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CrazyChicken! コケー!コケコッコー!

●朝と破壊を告げる鳥の声
その朝、その村の者達は激しい音と共に目を覚ますことになる。
「コケー!」
「コケコケー!」
「コッコッコケー!」
鶏だ。
代表的な家禽であり、その羽根や卵や肉を使用するために飼われている。飼育に複雑な知識や施設が必要ではなく、どんな村に居てもおかしくない存在だ。この村では鶏肉の為に飼育しており、筋肉を付けさせるために野外で放し飼いをしていた。
最初はただうるさいだけだったのだが、次第にそれが物理的な振動を友舞うようになってきた。さすがに異常を感じた村人達が表に出れば、大きさ3m近くの巨大な鶏が嘶いていたのだ。
「コケー!」
「い、い、イブリースだー! オラの鶏がイブリースになってしまっただ!」
「じ、自由騎士さんに連絡をー!」
「コケコケー!」
暴れまわる鶏。その鳴き声と嘴で村中は荒らされ、甚大な被害が生まれるのであった。
●階差演算室
「となる前に止めてきてほしいんだ」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は集まった自由騎士を前に説明を開始する。
「水鏡が予知したのは鶏のイブリース。数は三。肉を柔らかくするために放し飼いにしていたので、運動神経もかなりあるみたい」
イブリース化したことにより、闘争心も高くなっている。目につく者をどんどん攻撃する傾向にあるようだ。
「攻撃は嘴でつついたり、体当たりしてきたり。あとは鳴いて衝撃波を放つみたい」
そんな凶暴なモノを取り押さえる事が出来るはずもなく、村は破壊されてしまうという。避難を優先したため人死にはいないが、住む場所含めて村は壊滅状態になる。
「幸い今から向かえば朝にはその村につく。イブリース化した鶏が本格的に暴れる前に押さえる事が出来るよ」
アクアディーネの権能があれば、鶏を殺すことなく浄化できる。その為にも権能をもつ者が鶏を戦闘不能にしなければならない。
「戦争で疲れて大変だと思うけど、村人からすれば生活が懸かった大事件なんだ。しっかり倒して村を救ってきてね」
クラウディアの言葉に背中を押されて、自由騎士達は演算室を出た。
その朝、その村の者達は激しい音と共に目を覚ますことになる。
「コケー!」
「コケコケー!」
「コッコッコケー!」
鶏だ。
代表的な家禽であり、その羽根や卵や肉を使用するために飼われている。飼育に複雑な知識や施設が必要ではなく、どんな村に居てもおかしくない存在だ。この村では鶏肉の為に飼育しており、筋肉を付けさせるために野外で放し飼いをしていた。
最初はただうるさいだけだったのだが、次第にそれが物理的な振動を友舞うようになってきた。さすがに異常を感じた村人達が表に出れば、大きさ3m近くの巨大な鶏が嘶いていたのだ。
「コケー!」
「い、い、イブリースだー! オラの鶏がイブリースになってしまっただ!」
「じ、自由騎士さんに連絡をー!」
「コケコケー!」
暴れまわる鶏。その鳴き声と嘴で村中は荒らされ、甚大な被害が生まれるのであった。
●階差演算室
「となる前に止めてきてほしいんだ」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は集まった自由騎士を前に説明を開始する。
「水鏡が予知したのは鶏のイブリース。数は三。肉を柔らかくするために放し飼いにしていたので、運動神経もかなりあるみたい」
イブリース化したことにより、闘争心も高くなっている。目につく者をどんどん攻撃する傾向にあるようだ。
「攻撃は嘴でつついたり、体当たりしてきたり。あとは鳴いて衝撃波を放つみたい」
そんな凶暴なモノを取り押さえる事が出来るはずもなく、村は破壊されてしまうという。避難を優先したため人死にはいないが、住む場所含めて村は壊滅状態になる。
「幸い今から向かえば朝にはその村につく。イブリース化した鶏が本格的に暴れる前に押さえる事が出来るよ」
アクアディーネの権能があれば、鶏を殺すことなく浄化できる。その為にも権能をもつ者が鶏を戦闘不能にしなければならない。
「戦争で疲れて大変だと思うけど、村人からすれば生活が懸かった大事件なんだ。しっかり倒して村を救ってきてね」
クラウディアの言葉に背中を押されて、自由騎士達は演算室を出た。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.イブリース3体の戦闘不能
どくどくです。
うらにわにはにわにわにはにわにわとりがいる。
●敵情報
・クレイジーチキン(×3)
イブリース化した鶏です。大きさ3m。闘争心の塊で、見るもの全てに襲い掛かってきます。
トサカの形状から、3体ともオスのようです。
攻撃方法
体当たり 攻近範 全力で体当たりしてきます。【ノックB】
