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潮騒に揺られて

●
「さて、皆様! 皆様に置かれましてはシャンバラとの戦い、お疲れ様でした。
もちろん、ええ、ええ、もちろんやるべきことはたくさんありますでしょう。
その前に、英気を養うためにも我が船団国家『通商商業連合国』にご招待したいと思います」
そう、張り付いた笑顔で貴方達を誘うのは、通商連議長カシミロ・ルンベック(nCL3000024)である。
彼が言うには巨大蒸気船が10隻ほど連結して領土となす、通商連の本拠地――地、ではないが、に招待するということだ。
もちろんこれには政治的な意味も込められている。腑分けされるシャンバラが輸出していた豊富な農作物はあくまでも聖櫃というイレギュラーによって作られていたものだ。
それがなくなることにより、通商連もまた今後の取引が変わってくる。
故にその探りもあるのだろう。
「我が船団には、陸地にあるありとあらゆる施設がございます。そうですねぇ~、娯楽としては、海を見渡す露天浴場に、スポーツ施設、キネトロープの劇場に、音楽ホール、あとは――カジノ、などでしょうか?
食事もご用意させていただきますので、ええ、ええ。
どうぞご随意に遊びにきてくださいませ」
そう言うと、カシミロは貴方達に通行チケットを渡す。
「このチケットがあれば、ある程度の娯楽施設にはいれますし、国家機密に関わる区内への侵入はお断りいたしますが、ある程度の見学も構いませんので」
「さて、皆様! 皆様に置かれましてはシャンバラとの戦い、お疲れ様でした。
もちろん、ええ、ええ、もちろんやるべきことはたくさんありますでしょう。
その前に、英気を養うためにも我が船団国家『通商商業連合国』にご招待したいと思います」
そう、張り付いた笑顔で貴方達を誘うのは、通商連議長カシミロ・ルンベック(nCL3000024)である。
彼が言うには巨大蒸気船が10隻ほど連結して領土となす、通商連の本拠地――地、ではないが、に招待するということだ。
もちろんこれには政治的な意味も込められている。腑分けされるシャンバラが輸出していた豊富な農作物はあくまでも聖櫃というイレギュラーによって作られていたものだ。
それがなくなることにより、通商連もまた今後の取引が変わってくる。
故にその探りもあるのだろう。
「我が船団には、陸地にあるありとあらゆる施設がございます。そうですねぇ~、娯楽としては、海を見渡す露天浴場に、スポーツ施設、キネトロープの劇場に、音楽ホール、あとは――カジノ、などでしょうか?
食事もご用意させていただきますので、ええ、ええ。
どうぞご随意に遊びにきてくださいませ」
そう言うと、カシミロは貴方達に通行チケットを渡す。
「このチケットがあれば、ある程度の娯楽施設にはいれますし、国家機密に関わる区内への侵入はお断りいたしますが、ある程度の見学も構いませんので」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.通商連で楽しむ
ねこてんです。
通商連に遊びにいこう! です。
船団国家で巨大な蒸気船が何台も連結しているのでとても広いです。
会談時にはこの船の連結を外して移動したりします。
ちょっとした、島程度の広さがあると思ってください。
わりといろいろなことができますが、国家機密のある区間には小動物に変身しようが侵入はできません。(国際問題に関わるので、本当にやめてください)
そのようなプレイングは白紙として扱います。
ガイドが必要であれば、カシミロ・ルンベック(nCL3000024)の使者か13番(nCL3000025)がご案内します。
行動は
【1】娯楽施設で遊ぶ。
・露天浴場(男女別になります。不明の方はご自身の性別をお選びください)
海を見渡す広い浴場になります。マーライオン的なライオン像の口からお湯がでてるような豪華な感じのラグジュアリーなお風呂です。
・スポーツ施設
いわゆるアスレチックみたいな感じの遊具があったり、広いグラウンド的なものがあったりします。
・キネトロープ劇場
最新鋭のキネトロープを楽しめます。
キネトロープとは何千枚もの写真を切り替えて、ストーリー仕立てにして写真がうごいているような臨場感のある映像になります。
音声はないので、弁舌士と呼ばれる役者が、その絵に合わせてストーリーを語っていきます。
弁舌士は5人ほどの豪華なキネトロープです。
内容は恋愛もののようです。
・音楽ホール
様々なミュージシャンが音楽を奏でています。
演奏する側になるのも大丈夫だとカシミロは言っています。
・カジノ ※年齢制限はありません。
ポーカー、ルーレットなどいろいろあります。
ここに参加する方がある一定数を超えるとなにか新しいコンテンツが増えるかもしれません。
☆未来視、目星などのスキルを使った場合はイカサマとして、クローリーみたいに追い出されるのでご注意くださいませ!
イカサマ使用が多い場合にはカジノ出入り禁止になる可能性もあります。(その場合はコンテンツの追加はありません)
こちらにはねこてん担当NPC、及びちょころっぷ担当NPCも遊びにきています。
デートに使ってもらってかまいません。
お呼ばれしたところには喜んで伺わせていただきます。
もちろんいつものランダムもOKです。
EXなりなんなりに指名してください。
ただし、アクアディーネ、王族の皆様、宰相、メモリア、アルヴィダは今回は参加しておりません。ご了承ください。
【2】船団内を見学したり、カシミロと話をする。
船団を見学したいのであれば、こちらに。社会見学的な表層の部分の見学になります。
通商連について知りたいことをプレイングにかいてください。
カシミロさんと政治的な話をしたければどうぞ。そうじゃなくても歓談したい場合もどうぞ。
政治的な話はしなくても、宰相様が政治的なことはやっといてくれます。
【3】食事会
割と豪華な海の幸をふんだんにつかった食事です。
おにくもあります。
こちらにもNPCは呼んでもらってかまいません。
なぜかここにアレイスター・クローリー(nCL3000017)がいます。カジノにいけばイカサマし、キネトロープや音楽ホールではやじをとばし、スポーツ施設ではろくでもないことをやらかして追い出されました。
なぜかめっちゃノリノリで遊びにきたようです。よばれてもないのに。
一行目 【1~3】
二行目 同行者(ID)/同行希望NPC/グループ名
三行目 プレイング
の書式でお願いします。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
通商連に遊びにいこう! です。
船団国家で巨大な蒸気船が何台も連結しているのでとても広いです。
会談時にはこの船の連結を外して移動したりします。
ちょっとした、島程度の広さがあると思ってください。
わりといろいろなことができますが、国家機密のある区間には小動物に変身しようが侵入はできません。(国際問題に関わるので、本当にやめてください)
そのようなプレイングは白紙として扱います。
ガイドが必要であれば、カシミロ・ルンベック(nCL3000024)の使者か13番(nCL3000025)がご案内します。
行動は
【1】娯楽施設で遊ぶ。
・露天浴場(男女別になります。不明の方はご自身の性別をお選びください)
海を見渡す広い浴場になります。マーライオン的なライオン像の口からお湯がでてるような豪華な感じのラグジュアリーなお風呂です。
・スポーツ施設
いわゆるアスレチックみたいな感じの遊具があったり、広いグラウンド的なものがあったりします。
・キネトロープ劇場
最新鋭のキネトロープを楽しめます。
キネトロープとは何千枚もの写真を切り替えて、ストーリー仕立てにして写真がうごいているような臨場感のある映像になります。
音声はないので、弁舌士と呼ばれる役者が、その絵に合わせてストーリーを語っていきます。
弁舌士は5人ほどの豪華なキネトロープです。
内容は恋愛もののようです。
・音楽ホール
様々なミュージシャンが音楽を奏でています。
演奏する側になるのも大丈夫だとカシミロは言っています。
・カジノ ※年齢制限はありません。
ポーカー、ルーレットなどいろいろあります。
ここに参加する方がある一定数を超えるとなにか新しいコンテンツが増えるかもしれません。
☆未来視、目星などのスキルを使った場合はイカサマとして、クローリーみたいに追い出されるのでご注意くださいませ!
イカサマ使用が多い場合にはカジノ出入り禁止になる可能性もあります。(その場合はコンテンツの追加はありません)
こちらにはねこてん担当NPC、及びちょころっぷ担当NPCも遊びにきています。
デートに使ってもらってかまいません。
お呼ばれしたところには喜んで伺わせていただきます。
もちろんいつものランダムもOKです。
EXなりなんなりに指名してください。
ただし、アクアディーネ、王族の皆様、宰相、メモリア、アルヴィダは今回は参加しておりません。ご了承ください。
【2】船団内を見学したり、カシミロと話をする。
船団を見学したいのであれば、こちらに。社会見学的な表層の部分の見学になります。
通商連について知りたいことをプレイングにかいてください。
カシミロさんと政治的な話をしたければどうぞ。そうじゃなくても歓談したい場合もどうぞ。
政治的な話はしなくても、宰相様が政治的なことはやっといてくれます。
【3】食事会
割と豪華な海の幸をふんだんにつかった食事です。
おにくもあります。
こちらにもNPCは呼んでもらってかまいません。
なぜかここにアレイスター・クローリー(nCL3000017)がいます。カジノにいけばイカサマし、キネトロープや音楽ホールではやじをとばし、スポーツ施設ではろくでもないことをやらかして追い出されました。
なぜかめっちゃノリノリで遊びにきたようです。よばれてもないのに。
一行目 【1~3】
二行目 同行者(ID)/同行希望NPC/グループ名
三行目 プレイング
の書式でお願いします。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
0個
1個




参加費
50LP
50LP
相談日数
10日
10日
参加人数
50/50
50/50
公開日
2019年05月09日
2019年05月09日
†メイン参加者 50人†
●
大いなる海原に、巨大蒸気船の船団によって、領土をなす国家がある。
それこそが『通商商業連合国』である。
「わーーーーーーーーーーー!!」
早速大騒ぎなのはアダム・クランプトン(CL3000185)だ。支柱から吊るされた輪っかに飛びつくとまるで猿――もとい、野生児のように遊び――もとい運動訓練を始める。
流石に合体することはないにしろ丈夫なその遊具はそう簡単に壊れそうにもない。
ことさら彼が好んだのは、高所から低所へロープウェイに吊るしたハンドルと足場で滑り降りる『子供用』の遊具である。
「かげろーーーーーーーーーーー」
一応大人向けにボルタリング的な各所に岩を配置して垂直面を昇るというストイックなものもあったのだが、アダムは15度目のロープウェイを楽しんでいるところだ。とても気に入ったらしい。
もちろん子どもたちにも大人気の遊具だからさもありなん。ちゃんと列に並んで遊んで――訓練している。
「そうさそうだよ大丈夫さアダム・クランプトンこれは訓練だ! そうと決まればいくぞいくぞいくぞ!! かげろーーーー!」
子どもたちもその楽しそうなアダムに影響されて『かげろーーー』と叫びながら遊んでいる。
ところでアダムくん! AAはやめなさい! めっ!
船団国家である通商連の本拠地は来ようとおもってすぐに来れるような場所ではない。
良い機会だと調査をしようとルーク・H・アルカナム(CL3000490)は立ち上がる。
「本拠地だけに隙はないか――」
しかして、娯楽施設の多い場所であるここには幸せそうな乗客たちが多い。よしんば何かが起こったとしても通商連の警備員は屈強なものが多いし自由騎士(なかま)も居る。
それに今回は仕事ではない。カシミロ・ルンベックからの招待だ。
「野暮ってやつか」
ルークは帽子のつばを下げてため息をつく。本日は探偵休業だ。
と思った矢先に聞こえる足音。女性と思われる足音に続いて男のものが――ひとつ、ふたつ、みっつ。
女性は逃げているようだ。どうにもこれはきな臭い。
「休暇宣言は後回しになりそうだ」
言って、ルークは床を蹴り足音のほうに向かう。
この後、戦闘、恋愛、そして逆境と別れ――。キネトロープにしたらおおよそ1時間と半分ほどのドラマが展開されるのだがそれはまた別のお話し。
それは少女にとっては初めての依頼。
自由騎士になって最初の依頼は音楽ホールで演奏を披露すること。
つま先が震える。心臓は早鐘のようだ。
そりゃ街の広場で演奏することはなれている。こんな大きなホールで演奏なんてはじめてだ。お客さんに気に入ってもらえなかったらどうしよう。自由騎士の演奏なんて、なんて思われたら泣いてしまうかもしれない。
秋篠 モカ(CL3000531)はすくむ気持ちを隠しきれないまま足をすすめる。そんなモカの背なかがぽん、と叩かれた。振り向けばバーバラ・キュプカーだ。
「貴方の演奏アデレードではすごくウケてたじゃない、いつもどおりで、そうね、草原を走るあの歌なんて舞台がはねると思うわよ。 ほら、言ってらっしゃい」
「は、はいっ!」
その言葉にモカは深呼吸をすると手持ちのリラを爪弾く。
「そうそう、できるじゃない。ほら、みんな待ってるわよ」
「はい!」
元気よく舞台に上がれば、熱いほどのライトと観客の拍手。モカの指先がリラをつま弾けば場内はシン、としずまる。
モカは歌う。いつもの歌を。今日はいつもより声が通る気がする。だから気持ちよくうたえる。
歌い終わった後には万雷の拍手。
モカはその拍手になんどもお辞儀をして感謝を返すのだった。
「タイガー? 湯加減どーお?」
通商連の露天浴場の敷居を超えてロイ・シュナイダー(CL3000432)の声が聞こえる。
見た目イケメンのタイガ・トウドラード(CL3000434)は更衣室で一悶着あったものの、お湯につかった直後のその声に自分より前にお湯を楽しむ客にくすくすと笑われてしまったのが気恥ずかしかった。
「今度こういう所に来る時はさー。『混浴』とかイイよねー!」
そんな自分の気持なんてお構いなしにロイは続けてくる。仲良しさんね、なんて他の客に笑われて恥ずかしくてしかたない。
「あ! そだ! 海に行く時とかさ、俺、タイガの水着姿とか見てみたいなー!」
婚約者殿は好き放題だ。向こうのお客から、坊主調子に乗りすぎだぞ、なんて怒られている。
「ああ、わかったわかった!」
冷静に考えると肌を露出するのは恥ずかしいけれど、あの純粋な彼のこと。ごく単純に次の予定を考えているだけだろう。意識するほうが馬鹿らしいというものだ。
一方ロイはもちろん下心なんていくらでもある。だって男の子だもん。
婚約者からの言質をとったところで、そろそろのぼせそうだから、彼女にあがることを伝え、ロビーで待つ。少し上気した婚約者の顔がセクシーでドキドキする。
「あ、のぼせぎみかな? ジュース買ってくるよ」
「そんなことはない……けど飲み物は欲しい」
飲み物と共に戻ってきたロイは甲斐甲斐しくも(下心でもって)タイガに膝枕する。
「いつもすまない、のぼせたというわけではないが少しぼーっとしてる」
そういって一口飲み物を嚥下する喉元が色っぽくてついロイはガン見してしまう。
「そういうのをのぼせたっていうんだよ。こんなタイガも可愛いしきにしないで」
「そうか、本当にお前は優しいな」
置かれた飲み物のカップをロイは手に取ろうとして少しだけその「優しい」という言葉に逡巡した。
体をしっかりとごしごし。
いちにっさんしっ、準備運動。そしてざっぱーん!
カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は満を持してお風呂に飛び込む。
こらー、なんて怒られて素直にごめんなさい! とあやまってから、人の少ない場所に向かう。
海の広大な風景とお風呂が繋がって、なんだか暖かい海に入ってるような気がしてくる。
ここが船の中なんて信じられないくらいだ。
「あ! らいおんだ!」
お湯が流れるその獅子の像をみたカーミラは修行時代を思い出す。滝から落ちる水流に耐える訓練をしたことがある。
「しゅぎょーだ!」
もちろん滝ほどの水圧なんて無いのはわかっている。だから少し油断した。
背泳ぎでふわーと獅子の口元に泳いでいけば――。
「ごぼごぼごぼぼぼ」
思った以上の水圧にお湯の中に仰向けに押し込まれてしまう。
「ぷはーーー!」
びしょ濡れねずみのカーミラはなんとか体勢を立て直す。なんと、獅子は強かった。
「溺れるかとおもったー」
音楽ホールに満ちるのはしっとりとした小夜曲(セレネイド)。
エル・エル(CL3000370)は目を閉じその楽曲をたのしむ。音の魔術を嗜む彼女にとって音楽は親和性が高いものだ。誰かの演奏を聞くのも悪くない。
それが――。誰かと一緒なんて考えもしなかったけど。横目で『隣』を見れば、ザルク・ミステル(CL3000067)と目が合う。なんでよ。あなた聞いてたんじゃないの?
隣の男はそんな恨めしい目つきにも物ともしない。それがなんだか腹立たしい。
とは言えそのザルク本人も時折チラチラとエルを見ていたのだがうっかり目が合って、男の子の意地として驚いた様子は見せない。
「あたし、歌うだけで演奏はできないのよね」
なんとはなしにつぶやく。ピアノの弾き語りなんてできたら格好つくんでしょうけれど。
「それは意外だな。でも確かにピアノを弾くエルエルは絵になりそうだ」
「あんたは?」
「ん?」
「ザッくんは楽器の演奏はできる?」
エルはそこで気がつく。お互いに趣味の話なんてしたことがついぞなかったことに――。
「音楽を聴くこと自体めったにない」
言ってザルクはさり気なさを装ってエルの手をにぎる。エルはその手袋越しの熱量にドキリと胸をはずませる。多分気づかれてないだろうから何事もなかったように振る舞う。
それに気分を良くしたのか、触れる程度だったその手に力がこもる。ばかね、少し痛いわよ。
「そう、あたしたちお互いのこと何も知らないのね」
「知ればいいさ」
「時間は有限だから――」
ザルクの手に力がこもる。だから痛いってば。でもそれはきっと彼の不安の現れなのだろう。だから柔らかく握り返せば少しだけザルクのちからが緩む。
「だから、少しずつあんたのことを知っていきたいわ」
「ああ、そうだな」
そういって微笑む横顔は子供みたいで少し可愛いなと思った。
「じゃあ、聴き終わったら話をしよう。俺もエルエルの好きなものを知りたい」
「いいわね。じゃあ今は、静かに聴いているのよ?」
そう言って微笑むエルにザルクは音楽鑑賞とは悪くないものだと思った。
何枚も? 写真を? 重ねる?
