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Original! 原点求めて殴り合え!

●オリジナルが至高とは限らないが、それを知っておくことで発想の幅が増える。
カレー。
イ・ラプセルより東方の地域において香辛料を用いた煮込み料理が原点と思われる料理だ。ヘルメリアの船乗りがそれを食べて持ち帰ろうとするが、牛乳などの日持ちしない材料の為に断念。しかし味を忘れられない船乗りたちが日持ちする香辛料を用いて作り出されたのが今伝わるカレーと言うのが通説だ。
そう。今食べているカレーはあくまでカレーの代替品。すなわち本物のカレーではないのだ。ヘルメルアの歴史を紐解き、その事実が発覚する。
「つまり本物のカレーよ」
その日、『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は『常客』のセレスティーヌ・カルティエからそんな話を聞いた。医者であるツボミの常客という事は、要するに良くケガをするという意味である。
「そうか。今度は何処に殴り込みに行った?」
「密売奴隷商人を潰しにアデレートに。この国に本物のカレーを広めたいの」
「そういう事は騎士に報告しろ。で、広めるって具体的にどうやって」
さて、そろそろこのセレスティーヌについて言及した方がいいだろう。
セレスティーヌ・カルティエ。ミズビトのシスターである。頭に『暴力』がつく程度の普通の修道女で、北に犯罪者いれば行って斧を振り下ろし、南に誘拐犯がいれば言って蹴りをかます。東に暴漢がいれば突撃して男の尊厳を踏み砕き、西に……まあなんかあったらとにかく拳を振るう。
そして当たり前のようにツボミの世話になるのであった。そんな『常連』である。ツボミの怒りや如何に。
「めんどいし。この国には東方出身者もいるだろうから材料を吐かせて」
「面倒でも言え! あと私も央華出身だがカレーは知らん」
「覚えてたらな。そこは宛てがある。なんでもその地方出身の修行僧でその国の文化を正しく伝えているそうだ」
「それ絶対覚えないで突撃するフラグだろう。で、その修行僧から教えてもらうというわけか。文化を伝承するのはいいこと――」
「殴ってな」
「……は?」
「戦いに勝てば勝つほどカレーの種類を教えてくれるという良心設定。故にこの傷が治ったらカチコむ予定だ」
「ただの強盗じゃないのか、それ……?」
心配になったツボミがついていけば、険しい山道を進んだ先にあった異国の建物と『カレー五重塔! レピシを知りたければ、我らが戦士に挑むべし!』と書かれてある塔らしい建造物があった。
「宗教家って言うのは変なのしかいないのか……?」
「失礼な」
心外だと告げるセレスティーヌの声に、お前が言うなとツッコミを入れる元気はツボミにはなかった。
カレー。
イ・ラプセルより東方の地域において香辛料を用いた煮込み料理が原点と思われる料理だ。ヘルメリアの船乗りがそれを食べて持ち帰ろうとするが、牛乳などの日持ちしない材料の為に断念。しかし味を忘れられない船乗りたちが日持ちする香辛料を用いて作り出されたのが今伝わるカレーと言うのが通説だ。
そう。今食べているカレーはあくまでカレーの代替品。すなわち本物のカレーではないのだ。ヘルメルアの歴史を紐解き、その事実が発覚する。
「つまり本物のカレーよ」
その日、『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)は『常客』のセレスティーヌ・カルティエからそんな話を聞いた。医者であるツボミの常客という事は、要するに良くケガをするという意味である。
「そうか。今度は何処に殴り込みに行った?」
「密売奴隷商人を潰しにアデレートに。この国に本物のカレーを広めたいの」
「そういう事は騎士に報告しろ。で、広めるって具体的にどうやって」
さて、そろそろこのセレスティーヌについて言及した方がいいだろう。
セレスティーヌ・カルティエ。ミズビトのシスターである。頭に『暴力』がつく程度の普通の修道女で、北に犯罪者いれば行って斧を振り下ろし、南に誘拐犯がいれば言って蹴りをかます。東に暴漢がいれば突撃して男の尊厳を踏み砕き、西に……まあなんかあったらとにかく拳を振るう。
そして当たり前のようにツボミの世話になるのであった。そんな『常連』である。ツボミの怒りや如何に。
「めんどいし。この国には東方出身者もいるだろうから材料を吐かせて」
「面倒でも言え! あと私も央華出身だがカレーは知らん」
「覚えてたらな。そこは宛てがある。なんでもその地方出身の修行僧でその国の文化を正しく伝えているそうだ」
「それ絶対覚えないで突撃するフラグだろう。で、その修行僧から教えてもらうというわけか。文化を伝承するのはいいこと――」
「殴ってな」
「……は?」
「戦いに勝てば勝つほどカレーの種類を教えてくれるという良心設定。故にこの傷が治ったらカチコむ予定だ」
「ただの強盗じゃないのか、それ……?」
心配になったツボミがついていけば、険しい山道を進んだ先にあった異国の建物と『カレー五重塔! レピシを知りたければ、我らが戦士に挑むべし!』と書かれてある塔らしい建造物があった。
「宗教家って言うのは変なのしかいないのか……?」
「失礼な」
心外だと告げるセレスティーヌの声に、お前が言うなとツッコミを入れる元気はツボミにはなかった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.カレー五重塔を踏破せよ!
2.カレーを食え!
3.カレーを食え!
2.カレーを食え!
3.カレーを食え!
どくどくです。
この国のシスターが『暴力』なのは普通なのです、ええ。……どうしてこうなった。
このシナリオは非時香・ツボミ(CL3000086)様の依頼により発生したリクエストシナリオです。発注者以外でも参加は可能です。
★リクエストシナリオとは(マニュアルから抜粋)
リクエストシナリオは最大参加者4名、6名、8名まで選べます。なお依頼自体はOPが出た時点で確定しており、参加者が申請者1名のみでもリプレイは執筆されます。
リプレイの文字数は参加人数に応じて変動します。
【通常シナリオ】
1人の場合は2000文字まで、その後1人につき+1000文字 6人以上の場合は最大7000文字までとなります。
●敵情報
カレー五重塔の番人
インd……イ・ラプセルの山奥にある五重塔の番人です。各階にいる塔の番人がカレーの香辛料を持っています。戦闘が終わるたびにカレーを食べて回復していくので、リソース管理は気にしなくて構いません。
五戦分プレイングをかくのは大変だと思われますので、戦術面は使用したいスキルと行動指針を書いていただければどくどくが適度に判断します。っていうか真面目に戦闘するシナリオじゃないんで。
プレイングはカレーへの愛とかNPCのからみとか、そんなの重視でいいんじゃないですかね。美味いと叫びながら服が破けたころで、どくどくは驚きません。カレーですから。
・一階:『闇に潜む刃』アラブ 難易度:Hot!
