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【三巴海戦】BANG! BANG! BANG!

●
「ブラッドベリ二等! 無意味に銃を撃つのをおやめください!!」
「なんでだよ~~、ベインちゃんまだ治ってないし!!! 暇だから現場に出るっていってるんじゃん? じゃん? じゃん?」
船頭で長い足を手すりにかけ、銃を乱射ながらレイ・ブラッドベリ二等が部下の蒸気騎士に止められるが、レイはまったくもって気にもかけず、遠くに見えるイ・ラプセルの軍艦を眺める。
「よし! 大砲をだせ! 撃っちゃおうぜBANG! BANG! BANG!」
「無茶をいわないでください。他の軍艦にあたってしまいます! それにイ・ラプセルの騎士にはオラクルも多いです! 当たるわけがありません!」
夏も終わりに近づいたころ、スレイブマーケットが襲われた。
奴隷解放組織フリーエンジンがその船頭をとったと言われているが、あの弱小組織が果たしてそんな大仰なことができるだろうか?
そして見え隠れする死んだはずの自由騎士の影。なんのことはない。『彼らはもとより死んでいない』。
で、あれば十中八九フリーエンジンと自由騎士が与したと判断しても間違いないだろう。
そして、先日のエスター号の略奪。
イ・ラプセルからの開戦宣言。
なんとも我が灰色の機国は押されっぱなしと言わざるをえまい。
彼らのこれ以上の進軍を許せば歴史ある機国の汚点になる。我が麗しの蒸気王とヘルメス神のご機嫌が悪くなるのはよろしくない。
「当たるわけない?? やってみないとわかんないじゃん??」
「お願いします! 弾代もまた国民の血税です! やめてください!」
「つまんねえつまんねえ! つ~~~ま~~~ん~~~ねぇえ~~~~~~」
まるで大きな赤ん坊のような上司に舌打ちすることも許されず――そんな素振りを見せたら額に大きな穴があいてしまうだろう――必死で部下の蒸気騎士はあやすように機嫌をとる。
「とにかく、自由騎士との戦闘。二等の活躍を期待していますので!」
「ふぅ~~~~ん。あっそ、BANG!」
高い銃声と紫煙。
額を撃ち抜かれた蒸気騎士はゆっくりと倒れる。
「さ~~~~~って! がんばっていきまっしょい!!!!!!!」
「戦でござるよ? にんにん」
おまえ、いつのまにそんなキャラになった。『一刀両断』ムサシマル・ハセ倉(nCL3000011)が刀をふりまわしながらテンションをあげている。
「船にがーっといって、がーっとなんかいいかんじにえいえいやるでござる」
全くわからない。
「わからないでござるか?
とにかく派手にいくでござるよ~~~~~~~~~!!!!」
「ブラッドベリ二等! 無意味に銃を撃つのをおやめください!!」
「なんでだよ~~、ベインちゃんまだ治ってないし!!! 暇だから現場に出るっていってるんじゃん? じゃん? じゃん?」
船頭で長い足を手すりにかけ、銃を乱射ながらレイ・ブラッドベリ二等が部下の蒸気騎士に止められるが、レイはまったくもって気にもかけず、遠くに見えるイ・ラプセルの軍艦を眺める。
「よし! 大砲をだせ! 撃っちゃおうぜBANG! BANG! BANG!」
「無茶をいわないでください。他の軍艦にあたってしまいます! それにイ・ラプセルの騎士にはオラクルも多いです! 当たるわけがありません!」
夏も終わりに近づいたころ、スレイブマーケットが襲われた。
奴隷解放組織フリーエンジンがその船頭をとったと言われているが、あの弱小組織が果たしてそんな大仰なことができるだろうか?
そして見え隠れする死んだはずの自由騎士の影。なんのことはない。『彼らはもとより死んでいない』。
で、あれば十中八九フリーエンジンと自由騎士が与したと判断しても間違いないだろう。
そして、先日のエスター号の略奪。
イ・ラプセルからの開戦宣言。
なんとも我が灰色の機国は押されっぱなしと言わざるをえまい。
彼らのこれ以上の進軍を許せば歴史ある機国の汚点になる。我が麗しの蒸気王とヘルメス神のご機嫌が悪くなるのはよろしくない。
「当たるわけない?? やってみないとわかんないじゃん??」
「お願いします! 弾代もまた国民の血税です! やめてください!」
「つまんねえつまんねえ! つ~~~ま~~~ん~~~ねぇえ~~~~~~」
まるで大きな赤ん坊のような上司に舌打ちすることも許されず――そんな素振りを見せたら額に大きな穴があいてしまうだろう――必死で部下の蒸気騎士はあやすように機嫌をとる。
「とにかく、自由騎士との戦闘。二等の活躍を期待していますので!」
「ふぅ~~~~ん。あっそ、BANG!」
高い銃声と紫煙。
額を撃ち抜かれた蒸気騎士はゆっくりと倒れる。
「さ~~~~~って! がんばっていきまっしょい!!!!!!!」
「戦でござるよ? にんにん」
おまえ、いつのまにそんなキャラになった。『一刀両断』ムサシマル・ハセ倉(nCL3000011)が刀をふりまわしながらテンションをあげている。
「船にがーっといって、がーっとなんかいいかんじにえいえいやるでござる」
全くわからない。
「わからないでござるか?