で、弁舌士? なんだそりゃ。
田舎者のナバル・ジーロン(CL3000441)にとってキネトロープを説明されてもピンとはこない。
しかして好奇心というものは止められない。実家へのいい自慢話になるだろう。
一人、男ナバル・ジーロンはキネトロープに向かう。
燦然と輝くは恋愛作品を表す看板。
客はカップルが多いようにみえる。うるせい! ヒトリモンで悪かったな!
参考程度に見てやる!!
上映ホールに空いた席を見つけどん、と座れば、隣にはいつもより少しおめかししたシェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。
「あらあら、男の子なのに恋愛ものに興味あるんですか~?」
「参考にしてやらあ!」
「うふふ、わたし~恋愛ものに弱いんです~、すぐにべそべそないちゃっても笑わないでくださいね~」
「ここあいていますか?」
もう一つの逆側の席があいているかをたまき 聖流(CL3000283)が尋ねる。
「ああ、だいじょうぶだ!」
何の因果か。ソロキネトロを決めるナバルは両手に花。なんとなく緊張する。
やがてブザーが鳴り、劇場は暗くなり、写真映像に石灰光(ライムライト)が当たる。かしゃ、かしゃ、機械音と共にたくさんの写真が入れ替わりまるで動いているようにみえる。切ない音楽とともに弁舌士に語られるは悲恋の物語。
出会いと、蜜月と、そして切ない別れ。その様子が男性の弁舌士と女性の弁舌士とで情熱的に描かれていく。
ずび、ずびーーーーー。
シェリルは持ってきたハンカチを噛み締めながら切ない恋の流れに涙する。
ぶええ、ずび、ひでぇよお! そんな、ずび、ずずーーーっ
なんとも煩いのはナバル君。多少の顰蹙もかいつつも目の前の物語に深く感情移入している。
そんな彼に苦笑しながら、たまきはハンカチの予備をナバルに渡した。
ずびびーーーーちーん。
鼻をかむな。
やがて別れたはずの主人公たちが、奇跡の出会いを果たしたところでキネトロープは終わり、余韻を楽しむ客席がざわつきはじめる。
「あーーーよかったです~。わたしも、こんなシチュエーションで恋愛してみたいですねぇー」
シェリルは八千代堂にも跡継ぎをと強く決心する。どうせならこんな素敵な恋愛の果てに、なんて思うのは女子ゆえに。相手はまだいないけど、映画のように出会うことができたらいいなと思う。
「ロマンチックで素敵でした。弁舌士の方に差し入れを――とは思いましたが人がいっぱいですね」
たまきは用意した飲み物を渡そうと思うが、悲恋を情熱的に演じきった弁舌士はたくさんの客に囲まれ花束を受け取っている。
「またこんどの機会に」
私もいつかすてきなひとと、キネトロープを見に来れたら……なんて思う乙女心の傍ら――。
「うわーーーん、よがったなああ、まりあーーー、しんじてたもんなああ、しあわせになれよぉお、ぼびゅびっ」
なんて鼻水で詰まらせながら泣き続けるナバルがいるもんだから余韻もへったくれもない。
「ほらほら、ナバルさん。よかったですね。ハッピーエンドでした」
「よがったーーーよがったーーー!!」
たまきはバッグの中からこれまた余分にもってきたハンカチをナバルにわたすのだった。
そんなかしましい三人から少しはなれたところではアルビノ・ストレージ(CL3000095)が椅子に腰をかけたまま、余韻に浸る。
切り替えの滑らかさはキノライブ社の蒸気映写機をつかっているのだろう。蒸気音をできるだけ抑えるようにした機構は少し知りたいところだが。
「これは……なかなか参考になったよ」
とはいえ。
アルビノは長い爪のついた指先を揺らす。
内容としてはワタシにはあまり関係ないものだったかな。
それでも『技術』を目にすることはマシーナリーとしては興味深いことだ。
アルビノは立ち上がると、ひとこと。
「ありがとう」
と伝え劇場を後にした。
テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は婚約者のカタリーナを連れてのキネトロープ鑑賞。
切ないラブストーリーはハッピーエンドで幕を閉じた。
「テオドール様」
袖口をひく婚約者殿はどうにもラストシーンに深く感銘をうけたらしく、ラストのキスシーンの再演を希望する。
「カタリーナ、影響されるのはわかるが……」
恋する令嬢の可愛らしいおねだりをテオドールが注意すれば、令嬢はぷくうと頬を膨らます。
「いやなんですか?」
ずいぶんと角が取れてきた仲ゆえのフランクさは嬉しい。とはいえ体裁というものは貴族であるテオドールにとっては大きなものだ。眉根が困惑に歪む。
「いやなわけがない。したくないといえば嘘だ」
言って周りを見渡し、人気のなくなった薄暗い劇場でぎゅう、とテオドールはカタリーナを抱きしめた。ふわりと香る甘い花の髪が愛おしい。
「気持ちはわかるが、困らせないでくれ」
その抱擁は愛が十分にこもったもの。可愛いわがままはいくらでも答えたいが限度もある。
「テオドール様、私あのシーンも好きだったのでこれで許します」
それはキネトロープの恋人たちの別れの間際の切ないシーン。
「私は主人公のようにキミの手を離すつもりはないから、な?」
「はい」
お嬢様にとってのその秘密の抱擁はずいぶんと刺激的だったようでご機嫌になった顔にテオドールはホッとする。
「さあ、食事にいこう。そうだな、主人公とヒロインが食べていたパンケーキなんていかがかな?」
たくさんある娯楽施設の中から動く写真ってなんぞや? とキネトロープを選んだアルカナム姉妹は上映館の前に立つ。
恋愛ものなんて、その、良いお話でしょうけど! でしょうけどね!
フーリィン・アルカナム(CL3000403)は己が独り身だということに虚ろな目になる。
寄りにも寄って恋愛もの。妹と見るものとしてはどうなのとはおもうが、とうの妹であるリムリィ・アルカナム(CL3000500)は目を輝かせている(ようにみえる)。
いや、別に焦る年齢ではないものの、世間の恋せよ乙女という風潮には焦りを感じてしまうのだ。強迫観念といったものなのかもしれない。
「おおきなえほん、うごくの? おねえちゃんのよみきかせのごうかなやつ」
「そうね、うん、そんなかんじ」
そんな期待する妹を裏切るわけにはいかない。
いやいや半分ではあったが、キネトロープで綴られた物語は切なく美しいものだった。
「すきとか、あいしてるとかむつかしいけど、おねえちゃんをすきなのとはちがうやつ」
「そうね」
感動してしまったお話に涙をこらえれないフーリィンは短く答える。
「でもね、いろいろのかたちのたいせつのひとつ、さいごなかよくできてしあわせそうだった」
「そうよね、マリアが勇気をだして!! あの手をとったから!」
「えっと、よくわからない、けどしあわせっていうのがあれだったらそれはすてき
おねえちゃんはあんなふうにすきとかあいしてるとかあるの?」
それは純粋な質問。だからこそその言葉の刃にフーリィンはめったうちにされる。
「おねえちゃんにはりむちゃんやいんのきょうだいたちがいるからいまはまだいいかなーって」
突如リムリィ言語化して冷や汗をたらしながらフーリィンは答える。
うん、フーリィンさんモテないわけじゃないんですけど、院の兄弟に自由騎士にととても忙しいんです。
「そう、わたしも、それならおねえちゃんがいるからいい」
言ってリムリィはフーリィンの服のそでをぎゅっと握った。
何をあろうか露天浴場を覗きにきたヌィ・ボルボレッタ(CL3000494)は屈強な男性ふたりに両脇を固められぽいと追い出される。
当然である。とはいえもらったプラチナチケットを無駄にするのはもったいない。
音楽や絵は好みじゃない。意外なことに賭けはいうほど好きでもない。
当たり前だが娼館はないだろうしととぼとぼあるけばスポーツ施設。
中からは少年の楽しげな声も聞こえてくる。かげろーーーー?
へんな掛け声だがきにしない。
なんと! なんと! ここは楽園(パライゾ)か!
スポーツ施設を覗けばロープウェイで麗しい少年たちがきゃっきゃうふふと遊んでいるではないか。なんかでかいのも混じってるが、まあいいとしよう。
「ヌィお姉さんもあそんでよ~~」
ヌィはたまらず少年たちに向かっていく。
「あ、いいよ! 皆で遊ぼう!」
あのでっかいアダムとかいう自由騎士は訓練(笑)がすでに遊びに切り替わってるのは言及しまい。
その日、ヌィはたおれるまで少年たちと(アダムと)戯れたのであった。
●
一時的にとはいえこの通商連はウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)の故郷であった場所だ。
知り合いと積もる話を――するわけもなく、うさぎとのデートを楽しむのだ!
「幸運のウサちゃんが居るなら、きっと大当たりだろうぜ?」
「いややわぁ、あれはお守りやもん、ウチのはちがうかもやよ?」
「いやな、よく考えたら佐クラ嬢とここにいる時点で俺は幸運だった。だからその手は幸運の手だ」
「すぐ上手なこというんやもん。そんなんゆうても商品安うせえへんよ?」
そんな軽口も楽しい。
「レンタルドレスもあるらしいな、アレなんて背なかが空いてて――ドゥフッ!」
うさぎのケリはルクタートルらしく強烈で。
「……ルーレットってやったことあるかい? ……そうだな、あのディーラーなら腕は確かだぞ」
蹴られた尻をさすりながら、ウェルスが指さしたディーラーは顔見知りの相手。初心者にはあまり向いてはいないが、ルーレットは目でも楽しめる遊びだ。カジノ「らしさ」においては一番だろう。だからウェルスはルーレットを選ぶ。知り合いがいたのも大きい。
「あら、お知り合いなん?」
「まあそういうところだ」
目のあった知り合いのディーラーにウェルスはウィンクすると、彼女を勝たせてやってくれの合図を送る。
ディーラーは頷くと、ゲームを始める佐クラを勝たせるように動く。
大きな勝ちではなくとも小さな勝ちが積もればそれなりに楽しくなるのが賭け事だ。
「こういうのビギナーズラックっていうん?」
「だな、意外と才能があるんじゃないか?」
「ややわぁ、勘違いさせたらあかんよ! それに賭け事こわいんよ、実際ウェルスさんえらい弱いやん? むちゃしたらあかんよ?」
嬉しそうにはしゃぐうさぎに満足しつつ、ウェルスは知り合いのディーラーを睨む。
たしかにうさぎちゃんを勝たせろといった。だが、その分を俺から搾り取れなんて言ってない!!
これだから通商連は!!
セクシードレスでキメッキメなのはエルシー・スカーレット(CL3000368)。
陛下がこないからつまんないとは思うけれど、カジノの雰囲気には心が弾む。
「よろしいかしら」
ルーレット卓にこしかけ、セクシーなスリットから足を見せれば周囲から口笛が飛ぶ。
「ルージュの7で」
どこかで読んだ物語のセクシーなギャンブラーよろしくエルシーはコインを賭ける。
ヒット。ビギナーズラックか、セクシーな足元にディーラーが釣られたのかルーレットが止まったの赤の7。
「次は?」
ディーラーに問われ、エルシーは口元に笑みを浮かべる。
「ルージュの7」
かっこつけて言うものの、彼女は実はそれしか知らない。物語ではそれしか言ってなかったんだもん。もちろん結果は惨敗だ。ルージュの7しかしらないんだもの。
でも、そんな散財も楽しいもの。ちゃんとしなきゃダメよ、と自分に言い聞かせながらも為れてきた今はディーラーがかっこよく見えてきて、やってみたいなんて言ってみれば。
「お嬢ちゃん、あんたの足を狙う狩人共をこてんぱんにしてやんな? いいかい? 上半身を深くたおして胸元をみせれば、あいつらはルーレットどころじゃなくなるぜ?」
話しかけたディーラーは意外と簡単に役目を変わってくれる。下心があったといえばそのとおりなのだろうけれども。
くるくるまわるルーレットの回転にエルシーは見惚れてしまって怒られたけれども割とカジノ客には評判のいいディーラーエルシーであった。
同じく単発賭けするのはウィルフリード・サントス(CL3000423)。
7は自分の生まれた月。それにラッキーセブンなんて言葉もある。縁起が良いのは悪くない。
ダカラ問題ない。……はずだったのだが。7がくるのは1/37の確率。
それはとてもじゃないけど掛け続けて黒字になる数字ではない。
「ディーラーの手をみるとかテクニックはあるようだが、自分にはそんな心得はないしなあ! でも自分の強運をもってすれば……!」
あわれ、ウィルフリードはコインをすべてなくしてしまうのであった。
「はっはっは! 次こそはあたるぞう!」
最後のコインはもちろん7の数字。
ルーレットが無慈悲に回る。カラコロと音がしてボールが跳ねて飛んでくる。
「おっと」
跳ねたボールは彼の掛けた7のテーブルにころんと落ちる。もちろんアウトゲームだ。ディーラーがその失態を謝れば、ウィルフィリードはみたかこの豪運! と笑うのであった。
「おっす、アーウィン、奇遇だな。たのし……」
「すまん! バカ医者、じゃないツボミ先生!! コイン、貸してくれ! 返すから! あとで返すから!!」
非時香・ツボミ(CL3000086)に涙目のミミズクのケモノビトの青年が泣きついてくる。
たしかに、あいつのことだ、体よくハメられて素寒貧になって、借金地獄、あまつのはてにはカラス金に手を出し、詐欺に手を染め、外泊証明書にサインさせられて、闇オークションに……そして受けの価格下落によって……なんて妄想していて心配になり居ても立っても居られなくなって一応ちょっとだけ様子見を見に来た、その矢先の話だ。
身長の低い自分にすがりついて泣くアーウィン・エピにじゅうよんちゃい、なんてとんでもない絵面にさすがのツボミも多少は驚く。
「ふむ、最初は勝ってた、調子にのった、それなら大きいのを賭けてもイケルと思った、で、負けたけど、その負けを取り戻すために更に大きく賭けた……そうか! アーウィン貴様アホか! それはギャンブルのカモの教科書コースだろう!」
「だって、次かけたらいけると、おもった」
心配のしすぎでうざいなんて思われてたら、なんて杞憂でしかなかったようだ。
「貴様なら他にも友人はいるだろうが?」
「だって、ぱっとおもいつくともだち、ツボミせんせい、だったから」
ああ、もう!
一瞬貸してやってこう、いろいろ悪いこともやってやろうと思いつくが、本当にできてしまいそうなので、ぐっと我慢する。
「故郷のチビどもが泣くぞ。今回は貴様の負けだ。高い授業料と思って諦めろ」
さすがのアーウィンもチビの名前をだされたらぐぬぬと黙る。
「スロット1回だけでいい!」
「いいわけあるか!」
ツボミはワンちゃん狙いのアーウィンのあたまをぽこんと殴る。はあ、来てやって本当によかった。
「わー! これがカジノ?」
オズワルド・ルイス・アンスバッハ(CL3000522)はうさみみを揺らして本人はぴょんこと跳ねながらルーレットがくるくるまわるのをみてテンションをあげる。
「ぼうず、やってみるか?」
なんて誘われるものだからオズワルトは二つ返事で答えた。
「えーっと、ルーレット? 赤と黒があるんだ!」
「どっちにいれるんだい?」
「んーとね、赤! 赤いとこ! 赤いとこに入れ!」
オズワルトが赤にはれば、ディーラーはルーレットを回す。
ルージュ。
「わ、あたったの?! よし! 赤!」
あたったことに気を良くしたオズワルトはまた赤にベットする。
「黒にはいれないのかい?」
「いいのいいの、オレ、赤が大好きだから!」
いえばディーラーはニヤリと笑う。
「こら!」
そんなディーラーに向かって、制止するのはミズーリ・メイヴェンだ。
「初心者をカモにするのはスマートじゃないわよ?」
「げ、ミズーリ」
「あ、お姉さん自由騎士? このヒトと知り合いなの?」
「ええ、昔のね。 このおじさん悪い人だから、騙されちゃだめよ、えっと……」
「オズワルト・ルイス・アンスバッハ!」
「うん、私はミズーリ・メイヴェンよ。通商連から派遣されて自由騎士団にいるの。というわけでオズワルト。賭け事はおしまい」
「えーー」
「カモになりそうなんだもの」
ミズーリに連れられてカジノをあとにするオズワルトは口を尖らせるのだった。
専用メダルの交換。まずはこれが緊張するのと同時にカジノのワクワクにつながる。
アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は、カジノは初めての経験。
「ルーレットは数字あてて、ポーカーは組み合わせやろ? 簡単やん」
とかく賭博というものは入り口は簡単そうにみえる。しかしそこにヒト同士の駆け引きが存在しその駆け引きがゲームの難易度を跳ね上げるのだ。
簡単だといった自分が恨めしい。
ルーレットは色と数字を選ぶだけといってもその組み合わせは多数に渡る。賭け方もまた癖があり思った以上に複雑だ。
ポーカーもまた、欲しいカードがなかなかこないのだ。捨てたカードとくみあわせになるカードがきたり、いけると思ったら今度は相手のカードが強すぎて。
「お嬢ちゃん、ポーカーフェイスを身につけないと良いカモになるぞ」
相手方がフルハウスを開示して笑う。対するアリシアはスリーカード。いけるとおもったのに!
「ポーカー奥が深すぎて難しいわ」
「降参かい?」
「降参や! だってな、お小遣いもうすぐなくなるんやもん」
「はは、それは大変だな」
「ほかんとこも見に行きたいし、おっちゃん、またな」
「おっと、破産させることできなかったな」
「悪い大人やわ! やっぱはよ逃げなあかん」
わらいあいながら、勝てはしなくても満足したアリシアはカジノをあとにした。
「ねえ、ヨアヒムさん、わたしと賭け事しませんか?」
レネット・フィオーレ(CL3000335)はカジノでルーレットに興じるヨアヒムに声をかける。
「レネット、おっけーいいよ」
思いの外簡単にOKしたことに、レネットは心の中で舌なめずりする。これこそバーバラ秘伝の小悪魔モード!
「ではブラックジャックなんていかがでしょう。私が勝ったらお願いひとつ聞いてくださいね?」
来る前に友達といっしょにブラックジャックの練習をしてたなんて見せない。危ない橋を渡らず堅実にいく作戦がベストだと友達とも一致した。
「へえ、レネット、賭けもいけるんだね」
もちろん! この日のために練習しましたから!
「はい、負けませんよ?」
「よっしゃ! こっちだって」
配られるカードを見る。冷静に冷静に。親なら16、子なら17。そこが勝負のライン。
「あ、その数字なら……もっといけるんじゃないんです? ううん、良いのが出たらわたし、負けるかもしれません……」
なんて伏し目で煽る。これもバーバラ直伝!