クチバシ 攻近単 鋭いくちばしで突き刺してきます。【二連】【必殺】
羽根の矢 攻遠単 羽を飛ばして突き刺してきます。
鳴き声 魔遠全 激しく鳴き、音の衝撃波を与えてきます。
狂暴化 P 追い込まれると、狂暴化します。HP20%以下時、攻撃力上昇。
●場所情報
イ・ラプセルのとある村。時刻は朝。放し飼いになっている鶏がイブリースになったと同時に自由騎士が介入できます。周囲に人は在りません。騒動を聞きつけた村人も、危険を察して巻き込まれないように遠くで見ています。
明るさ、足場、広さ等は戦闘に支障なし。
戦闘開始時、敵前衛に『クレイジーチキン(×3)』がいます。
急いでいるため、事前付与は不可とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
うらにわにはにわにわにはにわにわとりがいる。
●敵情報
・クレイジーチキン(×3)
イブリース化した鶏です。大きさ3m。闘争心の塊で、見るもの全てに襲い掛かってきます。
トサカの形状から、3体ともオスのようです。
攻撃方法
体当たり 攻近範 全力で体当たりしてきます。【ノックB】
クチバシ 攻近単 鋭いくちばしで突き刺してきます。【二連】【必殺】
羽根の矢 攻遠単 羽を飛ばして突き刺してきます。
鳴き声 魔遠全 激しく鳴き、音の衝撃波を与えてきます。
狂暴化 P 追い込まれると、狂暴化します。HP20%以下時、攻撃力上昇。
●場所情報
イ・ラプセルのとある村。時刻は朝。放し飼いになっている鶏がイブリースになったと同時に自由騎士が介入できます。周囲に人は在りません。騒動を聞きつけた村人も、危険を察して巻き込まれないように遠くで見ています。
明るさ、足場、広さ等は戦闘に支障なし。
戦闘開始時、敵前衛に『クレイジーチキン(×3)』がいます。
急いでいるため、事前付与は不可とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年05月04日
2019年05月04日
†メイン参加者 8人†
●
「はーい。ちょっと珍しいかもしれないけど、危ないからこれ以上近づいちゃダメですよー」
「そういうこった。後は自由騎士にお任せあれ、だ」
ノウブルと熊のケモノビトが村人の避難誘導を行う。その誘導に従い、村人達は安全な場所に移動していた。
「ニワトリでござるなぁ」
見上げるようにイブリースを見ながら『一番槍』瑠璃彦 水月(CL3000449)は呟いた。故郷のアマノホカリとさして変わることのない鳥。まさか遠く離れたこの地でも同じ鳥がいようとは。
「鶏って大きくなるとかなり怖いわね」
同じく見上げるような格好で『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は頬を書いた。瞬きしない瞳と鋭いくちばし。怒ったかのように叫び、攻撃的になる巨大な鳥。種族関係なく、恐怖を怯えても仕方のないことだ。
「浄化したら食べられるのでしょうか」
お腹を押さえながら『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は考える。如何にアクアディーネの権能で浄化したとはいえ、イブリース化した者を出荷するのは如何なものかと。責任取って食べてあげなくては。けして朝ごはん抜きだからというわけではなく。
「おっきーニワトリなんだぞ!」
イブリースの大きさに怯えることなく『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)は大声緒をあげた。頭の中でチキンステーキ何人分という計算をしながら、イブリースを再度見る。大きい、即ち大量のにく。サシャは静かに気合を入れていた。
「煮て良し、焼いて良し、蒸して良し……!」
軍刀を握りしめ『牛串の舞』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は気合を入れる。鶏肉と人間の歴史は長い。様々な料理法が存在し、様々な味付けがある。人の歴史は食の歴史でもある。それを妨げるイブリースに鉄槌を。
「鶏は元より結構凶暴だからなあ……」
故郷の鶏を思い出しながら『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をついた。軍鶏のような好戦的な鶏はたくさんいる。イブリース化したことでその凶暴性が強化さてたのだろう。あの大きさが暴れ回れば、確かに大災害だ。
「……じょうかする」
ハンマーを手に『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は頷いた。農家にとって鶏のような家禽は家族だ。いずれ出荷されるかもしれないとはいえ、家族が村の生活を破壊すると言うのは悲しすぎる。しっかり浄化し、家族を守るのだ。
「鶏、ウチの実家でも飼ってたなあ」