とにかく派手にいくでござるよ~~~~~~~~~!!!!」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.敵戦艦の撃退
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「この共通タグ【三巴海戦】依頼は、連動イベントのものになります。依頼が失敗した場合、『【三巴海戦】KEEP! エスター号防衛戦!』に軍勢が雪崩れ込みます」
----------------------------------------------------------------------
たぢまです。
がっといってうわっと頑張ってください。
なぜか蒸気騎士が一人死んで転がってます。足をとられないように気をつけてください。
足元はゆれますし波しぶきがあるので、濡れていて滑りやすくなっています。
敵軍艦(蒸気船)にはHPが設定されています。
主要装置を破壊し、破壊率50%以上にする。
もしくは敵軍の軍人(兵站軍含む)を半数以下にすると退却します。
自由騎士が半数戦闘不能になった場合には退却となります。
甲板の長さは50m前後。広さは15mほど。下記大砲は前方左右に6門、後ろ左右に2門おおよそ等間隔でついています。
操舵幹は前方よりにあります。
軍艦の破壊のポイントは
大砲✕8 防御力高い、一つ破壊につき8%の破壊率
破壊するには一人が集中して3Tかかります。同じものを2人以上で破壊してもターン数はかわりません。破壊する間無防備になります。
操舵幹 破壊すると30%の破壊率になります。
破壊するには一人が集中して5Tかかります。2人以上で破壊してもターン数は変わりません。破壊する間無防備になります。
レイが守っています。操舵幹に攻撃するものを最優先で攻撃します。
基本的に破壊する人員を集中して攻撃してくるので、抑え役や破壊する人員のバランス、目的地はどこにするか、などをよく考えて配置することをおすすめします。方針がバラけているといい結果にはなりません。
機関室など機関部に向かうことはできません。操舵幹を壊しても移動は機関室のサブの操舵幹でできます。
夕刻ですので暗いですが船の灯があるので問題ありません。
エネミー
レイ・ブラッドベリ二等 ノウブル・ガンナー・ガンナースキルのランク3まで使います。
火力、CTは高めです。
かなりの気分やさんです。なにしてくるかわかりません。おしゃべりに興じてはくれますがあくまでも敵です。
ターン毎にサボる、攻撃する、兵站軍を殺すなどの行動判定をダイスでふります。上から順番に確率たかくなっています。攻撃された場合や操舵幹を破壊する場合にには反撃をします。
愛しのベインちゃんが修理中なのでナーバスです。戦闘中につい想いを馳せることもあるでしょう。安い挑発にはのりません。
それなり以上に強いです。
EX(P)トリガーハピネス
誰かを倒すたびに攻撃力があがっていきます。
うっかり兵站軍を殺すこともあります。レイが殺した兵站軍も基本的にはPC側のキルカウントになります。
EX 13階段
貫通(25・125)・二連撃・【??】【??】
その銃弾は刑吏の足音。じゅうとみっつでジ・エンド(さあ、おわり)
その気にさせることができたら使います。使えといわれれば使わなくなるような天の邪鬼ですがピンチになった場合には使って逃げるくらいのことはします。
歯車騎士団(蒸気騎士)8名
後衛から攻撃してきます。彼らに向かうには兵站軍が邪魔をします。
騎士鎧風の蒸気兵器を身に纏った存在です。大きさは人間大程度。
『クイーンオブハート』と呼ばれる魔術を遮るコーティングと、『マーチラビット』と呼ばれる多段炸裂弾(遠距離範囲・三連撃・バーン2)を持つことが分かっています。
兵站軍 8名
ヒーラー系2人、他バトルスタイルはバラけています。
蒸気騎士、兵站軍ともに練度は低くありません。
(一撃で倒せる、1~2ターンで倒せる敵ではないということです)
兵站軍、歯車騎士はランク2までのスキルを使います。
ムサシマルはほっといたらほっといたで適当に皆様のお役に立てるようにがんばります。
指示があれば【ムサシマル指示】とかかれた発言の最新を参照します。
がんばってください!