「そうか……ふぅん? 勝負はきびしいんだぜ! キミのカードを狙い撃ち!」
煽られたヨアヒムはカードをひく。
「ああああああああ!」
作戦通り。ヨアヒムはバーストしてしまう。
「うふふ、ヨアヒムさんの負けですのでお願いを聞いてもらいます!」
まるでお仕置きを待つ弟みたいな顔のヨアヒムにレネットはにっこりと微笑む。
「オレ、金もってないよ?」
「そういうのじゃないです! 目を閉じてください!」
「ええっ!?」
「ほらはやく!」
ヨアヒムは目を閉じる。少しの間が怖い。何をされるんだろう。いや目を閉じて? もしかして?
なんて思っていればぱしゃり、ぷしゅーなんて蒸気カメラの音がする。
恐る恐る片目をあけたヨアヒムの鼻がレネットの指先につままれる。
「キス、だと思いましたか? ヨアヒムさんえっちですね」
「ええっ?!」
こんな意地悪もバーバラの教え。ほんとはすこしだけそれでもいいかなって思ったけどそれはちゃんと彼に好きになってもらってから。
困惑しながら姐さんみたいだとつぶやくヨアヒムにレネットはべぇっと舌をだす。
ぎゅっと胸に抱いた蒸気カメラの中身は大切な宝物になる、と思いながら。
「さすが通商連といった船ですね」
アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はランスロット・カースン(CL3000391)に並び、周囲を眺める。
「お前はカジノにはいかないのか? シャンバラを打倒したとはいえ、神の蠱毒は進行中だ。
いささか気が引けるが、英気を養うというのも尤もな話である」
「あまり賭け事はやりませんが、詰め所でカードゲームはやったことがあります。
ポーカーかスロットマシンあたりで、楽しもうかと」
表情がでないとはいえ、後輩はそれなりにこの場を楽しみにしているようだ。
「はめを外さない程度にな」
「ええ、もちろん。先輩こそ」
「賭け事は好かんが、経験だ。食わず嫌いはよくないからな。
なあに、定石というものがあるのだろう? それなら戦争とかわらん」
言って彼らは各々の場所に向かう。ランスロットがアレなフラグをたてているが大丈夫だろうと、アリスタルフは思う。たぶん。
アリスタルフはスロットが目押しできそうだとスロットマシンに向かい無表情で回し続ける。
ギリギリ負けではない程度のところで引き上げることにする。
ここが負けと勝ちの分水嶺だろう。勝ちすぎるのも良くない。負けるのはもっとよくない。
ふと、アリスタルフは先輩の様子が気になり、彼のもとにむかうことにした。
彼とて顔に表情は出ないタイプではある。しかしなんというか反応がわかりやすい、のだ。
「カモにされてなければ良いのだが」
口に含んだ棒付きキャンディの小さくなった残りを噛み砕きアリスタルフはランスロットのところにむかう。
当の先輩はというと――。
「これも、戦いか……」
おもいっきりカモにされていた。残るコインは数枚。これは完全に負けだ。
「自由騎士さん、いけるって、次に勝てば、最低でも元金の半分はもどる」
「そうか」
「先輩……」
「どうした、アリスタルフ」
「カモにされてますよ」
「なんだと!」
はじめてのカジノ引き際がわかるはずもないランスロットはいわれるままに賭けていく。
「でも、つぎに勝てば元金の半分もどる。その次に勝てば元金まではもどる。さらに次に勝てば……」
完全にドツボにハマるもののいいわけである。
「しかたないですね、俺のチップかしますから」
「そうか、助かる」
若干先輩を甘やかしすぎたとは思うが、こういった先輩をみるのも悪くないとアリスタルフは思う。
結果――。
アリスタルフのチップを使い切ったところで、強制退場と相成ったのであった。
●
さて、【賭】の面々のお話だ。
ニコラス・モラル(CL3000453) の声掛けに集まったのは、ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)
、猪市 きゐこ(CL3000048) 、サブロウ・カイトー(CL3000363) 、リド・エンピス(CL3000340) 、ナナン・皐月(CL3000240) 、モニカ・シンクレア(CL3000504) の多種多様な個性的なメンバーだ。
初めて国外にでるティラミスはキョロキョロとカジノを眺める。シャンバラには行ったことはあるがあれはあくまでも戦争。観光なんてできるわけがないからノーカンだ。
ナナンがカジノは大人の社交場であると、気後れをしているとニコラスが、頭をぽんぽんとたたいて、カシミロの旦那が良いっていってんだ、気にするなと言えば、にぱぁと笑顔になって、ポーカーの卓に走っていく。
「ポーカーフェイスを大事にするんだぞ」
なんてニコラスのアドバイスにナナンはできるのだーと答える。あれは無理だなとは思うが、目一杯楽しめるならそれでいい。
「ほら、きゐこも気後れしなくていいぞ」
「私は大人なのだわ! というかニコラスさんより年上なのだわ! それにしても私の眼がつかえないなんて! ケチ!」
「そうだっけ? というか海千山千の通商連だ。どちらにせよ対策はしてるだろうさ」
「ぶー」
ポーカー卓についたナナンのポーカーフェイスは2秒も持たず。簡単に手の内を見破られてしまう。
自分もと皆の顔を観察するも、皆はポーカーフェイス。なにを考えているのかわからない。
「ううううう! 難しいのだ!!」
なかなか勝つことは難しい。もちろんその難しい勝ち負けは面白いんだけど、それ以上にナナンにとっては皆でわいわい仲良く遊ぶのが楽しかった。
「たのしいねー、嬉しいのだ! カシミロさんにもありがとうっていわなくちゃ! ね、おもち!」
ペットのおもちにはなしかければ、おもちはそうだと言わんばかりに耳をぴるぴると震わせるのだった。
同じくポーカーに挑戦するのはティラミス。
ルール確認はしてある。賭けとは怖いものと聞いている。だからつかって良いのはお小遣いの範囲。
けれど。ルールを理解してはいても、駆け引きというものはなかなかに難しい。
ビギナーズラックというものはそれなりにあった。
でも大勝ちできるほどに胴元は甘くない。結果はお小遣いがちょっと増えた感じ。これ以上は危険だと自分でストップする。
ある程度ポーカーをたのしんだティラミスは周囲を観察して回った。
みんな楽しそうに賭け事を楽しんでいる。
飲み物の種類はアルコールからソフトドリンクまでたくさんの種類があった。このみのものはいくつかできた。
壁のポスターの裏側になにかないかな、なんて覗こうとしたときにニコラスに首根っこを掴まれた。
「今日は普通に遊ぶ日」
なんていわれたら良い返す言葉もない。
さらしをまいた筋者が丁半張っているのを予想していたわけではないが、カジノの華やかさにサブロウは目を奪われる。
先程眼の前を通った背なかの下の方まで切り込みのはいったドレスのおじょうさんのおいどが色っぽいと一番に目を奪われたのは内緒だ。
彼もまたポーカーに挑戦する。ポーカーフェイスは得意中の得意。
「イ・ラプセルの自由騎士が天運、見せつけてやりますとも!」
意気揚々と卓につく。
が。
強いとはひとこともいっていない!
兵隊同士の掛けで褌まで剥かれるのは日常茶飯事。勝負運とはどうにも仲が悪くてしかたない。
その分別のツキはもっているようだけれど。
それはここまで生きてきたことが証だ。
「くそー! よし、この、制服を賭けます! これは僕の一張羅で! だめ、軍帽だけは! 軍帽だけは勘弁を! え、脱がなくてもいい?」
負けがかったサブロウは、軍服のボタンを外すが止められる。ここは大人の社交場。脱衣はだめですよ。
アカデミーの友人と少しやってボロ負けした経験のあるモニカはポーカーフェイスができない。
記憶力には自信がある。だからなんとなく考えてることはわかるのだけど――。
プレイするのはワイルドポーカー!
狙うはQ4枚のファイブカード! ロイヤルストレートフラッシュより強いんだもん!
それで勝ったらかっこよくない?
もちろんそんな幸運なんて、そうそう簡単にくるものじゃない。
「うう、もう、コインがない……かくなる上は……」
上着に手をかけそうになったところでニコラスが走ってきて止める。
「ニコにー、はなして! 女にはやらなきゃいけないときがあるのっ! ナナンがビギナーズラックで少し勝ってたから! だからモニカにも! ビギナーズラック! あるから!」
「やらなきゃいけないときなんて、賭け事にはない、ないから! はしたない! やめなさい!」
今日のニコにーは完全に保護者ポジションである。
「目指すは一攫千金!」
リドはルーレットを戦場として選ぶ。
最初は赤か黒のうちみんなが賭けてるうちの少ない方の色。
ほら、ディーラーさんも少ない方に勝たせたいでしょ?
ちまちまルーレットの出目と色は記憶しておく。地道に地道に。少しずつ負けないように。
っておもうじゃん?
でもそれってつまらないじゃん?
「せっかく賭けるなら勝ちたいじゃん?」
ここからは攻勢! リスクヘッジは重要だけどそれじゃ浪漫がたりない!!
負けたって命はとられやしない!
そんな気持ちが跳ねたのか。意外や意外リドはそれなりに勝ったのだ。
気持ちよさに【賭】の皆にドリンクを奢っちゃう!
負けががってるヒトたちに少し恨めしそうな目でみられたけどそれはそれ!
きゐこは逆にいろいろなゲームをつまみ食い。
ブラックジャックでは18なんていうとんでもなくギリギリなラインでヒットして見事にポントゥーンを叩き出す。
ルーレットは、そこそこ。ディーラーのルーレットさばきの巧みさにおもわずチップを投げたほどだ。
そしてポーカー。
ディーラーに調子のいいキャラクターであることを見抜かれ、あっさり煽られて敗北。
アップダウンの激しいのがきゐこのギャンブルだ。
「うう~~もうひと勝負なのだわ!」
「こらこら、きゐこ、熱くなるなって」
ニコラスの制止に熱くなってないのだわ! と騒ぐ。完全に熱くなっている。
「ところでディーラーさん、カジノの手を広げようとは考えてないのかい?」
コインを整えるディーラーにニコラスが尋ねれば笑顔のディーラーは答える。
「広げすぎないことが、カジノという希少価値をあげるんですよ」
「なるほどね」
「ゲームはなさらないのです?」
「ああ、じゃあ楽しませて貰おうか。ゲームの本質ってものは楽しむことだからな」
●
ヨーゼフ・アーレント(CL3000512)は、カシミロ・ルンベックを呼び止める。
「ルンベック議長は各国と校友がありますよね?そこで聞いてみたい事があるのです」
その質問にカシミロは笑みを深めはいはい、なんなりとと続きを促す。
各国の情勢、なんて野暮なことは聞かない。聞いても答えるはずはないだろう。だからヨーゼフをもっと簡単なことを聞く。
「例えば好きな食べ物や好きな娯楽。趣味趣向を聞いてみたいのですよ。シャンバラのように我が国が支配したときに、慰めになればと思いまして」
その質問にカシミロは一瞬だけ面食らった表情をするがすぐに笑顔の仮面に隠す。
「ははは、自由騎士殿はお優しい。一概にいわれましてもまた難しいお話しですねえ。 娯楽なんていうのは我々と大して変わりませんよ。好きな食べ物となると、人それぞれではありますが、自国の特産品を嫌うものなどいらっしゃることはないでしょう? つまりは」
そこでカシミロは笑みを深める。ずいぶんと意地悪に。
「同じヒト、同士でございます。同じような趣味、同じような趣向、なのに争うのがヒトでございます」
その言葉はこれから戦争に向かおうとしている彼らにはずいぶん意地悪な答えだろう。胸糞悪い答えは予測していたが、それ以上の意地悪だ。わかっている。戦う相手が同じヒトであることなど。
「はっはっは、なんとも意地のわるい」
「商人とは意地の悪いモノを総称する言葉でございますので。この言葉で不快を感じさせることもまた商売の一環でございます。逡巡、戸惑い、嫌悪。それ全てが巡り巡って商売につながるのです。
とはいえ、それだけでは少々意地悪がすぎますな。
ヴィスマルクでは馬鈴薯料理がたくさんありますぞ。ヘルメリアは――あの国の食事はなんともかんともですが、紅茶は良いものを大陸から輸入しておりますな」
ところで――。カシミロもまたヨーゼフに質問を投げる。
「あなた方が負けた場合はどうしますか?」
「それは……考えずともよいでしょう。なにせそのときにワタシはこの世にはいない!」
「いやはや、刹那的なお方だ」
「はっはっは!」
笑って二人は別れる。その後がっくりとヨーゼフは首を垂れた。一筋縄ではいかないカシミロにではなく、その未来につながる可能性が低くないことを改めて意識してしまったからだ。
見学途中のディルク・フォーゲル(CL3000381)はカシミロとすれ違い挨拶する。
「商人として学ぶべき所が多そうで、良き機会だと思って居ます」
百点満点の受け答え。失礼など一切ない丁寧さだ。しかしてそれは相手を伺う仮面(ペルソナ)。
「勉強ついでにお聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
「あなた方に通商連内の独自の商売ルールはありますか?」
「あなた方にもそれはあると同様にルールは存在しておりますよ。一枚岩とは申せない通商連でございますが」
言外に細かい内容は教えないという確固たる意志を感じる。
「商人の技術はそれぞれの宝ですからね。とはいえ新規世代を育てるのもまた道理。
通商連でそういった座学などの交流会などはありませんか?」
「座学座学。そうですねえ。我が通商連で育った子供は、奴隷に至っても読み書きに計算はできますよ。ねえ、ぬーちゃん」
カシミロは思わせぶりに傍らのマザリモノの少女に問いかける。
「当然だ。計算できてなくてなにが商人だ。おどろきの識字率85%。すげえ」
トリーディチ・ヌーメロは答える。当時において80%を超える識字率はかなりの数字になる。イ・ラプセルであっても識字率は7割程度だ。それを大きく上回る数字にディルクは感心する。
「なるほど、具体的な商売については?」
それは我流であるディルクにとっては聞きたくてしかたないところ。
「100万GP」
カシミロは数字を提案する。ディルクはきょとんとする。
「商人に商売の方法を聞くのにもっとも有用な手段は、お金でございます。私の手練手管の一部でこの金額は、お友達であるイ・ラプセルのみなさんへのディスカウントした価格でございますよ。ええ、ええ、講座をうけるかた一人につき、100万GPでございます」
「こりゃあ、一筋縄ではありませんね」
ディルクの頬を汗が伝う。
「商人でございますから。我流とおっしゃいましたね。それを金にできるほどに高めることができましたら私もまた相談にこさせていただきましょう。ええ、ええ技術を安く買い叩くことはございません。
ではひとつお勉強を、これは無料でかまいません。
いいですか? 商人に『欲しい』を見抜かれれば、足元を見られることになりますよ」
「お初にお目にかかる、ルンベック殿」
凛々しい声で話しかけるのは政界の女傑とも呼ばれるガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)。
「おやおや、イ・ラプセルの政治家さんでございますか」
「ええ、商人と政治、売り物は違っても心得は同じと思っております。ぜひお話しをと」
話しかけられたカシミロは笑みを深くする。
「ええ、ええ、喜んで」
「イ・ラプセルは現在、元シャンバラ領地を含め、様々な種類の鉱石が採取できております」
「ですな、お話によるとミドガルズ鉱の採取できる鉱山……はなくなりましたな。とはいえ採取に関してはできぬこともないとか? まあそこはヴィスマルクに割譲され、南部の鉄鋼山に関しては、ヘルメリアが狙っているとかお聞きしております」
ガブリエラは目の前の商人の情報収集の卒のなさに心の中で舌打ちをする。
「ええ、そのようですね。我が国固有の鉱石といえばエーテル石とスペッサルティンですが、こちらは実用性のある運営ができておりますが、まだシャンバラには有益な鉱山があるとみて調査しております」
「なるほどなるほど、ええ、新しい鉱石がでるのであれば、ええ、ええ有益でございます」
「では、今後詳しい資料を作成し、販売ルートの拡張を……」
「いえいえいえ、いいえ、いいえ。まだ見ぬ商品は管理ができるようになってからお話しいたしましょう。シャンバラの南鉱山。ええ、鉄鋼が埋まる鉱山です。シャンバラはもとより多く鉄鋼を必要としない国家でございました。故に、資源はまだまだ豊富と見ております。鉄が欲しくてしかたないヘルメリアが狙うのは道理。
新種の鉱石、加工品、いいえいいえ、それよりも輝く宝石が鉄鉱石でございます。
ええ、今後の戦渦は更に広まるでしょう。そのうえでもっとも重要視されるものは、おわかりでしょう?」
そういって笑むカシミロの真意は深いところにある。
「あなたは食えないヒトだ」
「ええ、よくいわれます」
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)はルー・シェーファー(CL3000101)と船を探索する。
ルーとしては名声の高いシノピリカと歩くことで便宜を図ってもらうという下心もあるのだが。思った以上に簡単に快諾されて心の借金が増えたことは少々面倒ではあるが、それをもって余りあるメリットは得ることができる、はずだ。
「おー、船団国家というだけで浪漫じゃが、からくりもきになるのー! 詰まりは燃え、じゃ
どうやってこんなに振動なくできるんじゃろうなあ、地上とかわらぬじゃろ?
