MagiaSteam
Joyride! 暴走!暴走!大暴走!



●JOYRIDE――過剰なスピードを出したり盗んだ自動車で走り出す、面白半分のドライブ
「ヒャッホー!」
 露店が並ぶ商店街を走る蒸気自動車。黒煙を吐き出し、轟音をあげながら滑走していた。買い物をする為に道路を歩いていたものは突然現れた車に驚き、逃げる様に散っていく。幾つかの露店が暴走に巻き込まれ、商品のいくつかが台無しになる。
「ピエトロ! もっとスピード上げろ!」
「OK、アンセルモ! オラオラそこどけぇ! このCWⅡに轢かれたくなかったらな!」
 ピエトロと呼ばれた男がギアをあげる。蒸気自動車から黒煙がさらに上がり、チューンナップされたエンジンが蒸気自動車に更なる力を与えていく。商店街はさらなり悲鳴が上がっていく。
「このスピード、サイコーだぜ! もっと俺達を見ろよ、愚民共!」
「流石貴族様は解ってらっしゃる! バリバリチューンしたこの車こそが時代の最先端なんだ! しっかり目に焼き付けろよ!」
 ――ピトーニ家の次男坊アンセルモとその友人ピエトロ。二人の暴走は今に始まったことではない。親の金とコネで蒸気自動車を購入し、最新鋭のエンジンを積み込んだ。規格になっていないエンジンを無理やり合わせ、車体も色々改造する。銃や斧などを完備し、見た目の凶悪さも増していた。
 だがその暴走も長くは続かない。
「……? あれ、ハンドルが利かない……ってうわあああああああ!」
 正確には、二人の暴走は続かない。車が運転手の制御を離れ、勝手に動き出したのだ。まるで自動車そのものが意思を持ったかのように。
「い、い、イブリースだ!」
「俺のCWⅡがイブリース化したぁ!」
 車の暴走は止まらない。商店街の阿鼻叫喚は更なるステージへと向かうのであった。

●階差演算室
「街中で発生するイブリース事件を解決してほしいのである」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士を前に説明を開始する。
「対象は蒸気自動車がイブリース化したものだが、吐き出したスモッグも同様にイブリース化している。これらすべてを掃討してほしいのである」
 スモッグ自体は気体だが、イブリース化したことで『浄化』の権能の対象となる。権能を持つ自由騎士の武具や魔法なら問題なく対処できるだろう。
「商店街にはまだ逃げ遅れた幾人の人達がいる。ピトーニ家の次男坊とその友人も含めてだ。出来る事なら避難誘導し、安全を確保してくれ」
 パニックに陥った人達を誘導するのは、楽な事ではない。力づくで戦場から誘導するのも一つの手だ。
「諸君ならできると信じている」
 クラウスはそう言って話を終わらせる。後は自由騎士達の仕事だ、とばかりに。
 自由騎士達は頷きあい、演算室を出た。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
どくどく
■成功条件
1.イブリースの全滅
 どくどくです。
 当時の車で舗装されてない道路だから、時速40キロぐらいが限界かな?

●敵情報
・CWⅡ(×1)
 蒸気自動車がイブリース化したものです。正式名称は『チェインワゴンセカンド』。既存の蒸気自動車に凶悪な改造を施したものです。軍用じゃないのに武装しているので、普通に処罰案件。

 攻撃方法
斧      攻近単 車体についている斧で、通り抜け様に切り裂いてきます。【致命】
銃      攻遠範 車体についている銃を撃ち放ってきます。
体当たり   攻近範 暴走して体当たりしてきます。
排熱     魔近範 蒸気を吹き出してきます。【バーン1】
ジョイライド 攻遠全 自由気ままに周囲を駆け回り暴走します。

・スモッグ(×4)
 CWⅡが吐き出した黒煙です。物理攻撃は問題なく通ります。

攻撃方法
毒煙  魔遠単 違法な薬品が爆発したような煙を吐き出してきます。【ポイズン2】
毒の体 自付  物理的に払おうとすれば、反作用で煙が飛んできます。効果時間2T。【カウンター20】

●逃げ遅れた人達
 戦闘開始時、逃げ遅れた人達(CWⅡに乗っていた二人含む)が数名存在します。パニックを起こしており、自発的に行動できません。数名まとめて1キャラクターとします。
 一部の技能などでいう事を聞いてくれるかもしれません。そうでなければ物理的に戦場外に運ばなければ、戦闘に巻き込まれるでしょう。
 彼らの生死は、依頼成否に関係しません。

