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【機国開戦】ファルスト陽動作戦

●
「キチキチキチ、ファルストにイ・ラプセル軍が?
なんともなんともなんともこれは!!!!!!!
随分性急で、随分、随分、雑なやり方をするもんだねぇえ!! チミぃ」
『セヴァリの火』ウィリアム・ギブスンが特徴的な笑いで、ファルスト周辺に駐屯する騎兵団に攻め込んできたイ・ラプセルについて雑感を述べる。
「まあ、そういうことか、そういうことだね、そういうこと!」
――ウィリアム・ギブスン。彼は蒸気開発局『セヴァリの火』の機関長である。
蒸気技術を国家レベルで開発する組織『セヴァリの火』。
ここで、数々の蒸気機械が生み出されるのだ。
蒸気機関車、蒸気船、蒸気飛空艇、などなど。例を上げることに枚挙に暇がないほどの発明を生み出したのがこの機関である。
そして――蒸気人型鎧装『プロメテウス』を開発したのが、彼、ウィリアム・ギブソンその人である。
先日より彼はやけにはしゃいでいた。
今まで解くことのできなかった数式が解明されたのだ。
その解明によってプロメテウスは大きく進化する。
「いいよイイヨーーーーー!!
そういうの我輩スキ、やつがれ、そういうのだいっすき! キチキチキチ」
ウィリアムは伸ばしすぎた前髪の向こうの目を輝かせる。
「だすよーーーーー!! ベインを!
僕様ちゃんの、チキチキ最新作! 『プロメテウス/ベイン』ちゃん起動だぁ!!
自由騎士たちをふっとばせー! いえいいえい! キチキチキチキチ」
ベルトに巻いた試験管を数本引っ張り出すとウィリアムは高く投げる。
おってガシャンと試験管が床に堕ちて割れ、得体の知れないカラフルな液体が床に広がりしゅうしゅうと白い煙をあげた。
「ああ、いいかい、これ、
完全に陽動だよ。そんなこともわかんないのぉ? 情報戦ってものは戦況をゆるがすんだぜ?
でもいいさ。プロメテウス/ベインちゃんのデビュー戦! うちの子が一番強いんだ! をみせるんだ!
揺動だからって放置はできない。っていうか放置したくないよね!!!!
だってベインちゃんのちからみせたいもん。いえい!
キチキチキチ。
メインはヘルメリアへの海路による侵入だ。コーリナーが使う経路なんてすでに調査済み。
そっちに戦力を集めて、叩こうぜ。自由騎士を海の藻屑にしてしまうのさ!
キーーーチキチキチキチキチ!」
●
「さて、諸君、我々の任務はファルスト区近郊に駐屯するヘルメリア国軍『歯車騎士団(ギア・ナイツ)』に攻め込んでもらう。
いわゆる陽動というやつだな。
コーリナー氏の情報によると、新型機が運び込まれているようだ」
君たちに向かって『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)が会議室の中央で語りかける。
「早速のヘルメリア兵との決戦だ。君たちも血湧き肉躍るだろう、はっはっは」
そんな冗句も含めるが目は笑っていない。
この作戦は今後に関わる重要なものだ。
「なあに、新型機を倒す必要はない。数分耐えて撤退する。
派手に暴れて、時間稼ぎに新型と蒸気騎士の情報収集をしてもらうぞ。
今回は私も君たちと出撃するぞ!
さて、作戦だが――」
●
「ギブスン博士はさすがの発明だぜぃ!
いいね、いいね!
ヒリヒリするぜ。超距離弾ってのは。こりゃあHAPPYにならざるを得ないってところだ! イエァ! 野郎ども! 巻き込まれんなよ!
ああ、奴隷どもは知らん、避けれるもんなら避けろよ! ゴミども!
ギアナイツの邪魔はするな、したら殺す。
俺ぁ、遠慮なんてしないからな!! BANG! BANG! BANG!!!!」
「キチキチキチ、ファルストにイ・ラプセル軍が?
なんともなんともなんともこれは!!!!!!!
随分性急で、随分、随分、雑なやり方をするもんだねぇえ!! チミぃ」
『セヴァリの火』ウィリアム・ギブスンが特徴的な笑いで、ファルスト周辺に駐屯する騎兵団に攻め込んできたイ・ラプセルについて雑感を述べる。
「まあ、そういうことか、そういうことだね、そういうこと!」
――ウィリアム・ギブスン。彼は蒸気開発局『セヴァリの火』の機関長である。
蒸気技術を国家レベルで開発する組織『セヴァリの火』。
ここで、数々の蒸気機械が生み出されるのだ。
蒸気機関車、蒸気船、蒸気飛空艇、などなど。例を上げることに枚挙に暇がないほどの発明を生み出したのがこの機関である。
そして――蒸気人型鎧装『プロメテウス』を開発したのが、彼、ウィリアム・ギブソンその人である。
先日より彼はやけにはしゃいでいた。
今まで解くことのできなかった数式が解明されたのだ。
その解明によってプロメテウスは大きく進化する。
「いいよイイヨーーーーー!!
そういうの我輩スキ、やつがれ、そういうのだいっすき! キチキチキチ」
ウィリアムは伸ばしすぎた前髪の向こうの目を輝かせる。
「だすよーーーーー!! ベインを!
僕様ちゃんの、チキチキ最新作! 『プロメテウス/ベイン』ちゃん起動だぁ!!
自由騎士たちをふっとばせー! いえいいえい! キチキチキチキチ」
ベルトに巻いた試験管を数本引っ張り出すとウィリアムは高く投げる。
おってガシャンと試験管が床に堕ちて割れ、得体の知れないカラフルな液体が床に広がりしゅうしゅうと白い煙をあげた。
「ああ、いいかい、これ、
完全に陽動だよ。そんなこともわかんないのぉ? 情報戦ってものは戦況をゆるがすんだぜ?
でもいいさ。プロメテウス/ベインちゃんのデビュー戦! うちの子が一番強いんだ! をみせるんだ!
揺動だからって放置はできない。っていうか放置したくないよね!!!!
だってベインちゃんのちからみせたいもん。いえい!
キチキチキチ。
メインはヘルメリアへの海路による侵入だ。コーリナーが使う経路なんてすでに調査済み。
そっちに戦力を集めて、叩こうぜ。自由騎士を海の藻屑にしてしまうのさ!
キーーーチキチキチキチキチ!」
●
「さて、諸君、我々の任務はファルスト区近郊に駐屯するヘルメリア国軍『歯車騎士団(ギア・ナイツ)』に攻め込んでもらう。
いわゆる陽動というやつだな。
コーリナー氏の情報によると、新型機が運び込まれているようだ」
君たちに向かって『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)が会議室の中央で語りかける。
「早速のヘルメリア兵との決戦だ。君たちも血湧き肉躍るだろう、はっはっは」
そんな冗句も含めるが目は笑っていない。
この作戦は今後に関わる重要なものだ。
「なあに、新型機を倒す必要はない。数分耐えて撤退する。
派手に暴れて、時間稼ぎに新型と蒸気騎士の情報収集をしてもらうぞ。
今回は私も君たちと出撃するぞ!
さて、作戦だが――」
●
「ギブスン博士はさすがの発明だぜぃ!
いいね、いいね!
ヒリヒリするぜ。超距離弾ってのは。こりゃあHAPPYにならざるを得ないってところだ! イエァ! 野郎ども! 巻き込まれんなよ!
ああ、奴隷どもは知らん、避けれるもんなら避けろよ! ゴミども!
ギアナイツの邪魔はするな、したら殺す。
俺ぁ、遠慮なんてしないからな!! BANG! BANG! BANG!!!!」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.5分間(30ターン)耐え、撤退する。
ねこたぢまです。
決戦の準備のための陽動作戦です。
この作戦にOPにでているウィリアム・ギブスン氏は出てきません。本国で紅茶をたしなみながらベインちゃんの活躍の報を待っています。
■ロケーション
ファルスト周辺に駐屯するへルメリア軍と開戦してきてください。
山岳地帯ではありますが、比較的平坦な場所ですので動きにくくはありません。
派手に戦うために、PCには20人ずつの中隊を与えられています。基本的に言うことはききますので、貴方は中隊長として、彼らにも指揮をしてください。指揮がない場合は邪魔にならないように戦いますが、死亡率が大きく跳ね上がります。
なおオラクルは隊に数名、80%は非オラクルの兵士になります。
彼らの生死については問いません。
皆様のような強さはアリませんし、フラグメント復活はすることができません。
バスター4人 ルクタートル3人 マギアス4人 ドクター3人 レンジャー1人 ガーディアン2人 ガンナー3人がうちわけになります。
副隊長つくったり、名前つけてあげたり、中隊名をつけてあげたり、既知設定であったりしても構いません。ドラマティックに盛り上げてくれると思います。
同行 フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)
かなり強い軍事顧問です。彼の指揮にあわせれば、通常火力、および防御力が10%向上します。
彼の作戦は
まず下記戦団と対戦するため、チームを3つに分けて、ひとつめ(三個中隊)はAC団の抑え、ふたつめ(三個中隊)はBD団の抑えをしてもらいます。
その隙をついて、プロメテウス/ベインを有するF団に接触し、情報を得るのがフレデリックと共に同行するみっつめ(二個中隊)のチームになります。
おおよそ5分間(30ターン)戦闘をしたら撤退します。
ひとつめ、ふたつめのチームはその撤退ルートも視野にいれて行動してもらうというのが彼の作戦です。
便宜上 一つ目がA班、2つ目がB班、3つ目がC班になりますので、彼の作戦に従う場合はご自身の班名をプレイイングにいれてください。
もちろんこの作戦に従っても構いませんし、違う新しい作戦を組み立てても構いません。
その場合彼の指揮ではなくなりますので、火力、防御力アップの恩恵はありません。
PCが作戦を立案するのであれば、フレデリックはその作戦に従います。その場合ある程度の捨て石としての運用も構わないと言っています。
チーム分けの数も自由で構いません。(指揮する隊員の数字を変えることはできません。1PCにつき20名+本人の一個中隊という単位で行動してください)
■エネミー
F
A B
C D
向かってこのような隊列を汲んでいます。PCはCD側から介入いたします。
接触時には彼我は30mほど離れています。この地点からでもプロメテウス/ベインの砲撃は届きます。
A団にはC団を支援する亜人奴隷の兵站兵が居ます。人数は40人ほど
基本的にヘルメリア兵に魔導職(マギウス、ドクター、ネクロマンサー、レンジャー、アルケミーなど)はいませんが他国から連れ去られた亜人の奴隷には魔導を使えるものが存在します。
数人のドクター、マギウスの他に改造された亜人キジンなどバランスよく配備されています。それほど強いわけではありません。基本的に後衛です。
B団も同じくD団を支援する亜人の兵站兵です。人数は50人ほど。
A団と同じような配備になります。
C団
寄りすぐりの歯車騎士団の「蒸気騎士」が12人居ます。
練度はかなり高いです。
『クイーンオブハート』と呼ばれる魔術を遮るコーティングと、『マーチラビット』と呼ばれる多段炸裂弾(遠距離範囲・三連撃・バーン2)を持つことが分かっています。また、他にも武装を持っている可能性があります。前衛で行動します。
