MagiaSteam
Rewardless!? 報酬なき人助け!



●戦争のはざまで
 白蒼激突――
 後にそう呼ばれるニルヴァンでの戦闘中、戦いに巻き込まれないようにとニルヴァンに住んでいたシャンバラ民は一時避難の為に輸送されていた。とはいえ聖堂騎士団は戦闘に駆り出されることになり、避難地区を護る兵力は少ない。そして兵士の注目は戦闘区域の方を向いていた。
 故に、避難地区から抜け出る者がいるといった予想外の行動に気付く者はいなかった。五歳にも満たない小さな体が柵の隙間を抜けていく。
(うさぎ……うさぎさん……)
 マガリーはこっそりと村を抜け出て、近くの森の中を走っていた。なんでも大人たちの話では水害の悪魔がやってきたとか。危険だからお引越しをすると言われた。まだ幼いマガリーにはよくわからないけど、
(そんな危険なところに、うさぎさん、置いてけない)
 うさぎさん。森の中で見つけたウサギの事だ。一か月前に出会い、時折農作業の合間を縫って遊んでいたお友達。自分だけ安全な場所にいるのは耐えられない。
 マガリーは住んでいた村近くまで走る。幸いにして戦闘区域からは慣れている為、矢弾に巻き込まれるという事はなかった。だが――
「うさぎ……さん?」
 ウサギが住んでいる洞穴の近くに、数体の野犬。しかも角のような禍々しい突起が生えていた。瞳は赤く、牙の隙間から紫の煙を発している。
 イブリース。そう呼ばれる現象。それは例外なく元となった生物よりも強く、そして狂暴な存在。
 まだ幼きマガリーがそれを理解するより早く、イブリースの牙はその喉笛を食いちぎっていた。

●報酬なき戦い
「という予知なんだ」
『元気印』クラウディア・フォン・プラテス(nCL3000004)は水鏡階差演算装置が導き出した未来を告げる。ニルヴァン地区まで予知の範囲が広がったのは喜ぶべきことだ。橋頭堡から急げば、幼子が襲われるより早くイブリースに介入できる。
「だけどフレデリックさんが言うには『助けるまではいいが、イ・ラプセルだと名乗らない方がいい』だって」
 曰く、こちらは戦争を仕掛けている側なのだ。そしてシャンバラ国民はミトラースに対し深い信仰をもっている。ミトラースの敵であるイ・ラプセルだと名乗れば恐れられる可能性が高い、と。
 助けても名乗れない。イ・ラプセルの自由騎士としての株が上がるわけではない。少女はシャンバラの騎士団に助けられたと思うだろう。
「それでも、助けてくれるよね……!?」
 見上げるに自由騎士達を見てクラウディアは嘆願する。たとえシャンバラの人であっても、理不尽に殺されていいわけがない。
 報酬なき人助け。貴方はそれを――


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
新天地開拓σ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.イブリース5体の打破
2.マガリーの生存
 どくどくです。
 まあ、システム的な報酬はあるのですが、ええ。

●敵情報
・野犬(×5)
 野犬がイブリースとなった存在です。頭部にねじ曲がった角が生え、口からは紫色の煙を吐いています。性格は獰猛で、仲間以外の生物全てに襲い掛かります。

 攻撃方法
牙  攻近単 肉を喰らい、食欲を満たします。HPチャージ20(6T)
歪角 攻近範 ねじ曲がった角を振るい、周囲を傷つけます。
毒息 魔遠単 毒の息が体をむしばんでいきます。【ポイズン1】

●NPC
・マガリー・ティルモン
 シャンバラ民。ノウブル女性。4歳。まだ幼い少女です。世間の事とかもよくわかっていません。キジンやマガリモノも見たことが無いため、口先三寸で誤魔化せるでしょう。
 自由騎士をシャンバラの騎士と思っているため、言うことは聞いてくれます。
 1点でもダメージを受ければ死亡します。

・シャンバラ兵
 シャンバラの兵士です。いなくなったマガリーを探すために森を捜索しています。
 戦闘中に出てくることはありませんが、戦闘後長々とその場に留まっていれば邂逅する可能性はあります。