そりゃあ普通に暮らしを営めるというものじゃ。
アブソーバーの機能がすごいんじゃろうなあ、蒸気技術すごいのう」
「なるほどネー」
熱く語るシノピリカをルーは話半分に聞く。目的は違うところにあるのだ。
「おお、ゼッペロン卿でしたかな?」
その大きな背なかに声がかかる。カシミロ・ルンベックだ。
「おおカシミロ殿、ワシの……私のことをご存知でしたか」
「ええ、ええイ・ラプセルの強壁、シノピリカ・ゼッペロン卿、貴方のことは我が通商連でも噂にあがりますよ」
「それは照れるのう」
そんなシノピリカの裾をルーが引っ張る。
「ああ、こちらはルー・シェーファー。我が国きっての旅商人でござる。此度、良き機会という事で、貴殿にお目にかかりたいと申しましてな。商売の極意など、お聞かせ願えませぬかな」
「カシミロ・ルンベック通商商業連合国議長!お会いできて実に光栄ヨ!」
ルーは服の裾を持ち上げエレガントにカーテシーをする。
カシミロの一挙一動に商売力を感じる。百戦錬磨とはあのようなことをいうのだろう、とルーは心で評価する。
「可愛らしい商人さんでございますね。極意ですと高くつきますよ」
「このような大規模な船団国家を維持するには、どんなからくりがあるノ?」
だからといってルーは媚はしない。
「そうですねえ。新しいものは受け入れる、旧体勢も受け入れる。商人とは受け入れることが肝要でございます。ヘルメリアの最新の蒸気技術はそれなりに値ははりますが、そのコストに見合う性能ではございますね」
「ほうほう」
蒸気機械の技術に関してはルーよりシノピリカのほうが食いつく。
「蒸気圧により、連結部分を結合しております。潮風に強い金属は少々お高いのですがこの国の都合上しかたありません。結合した際船の管理系統の上位は本船に移らせ、離れたときには分離するという形で制御をかけているのでございますね。そうそう、あと半刻もすれば、アマノホカリにむかっていた船団が帰ってきて、連結作業がございますので、見学に行ってくるとよいでしょう」
「それはそれは! ぜひ」
「ええ、使いのものをだしますので、そこのお嬢さんもいかがです?」
「アタシはいいネ、それより商売のお話しをしたいネ
行商品とか見てもらいたし、特産品のサンプルももってきたネ。希品珍品の調達のお手伝い承るネ! アナタの利益、アタシの利益、ひいては国の利益ヨ!」
「なるほど、あなた方は私どものために、危険な場所にも調達に行ってくれるということでございますか? ええ、ええそれは助かります」
ルーはそのさらに深まった笑みにぞっとする。しかして顔にはださない。
「あまり、ムチャはいっちゃだめヨ」
「ええ、ええ、もちろんでございます。確かあなた方の神の権能とは『浄化』でございましたな。イブリース化した品物なんていうのを品物として治すことができるとか? ええ、ええ、すでに数件そのようなお願いをさせてもらってはいたのですが、今後そのようなお願いも遠慮せずにできそうでございますな」
「ええ、おまかせヨ(シノピリカ嬢に)」
「ところで、はて、世界に果てなどはあるのじゃろうか? カシミロ殿」
「世界はおおきな球体でございます。ヒトが住んでいる地域の最北端を果てというのであればあるのでしょうなあ。ああもちろん商売に果てはございません。言葉を交わせるのであれば神であっても商売を営んでみましょうぞ?」
「ルンベック卿、お初にお目にかかります」
ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)はカシミロに声をかける。
「今日はずいぶんと皆様にお声をかけられておりますよ」
「クリルタイにて末席に名を連ねておりますライモンド・ウィンリーフと申します」
「どうも自由騎士の政治家のみなさんは積極的でございますね」
「ええ、もちろんです。
一つの国が滅び、環境が急変します。
当然シャンバラの輸出入はあなた方にも影響を及ぼしますね」
「ずいぶん性急ですな。ええ、ええ、聖櫃がなくなり、シャンバラの多量の農産物の激減については我々も心を痛めております。
とはいえ、シャンバラは森林国家。肥沃な土壌であることにはかわりありません」
「その変化にも強い農作物、新たな商売は考えておりますかな? そんな農作物に目星はつけられていますでしょうか?」
「おやおや、それを考えるのがあなた方でございましょう? 私共があなた方の広大で肥沃な大地に指示をしてかまわないのですかな? いくらでも思いつきはしますが」
「これは一本とられました。種芋、苗木、そういったものはイ・ラプセルにもあります」
「で、ございましょうね」
「多少は時間はかかりますが、新しい大地においての農業に対する取引はお願いできますか?」
「ええ、ええ、肥沃な大地をうまく転用してくださることを願っておりますよ」
「折り入って聞いてみたいのだが」
ラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)は聞ける範囲でいいのでと前置きをしてカシミロに尋ねる。
「はいはい? 貿易情報などを聞くのであれば、同じことを他の国にも話すことになるでしょうな。ええ、いくらでも聞いてください」
そんな脅迫じみた返しにラメッシュは唇を噛む。
「武器関係の輸出はどうだ?」
「戦争中でございます。どのお国も必要なものは私共から購入はされておりますな。ええ、ええ、一年前と比べても商売繁盛で嬉しく思います。
鉄鉱石なんてものはどこの国でも高額で取引はさせてもらっておりますよ」
「なるほど。我が国は新しく鉄鋼山を得たのだが」
「ええ、ええ、耳にしております。ぜひぜひ懇意にしていただけると嬉しくおもいますよ。さらなる武器、兵器の原材料でございますからね」
「模擬戦?」
青年――アデル・ハビッツ(CL3000496)が提案したそれは誰も考えてはいないことだった。
「おまえバカか?」
トリーディチがその言葉に半眼になる。もとより半眼の眠そうな顔をしているのだが。
「おまえらは遊びにきたときいている。ぱぱに」
「船上での戦いを指南していただきたい」
「金とるぞ」
「かまわん」
通常の船であればカトラス使いの軽装の戦士――というか一般的な海賊だが――を思い浮かべる。さてはて、通商連はなにがでてくるのやら。
スポーツ施設に通されたアデルは、自分の相対する『敵』を見る。
なんともこれは拍子抜けだ。自分と同じような傭兵が相手となって出てきたのだ。そりゃあそうだろう。彼らは武力だって金で買う。この世すべて金で買えないものは無いと信じている通商連であるのだから。しかもなし崩しに突発的な出し物(かけごと)にされてしまっているようだ。
「どっちがかつかかけろー。オッズは――」
観客に向かってトリーディチから出されたオッズはなんとも苦笑するようなそれ。もちろんこっちの方がずいぶん以上に高いオッズだ。
とはいえ、船上での戦闘についてあの傭兵たちは、一家言あることだろう。対して安くもない金額を請求されたのだ。それなら十分に教導してもらうだけだとアデルは嘯く。
「おい、おまえが勝てば、請求額は半額にしてやる」
トリーディチがつぶやく。
「帳消しといかないのが、通商連らしい」
「練度は見れる、戦闘教義(ドクトリン)も確認できるとなれば対価はもらうべき」
そのとおりだ、と告げると突如はじまった賭け試合に出ることを余儀なくされたアデルはため息をつく。
ま、俺はいつもどおり真っすぐ行って、吹っ飛ばす――だけだがな。
「れでぃー、ごー」
試合の始まりの合図はなんとも気の抜けたものであった。
「はじめまして、俺はオルパ。御覧の通りヨウセイだ」
オルパ・エメラドル(CL3000515)は恰幅のいい後ろ姿に声をかける。
「やあやあ、これはこれは、ヨウセイでございますか。
なるほどなるほど。長い耳に羽根に、その羽根で飛べるのですかな?」
品定めされるようなその無遠慮な視線は気持ちが良いものとは言えない。
「ああ、いや、これは俺たちの魔力が浮かび上がっているだけで飛行用途には使えない」
「なるほどなるほど」
「シャンバラ皇国がなくなって、俺たちヨウセイは世界の表舞台にあがることができた」
「それはそれはようございますね」
「有り体にいう。ヨウセイに興味はないか?」
「ええええ、もちろん。私共で、確保、いえ保護したヨウセイの皆さんは現地組織とは繋がっていませんでしたので」
その言葉にオルパは多少なりとも通商連がヨウセイを保護していたことを知る。知っていて助けなかったのかと言いたい気持ちもあったが、ぐっと我慢をする。
当然だ。彼ら通商連にはヨウセイを助ける義理などない。
「俺たちと取引することで、金儲けができないかとおもってな」
「なるほどなるほど、森への親和性における商売要素。そうですねえ、よい土壌がわかるなどそういった部分でしょうか?」
「木々に聞けばある程度は。特産品であれば質の良いりんご酒がある。自由騎士たちも喜んで飲んでいた。一応持ってきたからぜひ飲んで欲しい」
「なるほどなるほど。ありがとうございます。あとで試飲させていただきましょう。――で、貴方の立場は?」
「特別権限を持つ立場ではないが、ウィッチクラフトとのとっかかりにはなると思う」
「はいはい、了解しました。それでは考えておくことにいたします」
その言葉に嘘はないだろう。しかしてまるで泥に釘を打っているように手応えというものが感じない。
「ああ、ヨウセイの皆さんへの地位向上は今後進んでいくでしょうね。そちらに関しては我ら通商連も強力は惜しみませんよ」
●
「お初にお目にかかります、デボラ・ディートヘルムと申します」
アレイスター・クローリーが食事をする傍らで挨拶するのは、デボラ・ディートヘルム(CL3000511)だ。
「ああ、新人かい?」
肉片をくわえるクローリーはフランクに答えた。
「ええ、稀に耳にする方を見かけましたので、ぜひお目通りをと。
その、……アレイスター様は魔導士、なのですよね?」
「正確に君たちの言うように分類するのであれば、アルケミーだよ」
「占術などはやられますか?」
「できないことはな……」
「素敵なおじ様とはいつお会い出来ますか!」
食い気味の質問にクローリーはニヤリと微笑むと「僕なんてどうだい? 広義的にいえば800歳の年上のおじさまだぜ?」なんて答える。
「はぁ……、予測はしてはいましたが、からかってばかりの噂通りの方ですね」
「キミはさ、怖いんだろう?」
「は?」
「また捨てられないかって」
その不安を見抜いた言葉にデボラは口をつぐむ。
「だから、相手に包容力をもとめるのさ。本当はおじさまじゃなくてもいい。キミを愛してくれる人であればそれでいい。そうじゃないかい?」
デボラは無言でクローリーの脇腹にフックをかます。
「あいて!」
「あなたは意地悪です」
「大丈夫さ。キミは十分魅力的だよ。いつかキミをみてくれる人は現れる。しらんけど」
「あの、そこはきっとね、とかじゃないんですか?」
「だって、違ったら怒られそうじゃん?」
「はあ、あなたがどんな人かよくわかりました!」
「やあ、アリアたん、お風呂上がりかい? デザートなら果実のゼリーがおすすめだよ」
そんなクローリーの声かけにアリア・セレスティ(CL3000222)は半眼になる。
「ききましたよ。いい大人(1601歳)が何やってるんですか……」
「キミも説教かよ。楽しんでるだけさ」
やりたい放題を注意すればまるで母親に怒られた少年のようにクローリーは口を尖らせる。
「普段はもっと節度があるとおもったんですが、浮かれてません?」
「そりゃあ、神殺しがひとつ為れば、浮かれもするさ」
その悪びれなさにアリアはため息を落とす。
「まあ、いいや。
ありがとう、アレイスター君」
「なんのことだい?」
「王様の采配も当然ですが、三国交渉が支えられたのはアレイスター君の助力だとおもいます」
「さあ、どうだか?」
アリアの感謝の言葉にクローリーは薄くわらう。
クローリーから渡された果実のゼリーはずいぶんと冷えていて火照った体に気持ちがいい。
「貴方の」
「ん?」
「貴方の願いを、聞かせてください。お礼に叶えてあげます」
こぼれた質問はクローリーが前にも一度答えたことがあるものだ。
「この僕に対してかい? 大きく出たものだ。アリア・セレスティ。
そうだな。世界が平和になりますように、さ」
「また、誤魔化すんですか? それなら叶えてあげません」
「叶えてくれるんだろう? それはキミたちにとっても必要なことだからね」
「そういうんじゃないんです、個人的なのが知りたいんです」
「■■■ておくれよ」
魔術師の言葉は伝わらない。呪縛によるものか、彼がそれを『隠した』のかはわからない。
「アレイスター君って面倒な人ですね」
「そりゃあ1600年も生きていたらね」
「きゃーーーーーアレイスターーー! なんでこんなところにいるのー???」
奇声とともに突っ込んでくるのはクイニィー・アルジェント(CL3000178)だ。
「キミさ、ここをどこだとおもってるんだい? ご飯は静かにたべるものだろう?」
お前が言うなというようなことを口にしながら、フォークに刺した肉団子をクイニィーの口にほおりこむ。
もっきゅ、もっきゅと味わって嚥下して。
「居るなら居るっていってよーーー! なに? これ。美味しい」
「中にラズベリーのジャムを詰めた肉団子だってさ。酸味が意外と合うだろう?」
「うんうん! ほか美味しいのある?」
「あっちの魚のソテーなんてずいぶん洒落た味だったよ?」
「おっけー、あたしももらってくる! ついでになんか取り分けてこようか?」
と、振り向いたときには、彼の姿はない。
「んもーーーーー!!! アレイスター! また逃げたー!! このー!
でもそんなとこ、嫌いじゃないぞーーー! でてこーい!」
騒ぐクイニィーの皿の上には、ここには咲いてないはずのオトメユリの花が置かれていた。
うむ、通商連の料理もなかなか……。
魚を中心に据えられたメニューは定番から変わったものまで千差万別だ。差し伸べられた手を振り払うほどの傲慢さは良くない。食べ物に罪はない。
ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は舌鼓をうちながら物色してると、親友(クローリー)と背なかでぶつかる。
「あれ? ローリー?」
ボルカスはクローリーからここまでに至る経緯を聴くと呆れた顔になる。
「お前ほんとなにやってんの?」
「それいわれたのもう何回目かな? で、ナーナーキミはカジノやキネトロープには行ってきたのかい?」
「賭けは苦手だし、キネトロープはほら、三十男がいくような内容じゃないし」
「バカ! ナーナーそこを制してこその傲慢でしょ! 傲慢がなくでしょ!」
「そ、そうか、傲慢であるためには――って騙されんぞ!」
「勢いであのお涙頂戴キネトで泣くナーナーを観察したかったのに」
「そんなこといわれたら余計にいかんわ! というか、シャンバラの戦いが終わった記念だ。
乾杯なんてどうだ?」
「いいねえ。イ・ラプセルの明るい未来を祝して?」
親友にとって正直なところ、我が国が勝とうがそれこそシャンバラが勝とうがどちらでもいいのだろうとは思う。アレはそういうモノだと理解はしている。今の軽口だって心から言ってないことくらい、鈍い自分でもわかる。
しかし、それでもいいのだ。この底のしれない親友はそれでもそこに居て自分と共に祝杯を掲げている。それは間違いなく真実で、忘れがたい思い出にはなるのだから。
「おう、乾杯だ」
「やあ、アレイスター、ここではおとなしくしているのかな?」
「やあ、マグノリア・ホワイト。キミもお説教かい?」
「いいや、お酒に誘いにきた」
飲める? とマグノリア・ホワイト(CL3000242)は尋ねる。いいえと答えられても誘うつもりはあるが。
「もちろんいけるさ」
なら、とグラスに注がれた高級そうなワインで乾杯する。
「今日はどうしてここに……? なんていう質問は愚問だったね。
君は面白そうなところには必ず現れるから」
「よくわかってるじゃないか」
クローリーはワインの香りを楽しんでいる。
「ひとつだけ、きいてもいい……?」
「一つでいいの?」
「ひとつでいい。
君とアクアディーネの望みは一致しているとおもうんだけどそれはあっているのかい……?」
マグノリアは逡巡した後尋ねる。
「世界を救うってことでであれば、そうだな、一致してるよ。それだけ?」
「……うん、それだけ」
その答えに納得はいかないがそれでも彼が嘘をついているようには思えない。それでも一致している部分が少しでもあるなら、その望みは叶えたいと思う。
もしその代償に自分を使うことになったとしても――。
「ご飯、たべよう。君に苦手な食材があるなら興味がある」
「僕ぁ、ケーキがが嫌いでさあ」
「っていって僕にケーキを給仕させるつもりかい?」
「その時はメイド服で頼むよ。ミニスカートのかわいいやつ」
「どこかの紳士と戦争が起こるやつだよ、それ……」
「戦争かい? そりゃあ願ってもないことだ」
「ほんとに君は……」
マグノリアが苦笑する。それはこの益体もないやりとりが楽しかったのか、それともちがう理由があったのかはわからない。
それでもこの時間は尊いものだと、そう、思う。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」
イ・ラプセル一のおにくりすとであるサシャ・プニコフ(CL3000122)はいつものお城のパーティと比べても引けをとらない豪華な食事に感嘆の声をあげる。
「おにくはなんでも全部大好きなんだぞ! 魚のにくもえびのにくもたこのにくもいかのにくもたべまくるんだぞ!」
その宣言どおりいろんな魚料理をあっちこっちと食べ比べる。
もぐもぐ。おいしい。
だけど。
魚もいいけどうしとかひつじとかにわとりのにくのほうがサシャの好みだぞ!
ずいぶんこの一年で贅沢になったサシャはそんなことを言う。
「それでもこんなにたくさんの魚にくを食べる機会はなかなかないからたーっくさんたべるぞ!」
サシャの贅沢はとまらない。
次のテーブルに向かうサシャの背なかはまるで漁師のように凛々しいのである。
お肉も大好きだけどお魚も好き。
お魚中心のお食事がどんな感じになるんだろう? やっぱり新鮮だから美味しいのかな?