黒い布をかぶり、両手にジャマダハルをつけた軽戦士です。CT重視のスピードファイター。軽戦士のランク2までのスキルを使います。
作るカレーは鶏肉系。骨付き鶏肉とココナッツミルクが味の相乗効果を生み出しています。
「カレー五重塔にようこそ。早速だが死ぬがいい」
「あ、本当に死ななくていいんで。演出的なモノなんでお付き合いいただければ」
・二階:『神猿の子』ダシャ 難易度:Spicy!
下着一枚の筋骨隆々なパワー系格闘家。飛びかかって抱き着いて投げてきます。データ的には『影狼』です。格闘家のランク2までのスキルを使います。
作るカレーは野菜と豆系。ヨーグルトとの融合が辛さを緩和して野菜の清涼感を増しています。
「ふんはー! 我が肉体を見よ!」
「すみません女性の方には刺激が強かったですか? 服着ますんで」
・三階:『氷の微笑』マヒー 難易度:Devil!
民族的衣装をまとった女性魔導師。氷系の魔術を使います。具体的には『アイスコフィン』と『コキュートス』とか。
作るカレーはキーマカレー。弾力あるひき肉が噛むたびに食感を増していきます。
「すべて……凍り付きなさい」
「お風呂はあちらです。ゆるり温まってきてください」
・四階:『円環の輪、全てを裂く』サーンビ 難易度:Insanity!
チャクラムを手にした女性格闘家。ジョブはガンナーです。『ウェッジショット』と『バレッジファイヤ』を巧みに使い分けてきます。
作るカレーは魚介系。独特の米を使っており、絶妙なスパイスバランスが食欲を促進させます。
「ここまで昇ってきた実力。試させてもらいましょう」
「最近は誰も来てくれないから寂しくてさー。マジ感激」
・五階:『カレーを極めし魔人』ヴィハーン 難易度:Curry!
ターバンを頭に巻いた男性老人です。格闘家。合掌で『バレッジファイヤ』相応の衝撃波を放ち、呼気で『二重螺旋のボレロ』相応の付与を行い、拳は『デッドリースクライド』並の貫通力を有し、HPが減るとカレーを食べて『バーサーク』状態になります。オマエ何者だ。
作るカレーは羊肉(マトン)カレー。ナンと呼ばれるパンと共に食べるカレー文化の原点とも言える一品。
「我はカレーを極めし者。我望むもの、只一つ。カレーに敵う強者のみ……」
「ふぅ、疲れたわい。あー、腹減った。カレーでも食うか」
●NPC
・セレスティーヌ・カルティエ
ミズビト女性。ツボミの診療所の『常連』です。なにかあっちゃあ暴力で解決する系のシスター。薪割り斧を使って特攻します。無類のカレー好き。非オラクル。
指示がなければ突撃して傷ついて倒れます。指示があっても聞かずに特攻して倒れます。カレーがなければ戦いが終わると同時にすぐに次の階にカチコミします。後ろから殴って倒せば、大人しくなります。アクアディーネの権能って便利。
カレーを食べている間はおとなしくでしょう。
●場所情報
インd……イ・ラプセル山奥にある異国風の寺社。そこにある五階建ての塔。各階に一人、敵がいます。台所などもそこにあり、戦った後にHPとMPが全回復します。カレーってすげー。
各階において、事前付与は不可。礼の後に試合開始です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
この国のシスターが『暴力』なのは普通なのです、ええ。……どうしてこうなった。
このシナリオは非時香・ツボミ(CL3000086)様の依頼により発生したリクエストシナリオです。発注者以外でも参加は可能です。
★リクエストシナリオとは(マニュアルから抜粋)
リクエストシナリオは最大参加者4名、6名、8名まで選べます。なお依頼自体はOPが出た時点で確定しており、参加者が申請者1名のみでもリプレイは執筆されます。
リプレイの文字数は参加人数に応じて変動します。
【通常シナリオ】
1人の場合は2000文字まで、その後1人につき+1000文字 6人以上の場合は最大7000文字までとなります。
●敵情報
カレー五重塔の番人
インd……イ・ラプセルの山奥にある五重塔の番人です。各階にいる塔の番人がカレーの香辛料を持っています。戦闘が終わるたびにカレーを食べて回復していくので、リソース管理は気にしなくて構いません。
五戦分プレイングをかくのは大変だと思われますので、戦術面は使用したいスキルと行動指針を書いていただければどくどくが適度に判断します。っていうか真面目に戦闘するシナリオじゃないんで。
プレイングはカレーへの愛とかNPCのからみとか、そんなの重視でいいんじゃないですかね。美味いと叫びながら服が破けたころで、どくどくは驚きません。カレーですから。
・一階:『闇に潜む刃』アラブ 難易度:Hot!
黒い布をかぶり、両手にジャマダハルをつけた軽戦士です。CT重視のスピードファイター。軽戦士のランク2までのスキルを使います。
作るカレーは鶏肉系。骨付き鶏肉とココナッツミルクが味の相乗効果を生み出しています。
「カレー五重塔にようこそ。早速だが死ぬがいい」
「あ、本当に死ななくていいんで。演出的なモノなんでお付き合いいただければ」
・二階:『神猿の子』ダシャ 難易度:Spicy!
下着一枚の筋骨隆々なパワー系格闘家。飛びかかって抱き着いて投げてきます。データ的には『影狼』です。格闘家のランク2までのスキルを使います。
作るカレーは野菜と豆系。ヨーグルトとの融合が辛さを緩和して野菜の清涼感を増しています。
「ふんはー! 我が肉体を見よ!」
「すみません女性の方には刺激が強かったですか? 服着ますんで」
・三階:『氷の微笑』マヒー 難易度:Devil!
民族的衣装をまとった女性魔導師。氷系の魔術を使います。具体的には『アイスコフィン』と『コキュートス』とか。
作るカレーはキーマカレー。弾力あるひき肉が噛むたびに食感を増していきます。
「すべて……凍り付きなさい」
「お風呂はあちらです。ゆるり温まってきてください」
・四階:『円環の輪、全てを裂く』サーンビ 難易度:Insanity!