D団
同じく寄りすぐりの歯車騎士団の「蒸気騎士」が10人居ます。
C団よりは少し練度は低めです。
『クイーンオブハート』と呼ばれる魔術を遮るコーティングと、『マーチラビット』と呼ばれる多段炸裂弾(遠距離範囲・三連撃・バーン2)を持つことが分かっています。また、他にも武装を持っている可能性があります。前衛で行動します。
F
AB団の後ろ20mにプロメテウス/ベインが配備されています。
新型のプロメテウスで、蒸気レールガンで長距離砲を撃つことができます。戦闘開始から2ターンに1度、遠距離範囲攻撃の蒸気レール砲をランダムに打ち込んできます。景気よくどっかんどっかん撃ってきます。
A~D攻撃中に近づいてくることはありません。移動はできますが、基本固定砲台として運用されています。
A、B団周辺であれば、兵站兵がいたところで撃ってきます。兵站兵が死んだら死んだで別に構いません。
蒸気レールガンは21m以上離れていたらオラクルには基本命中しませんが、非オラクルには普通に命中します。
オラクルのそばに非オラクルを近づけて当たりにくいようにすることは可能ですが不幸な事故がおこる可能性はないとはいえません。
逆に非オラクルを固めて避雷針とすることも可能です。
高ダメージ、二連撃、バーン2、グラヴィティ2の効果があり、命中率はそれなりに高いです。
全体で、Fに向かうには、A~D団を各団ごとに30%以上損耗させなくてはいけません。
ACお呼びBDに対して3個中隊以上を牽制として配備することで、残りの中隊はFに向かうことができます。
その場合、モブ兵士の死亡率は跳ね上がります。
(フレデリックの作戦はこちらになります)
20m近接時には全体砲撃攻撃(高火力/グラヴィティ2/バーン2/アンコントロール2)や、一撃でHPの半分を奪うような単体攻撃を仕掛けてきます(致命あり)。(モブの場合は即死級のダメージになります)
この攻撃の情報は20m以内に入ってきたところで確認できます。
また、Fと必ずしも戦闘する必要はありません。
なおこのプロメテウス/ベインに搭乗しているのはレイ・ブラッドベリ二等と呼ばれる兵士です。バトルスタイルはガンナー。ちょっぴりトリガーハッピーな愉快なお兄さんです。
ガンナーのランク2までのスキルも使うことができます。ガンナースキルと同時にプロメテウスのスキルを使うことはありません。
★特殊ルール
名声が100以上の方であれば、同行する兵士たちの士気があがり、火力が少し向上します。
名声が300以上の方であれば、同行する兵士たちの士気が大きく上がり火力とHPがそこそこ向上します。また敵兵に名前を知られていることもあり、積極的に攻撃されることになります。
基本的に兵士は言うことはなんでもききます。
味方全体の損耗率が50%を超えた時点で、残り時間にかかわらずフレデリックは撤退進言します。その撤退進言については拒否はできません。
29ターン目以内に撤退が進言された場合は揺動失敗となり、決戦の戦力が向上します。
損耗については戦闘不能、もしくは死亡で損耗とカウントします。
戦闘不能者を下がらせる場合、移動させる人員も戦闘不能とみなします。
★『【機国開戦】ファルスト陽動作戦』と『【機国開戦】真一正義は此処に在り』は同時系列で起こっている為、合流できません。
その為、同一キャラクターにて両方に参加することができません。
両方の参加を確認した場合、参加を取り消し、其の費用は返却されません。(タイムスタンプの遅い方を取消致します)
予めご了承下さい。
※またこの依頼に参加されたPCは決戦に同時参加することができますが、累積ダメージはそのままに、回復されずに遅れて参戦することになります。戦闘不能判定であった場合は、HPが1/4の状態での参加になります。ご了承くださいませ。
決戦の準備のための陽動作戦です。
この作戦にOPにでているウィリアム・ギブスン氏は出てきません。本国で紅茶をたしなみながらベインちゃんの活躍の報を待っています。
■ロケーション
ファルスト周辺に駐屯するへルメリア軍と開戦してきてください。
山岳地帯ではありますが、比較的平坦な場所ですので動きにくくはありません。
派手に戦うために、PCには20人ずつの中隊を与えられています。基本的に言うことはききますので、貴方は中隊長として、彼らにも指揮をしてください。指揮がない場合は邪魔にならないように戦いますが、死亡率が大きく跳ね上がります。
なおオラクルは隊に数名、80%は非オラクルの兵士になります。
彼らの生死については問いません。
皆様のような強さはアリませんし、フラグメント復活はすることができません。
バスター4人 ルクタートル3人 マギアス4人 ドクター3人 レンジャー1人 ガーディアン2人 ガンナー3人がうちわけになります。
副隊長つくったり、名前つけてあげたり、中隊名をつけてあげたり、既知設定であったりしても構いません。ドラマティックに盛り上げてくれると思います。
同行 フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)
かなり強い軍事顧問です。彼の指揮にあわせれば、通常火力、および防御力が10%向上します。
彼の作戦は
まず下記戦団と対戦するため、チームを3つに分けて、ひとつめ(三個中隊)はAC団の抑え、ふたつめ(三個中隊)はBD団の抑えをしてもらいます。
その隙をついて、プロメテウス/ベインを有するF団に接触し、情報を得るのがフレデリックと共に同行するみっつめ(二個中隊)のチームになります。
おおよそ5分間(30ターン)戦闘をしたら撤退します。
ひとつめ、ふたつめのチームはその撤退ルートも視野にいれて行動してもらうというのが彼の作戦です。
便宜上 一つ目がA班、2つ目がB班、3つ目がC班になりますので、彼の作戦に従う場合はご自身の班名をプレイイングにいれてください。
もちろんこの作戦に従っても構いませんし、違う新しい作戦を組み立てても構いません。
その場合彼の指揮ではなくなりますので、火力、防御力アップの恩恵はありません。
PCが作戦を立案するのであれば、フレデリックはその作戦に従います。その場合ある程度の捨て石としての運用も構わないと言っています。
チーム分けの数も自由で構いません。(指揮する隊員の数字を変えることはできません。1PCにつき20名+本人の一個中隊という単位で行動してください)
■エネミー
F
A B
C D
向かってこのような隊列を汲んでいます。PCはCD側から介入いたします。
接触時には彼我は30mほど離れています。この地点からでもプロメテウス/ベインの砲撃は届きます。
A団にはC団を支援する亜人奴隷の兵站兵が居ます。人数は40人ほど
基本的にヘルメリア兵に魔導職(マギウス、ドクター、ネクロマンサー、レンジャー、アルケミーなど)はいませんが他国から連れ去られた亜人の奴隷には魔導を使えるものが存在します。
数人のドクター、マギウスの他に改造された亜人キジンなどバランスよく配備されています。それほど強いわけではありません。基本的に後衛です。
B団も同じくD団を支援する亜人の兵站兵です。人数は50人ほど。
A団と同じような配備になります。
C団
寄りすぐりの歯車騎士団の「蒸気騎士」が12人居ます。
練度はかなり高いです。
『クイーンオブハート』と呼ばれる魔術を遮るコーティングと、『マーチラビット』と呼ばれる多段炸裂弾(遠距離範囲・三連撃・バーン2)を持つことが分かっています。また、他にも武装を持っている可能性があります。前衛で行動します。
D団
同じく寄りすぐりの歯車騎士団の「蒸気騎士」が10人居ます。
C団よりは少し練度は低めです。
『クイーンオブハート』と呼ばれる魔術を遮るコーティングと、『マーチラビット』と呼ばれる多段炸裂弾(遠距離範囲・三連撃・バーン2)を持つことが分かっています。また、他にも武装を持っている可能性があります。前衛で行動します。
F
AB団の後ろ20mにプロメテウス/ベインが配備されています。
新型のプロメテウスで、蒸気レールガンで長距離砲を撃つことができます。戦闘開始から2ターンに1度、遠距離範囲攻撃の蒸気レール砲をランダムに打ち込んできます。景気よくどっかんどっかん撃ってきます。
A~D攻撃中に近づいてくることはありません。移動はできますが、基本固定砲台として運用されています。
A、B団周辺であれば、兵站兵がいたところで撃ってきます。兵站兵が死んだら死んだで別に構いません。
蒸気レールガンは21m以上離れていたらオラクルには基本命中しませんが、非オラクルには普通に命中します。
オラクルのそばに非オラクルを近づけて当たりにくいようにすることは可能ですが不幸な事故がおこる可能性はないとはいえません。
逆に非オラクルを固めて避雷針とすることも可能です。
高ダメージ、二連撃、バーン2、グラヴィティ2の効果があり、命中率はそれなりに高いです。
全体で、Fに向かうには、A~D団を各団ごとに30%以上損耗させなくてはいけません。
ACお呼びBDに対して3個中隊以上を牽制として配備することで、残りの中隊はFに向かうことができます。
その場合、モブ兵士の死亡率は跳ね上がります。
(フレデリックの作戦はこちらになります)
20m近接時には全体砲撃攻撃(高火力/グラヴィティ2/バーン2/アンコントロール2)や、一撃でHPの半分を奪うような単体攻撃を仕掛けてきます(致命あり)。(モブの場合は即死級のダメージになります)
この攻撃の情報は20m以内に入ってきたところで確認できます。
また、Fと必ずしも戦闘する必要はありません。
なおこのプロメテウス/ベインに搭乗しているのはレイ・ブラッドベリ二等と呼ばれる兵士です。バトルスタイルはガンナー。ちょっぴりトリガーハッピーな愉快なお兄さんです。
ガンナーのランク2までのスキルも使うことができます。ガンナースキルと同時にプロメテウスのスキルを使うことはありません。
★特殊ルール
名声が100以上の方であれば、同行する兵士たちの士気があがり、火力が少し向上します。
名声が300以上の方であれば、同行する兵士たちの士気が大きく上がり火力とHPがそこそこ向上します。また敵兵に名前を知られていることもあり、積極的に攻撃されることになります。
基本的に兵士は言うことはなんでもききます。
味方全体の損耗率が50%を超えた時点で、残り時間にかかわらずフレデリックは撤退進言します。その撤退進言については拒否はできません。
29ターン目以内に撤退が進言された場合は揺動失敗となり、決戦の戦力が向上します。
損耗については戦闘不能、もしくは死亡で損耗とカウントします。
戦闘不能者を下がらせる場合、移動させる人員も戦闘不能とみなします。
★『【機国開戦】ファルスト陽動作戦』と『【機国開戦】真一正義は此処に在り』は同時系列で起こっている為、合流できません。
その為、同一キャラクターにて両方に参加することができません。
両方の参加を確認した場合、参加を取り消し、其の費用は返却されません。(タイムスタンプの遅い方を取消致します)
予めご了承下さい。