リサ・スターリング(CL3000343)はお魚料理に興味津々。アマノホカリでは生で食べるとかきくけどそれはちょっと怖い。
ソテーした魚料理に手を付け――ようとしたところでその皿を奪うやつがいる。
「んもー! たくさんあるでしょ? ムサシマル」
気のおけない友達だからこその暴挙にリサは笑いがこみ上げる。
「リサ殿、油断大敵でござるよ。ヒトのものほど美味しいの法則でござる」
「あ、そういえば、アマノホカリって本当に生魚で食べるの?」
「ああ、オッサシーミでござるか、でびーるふぃっしゅも食べるでござるよ、生で。もちろん漁場で釣ったその場で食べるくらいでござるけどな。魚は足がつくのが早いでござる」
デビルフィッシュとはタコのこと。リサは姿を思い描いてそれを生で?! なんてぶるりと身震いする。
「でも拙者、焼いてるほうが好きでござるな。あ、ほら、野菜は分けてやるでござるよ」
「こら! ムサシマルそれは貴方が嫌いなんでしょ? ちゃんと食べなきゃ!」
リサだって野菜は苦手だ。それでも、目の前のだだっこに負けずと口にする。口の中に広がる青さとすこしの苦さが苦手なのだ。あれ? でもお魚と食べるとお魚の味が引き立って――。
「お? リサ殿野菜苦手ではないのでござるか?」
「これと一緒だと、なんだか違うんだ。お魚の味が引き立つというか、両方美味しくなるみたい!」
「なんだと? それは拙者の野菜であったでござるよ! かえせー」
「んもー! ムサシマルめちゃくちゃ!」
それでも騒がしくも楽しい食事はいつもの何倍も美味しく感じた。
「たのしんでいるか?」
グローリア・アンヘル(CL3000214)はもそもそと食事するアーウィンの隣に座り声をかけた。
「クローリアか……ちょっとな。カジノってやつで、ちょっとうん」
アーウィンが顛末を話すとグローリアはなんと言って良いのかわからない顔をする。
「その、そういうこともあるだろう。初めてというのはつい、はしゃいでしまうものだな。
実際私もこんな大きな蒸気船にのったのは初めてで……」
グローリアなりに気を使って、話を変える。
「ああ、俺もそういえば、初めてかな? ヴィスマルクでは列車の荷台くらいだったし」
「この蒸気船は普通の船とちがうのだろうか?」
「揺れは極力少なくなっているって聞いたぜ」
「なるほど、そうだな、ここで生活を営んでいるのだから揺れていたらみんな船酔いになるのだろう。
こんな変わった生活の場所があるというのは世界は広いなと思う」
「だなー、俺たちが見てたのは世界の本の一握りだったってことだ」
「私は自分の国は好きだ。私の誇りでもある」
独白するような口調のグローリアの言葉の続きをアーウィンが無言で促す。
「だけど、そればかりに固執するのも良くないとおもった」
「お、鋼の軍人様が柔らかくなったもんだ」
「だからそういう、こう、なんていうか、女らしくないようなことはいわないでくれ」
「お、すまん」
「そういうことを言うのは戦争している身の上で言えることではないんだろうが」
「戦争してるからこそじゃね? 相手は俺らと同じヒトで、生活が合って、いろいろ考えている。だからこそ、知って、変わることだって大事だ。……っていうか俺がイ・ラプセルに来たのも知って、変わったからだからな」
「そうか…そうなのかもしれない。えっと、なんだか辛気臭くなったな。それはこの場では良くない。
えっと、乾杯しないか? せっかくの異国の船だ」
「ああ、もちろんだ」
高級そうなグラスに注がれた赤いワインの色はグローリアの髪と同じで、チンとガラス同士が触れ合う音と一緒に揺れた赤いワインはまるで自分の心のようだとグローリアは益体もないことを思った。
サブロウタ リキュウイン(CL3000312)は、食事をしながら今までのことを思う。
娯楽施設を覗くついでに数人の通商連の者にも声をかけ話をきいた。
その上で思うのは通商連というのは国土がないというのに、巨大な組織であるということだ。
人種も様々。それほどまでマザリモノや亜人の扱いが悪すぎないというのはある意味リベラルなイ・ラプセルに近いものがある。亜人の識字率が85%で7割しか識字率のない自国より進んでいることには少々面食らった。
領土がない。そのデメリットは大きい、しかして自由に国土である船団を移動させることができるのは大きなメリットにつながることは軽視できない。
それに商人一人ひとりが海千山千のツワモノだ。
自分もポリティシャンとして彼らと渡り合える交渉力を身に着けたいものだ、とサブロウタは甘い紅茶を一口、飲んだ。
大いなる海原に、巨大蒸気船の船団によって、領土をなす国家がある。
それこそが『通商商業連合国』である。
「わーーーーーーーーーーー!!」
早速大騒ぎなのはアダム・クランプトン(CL3000185)だ。支柱から吊るされた輪っかに飛びつくとまるで猿――もとい、野生児のように遊び――もとい運動訓練を始める。
流石に合体することはないにしろ丈夫なその遊具はそう簡単に壊れそうにもない。
ことさら彼が好んだのは、高所から低所へロープウェイに吊るしたハンドルと足場で滑り降りる『子供用』の遊具である。
「かげろーーーーーーーーーーー」
一応大人向けにボルタリング的な各所に岩を配置して垂直面を昇るというストイックなものもあったのだが、アダムは15度目のロープウェイを楽しんでいるところだ。とても気に入ったらしい。
もちろん子どもたちにも大人気の遊具だからさもありなん。ちゃんと列に並んで遊んで――訓練している。
「そうさそうだよ大丈夫さアダム・クランプトンこれは訓練だ! そうと決まればいくぞいくぞいくぞ!! かげろーーーー!」
子どもたちもその楽しそうなアダムに影響されて『かげろーーー』と叫びながら遊んでいる。
ところでアダムくん! AAはやめなさい! めっ!
船団国家である通商連の本拠地は来ようとおもってすぐに来れるような場所ではない。
良い機会だと調査をしようとルーク・H・アルカナム(CL3000490)は立ち上がる。
「本拠地だけに隙はないか――」
しかして、娯楽施設の多い場所であるここには幸せそうな乗客たちが多い。よしんば何かが起こったとしても通商連の警備員は屈強なものが多いし自由騎士(なかま)も居る。
それに今回は仕事ではない。カシミロ・ルンベックからの招待だ。
「野暮ってやつか」
ルークは帽子のつばを下げてため息をつく。本日は探偵休業だ。
と思った矢先に聞こえる足音。女性と思われる足音に続いて男のものが――ひとつ、ふたつ、みっつ。
女性は逃げているようだ。どうにもこれはきな臭い。
「休暇宣言は後回しになりそうだ」
言って、ルークは床を蹴り足音のほうに向かう。
この後、戦闘、恋愛、そして逆境と別れ――。キネトロープにしたらおおよそ1時間と半分ほどのドラマが展開されるのだがそれはまた別のお話し。
それは少女にとっては初めての依頼。
自由騎士になって最初の依頼は音楽ホールで演奏を披露すること。
つま先が震える。心臓は早鐘のようだ。
そりゃ街の広場で演奏することはなれている。こんな大きなホールで演奏なんてはじめてだ。お客さんに気に入ってもらえなかったらどうしよう。自由騎士の演奏なんて、なんて思われたら泣いてしまうかもしれない。
秋篠 モカ(CL3000531)はすくむ気持ちを隠しきれないまま足をすすめる。そんなモカの背なかがぽん、と叩かれた。振り向けばバーバラ・キュプカーだ。
「貴方の演奏アデレードではすごくウケてたじゃない、いつもどおりで、そうね、草原を走るあの歌なんて舞台がはねると思うわよ。 ほら、言ってらっしゃい」
「は、はいっ!」
その言葉にモカは深呼吸をすると手持ちのリラを爪弾く。
「そうそう、できるじゃない。ほら、みんな待ってるわよ」
「はい!」
元気よく舞台に上がれば、熱いほどのライトと観客の拍手。モカの指先がリラをつま弾けば場内はシン、としずまる。
モカは歌う。いつもの歌を。今日はいつもより声が通る気がする。だから気持ちよくうたえる。
歌い終わった後には万雷の拍手。
モカはその拍手になんどもお辞儀をして感謝を返すのだった。
「タイガー? 湯加減どーお?」
通商連の露天浴場の敷居を超えてロイ・シュナイダー(CL3000432)の声が聞こえる。
見た目イケメンのタイガ・トウドラード(CL3000434)は更衣室で一悶着あったものの、お湯につかった直後のその声に自分より前にお湯を楽しむ客にくすくすと笑われてしまったのが気恥ずかしかった。
「今度こういう所に来る時はさー。『混浴』とかイイよねー!」
そんな自分の気持なんてお構いなしにロイは続けてくる。仲良しさんね、なんて他の客に笑われて恥ずかしくてしかたない。
「あ! そだ! 海に行く時とかさ、俺、タイガの水着姿とか見てみたいなー!」
婚約者殿は好き放題だ。向こうのお客から、坊主調子に乗りすぎだぞ、なんて怒られている。
「ああ、わかったわかった!」
冷静に考えると肌を露出するのは恥ずかしいけれど、あの純粋な彼のこと。ごく単純に次の予定を考えているだけだろう。意識するほうが馬鹿らしいというものだ。
一方ロイはもちろん下心なんていくらでもある。だって男の子だもん。
婚約者からの言質をとったところで、そろそろのぼせそうだから、彼女にあがることを伝え、ロビーで待つ。少し上気した婚約者の顔がセクシーでドキドキする。
「あ、のぼせぎみかな? ジュース買ってくるよ」
「そんなことはない……けど飲み物は欲しい」
飲み物と共に戻ってきたロイは甲斐甲斐しくも(下心でもって)タイガに膝枕する。
「いつもすまない、のぼせたというわけではないが少しぼーっとしてる」
そういって一口飲み物を嚥下する喉元が色っぽくてついロイはガン見してしまう。
「そういうのをのぼせたっていうんだよ。こんなタイガも可愛いしきにしないで」
「そうか、本当にお前は優しいな」
置かれた飲み物のカップをロイは手に取ろうとして少しだけその「優しい」という言葉に逡巡した。
体をしっかりとごしごし。
いちにっさんしっ、準備運動。そしてざっぱーん!
カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は満を持してお風呂に飛び込む。
こらー、なんて怒られて素直にごめんなさい! とあやまってから、人の少ない場所に向かう。
海の広大な風景とお風呂が繋がって、なんだか暖かい海に入ってるような気がしてくる。
ここが船の中なんて信じられないくらいだ。
「あ! らいおんだ!」
お湯が流れるその獅子の像をみたカーミラは修行時代を思い出す。滝から落ちる水流に耐える訓練をしたことがある。
「しゅぎょーだ!」
もちろん滝ほどの水圧なんて無いのはわかっている。だから少し油断した。
背泳ぎでふわーと獅子の口元に泳いでいけば――。
「ごぼごぼごぼぼぼ」
思った以上の水圧にお湯の中に仰向けに押し込まれてしまう。
「ぷはーーー!」
びしょ濡れねずみのカーミラはなんとか体勢を立て直す。なんと、獅子は強かった。
「溺れるかとおもったー」
音楽ホールに満ちるのはしっとりとした小夜曲(セレネイド)。
エル・エル(CL3000370)は目を閉じその楽曲をたのしむ。音の魔術を嗜む彼女にとって音楽は親和性が高いものだ。誰かの演奏を聞くのも悪くない。
それが――。誰かと一緒なんて考えもしなかったけど。横目で『隣』を見れば、ザルク・ミステル(CL3000067)と目が合う。なんでよ。あなた聞いてたんじゃないの?
隣の男はそんな恨めしい目つきにも物ともしない。それがなんだか腹立たしい。
とは言えそのザルク本人も時折チラチラとエルを見ていたのだがうっかり目が合って、男の子の意地として驚いた様子は見せない。
「あたし、歌うだけで演奏はできないのよね」
なんとはなしにつぶやく。ピアノの弾き語りなんてできたら格好つくんでしょうけれど。
「それは意外だな。でも確かにピアノを弾くエルエルは絵になりそうだ」
「あんたは?」
「ん?」
「ザッくんは楽器の演奏はできる?」
エルはそこで気がつく。お互いに趣味の話なんてしたことがついぞなかったことに――。
「音楽を聴くこと自体めったにない」
言ってザルクはさり気なさを装ってエルの手をにぎる。エルはその手袋越しの熱量にドキリと胸をはずませる。多分気づかれてないだろうから何事もなかったように振る舞う。
それに気分を良くしたのか、触れる程度だったその手に力がこもる。ばかね、少し痛いわよ。
「そう、あたしたちお互いのこと何も知らないのね」
「知ればいいさ」
「時間は有限だから――」
ザルクの手に力がこもる。だから痛いってば。でもそれはきっと彼の不安の現れなのだろう。だから柔らかく握り返せば少しだけザルクのちからが緩む。
「だから、少しずつあんたのことを知っていきたいわ」
「ああ、そうだな」
そういって微笑む横顔は子供みたいで少し可愛いなと思った。
「じゃあ、聴き終わったら話をしよう。俺もエルエルの好きなものを知りたい」
「いいわね。じゃあ今は、静かに聴いているのよ?」
そう言って微笑むエルにザルクは音楽鑑賞とは悪くないものだと思った。
何枚も? 写真を? 重ねる?
で、弁舌士? なんだそりゃ。
田舎者のナバル・ジーロン(CL3000441)にとってキネトロープを説明されてもピンとはこない。
しかして好奇心というものは止められない。実家へのいい自慢話になるだろう。
一人、男ナバル・ジーロンはキネトロープに向かう。
燦然と輝くは恋愛作品を表す看板。
客はカップルが多いようにみえる。うるせい! ヒトリモンで悪かったな!
参考程度に見てやる!!
上映ホールに空いた席を見つけどん、と座れば、隣にはいつもより少しおめかししたシェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)。
「あらあら、男の子なのに恋愛ものに興味あるんですか~?」
「参考にしてやらあ!」
「うふふ、わたし~恋愛ものに弱いんです~、すぐにべそべそないちゃっても笑わないでくださいね~」
「ここあいていますか?」
もう一つの逆側の席があいているかをたまき 聖流(CL3000283)が尋ねる。
「ああ、だいじょうぶだ!」
何の因果か。ソロキネトロを決めるナバルは両手に花。なんとなく緊張する。
やがてブザーが鳴り、劇場は暗くなり、写真映像に石灰光(ライムライト)が当たる。かしゃ、かしゃ、機械音と共にたくさんの写真が入れ替わりまるで動いているようにみえる。切ない音楽とともに弁舌士に語られるは悲恋の物語。
出会いと、蜜月と、そして切ない別れ。その様子が男性の弁舌士と女性の弁舌士とで情熱的に描かれていく。
ずび、ずびーーーーー。
シェリルは持ってきたハンカチを噛み締めながら切ない恋の流れに涙する。
ぶええ、ずび、ひでぇよお! そんな、ずび、ずずーーーっ
なんとも煩いのはナバル君。多少の顰蹙もかいつつも目の前の物語に深く感情移入している。
そんな彼に苦笑しながら、たまきはハンカチの予備をナバルに渡した。
ずびびーーーーちーん。
鼻をかむな。
やがて別れたはずの主人公たちが、奇跡の出会いを果たしたところでキネトロープは終わり、余韻を楽しむ客席がざわつきはじめる。
「あーーーよかったです~。わたしも、こんなシチュエーションで恋愛してみたいですねぇー」
シェリルは八千代堂にも跡継ぎをと強く決心する。どうせならこんな素敵な恋愛の果てに、なんて思うのは女子ゆえに。相手はまだいないけど、映画のように出会うことができたらいいなと思う。
「ロマンチックで素敵でした。弁舌士の方に差し入れを――とは思いましたが人がいっぱいですね」
たまきは用意した飲み物を渡そうと思うが、悲恋を情熱的に演じきった弁舌士はたくさんの客に囲まれ花束を受け取っている。
「またこんどの機会に」
私もいつかすてきなひとと、キネトロープを見に来れたら……なんて思う乙女心の傍ら――。
「うわーーーん、よがったなああ、まりあーーー、しんじてたもんなああ、しあわせになれよぉお、ぼびゅびっ」
なんて鼻水で詰まらせながら泣き続けるナバルがいるもんだから余韻もへったくれもない。
「ほらほら、ナバルさん。よかったですね。ハッピーエンドでした」
「よがったーーーよがったーーー!!」
たまきはバッグの中からこれまた余分にもってきたハンカチをナバルにわたすのだった。
そんなかしましい三人から少しはなれたところではアルビノ・ストレージ(CL3000095)が椅子に腰をかけたまま、余韻に浸る。
切り替えの滑らかさはキノライブ社の蒸気映写機をつかっているのだろう。蒸気音をできるだけ抑えるようにした機構は少し知りたいところだが。
「これは……なかなか参考になったよ」
とはいえ。
アルビノは長い爪のついた指先を揺らす。
内容としてはワタシにはあまり関係ないものだったかな。
それでも『技術』を目にすることはマシーナリーとしては興味深いことだ。
アルビノは立ち上がると、ひとこと。
「ありがとう」
と伝え劇場を後にした。
テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は婚約者のカタリーナを連れてのキネトロープ鑑賞。
切ないラブストーリーはハッピーエンドで幕を閉じた。
「テオドール様」
袖口をひく婚約者殿はどうにもラストシーンに深く感銘をうけたらしく、ラストのキスシーンの再演を希望する。
「カタリーナ、影響されるのはわかるが……」
恋する令嬢の可愛らしいおねだりをテオドールが注意すれば、令嬢はぷくうと頬を膨らます。
「いやなんですか?」
ずいぶんと角が取れてきた仲ゆえのフランクさは嬉しい。とはいえ体裁というものは貴族であるテオドールにとっては大きなものだ。眉根が困惑に歪む。
「いやなわけがない。したくないといえば嘘だ」
言って周りを見渡し、人気のなくなった薄暗い劇場でぎゅう、とテオドールはカタリーナを抱きしめた。ふわりと香る甘い花の髪が愛おしい。
「気持ちはわかるが、困らせないでくれ」
その抱擁は愛が十分にこもったもの。可愛いわがままはいくらでも答えたいが限度もある。
「テオドール様、私あのシーンも好きだったのでこれで許します」
それはキネトロープの恋人たちの別れの間際の切ないシーン。
「私は主人公のようにキミの手を離すつもりはないから、な?」
「はい」
お嬢様にとってのその秘密の抱擁はずいぶんと刺激的だったようでご機嫌になった顔にテオドールはホッとする。
「さあ、食事にいこう。そうだな、主人公とヒロインが食べていたパンケーキなんていかがかな?」
たくさんある娯楽施設の中から動く写真ってなんぞや? とキネトロープを選んだアルカナム姉妹は上映館の前に立つ。
恋愛ものなんて、その、良いお話でしょうけど! でしょうけどね!