●場所情報
 ニルヴァンにある森の中。少し開けた場所。時刻は昼。明るさや広さは戦闘に支障なし。
 戦闘開始時、敵前衛に『野犬(×5)』がいます。味方前衛に『マガリー』がいます。
 急いでいるため、事前付与は不可とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
7モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年02月24日

†メイン参加者 8人†




 狂える牙が幼子の喉笛に噛みつく直前、割って入る影があった。
「大丈夫、僕達が守るよ」
『所信表明』トット・ワーフ(CL3000396)はマガリーを庇うように手を伸ばしながら、背中越しにそう言った。イブリースの殺意に心が怯えるが、それを必死に押さえ込む。この子を安心させるために勇気を振り絞る。
「その兎のお兄さんは君を護ってくれる兎さんだ。安心してくれ!」
 槍と盾を構え、『田舎者』ナバル・ジーロン(CL3000441)が明るく言う。シャンバラとイ・ラプセル。戦争中の相手の子供。だけどそこに意味はない。国が違えど子供は子供だ。救えるのなら助ける。それだけだ。
(今は争うしか出来なくても、こうした事の積み重ねでより良い未来を作っていけたら)
『隠し槍の学徒』ウィリアム・H・ウォルターズ(CL3000276)はマガリーを見ながら静かに思う。戦争は避けられない。国が忌み嫌われることは仕方ない。それでもその憎しみは消えると信じたい。
「助けられる命を助けない、なんて選択肢はないわ」
 帽子の位置を直しながら『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は子供に聞こえないように小さく呟く。小さく、そして強い決意が込められた一言。命は救う。それは大前提。そのために銃を持つのだ。
(――報酬はある。ちゃんとね)
 惨劇の未来を避けたことを確認し、『湖岸のウィルオウィスプ』ウダ・グラ(CL3000379)はフードを深くかぶって安堵のため息をつく。感謝されることのない戦い。だが得るものはある。今こうして生きている子供を見て、それを感じていた。
「……がんばる」
『リムリィたんけんたいたいちょう』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は武器を握りしめ、呟いた。かつて自分が幼子だった頃、助けてくれたお姉ちゃんを思い出す。病弱な体で必死に働き、それでも子供は守ると健気に頑張るあの姿を。今は自分が頑張る番だ。
「一人で来るなんて危険ですよ」
 マガリーを嗜めるように言うティラミス・グラスホイップ(CL3000385)。優しいからこその行動だろう。それでも危険すぎる事は注意しなくてはいけない。ともあれ今はイブリース退治だ。唸る野犬を見ながら魔力を練り上げる。
「イブリース化している、ってことは多少は強いんだろう?」
 野犬を見ながら『隻翼のガンマン』アン・J・ハインケル(CL3000015)は笑みを浮かべる。ただの野犬なら出るつもりはなかったが、イブリース化しているなら話は別だ。多少は骨があるといいのだが。そう思いながら銃を構える。
「ミトラース様の騎士様だー! すごーい!」
 助けられたマガリーは自由騎士の姿を見てそう言い放つ。まだ幼い子供はウダがマザリモノであることなど分からない。心の底からミトラースが遣わせた助けなのだと信じていた。
 純粋な感謝の言葉。自分達ではない、相手国の騎士を称える言葉。自由騎士達がそれをどう受け取ったかは定かではない。
 それでもやるべきことは変わらない。イブリースを倒し、子供を救う。その為にここまで来たのだ。
 イブリースに向き直る自由騎士。飢えを満たす為に牙をむくイブリース。
 両者の戦意は静かにぶつかり合い、そしてはじける様に動き出した。


