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Catwalk! 美術品を狙う女怪盗!

●闇を歩く猫三匹
「またやられた!」
イ・ラプセル首都サンクディゼール。最近そこを揺るがす事件があった。
豪商、貴族といったお金持ちから美術品などの高級品を盗む怪盗を。わざわざ予告状を届けて、決まった時間に盗みに入る凄腕の盗賊である。
その名前は誰もが知っているが、その姿を捕らえた者はいない。狙ったターゲットは逃がさない。数多の美術品がその怪盗によって闇に消えていた。
「にゃにゃー。今宵も楽勝だにゃー」
「油断するでにゃいよ。騎士団も総出で来てるみたいだにゃ」
闇を走る三人のケモノビト。ピンとたった耳と尻尾はネコのもの。
「無駄だにゃ。あたいらのルートを予測できない限り、盗みは止められないにゃ」
「だよにゃー。仮に見つかっても、力技で突破するにゃ」
「今宵のムラマサは血に飢えている、にゃんてにゃー」
微笑みあう三人。互いを信頼し、幾多の盗みをこなしてきた。今回も同様に盗み出すだろう。
サンクディゼールに噂されるネコのケモノビト女怪盗。彼女達の名前は――
●階差演算室
「『キャットウォーク』――それが怪盗の名前だ」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士を前に説明を開始する。
「水鏡が『キャットウォーク』の逃亡経路を映し出した。そこに先回りし、彼女達を捕らえてくれ」
技能を駆使して隠密活動を行う『キャットウォーク』を捕らえることは難しい。だが退路なら捕まえる事が出来る。そう判断しての戦場配置だ。
「隠密活動に徹する彼女達だが、戦闘力が無いわけではない。だが、熟練の自由騎士であるなら問題はない」
如何に戦い慣れているとはいえ、彼女達は隠密が基本だ。騎士として戦場に身を置いている自由騎士が後れを取るとは思えない。クラウスの言葉には深い信頼があった。
「彼女達は仲間意識が高い。一人だけ逃げ出せる可能性があっても、おそらく逃亡はしないだろう」
仲間をけして見捨てない。たとえそれが足かせになるとしても、だ。如何なる経緯でその信念を抱いたかはわからないが、逃亡される可能性が減ることはありがたい。
「彼女らの処遇は君達に一任する」
大臣の立場としては犯罪者は牢獄に送って縛り首だ。だが、敢えてそれ以上は言わずに口を紡ぐ。戦いの中で怪盗が命を落とそうが構わない。最低限、今回盗んだ美術品を回収できればいい。無論、再犯防止が出来ればなおのことだ。
自由騎士達は顔を見合わせ、現場に急行した。
「またやられた!」
イ・ラプセル首都サンクディゼール。最近そこを揺るがす事件があった。
豪商、貴族といったお金持ちから美術品などの高級品を盗む怪盗を。わざわざ予告状を届けて、決まった時間に盗みに入る凄腕の盗賊である。
その名前は誰もが知っているが、その姿を捕らえた者はいない。狙ったターゲットは逃がさない。数多の美術品がその怪盗によって闇に消えていた。
「にゃにゃー。今宵も楽勝だにゃー」
「油断するでにゃいよ。騎士団も総出で来てるみたいだにゃ」
闇を走る三人のケモノビト。ピンとたった耳と尻尾はネコのもの。
「無駄だにゃ。あたいらのルートを予測できない限り、盗みは止められないにゃ」
「だよにゃー。仮に見つかっても、力技で突破するにゃ」
「今宵のムラマサは血に飢えている、にゃんてにゃー」
微笑みあう三人。互いを信頼し、幾多の盗みをこなしてきた。今回も同様に盗み出すだろう。
サンクディゼールに噂されるネコのケモノビト女怪盗。彼女達の名前は――
●階差演算室
「『キャットウォーク』――それが怪盗の名前だ」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士を前に説明を開始する。
「水鏡が『キャットウォーク』の逃亡経路を映し出した。そこに先回りし、彼女達を捕らえてくれ」
技能を駆使して隠密活動を行う『キャットウォーク』を捕らえることは難しい。だが退路なら捕まえる事が出来る。そう判断しての戦場配置だ。
「隠密活動に徹する彼女達だが、戦闘力が無いわけではない。だが、熟練の自由騎士であるなら問題はない」
如何に戦い慣れているとはいえ、彼女達は隠密が基本だ。騎士として戦場に身を置いている自由騎士が後れを取るとは思えない。クラウスの言葉には深い信頼があった。
「彼女達は仲間意識が高い。一人だけ逃げ出せる可能性があっても、おそらく逃亡はしないだろう」
仲間をけして見捨てない。たとえそれが足かせになるとしても、だ。如何なる経緯でその信念を抱いたかはわからないが、逃亡される可能性が減ることはありがたい。
「彼女らの処遇は君達に一任する」
大臣の立場としては犯罪者は牢獄に送って縛り首だ。だが、敢えてそれ以上は言わずに口を紡ぐ。戦いの中で怪盗が命を落とそうが構わない。最低限、今回盗んだ美術品を回収できればいい。無論、再犯防止が出来ればなおのことだ。
自由騎士達は顔を見合わせ、現場に急行した。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.キャットウォーク三名の打破
どくどくです。
スチパンなら、怪盗ださないとねー。
●敵情報
・キャットウォーク(×3)
ネコのケモノビトによる怪盗グループです。全員女性。美術品のみを狙い、盗み出された美術品は裏社会にも流れないそうです。殺人を行ったことはありませんが、戦闘による暴力行為はいくつか。