「この共通タグ【三巴海戦】依頼は、連動イベントのものになります。依頼が失敗した場合、『【三巴海戦】KEEP! エスター号防衛戦!』に軍勢が雪崩れ込みます」
----------------------------------------------------------------------
たぢまです。
がっといってうわっと頑張ってください。
なぜか蒸気騎士が一人死んで転がってます。足をとられないように気をつけてください。
足元はゆれますし波しぶきがあるので、濡れていて滑りやすくなっています。
敵軍艦(蒸気船)にはHPが設定されています。
主要装置を破壊し、破壊率50%以上にする。
もしくは敵軍の軍人(兵站軍含む)を半数以下にすると退却します。
自由騎士が半数戦闘不能になった場合には退却となります。
甲板の長さは50m前後。広さは15mほど。下記大砲は前方左右に6門、後ろ左右に2門おおよそ等間隔でついています。
操舵幹は前方よりにあります。
軍艦の破壊のポイントは
大砲✕8 防御力高い、一つ破壊につき8%の破壊率
破壊するには一人が集中して3Tかかります。同じものを2人以上で破壊してもターン数はかわりません。破壊する間無防備になります。
操舵幹 破壊すると30%の破壊率になります。
破壊するには一人が集中して5Tかかります。2人以上で破壊してもターン数は変わりません。破壊する間無防備になります。
レイが守っています。操舵幹に攻撃するものを最優先で攻撃します。
基本的に破壊する人員を集中して攻撃してくるので、抑え役や破壊する人員のバランス、目的地はどこにするか、などをよく考えて配置することをおすすめします。方針がバラけているといい結果にはなりません。
機関室など機関部に向かうことはできません。操舵幹を壊しても移動は機関室のサブの操舵幹でできます。
夕刻ですので暗いですが船の灯があるので問題ありません。
エネミー
レイ・ブラッドベリ二等 ノウブル・ガンナー・ガンナースキルのランク3まで使います。
火力、CTは高めです。
かなりの気分やさんです。なにしてくるかわかりません。おしゃべりに興じてはくれますがあくまでも敵です。
ターン毎にサボる、攻撃する、兵站軍を殺すなどの行動判定をダイスでふります。上から順番に確率たかくなっています。攻撃された場合や操舵幹を破壊する場合にには反撃をします。
愛しのベインちゃんが修理中なのでナーバスです。戦闘中につい想いを馳せることもあるでしょう。安い挑発にはのりません。
それなり以上に強いです。
EX(P)トリガーハピネス
誰かを倒すたびに攻撃力があがっていきます。
うっかり兵站軍を殺すこともあります。レイが殺した兵站軍も基本的にはPC側のキルカウントになります。
EX 13階段
貫通(25・125)・二連撃・【??】【??】
その銃弾は刑吏の足音。じゅうとみっつでジ・エンド(さあ、おわり)
その気にさせることができたら使います。使えといわれれば使わなくなるような天の邪鬼ですがピンチになった場合には使って逃げるくらいのことはします。
歯車騎士団(蒸気騎士)8名
後衛から攻撃してきます。彼らに向かうには兵站軍が邪魔をします。
騎士鎧風の蒸気兵器を身に纏った存在です。大きさは人間大程度。
『クイーンオブハート』と呼ばれる魔術を遮るコーティングと、『マーチラビット』と呼ばれる多段炸裂弾(遠距離範囲・三連撃・バーン2)を持つことが分かっています。
兵站軍 8名
ヒーラー系2人、他バトルスタイルはバラけています。
蒸気騎士、兵站軍ともに練度は低くありません。
(一撃で倒せる、1~2ターンで倒せる敵ではないということです)
兵站軍、歯車騎士はランク2までのスキルを使います。
ムサシマルはほっといたらほっといたで適当に皆様のお役に立てるようにがんばります。
指示があれば【ムサシマル指示】とかかれた発言の最新を参照します。
がんばってください!

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2019年12月04日
2019年12月04日
†メイン参加者 8人†
●
つまんねぇ依頼だ、とウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は呟く。
「つまんねぇって?」
味方すら何の戸惑いもなく殺すレイ・ブラッドベリという男が『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)には理解ができなかった。だから――これ以上はやらせない。
敵将の足元に転がる死体に歯噛みしつつ、ただこのメンバーのなかでナバルひとりだけがつまらなさそうな顔をしていたウェルスの呟きに問いかける。彼の様子は打ち合わせの時点でおかしかった。それに気がついたゆえの問いかけだ。
「なんでもねえ」
ヘルメリアの兵は蒸気騎士だの兵站軍も関係ない。全部殺してやると決めていた。差別主義の機国。それは――差別を受ける亜人であるウェルスにとって憎むべき相手だ。彼らを「大義名分」のもとに殺せる依頼であるはずだった。――が、決まった作戦は大砲と操縦桿の破壊。
もちろんそれに異を唱えるつもりはない。だからこそ「つまらない」のだ。決まった作戦には従うのみだ。
「おしゃべりの時間はおわりだ。得物の前でそんな余裕をみせているのは三流の証だ」