●場所情報
 昼間の商店街。露店などが並んでいますが、CWⅡが暴れ回ったせいで戦闘できるスペースは確保できています。足場や明るさなどは戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、敵前衛に『CWⅡ(×1)』『逃げ遅れた人達』が、敵後衛に『スモッグ(×4)』がいます。
 急いでいるため、事前付与は不可とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
9モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年11月21日

†メイン参加者 8人†




「まずは俺が現場を押さえる。先に行くぞ」
 真っ先に現場に向かったのは『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)だ。暴走するイブリースの前に立ち、逃げ遅れた人達の壁になるように槍を地面に突き立てて立ちはだかる。アデルの活躍を知る者は、その姿を見て安堵した。
「全く、ただでさえ迷惑な話なのにイブリース化なんて……」
 眉にしわを寄せるような表情をする『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)。往来で蒸気自動車を走らせるだけでも迷惑なのに、その車がイブリースになるなんて。どうあれ、ここで止めなくてはならないのは事実だ。
「まあ、そこの貴族が原因でイブリースになったとかいうわけでもなかろう」
 車の近くで尻もちをついている貴族とその友人を見て『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)が肩をすくめた。イブリースになる理由は解明されていない。幽霊列車が係わっている程度だが、貴族の暴走が関与している可能性は低いだろう。
「金持ちのドラ息子が一般人に迷惑かけるってよくお芝居にも出て来るけど、全く始末に負えないなー」
 ため息をつきながら『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)が武器を構える。『一定の地位をもつ迷惑行為を平民がたしなめる』系統の芝居は少なくはない。数が多い『平民』の喝采を浴びやすい題材だからだ。実際に迷惑を起こされると迷惑でしかないのだが。
「若気の至りと言うべき事案ではあるか」
 言って苦笑する『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。若さゆえに何でもできると思い込み、そしてそれが可能であるだけの力を持っている。そこである程度の良識があれば留まることが出来るのだが、それを持ちえないのが若さなのか。
「どいたどいたー!」
 持ち前の脚力を使って一気に駆け抜ける『勇者の悪霊退治』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)。あ、影狼は単体攻撃スキルなので攻撃対象を選ぶ必要があり、システム上距離が20m以上離れている相手は対象に選べず発動できません。メタ失礼。
「ピトーニ家……通商連との交渉を担う貴族か。車の武装もその辺りからかな。うん、軍事関係での影響はなさそうだね」
 事前に調べた資料を思い出しながら『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は頷く。次男坊であるがゆえに家を継ぐことはなく、かといって何かをしたいという渇望もない。それ故の暴走なのだろうとマグノリアは見ていた。
「自由騎士エルシー見参! みなさんは早く避難してください」
 軍馬に乗って現場に現れる『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。正に黒の弾丸とも呼ぶべき姿の馬は主が下りたのを確認した後に下がっていく。エルシーはそのまま拳を構え、イブリースに向き合った。
「まったく、何故亜人に紛れて避難誘導をせねばならないか」
 ぶつぶつと何かを言いながら避難誘導をするノウブルのポリティシャン。ノウブル至上主義ではあるが、無為に亜人の命が失われていいというほど嫌悪はしていない。
 自由騎士の登場に反応するように、イブリースはエンジンを回してうなりをあげる。黒煙が悪意をもって人間に牙をむく。
 暴走から始まった大暴走。それを止める為に自由騎士達は武器を持つ。