※またこの依頼に参加されたPCは決戦に同時参加することができますが、累積ダメージはそのままに、回復されずに遅れて参戦することになります。戦闘不能判定であった場合は、HPが1/4の状態での参加になります。ご了承くださいませ。

状態
完了
完了
報酬マテリア
3個
7個
3個
3個




参加費
150LP [予約時+50LP]
150LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年06月25日
2019年06月25日
†メイン参加者 8人†
●
「ミハイロフ卿、隊列の提言を」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)の言葉に『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は頷いた。
テオドールの副官であるディートリヒが主に命じられまとめた提案書をフレデリックに渡す。その提案書に目を落としたフレデリックはそれで構わないと告げる。
「陽動とは言え、生きて帰りたいのは皆同じですからな」
テオドールの言葉にフレデリックは頷き、大きな声で全中隊に作戦要項を口にする。
「さあ、お前たちには今から長い5分間を戦ってもらうぞ。
なんせ俺たちは今から『死ににいく』……おっと口が滑ったな。どこで誰が耳をそばだてているかもわからない状況だ。バレてしまったら元も子もないな。はっはっは。
では作戦を繰り返す。
A班、ロジェ隊、セレスティ隊、鉄拳中隊は左翼の抑え、
B班、クランプトン隊、ベルヴァルド隊、アルカナム隊は右翼の抑え、
そして、C班のミステル隊とアラウンド隊は俺と一緒にプロメテウスに突っ込んでいき情報をできるかぎり得てくる。
いいか5分間だ。
5分以上の戦闘は禁止する。
A班とB班は退路の確保も忘れずに」
「持ち前の影の薄さを武器に、どんな戦場でも抜け目無く立ち回るで御座る」
「自慢の筋肉で敵はイチコロじゃ!」
「私様こそヘルセフォーネ。通称ういっち。漆黒の闇に呪われしマザリモノよ、後衛は私様が仕切るわ。ついてきなさい」
「あわわ、作戦をきいてください~」
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は濃いメンツに半ば振り回される形で指示を出す。
隊内での作戦を伝えたフーリィンはまっすぐに部下達を見つめる。この一癖も二癖もあるみんなは一人ずつでは微力かもしれない。それでもみんなで力を合わせることができれば山となるのだ。
だから――。
「今回も上手くやって、全員無事に帰りましょうね!」
そう、フーリィンは『お願い』した。
「我が精神は『前進と不倒』 復唱!」
「我が精神は『前進と不倒』!!!!」
「我が仕儀は『肉弾で殴れ』 復唱!」
「我が仕儀は『肉弾で殴れ』!!!!」
「我が務めは『血路を拓け』 復唱!」
「我が務めは『血路を拓け』!!!!」
女隊長だと舐めてくるようなイキのいい戦士を求めた『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)はここに来るまでに鉄拳制裁にて隊員たちと交流を果たしていた。
とは言え、彼女の名声は女とは言え今やイ・ラプセルの英雄とも称される程になっている。
「それにしても女に務まるんですかい? 中隊長が?」
なんて笑いながらできるとわかっていてわざとヤジを飛ばす隊員にシノピリカは笑顔で「よし、気に入ったぞ、貴様。我が家に来て妹と付き合う事を許可する! その前にその前にまずはワシのケツと右手に挨拶せよ!」と返す。
「あんたの妹と付き合う前に俺の大事なモンが折れちまうじゃねーか!」
氏素性も種族も外見も問わない。そんな下品な冗句を言うような素行の悪いものでも構わない。
それこそが我が国らしさとシノピリカはこの中隊を誇りに思う。
そんな彼らをほんとにひどいんだからと笑うのは『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)。
「私たちは、彼らの支援を中心に動きます」
アリアの指示を待つ兵士たちの中には、過去アリアの窮地を救った騎士がそれなりにいる。その人達の前に立つというのは面映い気持ちでいっぱいだ。アリアにとっての英雄たちは今や、アリアを英雄として誇らしく想っている。
だから、だからこそ。
「私が指示できることは一つです。
みんな命を大事にしてください」
それは願いと祈り。
葬送の騎士は彼らを見送りたくはない。
「アリアのお嬢ちゃん、随分と立派になったな」
そういって頭に大きな手を置くのはかつて自らを守ってくれた騎士。今ではレンジャーにそのバトルスタイルを変えている、この隊の副官。
「ちょっと、頭を撫でないでください。私が中隊長だっていう面目がですね」
「はは、それは失礼中隊長殿」
レンジャーは文句も物ともせずなんども頭をぽんぽんと撫でた。
「副隊長」
「なんだい? お嬢ちゃん」
「絶対に死なないでくださいね」
「僕は隊長っていう柄ではないというか」
「ダメです、アダムさん」
隊長には向いていないと『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)が頬に汗を浮かべる。
副隊長であるガンナーのレイリア・パーソンが大きくあけた胸元を見せつけるかのように両手を腰に当てて近づいてくるのをじりじりとアダムは後ろに後退していく。
「だって、僕みたいな小僧が指揮なんて」
「貴方の指揮だからこそ私達は戦えるんです」
それはイ・ラプセルの自由騎士として、そして同時にイ・ラプセルの英雄として期待される彼へののしかかる重さそのものだ。
「えっと、僕は前に出るほうが得意だし、それに後衛の貴女が状況を把握して指示をしてくれるほうがいいとおもうんだ……えっと、うん、責任は全部僕が取るから」
「まあ、金獅子のような貴方が前線で戦うというのは士気があがりますが……それでも」
「だから、この中隊の指示を頼んだよ。僕は君を信じてる。だから君も僕を信じてほしい!」
真っ直ぐな目でいわれてしまえばレイリアも苦笑しながら頷くしかない。
「仕方ない人ですね。死なないでくださいね」
「それはこっちのセリフだよ。……この戦いは負け戦みたいなものだ。
ならば少しでもマシな負け戦にしよう」
「どうしました、テオドール様? お腹でも痛くなりましたか?」
「ディル、私をなんだとおもっているのだ?」
「奥様(未満)にメロメロのおっさんでございます」
「いや、いい。今回の中隊はわがままをいって我が家の従者でまとめたが……」
テオドールの脳裏につい最近の怪しげな魔術師に見せられた『死』が思い浮かぶ。未来の死かもしれない、そうじゃないかもしれない。
しかし状況が似ているのも確かだ。一抹の不安を覚えてしまうのは否めない。
「ええ、腕利きのものを集めました。不満がありますか?」
「お前の口の悪さが不満ではあるがそうではない。気にしないでくれ。ちょっと感傷的になっていたようだ」
「奥様(未満)のお声が聞きたいのですか?」
「本当にお前は私をなんだとおもっているのだ」
そんな軽口もきっと緊張している主人にリラックスさせようと慮ったものであろうとテオドールは笑う。
「いいか、今回の役目はあくまで牽制とサポートだ。生き延びる事を優先し耐えてくれ、死んだらディルに叱られてしまうぞ」
そう中隊の者たちに言えば彼らはそれは困ったものですと笑った。
「これは人生で最も長い5分になるだろうな。まさか俺が中隊指揮をするとは」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)が顎に手をあててつぶやく。
「緊張されていますか?」
初対面である隊員はリュリュに尋ねる。少々距離感に迷ってはいるようであるが信頼できる仲間だ。
「まあ少しはそうかもしれない」
他の隊長に比べて自分は一歩劣ると想っているリュリュの内心は不安でいっぱいだ。ましてや自分の指揮のもと誰かが死んでしまう……などと思えば恐怖で足が竦む。
「安心してください。我らロジェ隊はあなたのために死も恐れません」
「ふざけるな!」
その隊員の言葉にリュリュは激高する。自分なんかのために死んでもいいなんて言うな。しかしリュリュはすぐに気を取り直す。
「すまなかった。気にしないでくれ。俺が回復を密にするんだ。お前たちを死なせはしない」
一瞬「仲間の戦死」という恐怖を見抜かれたと思ってしまった。だから言葉が荒くなった。中隊長がこんなのでどうする?
「気になさらないでください。そんな貴方だからこそ、私達は従いたいとおもうのですから」
「ほら、もう一度、プランの確認をするぞ!」
リュリュは少し朱くなった頬をみられまいと顔を書類で隠した。
イ・ラプセルに渡ってきてはや一年。
すべてを奪ったあの炎の日から13年――いや14年だったか。
『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)の願いを叶えるための足がかりがやっとできたのだ。
とはいえここはただのスタートラインでしか無い。
「緊張されていますか?」
褐色肌のソラビトが尋ねる。スー・ナサニエル。ミステル隊の副隊長の女性だ。
「まあしてないって言えば嘘になるな」
「ギネヴィアとダンが気にしていました」
「マイケルは?」
「あちらで腹ごしらえを」
「あいつ、ほんとにキモが座ってるな」
隊員の様子を聞き、少しだけ呆れてザルクの緊張がほぐれる。
「勝つぞ、と言えないのが少々不満だがな」
「ええ、まあ。今回はそうですね、アダムさんの言葉をかりれば負け戦です」
「負け戦か。俺は何度負けてきたんだろうな」
そう言って目を細めるザルクの眉間がスーの指先に弾かれる。
「あいてっ」
「隊長、そんな眉間にシワを寄せていたら他の隊員にも隊長の不安が伝染しますよ」
その言葉にザルクは苦虫を噛み潰したような顔になりお前のそういうところが嫌いだと嘯く。
「私は隊長のそんなところは嫌いではありませんよ。負け戦いいじゃないですか。この一手が紡ぐ未来がどうなるかは私にはわかりませんが貴方の願いが叶うといいと思っています」
我が神の道を邪魔するものはすべて――ハイジョする。
普段のカソックを脱ぎ捨て、鎧をまとった『空に舞う黒騎士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)は狂戦士に変わる。
それは怒り。愛する女神に鉾を構えようとするその不敬に対する純粋な怒り。
「AAaaAAaahHHhhh!!」
怒りは咆哮に変わる。
『あだむノ 味方ニ チカラ 貸セ
あだむノ 指示 聞ケ』
テレパスを有する副官であるドクターは頷く。
「ナイトオウル様、ですがあの作戦規範は……」
『殺セ 殺セ 殺セ 殺セ 殺セ
神ヲ 名乗ル 不敬ナ 邪神ノ 尖兵 殺セ』
その答えに副官は黙った。
●
「よし! 前方にヘルメリア兵確認! みんな! 行くぞ!」
フレデリックの号令にみな『応』と答える。
彼我の距離は30メートルほど。彼らヘルメリアの兵は前には突っ込んではこない。ならば突っ込んでいくしかない。
「我はイ・ラプセルの騎士アダム・クランプトン!
同士よ! 騎士達よ! 我らの名を吼えよ!