誰よりもこの場の戦場を得意分野とする『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は突如の波の揺れにも動じることはない。
いくぞ、と最低限の言葉で彼らは各々の配置につく。
「ほいさ、派手なのは苦手だけど地味にコツコツ破壊工作はまかせて! アダム、ムサシマル! あたしを守ってね! あたしが怪我したら罰金とるからね!!」
「えっ?! うん、守る。それが僕の――騎士の努めだね。了解した」
「ガッテン! てか拙者だって、か弱き乙女でござるよ?!」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)の要請に、『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)とムサシマル・ハセ倉が異口同音に答えた。
「そうかい? お嬢ちゃん。おじさんは派手にいくのがすきなんだけどな」
戦う前に既に撃たれた兵士を目の端にとらえ、この国らしいとすら思う……いや、さすがにこれは特殊ケースだ。合理的であるこの国において明らかに異質の存在。それがあの男、レイ二等であると『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)は知っている。
彼の噂は工作員時代にも聞いていた。曰く殺した敵より味方のほうが多い。曰く兵站軍の無駄遣いをさせたら右にでるものはいない。つまりはクレイジーな男なのだ。
そんな男の狂気を知りたいと欲したのは『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)だ。
彼の狂気はどこからきてどこにいくのか。その根底が知りたかった。他者の命ではなく蒸気機械に夢中になるその理由を。
殺し合いよりは幾分もましですわ。
『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は決まった作戦にほっとした一人だ。戦場に出はじめて、すでに数ヶ月は経過しているとはいえ、戦場の血生臭さはお嬢様である彼女にとって心地がいいものではない。青の女神から託されたこの力は、癒やしの力。
きっとそれはこの戦場で死を遠ざけることのできる優しい力。きっとそんなことを口にしたらみんな揃って甘いというのだろう。それでいい。青の女神のように理想を抱くことは決して悪いことではないのだから。
レオンティーナは自らの近くにいるマザリモノの双子の自由騎士に「がんばりましょう」と声をかける。双子は何度も頭を縦にふって答えた。
大砲の破壊にはレオンティーナとクイニィー、アダムとムサシマルが従事する。
アタッカーはクイニィー。まずはホムンクルスにも壊させようと命令するが、流石にすぐに敵兵に破壊されてしまった。まあいい。それは想定済みだ。
クイニィーが対する敵は大砲。シンプルな昔ながらの大砲だ。ごく単純に砲身を歪ませて内部のライフリングをめちゃくちゃにしてやれば修理には時間がかかるだろう、と彼女は推測する。
少しでもヘルメリアの邪魔ができるならそれに越したことはないのだ。
とはいえだ。破壊をはじめてから敵蒸気騎士のクイニィーへの集中攻撃は続く。アダムに守ってもらっているとはいえなかなかに怖い。
「マーチラビットの発射体勢のものが居ます!」
レオンティーナもまたアダムにダブルカバーリングでまもられながら叫ぶ。その警告が怖いんだとクイニィーは思う。当たらなくても戦場の空気、爆音には思わず反射的に体が竦んでしまう。
操縦桿組が操縦桿を壊してくれるまでの間大砲を壊し続けなくてはいけない。わりと厄介な仕事だしノルマは三本。うんざりしそうだ。
ムサシマルはクイニィーたちに向かってくる兵站軍をブロックするが人数が多いのは兵站軍だ。
「少し削ったほうがいいでござるな」
「そうですわね。牽制をかけます」
「レオンティーナさん離れないで。クイニィーさんと君は僕が守るから」
「両手に花でござるな! でもな~~、アダム殿一番美しい花を逃してるでござるなぁ~~かわいそうでござるな~~」
「ムサシマルはいいから、戦ってよ~~、こっちは破壊に集中てるんだってば!!」
少々のんきにも程があるそんな戦場の空気が多少緩む。それが自由騎士らしさなのだとアダムは思う。
二人を守り、鉄壁の防御を展開するアダムは敵にとってはとにかく邪魔な存在だ。
蒸気騎士たちの攻撃がアダムにシフトする。当然だ。驚異は迅速に排除するのが戦場だ。
それでいい。ヒーラーもレオンティーナの牽制攻撃を回復するのに手間取っている。それが狙いだ。
アダム・クランプトンは騎士だ。
いわゆる軍人を現す騎士ではないと自分は思う。目指すべきは真なる騎士。弱きものを守り、強大な悪をくじくもの。昔読んだ物語の主人公のようなそんな存在が、彼にとって目指すべき騎士の姿なのだ。
「一個こわしたよ! 次々! しゃきしゃきいくよ!」
クイニィーの声。彼らは次の大砲に向かう。もちろん移動は邪魔をされる。
レオンティーナが移動のため牽制の弓術を展開する。ヒーラーである彼女のその攻撃はあくまでも牽制。青の女神の愛を現す権能に包まれたそれ。誰かを殺す刃ではない。
甘いといわれるその心は、アダムにとっては心強いものだった。
彼は倒れた兵站軍には手を出すことはない。
一方操縦桿に向かうのはアデルとニコラス、マグノリアとナバルとウェルスの攻撃、防御、そして潤沢な回復役のいる鉄壁の陣営だ。
(絶対に守り切る。オレは盾だ!)