仲間意識が高いため、全員が逃げられる状況(ぶっちゃけ、自由騎士全員の戦闘不能)でないと逃げません。
・ティア
キャットウォークのリーダー。魔導士。闇に紛れる為に紫のグラマラスなスーツを着ています。
『動物交流』『コキュートス Lv3』『マナウェーブ Lv3』『メセグリン Lv2』『セクシー』『テレパス 急』等を活性化しています。
・アイズ
カード(投げナイフ相当)を使うガンナー。闇に紛れる為に紺のグラマラスなスーツを着ています。
『動物交流』『バレッジファイヤ Lv2』『ゼロレンジバースト Lv3』『サテライトエイム Lv3』『ステルス』『オーディオエフェクト』等を活性化しています。
・ラヴァー
カランビットを使う格闘家。闇に紛れる為に藍のグラマラスなスーツを着ています。
『動物交流』『旋風腿 Lv3』『柳凪 Lv2』『龍氣螺合 Lv3』『パニック』『目星 破』等を活性化しています。
●場所情報
イ・ラプセル首都サンクディゼール。港に繋がる裏路地。そこで待ち伏せして戦います。
時刻は夜。薄明りあり。広さと足場は戦闘に支障なし。
戦闘開始時、敵前衛に『アイズ』『ラヴァー』が。敵後衛に『ティア』がいます。
事前付与は一度だけ可能とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
スチパンなら、怪盗ださないとねー。
●敵情報
・キャットウォーク(×3)
ネコのケモノビトによる怪盗グループです。全員女性。美術品のみを狙い、盗み出された美術品は裏社会にも流れないそうです。殺人を行ったことはありませんが、戦闘による暴力行為はいくつか。
仲間意識が高いため、全員が逃げられる状況(ぶっちゃけ、自由騎士全員の戦闘不能)でないと逃げません。
・ティア
キャットウォークのリーダー。魔導士。闇に紛れる為に紫のグラマラスなスーツを着ています。
『動物交流』『コキュートス Lv3』『マナウェーブ Lv3』『メセグリン Lv2』『セクシー』『テレパス 急』等を活性化しています。
・アイズ
カード(投げナイフ相当)を使うガンナー。闇に紛れる為に紺のグラマラスなスーツを着ています。
『動物交流』『バレッジファイヤ Lv2』『ゼロレンジバースト Lv3』『サテライトエイム Lv3』『ステルス』『オーディオエフェクト』等を活性化しています。
・ラヴァー
カランビットを使う格闘家。闇に紛れる為に藍のグラマラスなスーツを着ています。
『動物交流』『旋風腿 Lv3』『柳凪 Lv2』『龍氣螺合 Lv3』『パニック』『目星 破』等を活性化しています。
●場所情報
イ・ラプセル首都サンクディゼール。港に繋がる裏路地。そこで待ち伏せして戦います。
時刻は夜。薄明りあり。広さと足場は戦闘に支障なし。
戦闘開始時、敵前衛に『アイズ』『ラヴァー』が。敵後衛に『ティア』がいます。
事前付与は一度だけ可能とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
2個
6個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年10月07日
2019年10月07日
†メイン参加者 8人†
●
「盗まれた美術品は裏社会にも流れていない……という事は、お金目的ではなく、盗んだ美術品そのものが目的?」
路地裏で首を傾げる『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。察するに、お金を目的として盗みをしているわけではなさそうだ。美術品そのものに執着しているか、あるいは盗む行為そのものを楽しんでいるのか。
「わざわざ難易度上げて盗みに来るなんてアホなのかな?」
『元魔女狩り』アリス・ドンナー(CL3000609)は怪盗達の行動を考えて、疑問を口にする。盗みをする際に、わざわざ相手の警戒をあげるメリットはほとんどない。危険度を上げる必要性がどこにあるのか、アリスには理解が出来なかった。
「アジトに盗品を溜めこんでいる可能性は高いですなぁ」
腕を組んで『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)は頷く。国防騎士としての経験上、盗んだ物はその流通から足がつくことが多い。それを恐れているのかもしれない。どうあれ、ここで捕えるのが騎士の務めだ。
「彼女達の絆の深さ……その根幹が分かれば、アジトの割り出しも難しくないかもしれないね」
脳内で演算室での話を思い出しながら『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は口を開く。けして仲間を見捨てない三人の怪盗。その仲の良さは、悪事を行う上では足かせになりかねない。なのにそれを貫くというのはそれなりの理由があるのだろう。
「如何なる信念があろうとも、依頼があれば捕らえる。それが探偵と言うものだ」
興味がない、とばかりに『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)は言葉を放つ。依頼があるなら、それをこなす。それが探偵と言うものである。それがルークの信念。キャットウォーク同様、曲げられない部分があった。
「ま、どんな理由で盗みを働いてるにしろ犯罪は犯罪。きちんと罪を償わせないと」