フーリィン・アルカナム(CL3000403)は己が独り身だということに虚ろな目になる。
寄りにも寄って恋愛もの。妹と見るものとしてはどうなのとはおもうが、とうの妹であるリムリィ・アルカナム(CL3000500)は目を輝かせている(ようにみえる)。
いや、別に焦る年齢ではないものの、世間の恋せよ乙女という風潮には焦りを感じてしまうのだ。強迫観念といったものなのかもしれない。
「おおきなえほん、うごくの? おねえちゃんのよみきかせのごうかなやつ」
「そうね、うん、そんなかんじ」
そんな期待する妹を裏切るわけにはいかない。
いやいや半分ではあったが、キネトロープで綴られた物語は切なく美しいものだった。
「すきとか、あいしてるとかむつかしいけど、おねえちゃんをすきなのとはちがうやつ」
「そうね」
感動してしまったお話に涙をこらえれないフーリィンは短く答える。
「でもね、いろいろのかたちのたいせつのひとつ、さいごなかよくできてしあわせそうだった」
「そうよね、マリアが勇気をだして!! あの手をとったから!」
「えっと、よくわからない、けどしあわせっていうのがあれだったらそれはすてき
おねえちゃんはあんなふうにすきとかあいしてるとかあるの?」
それは純粋な質問。だからこそその言葉の刃にフーリィンはめったうちにされる。
「おねえちゃんにはりむちゃんやいんのきょうだいたちがいるからいまはまだいいかなーって」
突如リムリィ言語化して冷や汗をたらしながらフーリィンは答える。
うん、フーリィンさんモテないわけじゃないんですけど、院の兄弟に自由騎士にととても忙しいんです。
「そう、わたしも、それならおねえちゃんがいるからいい」
言ってリムリィはフーリィンの服のそでをぎゅっと握った。
何をあろうか露天浴場を覗きにきたヌィ・ボルボレッタ(CL3000494)は屈強な男性ふたりに両脇を固められぽいと追い出される。
当然である。とはいえもらったプラチナチケットを無駄にするのはもったいない。
音楽や絵は好みじゃない。意外なことに賭けはいうほど好きでもない。
当たり前だが娼館はないだろうしととぼとぼあるけばスポーツ施設。
中からは少年の楽しげな声も聞こえてくる。かげろーーーー?
へんな掛け声だがきにしない。
なんと! なんと! ここは楽園(パライゾ)か!
スポーツ施設を覗けばロープウェイで麗しい少年たちがきゃっきゃうふふと遊んでいるではないか。なんかでかいのも混じってるが、まあいいとしよう。
「ヌィお姉さんもあそんでよ~~」
ヌィはたまらず少年たちに向かっていく。
「あ、いいよ! 皆で遊ぼう!」
あのでっかいアダムとかいう自由騎士は訓練(笑)がすでに遊びに切り替わってるのは言及しまい。
その日、ヌィはたおれるまで少年たちと(アダムと)戯れたのであった。
●
一時的にとはいえこの通商連はウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)の故郷であった場所だ。
知り合いと積もる話を――するわけもなく、うさぎとのデートを楽しむのだ!
「幸運のウサちゃんが居るなら、きっと大当たりだろうぜ?」
「いややわぁ、あれはお守りやもん、ウチのはちがうかもやよ?」
「いやな、よく考えたら佐クラ嬢とここにいる時点で俺は幸運だった。だからその手は幸運の手だ」
「すぐ上手なこというんやもん。そんなんゆうても商品安うせえへんよ?」
そんな軽口も楽しい。
「レンタルドレスもあるらしいな、アレなんて背なかが空いてて――ドゥフッ!」
うさぎのケリはルクタートルらしく強烈で。
「……ルーレットってやったことあるかい? ……そうだな、あのディーラーなら腕は確かだぞ」
蹴られた尻をさすりながら、ウェルスが指さしたディーラーは顔見知りの相手。初心者にはあまり向いてはいないが、ルーレットは目でも楽しめる遊びだ。カジノ「らしさ」においては一番だろう。だからウェルスはルーレットを選ぶ。知り合いがいたのも大きい。
「あら、お知り合いなん?」
「まあそういうところだ」
目のあった知り合いのディーラーにウェルスはウィンクすると、彼女を勝たせてやってくれの合図を送る。
ディーラーは頷くと、ゲームを始める佐クラを勝たせるように動く。
大きな勝ちではなくとも小さな勝ちが積もればそれなりに楽しくなるのが賭け事だ。
「こういうのビギナーズラックっていうん?」
「だな、意外と才能があるんじゃないか?」
「ややわぁ、勘違いさせたらあかんよ! それに賭け事こわいんよ、実際ウェルスさんえらい弱いやん? むちゃしたらあかんよ?」
嬉しそうにはしゃぐうさぎに満足しつつ、ウェルスは知り合いのディーラーを睨む。
たしかにうさぎちゃんを勝たせろといった。だが、その分を俺から搾り取れなんて言ってない!!
これだから通商連は!!
セクシードレスでキメッキメなのはエルシー・スカーレット(CL3000368)。

陛下がこないからつまんないとは思うけれど、カジノの雰囲気には心が弾む。
「よろしいかしら」
ルーレット卓にこしかけ、セクシーなスリットから足を見せれば周囲から口笛が飛ぶ。
「ルージュの7で」
どこかで読んだ物語のセクシーなギャンブラーよろしくエルシーはコインを賭ける。
ヒット。ビギナーズラックか、セクシーな足元にディーラーが釣られたのかルーレットが止まったの赤の7。
「次は?」
ディーラーに問われ、エルシーは口元に笑みを浮かべる。
「ルージュの7」
かっこつけて言うものの、彼女は実はそれしか知らない。物語ではそれしか言ってなかったんだもん。もちろん結果は惨敗だ。ルージュの7しかしらないんだもの。
でも、そんな散財も楽しいもの。ちゃんとしなきゃダメよ、と自分に言い聞かせながらも為れてきた今はディーラーがかっこよく見えてきて、やってみたいなんて言ってみれば。
「お嬢ちゃん、あんたの足を狙う狩人共をこてんぱんにしてやんな? いいかい? 上半身を深くたおして胸元をみせれば、あいつらはルーレットどころじゃなくなるぜ?」
話しかけたディーラーは意外と簡単に役目を変わってくれる。下心があったといえばそのとおりなのだろうけれども。
くるくるまわるルーレットの回転にエルシーは見惚れてしまって怒られたけれども割とカジノ客には評判のいいディーラーエルシーであった。
同じく単発賭けするのはウィルフリード・サントス(CL3000423)。
7は自分の生まれた月。それにラッキーセブンなんて言葉もある。縁起が良いのは悪くない。
ダカラ問題ない。……はずだったのだが。7がくるのは1/37の確率。
それはとてもじゃないけど掛け続けて黒字になる数字ではない。
「ディーラーの手をみるとかテクニックはあるようだが、自分にはそんな心得はないしなあ! でも自分の強運をもってすれば……!」
あわれ、ウィルフリードはコインをすべてなくしてしまうのであった。
「はっはっは! 次こそはあたるぞう!」
最後のコインはもちろん7の数字。
ルーレットが無慈悲に回る。カラコロと音がしてボールが跳ねて飛んでくる。
「おっと」
跳ねたボールは彼の掛けた7のテーブルにころんと落ちる。もちろんアウトゲームだ。ディーラーがその失態を謝れば、ウィルフィリードはみたかこの豪運! と笑うのであった。
「おっす、アーウィン、奇遇だな。たのし……」
「すまん! バカ医者、じゃないツボミ先生!! コイン、貸してくれ! 返すから! あとで返すから!!」
非時香・ツボミ(CL3000086)に涙目のミミズクのケモノビトの青年が泣きついてくる。
たしかに、あいつのことだ、体よくハメられて素寒貧になって、借金地獄、あまつのはてにはカラス金に手を出し、詐欺に手を染め、外泊証明書にサインさせられて、闇オークションに……そして受けの価格下落によって……なんて妄想していて心配になり居ても立っても居られなくなって一応ちょっとだけ様子見を見に来た、その矢先の話だ。
身長の低い自分にすがりついて泣くアーウィン・エピにじゅうよんちゃい、なんてとんでもない絵面にさすがのツボミも多少は驚く。
「ふむ、最初は勝ってた、調子にのった、それなら大きいのを賭けてもイケルと思った、で、負けたけど、その負けを取り戻すために更に大きく賭けた……そうか! アーウィン貴様アホか! それはギャンブルのカモの教科書コースだろう!」
「だって、次かけたらいけると、おもった」
心配のしすぎでうざいなんて思われてたら、なんて杞憂でしかなかったようだ。
「貴様なら他にも友人はいるだろうが?」
「だって、ぱっとおもいつくともだち、ツボミせんせい、だったから」
ああ、もう!
一瞬貸してやってこう、いろいろ悪いこともやってやろうと思いつくが、本当にできてしまいそうなので、ぐっと我慢する。
「故郷のチビどもが泣くぞ。今回は貴様の負けだ。高い授業料と思って諦めろ」
さすがのアーウィンもチビの名前をだされたらぐぬぬと黙る。
「スロット1回だけでいい!」
「いいわけあるか!」
ツボミはワンちゃん狙いのアーウィンのあたまをぽこんと殴る。はあ、来てやって本当によかった。
「わー! これがカジノ?」
オズワルド・ルイス・アンスバッハ(CL3000522)はうさみみを揺らして本人はぴょんこと跳ねながらルーレットがくるくるまわるのをみてテンションをあげる。
「ぼうず、やってみるか?」
なんて誘われるものだからオズワルトは二つ返事で答えた。
「えーっと、ルーレット? 赤と黒があるんだ!」
「どっちにいれるんだい?」
「んーとね、赤! 赤いとこ! 赤いとこに入れ!」
オズワルトが赤にはれば、ディーラーはルーレットを回す。
ルージュ。
「わ、あたったの?! よし! 赤!」
あたったことに気を良くしたオズワルトはまた赤にベットする。
「黒にはいれないのかい?」
「いいのいいの、オレ、赤が大好きだから!」
いえばディーラーはニヤリと笑う。
「こら!」
そんなディーラーに向かって、制止するのはミズーリ・メイヴェンだ。
「初心者をカモにするのはスマートじゃないわよ?」
「げ、ミズーリ」
「あ、お姉さん自由騎士? このヒトと知り合いなの?」
「ええ、昔のね。 このおじさん悪い人だから、騙されちゃだめよ、えっと……」
「オズワルト・ルイス・アンスバッハ!」
「うん、私はミズーリ・メイヴェンよ。通商連から派遣されて自由騎士団にいるの。というわけでオズワルト。賭け事はおしまい」
「えーー」
「カモになりそうなんだもの」
ミズーリに連れられてカジノをあとにするオズワルトは口を尖らせるのだった。
専用メダルの交換。まずはこれが緊張するのと同時にカジノのワクワクにつながる。
アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)は、カジノは初めての経験。
「ルーレットは数字あてて、ポーカーは組み合わせやろ? 簡単やん」
とかく賭博というものは入り口は簡単そうにみえる。しかしそこにヒト同士の駆け引きが存在しその駆け引きがゲームの難易度を跳ね上げるのだ。
簡単だといった自分が恨めしい。
ルーレットは色と数字を選ぶだけといってもその組み合わせは多数に渡る。賭け方もまた癖があり思った以上に複雑だ。
ポーカーもまた、欲しいカードがなかなかこないのだ。捨てたカードとくみあわせになるカードがきたり、いけると思ったら今度は相手のカードが強すぎて。
「お嬢ちゃん、ポーカーフェイスを身につけないと良いカモになるぞ」
相手方がフルハウスを開示して笑う。対するアリシアはスリーカード。いけるとおもったのに!
「ポーカー奥が深すぎて難しいわ」
「降参かい?」
「降参や! だってな、お小遣いもうすぐなくなるんやもん」
「はは、それは大変だな」
「ほかんとこも見に行きたいし、おっちゃん、またな」
「おっと、破産させることできなかったな」
「悪い大人やわ! やっぱはよ逃げなあかん」
わらいあいながら、勝てはしなくても満足したアリシアはカジノをあとにした。
「ねえ、ヨアヒムさん、わたしと賭け事しませんか?」
レネット・フィオーレ(CL3000335)はカジノでルーレットに興じるヨアヒムに声をかける。
「レネット、おっけーいいよ」
思いの外簡単にOKしたことに、レネットは心の中で舌なめずりする。これこそバーバラ秘伝の小悪魔モード!
「ではブラックジャックなんていかがでしょう。私が勝ったらお願いひとつ聞いてくださいね?」
来る前に友達といっしょにブラックジャックの練習をしてたなんて見せない。危ない橋を渡らず堅実にいく作戦がベストだと友達とも一致した。
「へえ、レネット、賭けもいけるんだね」
もちろん! この日のために練習しましたから!
「はい、負けませんよ?」
「よっしゃ! こっちだって」
配られるカードを見る。冷静に冷静に。親なら16、子なら17。そこが勝負のライン。
「あ、その数字なら……もっといけるんじゃないんです? ううん、良いのが出たらわたし、負けるかもしれません……」
なんて伏し目で煽る。これもバーバラ直伝!
「そうか……ふぅん? 勝負はきびしいんだぜ! キミのカードを狙い撃ち!」
煽られたヨアヒムはカードをひく。
「ああああああああ!」
作戦通り。ヨアヒムはバーストしてしまう。
「うふふ、ヨアヒムさんの負けですのでお願いを聞いてもらいます!」
まるでお仕置きを待つ弟みたいな顔のヨアヒムにレネットはにっこりと微笑む。
「オレ、金もってないよ?」
「そういうのじゃないです! 目を閉じてください!」
「ええっ!?」
「ほらはやく!」
ヨアヒムは目を閉じる。少しの間が怖い。何をされるんだろう。いや目を閉じて? もしかして?
なんて思っていればぱしゃり、ぷしゅーなんて蒸気カメラの音がする。
恐る恐る片目をあけたヨアヒムの鼻がレネットの指先につままれる。
「キス、だと思いましたか? ヨアヒムさんえっちですね」
「ええっ?!」
こんな意地悪もバーバラの教え。ほんとはすこしだけそれでもいいかなって思ったけどそれはちゃんと彼に好きになってもらってから。
困惑しながら姐さんみたいだとつぶやくヨアヒムにレネットはべぇっと舌をだす。
ぎゅっと胸に抱いた蒸気カメラの中身は大切な宝物になる、と思いながら。
「さすが通商連といった船ですね」
アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)はランスロット・カースン(CL3000391)に並び、周囲を眺める。
「お前はカジノにはいかないのか? シャンバラを打倒したとはいえ、神の蠱毒は進行中だ。
いささか気が引けるが、英気を養うというのも尤もな話である」
「あまり賭け事はやりませんが、詰め所でカードゲームはやったことがあります。
ポーカーかスロットマシンあたりで、楽しもうかと」
表情がでないとはいえ、後輩はそれなりにこの場を楽しみにしているようだ。
「はめを外さない程度にな」
「ええ、もちろん。先輩こそ」
「賭け事は好かんが、経験だ。食わず嫌いはよくないからな。
なあに、定石というものがあるのだろう? それなら戦争とかわらん」
言って彼らは各々の場所に向かう。ランスロットがアレなフラグをたてているが大丈夫だろうと、アリスタルフは思う。たぶん。
アリスタルフはスロットが目押しできそうだとスロットマシンに向かい無表情で回し続ける。
ギリギリ負けではない程度のところで引き上げることにする。
ここが負けと勝ちの分水嶺だろう。勝ちすぎるのも良くない。負けるのはもっとよくない。
ふと、アリスタルフは先輩の様子が気になり、彼のもとにむかうことにした。
彼とて顔に表情は出ないタイプではある。しかしなんというか反応がわかりやすい、のだ。
「カモにされてなければ良いのだが」
口に含んだ棒付きキャンディの小さくなった残りを噛み砕きアリスタルフはランスロットのところにむかう。
当の先輩はというと――。
「これも、戦いか……」
おもいっきりカモにされていた。残るコインは数枚。これは完全に負けだ。
「自由騎士さん、いけるって、次に勝てば、最低でも元金の半分はもどる」
「そうか」
「先輩……」
「どうした、アリスタルフ」
「カモにされてますよ」
「なんだと!」
はじめてのカジノ引き際がわかるはずもないランスロットはいわれるままに賭けていく。
「でも、つぎに勝てば元金の半分もどる。その次に勝てば元金まではもどる。さらに次に勝てば……」
完全にドツボにハマるもののいいわけである。
「しかたないですね、俺のチップかしますから」
「そうか、助かる」
若干先輩を甘やかしすぎたとは思うが、こういった先輩をみるのも悪くないとアリスタルフは思う。
結果――。
アリスタルフのチップを使い切ったところで、強制退場と相成ったのであった。
●
さて、【賭】の面々のお話だ。
ニコラス・モラル(CL3000453) の声掛けに集まったのは、ティラミス・グラスホイップ(CL3000385)
、猪市 きゐこ(CL3000048) 、サブロウ・カイトー(CL3000363) 、リド・エンピス(CL3000340) 、ナナン・皐月(CL3000240) 、モニカ・シンクレア(CL3000504) の多種多様な個性的なメンバーだ。
初めて国外にでるティラミスはキョロキョロとカジノを眺める。シャンバラには行ったことはあるがあれはあくまでも戦争。観光なんてできるわけがないからノーカンだ。
ナナンがカジノは大人の社交場であると、気後れをしているとニコラスが、頭をぽんぽんとたたいて、カシミロの旦那が良いっていってんだ、気にするなと言えば、にぱぁと笑顔になって、ポーカーの卓に走っていく。
「ポーカーフェイスを大事にするんだぞ」
なんてニコラスのアドバイスにナナンはできるのだーと答える。あれは無理だなとは思うが、目一杯楽しめるならそれでいい。
「ほら、きゐこも気後れしなくていいぞ」
「私は大人なのだわ! というかニコラスさんより年上なのだわ! それにしても私の眼がつかえないなんて! ケチ!」
「そうだっけ? というか海千山千の通商連だ。どちらにせよ対策はしてるだろうさ」
「ぶー」
ポーカー卓についたナナンのポーカーフェイスは2秒も持たず。簡単に手の内を見破られてしまう。
自分もと皆の顔を観察するも、皆はポーカーフェイス。なにを考えているのかわからない。
「ううううう! 難しいのだ!!」
なかなか勝つことは難しい。もちろんその難しい勝ち負けは面白いんだけど、それ以上にナナンにとっては皆でわいわい仲良く遊ぶのが楽しかった。
「たのしいねー、嬉しいのだ! カシミロさんにもありがとうっていわなくちゃ! ね、おもち!」
ペットのおもちにはなしかければ、おもちはそうだと言わんばかりに耳をぴるぴると震わせるのだった。
同じくポーカーに挑戦するのはティラミス。
ルール確認はしてある。賭けとは怖いものと聞いている。だからつかって良いのはお小遣いの範囲。
けれど。ルールを理解してはいても、駆け引きというものはなかなかに難しい。
ビギナーズラックというものはそれなりにあった。
でも大勝ちできるほどに胴元は甘くない。結果はお小遣いがちょっと増えた感じ。これ以上は危険だと自分でストップする。
ある程度ポーカーをたのしんだティラミスは周囲を観察して回った。
みんな楽しそうに賭け事を楽しんでいる。
飲み物の種類はアルコールからソフトドリンクまでたくさんの種類があった。このみのものはいくつかできた。
壁のポスターの裏側になにかないかな、なんて覗こうとしたときにニコラスに首根っこを掴まれた。
「今日は普通に遊ぶ日」
なんていわれたら良い返す言葉もない。
さらしをまいた筋者が丁半張っているのを予想していたわけではないが、カジノの華やかさにサブロウは目を奪われる。
先程眼の前を通った背なかの下の方まで切り込みのはいったドレスのおじょうさんのおいどが色っぽいと一番に目を奪われたのは内緒だ。
彼もまたポーカーに挑戦する。ポーカーフェイスは得意中の得意。
「イ・ラプセルの自由騎士が天運、見せつけてやりますとも!」
意気揚々と卓につく。
が。
強いとはひとこともいっていない!