奇しくもこの場にいる二人の少年キャバリエは同じことを考えこの場に立っていた。
「おいおい、自由騎士様たちが俺に熱烈ラブコールってやつ? っしゃあ! BANG! BANG! いっちゃおうか!」
レイのバレッジファイアが戦い開始の号砲代わりに降り注ぐ。
数人の兵站軍が巻き込まれるがレイは気にすらしていない。ヒーラーが仲間の兵站軍を必死に回復する。
彼にとって兵站軍の命など、言ってみれば羽より軽いのだろう。
(俺にとっちゃヘルメリアの物になった奴等にはもう同情も哀れみも湧かない。兵站軍は女子供だろうと、ヘルメリアを潰すための障害の1つだ)
敵兵ですら傷つくことに眉をしかめるナバルの表情をみてウェルスは無言でそう思う。
敵兵と交わす言葉などない。アイツラは生きているだけで邪魔なそれだ。
「ねえ、君はどうして命を軽く扱うの?」
マグノリアは問いかける。
「軽くない命なんてこの世には存在しないぜ? みんなみんな「歯車」だ。欠けた歯車は交換するだけ。邪魔な歯車だったらメンテナンスでBANG! さ!」
陽気なレイはそのマグノリアの問いに答える気になったようようで銃を下ろす。
いまのうちだとアダムは破壊工作(サボタージュ)を続ける。
「ナバル、お前の守りが頼りだ。50秒、俺の、いや俺達の命を預ける」
「わかってる。オレが守る。皆、皆守る。そして笑うんだ、うちに帰って、みんなで」
蒸気騎士と数人の兵站軍はアデルを狙うがその銃弾はナバルに弾かれることになる。
「おっと、いい気合だな、ナバル。任せろ。俺がゆる~っと回復すっからさ、やばくなったらウェルスもな」
「ああ」
言葉少なに返事し、操縦桿近くの大砲を狙えば、蒸気騎士の狙いがウェルスに向かう。
「こりゃあ、おじさんいそがしそうだ。マグノリアは……奴さんの気を引いているな……OK、おじさんが頑張るとするか」
ニコラスは自分にも気合をいれる。とにもかくにもマーチラビットが厄介なのだ。
「「歯車」は君たちの国にとってそれほどたくさんあるのかな?」
マグノリアは問う。ヘルメリアの人口、主に使い捨てである亜人を揶揄した問いだ。使い潰せばそのぶんだけ人口は減っていく。
「足りなければ、足りないでそのへんから奪えばいいだろ? このまえのシャンバラ割譲でいっぱい亜人もふえたしな! なんだっけ? ヨウセイ? アイツラカッコイー機械をつけてやったのにボロボロ泣くんだぜ? ヤクタタズの亜人風情をノウブル様の役に立てるように改造したのにさ~~。そういえばショッチョが脳みそもいじってたっけ? 脳みそ機械にするよ~とか。流石に失敗しちゃったけどね! てへ!」
「……っ、そういえばベインちゃんだっけ? プロメテウス/ベインの容態はどうだい?」
不愉快な会話の方向をマグノリアは意識的に変える。
「まだにゅーいんちゅう。べいんちゃん痛い痛いだぜ!! つかお前らが壊したんじゃん!!!! 俺ちゃんさまのお気に入り! あれ修理時間かかるんだぜ! ショッチョも俺が壊した~~って切れてるしさ~~~」
うまい、とアデルは思った。一番脅威であったレイの攻撃がこないのであれば、ナバルの負担も少しはマシになる。さり気なくニコラスに施されたマグノリアのアンチトキシスでニコラスにも魔導力の余裕はできている。
「それは申し訳なかったけど、僕たちは敵同士、「相容れない立場」だからね。そういうこともある……よ。
だけど、僕にもお気に入りを壊されたなら、……許せないって気持ちはわかる」
「許せない? ……っていうか機械は直せばいいじゃん? 待ち時間はうんざりだけど治すことはできる。 それに比べてヒトの命ってやつは。壊れたらおしまいじゃん。弱い弱い」
だから、命は大切であるとおもうのが一般的な考え方なのだろう。しかし――。
「だったら、やっぱ機械のほうが代えがきいて便利だし、反抗もしないし、ヒトなんかより大事じゃん」
だから、ヒトより機械のほうが重要。それがレイ・ブラッドベリという男の価値観なのだ。
その異様な考えにマグノリアは会話と同時におこなっていたタンゴのステップに迷いが生じたたらをふむ。バランスこそは崩してはいないがタンゴのステップは中断してしまった。
「マグノリア、ウェルスに回復を!」
ちょうどいいとニコラスはマグノリアに支持をだせば、マグノリアは頷いて術式を組み換えウェルスを回復する。彼の周囲には穴ぼこを開けられた兵站軍が倒れている。盾代わりにつかわれたのだろう。
「ウェルスさん、無茶してっ!」
ナバルがウェルスを防御することを考えたのを看破したニコラスが手でナバルを静止する。
「やるべきことをやるんだ。あっちにはマグノリアが向かった。だから大丈夫だ」
操舵桿破壊まであと10秒。たった10秒をこれほどまでに長いとおもったことは今まであっただろうか?
