな輩が腐ったままで復活したのだ。何処に美点を求めればいいのやら。
手甲でゴーストの視界と侵攻を妨げながら、マリアは周囲を見る。逃げ遅れた人、動けない人、逃げるタイミングを計っている者。その全てを把握し、どうしたらいいかを考える。
「そこのアンタ、目の前にいる子供を抱えて逃げろ! そっちで這っている人はそこの影に隠れてる二人でやってくれ!
はやくしねーと紐より痛いゲンコツで殴るぞ!」
「もー。乱暴ねぇ。でも効果はあったみたい」
マリアに指示されて動いていく人たちを見ながら、ローラは息をつく。レザーギャロットと同質、あるいはそれ以上の揺さぶりだ。効果がないはずがない。人の機微を感じることに長けたマーチャントだから、その均衡が崩れたことが理解できた。
負けてられない、とマリアも避難誘導に精を出す。傷ついて動けない者に癒しの術を施し、右往左往する者に優しく声をかけて逃げるように促していく。王都なら裏道とか教えれたのになぁ、と思いながら安全な場所に誘導していく。
「妖艶、ってああいうのを言うのよね。殺人鬼のオーラみたいなものかな?」
「かもね。だけど決して惹かれちゃいけない美しさだ」
ローラの言葉にアダムは唇を結んで頷く。どれだけ殺人鬼が美しくとも、国を守る騎士として許してはいけないことがある。レザーギャロットは確かに許せないが、最も許せないのは国民が徒に殺されることだ。先ずはそれを止めなくては。
「自由騎士アダム・クランプトン! 貴方達の救助に参りました!
僕らは自由騎士として貴方達を守ります。そして叶うならば! 貴方もこの国住まう一人の勇気ある民として隣人に手を貸し、出現した敵とは逆側に避難して下さい!」
名乗りを上げ、敵の注目を受けるアダム。堂々たる態度は味方を鼓舞し、やるべきことを思い出させる。
「貴方達は決してただ蹂躙されるだけの弱き民ではありません! 一人一人がイ・ラプセルの勇者です!」
アダムの言葉と共に歓声が沸き、パニックの波が引いていく。瞬く間に戦場から離脱していく一般人達。
「後は任せておけ!」
サポートに廻った人達が手を振り、誘導を手伝う。動けない者に肩を貸したり、外科治療を行ったり、キジンの身体で盾になったり、目を引くオーラで目印になったり、怪我人を担いだり。
「これであとはお前を倒すだけだ!」
レザーギャロットに向けられる自由騎士達の武器。意思もたぬ殺人鬼はその宣告を静かに受け止め、愛用の絞首紐を手にする。
トルストの戦いは、少しずつ終局に向かいつつあった。
●
トルストの住民避難が終わったとはいえ、還リヒトの数は多い。たとえレザーギャロットに脅されて行動しているとはいえ、イブリース化した者は元の存在よりも強化される。絞首紐が短く音を鳴らしただけで、恐怖におびえるように霊体が自由騎士達を攻め立てる。
「流石悪党だな。ワンパターンな手法だぜ!」
「……っ! 自分の趣味を他人に手伝わせるなんて、面白くないと思わないのかい?」
ゴースト達の猛攻を受けてボルカスとクイニィーが膝をつく。英雄の欠片を削って何とか意識を保ち、殺人鬼に立ち向かう。
「役割は果たした。後は任せる」
ゴーストの攻撃を受けて、開戦から戦線を保っていたグローリアがよろめいた。言葉通り役割は果たした。仲間を信頼し、意識を手放す。
「一体ずつ、確実に」
自分に言い聞かせるように言いながら、イーイーは大剣を振るう。いつも背後から援護してくれる戦友はいない。いつもの連携通りに動こうとした自分に笑いながら、再度剣を握りなおす。大丈夫、虚勢を張れるぐらいには経験を積んできたつもりだ。
「レザーギャロット。お前に同情の余地はない。セフィロトの海に還れ」
回復の術式を飛ばしながらリュリュは鋭く言い放つ。還リヒト自体は死体が操られるという悲しい存在だが、極悪人が相手ならその感情は薄い。新たな死をまき散らす前に、その魂をあるべき場所に還るのみだ。
「どっけー! お前らもあんなオバサンのいうこと聞いてるんじゃねーよ!」
巨大な拳を振るいながらマリアが叫ぶ。ゴーストの攻撃は魔法的なモノなのか、マリアの盾をすり抜けて活力を奪っていく。だがそれを気にせずにマリアはゴースト達に立ち向かっていた。脅されて謝るように戦う被害者を叱咤するように。
「確かに女性は苦手だけど、美人というだけじゃ僕は惹かれないよ」
一歩一歩レザーギャロットに近づきながらアダムは武器を振るう。コミュニケーション的な意味で女性には苦手意識があるが、相手が犯罪者なら話は別だ。騎士として対応し、職務を果たすのみ。
「自身の快楽のために人を殺める時点で間違いなくろくでなしなのだが、その中でもとりわけ質の悪い部類だな」
レザーギャロットの表情を見ながらボルカスは嫌悪感に満ちた表情をする。笑い。上から見下したようなそんな笑み。還リヒトに感情はない。ただ生前の行動をトレースするのみだ。つまりああやって笑いながら人を殺していたのだ。
(でも理解はできるのよね。自分の快楽を優先することが行動理念であるってことは)