同士よ! 騎士達よ! 我らの神を吼えよ!」
誰よりも前にでたアダムは獅子の咆哮をあげる。
その名乗りは、1819年、6月――機国との開戦の号砲となる。
「吼えよ! 吼えよ! 吼えよ!
眼前に如何なる敵が立ち塞がろうとも!
我らの誇りが敵を穿つ!」
レイリアはその勇ましい若獅子を眩しそうな目で見つめ中隊に指示をだしていく。
彼らは慎重に距離を縮める。前情報によればこの場でもすでに蒸気レールガン『クイーンランサー』 のレンジ内である。
接敵直後にはクイーンランサーはこない。となれば次のターンには砲撃が来ることになるだろう。
全速移動で縮められる距離は20メートルではあるが、彼らは回避と防御を優先した作戦を立てたため、防御スキルを使用するためその距離は10メートルに半減する。初手で彼らができることは遠距離攻撃で、敵ヘルメリアの兵団と打ち合える距離にまで近づくことだ。
プロメテウス/ベインとの距離は40m強。オラクルならばクイーンランサーの一撃が被弾することはオラクルの加護があればないだろう。
「フーリィン!! 後方部隊に砲撃がっ!!」
砲撃の気配を感知したリュリュが叫ぶ。
「ゴリさん!!」
グレゴリオにフーリィンが叫べばグレゴリオはフーリィンを護る。
しかして部隊の80%は非オラクルなのである。初撃がこちらのレンジ外から飛んでくることに対する対策が練れていたとは言いづらい。
充填されたクイーンランサーの電磁誘導(ローレンツ力)は蒸気の圧力によって加速する。
「FIRE!!」
プロメテウス/ベインに搭乗するレイ・ブラッドベリ二等が景気よくトリガーを弾けば超高速の弾丸が長く巨大なクイーンランサーの砲塔から自由騎士たちの後衛を狙い解き放たれた。解き放たれた弾丸は周囲に飛び散りながら一撃二撃と犠牲者を穿つ。
「ひゃーーほう!! やっべぇえ!! すっげーじゃんベインちゃん!」
クイーンランサーが解き放たれたその先――グレゴリオに護られたフーリィンの直ぐ側、数人の兵士たちが腹部から大量の血を流して倒れている。彼らはこれ以上戦うことは不可能だろう。
「ゴリさん、私には加護があります。私じゃない誰かをまもってくれたなら!」
「それでもワシは隊長であるお前さんを護ることを選ぶぞ。おぬしはワシらの柱だからの」
フーリィンの目に涙が浮かぶ。
かろうじて息がある程度の彼らをみた自由騎士はみな唇を噛んだ。
フーリィンは回復をさせようと下がろうとするのをグレゴリオが止める。
「ゴリさん」
「ワシらにはやることがある。彼らはもう無理じゃ。あきらめい」
「だってあの人は今度娘が連れてくる男を殴る為に絶対生還するって言ってました!」
「隊長、お前さんが彼らの命をつなぐために下がればどうなるかわかるじゃろ? おまえさんは回復しなくてはならん。戦場を支えるヒーラーじゃろ」
その言葉にフーリィンは血を流すほどに唇を噛み締める。わかっている。自分の役目がどれほど大事なものであるかは。
放置しておけばやがて銃弾をうけた彼らは死ぬことになるだろう。しかし、介抱するためにさがらせれば命は繋がるかもしれない。そのためには人員が必要だ。戦闘不能になった人員をどうするか。それは誰も意識していなかったことであった。
故にけが人は放置するしかない。それがどれだけ残酷なことであったとしても。
初動からの損耗に自由騎士たちは動揺するもそれでもこれ以上の損耗をさせないと前に進む。彼らはまだやっと接敵したばかりなのだから。
「鴨撃ち気分でYeah, whoo!!!! おい、てめーら戦え! 祭りだぜ! バンバンshooting! エキサイティン!!! Yeah!」
●
「わしらがC班の道を開く!!」
自由騎士たちはシノピリカとアダムを先頭にA班とB班で蜂矢の陣でもって向かう。
接敵した彼ら自由騎士と各中隊の兵士たちの士気は高い。
それも英雄と呼ばれる者たちに指揮されているからだろう。
ザルクの脳裏にはあのレジスタンスごと故郷を焼かれた炎の日のことが思い出される。当時は人の形すらろくに取れていなかったプロメテウスの初期型と、目の前の最新型であるベインは全く違うものだ。
しかし、プロメテウスの存在にあの時の怒りは色鮮やかに蘇ってくる。
当時レジスタンスに対して、抑止力として投入されたプロメテウスは多大なる火力で故郷を焼いた。
ヒトに対して過剰すぎるその火力は出来上がったばかりのプロメテウスのデモンストレーションでしかなかったと今ならよく分かる。
試し撃ち――それだけで焼かれたのだ。俺の仲間は――。
「みんな生きて帰るのです!!」
ザルクの少し前で先鋒を務めるシノピリカの鉄拳中隊の補佐をするアリアの声でザルクは我にかえる。
そうだ。そのとおりだ。怒りに目を眩ませてはいけない。接敵するまでは安全策でいくつもりだ。
ベインとの距離はまだ30メートル以上ある。射程レンジにはまだ遠い。
「オラクルのものは非オラクルの弾除けを重視じゃ。
体力の低いものは、ワシを盾にしてもいい! とにかくあのプロメテウスの銃弾には当たらぬようにな! 威力は……見たじゃろう」
敵前衛に穴を開けるべくシノピリカは何度目かのバーチカルブロウを放つ。
「左翼は緋文字、右翼はアイスコフィン! 副官は観察お願いします!」
アリアは熱暴走や蒸気熱の低下による蒸気騎士の低下を狙うが、『クイーンオブハート』と呼ばれる魔導を遮るコーティングに阻まれる。
まさにこれが魔導から生み出される熱と冷気に対する対策にほかならないのだろう。それがわかっただけでも『情報』としては有用だ。
蒸気を利用したその技術において熱は重要な意味がある。それ故のコーティングなのだ。
タンゴのステップを踏みながらアリアは思う。
「マギアスは温存! シノピリカさんにあわせて戦線を捻じ開けて! 僕たちは蒸気騎士に向かう!」
アダムは最前線で叫ぶ。
対抗するはヘルメリアの奴隷兵。
フリーエンジンと協力体制を敷いている現状アダムは彼ら奴隷兵もまた救うべき対象であると思う。
また甘いことを言うやつだといわれるのだろうと思う。
だけれどもそれはアダムの信念だ。口を開けようとした瞬間シノピリカの声が聞こえる。
「ヘルメリアに虐げられし者たちよ! 我が名はシノピリカ・ゼッペロン!!
我が方に奴隷兵はおらぬ! 降るなら今の内ぞ!」
その声にアダムはこんな時だというのに笑みが溢れる。同じように思うものが一人ではなかったことが心強かった。
「僕はアダム・クランプトンだ!!
君たち奴隷兵を無碍には扱わない!! 投降するなら受け入れる!」
その言葉に奴隷兵の顔色が変わる。
「おいおい! 蒸気騎士どもよ、そいつらがイ・ラプセルの英雄様みたいだぜ? 首をとればプロメテウスのパイロットに格上げされるんじゃねえのか?!!」
花形職であるプロメテウスのパイロットに憧れる兵士は決して少なくはない。蒸気騎士たちの士気があがる。
レイは改めて自由騎士をプロメテウス内のスコープで見渡す。
「おいおい、よく見れば葬送の騎士もいるじゃねえか。それに、ヘルメリアの裏切り者までいるのか。なあなあ、なあ? それにイ・ラプセルの騎士団長殿まで。どうした? ボーナスステージかょう? 撃て撃て!! ぶっころせ!!!」
プロメテウスのコンソールをバンバン叩きながらレイが嬉しそうに騒ぐ。
「ていうかよ、イ・ラプセルの騎士は上司の眼の前で部下をヘッドハンティングなんてお行儀が悪くねーか?」
言って、レイは砲塔を奴隷兵を掻き分け、前に進むシノピリカに向けた。
「まずい! ゼッペロン! 狙われている!」
リュリュが叫ぶと同時に回復の層を厚くせよと騎士たちに命令をかける。フーリィンも合わせて指示をかける。
アリアは息を飲む。
アダムはやめろと叫ぶ。
テオドールは舌打ちをする。
ザルクとナイトオウルはアイコンタクトで回復手の援護に回る。
ドォン
プロメテウス/ベインのクイーンランサーはシノピリカを中心に二度炸裂する。
「くっ……」
「ったく、ゼッペロン隊長の妹と付き合うつもりだったのにな」
シノピリカを庇い一人の兵士が斃れた。
周囲の奴隷兵も巻沿いをくらいクイーンランサーに貫かれ倒れ伏していた。
「貴様……!!」
「シノピリカさん!」
アリアが叫ぶ。
シノピリカは額から流れる血を拭い、失われた命に一言よくやったと言い前を向く。ここで折れるわけにはいかない。彼の献身のおかげで自分はこの程度の怪我ですんだのだから。
「ふざけるな! 仲間を何だとおもっているんだ!」
アダムが激高しレイに向かって叫ぶ。
「ああ? 仲間ぁ? なにいってんだ坊や、消耗品がゴミになりそうだったから片付けただけじゃねえか。
いいか? 奴隷ども。あいつらに与するなら殺す。逃げても殺す! いいかお前らみたいなクズでも国のために役にたてるんだ。国の役にたって死ぬか、叶わぬ夢にすがって死ぬか、
お前らはそのどっちかだ!! はーーーっははっは! たのしいよな! 戦場は!」
「この……!!!」
アリアもまた怒りに歩を進めようとする。
一瞬絆されそうになった奴隷兵たちは絶望に瞳を曇らせ、各々の武器を自由騎士に向かって構える。
消耗品である彼らには退路も進路もどちらも存在などしていないのだ。
「アリア、アダム。奴隷を消耗品として使い捨てる、これがヘルメリアだ」
ザルクの声もまた怒りに震えていた。
むしろ自分の復讐相手がこんな外道で清々しさすら感じて愉しくなる。ヘルメリアという国は潰されるべきだ。
「AaaAArRrrgGhHhHhHh!!」
許せない許せない、
悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ
悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ
このような悪魔の傀儡が存在することがナイトオウルには悔しくて仕方なかった。
こんなクズどもが我が愛しの女神の笑みを曇らせるのだ。
殺ス殺ス殺ス。
「ディル、戦線を左右に両断する! ミステル卿たちを一秒でも早くプロメテウスに到達させる!」
テオドールの冷静な言葉に激高していた彼らは冷静になる。
フーリィンとリュリュは回復の層を厚くし、前衛で後衛を護らせる。
アリアとテオドール隊の前衛たちがノックバックを駆使し、アダム隊とシノピリカ隊を最前線に向かわせるべくアリアはタンゴによる足止め、テオドールはテロメーアによる段幕で前衛を支援する。
魔導は効きづらいが目隠しにはなる。
「思うことはあるだろう。しかし今は考える暇など無いぞ!」
テオドールは皆に強く言い聞かせる。時間はまだ2分を過ぎたところだ。後半分以上の時間が残っている。損耗度はおおよそ20%といったところか。まだ余裕があるとはいえ、その人員が失われたことに歯ぎしりをしたい気持ちでいっぱいだ。
この作戦では損耗率が高くなることはわかっていた。わかっていてもやるせない想いはどうしようもない。
フレドリック卿はいつもこんな想いをしながら国防騎士達を死地に向かわせていたのだろうか。テオドールは少し眉を顰めた。
「そのとおりだ! 糞っ、まったく糞だ」
吐き捨てるようにいってリュリュは前を見据える。
戦闘が激化するごとに死んでほしくないモノたちは死んでいく。これが戦場だとは理解してる。
しかして理解しても、理不尽に命が失われることがリュリュには納得ができない。
ここからがヒーラーの――自分は厳密にはヒーラーではないがそんなこと関係ない――踏ん張りどころだ。けが人は増える一方だ。恐怖を怒りに変えて青年は指示を出し続ける。
「シノピリカ・ゼッペロン! 俺のためにしねぇ!!」
アリアとテオドール達のおかげで蒸気騎士に対して突出することができたシノピリカの隊に蒸気騎士が飛び込んでくる。
左翼をみればアダムも似たような状態だった。
それでいい、彼ら蒸気騎士の気を惹くのが最前列であるシノピリカとアダムの役目だ。
「蒸気騎士よ!