「おっと、やっべ、操舵桿破壊とか何やってんだよ!! おい! 蒸気騎士たちちゃんと仕事してんの??? 止めろよ! ころすぞ」
言ってレイは銃を構える。それはガンナーのスキルとしての構えではない。
「あぶない……!」
それが何を示すのであるか直感したマグノリアが叫ぶ。
「階段を登ろうぜ。13段目で終わりだ、じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさんッ!!」
レイの銃口がナバルもろともにアデルを狙う。
「させるかあぁあああ!」
少年ナバルは叫ぶ。展開したパリィングの防御を超えるダメージがナバルの身を貫きそして――。
「よくやった、ナバル。任務完了だ」
13の刑吏の弾丸はアデルを貫くことはなかった。なぜなら全て、その全てのダメージをナバルがキャバリエの誇りにかけて自らの身に留めたからだ。その時間稼ぎによってアデルの破壊工作は完了する。
撃たれた弾痕を伝い不安がナバルのなかに渦巻くが、精神力でなんとかそれを払拭した。
操舵桿はアデルによって完膚なきほどまでに破壊されている。
「しゃあ……」
ふらりとナバルの体が揺らぐのをアデルが腕を持ち上げて止める。守りの勇者が跪くにはまだ早い。
ナバルもまた勇者である運命力を削って心を奮い立たせる。
仲間がいる限りはまだ倒れるわけにはいかないのだ。
「こわしたーー!!」
「こっちもだ」
ややあって、クイニィーとウェルスが大砲の破壊を宣言する。
これで、大砲3門と操舵桿の50%の破壊がなされることになった。あとは撤収だ。
「おいおい、まじかよ。かわいこちゃんとのトークしてた俺ちゃん、もしかしてハニートラップに引っかかったってやつ?????」
自由騎士たちはレイに答えることもなく、アダムを殿に撤収準備にかかる。
「アデルくんも……! 目的は果たしたんだ! ブラッドベリ二等が存在している戦場にとどまる意味はないよ! エスター号に向かわないと!」
叫ぶアダムをアデルは視線で制する。
「レイ・ブラッドベリ二等。プロメテウス/ベインのパイロットだったな。ここでお前を殺しておけば、プロメテウスを一機無力化できるというわけだ」
「はぁ? そりゃ挑発かい? 機械野郎。いいぜ? むしゃくしゃしてたところだ。こいよ。ぶっころしてやる」
アデルは一歩進む。そしてアダムは気づいた。アデルがその運命を削るという切り札をきったことに。
「アデル、くん?」
「アダムさん~! はやくですわ!」
レオンティーナが急かす。
「仕方ないな、殿の仕事がひとつオーダーされようだ。レオンティーナさんたちははやく逃げて」
アダムが防御の体勢をとる。
「僕は守るものだ。僕は騎士だ。ナバルくんには少し騎士として格好いいところをとられたからね。次は僕の番だ」
そう、改めて自分の立ち位置を確認するアダムをアデルは一瞥し、ベアリング散弾の残数を数える。十分だ。
「じゃあ死ねよ! おまえらガキども二人そろってさぁ!!」
レイがまた少年たちに向け13階段の構えをとる。
不吉の散弾がばらまかれるその前にベアリング弾がレイの目の前で炸裂した。
――なんだと? 距離が……?!
もともとそれほどの距離は開いてはいなかったとはいえ、だ。まばたきの刹那にアデルが自分の胸元にまで接近したと思った瞬間に自分の胸元が炸裂したのだ。意味がわからない。
「戦略兵器の操縦兵が目の前にいる好機を活かす」
そう、それはまるで「奇跡」のような瞬歩。
「てめえええええ!! 機械野郎!!」
アデルの攻撃は続く。愛用のジョルトランサーが火を吹く。
「吹き飛べ!! クソ野郎!!」
レイはギリギリの戦場で培われた反射神経で体幹をずらす。――が。
アデルのアヴァランチ・アサルトはレイの右腕を貫き吹き飛ばす。その勢いでレイは海に投げ出されてしまった。
「畜生! お前のことは覚えたぞ! 機械野郎!!!!」
大きな水音をあげ、レイの体が海の中に水没していく。
夕闇の昏い海がレイを飲み込みその姿はあっという間に見えなくなった。
「やったのか」
アダムが呟く。
「わからん」
魂さえも削るようなその攻撃(きせき)の大きな消耗にアデルは膝をつく。膝が震える。これ以上立っているのは難しい。
「とにかく、いくよ」
アダムは意識朦朧なアデルをかかえ、仲間の乗り移った自軍の軍艦に飛び移った。
「んもー! アデルさんもアダムさんも! 無茶しすぎですわ!」
ぷんぷんと頬を膨らますレオンティーナの後ろでは、満身創痍の仲間がイ・ラプセル艦の乗務員に手伝われながら回復をしている。
一人も欠けることはなくこの場を制した彼らは、ヘルメリアの軍艦が本国にむけ危うい足取りで帰っていくのを見つめた。
戦いは――。
エスター号での解放戦線はまだこれからである。
つまんねぇ依頼だ、とウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は呟く。
「つまんねぇって?」
味方すら何の戸惑いもなく殺すレイ・ブラッドベリという男が『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)には理解ができなかった。だから――これ以上はやらせない。
敵将の足元に転がる死体に歯噛みしつつ、ただこのメンバーのなかでナバルひとりだけがつまらなさそうな顔をしていたウェルスの呟きに問いかける。彼の様子は打ち合わせの時点でおかしかった。それに気がついたゆえの問いかけだ。
「なんでもねえ」
ヘルメリアの兵は蒸気騎士だの兵站軍も関係ない。全部殺してやると決めていた。差別主義の機国。それは――差別を受ける亜人であるウェルスにとって憎むべき相手だ。彼らを「大義名分」のもとに殺せる依頼であるはずだった。――が、決まった作戦は大砲と操縦桿の破壊。