チャクラムを手にした女性格闘家。ジョブはガンナーです。『ウェッジショット』と『バレッジファイヤ』を巧みに使い分けてきます。
作るカレーは魚介系。独特の米を使っており、絶妙なスパイスバランスが食欲を促進させます。
「ここまで昇ってきた実力。試させてもらいましょう」
「最近は誰も来てくれないから寂しくてさー。マジ感激」
・五階:『カレーを極めし魔人』ヴィハーン 難易度:Curry!
ターバンを頭に巻いた男性老人です。格闘家。合掌で『バレッジファイヤ』相応の衝撃波を放ち、呼気で『二重螺旋のボレロ』相応の付与を行い、拳は『デッドリースクライド』並の貫通力を有し、HPが減るとカレーを食べて『バーサーク』状態になります。オマエ何者だ。
作るカレーは羊肉(マトン)カレー。ナンと呼ばれるパンと共に食べるカレー文化の原点とも言える一品。
「我はカレーを極めし者。我望むもの、只一つ。カレーに敵う強者のみ……」
「ふぅ、疲れたわい。あー、腹減った。カレーでも食うか」
●NPC
・セレスティーヌ・カルティエ
ミズビト女性。ツボミの診療所の『常連』です。なにかあっちゃあ暴力で解決する系のシスター。薪割り斧を使って特攻します。無類のカレー好き。非オラクル。
指示がなければ突撃して傷ついて倒れます。指示があっても聞かずに特攻して倒れます。カレーがなければ戦いが終わると同時にすぐに次の階にカチコミします。後ろから殴って倒せば、大人しくなります。アクアディーネの権能って便利。
カレーを食べている間はおとなしくでしょう。
●場所情報
インd……イ・ラプセル山奥にある異国風の寺社。そこにある五階建ての塔。各階に一人、敵がいます。台所などもそこにあり、戦った後にHPとMPが全回復します。カレーってすげー。
各階において、事前付与は不可。礼の後に試合開始です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
5個
1個




参加費
100LP
100LP
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2020年05月26日
2020年05月26日
†メイン参加者 6人†
●
カレー五重塔――
そう呼ばれる当の前に6名の自由騎士とその連れ添いであるセレスティーヌがいた。吹きすさぶ風を受けて、塔を見上げている。
「カレーの為なら、塔でも何でも昇りますよ~」
目を輝かせて『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)が拳を握る。ヘルメリアで食べたことはあるが、此処に在るのはその原点。本場の味と聞いて菓子職人の血が騒いでいた。
「カレー……新しい商売の匂いがするネ!」
目をお金マークに変えて『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)が喜びの声をあげる。商売の基本は誰もやっていない事をやる事。オリジナルのカレーとなればその話題性は十分。あわよくば好事家に気に入られ、スポンサーになってくれるかもしれない。
「カレーか。初めて食べた時は感激したよな。あの見た目は……アレだったけど」
うんうんと頷く『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)。田舎から出てきて初めて食べたカレー。その見た目は(自主規制)を想起させたが、その刺激はナバルの世界観を変えたという。都会すげー。
「かなり変わった食事のようですね。楽しみです」
貴族のお嬢様『文字数たりなかった』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)が物珍しそうにつぶやく。カレーに触れる機会はなかったが、その原点がここに在ると言うのなら都合がいい。歴史の船乗りに準じるように原点から触れてみよう。
「カレー。それは白く大地に降臨した新たな生命の海なのです」
祈るように『くっころ(ぱすた)』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が呟く。白いコメにカレーが注がれる時、新たな世界が生まれるだろう(創世記一章三十二節)。そう、つまりそういうことなんよ。
「うむ。一階ごとに一人番人がいるようなので、儀礼的にタイマン勝負と行こう」
相手を肩に抱え上げ、右足と右腕を掴む! そのまま両肩で背骨を折るように圧力をかけたぁ! カレー五重塔を見立てた至高の関節技、人間マフラータワーブリッジ! 『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)の先制攻撃がセレスティーヌをマットに伏すぅぅ!
「……何やってるのツボミ先生」
「いきなり突撃しそうになったので止めたのだ。安心しろ、不殺の権能は活性化してある」
そういう問題なのだろうか。そういう問題なのだろう。二人の関係性だ。誰も深く指摘はしなかった。
ともあれ、カレー五重塔に自由騎士達は足を踏み入れたのであった。
●一階――VS『闇に潜む刃』アラブ!(難易度:Hot)
「ぬおおおおお! 肩がもげるぅ!」
おおっと、開幕と同時にツボミがセレスティーヌにタックルして転ばせ、そのままうつぶせにして両腕を抱える! これこそ大空を飛ぶ鳥を捕らえる必殺技ァ! チキン! ウィング! アァァァァム、ロックッッッ! 梃子の原理で両肩を極めたぁ!