「僕から離れないでね」
 最初に動いたのはトットだ。マガリーを庇うようにイブリースの前に取り、くの字に曲がったナイフを取り出す。ここから先は通さないとイブリース達に伝えるように強く睨み、盾でマガリーを隠すような位置取りを取る。
 襲い掛かってくるイブリース。その角の一撃をナイフで受け止め、弾くように押し返す。この子は守る。国や環境が違えど、弟や妹と同じ子供なのだ。そこに差はない。あるはずがない。敵国の子供だから殺されていいなんて理屈はない。
「ナバルさん、任せます!」
「任された! よし、どんとこい!」
 トットと入れ替わるようにナバルがマガリーを護る位置に立つ。ウサギとあそぶ子供。かつての自分もそうだったと田舎育ちのナバルは思う。そのウサギは……いろいろ思い出して苦笑する。どんな国でも同じようなことはあるのだろう。
 防御の構えを取りながら、槍を握りしめるナバル。護る事を第一義に置いた戦闘法。その構えを維持しながら、マガリーを安全件に運ぶように少しずつ移動する。迫るイブリースをいなしながら幼子を安全な場所に誘導していく。
「怖かったろう? でも、もう大丈夫だからな!」
「う、うん。あの、うさぎさん……」
「大丈夫。ミトラース様の加護があるから」
 マガリーを安心させるようにティラミスが告げる。その雰囲気と言葉に落ち着いたのか、マガリーは涙を拭いて頷いた。目に見える範囲内でウサギが殺されたような形跡はない。そんな未来もまだ見えない。上手く逃げたか隠れたかを信じるしかなかった。
 マガリーを視界の端に収めながら、戦場を見るティラミス。今、そして五秒後の未来。その両方を並行処理しながら魔力を練り上げる。最も傷ついた者を判断し、癒しの術を行使した。淡く温かい光が仲間を包み込む。
「毒を受けた人は言ってね。すぐに癒すから」
「どちらかというと、マガリーに毒が向かわない事の方が大事だな」
 ロングスピアを手にウィリアム。この戦争終了時に、マガリーへの行為が二国を繋ぐ架け橋になればいい。そんな打算もないとは言わない。だが救える命を救うことは、ごく当然の事だった。
 魔力を用いて式を描くウィリアム。錬金術は学問だ。蓄積されたデータの果てに今の術がある。生命力を活性化刺させ、強い毒をもつ雫を放つ。イブリースの毒息を凌駕する毒がはじけ、イブリースをのけ反らせる。
「癒しの手が足りなければそっちに回る。今は数を減らすことを第一にして動こう」
「ええ。一匹ずつ叩いていきましょう」
 スナイパーライフルを構えるアンネリーザ。自由騎士が称えられなくても構わない。名や身分、立場なんてどうでもいい。助けられる命がそこにあるのだ。だったらやれることをやるだけだ。
 息を吸い、そして吐く。それだけでクリアになっていくアンネリーザの精神。落ち着いた心で銃を構え、静かに引き金を引く。弾丸は真っ直ぐに戦場を飛び、イブリースの眉間に命中する。それを確認するより早く次弾を込め、次の射撃に備えた。
「的は外さない。それが狙撃手の仕事よ」
「じゃくにくきょうしょくにはりかいがある。でもイブリース、おまえはだめ」
 抑揚のない言葉でリムリィが告げる。生きる為に食べ、弱い者を淘汰する。その行為自体は自然そのものだ。だがイブリースは違う。幽霊列車に狂わされた命は自然のそれとは大きく異なる。その牙が命を奪う事を許せなかった、
 武器を持つと同時にリムリィの瞳孔が開く。脳と身体のリミッターが外れ、瞳から赤い液体が流れ落ちた。自分の領域を護る為に激しく戦うカバの本能。リムリィ本人が理解しない衝動に振り回されるように、狂気的ともいえる攻撃が繰り出される。
「―――――――――ッ……!」
「さて、行きますか!」
 銃を構えてアンが口笛を鳴らす。ビリビリトした戦いの空気。生きるか死ぬかの世界。その空気の中に会って、アンは心地良いとばかりに笑みを浮かべる。平和な世界が嫌いではないが、こういう世界だからこそ得られるものもある。
 激しく走り回るイブリースの足元に向かい銃を撃つ。当たりはしないが、祖の動きを制限することができた。生まれた隙を逃すことなく、さらに引き金を引く。弾丸は狙い外さずイブリースの角に当たり、その衝撃でイブリースはもんどりうった。
「悪くない動きだねぇ。だけど俺の方が強い!」
「マガリーは安全な場所に行ったみたいだね。それじゃあ……」
 子供が野犬が一足で到達できない場所まで移動したことを確認し、ウダは首飾りに指を這わす。この布陣なら野犬がマガリーを直接狙う事は叶わず、同時に何かあれば仲間が即対応できる。それを目視し、術を練り上げていく。
 ウダが被ったフードの奥が怪しく光る。完成した術が生み出した赤い雫は、ウダの意志に従いイブリースに向かって飛ぶ。イブリースの皮膚から吸収されたそれは神経を犯して動きを鈍らせ、酸に似た反応で皮膚を焼いていく。
「ままならないものだ。だが、せめて子供にはそういう気持ちはさせたくない」
 現実がままならない事。そんな事は皆分かっている。
 それでも子供だけは救いたい。この世界の汚さから守りたい。明るい未来を築いてあげたい。その為なら喜んで泥をかぶろう。血に塗れよう。
「ガアアアアアアア!」
 吼えるイブリース。自由騎士を難敵と認めたのか、その敵意はマガリーではなくそちらに向く。自由騎士からすれば願ったりだが、かといって油断はできない。
 森の中の闘いは、少しずつ加速していく。