うんうん、と『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は頷いた。貧乏な人間からは盗まないポリシーがあるようだが、法を犯せば犯罪であることには変わりない。罪を償ってもらうために、カノンは拳を握る。
「俺はここから援護するぜ」
マキナ=ギアを通して仲間と連絡を取るウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。仲間と離れて屋根裏に潜み、キャットウォークを挟み撃ちにするつもりだ。愛銃の感触を確認するように、強く握りしめる。
「どうやら、やってきたみたいですわ」
走ってくる音を聞いたのか『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が武器を構える。三人のネコのケモノビト。水鏡の情報通りの風貌だ。ここで捕えて、彼女達が罪を重ねるのを止めなくては。
「あら、意外なお客さんね。――そう、水鏡で予測されたのね」
リーダーと思われるティアが口を開き、同時に他の二人が構えを取る。散開して逃げることも考えたが、『水鏡で予測しても捕らえられなかった』となれば怪盗の株はさらに上がる。そう判断したのだろう。
一瞬の静寂の後に、騎士と怪盗は交差する。
●
「さぁ、参りましょう。貴女の罪を数えなさい」
一番最初に動いたのはアンジェリカだ。祈るように手を合わせた後に、アイズに向かって距離を詰める。キャットウォークの三人もかなりの速度だが、アンジェリカはその一歩先を行った。相手の先を制し、一番手を奪い取る。
体内に満ちる『龍』の力を身体全てにいきわたらせる。体内に力が満ちたと同時に、アンジェリカは『断罪と救済の十字架』を振るう。高重量の十字架がうなりをあげて振るわれた。的確な場所に的確な衝撃。相手の動きを封じる最適の方法だ。
「私の罪は美術品四十六個の盗難に、いけない大人をたぶらかしたことかしら」
「まあまあ、いけませんわね。ですがそれもここまでですわ」
「今回盗んだ美術品は、それね」
事前に大臣から聞いていたエルシーはティアが抱える物を指差して、そう言う。『双子座の見た未来』……そう呼ばれる絵画だ。謝って壊さないようにしないとね、と意識して紅色の手甲を嵌めなおす。
重心をずらさないようにすり足で移動し、勢いを殺さないように拳を振るう。迫る投げナイフを状態を逸らして交わし、そのままアイズに拳を振るう。一度目は相手を避けさせるため。逃げた先を待ち受けたかのように拳を振るい、打撃を加えていく。
「どんな理由で盗みをしたのか、聞いてもいいかしら?」
「それを素直に話すと思う? 騎士さん」
「まさか身内の作品が別名義で発表されているのを取り戻しているとか?」
腕に絡みつくようにカランビットを振るうラヴァーの攻撃をかわしながら、カノンはそう問いかける。よく分からないけど、なんとなくそんな気がしたのだ。昔そんなお話をセンセーがしていたのかもしれない。
会話に集中している余裕はない。ラヴァーの変則的な格闘動作を避けながら、カノンは拳を振るう。如何なる生物も、体幹が格闘行動の中心となる。センセーの教えを思い出し、ラヴァーの動きを予測する。繰り出された拳をラヴァーの胸を打った。
「へえ、やるじゃない。動きも頭の良さも、流石国家の騎士様だ!」
「同じ格闘家として、負けられないんだから!」
「ふむ。奇妙な怪盗ですな。いや、褒め言葉ですよ」
カノンの動きに合わせるように動くサブロウ。キャットウォークが盗みを行う理由を聞き、むしろ感心していた。我欲の為ではなく、他人の名誉を守るため。とある一族のために戦ったサブロウもその義侠心は理解できる。
無論、感心と戦いは別物だ。尊敬できるからこそ、全力で止める。路地裏の壁を蹴り、刃を構えて跳躍するサブロウ。地を蹴り、壁を蹴り、そして空を蹴る。周囲そのものを足場とし、サブロウは走り回る。死角から繰り出される一撃がラヴァーの肩を裂く。
「ですが仕事は仕事。加減はできませぬよ」
「上等よ! アンタらを倒して、父さんの名誉を守るんだから!」
「きみ達は優しいんだね。家族愛、か」
怪盗達の言葉を聞いてアリスは頷いた。家族の名誉を守るために、あえて自分達の存在をアピールする。そうすることで名誉を汚した相手への警告にもなるのだ。父の為に危険を冒すことをいとわない。そんな家族愛だ。
手にした蒼い刃と紅い刃を組み合わせるアリス。そのまま小さな肉体をかがめて、敵陣に滑るこむように接近する。二つの刃が相手の懐で振るわれ、キャットウォーク達を傷つける。今は亡きミトラースが与えた恩寵。それがアリスを今も動かしている。
「誰かのための泥棒なら、情状酌量の余地はあるかな」
「如何なる信念があれど、盗賊には変わりない」
静かに言い放つルーク。ルークにとって大事なのは善悪ではない。正邪でもない。何を依頼されたか、だ。捕えろ、と依頼されたのだから捕らえる。たとえ相手が聖人君子だとしても、そこを違えるつもりはない。
屋根の上を陣取り、逃走経路の一つを封じる。そこから銃を構え、引き金に力を籠める。大事なのは探る事偵う事。いついかなる状況でも、情報を得る心を忘れない。戦場の中で生じたキャットウォークの連携の狭間。それを見出し、そこを撃ち穿つ。
「今の俺のなすべきは、捕まえて罪を償わせるだけだ。そういう依頼なんでな」
「ええ、それを恨みはしないわ。でも大人しく捕まったりもしない」
「情状酌量の余地は……さて難しい所かな」
ふむ、とあごをさすりながらマグノリアは考える。身内の名誉を晴らすために盗みを続けるキャットウォーク。彼女達の信念を考えれば、名誉が回復するまで盗みを止めさせることは難しいだろう。