「どんな車かなー。楽しみだなー。あ、あぶないから離れた方がいいよ」
 一番最初に動いたにはジーニアスだ。逃げ遅れた人に声をかけつつ、暴走するCWⅡに飛び乗った。蒸気自動車に興味津々のジーニアス。どちらかというと操縦よりはその構造が気になっていた。かなりの改造跡をみながらワクワクした表情を浮かべる。
 ハンドルを手にして、ペダルを踏みしめる。だが反応らしい反応はない。イブリース化していることで、そう言った操作はできなくなったようだ。仕方ないとばかりに武器を抜き、車を破壊するために叩きつける。
「んー。ダメもとだったからいっか!」
「相手はイブリースだから仕方ないわね」
 ジーニアスの言葉に肩をすくめるエルシー。簡単に制御できるのなら苦労はしない。遺跡で見つけた籠手を嵌め、真っ直ぐにイブリースを見る。蒸気紫蘇同社とそれが吐き出す黒煙。先ずは数を減らさなくてはと拳を構える。
 構えを維持したまま、呼吸を整えるエルシー。呼吸と共に体内の気を練り上げ、そして丹田と呼ばれる場所に集めていく。集めた気を意識しながら、真っ直ぐに拳を突き出すエルシー。気は拳の誘導に従うように真っ直ぐにスモッグに叩きつけられる。
「なんだろう……。いま私、未来の社会問題に向き合っている気持ち」
「ヘルメリアでもいろいろ言われているみたいだね。スモッグと喘息は」
 エルシーの言葉に相づちを打つマグノリア。蒸気機関や工場が吐き出す煙が喘息患者を生んでいるという話は聞いたことがある。事、ヘルメリアの喘息患者数は他国より多いとか。その因果関係まではまだ未定だが、無関係ではないだろう。
 閑話休題、とばかりにマグノリアは避難誘導に回る。尻もちをついた貴族に近づき、声をかける。
「本当の自分の事をちゃんと周りに見て貰いたいのなら……君が先頭に立って動き皆を避難させるといい」
「な、何の話だ!?」
「心を閉じて蹲って居てもいいけれど……君は、皆に自分を見て貰いたいんだろう?」
 その言葉に動揺するアンセルモ。俯き、そして拳を握って何かに奮えていた。
「お灸をすえるのはここを押さえた後ね」
 そんなアンセルモを見ながらアンネリーザは苦笑する。イブリースの件はともかく、自動車で迷惑をかけたことには変わりない。どういう形にせよ、その行為を反省させなくては彼も前には進めないだろう。
 翼を広げて空を飛び、広い視界を確保すると同時に皆が見やすい位置を取る。アンネリーザは大声を出し、安全な場所を指差して叫んだ。バラバラになりそうな皆の動きを統一し、一定の方向に向かわそうとする。
「みなさん落ち着いて! バラバラに、ただ闇雲に逃げちゃダメよ!」
「ほれ。足をくじいたわけでもないのなら立って走れ。後、そっちの子供を頼むぞ」
 ツボミは逃げ遅れた人達に近づき、医者の目で症状を見てからどうすべきか声をかけて示していた。出血程度なら元気と判断して動かし、パニックで転んで走れなければ動ける人間に担がせる。医療知識に基づいた誘導だ。
「まー、あそこのアホコンビも診とくか。ほれ、おまえら車から放り投げ出されたんだろう? 打撲とかないか?」
「誰がアホコンビか! って、マザリモノの三つ目医者!?」
「なんだ? マザリモノで悪いか?」
「いや……ペストマスクといい、自由騎士の医者はいい噂を聞かないというか……」
「アレと一緒にされるとはな。風評被害もいい所だ」
「風評被害……なのかな?」
 ツボミと貴族のやり取りに苦笑するカノン。国に多く貢献して自由騎士として有名になったがゆえに、その噂に尾ひれがつくのは致し方ない。医療を優先するために倫理を外れる医者、というのは芝居の題材としても取り上げられる。ツボミがそう医者かというと――
 首を振って意識を切り替えるカノン。今は避難誘導が優先だ。静かに息を吸い込んで、お腹に空気を溜める。腹式呼吸を行い、横隔膜を震わせるようにしてリズムを保ってカノンは歌う。
「恐れないで 大丈夫 私達がついているから。
 神様に誓うよ、皆をきっと救ってみせる♪」
「我々は自由騎士だ! 皆、聞け! 向かうべき先はあちらだ!」
 声を張り上げ、避難誘導を行うテオドール。他の自由騎士の誘導もあり、誘導はスムーズに進んでいた。それを確認した後にイブリースに向き合う。巻き込まれた人の誘導も重要だが、イブリースの放置はできない。
 イブリースの足回りを見て、自在に動けることを確認するテオドール。車の機動力を発揮されるより先に魔力を放ち、イブリースの足元を泥土に変える。ぬかるんだ土に埋もれていく蒸気自動車。如何に改造されたエンジンであっても、容易には抜け出せないだろう。
「動きは封じました。今ですバビッツ卿」
「今は領主ではない。ただの傭兵だ。卿をつけられる立場ではない」
 テオドールの言葉に背中越しに還すアデル。ニルヴァン領主として政を行っていた事もあるが、今はその立場ではない。一介の傭兵として、そして自由騎士としてこの場に立っているに過ぎないのだ。
 泥に足を取られたCWⅡを前に槍を振るう。改造された蒸気自動車の装甲を意識しながら槍を構え、カタクラフトをフル稼働させる。吹き出す蒸気と共に突き出された槍は、車の装甲を貫き、内部に衝撃を加えた。
「車とはいえ、この重さには耐えれまい」
 イブリースが泥から抜ける頃には避難誘導も終わり、避難に回っていた自由騎士達も自動車に武器を向ける。それに応じるように、イブリースはエンジンをうならせ、轟音をあげた。
 商店街の戦いは、さらに加速していく。