 イブリースの強度は様々だ。元となった動物に由来するという説もあれば、イブリース化してからの時間に比例するという説もある。当たり前だが観察してデータを取れるような大人しい相手ではない。
 今自由騎士達が相手しているイブリースは、相応のものだった。初手にマガリーを下げてなければ、角の範囲攻撃と毒の吐息に巻き込まれて命を落としていただろう。
「全く、楽じゃねえなぁ」
「マガリーを目標にしないようになったのはいい事だけど……ね」
 毒の吐息でアンとウィリアムが膝をつき、意識を失う。
「ほらほら、活きのいい生き物がお前らの前にいるぞ! 喰らいつくならこっちだ!」
 野犬の気を引き仲間を庇っていたナバルが、フラグメンツを削られる。
「アアッ…………アアアアアアアアッ!」
 叫びながらリムリィは武器を振るう。守らなきゃ。小さな子を守らなきゃ。その強い思いがリムリィを動かしていた。そのためならなんでもする。どんなことだってする。何かを失っても構わない。かつて自分がそうされたように――
(リムリィ……どうしたっていうんだ?)
 イブリースの攻撃をさばきながら、ナバルはリムリィの変貌に驚いていた。日常で接する彼女とは違う狂暴化。田舎出で世間を知らないナバルだが、いつものリムリィではない事は理解できる。頼りになるけど、目が離せないでいた。
「毒で削られるのは難儀ですね」
 ティラミスは常にイブリースが与える毒解除に勤しんでいた。『獲物を弱らせて、隙を見て牙で噛みつく』というのがイブリースの基本戦略のようだ。気力が尽きるまでまだ余裕がある。呼吸を整え、焦ることなくティラミスは魔力を練り上げる。
「野犬だけあって、連携はとってくるね。でも――」
 ウダは野犬の動きを見抜き、それを元に動いていた。野犬の連携を崩すように毒の滴を垂らし、毒で失われた体力を補うように薬品を施す。正しい予測から生まれた行動がイブリースの戦略を少しずつ潰していく。
「確実に当てていくわ」
 走り回る野犬のイブリース相手に、命中精度をあげた技で攻めていくアンネリーザ。球を込め、銃を構え、狙い、撃つ。一つ一つの動作を確実に。速度よりも確実さ。それがスナイパーに求められる事。冷静に、だけど『心』を失わぬように。
「報酬は無くても良いんだ。小さな子の命が守れるだけで十分だよ」
 ナイフを振るい走り回るトット。得られるものは少なく、感謝もシャンバラに奪われる。それでもマガリーが死んでいいなんて思わない。ここで彼女を見捨てれば、これからも何かを見捨てることになる。もうなにも、守れなくなる。
 ティラミスの回復を基点にしてイブリースを攻める自由騎士達。
「浄化だけして逃がした方が証拠を残さないかも?」
「いや、マガリーが見ている以上は『シャンバラの騎士』らしい追い返し方をしないと」
「というか野犬という時点で危険だ。逃げてくれるとも限らないし」
 若干方針に齟齬があったが、それでもイブリースを少しずつ追い込んでいく。
「これで最後だ!」
 叫びながら盾を構えるナバル。槍でイブリースの動きをけん制して追い込み、盾で圧し潰すように突撃する。足腰の筋肉を酷使し、重量ある盾を武器にして叩きつける。
「どりゃああ!」
 気合と共に叩きつけられる盾の一撃。吹き飛ばされたイブリースはそのまま横倒しになり、動かなくなった。