今後を考えるのは後、と思考を切り替えるマグノリア。光球を放って明かりを確保し、錬金術を展開する。一人相手の退路を断つために動くウェルスを援護すべく赤き命の水を展開し、その活力を増していく。
「無理をしないでね。ウェルス」
「ああ。それじゃあダンスとしゃれこもうか、レディ」
銃を構え、ウェルスが頷く。黒猫を思わせるしなやかな体。ケモノ率八割のネコケモノビトを前にウェルスは笑みを浮かべた。スマートな美人怪盗を相手に出来る等男冥利に尽きる。上手く踊れるように頑張らなくてはと心に活を入れた。
生まれる静寂は時間にすれば一瞬。しかしウェルスからすれば無限にも感じられた。先に動いたのはティアの方。呪文を飛ばすべく動いた指先を視界に捕らえながら、横に跳躍して弾丸を放つ。足を掠る魔術の痛みに耐えながら、弾丸が当たったことを確認する。
「大人しくするなら、相応の扱いをするぜ」
「あら優しいのね。惚れちゃいそう」
そんなやり取りを交わしながら、刃を交わす騎士と怪盗。
夜の帳の戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
●
戦いは自由騎士が優勢に進む。退路を断つように散開した自由騎士はその陣形を生かして攻め立てる。だが怪盗側も囲みの薄い場所を狙って火力を集中させ、包囲を突破しようと試みる。
「おおっと、まだまだ倒れるつもりはないぜ」
背後を押さえていたウェルスが集中砲火を受けてフラグメンツを削られた。だがまだまだ負けないと何とか踏みとどまる。
「流石に戦闘中に熟睡とはいかないか」
ウェルスは睡眠効果のある弾丸を打ち込み、争いなく相手を捕らえようとした。だが戦闘音や振動などで捕縛できるほどの熟睡状態には持って行けないでいた。だが――
「ごめんなさい、とても眠いの……。貴方の胸で、眠らせて」
言ってティアがウェルスの胸に飛び込んでくる。柔らかな胸を押し当てるように体を預け、抱き着いてくる。
「そういう事ならゆっくり眠ってな」
言いながら(捕まえる為に)優しく抱きしめようとするウェルス。だがその瞬間、ティアはウェルスを見上げながら、一歩距離を離して見つめ合うような体制を取る。
「こんなことをしてはしたない女と思わないでね。でも、貴方を見てると、胸が熱くなって気が抜けてしまうの。全てを捨てて任せてしまいたいぐらいに……」
「いいんだぜ。後は俺に任せな」
大人の包容力を見せるウェルス。例え法の敵であっても守って見せる。そう信頼させる何かがそこにあった。
「……ねえ、あれって」
「ええ……。そうね」
そんな様子を見ていたカノンとエルシーは、何かを言いたげに押し黙り、そして頷いた。その後で同時にウェルスを指差して口を開く。
「「色香に騙されて怪盗を逃がす男警察みたい」」
「麗しい女性を口説いているだけだ!」
そんな一幕もありましたが。
「とはいえ、単身敵の後ろに回り込んでいるんだ。ウェスルが危険なことには変わりない」
戦局を冷静に見て、マグノリアが魔術を展開する。経緯はどうあれ、怪盗は退路を断つ存在に矛先を向けている。それは後衛のティアが放つ魔術が戦闘の起点である証だ。ウェルスを保護するために、精製した薬を飛ばす。
「地を這うようなネコの動き……! キャットウォークの名は伊達ではないようですね!」
ラヴァーのカランビットでフラグメンツを削られるサブロウ。ネコのようにかがみこむようにして移動する格闘術。それは跳躍を行うサブロウの動きと相性が悪かった。太ももを裂かれ、痛みを堪えながら太刀を構えなおす。
「だけどこれで終わり! カノンの武術の方が強かったね!」
カノンはラヴァーの動きを見切り、そこに拳を重ねていく。不規則かつ読み切れないリズムで放たれる蹴り繰り出されるカランビットの一閃。だがそれを読み切れば、あとは地力の勝負。各棟に費やした時間の長さで、カノンに軍配が上がる。
「味方を見捨てない。その精神は素晴らしい事です」
一人が倒れたことにより、火力がアイズに集中する。それでもあきらめの表情を見せない彼女に、アンジェリカが称賛の声を送る。たとえ最後の一人になっても諦めない。無言でそう語るその精神は、自由騎士の仲間意識に通じるものがある。
「とはいえ、これで勝ちだ。こちらを封殺する手数はない」
冷静にルークが言い放つ。アイズのカードを受けてフラグメンツを削られたが、それでも屋根の上から落ちることなく気丈に立ち尽くしていた。後衛のティアに銃口を向け、引き金を引く。そこを封じればもはや押さえたも同然だ。
「殺さない程度にはやらせてもらうよ」
双剣を振るうアリス。その出自故に水の女神の権能を持たないと決めたアリスは、他の自由騎士のように不殺の権能を持たない。殺しても仕方のない状況だが、それでもアリスは殺すことを好まなかった。彼女達としっかり話がしたい。
「『緋色の誘惑』! ……女性にも効くのかしら?」
ティアの支援が厄介と判断したエルシーは、誘惑術を使ってティアの動きを止める。ティアはエルシーの行動に対抗するように、蠱惑的なポーズを取りながら攻撃してきた。想像とは異なるが、一応効いてはいるようだ。
互いが互いを補うように動く自由騎士と怪盗。だが地力と数の差は自由騎士にあった。少しずつ怪盗を追い詰めていく。エルシーの拳でアイズが倒れれば、キャットウォークに逆転するだけの火力はない。
「これで依頼は終いだ」