我が拳をこそ見知り置け!
シノピリカの首取って、手柄にせよ!」
シノピリカは蒸気騎士たちを挑発する。
「笑え! もっと笑え! 歯をむいて笑え!
散り際でこそ、笑え!!」
そして中隊の兵士たちを鼓舞する。先程失った兵士に報いるためにも。笑って敵を倒すのだ。
「型式M-H377・加圧式加速機構! マッドハッター起動!」
眼の前の蒸気騎士が目に見えて加速する。
「その調子であなた方の手の内をみせてください」
回り込んできた蒸気騎士からの痛打をうけつつ、アリアは観察する。一つでも多く情報を得るために。
やがて戦場は最前線の両雄により分断された。
その中心がフレデリックとザルク、ナイトオウルの隊の花道となるのだ。
当然ながら蒸気騎士たちが、プロメテウスに向かう彼らを追おうとする。
「あちらにはいかせません」
アリアは足止めのステップを踏む。しかし、強化をしていた蒸気騎士はその足を止めない。
「……!! 浮遊の効果もあるみたいですね……」
「大丈夫じゃ! わしらにまかせよ!」
「アリアさんは奴隷……いいや、亜人の兵たちを足止めして!」
すぐさま状況を察したシノピリカの隊とアダムの隊が急ぎ蒸気騎士達を阻む。
「AAaaAAaahHHhhh!!」
C班はついに、プロメテウス/ベインを攻撃できるレンジ内に踏み込むことが可能になった。
ナイトオウルは奇声を発し空へ飛び立とうとする。
ヘルメリア兵の遠距離攻撃の届かない高高度にまで飛び立てばクイーンランサーの射程を自分に向けられると思ったからである。
しかしそれは副官に止められる。
『放セ』
その言葉に副官は従わない。
当然だ。単騎で空に飛び上がれば上昇している間ナイトオウルは無防備になる。鴨撃ちの的を無視するほどヘルメリア兵は無能ではない。よしんば21m以上の高度に上がれたとしても今度はオラクルの加護がある。当たらない的をクイーンランサーで狙うほどにガンナーであるレイは愚かではない。
十分距離に近接されたら、他の自由騎士を全体攻撃で狙うほうが効率が良いのだ。
影狼は最大40メートルの射程距離がある。しかしそれは20メートル移動して更に遠距離攻撃の20メートルを足した期待値である。 敵の攻撃の当たらない21m以上の上空から撃とうにも射程範囲の20mでは射程がたりない。影狼は移動せずに射撃することは可能ではあるが、レンジ内から攻撃したあと敵のレンジ外に移動はできないので、いわゆる引き撃ちは不可能である。ゆえに、一方的な空からの射撃をすることはできない。
攻撃をするには重心を整えなればならない。動いたままの状態では重心がぶれ、十全な狙いが取れないだろう。ナイトオウルもそれは理解している。
影狼は特殊な歩法によりその重心のブレを解消している。だが攻撃した後の体制でその歩法はできない。
副官の説明にナイトオウルは作戦を切り替えることにする。
「Grrrrrrrrr!!」
その叫びに秘められた怒号の意味を理解できるものは副官一人だけであった。
「悪いがみんな覚悟してくれ、今から――地獄に踏み入るぞ」
ザルクが他班に派遣したドクターは今や満身創痍であった。それでもなお自分は彼らを死地に向かわせる。
「気負うな、ザルク、若造は俺の後ろについてこればいい」
「はっ、ミハイロフ卿、俺はこの日をまっていたんだ」
ザルクはパイロットであるレイをパラライズショットで狙おうとするが完全密閉構造であるプロメテウスの内部を狙うことはできない。しかしものは試しとプロメテウス本体に打ち込む。
手応えはあった。しかしプロメテウスがその動きをとめることはない。ごうん、と重々しい音がプロメテウスの内部から響き、なんらかの機能が可動しているように思える。
「機械に行動不能系は効かない、というよりはBSを回復させるリペアシステムが走っているようだな」
額から汗をながし、フレデリックが数々の資料から類推された所見を述べる。
「くそ、厄介だな!」
「AAAAAhhhhhhh!!」
プロメテウスの射手が狙えないとわかるといなや、機械に向かって黒翼をはためかせ影狼でナイトオウルが飛び込んでいく。
手応えは随分と硬い。
「うおっ!」
一気に近接されたことを受け、レイはプロメテウスの全砲台を開放し全体砲撃攻撃を展開する。
ナイトオウルはじめ20メートル圏内にいた兵士たちが銃弾の雨に撃ち抜かれる。
ナイトオウルは笑う。動きが制限されるが構わない。
敵を殺す。神への不敬者を殺す。
それだけがナイトオウルの目的だ。それだけが女神に捧ぐ信仰なのだ。
「むちゃくちゃしやがって!」
中隊全体のダメージを必至にヒーラーたちが癒やす。派遣していたドクターはともかくとして多少の余裕はあるがこの全体攻撃を連発されてしまっては幾ばくも持たないだろう。
ザルクは魂に奇跡を願おうとするが、それを片手でフレデリックが止められた。
「お前の気持ちはわからなくもない。しかし今回の任務でアレを倒す必要はない。威力偵察だということをわすれるな」
フレデリックの厳しい声にザルクは舌打ちして、気持ちを切り替える。そうだ、熱くなりすぎてはいけない。
「ダメージを受けたやつは一旦下がれ! ナイトオウルの班のやつもな!
こんなところで死んでたまるか!」
ピンポイントシュートで、ザルクは間接などを狙うがむしろその部分を狙われることは織り込み済みなのだろう、強固に防御されていることがわかる。
この試作品のプロメテウス/ベインはあくまでも固定砲台としての役割を担っている機体なのだと思う。
現に今までベインは移動をしていない。移動はできないことはないにしろ素早い移動は不可能なのだろう。
フレデリックがベインに飛び込んでバッシュを連発するナイトオウルをフォローするように同じくバッシュを重ねる。
火力自慢であるあの二人の攻撃をもってしてもダメージの浸透は薄いことはわかる。
後衛の魔導火力も多少は利いてはいるようだが、手応えは薄い。
「邪魔だっつの!」
プロメテウス/ベインの後部からマニピュレーターが飛び出す。回転する刃物をつけたその腕を振り回しナイトオウルを打ちすえれば、ナイトオウルは大量の血液をまきちらしながら吹っ飛んでいく。
隊のドクターが重点的な回復をかけるが致命がそれを邪魔する。
「GAAaaAAaahHHhhh!!」
血みどろでナイトオウルは立ち上がる。眼の前がふらつくが女神を思えばたいしたことはない。
「そろそろ頃合いだな」
ナイトオウルの様子をみてフレデリックがつぶやく。
5分間のタイムリミットは目の前だ。
「まだ戦える!」
そうザルクは返す。まだ、まだもっとあの機体を知らなくてはならないのだ。
「命令だ」
ザルクは歯切りしをしてフレデリックの指示に従う。損耗率は現在において35%ほど。まだ戦おうと思えば戦えるだろうがこの後はただただ損耗戦にしかならない。
だからこその5分間の時間制限があった。その長い5分間が今終わる。
「それでは殿は私が」
「私の部隊も……!」
フーリィンがアリアの背中に声をかけるがアリアは首を横にふる。
「いえ、足止めができるのは私だけですので。蒸気騎士にどこまで通用するかはわかりませんが時間稼ぎはできます」
アリアの足がタンゴのリズムを刻みはじめた。
「おいおい! 逃げるのかよ!! もっと遊んでくれよ!!」
レイが笑いながらまだ撃ち足りないと騒ぎ、クイーンランサーのトリガーを逃げる自由騎士たちに向けて引く。
その瞬間長い砲塔の先が破裂した。銃口内部の摩擦で加熱しすぎたため暴発したのだ。
「くそ、撃ち過ぎかよ! ドクター! これじゃ消化不良じゃねえかあ!!!!」
破裂の衝撃で大きく揺れたコクピットに頭をぶつけたレイは怒鳴り散らす。
蒸気レールガンという無茶な仕様は連続可動には向いてはいなかったのだろう。頭から血を流すレイは衝撃の痛みなど感じていないように何度もクイーンランサーのトリガーを引くがクイーンランサーは完全に沈黙している。
ベインの不調には自由騎士達の攻撃も大きく関わってはいた。砲塔は彼らの攻撃でわずかに歪みが生じていた。
「追いますか?」
速やかに撤退する自由騎士たちの背中を見ながら、部下がレイに尋ねる。
「どうやって追いかけんだバァーーーーカ!!!!!!!!
なんだよ、アイツラの変な魔導!