 自由騎士はまず蒸気自動車を片付けようと火力を集中し、並行してスモッグにダメージを積み重ねていく。
 アンネリーザ、アデル、カノン、ジーニアスが集中的に叩き、テオドールはスモッグを巻き込みながら魔術を展開する。エルシーは後衛のスモッグを中心に叩き、ツボミとマグノリアは回復に移行する。
「あたたたた! 振り落とされちゃった……!」
 座席から攻撃を加えてくるジーニアスが振り落とされると同時に排気口から熱い蒸気を浴びて、フラグメンツを削られる。何とか起き上がって武器を構えなおした。
「スモッグって物理で殴れるの? まあイブリースだし何でもありね!」
 アンネリーザはスモッグを見ながら頷く。気体状のイブリースは武器で殴れそうになさそうだが、霊体のイブリースもダメージを与えられるのらから問題はない。車を片付けたら次は貴方達だからね、と視線で圧をかける。
「蒸気自動車か。錬金術の範疇ではないけど、興味深いね」
 動き回るイブリーズを見て、マグノリアはうんうんと頷いた。専門外ではあるが蒸気自動車は技術の最先端だ。それがどのような原理で、どのような構造で動いているのかには興味がある。時間に余裕があれば勉強してみたい所だ。
「うんうん! 分解してみたいね!」
 わくわくとした顔でジーニアスが頷く。蒸気機関に興味を持つジーニアスは、蒸気自動車のような蒸気機関の結晶を見ると胸が躍る。原理や構造を理解しているが、やはり実物を見てみたい気持ちでいっぱいだ。
「どの道、証拠品として押収することになるからな。検分に立ち会うぐらいは許されるだろう」
 槍を振るいながらアデルがマグノリアとジーニアスに応える。CWⅡは事件の証拠として押収し、念入りにチェックされるだろう。イブリース浄化の際に与えた傷は浄化が鳴ったと同時に消えてしまう。残骸ではなく綺麗な形の車を見る事が出来るはずだ。
「魔導に対する防御は低いようだ。一気に決めさせてもらおう」
 テオドールは蒸気自動車に呪術を仕掛け、その手ごたえに笑顔を浮かべる。周囲の魔力と同調して鋭い感覚を得て、広がる五感でイブリースの隙を見出して術を展開する。回避の余裕すら与えない呪術がイブリースを襲う。
「それにしても趣味悪い車だなー。センスの欠片も感じられないね」
 斧と銃というゴテゴテした車を見ながら、カノンが眉を顰める。凶悪と言うよりは近くにあった武器を無理やりくっつけたイメージが高い。美的センスを感じさせない改造に、アーティストとして一言言いたいカノンでした。
「やれやれタフな車だな。お陰で休む暇がない」
 ツボミは始終治療に専念していた。逃げ遅れた人の対応から、戦場で戦う自由騎士。イブリースが健在である限り危険はあり、気を抜く余裕はなかった。とはいえその甲斐もあって、死者や重傷者は見られない。
「はい終了! それじゃあ私も参加させてもらうわ!」
 スモッグを全部片づけたエルシーがCWⅡに向き直る。轍から動ける範囲を脳内で描き、そのイメージを中心に動き方を展開する。相手の攻撃範囲を予測し、間合いを取り合う。相手が車であっても格闘の理論は通用する。繰り出される拳がボンネットを穿つ。
 エルシーが参加したことで蒸気自動車への攻撃が加速し、一気に追い込まれていく。物理的に頑丈なボディを持ちタフネスを持っているイブリースだが、自由騎士の猛攻の前に少しずつ追い込まれていく。
「これで終わりだよ。次はもっと美的センスのある人に改造されてね」
 拳を振り上げ、カノンがイブリースに迫る。浄化の権能により戦闘で破壊された箇所は元に戻る。ひと段落すれば全部の装飾を外されるだろうから、その時は普通のセンスを持つ人に飾ってもらおう。
「これで、お終いっ!」
 カノンが真正面から拳を叩きつける。その衝撃を受けて、蒸気自動車は煙を吐いて動かなくなった。