淡々と怪盗を追い詰めるルーク。探偵としてやるべきことはこれで終わり。後は法に委ねるだけだ。最後まで油断することなく、クールに事を運ぶ。それが彼の探偵としてのポリシー。
「あとはどうなろうと依頼外の話だ。――たとえお前達が脱獄しても、な」
引き金が引かれ、拳銃の弾倉が回転する。放たれた弾丸はティアに命中し、その意識を奪い取った。
●
戦い終わり、キャットウォークの三人を捕縛する自由騎士達。
あとは法に任せて、罪を裁くのみ。彼女達の犯罪数を鑑みれば、日の元に戻れないのは明白だった――が、
「宰相様は『処遇は一任する』って言ってたしね。とりあえず美術品のある場所を教えてもらいましょうか」
腰に手を当てて、エルシーが問いかける。牢屋に運ばれて尋問されると思っていたキャットウォークは怪訝に思いながらも問いに答える。
「喫茶店『猫川乱歩』……分かったわ。そこの壁に仕掛けがあるのね。ええと……」
「アマノホカリのカラクサ仕掛けか。俺が行こう。何、探し物は探偵の仕事だ」
仕掛けの内容を聞いたルークがため息をついて歩き出す。美術品を回収すれば依頼は終わりだ。キャットウォークがどうなろうが、関係ない。地下室で拷問されようが、逃げようが。
「僕も同行するよ。錬金術が役に立つかもしれない」
マグノリアがルークの後を追うように同行する。仕掛けの興味もあったが、いち早く美術品を押さえておきたくもあった。事を内密に解決するなら、自由騎士以外の騎士団に関わらせるわけにはいかない。
「どういう言う事?」
「お前達が国のために働くって約束してくれれば、宰相様に減刑を申請して見るつもりだ」
ウェルスはキャットウォークの三人にそう説明する。他の自由騎士も特に口は挟まなかった。
「……まあ、宰相様も表立って認めるわけにはいかないだろうからな。非公式な司法取引、って所か」
仮にも国の政治を司る存在が、法に関与したとなれば大問題となる。自由騎士達もそれを察し、こういう形での交渉を行っていた。
「そうですわね、貴方達の御父上の名誉回復には尽力しましょう」
被せる様にアンジェリカが言葉を紡ぐ。彼女達の目的が身内の名誉棄損と言うのなら、それを回復させることで盗みを行う目的を無くすことが出来る。
「恩を売るつもりはありません。貴方達が盗みを止めるというのなら、それはそれでいいのです。
ただ、その技術で自由騎士ではできない人助けもできるのです」
言ってアンジェリカは祈るように手を合わせる。彼女達がどういう人生を選んでも構わない。その道を祝福するとばかりに手を合わせていた。
「ま、どんな目的があっても盗みは盗み。犯罪だからね。手段は目的を正当化しないんだよ」
カノンはぴしゃりと言い放つ。自由騎士は別に彼女達の罪を見逃す、と言っているのではない。むしろ罪を償う意味で、彼女達に生きてもらおうとしていた。
「生きて、また会えるならうれしい。あたしは貴方達とまた会いたい」
キャットウォークの三人を見ながらアリスは言葉を放つ。魔女を狩る戦いにまみれた人生だったが、それでも命を奪う意味をアリスは忘れなかった。否、奪い続けたからこそ命の意味を痛感しているのだ。
そんな自由騎士達の言葉を噛みしめ、キャットウォークの三人は取引の答えを返す――
こうしてサンクディゼールに噂される怪盗は舞台から姿を消した。
盗まれた美術品はアジトから回収され、それらの作製人物は皆一人の美術家に統一されて世に出されることとなる。追随し、いくつかの美術品にかけられた作製人の疑惑も明かされる流れとなる。
何時しか噂はあたらしい流行に上書きされ、キャットウォークの名前も記憶から消えるだろう。
三人がどうしてるかは、あえてここでは記さない。
だが悪事で懐を肥やす者の背後に、今日もネコの忍び足が迫るのであった――
そしてウルスス商店に妖艶なネコのケモノビトの常連ができたとか。
真相は――彼らだけが知っている。
「盗まれた美術品は裏社会にも流れていない……という事は、お金目的ではなく、盗んだ美術品そのものが目的?」
路地裏で首を傾げる『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。察するに、お金を目的として盗みをしているわけではなさそうだ。美術品そのものに執着しているか、あるいは盗む行為そのものを楽しんでいるのか。
「わざわざ難易度上げて盗みに来るなんてアホなのかな?」
『元魔女狩り』アリス・ドンナー(CL3000609)は怪盗達の行動を考えて、疑問を口にする。盗みをする際に、わざわざ相手の警戒をあげるメリットはほとんどない。危険度を上げる必要性がどこにあるのか、アリスには理解が出来なかった。
「アジトに盗品を溜めこんでいる可能性は高いですなぁ」
腕を組んで『おちゃがこわい』サブロウ・カイトー(CL3000363)は頷く。国防騎士としての経験上、盗んだ物はその流通から足がつくことが多い。それを恐れているのかもしれない。どうあれ、ここで捕えるのが騎士の務めだ。
「彼女達の絆の深さ……その根幹が分かれば、アジトの割り出しも難しくないかもしれないね」
脳内で演算室での話を思い出しながら『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は口を開く。けして仲間を見捨てない三人の怪盗。その仲の良さは、悪事を行う上では足かせになりかねない。なのにそれを貫くというのはそれなりの理由があるのだろう。
「如何なる信念があろうとも、依頼があれば捕らえる。それが探偵と言うものだ」