『田舎者』ナバル・ジーロン(CL3000441)は故郷を思い出すように頷いていた。朝、鶏の鳴き声で起こされて、卵を取ったり小屋の掃除をしたり祭りの時には美味しく頂いたり。……よし、今夜は鶏を食べよう。ナバルは強く拳を握った。
「コケー!」
「ココココケコケ!」
「コケコッコー!」
三羽の巨大鶏は自由騎士達の戦意を察し、それに抗うかのように羽根を広げる。当たり前だが言葉など通じず、敵とみなして向かってくる。
自由騎士達もそれに応じるようにマキナ=ギアから装備を取り出し、戦いに挑む。
イブリースと自由騎士。両者の闘いが今切って落とされる。
●
「そんなに飛びはしないだろうけど、ジャンプはしそうね」
羽を広げて暴れまわるイブリースを見ながらエルシーは頬をかく。ニワトリは空を飛ぶことはないが、地上を生きるに十分な跳躍力をもっている。人ひとりを飛び越えたりはしないだろうが、それでも怖くはあった。
けたたましく吼えるニワトリに向かって構えを取り、拳を握りしめるエルシー。朝日を反射して紅龍の手甲が赤く光る。赤光と共にエルシーはイブリースに向かい、その距離を一気に詰める。繰り出される拳は鶏の胸筋を穿つ。
「ずいぶんイキのいいチキンね! この村の鶏は質が良さそうじゃない!」
「放し飼いにしてあるのが良いのでしょうなあ」
うむうむと頷く水月。アマノホカリにもニワトリを戦わせる行事はある。鍛えれば鍛えただけ強くなるニワトリ。それだけ筋肉がつきやすいこともあり、野外の放し飼いは密度の高い肉となるのだ。
意識を沈めるように水月は深呼吸をする。猛る心で武を振るうは我が流派にあらず。祖の神髄は変幻自在な水の心。激流の中にあって水が様々な形に変化するように、猛攻の中にあっても涼しげに受け流す。これが流転水護拳なり。
「流水に身を任せ同化するかのごとき構え……『清水(きよみず)』!」
「放し飼いにしてたくましく育った鶏ともなれば、その肉は野趣あふれる滋味となるは必定!」
鶏肉の歯ごたえと味わいを思い出しながらシノピリカは頷く。些か元気すぎるが、まあこれもイブリース化の影響。浄化すれば問題なし。肉を串で刺して炙り、取り寄せたアマノホカリのたれを付けて焼く。……おお、素晴らしきかな。
やる気を出した後に軍刀を抜くシノピリカ。ニワトリの突撃を刀を振るって妨害しながら、狙いを定めた一匹に突撃する。ニワトリに対する思いを刀に乗せ、全身全霊を叩きつけるように振り下ろした。
「ヤキトーリ! テバサーキ! オヤコ・ドーン!」
「なんか聞いたことのない気合の声! 負けてられねぇぜ!」
シノピリカの気合の言葉に、発奮するナバル。言葉の意味は解らないが、強い意気込みは確かに感じられた。だが気合というのならこちらも負けてはいられない。事前に準備した野菜やぬかを鎧の隙間に塗り、ニワトリの真正面に立つ。
ナバルは仲間を守りながらニワトリの視線に映るように立ち位置を切り替える。鎧に塗ったぬかの匂いに反応したのか、イブリースは嘴を突き刺すようにナバルを攻める。突き出される一撃を、盾でうけとめさばいていく。
「どうだ! ニワトリなら無視できないだろう!」
「おー。確かに狙ってるなぁ。……つか、やばくないか?」
執拗にナバルを攻めるイブリースを見ながら、ツボミは感心するように呟いた。野生を前面に出した状態だからこそ上手く攻撃を集中させることが出来たのだ。が……攻撃を受けているナバルは明らかにダメージ過多であった。
こりゃやべぇ、と急ぎツボミはマナを展開する。仲間を守るマナの盾。拳銃は弾丸がこぼれ落ち、魔は盾の権威に闇に帰る。そのものを攻撃する際に発揮される精神に訴えかける守りの魔術。
「とりあえず頑張れ! 回復はしてやるから!」
「サシャもがんばるのだ!」
ツボミの言葉にガッツポーズを取るサシャ。オオカミの耳と尻尾を動かし、やる気を示していた。巨大なニワトリ。これだけあればどれだけのとりにくが取れるのだろうか。それを想像して唾を飲み込む。勿論やる気の元はそこだけではないのだが。
聖書を手にして祈るように精神を穏やかにする。凪の湖のような静かな心で、体内のマナを布を編むように降り重ねていく。仲間の傷を意識しながら放たれた魔力は、傷を包み込むように展開され、そして優しく塞いでいく。
「回復はおまかせなんだぞ! がんばるぞ!」
「では守りは任せてくださいませ!」
サーベルとシールドを手にデボラが吼えるようにして構える。華よりも武、芸よりも剣。そんな貴族の長女の在り方は親の頭を悩ませていたが、無意味に剣を振るう無法者でもない。国の為、村の為。武を振るう場所を間違えないのは教育の賜物か。
イブリースが衝撃波を放とうと大きく息を吸い込んだ。それを見てデボラは盾を構え、仲間の元にはせ参じる。奇声と共に放たれる衝撃波が戦場を打つ。デボラのラージシールドはその衝撃を受け止め、仲間へのダメージを受け流す。
「指一本、いいえ、羽一本触れさせませんとも!」
「ん。そっちはまかせた。みかたとのれんけいはだいじ」