全体に足止め? そりゃあなんとかQoHで対抗はできるが、奴隷共はでくのぼうじゃねえか! ふざけんな! 糞が!! それにこのどん亀では追いつけねえ!」
レイはベインのコクピットから、問いかけてきた蒸気騎士の前に飛び出す。そして近づいてきた蒸気騎士をもっていた拳銃の銃把で殴った。
彼ら自由騎士は斯くして戦場から離脱する。
失われた命があった。しかし確かに情報を得た。次につなげるための重要なその情報を。
「ミハイロフ卿、隊列の提言を」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)の言葉に『軍事顧問』フレデリック・ミハイロフ(nCL3000005)は頷いた。
テオドールの副官であるディートリヒが主に命じられまとめた提案書をフレデリックに渡す。その提案書に目を落としたフレデリックはそれで構わないと告げる。
「陽動とは言え、生きて帰りたいのは皆同じですからな」
テオドールの言葉にフレデリックは頷き、大きな声で全中隊に作戦要項を口にする。
「さあ、お前たちには今から長い5分間を戦ってもらうぞ。
なんせ俺たちは今から『死ににいく』……おっと口が滑ったな。どこで誰が耳をそばだてているかもわからない状況だ。バレてしまったら元も子もないな。はっはっは。
では作戦を繰り返す。
A班、ロジェ隊、セレスティ隊、鉄拳中隊は左翼の抑え、
B班、クランプトン隊、ベルヴァルド隊、アルカナム隊は右翼の抑え、
そして、C班のミステル隊とアラウンド隊は俺と一緒にプロメテウスに突っ込んでいき情報をできるかぎり得てくる。
いいか5分間だ。
5分以上の戦闘は禁止する。
A班とB班は退路の確保も忘れずに」
「持ち前の影の薄さを武器に、どんな戦場でも抜け目無く立ち回るで御座る」
「自慢の筋肉で敵はイチコロじゃ!」
「私様こそヘルセフォーネ。通称ういっち。漆黒の闇に呪われしマザリモノよ、後衛は私様が仕切るわ。ついてきなさい」
「あわわ、作戦をきいてください~」
『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)は濃いメンツに半ば振り回される形で指示を出す。
隊内での作戦を伝えたフーリィンはまっすぐに部下達を見つめる。この一癖も二癖もあるみんなは一人ずつでは微力かもしれない。それでもみんなで力を合わせることができれば山となるのだ。
だから――。
「今回も上手くやって、全員無事に帰りましょうね!」
そう、フーリィンは『お願い』した。
「我が精神は『前進と不倒』 復唱!」
「我が精神は『前進と不倒』!!!!」
「我が仕儀は『肉弾で殴れ』 復唱!」
「我が仕儀は『肉弾で殴れ』!!!!」
「我が務めは『血路を拓け』 復唱!」
「我が務めは『血路を拓け』!!!!」
女隊長だと舐めてくるようなイキのいい戦士を求めた『イ・ラプセル自由騎士団』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)はここに来るまでに鉄拳制裁にて隊員たちと交流を果たしていた。
とは言え、彼女の名声は女とは言え今やイ・ラプセルの英雄とも称される程になっている。
「それにしても女に務まるんですかい? 中隊長が?」
なんて笑いながらできるとわかっていてわざとヤジを飛ばす隊員にシノピリカは笑顔で「よし、気に入ったぞ、貴様。我が家に来て妹と付き合う事を許可する! その前にその前にまずはワシのケツと右手に挨拶せよ!」と返す。
「あんたの妹と付き合う前に俺の大事なモンが折れちまうじゃねーか!」
氏素性も種族も外見も問わない。そんな下品な冗句を言うような素行の悪いものでも構わない。
それこそが我が国らしさとシノピリカはこの中隊を誇りに思う。
そんな彼らをほんとにひどいんだからと笑うのは『慈悲の刃、葬送の剣』アリア・セレスティ(CL3000222)。
「私たちは、彼らの支援を中心に動きます」
アリアの指示を待つ兵士たちの中には、過去アリアの窮地を救った騎士がそれなりにいる。その人達の前に立つというのは面映い気持ちでいっぱいだ。アリアにとっての英雄たちは今や、アリアを英雄として誇らしく想っている。
だから、だからこそ。
「私が指示できることは一つです。
みんな命を大事にしてください」
それは願いと祈り。
葬送の騎士は彼らを見送りたくはない。
「アリアのお嬢ちゃん、随分と立派になったな」
そういって頭に大きな手を置くのはかつて自らを守ってくれた騎士。今ではレンジャーにそのバトルスタイルを変えている、この隊の副官。
「ちょっと、頭を撫でないでください。私が中隊長だっていう面目がですね」
「はは、それは失礼中隊長殿」
レンジャーは文句も物ともせずなんども頭をぽんぽんと撫でた。
「副隊長」
「なんだい? お嬢ちゃん」
「絶対に死なないでくださいね」
「僕は隊長っていう柄ではないというか」
「ダメです、アダムさん」
隊長には向いていないと『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)が頬に汗を浮かべる。
副隊長であるガンナーのレイリア・パーソンが大きくあけた胸元を見せつけるかのように両手を腰に当てて近づいてくるのをじりじりとアダムは後ろに後退していく。
「だって、僕みたいな小僧が指揮なんて」
「貴方の指揮だからこそ私達は戦えるんです」
それはイ・ラプセルの自由騎士として、そして同時にイ・ラプセルの英雄として期待される彼へののしかかる重さそのものだ。
「えっと、僕は前に出るほうが得意だし、それに後衛の貴女が状況を把握して指示をしてくれるほうがいいとおもうんだ……えっと、うん、責任は全部僕が取るから」
「まあ、金獅子のような貴方が前線で戦うというのは士気があがりますが……それでも」
「だから、この中隊の指示を頼んだよ。僕は君を信じてる。だから君も僕を信じてほしい!」
真っ直ぐな目でいわれてしまえばレイリアも苦笑しながら頷くしかない。
「仕方ない人ですね。死なないでくださいね」
「それはこっちのセリフだよ。……この戦いは負け戦みたいなものだ。
ならば少しでもマシな負け戦にしよう」
「どうしました、テオドール様? お腹でも痛くなりましたか?」
「ディル、私をなんだとおもっているのだ?」
「奥様(未満)にメロメロのおっさんでございます」
「いや、いい。今回の中隊はわがままをいって我が家の従者でまとめたが……」
テオドールの脳裏につい最近の怪しげな魔術師に見せられた『死』が思い浮かぶ。未来の死かもしれない、そうじゃないかもしれない。
しかし状況が似ているのも確かだ。一抹の不安を覚えてしまうのは否めない。
「ええ、腕利きのものを集めました。不満がありますか?」
「お前の口の悪さが不満ではあるがそうではない。気にしないでくれ。ちょっと感傷的になっていたようだ」
「奥様(未満)のお声が聞きたいのですか?」
「本当にお前は私をなんだとおもっているのだ」
そんな軽口もきっと緊張している主人にリラックスさせようと慮ったものであろうとテオドールは笑う。
「いいか、今回の役目はあくまで牽制とサポートだ。生き延びる事を優先し耐えてくれ、死んだらディルに叱られてしまうぞ」
そう中隊の者たちに言えば彼らはそれは困ったものですと笑った。
「これは人生で最も長い5分になるだろうな。まさか俺が中隊指揮をするとは」
『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)が顎に手をあててつぶやく。
「緊張されていますか?」
初対面である隊員はリュリュに尋ねる。少々距離感に迷ってはいるようであるが信頼できる仲間だ。
「まあ少しはそうかもしれない」
他の隊長に比べて自分は一歩劣ると想っているリュリュの内心は不安でいっぱいだ。ましてや自分の指揮のもと誰かが死んでしまう……などと思えば恐怖で足が竦む。
「安心してください。我らロジェ隊はあなたのために死も恐れません」
「ふざけるな!」
その隊員の言葉にリュリュは激高する。自分なんかのために死んでもいいなんて言うな。しかしリュリュはすぐに気を取り直す。
「すまなかった。気にしないでくれ。俺が回復を密にするんだ。お前たちを死なせはしない」
一瞬「仲間の戦死」という恐怖を見抜かれたと思ってしまった。だから言葉が荒くなった。中隊長がこんなのでどうする?
「気になさらないでください。そんな貴方だからこそ、私達は従いたいとおもうのですから」
「ほら、もう一度、プランの確認をするぞ!」
リュリュは少し朱くなった頬をみられまいと顔を書類で隠した。
イ・ラプセルに渡ってきてはや一年。
すべてを奪ったあの炎の日から13年――いや14年だったか。
『殲滅弾頭』ザルク・ミステル(CL3000067)の願いを叶えるための足がかりがやっとできたのだ。
とはいえここはただのスタートラインでしか無い。
「緊張されていますか?」
褐色肌のソラビトが尋ねる。スー・ナサニエル。ミステル隊の副隊長の女性だ。
「まあしてないって言えば嘘になるな」
「ギネヴィアとダンが気にしていました」
「マイケルは?」
「あちらで腹ごしらえを」
「あいつ、ほんとにキモが座ってるな」
隊員の様子を聞き、少しだけ呆れてザルクの緊張がほぐれる。
「勝つぞ、と言えないのが少々不満だがな」
「ええ、まあ。今回はそうですね、アダムさんの言葉をかりれば負け戦です」
「負け戦か。俺は何度負けてきたんだろうな」
そう言って目を細めるザルクの眉間がスーの指先に弾かれる。
「あいてっ」
「隊長、そんな眉間にシワを寄せていたら他の隊員にも隊長の不安が伝染しますよ」
その言葉にザルクは苦虫を噛み潰したような顔になりお前のそういうところが嫌いだと嘯く。
「私は隊長のそんなところは嫌いではありませんよ。負け戦いいじゃないですか。この一手が紡ぐ未来がどうなるかは私にはわかりませんが貴方の願いが叶うといいと思っています」
我が神の道を邪魔するものはすべて――ハイジョする。
普段のカソックを脱ぎ捨て、鎧をまとった『空に舞う黒騎士』ナイトオウル・アラウンド(CL3000395)は狂戦士に変わる。
それは怒り。愛する女神に鉾を構えようとするその不敬に対する純粋な怒り。
「AAaaAAaahHHhhh!!」
怒りは咆哮に変わる。
『あだむノ 味方ニ チカラ 貸セ
あだむノ 指示 聞ケ』
テレパスを有する副官であるドクターは頷く。
「ナイトオウル様、ですがあの作戦規範は……」
『殺セ 殺セ 殺セ 殺セ 殺セ
神ヲ 名乗ル 不敬ナ 邪神ノ 尖兵 殺セ』
その答えに副官は黙った。
●
「よし! 前方にヘルメリア兵確認! みんな! 行くぞ!」
フレデリックの号令にみな『応』と答える。
彼我の距離は30メートルほど。彼らヘルメリアの兵は前には突っ込んではこない。ならば突っ込んでいくしかない。
「我はイ・ラプセルの騎士アダム・クランプトン!
同士よ! 騎士達よ! 我らの名を吼えよ!
同士よ! 騎士達よ! 我らの神を吼えよ!」
誰よりも前にでたアダムは獅子の咆哮をあげる。
その名乗りは、1819年、6月――機国との開戦の号砲となる。
「吼えよ! 吼えよ! 吼えよ!
眼前に如何なる敵が立ち塞がろうとも!