興味がない、とばかりに『私立探偵』ルーク・H・アルカナム(CL3000490)は言葉を放つ。依頼があるなら、それをこなす。それが探偵と言うものである。それがルークの信念。キャットウォーク同様、曲げられない部分があった。
「ま、どんな理由で盗みを働いてるにしろ犯罪は犯罪。きちんと罪を償わせないと」
うんうん、と『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)は頷いた。貧乏な人間からは盗まないポリシーがあるようだが、法を犯せば犯罪であることには変わりない。罪を償ってもらうために、カノンは拳を握る。
「俺はここから援護するぜ」
マキナ=ギアを通して仲間と連絡を取るウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。仲間と離れて屋根裏に潜み、キャットウォークを挟み撃ちにするつもりだ。愛銃の感触を確認するように、強く握りしめる。
「どうやら、やってきたみたいですわ」
走ってくる音を聞いたのか『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が武器を構える。三人のネコのケモノビト。水鏡の情報通りの風貌だ。ここで捕えて、彼女達が罪を重ねるのを止めなくては。
「あら、意外なお客さんね。――そう、水鏡で予測されたのね」
リーダーと思われるティアが口を開き、同時に他の二人が構えを取る。散開して逃げることも考えたが、『水鏡で予測しても捕らえられなかった』となれば怪盗の株はさらに上がる。そう判断したのだろう。
一瞬の静寂の後に、騎士と怪盗は交差する。
●
「さぁ、参りましょう。貴女の罪を数えなさい」
一番最初に動いたのはアンジェリカだ。祈るように手を合わせた後に、アイズに向かって距離を詰める。キャットウォークの三人もかなりの速度だが、アンジェリカはその一歩先を行った。相手の先を制し、一番手を奪い取る。
体内に満ちる『龍』の力を身体全てにいきわたらせる。体内に力が満ちたと同時に、アンジェリカは『断罪と救済の十字架』を振るう。高重量の十字架がうなりをあげて振るわれた。的確な場所に的確な衝撃。相手の動きを封じる最適の方法だ。
「私の罪は美術品四十六個の盗難に、いけない大人をたぶらかしたことかしら」
「まあまあ、いけませんわね。ですがそれもここまでですわ」
「今回盗んだ美術品は、それね」
事前に大臣から聞いていたエルシーはティアが抱える物を指差して、そう言う。『双子座の見た未来』……そう呼ばれる絵画だ。謝って壊さないようにしないとね、と意識して紅色の手甲を嵌めなおす。
重心をずらさないようにすり足で移動し、勢いを殺さないように拳を振るう。迫る投げナイフを状態を逸らして交わし、そのままアイズに拳を振るう。一度目は相手を避けさせるため。逃げた先を待ち受けたかのように拳を振るい、打撃を加えていく。
「どんな理由で盗みをしたのか、聞いてもいいかしら?」
「それを素直に話すと思う? 騎士さん」
「まさか身内の作品が別名義で発表されているのを取り戻しているとか?」
腕に絡みつくようにカランビットを振るうラヴァーの攻撃をかわしながら、カノンはそう問いかける。よく分からないけど、なんとなくそんな気がしたのだ。昔そんなお話をセンセーがしていたのかもしれない。
会話に集中している余裕はない。ラヴァーの変則的な格闘動作を避けながら、カノンは拳を振るう。如何なる生物も、体幹が格闘行動の中心となる。センセーの教えを思い出し、ラヴァーの動きを予測する。繰り出された拳をラヴァーの胸を打った。
「へえ、やるじゃない。動きも頭の良さも、流石国家の騎士様だ!」
「同じ格闘家として、負けられないんだから!」
「ふむ。奇妙な怪盗ですな。いや、褒め言葉ですよ」
カノンの動きに合わせるように動くサブロウ。キャットウォークが盗みを行う理由を聞き、むしろ感心していた。我欲の為ではなく、他人の名誉を守るため。とある一族のために戦ったサブロウもその義侠心は理解できる。
無論、感心と戦いは別物だ。尊敬できるからこそ、全力で止める。路地裏の壁を蹴り、刃を構えて跳躍するサブロウ。地を蹴り、壁を蹴り、そして空を蹴る。周囲そのものを足場とし、サブロウは走り回る。死角から繰り出される一撃がラヴァーの肩を裂く。
「ですが仕事は仕事。加減はできませぬよ」
「上等よ! アンタらを倒して、父さんの名誉を守るんだから!」
「きみ達は優しいんだね。家族愛、か」
怪盗達の言葉を聞いてアリスは頷いた。家族の名誉を守るために、あえて自分達の存在をアピールする。そうすることで名誉を汚した相手への警告にもなるのだ。父の為に危険を冒すことをいとわない。そんな家族愛だ。
手にした蒼い刃と紅い刃を組み合わせるアリス。そのまま小さな肉体をかがめて、敵陣に滑るこむように接近する。二つの刃が相手の懐で振るわれ、キャットウォーク達を傷つける。今は亡きミトラースが与えた恩寵。それがアリスを今も動かしている。
「誰かのための泥棒なら、情状酌量の余地はあるかな」
「如何なる信念があれど、盗賊には変わりない」
静かに言い放つルーク。ルークにとって大事なのは善悪ではない。正邪でもない。何を依頼されたか、だ。捕えろ、と依頼されたのだから捕らえる。たとえ相手が聖人君子だとしても、そこを違えるつもりはない。
屋根の上を陣取り、逃走経路の一つを封じる。そこから銃を構え、引き金に力を籠める。大事なのは探る事偵う事。いついかなる状況でも、情報を得る心を忘れない。戦場の中で生じたキャットウォークの連携の狭間。それを見出し、そこを撃ち穿つ。