小さく頷き、リムリィが地を蹴る。無表情無感情に喋るリムリィだが、他人に興味がないわけではない。むしろ仲間と上手く動くことを重視していた。単純に自分から他人に絡みに行く気が無いだけで、けして人が苦手なわけではない。
事前に話し合った作戦に従い、目標に目を付けるリムリィ。なかまがなぐったのとおなじにわとり。小さく呟いてハンマーを振り上げる。そのまま力を込めて一気に振り下ろした。鉄塊にリムリィのパワーが加わり、轟音と共に叩きつけられる。
「おこった?」
奇声をあげながら翼を大きく広げるイブリース。『トサカに来た』とはまさにこのこととばかりに暴れはじめた。
だがそれは逆に言えばイブリースを追い詰めた証拠。自由騎士達は頷きあい、とどめを刺すべく攻撃を続ける。
自由式とイブリースの闘いは、まだまだ終わらない。
●
「コケコケー!」
「コケコッコー!」
暴れまわるイブリース。その攻撃はナバルを中心に……というかものすごい勢いでナバルを突いていた。
「痛い痛い痛い! 上手くこっちに攻撃を集めれたけど、これ本当に死ぬかも!」
ニワトリの好物を鎧の隙間に塗りたくったナバルは、フラグメンツを燃やして何とか耐える。仲間に攻撃を向かわせない為の処置ではあったが、食欲に任せて嘴を突き出す巨大ニワトリを前に血まみれになっていた。
「いいぞ、ナバル殿。この隙に攻撃じゃ! 牛串あらため鶏串の舞、コケケーッ!」
ナバルに指一つ立てて称賛を送り、シノピリカはイブリースに突貫する。舞うように……と言うか食欲を前面に出しての鋭い一撃を繰り出していく。アクアディーネの権能を乗せた一撃が、イブリースの根幹ともいえる何かを削っていく。
「しかし便利でござるなぁ、蒸気武器」
『秋刀魚』と『柳葉魚』を手に水月が頷く。蒸気を利用した武器を使うのはイ・ラプセルに来て初めてだ。威力の底上げといった対イブリースや対幻想種して有用だ。形自体も水月の型に会い、重宝していた。
「次、こっちね!」
エルシーは戦いの一番槍として動き回っていた。素早いエルシーの動きに合わせて他の自由騎士も目標を定める。これにより一糸乱れることのない各個撃破が成立していた。燃えるように赤い鱗を旗印にして一気呵成に攻め立てる。
「ニワトリの眼光、怖いんだな……。ゆ、勇者は恐れない、けど!」
狂暴化した鶏から目を逸らしながら、サシャは呟く。回復をするのだから敵を見る必要はいよね、と自分に言い聞かせながら呪文を唱える。とりにくは大好きだけど、あの目はダメ。鳴き声の度に反射的にそちらを見て、すぐにサシャは目を逸らしていた。
「しかしあれだけ殴っても浄化後はほぼ傷なしか。不殺の権能もあるのだろうが……」
仲間を癒しながらツボミは思考に耽ていた。自由騎士の集中砲火を受けたイブリースだが、浄化後は元の大きさに戻り、傷もない。イブリースと呼ばれる現象そのものに色々不明点があるが、この辺りは医学に利用できないものか……。
「今なら私も攻めてよさそうですね」
イブリースの数が減ったのを確認し、デボラはサーベルをもって前に出る。ここまでくれば後衛を護るよりも、攻めた方が総合的なダメージが少ないと判断したのだ。振るわれる一閃がイブリースの胸を裂く。
「あらっぽさならたぶんわたしもまけてない」
ハンマーを振るいながらリムリィが言葉を放つ。追い詰められて大暴れするニワトリ。その所作は重戦士が狂気を表に出す戦法に似ている。怒りに身を任せ、野生のままに暴れる。攻撃性を前面に出す戦い方は、リムリィもなれていた。
「人々を護るのが騎士の務め! もっとこいや!」
ボロボロになりながらも気合を入れるようにイブリースの前に立つナバル。イブリースの攻撃は凶暴だが、だからこそ村人達や村を襲わせてはいけない。騎士としてそういった暴力から皆を守るため、槍と盾を強く握りしめた。
ツボミとサシャの回復を基点に各個撃破で攻め立てる自由騎士。その効果は功を為し、イブリースは一体、また一体と倒れていく。
「これで最後よ!」
拳を構え、エルシーがイブリースに向かう。迎撃するように口出されるクチバシの一撃を避け、『古き紅竜の籠手』を振りかぶった。攻め立てる速度を拳に乗せ、無駄なくエネルギーを乗せて振りぬいた。
「これが神の一撃よ!」
アクアディーネの浄化権能を乗せたエルシーの拳。その一撃が村で暴れる最後のイブリースの動きを止めた。
●
戦いが終わってひと段落して、
「コラ暴れるな! 痛っ! 痛い痛い止めんかコラ!?」
ツボミは浄化したニワトリに異常がないかを確認すべく触診し……元気よく暴れまわるニワトリに突かれたり足でひっかかれたりしていた。見た目には怪我もなく、しかもここまで元気なのだ。異常はまるで見られない、というのが医学的見地である。
(イブリース化と浄化……単純に考えるならイブリース化という現象は元の生物に『ガワ』をかぶせたようなモノなのか。巨大化、狂暴化、肉体強化……そういった元の生物や器物に付与できる何か。
そして浄化はその『ガワ』だけをはがすことが出来る……といった感じか?)