我らの誇りが敵を穿つ!」
レイリアはその勇ましい若獅子を眩しそうな目で見つめ中隊に指示をだしていく。
彼らは慎重に距離を縮める。前情報によればこの場でもすでに蒸気レールガン『クイーンランサー』 のレンジ内である。
接敵直後にはクイーンランサーはこない。となれば次のターンには砲撃が来ることになるだろう。
全速移動で縮められる距離は20メートルではあるが、彼らは回避と防御を優先した作戦を立てたため、防御スキルを使用するためその距離は10メートルに半減する。初手で彼らができることは遠距離攻撃で、敵ヘルメリアの兵団と打ち合える距離にまで近づくことだ。
プロメテウス/ベインとの距離は40m強。オラクルならばクイーンランサーの一撃が被弾することはオラクルの加護があればないだろう。
「フーリィン!! 後方部隊に砲撃がっ!!」
砲撃の気配を感知したリュリュが叫ぶ。
「ゴリさん!!」
グレゴリオにフーリィンが叫べばグレゴリオはフーリィンを護る。
しかして部隊の80%は非オラクルなのである。初撃がこちらのレンジ外から飛んでくることに対する対策が練れていたとは言いづらい。
充填されたクイーンランサーの電磁誘導(ローレンツ力)は蒸気の圧力によって加速する。
「FIRE!!」
プロメテウス/ベインに搭乗するレイ・ブラッドベリ二等が景気よくトリガーを弾けば超高速の弾丸が長く巨大なクイーンランサーの砲塔から自由騎士たちの後衛を狙い解き放たれた。解き放たれた弾丸は周囲に飛び散りながら一撃二撃と犠牲者を穿つ。
「ひゃーーほう!! やっべぇえ!! すっげーじゃんベインちゃん!」
クイーンランサーが解き放たれたその先――グレゴリオに護られたフーリィンの直ぐ側、数人の兵士たちが腹部から大量の血を流して倒れている。彼らはこれ以上戦うことは不可能だろう。
「ゴリさん、私には加護があります。私じゃない誰かをまもってくれたなら!」
「それでもワシは隊長であるお前さんを護ることを選ぶぞ。おぬしはワシらの柱だからの」
フーリィンの目に涙が浮かぶ。
かろうじて息がある程度の彼らをみた自由騎士はみな唇を噛んだ。
フーリィンは回復をさせようと下がろうとするのをグレゴリオが止める。
「ゴリさん」
「ワシらにはやることがある。彼らはもう無理じゃ。あきらめい」
「だってあの人は今度娘が連れてくる男を殴る為に絶対生還するって言ってました!」
「隊長、お前さんが彼らの命をつなぐために下がればどうなるかわかるじゃろ? おまえさんは回復しなくてはならん。戦場を支えるヒーラーじゃろ」
その言葉にフーリィンは血を流すほどに唇を噛み締める。わかっている。自分の役目がどれほど大事なものであるかは。
放置しておけばやがて銃弾をうけた彼らは死ぬことになるだろう。しかし、介抱するためにさがらせれば命は繋がるかもしれない。そのためには人員が必要だ。戦闘不能になった人員をどうするか。それは誰も意識していなかったことであった。
故にけが人は放置するしかない。それがどれだけ残酷なことであったとしても。
初動からの損耗に自由騎士たちは動揺するもそれでもこれ以上の損耗をさせないと前に進む。彼らはまだやっと接敵したばかりなのだから。
「鴨撃ち気分でYeah, whoo!!!! おい、てめーら戦え! 祭りだぜ! バンバンshooting! エキサイティン!!! Yeah!」
●
「わしらがC班の道を開く!!」
自由騎士たちはシノピリカとアダムを先頭にA班とB班で蜂矢の陣でもって向かう。
接敵した彼ら自由騎士と各中隊の兵士たちの士気は高い。
それも英雄と呼ばれる者たちに指揮されているからだろう。
ザルクの脳裏にはあのレジスタンスごと故郷を焼かれた炎の日のことが思い出される。当時は人の形すらろくに取れていなかったプロメテウスの初期型と、目の前の最新型であるベインは全く違うものだ。
しかし、プロメテウスの存在にあの時の怒りは色鮮やかに蘇ってくる。
当時レジスタンスに対して、抑止力として投入されたプロメテウスは多大なる火力で故郷を焼いた。
ヒトに対して過剰すぎるその火力は出来上がったばかりのプロメテウスのデモンストレーションでしかなかったと今ならよく分かる。
試し撃ち――それだけで焼かれたのだ。俺の仲間は――。
「みんな生きて帰るのです!!」
ザルクの少し前で先鋒を務めるシノピリカの鉄拳中隊の補佐をするアリアの声でザルクは我にかえる。
そうだ。そのとおりだ。怒りに目を眩ませてはいけない。接敵するまでは安全策でいくつもりだ。
ベインとの距離はまだ30メートル以上ある。射程レンジにはまだ遠い。
「オラクルのものは非オラクルの弾除けを重視じゃ。
体力の低いものは、ワシを盾にしてもいい! とにかくあのプロメテウスの銃弾には当たらぬようにな! 威力は……見たじゃろう」
敵前衛に穴を開けるべくシノピリカは何度目かのバーチカルブロウを放つ。
「左翼は緋文字、右翼はアイスコフィン! 副官は観察お願いします!」
アリアは熱暴走や蒸気熱の低下による蒸気騎士の低下を狙うが、『クイーンオブハート』と呼ばれる魔導を遮るコーティングに阻まれる。
まさにこれが魔導から生み出される熱と冷気に対する対策にほかならないのだろう。それがわかっただけでも『情報』としては有用だ。
蒸気を利用したその技術において熱は重要な意味がある。それ故のコーティングなのだ。
タンゴのステップを踏みながらアリアは思う。
「マギアスは温存! シノピリカさんにあわせて戦線を捻じ開けて! 僕たちは蒸気騎士に向かう!」
アダムは最前線で叫ぶ。
対抗するはヘルメリアの奴隷兵。
フリーエンジンと協力体制を敷いている現状アダムは彼ら奴隷兵もまた救うべき対象であると思う。
また甘いことを言うやつだといわれるのだろうと思う。
だけれどもそれはアダムの信念だ。口を開けようとした瞬間シノピリカの声が聞こえる。
「ヘルメリアに虐げられし者たちよ! 我が名はシノピリカ・ゼッペロン!!
我が方に奴隷兵はおらぬ! 降るなら今の内ぞ!」
その声にアダムはこんな時だというのに笑みが溢れる。同じように思うものが一人ではなかったことが心強かった。
「僕はアダム・クランプトンだ!!
君たち奴隷兵を無碍には扱わない!! 投降するなら受け入れる!」
その言葉に奴隷兵の顔色が変わる。
「おいおい! 蒸気騎士どもよ、そいつらがイ・ラプセルの英雄様みたいだぜ? 首をとればプロメテウスのパイロットに格上げされるんじゃねえのか?!!」
花形職であるプロメテウスのパイロットに憧れる兵士は決して少なくはない。蒸気騎士たちの士気があがる。
レイは改めて自由騎士をプロメテウス内のスコープで見渡す。
「おいおい、よく見れば葬送の騎士もいるじゃねえか。それに、ヘルメリアの裏切り者までいるのか。なあなあ、なあ? それにイ・ラプセルの騎士団長殿まで。どうした? ボーナスステージかょう? 撃て撃て!! ぶっころせ!!!」
プロメテウスのコンソールをバンバン叩きながらレイが嬉しそうに騒ぐ。
「ていうかよ、イ・ラプセルの騎士は上司の眼の前で部下をヘッドハンティングなんてお行儀が悪くねーか?」
言って、レイは砲塔を奴隷兵を掻き分け、前に進むシノピリカに向けた。
「まずい! ゼッペロン! 狙われている!」
リュリュが叫ぶと同時に回復の層を厚くせよと騎士たちに命令をかける。フーリィンも合わせて指示をかける。
アリアは息を飲む。
アダムはやめろと叫ぶ。
テオドールは舌打ちをする。
ザルクとナイトオウルはアイコンタクトで回復手の援護に回る。
ドォン
プロメテウス/ベインのクイーンランサーはシノピリカを中心に二度炸裂する。
「くっ……」
「ったく、ゼッペロン隊長の妹と付き合うつもりだったのにな」
シノピリカを庇い一人の兵士が斃れた。
周囲の奴隷兵も巻沿いをくらいクイーンランサーに貫かれ倒れ伏していた。
「貴様……!!」
「シノピリカさん!」
アリアが叫ぶ。
シノピリカは額から流れる血を拭い、失われた命に一言よくやったと言い前を向く。ここで折れるわけにはいかない。彼の献身のおかげで自分はこの程度の怪我ですんだのだから。
「ふざけるな! 仲間を何だとおもっているんだ!」
アダムが激高しレイに向かって叫ぶ。
「ああ? 仲間ぁ? なにいってんだ坊や、消耗品がゴミになりそうだったから片付けただけじゃねえか。
いいか? 奴隷ども。あいつらに与するなら殺す。逃げても殺す! いいかお前らみたいなクズでも国のために役にたてるんだ。国の役にたって死ぬか、叶わぬ夢にすがって死ぬか、
お前らはそのどっちかだ!! はーーーっははっは! たのしいよな! 戦場は!」
「この……!!!」
アリアもまた怒りに歩を進めようとする。
一瞬絆されそうになった奴隷兵たちは絶望に瞳を曇らせ、各々の武器を自由騎士に向かって構える。
消耗品である彼らには退路も進路もどちらも存在などしていないのだ。
「アリア、アダム。奴隷を消耗品として使い捨てる、これがヘルメリアだ」
ザルクの声もまた怒りに震えていた。
むしろ自分の復讐相手がこんな外道で清々しさすら感じて愉しくなる。ヘルメリアという国は潰されるべきだ。
「AaaAArRrrgGhHhHhHh!!」
許せない許せない、
悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ
悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ 悔シイ
このような悪魔の傀儡が存在することがナイトオウルには悔しくて仕方なかった。
こんなクズどもが我が愛しの女神の笑みを曇らせるのだ。
殺ス殺ス殺ス。
「ディル、戦線を左右に両断する! ミステル卿たちを一秒でも早くプロメテウスに到達させる!」
テオドールの冷静な言葉に激高していた彼らは冷静になる。
フーリィンとリュリュは回復の層を厚くし、前衛で後衛を護らせる。
アリアとテオドール隊の前衛たちがノックバックを駆使し、アダム隊とシノピリカ隊を最前線に向かわせるべくアリアはタンゴによる足止め、テオドールはテロメーアによる段幕で前衛を支援する。
魔導は効きづらいが目隠しにはなる。
「思うことはあるだろう。しかし今は考える暇など無いぞ!」
テオドールは皆に強く言い聞かせる。時間はまだ2分を過ぎたところだ。後半分以上の時間が残っている。損耗度はおおよそ20%といったところか。まだ余裕があるとはいえ、その人員が失われたことに歯ぎしりをしたい気持ちでいっぱいだ。
この作戦では損耗率が高くなることはわかっていた。わかっていてもやるせない想いはどうしようもない。
フレドリック卿はいつもこんな想いをしながら国防騎士達を死地に向かわせていたのだろうか。テオドールは少し眉を顰めた。
「そのとおりだ! 糞っ、まったく糞だ」
吐き捨てるようにいってリュリュは前を見据える。
戦闘が激化するごとに死んでほしくないモノたちは死んでいく。これが戦場だとは理解してる。
しかして理解しても、理不尽に命が失われることがリュリュには納得ができない。
ここからがヒーラーの――自分は厳密にはヒーラーではないがそんなこと関係ない――踏ん張りどころだ。けが人は増える一方だ。恐怖を怒りに変えて青年は指示を出し続ける。
「シノピリカ・ゼッペロン! 俺のためにしねぇ!!」
アリアとテオドール達のおかげで蒸気騎士に対して突出することができたシノピリカの隊に蒸気騎士が飛び込んでくる。
左翼をみればアダムも似たような状態だった。
それでいい、彼ら蒸気騎士の気を惹くのが最前列であるシノピリカとアダムの役目だ。
「蒸気騎士よ!