 戦い終わってミズビトの男性が後処理を行う中、自由騎士達はアンセルモとピエトロを捕まえていた。
「美的センスはしょうがないとして、皆に迷惑かけたんだからちゃんと謝りなさい!」
 カノンの言葉に、罰が悪かったこともあり素直に謝罪するアンセルモとピエトロ。美的センスに関してはピエトロは何か言いたげだったが、圧力に負けて押し黙る。
「イブリース化は偶然の産物でしょうが、負の要因が影響しているのは明らかです。これに懲りて、領民を危険に晒す行動は慎んでくださいね!」
 アンネリーザは怒りを込めて二人を叱る。怒りの理由は領民を巻き込んだことで、イブリース化は已む無しだ。逆に言えば町の人を巻き込まなければ、やんちゃし過ぎですといった程度で収まったのだが。
「成程、あの個性的なオプションは御友人のアイデアか。それを取り入れるアンセルモ・ピトーニ卿の懐の深さという事だな。
 ……家を継げぬ苦悩があるだろうが、だからといって人に迷惑をかけていい訳ではないぞ」
 ピエトロの反応を見て、テオドールがため息と共に呟く。家を継げない貴族の末路は様々だが、大半が家の為に政略結婚させられる辺りだ。そんな政治の道具になる人生に嫌気がさす気持ちはわからないでもない。
「違法改造に暴走行為。まあ、身体以外の無事は未だどうなるか分からんぞ貴様等」
 指を折りながらツボミが告げる。暴走行為と短く告げたが、商店街で壊した者や傷ついた人がいればさらに罪は上乗せされる。調査次第ではかなりの罪が発生するだろう。
「とはいえ、その改造技術を腐らせるのは惜しい。国防軍に『志願』するなら態度によっては減刑もありうるぞ」
 ツボミの言葉に被せる様にアデルが言い放つ。兵役とは国への奉仕である。罪状にもよるが、兵役による減刑措置は普通の制度だ。今回の場合は、当人たちの反省次第だろうが。
「クロックワークタワー辺りにでも放り込んでもいいかもよ。厳しめの先生そろってるし」
 エルシーはイ・ラプセルの蒸気機関開発機構の名前を出す。イ・ラプセルの技師がそろって顔を青ざめるほどの先生がいるのだから、性根を治すにはちょうどいいだろう。ついでに車も見てもらおう。
「どうするかは楽しみにしているよ。少なくとも、今回の事件はいいきっかけになったはずだ」
 マグノリアは言ってアンセルモを見る。行き場のない感情を発散させるように暴れていた彼が、この事件を機会にどう変化するのか。その心境を含めて興味があった。どのような形であれ、立ち上がって進む人間は素晴らしい。
「エンジンはヘルメリア製? ああ、ごった煮だなぁ」
 ジーニアスはエンジンを見て、あちゃー、と唸りをあげていた。エンジンの部品や動力部それぞれが別の国で作られたものを無理やりはめ込んでいるのだ。これでは一時的な加速は出るだろうが、すぐに壊れてしまう。そんなピーキーな改造だった。

 後始末も終え、蒸気自動車を証拠品として押収する自由騎士達。アンセルモとピエトロも暴走事件関連で連行されることになる。
 アンセルモとピエトロは、しばらく反省の意味も込めて刑に服す形となった。出所した彼らがどうなるかは、これから次第だろう。
 被害は思ったより少なかったのか、それとも迷惑な二人がいなくなったのか。街は次の日から活気を取り戻す。死人がいなかったのは幸いだ。
 平和な街の営み。それこそが、自由騎士が得た最大の報酬だった。


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
暴れ馬1819年バージョン。ファンタジー世界だと強い騎乗動物あたりになります。

以上のような結果となりました。
成功条件に書かれていないから、貴族ぐらいは見捨てるかなぁ、と思っていましたが見事救出。まあその分イブリースが長生きしまし……たような気がしました。まさか1ターンで避難を終えるとは。
そんなわけで、MVPはパニックを上手く収めたイスルギ様に。

それでは、またイ・ラプセルで。
FL送付済