そんな仮説を思い浮かべるツボミ。あてずっぽうだが、今までの経験を考えるとそこまで外れてはいないだろう。
「うう……臭い」
鎧から匂ってくる糠の香りにうんざりするナバル。お陰で仲間を上手く守れたのだが、この匂いは自分でもうんざりする。完全に分解して洗わないと、鎧の隙間に染み入った糠はとれそうにない。これは一日作業かなぁ? とため息をついた。
「むむむ……。鳥系の技は鳥にしか覚えられないという事ですか」
イブリースの凶暴化を戦いの中で自らの流転水護拳に取り入れようとした水月だが、上手くいかないと諦めたようにため息をついた。例えばソラビトか、鳥系のケモノビトなら上手くなじんだやも知れない。残念、と諦める。
「村の方もイブリース化した鶏を食べるのも出荷するのもしたくは無いと思うのですよ。ええ、ですから我々が食べるのが筋だと思うのです」
小さく鳴るお腹を押さえながらデボラが提案する。ツボミも確認したとおり、浄化した物や動物は無傷で戻る。だがこれは心情的な問題だ。決して早朝の任務だからと使用人を振り切るのに精一杯で朝食を食べ損ねているなどということはない。ないったらない。
「とりにく……サシャもそう思うのだ! とりにく!」
デボラの意見に同意するサシャ。その視線は浄化したイブリースと、囲いの中に居るニワトリに向いていた。尻尾を振って食欲全開でニワトリを見るオオカミ(ケモノビト)。『わかったからおちつけ』と仲間達に止められ、サシャは寂しそうな表情で指をくわえる。
「このニワトリは村の財産。みだりに手を付ける事はならぬ! ……まあ、報酬として受ける分には吝かではないのじゃが!」
貴族としての威厳を示すシノピリカ。このニワトリ一匹一匹が彼らの生活の基盤であり、生きる糧だ。それを我欲で求めるなど許せるものではない。……が、それはそれとして鶏肉は美味しいなぁ。そう思うシノピリカであった。
「もうニワトリはいいか、って気分だけどね」
そんなやり取りを見ながらエルシーは苦笑する。でも戦いが終わってお腹がすいたのは事実だ。イブリース化していたとはいえあのニワトリの動きは元気がよかった。かなり美味しいんだろうなぁ、と食欲をそそられる。
「うん。うん。わかった」
リムリィは鶏や他の家畜の話を聞いていた。自分と同種族の動物でないので話を聞いて相づちを打つぐらいだが、それで悩みを聞きだして農家の人に伝える事が出来れば。そうすることで関係がよくなればイブリース化も防げるかもしれない。
「ありがとうございます。皆様のおかげで村が救われました。お礼というわけではありませんが、皆様お腹もすいておられるようですし。こちらでお食事をしていきませんか?」
安全になった事を確認して礼を言うためにやってくる村人達。その言葉に、自由騎士達は同時に頷いた。
村で食事をした後に、自由騎士達は帰路につく。新鮮な鶏肉は焼いて塩をかけただけでも肉屋で売っている物とは別次元の味がしたという。
野禽のイブリース化により壊滅するはずだった村は、そんな鱗片も見せないほど平和な時が流れている。その日常こそ、自由騎士が獲得した最大の報酬だ。
「コケコッコー!」
今日も村にニワトリの鳴き声が響いていた。
「はーい。ちょっと珍しいかもしれないけど、危ないからこれ以上近づいちゃダメですよー」
「そういうこった。後は自由騎士にお任せあれ、だ」
ノウブルと熊のケモノビトが村人の避難誘導を行う。その誘導に従い、村人達は安全な場所に移動していた。
「ニワトリでござるなぁ」
見上げるようにイブリースを見ながら『一番槍』瑠璃彦 水月(CL3000449)は呟いた。故郷のアマノホカリとさして変わることのない鳥。まさか遠く離れたこの地でも同じ鳥がいようとは。
「鶏って大きくなるとかなり怖いわね」
同じく見上げるような格好で『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は頬を書いた。瞬きしない瞳と鋭いくちばし。怒ったかのように叫び、攻撃的になる巨大な鳥。種族関係なく、恐怖を怯えても仕方のないことだ。
「浄化したら食べられるのでしょうか」
お腹を押さえながら『戦姫』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は考える。如何にアクアディーネの権能で浄化したとはいえ、イブリース化した者を出荷するのは如何なものかと。責任取って食べてあげなくては。けして朝ごはん抜きだからというわけではなく。
「おっきーニワトリなんだぞ!」
イブリースの大きさに怯えることなく『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)は大声緒をあげた。頭の中でチキンステーキ何人分という計算をしながら、イブリースを再度見る。大きい、即ち大量のにく。サシャは静かに気合を入れていた。
「煮て良し、焼いて良し、蒸して良し……!」
軍刀を握りしめ『牛串の舞』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)は気合を入れる。鶏肉と人間の歴史は長い。様々な料理法が存在し、様々な味付けがある。人の歴史は食の歴史でもある。それを妨げるイブリースに鉄槌を。
「鶏は元より結構凶暴だからなあ……」