レザーギャロットを見ながら、ローラは言葉なく思う。殺人を許容するつもりはないが、六年間自分の快楽のままに生きてきた殺人鬼に親近感に似たなにかを感じていた。違いは殺すか肉欲かでしかない。ローラはきゅっと口を結んで、言葉と思いを飲み込んだ。
「ヒトって弱い生き物だよね。死んだ後もこうして脅された相手に従ってなんてさ……」
怯えるようにレザーギャロットの命令を聞いているゴーストを見ながらクイニィーは寂しくつぶやいた。理解はできるが、かといって納得は出来ない。殺人鬼と協力者の間にどのような『やり取り』があったのか。……それはそれで知識欲が刺激されるのだが。
ゴーストの数が減ってくれば、それだけ自由騎士の怪我が少なくなる。そうなれば回復に回っていた者も攻撃に転じることが出来、少しずつ自由騎士の攻め数が増えてくる。
そしてゴーストが倒れて自由騎士の方が数が多くなれば、レザーギャロットへ刃を向ける者もいる。だがそれは、
「……ちっ! 庇いやがったか!」
「どちらかというと庇わせた、の方が正しいわね。だけど――」
幽霊がレザーギャロットを庇い、殺人鬼は難を逃れていた。だがそれとて長くは続かない。幽鬼の数も無限ではないのだ。自由騎士の攻め手を潰さない限り、レザーギャロットに勝機はない。影からじわりじわりと攻める殺人鬼と、経験を積んだ騎士。正面衝突すればその結果は火を見るより明らかだ。
殺人鬼の唯一の勝ち筋は、混乱に紛れての攻撃。しかしそれは逃げ遅れた人の避難が手早く終わったことで雲散霧消していた。最後のゴーストも消え去り、レザーギャロットを守る者はもはやなにもない。
「コイツで終いだ!」
マリアが拳を振り上げ、レザーギャロットに迫る。鈍重な動きだが、今の殺人鬼にそれを避ける余力はない。裂帛と共に精錬された一打が振り下ろされる。
「ゲンコで、殴る!」
一瞬の溜めの後、マリアは拳を振り下ろす。その威力に耐えきれず、還リヒトは頭から地面にたたきつけられて動かなくなった。
●
「これで全部ですね。カタコンベに流れた還リヒトはない様だ」
戦場を見回して、頷くアダム。この戦いの後に前国王との戦いが待っている。援軍を防ぐ意味でもこの戦いで還リヒトを絶つことは重要なことだ。仲間の傷の具合を確認し、倒れていた人間を起こす。
「還リヒト……穏やかな流れに乗って、その魂がセフィロトの海に戻れますように」
瞑目して祈るリュリュ。死者は何も思わない。思うのは生きている者の特権だ。還リヒトに対する感情を示すように、静かに祈り続ける。
「うん。ゆっくりおやすみなさい」
イーイーもここで戦った還リヒト達に祈っていた。レザーギャロットはともかく、ゴーストは脅迫された被害者だ。恐怖におびえる心がセフィロトの海で晴れますようにと手を合わせる。
「…………」
もう動かないレザーギャロットを見ながらローラは複雑な思いを抱く。自分とは違う方向の『夜』の女性。その末路を見て、自分と重ねていた。だけどそれも一秒。いつも通りの笑みを浮かべ、仲間の元に戻る。
「よし、皆行くぞ! 戦いはまだ終わっちゃいないんだ!」
マリアの声と共に、自由騎士達は意識を再度戦いへと切り替える。各地に出没した還リヒト。そしてミッシェル・イ・ラプセルに従う還リヒトの一軍。イ・ラプセルの危機はまだ去ったわけではない。
自由騎士達は頷き、各々の戦場へと足を向けた。
――ありがとう。
そんな自由騎士達の耳に、謝礼の言葉が届く。
それは助けてもらったトルストの街の声か、それともレザーギャロットに脅されたゴーストの声か。
その言葉こそが、自由騎士達の最大の報酬だった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
どくどくです。
もう少し逃げ遅れた人の数を増やしてもよかったか。
レザーギャロットは本来3~4話のみにキャンペーン用に設定を立ち上げたキャラでした。極悪非道な殺人鬼を追い詰める。そんな流れです。
話を作っていくうちに『脅迫された一般人殺すとかひどっ! どくどく鬼か!』『イ・ラプセルの雰囲気ダークになり過ぎじゃあああ!』となってあっさり還リヒト化させました。
でも気が向いたら別の殺人鬼を出すかもしれません。えへー。
MVPは技能とプレイングで最も逃げ遅れた人を逃がしたクランプトン様に。
見事な演説でございました。
それでは決戦頑、張ってください。
Go to Catacomb!
もう少し逃げ遅れた人の数を増やしてもよかったか。
レザーギャロットは本来3~4話のみにキャンペーン用に設定を立ち上げたキャラでした。極悪非道な殺人鬼を追い詰める。そんな流れです。
話を作っていくうちに『脅迫された一般人殺すとかひどっ! どくどく鬼か!』『イ・ラプセルの雰囲気ダークになり過ぎじゃあああ!』となってあっさり還リヒト化させました。
でも気が向いたら別の殺人鬼を出すかもしれません。えへー。
MVPは技能とプレイングで最も逃げ遅れた人を逃がしたクランプトン様に。
見事な演説でございました。
それでは決戦頑、張ってください。
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