「セレスは押さえておく。さあ、行くのだ!」
「ええと……本当に大丈夫なのでしょうか? いえ、ツボミ様のモラルとか医者キャラとしての立場とか」
いろいろなころを心配するデボラ。一階の相手であるアラブは何か言いたげに手を伸ばすが、それを制するようにデボラが盾を構える。
「来なさい! 貴方の相手は私です!」
「ふ、防御に自信があるようだが守ってばかりでは勝てぬと知るがいい」
「あ、展開的に相打ちとかどうです? 魂になって応援とか燃えるじゃないですか!」
「じゃあこの状態で必殺技放つんで、そこをカウンターして……」
事前に話し合うデボラとアラブ。打ち合わせは重要である。
かくして単行本一巻分ぐらいの攻防を繰り広げたデボラとアラブは、最終的にアラブの境遇に涙したデボラが『そんな悲しい世界を変えてみせる』という貴族の心をもって撃ち放った『いと堅き乙女に祝福を(デュールノブル・グラース)』により、勝利を得るのであった。
「復讐の刃が折れるとは……これが、イ・ラプセルの盾の乙女と呼ばれた貴族の強さなのか……!」
「この勝利……愛する人のために!」
勝利の声は高く、敗者は静かに地に伏した。
「ん? 終わった? じゃあカレー食おう」
「はいはい。少し待ってくださいね。あ、辛いのが駄目な人は前もって言ってください。ヨーグルト用意しますんで」
倒れていたアラブは起き上がり、カレーを用意する。
「これがカレーですか。では一口……」
ぱく、と鶏肉ココナッツカレーを食べるデボラ。そして他の者も(セレスティーヌはチキンアームロック状態でツボミに食べさせられていた)口にする。
「ふぉおおおおおおおおお!」
突如湧き上がる声。辛さに驚いたこともあるが、辛いだけではない何かが自由騎士達を驚かせていた。
デボラを包み込む濃厚なココナッツミルク。それは南国の味感じさせながら母の愛のようにやさしくデボラを包み込む。その中から飛び立つ大量の鶏肉に乗って自由に空を舞う。まさに天にも昇るカレーの味。全身を駆け巡る熱い衝動が、デボラの血肉を覚醒させていく。
「濃厚なココナッツミルクの海に包まれて旨味という旨味が閉じ込められた鶏肉の歯応えと肉汁! 何なんですかこの料理は! おかわり!」
「ココナッツミルクの甘みと鶏の旨味の相性が良いな。酒に合うな」
「ボリューム感が最高ですぅ〜!」
他の自由騎士達も充分にカレーを堪能していた。
●二階――VS『神猿の子』ダシャ!(難易度:Spicy)
「腕ぇぇ!? わたしの、腕がぁぁぁぁ!」
なんだと!? ツボミは跳躍してセレスティーヌの腕にしがみつくぅ! そのまま空中で腕を極めた! 天に輝くサザンクロスを思わせる見事な十字架ァ! たまらずセレスティーヌも地面に倒れ、もがいているぅ! これは決まったかぁ!?
「セレスは押さえておく。さあ、行くのだ!」
「お、おう……」
なんか釈然としない表情でナバルが頷く。まあ当人達も楽しそうだしいいや。そう割り切って相手を見る。パンツ一丁の大男だ。
「……なんでパン1なの、このおっさん」
「己の武勇を示し、正々堂々と対決する。それが私なのです」
「オレ以外みんな女性なんだから配慮して配慮!」
「は、すんません。少しお待ちを」
存外素直に服を着るダシャ。動きさすそうな僧衣を着てナバルに向き直る。
戦いはドラマCDの半分ぐらいまで尺を取り、最初は『マッチョ裸キャラ何かに槍を使いたくない』と言って盾しか使わないナバルの戦術をつくようにダシャが立ちまわり、ダシャの言葉で己の慢心に気付いたナバルが戦う意味を再確認し、最後は『槍は攻防一体の武器(ザ・スピアマヌーバー)』の極地に至ってギリギリのところで勝利を得た。
「そうだ、少年……それが制空圏の入り口。守りを主体とする少年の、新たな力となるだろう……」
「おっさん。それを教える為にあえて裸で……!」
力尽きるダシャ。その武の在り方に、ナバルは自然と敬礼の姿をとっていた。
「よし、おわったか。ではカレーを食おう」
「ええ。温めてきますのでしばらくお待ちを」
何事もなかったかのように起きあがるダシャ。豆と野菜という肉を一切使わないカレー。ナバルは手を合わせて、口にする。
「こ、これは!」
口にした瞬間に開眼するナバル。
「歯ごたえのある豆にカレーの味が染みついた野菜。この二つがカレーにより混合し、ヨーグルトが程よく味を調節している! 大地の恵みをふんだんに取り入れた野菜カレー! 全ての野菜が感謝の声をあげて、オレの中に入ってくる!」
ナバルは気が付くと広い畑に立っていた。一面に広がる作物の恵み。それが渦となって取り込まれていく。ああ、田舎のメシは美味しかった。望郷の思いと共に思わず涙があふれてくる。
「爽やかさと辛みのマッチングで……堪りません! これは脱ぎたくなるのも当然ですね!」
「デボラさんが脱いだー!?」
「ヘルシーだが豆のせいか意外と重いな。酒に合うな」
加速するカレー熱。進むツボミの酒。ダシャと共に服を脱ぐデボラ。カレーを基点とした宴は、まだ始まったばかりだ。
●三階――VS『氷の微笑』マヒー!(難易度:Devil)
「ぬぉおおおおおおお!? 足がぁぁぁ!」
ツボミ、突然のカニバサミぃ! そこから流れるようにセレスティーヌを横転させ、足を固めて四の字に極めたぁ! 遠くアマノホカリに在る四忌避の如く、見事な四の字がセレスティーヌを苦しめていくぅ! さぁ、ギブかそれとも続行かぁ!?
「セレスは押さえておく。さあ、行くのだ!」
「はいですぅ~。ツボミさん、頑張ってくださいねぇ~」
もう慣れたのか元々の性格か、シェリルは頷いて目の前の相手を見た。独特の民族衣装をまとった女性だ。彼女は唇を笑みに変え、魔力を高めていく。
「マヒーさん、戦わないという選択肢はないですかぁ?」
「ええ。こうして出会った以上……諦めてください」
「悲しいですぅ。ですが、これも運命なんですねぇ」
「はい、ではお互いの誇りをかけて――お菓子バトルです!」
和菓子職人のシェリルと料理人のマヒー。二人は直感とか魂の波動とかなんかそんなもので互いの存在を感知し、戦いはいきなり料理バトルとなった。何処からともなく運ばれてきたキッチンにはそれぞれの菓子の材料が用意されている。何故アマノホカリの粒あんまであるの? そんな野暮なことは聞いちゃいけないぜ。
戦いはマヒーが作り上げた球状ドーナッツを極甘シロップにつけた御菓子を出してきた。甘さに甘さを重ねた甘味の刃。その鋭さは正に何度も鍛えた剣の如き。超甘さ特化のお菓子を作って自由騎士達を甘味の海に叩き込む。だが――
その後に出されたシェリルの七色和菓子により五感で癒される。和菓子とは目で味わい、色彩から音を想起させ、匂いで味わい、手触りで味わい、そして舌で味わう。その極致ともいえる御菓子は剣ではなく抱擁。優しく包み込み、そして癒す力を持っていた。
その和菓子の美しさと優しさにマヒーは感激し、民族衣装が破れて倒れ伏した。
「甘さこそ至高という考えは……間違いだったのね」
「いいえ、マヒーさんは間違っていませんよぉ。ただ、おもてなしの心が足りなかっただけですぅ。また、戦いましょう~」
シェリルの言葉にマヒーは完全敗北を悟り、号泣する。後に彼女は央華大陸料理七宝勝負に置いて罠にはめられたシェリルを助け、轡を並べて戦うことになるのだがそれはまた別の話である(適当)。
「さぁ~。カレーを食べましょう~。お肉の食感が格別ですぅ!」
「オレは今、肉を『飲んでいる』……! これが、ひき肉なのか!?」
「アイヤー! これどうやって作ったか教えてほしいアル! 肉だけでも売れるネ!」
「ヒック、酒にあうな」
加速するツボミの酒。叫ぶナバル。目がお金になったルー。それぞれの感激が塔内に響き渡る。
カレー五重塔も折り返し。しかしここから上は更に攻略難易度が上がるのだ――
●四階――VS『円環の輪、全てを裂く』サーンビ!(難易度:Insanity)
「うごぼぐばはああああああ! 首が、背骨がぁ!」
俯せにされたセレスティーヌに馬乗りになるぅ! そのまま顎を掴んで強引に引っ張ったぁ! ラクダの手綱を引くが如き必殺技! 伝説の殺人技の一つ、その名も機矢滅留(キャメル)・苦落血(クラッチ)ィ! 極悪医者の卑劣な知識が的確に人体を破壊していくぅ!