故郷の鶏を思い出しながら『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はため息をついた。軍鶏のような好戦的な鶏はたくさんいる。イブリース化したことでその凶暴性が強化さてたのだろう。あの大きさが暴れ回れば、確かに大災害だ。
「……じょうかする」
ハンマーを手に『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は頷いた。農家にとって鶏のような家禽は家族だ。いずれ出荷されるかもしれないとはいえ、家族が村の生活を破壊すると言うのは悲しすぎる。しっかり浄化し、家族を守るのだ。
「鶏、ウチの実家でも飼ってたなあ」
『田舎者』ナバル・ジーロン(CL3000441)は故郷を思い出すように頷いていた。朝、鶏の鳴き声で起こされて、卵を取ったり小屋の掃除をしたり祭りの時には美味しく頂いたり。……よし、今夜は鶏を食べよう。ナバルは強く拳を握った。
「コケー!」
「ココココケコケ!」
「コケコッコー!」
三羽の巨大鶏は自由騎士達の戦意を察し、それに抗うかのように羽根を広げる。当たり前だが言葉など通じず、敵とみなして向かってくる。
自由騎士達もそれに応じるようにマキナ=ギアから装備を取り出し、戦いに挑む。
イブリースと自由騎士。両者の闘いが今切って落とされる。
●
「そんなに飛びはしないだろうけど、ジャンプはしそうね」
羽を広げて暴れまわるイブリースを見ながらエルシーは頬をかく。ニワトリは空を飛ぶことはないが、地上を生きるに十分な跳躍力をもっている。人ひとりを飛び越えたりはしないだろうが、それでも怖くはあった。
けたたましく吼えるニワトリに向かって構えを取り、拳を握りしめるエルシー。朝日を反射して紅龍の手甲が赤く光る。赤光と共にエルシーはイブリースに向かい、その距離を一気に詰める。繰り出される拳は鶏の胸筋を穿つ。
「ずいぶんイキのいいチキンね! この村の鶏は質が良さそうじゃない!」
「放し飼いにしてあるのが良いのでしょうなあ」
うむうむと頷く水月。アマノホカリにもニワトリを戦わせる行事はある。鍛えれば鍛えただけ強くなるニワトリ。それだけ筋肉がつきやすいこともあり、野外の放し飼いは密度の高い肉となるのだ。
意識を沈めるように水月は深呼吸をする。猛る心で武を振るうは我が流派にあらず。祖の神髄は変幻自在な水の心。激流の中にあって水が様々な形に変化するように、猛攻の中にあっても涼しげに受け流す。これが流転水護拳なり。
「流水に身を任せ同化するかのごとき構え……『清水(きよみず)』!」
「放し飼いにしてたくましく育った鶏ともなれば、その肉は野趣あふれる滋味となるは必定!」
鶏肉の歯ごたえと味わいを思い出しながらシノピリカは頷く。些か元気すぎるが、まあこれもイブリース化の影響。浄化すれば問題なし。肉を串で刺して炙り、取り寄せたアマノホカリのたれを付けて焼く。……おお、素晴らしきかな。
やる気を出した後に軍刀を抜くシノピリカ。ニワトリの突撃を刀を振るって妨害しながら、狙いを定めた一匹に突撃する。ニワトリに対する思いを刀に乗せ、全身全霊を叩きつけるように振り下ろした。
「ヤキトーリ! テバサーキ! オヤコ・ドーン!」
「なんか聞いたことのない気合の声! 負けてられねぇぜ!」
シノピリカの気合の言葉に、発奮するナバル。言葉の意味は解らないが、強い意気込みは確かに感じられた。だが気合というのならこちらも負けてはいられない。事前に準備した野菜やぬかを鎧の隙間に塗り、ニワトリの真正面に立つ。
ナバルは仲間を守りながらニワトリの視線に映るように立ち位置を切り替える。鎧に塗ったぬかの匂いに反応したのか、イブリースは嘴を突き刺すようにナバルを攻める。突き出される一撃を、盾でうけとめさばいていく。
「どうだ! ニワトリなら無視できないだろう!」
「おー。確かに狙ってるなぁ。……つか、やばくないか?」
執拗にナバルを攻めるイブリースを見ながら、ツボミは感心するように呟いた。野生を前面に出した状態だからこそ上手く攻撃を集中させることが出来たのだ。が……攻撃を受けているナバルは明らかにダメージ過多であった。
こりゃやべぇ、と急ぎツボミはマナを展開する。仲間を守るマナの盾。拳銃は弾丸がこぼれ落ち、魔は盾の権威に闇に帰る。そのものを攻撃する際に発揮される精神に訴えかける守りの魔術。
「とりあえず頑張れ! 回復はしてやるから!」
「サシャもがんばるのだ!」
ツボミの言葉にガッツポーズを取るサシャ。オオカミの耳と尻尾を動かし、やる気を示していた。巨大なニワトリ。これだけあればどれだけのとりにくが取れるのだろうか。それを想像して唾を飲み込む。勿論やる気の元はそこだけではないのだが。
聖書を手にして祈るように精神を穏やかにする。凪の湖のような静かな心で、体内のマナを布を編むように降り重ねていく。仲間の傷を意識しながら放たれた魔力は、傷を包み込むように展開され、そして優しく塞いでいく。
「回復はおまかせなんだぞ! がんばるぞ!」
「では守りは任せてくださいませ!」
サーベルとシールドを手にデボラが吼えるようにして構える。華よりも武、芸よりも剣。そんな貴族の長女の在り方は親の頭を悩ませていたが、無意味に剣を振るう無法者でもない。国の為、村の為。武を振るう場所を間違えないのは教育の賜物か。