 戦いが終わり、
「ミトラースの聖堂騎士様、ありがとうございます」
 木の影から出てきたマガリーが自由騎士達に頭を下げる。マガリーの台詞を修正することなく、手を振ってそれに答える自由騎士達。
「俺はあの野犬どもを駆除しに来ただけさ。礼なんて要らねぇ」
 アンはそっけなく言い返す。子供は苦手だ。純粋な笑顔でこちらを見る姿。それに耐えきれなくなったのか背を向ける。
「あとうさぎを探しに来たんだろう? あの洞穴じゃないか」
 アンが指さす先に、小さな洞穴があった。高さ50センチにも満たない穴だが、ウサギが入るには十分な高さだ。そこからひょっこりと顔を出すウサギ。
「うさぎさんだー」
 とてとてとそっちに走っていくマガリー。人間に慣れているのか、抵抗することなく抱きかかえられるウサギ。
「貴女はとっても優しいのね……その優しさを大切にして」
 その様子を見てアンネリーザは微笑んだ。彼女は敵国の子供で、あのゲオルグと同じミトラースの信望者だ。だからといって優しくないと断言はできない。
「……どんな国で生まれようと、根っこはそんな変わらないよな。きっと」
 うんうんと頷くナバル。田舎から出て自由騎士になってから色々な経験をしてきた。理解できない悪人もいたが、敵国でも理解できる人はいる。そう信じれる一幕だ。
「……わたしたちはせいどうきしだんのひみつぶたい。ひみつのさくせんがあるから、このことはないしょ」
 リムリィは指を一本立てて唇に当てる。その意図を察したのか、マガリーも口に指を当てて頷いた。
「……ん、いいこ。ミトラースのかごがありますように」
「騎士様にも御加護がありますように」
 リムリィの言葉に祈る様に頭を下げるマガリー。
(この笑顔が最大の報酬だな)
 そんな様子を見ながらウィリアムは小さく頷いた。イ・ラプセルの益になるわけではないが、それでも得るものはあった。
「あっちの方に避難所からの兵士がいるから」
「私たちはここでお別れだけど、一人で行ける?」
 トットとティラミスの言葉に、頷くマガリー。ウサギを抱いて走りだし、振り返って手を振ってまた走り出した。
 そしてその姿も消える。それを見送った後に自由騎士達はニルヴァンに向かって移動し始めた。

 かくしてこの事件は終わりを告げる。
 マガリーは無事にシャンバラ兵に保護され、叱られたり心配されたりとひと悶着あったが、イブリースを始めとした騎士達の接触のことは一切喋らなかった。
 シャンバラ側からすれば記録に残る事のない事件。イ・ラプセル側からすれば報酬なき人助け。名誉も感謝もない話。
 だが構わない。
 自由騎士の心の中に、確かに得たものはあった――


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†


 どくどくです。
 マガリー、がっつり守られたなぁ……。隙なかった。

 以上のような結果となりました。こういうシナリオだと強すぎるだろうパリィング。
 範囲攻撃でワンチャンとかいう夢もあっさり潰えました。
 MVPは最も適切にマガリーの口止めを行ったアルカナム様に。最後のセリフが決め手でした。
 
 シャンバラ戦はここから佳境に入ります。
 移り行く時代の中で皆様がどういう選択をするのか、それを心待ちにしながら筆を置かせてもらいます。

 それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済