もちろんそれに異を唱えるつもりはない。だからこそ「つまらない」のだ。決まった作戦には従うのみだ。
「おしゃべりの時間はおわりだ。得物の前でそんな余裕をみせているのは三流の証だ」
誰よりもこの場の戦場を得意分野とする『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は突如の波の揺れにも動じることはない。
いくぞ、と最低限の言葉で彼らは各々の配置につく。
「ほいさ、派手なのは苦手だけど地味にコツコツ破壊工作はまかせて! アダム、ムサシマル! あたしを守ってね! あたしが怪我したら罰金とるからね!!」
「えっ?! うん、守る。それが僕の――騎士の努めだね。了解した」
「ガッテン! てか拙者だって、か弱き乙女でござるよ?!」
『未知への探究心』クイニィー・アルジェント(CL3000178)の要請に、『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)とムサシマル・ハセ倉が異口同音に答えた。
「そうかい? お嬢ちゃん。おじさんは派手にいくのがすきなんだけどな」
戦う前に既に撃たれた兵士を目の端にとらえ、この国らしいとすら思う……いや、さすがにこれは特殊ケースだ。合理的であるこの国において明らかに異質の存在。それがあの男、レイ二等であると『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)は知っている。
彼の噂は工作員時代にも聞いていた。曰く殺した敵より味方のほうが多い。曰く兵站軍の無駄遣いをさせたら右にでるものはいない。つまりはクレイジーな男なのだ。
そんな男の狂気を知りたいと欲したのは『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)だ。
彼の狂気はどこからきてどこにいくのか。その根底が知りたかった。他者の命ではなく蒸気機械に夢中になるその理由を。
殺し合いよりは幾分もましですわ。
『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は決まった作戦にほっとした一人だ。戦場に出はじめて、すでに数ヶ月は経過しているとはいえ、戦場の血生臭さはお嬢様である彼女にとって心地がいいものではない。青の女神から託されたこの力は、癒やしの力。
きっとそれはこの戦場で死を遠ざけることのできる優しい力。きっとそんなことを口にしたらみんな揃って甘いというのだろう。それでいい。青の女神のように理想を抱くことは決して悪いことではないのだから。
レオンティーナは自らの近くにいるマザリモノの双子の自由騎士に「がんばりましょう」と声をかける。双子は何度も頭を縦にふって答えた。
大砲の破壊にはレオンティーナとクイニィー、アダムとムサシマルが従事する。
アタッカーはクイニィー。まずはホムンクルスにも壊させようと命令するが、流石にすぐに敵兵に破壊されてしまった。まあいい。それは想定済みだ。
クイニィーが対する敵は大砲。シンプルな昔ながらの大砲だ。ごく単純に砲身を歪ませて内部のライフリングをめちゃくちゃにしてやれば修理には時間がかかるだろう、と彼女は推測する。
少しでもヘルメリアの邪魔ができるならそれに越したことはないのだ。
とはいえだ。破壊をはじめてから敵蒸気騎士のクイニィーへの集中攻撃は続く。アダムに守ってもらっているとはいえなかなかに怖い。
「マーチラビットの発射体勢のものが居ます!」
レオンティーナもまたアダムにダブルカバーリングでまもられながら叫ぶ。その警告が怖いんだとクイニィーは思う。当たらなくても戦場の空気、爆音には思わず反射的に体が竦んでしまう。
操縦桿組が操縦桿を壊してくれるまでの間大砲を壊し続けなくてはいけない。わりと厄介な仕事だしノルマは三本。うんざりしそうだ。
ムサシマルはクイニィーたちに向かってくる兵站軍をブロックするが人数が多いのは兵站軍だ。
「少し削ったほうがいいでござるな」
「そうですわね。牽制をかけます」
「レオンティーナさん離れないで。クイニィーさんと君は僕が守るから」
「両手に花でござるな! でもな~~、アダム殿一番美しい花を逃してるでござるなぁ~~かわいそうでござるな~~」
「ムサシマルはいいから、戦ってよ~~、こっちは破壊に集中てるんだってば!!」
少々のんきにも程があるそんな戦場の空気が多少緩む。それが自由騎士らしさなのだとアダムは思う。
二人を守り、鉄壁の防御を展開するアダムは敵にとってはとにかく邪魔な存在だ。
蒸気騎士たちの攻撃がアダムにシフトする。当然だ。驚異は迅速に排除するのが戦場だ。
それでいい。ヒーラーもレオンティーナの牽制攻撃を回復するのに手間取っている。それが狙いだ。
アダム・クランプトンは騎士だ。
いわゆる軍人を現す騎士ではないと自分は思う。目指すべきは真なる騎士。弱きものを守り、強大な悪をくじくもの。昔読んだ物語の主人公のようなそんな存在が、彼にとって目指すべき騎士の姿なのだ。
「一個こわしたよ! 次々! しゃきしゃきいくよ!」
クイニィーの声。彼らは次の大砲に向かう。もちろん移動は邪魔をされる。
レオンティーナが移動のため牽制の弓術を展開する。ヒーラーである彼女のその攻撃はあくまでも牽制。青の女神の愛を現す権能に包まれたそれ。誰かを殺す刃ではない。
甘いといわれるその心は、アダムにとっては心強いものだった。
彼は倒れた兵站軍には手を出すことはない。
一方操縦桿に向かうのはアデルとニコラス、マグノリアとナバルとウェルスの攻撃、防御、そして潤沢な回復役のいる鉄壁の陣営だ。
(絶対に守り切る。オレは盾だ!)