イブリースが衝撃波を放とうと大きく息を吸い込んだ。それを見てデボラは盾を構え、仲間の元にはせ参じる。奇声と共に放たれる衝撃波が戦場を打つ。デボラのラージシールドはその衝撃を受け止め、仲間へのダメージを受け流す。
「指一本、いいえ、羽一本触れさせませんとも!」
「ん。そっちはまかせた。みかたとのれんけいはだいじ」
小さく頷き、リムリィが地を蹴る。無表情無感情に喋るリムリィだが、他人に興味がないわけではない。むしろ仲間と上手く動くことを重視していた。単純に自分から他人に絡みに行く気が無いだけで、けして人が苦手なわけではない。
事前に話し合った作戦に従い、目標に目を付けるリムリィ。なかまがなぐったのとおなじにわとり。小さく呟いてハンマーを振り上げる。そのまま力を込めて一気に振り下ろした。鉄塊にリムリィのパワーが加わり、轟音と共に叩きつけられる。
「おこった?」
奇声をあげながら翼を大きく広げるイブリース。『トサカに来た』とはまさにこのこととばかりに暴れはじめた。
だがそれは逆に言えばイブリースを追い詰めた証拠。自由騎士達は頷きあい、とどめを刺すべく攻撃を続ける。
自由式とイブリースの闘いは、まだまだ終わらない。
●
「コケコケー!」
「コケコッコー!」
暴れまわるイブリース。その攻撃はナバルを中心に……というかものすごい勢いでナバルを突いていた。
「痛い痛い痛い! 上手くこっちに攻撃を集めれたけど、これ本当に死ぬかも!」
ニワトリの好物を鎧の隙間に塗りたくったナバルは、フラグメンツを燃やして何とか耐える。仲間に攻撃を向かわせない為の処置ではあったが、食欲に任せて嘴を突き出す巨大ニワトリを前に血まみれになっていた。
「いいぞ、ナバル殿。この隙に攻撃じゃ! 牛串あらため鶏串の舞、コケケーッ!」
ナバルに指一つ立てて称賛を送り、シノピリカはイブリースに突貫する。舞うように……と言うか食欲を前面に出しての鋭い一撃を繰り出していく。アクアディーネの権能を乗せた一撃が、イブリースの根幹ともいえる何かを削っていく。
「しかし便利でござるなぁ、蒸気武器」
『秋刀魚』と『柳葉魚』を手に水月が頷く。蒸気を利用した武器を使うのはイ・ラプセルに来て初めてだ。威力の底上げといった対イブリースや対幻想種して有用だ。形自体も水月の型に会い、重宝していた。
「次、こっちね!」
エルシーは戦いの一番槍として動き回っていた。素早いエルシーの動きに合わせて他の自由騎士も目標を定める。これにより一糸乱れることのない各個撃破が成立していた。燃えるように赤い鱗を旗印にして一気呵成に攻め立てる。
「ニワトリの眼光、怖いんだな……。ゆ、勇者は恐れない、けど!」
狂暴化した鶏から目を逸らしながら、サシャは呟く。回復をするのだから敵を見る必要はいよね、と自分に言い聞かせながら呪文を唱える。とりにくは大好きだけど、あの目はダメ。鳴き声の度に反射的にそちらを見て、すぐにサシャは目を逸らしていた。
「しかしあれだけ殴っても浄化後はほぼ傷なしか。不殺の権能もあるのだろうが……」
仲間を癒しながらツボミは思考に耽ていた。自由騎士の集中砲火を受けたイブリースだが、浄化後は元の大きさに戻り、傷もない。イブリースと呼ばれる現象そのものに色々不明点があるが、この辺りは医学に利用できないものか……。
「今なら私も攻めてよさそうですね」
イブリースの数が減ったのを確認し、デボラはサーベルをもって前に出る。ここまでくれば後衛を護るよりも、攻めた方が総合的なダメージが少ないと判断したのだ。振るわれる一閃がイブリースの胸を裂く。
「あらっぽさならたぶんわたしもまけてない」
ハンマーを振るいながらリムリィが言葉を放つ。追い詰められて大暴れするニワトリ。その所作は重戦士が狂気を表に出す戦法に似ている。怒りに身を任せ、野生のままに暴れる。攻撃性を前面に出す戦い方は、リムリィもなれていた。
「人々を護るのが騎士の務め! もっとこいや!」
ボロボロになりながらも気合を入れるようにイブリースの前に立つナバル。イブリースの攻撃は凶暴だが、だからこそ村人達や村を襲わせてはいけない。騎士としてそういった暴力から皆を守るため、槍と盾を強く握りしめた。
ツボミとサシャの回復を基点に各個撃破で攻め立てる自由騎士。その効果は功を為し、イブリースは一体、また一体と倒れていく。
「これで最後よ!」
拳を構え、エルシーがイブリースに向かう。迎撃するように口出されるクチバシの一撃を避け、『古き紅竜の籠手』を振りかぶった。攻め立てる速度を拳に乗せ、無駄なくエネルギーを乗せて振りぬいた。
「これが神の一撃よ!」
アクアディーネの浄化権能を乗せたエルシーの拳。その一撃が村で暴れる最後のイブリースの動きを止めた。
●
戦いが終わってひと段落して、
「コラ暴れるな! 痛っ! 痛い痛い止めんかコラ!?」
ツボミは浄化したニワトリに異常がないかを確認すべく触診し……元気よく暴れまわるニワトリに突かれたり足でひっかかれたりしていた。見た目には怪我もなく、しかもここまで元気なのだ。異常はまるで見られない、というのが医学的見地である。
(イブリース化と浄化……単純に考えるならイブリース化という現象は元の生物に『ガワ』をかぶせたようなモノなのか。巨大化、狂暴化、肉体強化……そういった元の生物や器物に付与できる何か。
そして浄化はその『ガワ』だけをはがすことが出来る……といった感じか?)