兵隊同士の掛けで褌まで剥かれるのは日常茶飯事。勝負運とはどうにも仲が悪くてしかたない。
その分別のツキはもっているようだけれど。
それはここまで生きてきたことが証だ。
「くそー! よし、この、制服を賭けます! これは僕の一張羅で! だめ、軍帽だけは! 軍帽だけは勘弁を! え、脱がなくてもいい?」
負けがかったサブロウは、軍服のボタンを外すが止められる。ここは大人の社交場。脱衣はだめですよ。
アカデミーの友人と少しやってボロ負けした経験のあるモニカはポーカーフェイスができない。
記憶力には自信がある。だからなんとなく考えてることはわかるのだけど――。
プレイするのはワイルドポーカー!
狙うはQ4枚のファイブカード! ロイヤルストレートフラッシュより強いんだもん!
それで勝ったらかっこよくない?
もちろんそんな幸運なんて、そうそう簡単にくるものじゃない。
「うう、もう、コインがない……かくなる上は……」
上着に手をかけそうになったところでニコラスが走ってきて止める。
「ニコにー、はなして! 女にはやらなきゃいけないときがあるのっ! ナナンがビギナーズラックで少し勝ってたから! だからモニカにも! ビギナーズラック! あるから!」
「やらなきゃいけないときなんて、賭け事にはない、ないから! はしたない! やめなさい!」
今日のニコにーは完全に保護者ポジションである。
「目指すは一攫千金!」
リドはルーレットを戦場として選ぶ。
最初は赤か黒のうちみんなが賭けてるうちの少ない方の色。
ほら、ディーラーさんも少ない方に勝たせたいでしょ?
ちまちまルーレットの出目と色は記憶しておく。地道に地道に。少しずつ負けないように。
っておもうじゃん?
でもそれってつまらないじゃん?
「せっかく賭けるなら勝ちたいじゃん?」
ここからは攻勢! リスクヘッジは重要だけどそれじゃ浪漫がたりない!!
負けたって命はとられやしない!
そんな気持ちが跳ねたのか。意外や意外リドはそれなりに勝ったのだ。
気持ちよさに【賭】の皆にドリンクを奢っちゃう!
負けががってるヒトたちに少し恨めしそうな目でみられたけどそれはそれ!
きゐこは逆にいろいろなゲームをつまみ食い。
ブラックジャックでは18なんていうとんでもなくギリギリなラインでヒットして見事にポントゥーンを叩き出す。
ルーレットは、そこそこ。ディーラーのルーレットさばきの巧みさにおもわずチップを投げたほどだ。
そしてポーカー。
ディーラーに調子のいいキャラクターであることを見抜かれ、あっさり煽られて敗北。
アップダウンの激しいのがきゐこのギャンブルだ。
「うう~~もうひと勝負なのだわ!」
「こらこら、きゐこ、熱くなるなって」
ニコラスの制止に熱くなってないのだわ! と騒ぐ。完全に熱くなっている。
「ところでディーラーさん、カジノの手を広げようとは考えてないのかい?」
コインを整えるディーラーにニコラスが尋ねれば笑顔のディーラーは答える。
「広げすぎないことが、カジノという希少価値をあげるんですよ」
「なるほどね」
「ゲームはなさらないのです?」
「ああ、じゃあ楽しませて貰おうか。ゲームの本質ってものは楽しむことだからな」
●
ヨーゼフ・アーレント(CL3000512)は、カシミロ・ルンベックを呼び止める。
「ルンベック議長は各国と校友がありますよね?そこで聞いてみたい事があるのです」
その質問にカシミロは笑みを深めはいはい、なんなりとと続きを促す。
各国の情勢、なんて野暮なことは聞かない。聞いても答えるはずはないだろう。だからヨーゼフをもっと簡単なことを聞く。
「例えば好きな食べ物や好きな娯楽。趣味趣向を聞いてみたいのですよ。シャンバラのように我が国が支配したときに、慰めになればと思いまして」
その質問にカシミロは一瞬だけ面食らった表情をするがすぐに笑顔の仮面に隠す。
「ははは、自由騎士殿はお優しい。一概にいわれましてもまた難しいお話しですねえ。 娯楽なんていうのは我々と大して変わりませんよ。好きな食べ物となると、人それぞれではありますが、自国の特産品を嫌うものなどいらっしゃることはないでしょう? つまりは」
そこでカシミロは笑みを深める。ずいぶんと意地悪に。
「同じヒト、同士でございます。同じような趣味、同じような趣向、なのに争うのがヒトでございます」
その言葉はこれから戦争に向かおうとしている彼らにはずいぶん意地悪な答えだろう。胸糞悪い答えは予測していたが、それ以上の意地悪だ。わかっている。戦う相手が同じヒトであることなど。
「はっはっは、なんとも意地のわるい」
「商人とは意地の悪いモノを総称する言葉でございますので。この言葉で不快を感じさせることもまた商売の一環でございます。逡巡、戸惑い、嫌悪。それ全てが巡り巡って商売につながるのです。
とはいえ、それだけでは少々意地悪がすぎますな。
ヴィスマルクでは馬鈴薯料理がたくさんありますぞ。ヘルメリアは――あの国の食事はなんともかんともですが、紅茶は良いものを大陸から輸入しておりますな」
ところで――。カシミロもまたヨーゼフに質問を投げる。
「あなた方が負けた場合はどうしますか?」
「それは……考えずともよいでしょう。なにせそのときにワタシはこの世にはいない!」
「いやはや、刹那的なお方だ」
「はっはっは!」
笑って二人は別れる。その後がっくりとヨーゼフは首を垂れた。一筋縄ではいかないカシミロにではなく、その未来につながる可能性が低くないことを改めて意識してしまったからだ。
見学途中のディルク・フォーゲル(CL3000381)はカシミロとすれ違い挨拶する。
「商人として学ぶべき所が多そうで、良き機会だと思って居ます」
百点満点の受け答え。失礼など一切ない丁寧さだ。しかしてそれは相手を伺う仮面(ペルソナ)。
「勉強ついでにお聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、もちろん」
「あなた方に通商連内の独自の商売ルールはありますか?」
「あなた方にもそれはあると同様にルールは存在しておりますよ。一枚岩とは申せない通商連でございますが」
言外に細かい内容は教えないという確固たる意志を感じる。
「商人の技術はそれぞれの宝ですからね。とはいえ新規世代を育てるのもまた道理。
通商連でそういった座学などの交流会などはありませんか?」
「座学座学。そうですねえ。我が通商連で育った子供は、奴隷に至っても読み書きに計算はできますよ。ねえ、ぬーちゃん」
カシミロは思わせぶりに傍らのマザリモノの少女に問いかける。
「当然だ。計算できてなくてなにが商人だ。おどろきの識字率85%。すげえ」
トリーディチ・ヌーメロは答える。当時において80%を超える識字率はかなりの数字になる。イ・ラプセルであっても識字率は7割程度だ。それを大きく上回る数字にディルクは感心する。
「なるほど、具体的な商売については?」
それは我流であるディルクにとっては聞きたくてしかたないところ。
「100万GP」
カシミロは数字を提案する。ディルクはきょとんとする。
「商人に商売の方法を聞くのにもっとも有用な手段は、お金でございます。私の手練手管の一部でこの金額は、お友達であるイ・ラプセルのみなさんへのディスカウントした価格でございますよ。ええ、ええ、講座をうけるかた一人につき、100万GPでございます」
「こりゃあ、一筋縄ではありませんね」
ディルクの頬を汗が伝う。
「商人でございますから。我流とおっしゃいましたね。それを金にできるほどに高めることができましたら私もまた相談にこさせていただきましょう。ええ、ええ技術を安く買い叩くことはございません。
ではひとつお勉強を、これは無料でかまいません。
いいですか? 商人に『欲しい』を見抜かれれば、足元を見られることになりますよ」
「お初にお目にかかる、ルンベック殿」
凛々しい声で話しかけるのは政界の女傑とも呼ばれるガブリエラ・ジゼル・レストレンジ(CL3000533)。
「おやおや、イ・ラプセルの政治家さんでございますか」
「ええ、商人と政治、売り物は違っても心得は同じと思っております。ぜひお話しをと」
話しかけられたカシミロは笑みを深くする。
「ええ、ええ、喜んで」
「イ・ラプセルは現在、元シャンバラ領地を含め、様々な種類の鉱石が採取できております」
「ですな、お話によるとミドガルズ鉱の採取できる鉱山……はなくなりましたな。とはいえ採取に関してはできぬこともないとか? まあそこはヴィスマルクに割譲され、南部の鉄鋼山に関しては、ヘルメリアが狙っているとかお聞きしております」
ガブリエラは目の前の商人の情報収集の卒のなさに心の中で舌打ちをする。
「ええ、そのようですね。我が国固有の鉱石といえばエーテル石とスペッサルティンですが、こちらは実用性のある運営ができておりますが、まだシャンバラには有益な鉱山があるとみて調査しております」
「なるほどなるほど、ええ、新しい鉱石がでるのであれば、ええ、ええ有益でございます」
「では、今後詳しい資料を作成し、販売ルートの拡張を……」
「いえいえいえ、いいえ、いいえ。まだ見ぬ商品は管理ができるようになってからお話しいたしましょう。シャンバラの南鉱山。ええ、鉄鋼が埋まる鉱山です。シャンバラはもとより多く鉄鋼を必要としない国家でございました。故に、資源はまだまだ豊富と見ております。鉄が欲しくてしかたないヘルメリアが狙うのは道理。
新種の鉱石、加工品、いいえいいえ、それよりも輝く宝石が鉄鉱石でございます。
ええ、今後の戦渦は更に広まるでしょう。そのうえでもっとも重要視されるものは、おわかりでしょう?」
そういって笑むカシミロの真意は深いところにある。
「あなたは食えないヒトだ」
「ええ、よくいわれます」
シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)はルー・シェーファー(CL3000101)と船を探索する。
ルーとしては名声の高いシノピリカと歩くことで便宜を図ってもらうという下心もあるのだが。思った以上に簡単に快諾されて心の借金が増えたことは少々面倒ではあるが、それをもって余りあるメリットは得ることができる、はずだ。
「おー、船団国家というだけで浪漫じゃが、からくりもきになるのー! 詰まりは燃え、じゃ
どうやってこんなに振動なくできるんじゃろうなあ、地上とかわらぬじゃろ?
そりゃあ普通に暮らしを営めるというものじゃ。
アブソーバーの機能がすごいんじゃろうなあ、蒸気技術すごいのう」
「なるほどネー」
熱く語るシノピリカをルーは話半分に聞く。目的は違うところにあるのだ。
「おお、ゼッペロン卿でしたかな?」
その大きな背なかに声がかかる。カシミロ・ルンベックだ。
「おおカシミロ殿、ワシの……私のことをご存知でしたか」
「ええ、ええイ・ラプセルの強壁、シノピリカ・ゼッペロン卿、貴方のことは我が通商連でも噂にあがりますよ」
「それは照れるのう」
そんなシノピリカの裾をルーが引っ張る。
「ああ、こちらはルー・シェーファー。我が国きっての旅商人でござる。此度、良き機会という事で、貴殿にお目にかかりたいと申しましてな。商売の極意など、お聞かせ願えませぬかな」
「カシミロ・ルンベック通商商業連合国議長!お会いできて実に光栄ヨ!」
ルーは服の裾を持ち上げエレガントにカーテシーをする。
カシミロの一挙一動に商売力を感じる。百戦錬磨とはあのようなことをいうのだろう、とルーは心で評価する。
「可愛らしい商人さんでございますね。極意ですと高くつきますよ」
「このような大規模な船団国家を維持するには、どんなからくりがあるノ?」
だからといってルーは媚はしない。
「そうですねえ。新しいものは受け入れる、旧体勢も受け入れる。商人とは受け入れることが肝要でございます。ヘルメリアの最新の蒸気技術はそれなりに値ははりますが、そのコストに見合う性能ではございますね」
「ほうほう」
蒸気機械の技術に関してはルーよりシノピリカのほうが食いつく。
「蒸気圧により、連結部分を結合しております。潮風に強い金属は少々お高いのですがこの国の都合上しかたありません。結合した際船の管理系統の上位は本船に移らせ、離れたときには分離するという形で制御をかけているのでございますね。そうそう、あと半刻もすれば、アマノホカリにむかっていた船団が帰ってきて、連結作業がございますので、見学に行ってくるとよいでしょう」
「それはそれは! ぜひ」
「ええ、使いのものをだしますので、そこのお嬢さんもいかがです?」
「アタシはいいネ、それより商売のお話しをしたいネ
行商品とか見てもらいたし、特産品のサンプルももってきたネ。希品珍品の調達のお手伝い承るネ! アナタの利益、アタシの利益、ひいては国の利益ヨ!」
「なるほど、あなた方は私どものために、危険な場所にも調達に行ってくれるということでございますか? ええ、ええそれは助かります」
ルーはそのさらに深まった笑みにぞっとする。しかして顔にはださない。
「あまり、ムチャはいっちゃだめヨ」
「ええ、ええ、もちろんでございます。確かあなた方の神の権能とは『浄化』でございましたな。イブリース化した品物なんていうのを品物として治すことができるとか? ええ、ええ、すでに数件そのようなお願いをさせてもらってはいたのですが、今後そのようなお願いも遠慮せずにできそうでございますな」
「ええ、おまかせヨ(シノピリカ嬢に)」
「ところで、はて、世界に果てなどはあるのじゃろうか? カシミロ殿」
「世界はおおきな球体でございます。ヒトが住んでいる地域の最北端を果てというのであればあるのでしょうなあ。ああもちろん商売に果てはございません。言葉を交わせるのであれば神であっても商売を営んでみましょうぞ?」
「ルンベック卿、お初にお目にかかります」
ライモンド・ウィンリーフ(CL3000534)はカシミロに声をかける。
「今日はずいぶんと皆様にお声をかけられておりますよ」
「クリルタイにて末席に名を連ねておりますライモンド・ウィンリーフと申します」
「どうも自由騎士の政治家のみなさんは積極的でございますね」
「ええ、もちろんです。
一つの国が滅び、環境が急変します。
当然シャンバラの輸出入はあなた方にも影響を及ぼしますね」
「ずいぶん性急ですな。ええ、ええ、聖櫃がなくなり、シャンバラの多量の農産物の激減については我々も心を痛めております。
とはいえ、シャンバラは森林国家。肥沃な土壌であることにはかわりありません」
「その変化にも強い農作物、新たな商売は考えておりますかな? そんな農作物に目星はつけられていますでしょうか?」
「おやおや、それを考えるのがあなた方でございましょう? 私共があなた方の広大で肥沃な大地に指示をしてかまわないのですかな? いくらでも思いつきはしますが」
「これは一本とられました。種芋、苗木、そういったものはイ・ラプセルにもあります」
「で、ございましょうね」
「多少は時間はかかりますが、新しい大地においての農業に対する取引はお願いできますか?」
「ええ、ええ、肥沃な大地をうまく転用してくださることを願っておりますよ」
「折り入って聞いてみたいのだが」
ラメッシュ・K・ジェイン(CL3000120)は聞ける範囲でいいのでと前置きをしてカシミロに尋ねる。
「はいはい? 貿易情報などを聞くのであれば、同じことを他の国にも話すことになるでしょうな。ええ、いくらでも聞いてください」
そんな脅迫じみた返しにラメッシュは唇を噛む。
「武器関係の輸出はどうだ?」
「戦争中でございます。どのお国も必要なものは私共から購入はされておりますな。ええ、ええ、一年前と比べても商売繁盛で嬉しく思います。
鉄鉱石なんてものはどこの国でも高額で取引はさせてもらっておりますよ」
「なるほど。我が国は新しく鉄鋼山を得たのだが」
「ええ、ええ、耳にしております。ぜひぜひ懇意にしていただけると嬉しくおもいますよ。さらなる武器、兵器の原材料でございますからね」
「模擬戦?」
青年――アデル・ハビッツ(CL3000496)が提案したそれは誰も考えてはいないことだった。
「おまえバカか?」
トリーディチがその言葉に半眼になる。もとより半眼の眠そうな顔をしているのだが。
「おまえらは遊びにきたときいている。ぱぱに」
「船上での戦いを指南していただきたい」
「金とるぞ」
「かまわん」
通常の船であればカトラス使いの軽装の戦士――というか一般的な海賊だが――を思い浮かべる。さてはて、通商連はなにがでてくるのやら。
スポーツ施設に通されたアデルは、自分の相対する『敵』を見る。
なんともこれは拍子抜けだ。自分と同じような傭兵が相手となって出てきたのだ。そりゃあそうだろう。彼らは武力だって金で買う。この世すべて金で買えないものは無いと信じている通商連であるのだから。しかもなし崩しに突発的な出し物(かけごと)にされてしまっているようだ。
「どっちがかつかかけろー。オッズは――」
観客に向かってトリーディチから出されたオッズはなんとも苦笑するようなそれ。もちろんこっちの方がずいぶん以上に高いオッズだ。
とはいえ、船上での戦闘についてあの傭兵たちは、一家言あることだろう。対して安くもない金額を請求されたのだ。それなら十分に教導してもらうだけだとアデルは嘯く。
「おい、おまえが勝てば、請求額は半額にしてやる」
トリーディチがつぶやく。
「帳消しといかないのが、通商連らしい」
「練度は見れる、戦闘教義(ドクトリン)も確認できるとなれば対価はもらうべき」
そのとおりだ、と告げると突如はじまった賭け試合に出ることを余儀なくされたアデルはため息をつく。
ま、俺はいつもどおり真っすぐ行って、吹っ飛ばす――だけだがな。
「れでぃー、ごー」
試合の始まりの合図はなんとも気の抜けたものであった。
「はじめまして、俺はオルパ。御覧の通りヨウセイだ」
オルパ・エメラドル(CL3000515)は恰幅のいい後ろ姿に声をかける。
「やあやあ、これはこれは、ヨウセイでございますか。
なるほどなるほど。長い耳に羽根に、その羽根で飛べるのですかな?」
品定めされるようなその無遠慮な視線は気持ちが良いものとは言えない。
「ああ、いや、これは俺たちの魔力が浮かび上がっているだけで飛行用途には使えない」
「なるほどなるほど」
「シャンバラ皇国がなくなって、俺たちヨウセイは世界の表舞台にあがることができた」
「それはそれはようございますね」
「有り体にいう。ヨウセイに興味はないか?」
「ええええ、もちろん。私共で、確保、いえ保護したヨウセイの皆さんは現地組織とは繋がっていませんでしたので」
その言葉にオルパは多少なりとも通商連がヨウセイを保護していたことを知る。知っていて助けなかったのかと言いたい気持ちもあったが、ぐっと我慢をする。
当然だ。彼ら通商連にはヨウセイを助ける義理などない。