「ヒック。さあ、行くの……ウィ~」
「ツボミ、酒飲んで暴れると酔いまわるの早くなるヨ」
各階のカレーごとに酒を飲んでたツボミはもはやぐてぐてであった。その上でセレスティーヌを押さえる為にプロレス技を仕掛けているのだから、もう完全に酔っぱらっていた。
「海に囲まれた島国、イ・ラプセルにおいて魚介系カレーは最も売れると見たネ!」
「いーじゃん、イケてるよ。そんじゃ、バトろうか!」
「勝ったらスパイスのレシピと入手方法を教えてもらうネ!」
「スパイスはセンスよ。そしてセンスを磨くのは――」
相対するルーとサーンビ。共に格闘センスに優れた――忘れそうになったけどルーは格闘スタイルでしたな。商人キャラの方が強いんで、つい(byどくどく)――二人は構えを取り、何処からともなく響いた銅鑼の音と共に交差する。
そしてそのまま流れてくる音楽に合わせてダンスバトルが開始された。何故? それは二人の心の中だけにしか理解できない『何か』があったのだ。具体的にはEXプレイング。
突如部隊は広い荒野に変わり、バックダンサーと共にサーンビが躍りながら行進する。途中で出会った相手に踊りながら手を差し出し、その手を取ったものはサーンビのバックダンサーとして加わっていく。そして荒野はいつしか華やかな街と変わっていく。
荒野からの発展。そうして生まれた街並みを、ルーは踊りながら進んでいく。央華大陸の衣装をまとってカレーを固めた肉まんを売りながら商売を活性化していき、さらにはバニーガール衣装を着て金貨舞うカジノを生み出していく。
「やるわね」
「そっちもネ」
そして踊りが終わり、ルーとサーンビは固く握手をする。共に切磋琢磨し、認め合う。それもまた戦いなのだ。
そしてサーンビから出された魚介類カレー。
「魚の群れがカレーの海を泳いでいる……! そう、命の源はカレーの海にあった!」
「適度に身体を動かして、お腹が空いた所にこの香りはもうたまらないヨ!」
「もっと酒持ってこーい!」
カレーにより水中仕様のカタクラフトに変形合体するデボラ。踊りの疲れを癒すルー。そしてすでに出来上がったツボミ。
そんな彼らの前に、カレーの魔人が待ち受ける。
●五階――VS『カレーを極めし魔人』ヴィハーン!(難易度:Curry)
「ごぶぅ!」
ツボミとセレスティーヌの腕が十字に交差する! セレスティーヌのストレートに合わせるように放たれたツボミのフック! 死の十字架がマットの上に刻まれるゥ! 互いの拳が防御なしで顔面にたたきつけられたぁぁぁぁ! 両者ァ、ノックッ、ダウゥゥン!
「見事だな、セレス……あのガリガリ娘が、ここまで成長するとは……胸も含めて、な」
「麗しい博愛の精神ですね」
ツボミとセレスティーヌの仲良さ(?)からドラマを感じ、アンジェリカが涙する。いいのかシスター? いいんだろうな、きっと。
「汝……パスタか?」
「はい。ではこれ以上は言葉は不要ですね」
ヴィハーンの問いにアンジェリカは頷く。二人が戦う前に交わした会話はこれだけ。何が何だかわからないが、どくどくにもわからない。だが当人達には分かったのだろう。
そう、人が視認できる三次元では二人はただ相対しているだけ。しかし神の領域ともいえる二十七次元では熾烈な攻防が繰り広げられていた。パスタの概念生命体と、カレーの概念生命体の激しい戦いが。
パスタ概念体が世界をパスタで満たせば、それを上書きするようにカレー概念体がルーの海でその世界を塗りつぶす。その海から火山が爆発するようにパスタが吹き上がれば、それを叩き落とすように牛肉が隕石のように降り注ぐ。
パスタ概念体が動くたびに世界は三度崩壊し、カレー概念体が蠢くたびにまた世界の形は変わる。それは人が認識できない領域での世界改革。赤外線を見ることが出来ないように、人の知覚を超えた概念体同士の攻防戦。書き変わると同時に上書きされ、そのたびに人の認識はわずかに入れ替わる。カレーが至高か、パスタが最上か。その天秤は一秒ごとに三千四百六十八回揺れていた。
三千五百二十三万七千八百九十五回目の世界改革の後に、ヴィハーンが膝をつく。時間にすれば数秒のにらみ合い。しかしその間にパスタ概念体とカレー概念体は――
「パスタカレー……か、見事な折衷案だ」
二つの概念体は手を取り合い、アンジェリカは皿にその結果を示した。カレーのルーが乗った、カルボラーナ。
「はい。如何にパスタにカレーを絡ませるか。それが議題でした。つるつるのパスタとカレーは絡み合わない。
ですが麺の茹で具合を変えて、さらには生命の根幹である卵を混ぜることで絡み度合いを変化させました」
「見事。打ち勝つのではなく、取り込むとは。やはり時代を作るのは、若者という事か……! 我が全身全霊(カレー)、ここに敗れたり!」
崩れ落ちるヴィハーン。だが勝者たるアンジェリカは悲しげな眼でそれを見る。
「貴方もまた我が友(パスタ)。願わくば、共に歩みたかった……」
祈るアンジェリカの頬を、涙が一筋流れ落ちた。
●戦い終わり――
かくして、カレー五重塔を無事攻略した自由騎士達。
「また来いよー」
五重塔のカレー伝承者達は手を振って自由騎士達を見送る。よくわからない戦いだったが、全部カレーが生み出したパッションだったのだろう。どくどくのトンチキシナリオだしね!