「今の俺のなすべきは、捕まえて罪を償わせるだけだ。そういう依頼なんでな」
「ええ、それを恨みはしないわ。でも大人しく捕まったりもしない」
「情状酌量の余地は……さて難しい所かな」
ふむ、とあごをさすりながらマグノリアは考える。身内の名誉を晴らすために盗みを続けるキャットウォーク。彼女達の信念を考えれば、名誉が回復するまで盗みを止めさせることは難しいだろう。
今後を考えるのは後、と思考を切り替えるマグノリア。光球を放って明かりを確保し、錬金術を展開する。一人相手の退路を断つために動くウェルスを援護すべく赤き命の水を展開し、その活力を増していく。
「無理をしないでね。ウェルス」
「ああ。それじゃあダンスとしゃれこもうか、レディ」
銃を構え、ウェルスが頷く。黒猫を思わせるしなやかな体。ケモノ率八割のネコケモノビトを前にウェルスは笑みを浮かべた。スマートな美人怪盗を相手に出来る等男冥利に尽きる。上手く踊れるように頑張らなくてはと心に活を入れた。
生まれる静寂は時間にすれば一瞬。しかしウェルスからすれば無限にも感じられた。先に動いたのはティアの方。呪文を飛ばすべく動いた指先を視界に捕らえながら、横に跳躍して弾丸を放つ。足を掠る魔術の痛みに耐えながら、弾丸が当たったことを確認する。
「大人しくするなら、相応の扱いをするぜ」
「あら優しいのね。惚れちゃいそう」
そんなやり取りを交わしながら、刃を交わす騎士と怪盗。
夜の帳の戦いは、まだまだ始まったばかりだ。
●
戦いは自由騎士が優勢に進む。退路を断つように散開した自由騎士はその陣形を生かして攻め立てる。だが怪盗側も囲みの薄い場所を狙って火力を集中させ、包囲を突破しようと試みる。
「おおっと、まだまだ倒れるつもりはないぜ」
背後を押さえていたウェルスが集中砲火を受けてフラグメンツを削られた。だがまだまだ負けないと何とか踏みとどまる。
「流石に戦闘中に熟睡とはいかないか」
ウェルスは睡眠効果のある弾丸を打ち込み、争いなく相手を捕らえようとした。だが戦闘音や振動などで捕縛できるほどの熟睡状態には持って行けないでいた。だが――
「ごめんなさい、とても眠いの……。貴方の胸で、眠らせて」
言ってティアがウェルスの胸に飛び込んでくる。柔らかな胸を押し当てるように体を預け、抱き着いてくる。
「そういう事ならゆっくり眠ってな」
言いながら(捕まえる為に)優しく抱きしめようとするウェルス。だがその瞬間、ティアはウェルスを見上げながら、一歩距離を離して見つめ合うような体制を取る。
「こんなことをしてはしたない女と思わないでね。でも、貴方を見てると、胸が熱くなって気が抜けてしまうの。全てを捨てて任せてしまいたいぐらいに……」
「いいんだぜ。後は俺に任せな」
大人の包容力を見せるウェルス。例え法の敵であっても守って見せる。そう信頼させる何かがそこにあった。
「……ねえ、あれって」
「ええ……。そうね」
そんな様子を見ていたカノンとエルシーは、何かを言いたげに押し黙り、そして頷いた。その後で同時にウェルスを指差して口を開く。
「「色香に騙されて怪盗を逃がす男警察みたい」」
「麗しい女性を口説いているだけだ!」
そんな一幕もありましたが。
「とはいえ、単身敵の後ろに回り込んでいるんだ。ウェスルが危険なことには変わりない」
戦局を冷静に見て、マグノリアが魔術を展開する。経緯はどうあれ、怪盗は退路を断つ存在に矛先を向けている。それは後衛のティアが放つ魔術が戦闘の起点である証だ。ウェルスを保護するために、精製した薬を飛ばす。
「地を這うようなネコの動き……! キャットウォークの名は伊達ではないようですね!」
ラヴァーのカランビットでフラグメンツを削られるサブロウ。ネコのようにかがみこむようにして移動する格闘術。それは跳躍を行うサブロウの動きと相性が悪かった。太ももを裂かれ、痛みを堪えながら太刀を構えなおす。
「だけどこれで終わり! カノンの武術の方が強かったね!」
カノンはラヴァーの動きを見切り、そこに拳を重ねていく。不規則かつ読み切れないリズムで放たれる蹴り繰り出されるカランビットの一閃。だがそれを読み切れば、あとは地力の勝負。各棟に費やした時間の長さで、カノンに軍配が上がる。
「味方を見捨てない。その精神は素晴らしい事です」
一人が倒れたことにより、火力がアイズに集中する。それでもあきらめの表情を見せない彼女に、アンジェリカが称賛の声を送る。たとえ最後の一人になっても諦めない。無言でそう語るその精神は、自由騎士の仲間意識に通じるものがある。
「とはいえ、これで勝ちだ。こちらを封殺する手数はない」
冷静にルークが言い放つ。アイズのカードを受けてフラグメンツを削られたが、それでも屋根の上から落ちることなく気丈に立ち尽くしていた。後衛のティアに銃口を向け、引き金を引く。そこを封じればもはや押さえたも同然だ。
「殺さない程度にはやらせてもらうよ」
双剣を振るうアリス。その出自故に水の女神の権能を持たないと決めたアリスは、他の自由騎士のように不殺の権能を持たない。殺しても仕方のない状況だが、それでもアリスは殺すことを好まなかった。彼女達としっかり話がしたい。
「『緋色の誘惑』! ……女性にも効くのかしら?」
ティアの支援が厄介と判断したエルシーは、誘惑術を使ってティアの動きを止める。ティアはエルシーの行動に対抗するように、蠱惑的なポーズを取りながら攻撃してきた。想像とは異なるが、一応効いてはいるようだ。