我が拳をこそ見知り置け!
シノピリカの首取って、手柄にせよ!」
シノピリカは蒸気騎士たちを挑発する。
「笑え! もっと笑え! 歯をむいて笑え!
散り際でこそ、笑え!!」
そして中隊の兵士たちを鼓舞する。先程失った兵士に報いるためにも。笑って敵を倒すのだ。
「型式M-H377・加圧式加速機構! マッドハッター起動!」
眼の前の蒸気騎士が目に見えて加速する。
「その調子であなた方の手の内をみせてください」
回り込んできた蒸気騎士からの痛打をうけつつ、アリアは観察する。一つでも多く情報を得るために。
やがて戦場は最前線の両雄により分断された。
その中心がフレデリックとザルク、ナイトオウルの隊の花道となるのだ。
当然ながら蒸気騎士たちが、プロメテウスに向かう彼らを追おうとする。
「あちらにはいかせません」
アリアは足止めのステップを踏む。しかし、強化をしていた蒸気騎士はその足を止めない。
「……!! 浮遊の効果もあるみたいですね……」
「大丈夫じゃ! わしらにまかせよ!」
「アリアさんは奴隷……いいや、亜人の兵たちを足止めして!」
すぐさま状況を察したシノピリカの隊とアダムの隊が急ぎ蒸気騎士達を阻む。
「AAaaAAaahHHhhh!!」
C班はついに、プロメテウス/ベインを攻撃できるレンジ内に踏み込むことが可能になった。
ナイトオウルは奇声を発し空へ飛び立とうとする。
ヘルメリア兵の遠距離攻撃の届かない高高度にまで飛び立てばクイーンランサーの射程を自分に向けられると思ったからである。
しかしそれは副官に止められる。
『放セ』
その言葉に副官は従わない。
当然だ。単騎で空に飛び上がれば上昇している間ナイトオウルは無防備になる。鴨撃ちの的を無視するほどヘルメリア兵は無能ではない。よしんば21m以上の高度に上がれたとしても今度はオラクルの加護がある。当たらない的をクイーンランサーで狙うほどにガンナーであるレイは愚かではない。
十分距離に近接されたら、他の自由騎士を全体攻撃で狙うほうが効率が良いのだ。
影狼は最大40メートルの射程距離がある。しかしそれは20メートル移動して更に遠距離攻撃の20メートルを足した期待値である。 敵の攻撃の当たらない21m以上の上空から撃とうにも射程範囲の20mでは射程がたりない。影狼は移動せずに射撃することは可能ではあるが、レンジ内から攻撃したあと敵のレンジ外に移動はできないので、いわゆる引き撃ちは不可能である。ゆえに、一方的な空からの射撃をすることはできない。
攻撃をするには重心を整えなればならない。動いたままの状態では重心がぶれ、十全な狙いが取れないだろう。ナイトオウルもそれは理解している。
影狼は特殊な歩法によりその重心のブレを解消している。だが攻撃した後の体制でその歩法はできない。
副官の説明にナイトオウルは作戦を切り替えることにする。
「Grrrrrrrrr!!」
その叫びに秘められた怒号の意味を理解できるものは副官一人だけであった。
「悪いがみんな覚悟してくれ、今から――地獄に踏み入るぞ」
ザルクが他班に派遣したドクターは今や満身創痍であった。それでもなお自分は彼らを死地に向かわせる。
「気負うな、ザルク、若造は俺の後ろについてこればいい」
「はっ、ミハイロフ卿、俺はこの日をまっていたんだ」
ザルクはパイロットであるレイをパラライズショットで狙おうとするが完全密閉構造であるプロメテウスの内部を狙うことはできない。しかしものは試しとプロメテウス本体に打ち込む。
手応えはあった。しかしプロメテウスがその動きをとめることはない。ごうん、と重々しい音がプロメテウスの内部から響き、なんらかの機能が可動しているように思える。
「機械に行動不能系は効かない、というよりはBSを回復させるリペアシステムが走っているようだな」
額から汗をながし、フレデリックが数々の資料から類推された所見を述べる。
「くそ、厄介だな!」
「AAAAAhhhhhhh!!」
プロメテウスの射手が狙えないとわかるといなや、機械に向かって黒翼をはためかせ影狼でナイトオウルが飛び込んでいく。
手応えは随分と硬い。
「うおっ!」
一気に近接されたことを受け、レイはプロメテウスの全砲台を開放し全体砲撃攻撃を展開する。
ナイトオウルはじめ20メートル圏内にいた兵士たちが銃弾の雨に撃ち抜かれる。
ナイトオウルは笑う。動きが制限されるが構わない。
敵を殺す。神への不敬者を殺す。
それだけがナイトオウルの目的だ。それだけが女神に捧ぐ信仰なのだ。
「むちゃくちゃしやがって!」
中隊全体のダメージを必至にヒーラーたちが癒やす。派遣していたドクターはともかくとして多少の余裕はあるがこの全体攻撃を連発されてしまっては幾ばくも持たないだろう。
ザルクは魂に奇跡を願おうとするが、それを片手でフレデリックが止められた。
「お前の気持ちはわからなくもない。しかし今回の任務でアレを倒す必要はない。威力偵察だということをわすれるな」
フレデリックの厳しい声にザルクは舌打ちして、気持ちを切り替える。そうだ、熱くなりすぎてはいけない。
「ダメージを受けたやつは一旦下がれ! ナイトオウルの班のやつもな!
こんなところで死んでたまるか!」
ピンポイントシュートで、ザルクは間接などを狙うがむしろその部分を狙われることは織り込み済みなのだろう、強固に防御されていることがわかる。
この試作品のプロメテウス/ベインはあくまでも固定砲台としての役割を担っている機体なのだと思う。
現に今までベインは移動をしていない。移動はできないことはないにしろ素早い移動は不可能なのだろう。
フレデリックがベインに飛び込んでバッシュを連発するナイトオウルをフォローするように同じくバッシュを重ねる。
火力自慢であるあの二人の攻撃をもってしてもダメージの浸透は薄いことはわかる。
後衛の魔導火力も多少は利いてはいるようだが、手応えは薄い。
「邪魔だっつの!」
プロメテウス/ベインの後部からマニピュレーターが飛び出す。回転する刃物をつけたその腕を振り回しナイトオウルを打ちすえれば、ナイトオウルは大量の血液をまきちらしながら吹っ飛んでいく。
隊のドクターが重点的な回復をかけるが致命がそれを邪魔する。
「GAAaaAAaahHHhhh!!」
血みどろでナイトオウルは立ち上がる。眼の前がふらつくが女神を思えばたいしたことはない。
「そろそろ頃合いだな」
ナイトオウルの様子をみてフレデリックがつぶやく。
5分間のタイムリミットは目の前だ。
「まだ戦える!」
そうザルクは返す。まだ、まだもっとあの機体を知らなくてはならないのだ。
「命令だ」
ザルクは歯切りしをしてフレデリックの指示に従う。損耗率は現在において35%ほど。まだ戦おうと思えば戦えるだろうがこの後はただただ損耗戦にしかならない。
だからこその5分間の時間制限があった。その長い5分間が今終わる。
「それでは殿は私が」
「私の部隊も……!」
フーリィンがアリアの背中に声をかけるがアリアは首を横にふる。
「いえ、足止めができるのは私だけですので。蒸気騎士にどこまで通用するかはわかりませんが時間稼ぎはできます」
アリアの足がタンゴのリズムを刻みはじめた。
「おいおい! 逃げるのかよ!! もっと遊んでくれよ!!」
レイが笑いながらまだ撃ち足りないと騒ぎ、クイーンランサーのトリガーを逃げる自由騎士たちに向けて引く。
その瞬間長い砲塔の先が破裂した。銃口内部の摩擦で加熱しすぎたため暴発したのだ。
「くそ、撃ち過ぎかよ! ドクター! これじゃ消化不良じゃねえかあ!!!!」
破裂の衝撃で大きく揺れたコクピットに頭をぶつけたレイは怒鳴り散らす。
蒸気レールガンという無茶な仕様は連続可動には向いてはいなかったのだろう。頭から血を流すレイは衝撃の痛みなど感じていないように何度もクイーンランサーのトリガーを引くがクイーンランサーは完全に沈黙している。
ベインの不調には自由騎士達の攻撃も大きく関わってはいた。砲塔は彼らの攻撃でわずかに歪みが生じていた。
「追いますか?」
速やかに撤退する自由騎士たちの背中を見ながら、部下がレイに尋ねる。
「どうやって追いかけんだバァーーーーカ!!!!!!!!
なんだよ、アイツラの変な魔導!
全体に足止め? そりゃあなんとかQoHで対抗はできるが、奴隷共はでくのぼうじゃねえか! ふざけんな! 糞が!! それにこのどん亀では追いつけねえ!」
レイはベインのコクピットから、問いかけてきた蒸気騎士の前に飛び出す。そして近づいてきた蒸気騎士をもっていた拳銃の銃把で殴った。
彼ら自由騎士は斯くして戦場から離脱する。
失われた命があった。しかし確かに情報を得た。次につなげるための重要なその情報を。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
5分間の死闘お疲れ様でした。
皆様のがんばりでそれなりの情報は得ることができました。
あとベインちゃん故障したので本国でウィリアム君はめちゃくちゃ切れ散らかしております。
MVPは名乗りも鼓舞もかっこよかった貴方に。
損耗率はおおよそ35%ほどで余裕がありました。
みなさんが名付けてくれたネームドの兵士に死亡者はいません。
参加ありがとうございました。
皆様のがんばりでそれなりの情報は得ることができました。
あとベインちゃん故障したので本国でウィリアム君はめちゃくちゃ切れ散らかしております。
MVPは名乗りも鼓舞もかっこよかった貴方に。
損耗率はおおよそ35%ほどで余裕がありました。
みなさんが名付けてくれたネームドの兵士に死亡者はいません。
参加ありがとうございました。
FL送付済