いい汗をかいた自由騎士達は、お土産をもって帰路につくのであった。
カレー五重塔――
そう呼ばれる当の前に6名の自由騎士とその連れ添いであるセレスティーヌがいた。吹きすさぶ風を受けて、塔を見上げている。
「カレーの為なら、塔でも何でも昇りますよ~」
目を輝かせて『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)が拳を握る。ヘルメリアで食べたことはあるが、此処に在るのはその原点。本場の味と聞いて菓子職人の血が騒いでいた。
「カレー……新しい商売の匂いがするネ!」
目をお金マークに変えて『有美玉』ルー・シェーファー(CL3000101)が喜びの声をあげる。商売の基本は誰もやっていない事をやる事。オリジナルのカレーとなればその話題性は十分。あわよくば好事家に気に入られ、スポンサーになってくれるかもしれない。
「カレーか。初めて食べた時は感激したよな。あの見た目は……アレだったけど」
うんうんと頷く『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)。田舎から出てきて初めて食べたカレー。その見た目は(自主規制)を想起させたが、その刺激はナバルの世界観を変えたという。都会すげー。
「かなり変わった食事のようですね。楽しみです」
貴族のお嬢様『文字数たりなかった』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)が物珍しそうにつぶやく。カレーに触れる機会はなかったが、その原点がここに在ると言うのなら都合がいい。歴史の船乗りに準じるように原点から触れてみよう。
「カレー。それは白く大地に降臨した新たな生命の海なのです」
祈るように『くっころ(ぱすた)』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が呟く。白いコメにカレーが注がれる時、新たな世界が生まれるだろう(創世記一章三十二節)。そう、つまりそういうことなんよ。
「うむ。一階ごとに一人番人がいるようなので、儀礼的にタイマン勝負と行こう」
相手を肩に抱え上げ、右足と右腕を掴む! そのまま両肩で背骨を折るように圧力をかけたぁ! カレー五重塔を見立てた至高の関節技、人間マフラータワーブリッジ! 『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)の先制攻撃がセレスティーヌをマットに伏すぅぅ!
「……何やってるのツボミ先生」
「いきなり突撃しそうになったので止めたのだ。安心しろ、不殺の権能は活性化してある」
そういう問題なのだろうか。そういう問題なのだろう。二人の関係性だ。誰も深く指摘はしなかった。
ともあれ、カレー五重塔に自由騎士達は足を踏み入れたのであった。
●一階――VS『闇に潜む刃』アラブ!(難易度:Hot)
「ぬおおおおお! 肩がもげるぅ!」
おおっと、開幕と同時にツボミがセレスティーヌにタックルして転ばせ、そのままうつぶせにして両腕を抱える! これこそ大空を飛ぶ鳥を捕らえる必殺技ァ! チキン! ウィング! アァァァァム、ロックッッッ! 梃子の原理で両肩を極めたぁ!
「セレスは押さえておく。さあ、行くのだ!」
「ええと……本当に大丈夫なのでしょうか? いえ、ツボミ様のモラルとか医者キャラとしての立場とか」
いろいろなころを心配するデボラ。一階の相手であるアラブは何か言いたげに手を伸ばすが、それを制するようにデボラが盾を構える。
「来なさい! 貴方の相手は私です!」
「ふ、防御に自信があるようだが守ってばかりでは勝てぬと知るがいい」
「あ、展開的に相打ちとかどうです? 魂になって応援とか燃えるじゃないですか!」
「じゃあこの状態で必殺技放つんで、そこをカウンターして……」
事前に話し合うデボラとアラブ。打ち合わせは重要である。
かくして単行本一巻分ぐらいの攻防を繰り広げたデボラとアラブは、最終的にアラブの境遇に涙したデボラが『そんな悲しい世界を変えてみせる』という貴族の心をもって撃ち放った『いと堅き乙女に祝福を(デュールノブル・グラース)』により、勝利を得るのであった。
「復讐の刃が折れるとは……これが、イ・ラプセルの盾の乙女と呼ばれた貴族の強さなのか……!」
「この勝利……愛する人のために!」
勝利の声は高く、敗者は静かに地に伏した。
「ん? 終わった? じゃあカレー食おう」
「はいはい。少し待ってくださいね。あ、辛いのが駄目な人は前もって言ってください。ヨーグルト用意しますんで」
倒れていたアラブは起き上がり、カレーを用意する。
「これがカレーですか。では一口……」
ぱく、と鶏肉ココナッツカレーを食べるデボラ。そして他の者も(セレスティーヌはチキンアームロック状態でツボミに食べさせられていた)口にする。
「ふぉおおおおおおおおお!」
突如湧き上がる声。辛さに驚いたこともあるが、辛いだけではない何かが自由騎士達を驚かせていた。
デボラを包み込む濃厚なココナッツミルク。それは南国の味感じさせながら母の愛のようにやさしくデボラを包み込む。その中から飛び立つ大量の鶏肉に乗って自由に空を舞う。まさに天にも昇るカレーの味。全身を駆け巡る熱い衝動が、デボラの血肉を覚醒させていく。
「濃厚なココナッツミルクの海に包まれて旨味という旨味が閉じ込められた鶏肉の歯応えと肉汁! 何なんですかこの料理は! おかわり!」
「ココナッツミルクの甘みと鶏の旨味の相性が良いな。酒に合うな」
「ボリューム感が最高ですぅ〜!」
他の自由騎士達も充分にカレーを堪能していた。
●二階――VS『神猿の子』ダシャ!(難易度:Spicy)
「腕ぇぇ!? わたしの、腕がぁぁぁぁ!」
なんだと!? ツボミは跳躍してセレスティーヌの腕にしがみつくぅ! そのまま空中で腕を極めた! 天に輝くサザンクロスを思わせる見事な十字架ァ! たまらずセレスティーヌも地面に倒れ、もがいているぅ! これは決まったかぁ!?