そんな仮説を思い浮かべるツボミ。あてずっぽうだが、今までの経験を考えるとそこまで外れてはいないだろう。
「うう……臭い」
鎧から匂ってくる糠の香りにうんざりするナバル。お陰で仲間を上手く守れたのだが、この匂いは自分でもうんざりする。完全に分解して洗わないと、鎧の隙間に染み入った糠はとれそうにない。これは一日作業かなぁ? とため息をついた。
「むむむ……。鳥系の技は鳥にしか覚えられないという事ですか」
イブリースの凶暴化を戦いの中で自らの流転水護拳に取り入れようとした水月だが、上手くいかないと諦めたようにため息をついた。例えばソラビトか、鳥系のケモノビトなら上手くなじんだやも知れない。残念、と諦める。
「村の方もイブリース化した鶏を食べるのも出荷するのもしたくは無いと思うのですよ。ええ、ですから我々が食べるのが筋だと思うのです」
小さく鳴るお腹を押さえながらデボラが提案する。ツボミも確認したとおり、浄化した物や動物は無傷で戻る。だがこれは心情的な問題だ。決して早朝の任務だからと使用人を振り切るのに精一杯で朝食を食べ損ねているなどということはない。ないったらない。
「とりにく……サシャもそう思うのだ! とりにく!」
デボラの意見に同意するサシャ。その視線は浄化したイブリースと、囲いの中に居るニワトリに向いていた。尻尾を振って食欲全開でニワトリを見るオオカミ(ケモノビト)。『わかったからおちつけ』と仲間達に止められ、サシャは寂しそうな表情で指をくわえる。
「このニワトリは村の財産。みだりに手を付ける事はならぬ! ……まあ、報酬として受ける分には吝かではないのじゃが!」
貴族としての威厳を示すシノピリカ。このニワトリ一匹一匹が彼らの生活の基盤であり、生きる糧だ。それを我欲で求めるなど許せるものではない。……が、それはそれとして鶏肉は美味しいなぁ。そう思うシノピリカであった。
「もうニワトリはいいか、って気分だけどね」
そんなやり取りを見ながらエルシーは苦笑する。でも戦いが終わってお腹がすいたのは事実だ。イブリース化していたとはいえあのニワトリの動きは元気がよかった。かなり美味しいんだろうなぁ、と食欲をそそられる。
「うん。うん。わかった」
リムリィは鶏や他の家畜の話を聞いていた。自分と同種族の動物でないので話を聞いて相づちを打つぐらいだが、それで悩みを聞きだして農家の人に伝える事が出来れば。そうすることで関係がよくなればイブリース化も防げるかもしれない。
「ありがとうございます。皆様のおかげで村が救われました。お礼というわけではありませんが、皆様お腹もすいておられるようですし。こちらでお食事をしていきませんか?」
安全になった事を確認して礼を言うためにやってくる村人達。その言葉に、自由騎士達は同時に頷いた。
村で食事をした後に、自由騎士達は帰路につく。新鮮な鶏肉は焼いて塩をかけただけでも肉屋で売っている物とは別次元の味がしたという。
野禽のイブリース化により壊滅するはずだった村は、そんな鱗片も見せないほど平和な時が流れている。その日常こそ、自由騎士が獲得した最大の報酬だ。
「コケコッコー!」
今日も村にニワトリの鳴き声が響いていた。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
どくどくです。
とりにくがとりにくい。
以上のような結果になりました。
それほど苦戦しないだろうと思ってたら、本当に苦戦しない状態でした。一部に攻撃が集中したのが原因か。
というわけで、イブリースというかニワトリの習性をついて攻撃を集中させたジーロン様にMVPを。プレイング見た瞬間に決まりました、ええ。
……称号を『ヌカクサイアーマー』とかにしてやろうとしたのは、まあ、ええ。
それではまた、イ・ラプセルで。
とりにくがとりにくい。
以上のような結果になりました。
それほど苦戦しないだろうと思ってたら、本当に苦戦しない状態でした。一部に攻撃が集中したのが原因か。
というわけで、イブリースというかニワトリの習性をついて攻撃を集中させたジーロン様にMVPを。プレイング見た瞬間に決まりました、ええ。
……称号を『ヌカクサイアーマー』とかにしてやろうとしたのは、まあ、ええ。
それではまた、イ・ラプセルで。
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