「俺たちと取引することで、金儲けができないかとおもってな」
「なるほどなるほど、森への親和性における商売要素。そうですねえ、よい土壌がわかるなどそういった部分でしょうか?」
「木々に聞けばある程度は。特産品であれば質の良いりんご酒がある。自由騎士たちも喜んで飲んでいた。一応持ってきたからぜひ飲んで欲しい」
「なるほどなるほど。ありがとうございます。あとで試飲させていただきましょう。――で、貴方の立場は?」
「特別権限を持つ立場ではないが、ウィッチクラフトとのとっかかりにはなると思う」
「はいはい、了解しました。それでは考えておくことにいたします」
その言葉に嘘はないだろう。しかしてまるで泥に釘を打っているように手応えというものが感じない。
「ああ、ヨウセイの皆さんへの地位向上は今後進んでいくでしょうね。そちらに関しては我ら通商連も強力は惜しみませんよ」
●
「お初にお目にかかります、デボラ・ディートヘルムと申します」
アレイスター・クローリーが食事をする傍らで挨拶するのは、デボラ・ディートヘルム(CL3000511)だ。
「ああ、新人かい?」
肉片をくわえるクローリーはフランクに答えた。
「ええ、稀に耳にする方を見かけましたので、ぜひお目通りをと。
その、……アレイスター様は魔導士、なのですよね?」
「正確に君たちの言うように分類するのであれば、アルケミーだよ」
「占術などはやられますか?」
「できないことはな……」
「素敵なおじ様とはいつお会い出来ますか!」
食い気味の質問にクローリーはニヤリと微笑むと「僕なんてどうだい? 広義的にいえば800歳の年上のおじさまだぜ?」なんて答える。
「はぁ……、予測はしてはいましたが、からかってばかりの噂通りの方ですね」
「キミはさ、怖いんだろう?」
「は?」
「また捨てられないかって」
その不安を見抜いた言葉にデボラは口をつぐむ。
「だから、相手に包容力をもとめるのさ。本当はおじさまじゃなくてもいい。キミを愛してくれる人であればそれでいい。そうじゃないかい?」
デボラは無言でクローリーの脇腹にフックをかます。
「あいて!」
「あなたは意地悪です」
「大丈夫さ。キミは十分魅力的だよ。いつかキミをみてくれる人は現れる。しらんけど」
「あの、そこはきっとね、とかじゃないんですか?」
「だって、違ったら怒られそうじゃん?」
「はあ、あなたがどんな人かよくわかりました!」
「やあ、アリアたん、お風呂上がりかい? デザートなら果実のゼリーがおすすめだよ」
そんなクローリーの声かけにアリア・セレスティ(CL3000222)は半眼になる。
「ききましたよ。いい大人(1601歳)が何やってるんですか……」
「キミも説教かよ。楽しんでるだけさ」
やりたい放題を注意すればまるで母親に怒られた少年のようにクローリーは口を尖らせる。
「普段はもっと節度があるとおもったんですが、浮かれてません?」
「そりゃあ、神殺しがひとつ為れば、浮かれもするさ」
その悪びれなさにアリアはため息を落とす。
「まあ、いいや。
ありがとう、アレイスター君」
「なんのことだい?」
「王様の采配も当然ですが、三国交渉が支えられたのはアレイスター君の助力だとおもいます」
「さあ、どうだか?」
アリアの感謝の言葉にクローリーは薄くわらう。
クローリーから渡された果実のゼリーはずいぶんと冷えていて火照った体に気持ちがいい。
「貴方の」
「ん?」
「貴方の願いを、聞かせてください。お礼に叶えてあげます」
こぼれた質問はクローリーが前にも一度答えたことがあるものだ。
「この僕に対してかい? 大きく出たものだ。アリア・セレスティ。
そうだな。世界が平和になりますように、さ」
「また、誤魔化すんですか? それなら叶えてあげません」
「叶えてくれるんだろう? それはキミたちにとっても必要なことだからね」
「そういうんじゃないんです、個人的なのが知りたいんです」
「■■■ておくれよ」
魔術師の言葉は伝わらない。呪縛によるものか、彼がそれを『隠した』のかはわからない。
「アレイスター君って面倒な人ですね」
「そりゃあ1600年も生きていたらね」
「きゃーーーーーアレイスターーー! なんでこんなところにいるのー???」
奇声とともに突っ込んでくるのはクイニィー・アルジェント(CL3000178)だ。
「キミさ、ここをどこだとおもってるんだい? ご飯は静かにたべるものだろう?」
お前が言うなというようなことを口にしながら、フォークに刺した肉団子をクイニィーの口にほおりこむ。
もっきゅ、もっきゅと味わって嚥下して。
「居るなら居るっていってよーーー! なに? これ。美味しい」
「中にラズベリーのジャムを詰めた肉団子だってさ。酸味が意外と合うだろう?」
「うんうん! ほか美味しいのある?」
「あっちの魚のソテーなんてずいぶん洒落た味だったよ?」
「おっけー、あたしももらってくる! ついでになんか取り分けてこようか?」
と、振り向いたときには、彼の姿はない。
「んもーーーーー!!! アレイスター! また逃げたー!! このー!
でもそんなとこ、嫌いじゃないぞーーー! でてこーい!」
騒ぐクイニィーの皿の上には、ここには咲いてないはずのオトメユリの花が置かれていた。
うむ、通商連の料理もなかなか……。
魚を中心に据えられたメニューは定番から変わったものまで千差万別だ。差し伸べられた手を振り払うほどの傲慢さは良くない。食べ物に罪はない。
ボルカス・ギルトバーナー(CL3000092)は舌鼓をうちながら物色してると、親友(クローリー)と背なかでぶつかる。
「あれ? ローリー?」
ボルカスはクローリーからここまでに至る経緯を聴くと呆れた顔になる。
「お前ほんとなにやってんの?」
「それいわれたのもう何回目かな? で、ナーナーキミはカジノやキネトロープには行ってきたのかい?」
「賭けは苦手だし、キネトロープはほら、三十男がいくような内容じゃないし」
「バカ! ナーナーそこを制してこその傲慢でしょ! 傲慢がなくでしょ!」
「そ、そうか、傲慢であるためには――って騙されんぞ!」
「勢いであのお涙頂戴キネトで泣くナーナーを観察したかったのに」
「そんなこといわれたら余計にいかんわ! というか、シャンバラの戦いが終わった記念だ。
乾杯なんてどうだ?」
「いいねえ。イ・ラプセルの明るい未来を祝して?」
親友にとって正直なところ、我が国が勝とうがそれこそシャンバラが勝とうがどちらでもいいのだろうとは思う。アレはそういうモノだと理解はしている。今の軽口だって心から言ってないことくらい、鈍い自分でもわかる。
しかし、それでもいいのだ。この底のしれない親友はそれでもそこに居て自分と共に祝杯を掲げている。それは間違いなく真実で、忘れがたい思い出にはなるのだから。
「おう、乾杯だ」
「やあ、アレイスター、ここではおとなしくしているのかな?」
「やあ、マグノリア・ホワイト。キミもお説教かい?」
「いいや、お酒に誘いにきた」
飲める? とマグノリア・ホワイト(CL3000242)は尋ねる。いいえと答えられても誘うつもりはあるが。
「もちろんいけるさ」
なら、とグラスに注がれた高級そうなワインで乾杯する。
「今日はどうしてここに……? なんていう質問は愚問だったね。
君は面白そうなところには必ず現れるから」
「よくわかってるじゃないか」
クローリーはワインの香りを楽しんでいる。
「ひとつだけ、きいてもいい……?」
「一つでいいの?」
「ひとつでいい。
君とアクアディーネの望みは一致しているとおもうんだけどそれはあっているのかい……?」
マグノリアは逡巡した後尋ねる。
「世界を救うってことでであれば、そうだな、一致してるよ。それだけ?」
「……うん、それだけ」
その答えに納得はいかないがそれでも彼が嘘をついているようには思えない。それでも一致している部分が少しでもあるなら、その望みは叶えたいと思う。
もしその代償に自分を使うことになったとしても――。
「ご飯、たべよう。君に苦手な食材があるなら興味がある」
「僕ぁ、ケーキがが嫌いでさあ」
「っていって僕にケーキを給仕させるつもりかい?」
「その時はメイド服で頼むよ。ミニスカートのかわいいやつ」
「どこかの紳士と戦争が起こるやつだよ、それ……」
「戦争かい? そりゃあ願ってもないことだ」
「ほんとに君は……」
マグノリアが苦笑する。それはこの益体もないやりとりが楽しかったのか、それともちがう理由があったのかはわからない。
それでもこの時間は尊いものだと、そう、思う。
「おおおおおおおおおおおおおおおおお!」
イ・ラプセル一のおにくりすとであるサシャ・プニコフ(CL3000122)はいつものお城のパーティと比べても引けをとらない豪華な食事に感嘆の声をあげる。
「おにくはなんでも全部大好きなんだぞ! 魚のにくもえびのにくもたこのにくもいかのにくもたべまくるんだぞ!」
その宣言どおりいろんな魚料理をあっちこっちと食べ比べる。
もぐもぐ。おいしい。
だけど。
魚もいいけどうしとかひつじとかにわとりのにくのほうがサシャの好みだぞ!
ずいぶんこの一年で贅沢になったサシャはそんなことを言う。
「それでもこんなにたくさんの魚にくを食べる機会はなかなかないからたーっくさんたべるぞ!」
サシャの贅沢はとまらない。
次のテーブルに向かうサシャの背なかはまるで漁師のように凛々しいのである。
お肉も大好きだけどお魚も好き。
お魚中心のお食事がどんな感じになるんだろう? やっぱり新鮮だから美味しいのかな?
リサ・スターリング(CL3000343)はお魚料理に興味津々。アマノホカリでは生で食べるとかきくけどそれはちょっと怖い。
ソテーした魚料理に手を付け――ようとしたところでその皿を奪うやつがいる。
「んもー! たくさんあるでしょ? ムサシマル」
気のおけない友達だからこその暴挙にリサは笑いがこみ上げる。
「リサ殿、油断大敵でござるよ。ヒトのものほど美味しいの法則でござる」
「あ、そういえば、アマノホカリって本当に生魚で食べるの?」
「ああ、オッサシーミでござるか、でびーるふぃっしゅも食べるでござるよ、生で。もちろん漁場で釣ったその場で食べるくらいでござるけどな。魚は足がつくのが早いでござる」
デビルフィッシュとはタコのこと。リサは姿を思い描いてそれを生で?! なんてぶるりと身震いする。
「でも拙者、焼いてるほうが好きでござるな。あ、ほら、野菜は分けてやるでござるよ」
「こら! ムサシマルそれは貴方が嫌いなんでしょ? ちゃんと食べなきゃ!」
リサだって野菜は苦手だ。それでも、目の前のだだっこに負けずと口にする。口の中に広がる青さとすこしの苦さが苦手なのだ。あれ? でもお魚と食べるとお魚の味が引き立って――。
「お? リサ殿野菜苦手ではないのでござるか?」
「これと一緒だと、なんだか違うんだ。お魚の味が引き立つというか、両方美味しくなるみたい!」
「なんだと? それは拙者の野菜であったでござるよ! かえせー」
「んもー! ムサシマルめちゃくちゃ!」
それでも騒がしくも楽しい食事はいつもの何倍も美味しく感じた。
「たのしんでいるか?」
グローリア・アンヘル(CL3000214)はもそもそと食事するアーウィンの隣に座り声をかけた。
「クローリアか……ちょっとな。カジノってやつで、ちょっとうん」
アーウィンが顛末を話すとグローリアはなんと言って良いのかわからない顔をする。
「その、そういうこともあるだろう。初めてというのはつい、はしゃいでしまうものだな。
実際私もこんな大きな蒸気船にのったのは初めてで……」
グローリアなりに気を使って、話を変える。
「ああ、俺もそういえば、初めてかな? ヴィスマルクでは列車の荷台くらいだったし」
「この蒸気船は普通の船とちがうのだろうか?」
「揺れは極力少なくなっているって聞いたぜ」
「なるほど、そうだな、ここで生活を営んでいるのだから揺れていたらみんな船酔いになるのだろう。
こんな変わった生活の場所があるというのは世界は広いなと思う」
「だなー、俺たちが見てたのは世界の本の一握りだったってことだ」
「私は自分の国は好きだ。私の誇りでもある」
独白するような口調のグローリアの言葉の続きをアーウィンが無言で促す。
「だけど、そればかりに固執するのも良くないとおもった」
「お、鋼の軍人様が柔らかくなったもんだ」
「だからそういう、こう、なんていうか、女らしくないようなことはいわないでくれ」
「お、すまん」
「そういうことを言うのは戦争している身の上で言えることではないんだろうが」
「戦争してるからこそじゃね? 相手は俺らと同じヒトで、生活が合って、いろいろ考えている。だからこそ、知って、変わることだって大事だ。……っていうか俺がイ・ラプセルに来たのも知って、変わったからだからな」
「そうか…そうなのかもしれない。えっと、なんだか辛気臭くなったな。それはこの場では良くない。
えっと、乾杯しないか? せっかくの異国の船だ」
「ああ、もちろんだ」
高級そうなグラスに注がれた赤いワインの色はグローリアの髪と同じで、チンとガラス同士が触れ合う音と一緒に揺れた赤いワインはまるで自分の心のようだとグローリアは益体もないことを思った。
サブロウタ リキュウイン(CL3000312)は、食事をしながら今までのことを思う。
娯楽施設を覗くついでに数人の通商連の者にも声をかけ話をきいた。
その上で思うのは通商連というのは国土がないというのに、巨大な組織であるということだ。
人種も様々。それほどまでマザリモノや亜人の扱いが悪すぎないというのはある意味リベラルなイ・ラプセルに近いものがある。亜人の識字率が85%で7割しか識字率のない自国より進んでいることには少々面食らった。
領土がない。そのデメリットは大きい、しかして自由に国土である船団を移動させることができるのは大きなメリットにつながることは軽視できない。
それに商人一人ひとりが海千山千のツワモノだ。
自分もポリティシャンとして彼らと渡り合える交渉力を身に着けたいものだ、とサブロウタは甘い紅茶を一口、飲んだ。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『貴方と共に過ごす新しい時間』
取得者: エル・エル(CL3000370)
『ニコにー』
取得者: ニコラス・モラル(CL3000453)
『貴女と共に過ごす新しい時間』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『赤きディーラー』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『先輩の保護者』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
『おにくりすと』
取得者: サシャ・プニコフ(CL3000122)
『お手並み拝見』
取得者: ルー・シェーファー(CL3000101)
『貴方と共に過ごす新しい時間』
取得者: ランスロット・カースン(CL3000391)
『新緑の歌姫(ディーヴァ)』
取得者: 秋篠 モカ(CL3000531)
『両手に花』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
取得者: エル・エル(CL3000370)
『ニコにー』
取得者: ニコラス・モラル(CL3000453)
『貴女と共に過ごす新しい時間』
取得者: ザルク・ミステル(CL3000067)
『赤きディーラー』
取得者: エルシー・スカーレット(CL3000368)
『先輩の保護者』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
『おにくりすと』
取得者: サシャ・プニコフ(CL3000122)
『お手並み拝見』
取得者: ルー・シェーファー(CL3000101)
『貴方と共に過ごす新しい時間』
取得者: ランスロット・カースン(CL3000391)
『新緑の歌姫(ディーヴァ)』
取得者: 秋篠 モカ(CL3000531)
『両手に花』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
特殊成果
『通商連請求書(高額) 』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アデル・ハビッツ(CL3000496)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:アデル・ハビッツ(CL3000496)
†あとがき†
皆様、船の遊戯はいかがだったでしょうか?
カシミロさんは常に世界の商売のことを考えています。
MVPはどえらくたいへんだったニコにーと
素敵なお約束をくださったルーさんと
素敵な歌を披露した歌姫さんに。
ええ、ええ、通商連は遠慮なく皆様をこき使わせて、もとい、通商連に皆様からの素晴らしいお力添えをいただけるようで嬉しく思います。
私共とあなた方はお友達でございますものね!
また今回
「海上戦闘教義」
のスキルが取得されました。
海上では便利なスキルだと思います。
カジノのついては規定数のPCに来ていただいたので、近日中に実装予定です。
GPでコインを買ってもらうことで、ポーカー(とハイアンドロー)に参加することができます。
コインを集めれば豪華な景品を得ることができます。
たぶん喜んでもらえるような景品もあるとおもいますのでご期待くださいませ。
準備が整いましたら通商連のほうからカジノにご招待させていただきます。
それでは参加ありがとうございました。
カシミロさんは常に世界の商売のことを考えています。
MVPはどえらくたいへんだったニコにーと
素敵なお約束をくださったルーさんと
素敵な歌を披露した歌姫さんに。
ええ、ええ、通商連は遠慮なく皆様をこき使わせて、もとい、通商連に皆様からの素晴らしいお力添えをいただけるようで嬉しく思います。
私共とあなた方はお友達でございますものね!
また今回
「海上戦闘教義」
のスキルが取得されました。
海上では便利なスキルだと思います。
カジノのついては規定数のPCに来ていただいたので、近日中に実装予定です。
GPでコインを買ってもらうことで、ポーカー(とハイアンドロー)に参加することができます。
コインを集めれば豪華な景品を得ることができます。
たぶん喜んでもらえるような景品もあるとおもいますのでご期待くださいませ。
準備が整いましたら通商連のほうからカジノにご招待させていただきます。
それでは参加ありがとうございました。
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