「セレスは押さえておく。さあ、行くのだ!」
「お、おう……」
なんか釈然としない表情でナバルが頷く。まあ当人達も楽しそうだしいいや。そう割り切って相手を見る。パンツ一丁の大男だ。
「……なんでパン1なの、このおっさん」
「己の武勇を示し、正々堂々と対決する。それが私なのです」
「オレ以外みんな女性なんだから配慮して配慮!」
「は、すんません。少しお待ちを」
存外素直に服を着るダシャ。動きさすそうな僧衣を着てナバルに向き直る。
戦いはドラマCDの半分ぐらいまで尺を取り、最初は『マッチョ裸キャラ何かに槍を使いたくない』と言って盾しか使わないナバルの戦術をつくようにダシャが立ちまわり、ダシャの言葉で己の慢心に気付いたナバルが戦う意味を再確認し、最後は『槍は攻防一体の武器(ザ・スピアマヌーバー)』の極地に至ってギリギリのところで勝利を得た。
「そうだ、少年……それが制空圏の入り口。守りを主体とする少年の、新たな力となるだろう……」
「おっさん。それを教える為にあえて裸で……!」
力尽きるダシャ。その武の在り方に、ナバルは自然と敬礼の姿をとっていた。
「よし、おわったか。ではカレーを食おう」
「ええ。温めてきますのでしばらくお待ちを」
何事もなかったかのように起きあがるダシャ。豆と野菜という肉を一切使わないカレー。ナバルは手を合わせて、口にする。
「こ、これは!」
口にした瞬間に開眼するナバル。
「歯ごたえのある豆にカレーの味が染みついた野菜。この二つがカレーにより混合し、ヨーグルトが程よく味を調節している! 大地の恵みをふんだんに取り入れた野菜カレー! 全ての野菜が感謝の声をあげて、オレの中に入ってくる!」
ナバルは気が付くと広い畑に立っていた。一面に広がる作物の恵み。それが渦となって取り込まれていく。ああ、田舎のメシは美味しかった。望郷の思いと共に思わず涙があふれてくる。
「爽やかさと辛みのマッチングで……堪りません! これは脱ぎたくなるのも当然ですね!」
「デボラさんが脱いだー!?」
「ヘルシーだが豆のせいか意外と重いな。酒に合うな」
加速するカレー熱。進むツボミの酒。ダシャと共に服を脱ぐデボラ。カレーを基点とした宴は、まだ始まったばかりだ。
●三階――VS『氷の微笑』マヒー!(難易度:Devil)
「ぬぉおおおおおおお!? 足がぁぁぁ!」
ツボミ、突然のカニバサミぃ! そこから流れるようにセレスティーヌを横転させ、足を固めて四の字に極めたぁ! 遠くアマノホカリに在る四忌避の如く、見事な四の字がセレスティーヌを苦しめていくぅ! さぁ、ギブかそれとも続行かぁ!?
「セレスは押さえておく。さあ、行くのだ!」
「はいですぅ~。ツボミさん、頑張ってくださいねぇ~」
もう慣れたのか元々の性格か、シェリルは頷いて目の前の相手を見た。独特の民族衣装をまとった女性だ。彼女は唇を笑みに変え、魔力を高めていく。
「マヒーさん、戦わないという選択肢はないですかぁ?」
「ええ。こうして出会った以上……諦めてください」
「悲しいですぅ。ですが、これも運命なんですねぇ」
「はい、ではお互いの誇りをかけて――お菓子バトルです!」
和菓子職人のシェリルと料理人のマヒー。二人は直感とか魂の波動とかなんかそんなもので互いの存在を感知し、戦いはいきなり料理バトルとなった。何処からともなく運ばれてきたキッチンにはそれぞれの菓子の材料が用意されている。何故アマノホカリの粒あんまであるの? そんな野暮なことは聞いちゃいけないぜ。
戦いはマヒーが作り上げた球状ドーナッツを極甘シロップにつけた御菓子を出してきた。甘さに甘さを重ねた甘味の刃。その鋭さは正に何度も鍛えた剣の如き。超甘さ特化のお菓子を作って自由騎士達を甘味の海に叩き込む。だが――
その後に出されたシェリルの七色和菓子により五感で癒される。和菓子とは目で味わい、色彩から音を想起させ、匂いで味わい、手触りで味わい、そして舌で味わう。その極致ともいえる御菓子は剣ではなく抱擁。優しく包み込み、そして癒す力を持っていた。
その和菓子の美しさと優しさにマヒーは感激し、民族衣装が破れて倒れ伏した。
「甘さこそ至高という考えは……間違いだったのね」
「いいえ、マヒーさんは間違っていませんよぉ。ただ、おもてなしの心が足りなかっただけですぅ。また、戦いましょう~」
シェリルの言葉にマヒーは完全敗北を悟り、号泣する。後に彼女は央華大陸料理七宝勝負に置いて罠にはめられたシェリルを助け、轡を並べて戦うことになるのだがそれはまた別の話である(適当)。
「さぁ~。カレーを食べましょう~。お肉の食感が格別ですぅ!」
「オレは今、肉を『飲んでいる』……! これが、ひき肉なのか!?」
「アイヤー! これどうやって作ったか教えてほしいアル! 肉だけでも売れるネ!」
「ヒック、酒にあうな」
加速するツボミの酒。叫ぶナバル。目がお金になったルー。それぞれの感激が塔内に響き渡る。
カレー五重塔も折り返し。しかしここから上は更に攻略難易度が上がるのだ――
●四階――VS『円環の輪、全てを裂く』サーンビ!(難易度:Insanity)
「うごぼぐばはああああああ! 首が、背骨がぁ!」
俯せにされたセレスティーヌに馬乗りになるぅ! そのまま顎を掴んで強引に引っ張ったぁ! ラクダの手綱を引くが如き必殺技! 伝説の殺人技の一つ、その名も機矢滅留(キャメル)・苦落血(クラッチ)ィ! 極悪医者の卑劣な知識が的確に人体を破壊していくぅ!