互いが互いを補うように動く自由騎士と怪盗。だが地力と数の差は自由騎士にあった。少しずつ怪盗を追い詰めていく。エルシーの拳でアイズが倒れれば、キャットウォークに逆転するだけの火力はない。
「これで依頼は終いだ」
淡々と怪盗を追い詰めるルーク。探偵としてやるべきことはこれで終わり。後は法に委ねるだけだ。最後まで油断することなく、クールに事を運ぶ。それが彼の探偵としてのポリシー。
「あとはどうなろうと依頼外の話だ。――たとえお前達が脱獄しても、な」
引き金が引かれ、拳銃の弾倉が回転する。放たれた弾丸はティアに命中し、その意識を奪い取った。
●
戦い終わり、キャットウォークの三人を捕縛する自由騎士達。
あとは法に任せて、罪を裁くのみ。彼女達の犯罪数を鑑みれば、日の元に戻れないのは明白だった――が、
「宰相様は『処遇は一任する』って言ってたしね。とりあえず美術品のある場所を教えてもらいましょうか」
腰に手を当てて、エルシーが問いかける。牢屋に運ばれて尋問されると思っていたキャットウォークは怪訝に思いながらも問いに答える。
「喫茶店『猫川乱歩』……分かったわ。そこの壁に仕掛けがあるのね。ええと……」
「アマノホカリのカラクサ仕掛けか。俺が行こう。何、探し物は探偵の仕事だ」
仕掛けの内容を聞いたルークがため息をついて歩き出す。美術品を回収すれば依頼は終わりだ。キャットウォークがどうなろうが、関係ない。地下室で拷問されようが、逃げようが。
「僕も同行するよ。錬金術が役に立つかもしれない」
マグノリアがルークの後を追うように同行する。仕掛けの興味もあったが、いち早く美術品を押さえておきたくもあった。事を内密に解決するなら、自由騎士以外の騎士団に関わらせるわけにはいかない。
「どういう言う事?」
「お前達が国のために働くって約束してくれれば、宰相様に減刑を申請して見るつもりだ」
ウェルスはキャットウォークの三人にそう説明する。他の自由騎士も特に口は挟まなかった。
「……まあ、宰相様も表立って認めるわけにはいかないだろうからな。非公式な司法取引、って所か」
仮にも国の政治を司る存在が、法に関与したとなれば大問題となる。自由騎士達もそれを察し、こういう形での交渉を行っていた。
「そうですわね、貴方達の御父上の名誉回復には尽力しましょう」
被せる様にアンジェリカが言葉を紡ぐ。彼女達の目的が身内の名誉棄損と言うのなら、それを回復させることで盗みを行う目的を無くすことが出来る。
「恩を売るつもりはありません。貴方達が盗みを止めるというのなら、それはそれでいいのです。
ただ、その技術で自由騎士ではできない人助けもできるのです」
言ってアンジェリカは祈るように手を合わせる。彼女達がどういう人生を選んでも構わない。その道を祝福するとばかりに手を合わせていた。
「ま、どんな目的があっても盗みは盗み。犯罪だからね。手段は目的を正当化しないんだよ」
カノンはぴしゃりと言い放つ。自由騎士は別に彼女達の罪を見逃す、と言っているのではない。むしろ罪を償う意味で、彼女達に生きてもらおうとしていた。
「生きて、また会えるならうれしい。あたしは貴方達とまた会いたい」
キャットウォークの三人を見ながらアリスは言葉を放つ。魔女を狩る戦いにまみれた人生だったが、それでも命を奪う意味をアリスは忘れなかった。否、奪い続けたからこそ命の意味を痛感しているのだ。
そんな自由騎士達の言葉を噛みしめ、キャットウォークの三人は取引の答えを返す――
こうしてサンクディゼールに噂される怪盗は舞台から姿を消した。
盗まれた美術品はアジトから回収され、それらの作製人物は皆一人の美術家に統一されて世に出されることとなる。追随し、いくつかの美術品にかけられた作製人の疑惑も明かされる流れとなる。
何時しか噂はあたらしい流行に上書きされ、キャットウォークの名前も記憶から消えるだろう。
三人がどうしてるかは、あえてここでは記さない。
だが悪事で懐を肥やす者の背後に、今日もネコの忍び足が迫るのであった――
そしてウルスス商店に妖艶なネコのケモノビトの常連ができたとか。
真相は――彼らだけが知っている。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
特殊成果
『キャットウォークカード』
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
カテゴリ:アクセサリ
取得者:ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)
†あとがき†
どくどくです。
どうして参考にした怪盗がわかってしまったんだー(棒
以上のような結果になりました。
BSはそれ単体で戦局を決めるものではないのであしからず。
MVPはロマンスに全てを費やしたライヒトゥーム様に。
最後の交渉がすんなりいったのは、貴方のおかげです。心情的に怪盗が騎士を簡単には信用しませんので。
それではまた、イ・ラプセルで。
どうして参考にした怪盗がわかってしまったんだー(棒
以上のような結果になりました。
BSはそれ単体で戦局を決めるものではないのであしからず。
MVPはロマンスに全てを費やしたライヒトゥーム様に。
最後の交渉がすんなりいったのは、貴方のおかげです。心情的に怪盗が騎士を簡単には信用しませんので。
それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済