「ヒック。さあ、行くの……ウィ~」
「ツボミ、酒飲んで暴れると酔いまわるの早くなるヨ」
各階のカレーごとに酒を飲んでたツボミはもはやぐてぐてであった。その上でセレスティーヌを押さえる為にプロレス技を仕掛けているのだから、もう完全に酔っぱらっていた。
「海に囲まれた島国、イ・ラプセルにおいて魚介系カレーは最も売れると見たネ!」
「いーじゃん、イケてるよ。そんじゃ、バトろうか!」
「勝ったらスパイスのレシピと入手方法を教えてもらうネ!」
「スパイスはセンスよ。そしてセンスを磨くのは――」
相対するルーとサーンビ。共に格闘センスに優れた――忘れそうになったけどルーは格闘スタイルでしたな。商人キャラの方が強いんで、つい(byどくどく)――二人は構えを取り、何処からともなく響いた銅鑼の音と共に交差する。
そしてそのまま流れてくる音楽に合わせてダンスバトルが開始された。何故? それは二人の心の中だけにしか理解できない『何か』があったのだ。具体的にはEXプレイング。
突如部隊は広い荒野に変わり、バックダンサーと共にサーンビが躍りながら行進する。途中で出会った相手に踊りながら手を差し出し、その手を取ったものはサーンビのバックダンサーとして加わっていく。そして荒野はいつしか華やかな街と変わっていく。
荒野からの発展。そうして生まれた街並みを、ルーは踊りながら進んでいく。央華大陸の衣装をまとってカレーを固めた肉まんを売りながら商売を活性化していき、さらにはバニーガール衣装を着て金貨舞うカジノを生み出していく。
「やるわね」
「そっちもネ」
そして踊りが終わり、ルーとサーンビは固く握手をする。共に切磋琢磨し、認め合う。それもまた戦いなのだ。
そしてサーンビから出された魚介類カレー。
「魚の群れがカレーの海を泳いでいる……! そう、命の源はカレーの海にあった!」
「適度に身体を動かして、お腹が空いた所にこの香りはもうたまらないヨ!」
「もっと酒持ってこーい!」
カレーにより水中仕様のカタクラフトに変形合体するデボラ。踊りの疲れを癒すルー。そしてすでに出来上がったツボミ。
そんな彼らの前に、カレーの魔人が待ち受ける。
●五階――VS『カレーを極めし魔人』ヴィハーン!(難易度:Curry)
「ごぶぅ!」
ツボミとセレスティーヌの腕が十字に交差する! セレスティーヌのストレートに合わせるように放たれたツボミのフック! 死の十字架がマットの上に刻まれるゥ! 互いの拳が防御なしで顔面にたたきつけられたぁぁぁぁ! 両者ァ、ノックッ、ダウゥゥン!
「見事だな、セレス……あのガリガリ娘が、ここまで成長するとは……胸も含めて、な」
「麗しい博愛の精神ですね」
ツボミとセレスティーヌの仲良さ(?)からドラマを感じ、アンジェリカが涙する。いいのかシスター? いいんだろうな、きっと。
「汝……パスタか?」
「はい。ではこれ以上は言葉は不要ですね」
ヴィハーンの問いにアンジェリカは頷く。二人が戦う前に交わした会話はこれだけ。何が何だかわからないが、どくどくにもわからない。だが当人達には分かったのだろう。
そう、人が視認できる三次元では二人はただ相対しているだけ。しかし神の領域ともいえる二十七次元では熾烈な攻防が繰り広げられていた。パスタの概念生命体と、カレーの概念生命体の激しい戦いが。
パスタ概念体が世界をパスタで満たせば、それを上書きするようにカレー概念体がルーの海でその世界を塗りつぶす。その海から火山が爆発するようにパスタが吹き上がれば、それを叩き落とすように牛肉が隕石のように降り注ぐ。
パスタ概念体が動くたびに世界は三度崩壊し、カレー概念体が蠢くたびにまた世界の形は変わる。それは人が認識できない領域での世界改革。赤外線を見ることが出来ないように、人の知覚を超えた概念体同士の攻防戦。書き変わると同時に上書きされ、そのたびに人の認識はわずかに入れ替わる。カレーが至高か、パスタが最上か。その天秤は一秒ごとに三千四百六十八回揺れていた。
三千五百二十三万七千八百九十五回目の世界改革の後に、ヴィハーンが膝をつく。時間にすれば数秒のにらみ合い。しかしその間にパスタ概念体とカレー概念体は――
「パスタカレー……か、見事な折衷案だ」
二つの概念体は手を取り合い、アンジェリカは皿にその結果を示した。カレーのルーが乗った、カルボラーナ。
「はい。如何にパスタにカレーを絡ませるか。それが議題でした。つるつるのパスタとカレーは絡み合わない。
ですが麺の茹で具合を変えて、さらには生命の根幹である卵を混ぜることで絡み度合いを変化させました」
「見事。打ち勝つのではなく、取り込むとは。やはり時代を作るのは、若者という事か……! 我が全身全霊(カレー)、ここに敗れたり!」
崩れ落ちるヴィハーン。だが勝者たるアンジェリカは悲しげな眼でそれを見る。
「貴方もまた我が友(パスタ)。願わくば、共に歩みたかった……」
祈るアンジェリカの頬を、涙が一筋流れ落ちた。
●戦い終わり――
かくして、カレー五重塔を無事攻略した自由騎士達。
「また来いよー」
五重塔のカレー伝承者達は手を振って自由騎士達を見送る。よくわからない戦いだったが、全部カレーが生み出したパッションだったのだろう。どくどくのトンチキシナリオだしね!
いい汗をかいた自由騎士達は、お土産をもって帰路につくのであった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『医者レスラー』
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『おもてなしの和菓子職人』
取得者: シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)
『いと堅き乙女に祝福を』
取得者: デボラ・ディートヘルム(CL3000511)
『カレーとパスタを繋ぐモノ』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『ザ・スピアマヌーバー』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
『央華ダンサー』
取得者: ルー・シェーファー(CL3000101)
取得者: 非時香・ツボミ(CL3000086)
『おもてなしの和菓子職人』
取得者: シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)
『いと堅き乙女に祝福を』
取得者: デボラ・ディートヘルム(CL3000511)
『カレーとパスタを繋ぐモノ』
取得者: アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)
『ザ・スピアマヌーバー』
取得者: ナバル・ジーロン(CL3000441)
『央華ダンサー』
取得者: ルー・シェーファー(CL3000101)
特殊成果
『香辛料各種』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
カテゴリ:アクセサリ
取得者:全員
†あとがき†
(一日置いてから、読み直した感想)
……………………なんだこれ?
……………………なんだこれ?
FL送付済