奇しくもこの場にいる二人の少年キャバリエは同じことを考えこの場に立っていた。
「おいおい、自由騎士様たちが俺に熱烈ラブコールってやつ? っしゃあ! BANG! BANG! いっちゃおうか!」
レイのバレッジファイアが戦い開始の号砲代わりに降り注ぐ。
数人の兵站軍が巻き込まれるがレイは気にすらしていない。ヒーラーが仲間の兵站軍を必死に回復する。
彼にとって兵站軍の命など、言ってみれば羽より軽いのだろう。
(俺にとっちゃヘルメリアの物になった奴等にはもう同情も哀れみも湧かない。兵站軍は女子供だろうと、ヘルメリアを潰すための障害の1つだ)
敵兵ですら傷つくことに眉をしかめるナバルの表情をみてウェルスは無言でそう思う。
敵兵と交わす言葉などない。アイツラは生きているだけで邪魔なそれだ。
「ねえ、君はどうして命を軽く扱うの?」
マグノリアは問いかける。
「軽くない命なんてこの世には存在しないぜ? みんなみんな「歯車」だ。欠けた歯車は交換するだけ。邪魔な歯車だったらメンテナンスでBANG! さ!」
陽気なレイはそのマグノリアの問いに答える気になったようようで銃を下ろす。
いまのうちだとアダムは破壊工作(サボタージュ)を続ける。
「ナバル、お前の守りが頼りだ。50秒、俺の、いや俺達の命を預ける」
「わかってる。オレが守る。皆、皆守る。そして笑うんだ、うちに帰って、みんなで」
蒸気騎士と数人の兵站軍はアデルを狙うがその銃弾はナバルに弾かれることになる。
「おっと、いい気合だな、ナバル。任せろ。俺がゆる~っと回復すっからさ、やばくなったらウェルスもな」
「ああ」
言葉少なに返事し、操縦桿近くの大砲を狙えば、蒸気騎士の狙いがウェルスに向かう。
「こりゃあ、おじさんいそがしそうだ。マグノリアは……奴さんの気を引いているな……OK、おじさんが頑張るとするか」
ニコラスは自分にも気合をいれる。とにもかくにもマーチラビットが厄介なのだ。
「「歯車」は君たちの国にとってそれほどたくさんあるのかな?」
マグノリアは問う。ヘルメリアの人口、主に使い捨てである亜人を揶揄した問いだ。使い潰せばそのぶんだけ人口は減っていく。
「足りなければ、足りないでそのへんから奪えばいいだろ? このまえのシャンバラ割譲でいっぱい亜人もふえたしな! なんだっけ? ヨウセイ? アイツラカッコイー機械をつけてやったのにボロボロ泣くんだぜ? ヤクタタズの亜人風情をノウブル様の役に立てるように改造したのにさ~~。そういえばショッチョが脳みそもいじってたっけ? 脳みそ機械にするよ~とか。流石に失敗しちゃったけどね! てへ!」
「……っ、そういえばベインちゃんだっけ? プロメテウス/ベインの容態はどうだい?」
不愉快な会話の方向をマグノリアは意識的に変える。
「まだにゅーいんちゅう。べいんちゃん痛い痛いだぜ!! つかお前らが壊したんじゃん!!!! 俺ちゃんさまのお気に入り! あれ修理時間かかるんだぜ! ショッチョも俺が壊した~~って切れてるしさ~~~」
うまい、とアデルは思った。一番脅威であったレイの攻撃がこないのであれば、ナバルの負担も少しはマシになる。さり気なくニコラスに施されたマグノリアのアンチトキシスでニコラスにも魔導力の余裕はできている。
「それは申し訳なかったけど、僕たちは敵同士、「相容れない立場」だからね。そういうこともある……よ。
だけど、僕にもお気に入りを壊されたなら、……許せないって気持ちはわかる」
「許せない? ……っていうか機械は直せばいいじゃん? 待ち時間はうんざりだけど治すことはできる。 それに比べてヒトの命ってやつは。壊れたらおしまいじゃん。弱い弱い」
だから、命は大切であるとおもうのが一般的な考え方なのだろう。しかし――。
「だったら、やっぱ機械のほうが代えがきいて便利だし、反抗もしないし、ヒトなんかより大事じゃん」
だから、ヒトより機械のほうが重要。それがレイ・ブラッドベリという男の価値観なのだ。
その異様な考えにマグノリアは会話と同時におこなっていたタンゴのステップに迷いが生じたたらをふむ。バランスこそは崩してはいないがタンゴのステップは中断してしまった。
「マグノリア、ウェルスに回復を!」
ちょうどいいとニコラスはマグノリアに支持をだせば、マグノリアは頷いて術式を組み換えウェルスを回復する。彼の周囲には穴ぼこを開けられた兵站軍が倒れている。盾代わりにつかわれたのだろう。
「ウェルスさん、無茶してっ!」
ナバルがウェルスを防御することを考えたのを看破したニコラスが手でナバルを静止する。
「やるべきことをやるんだ。あっちにはマグノリアが向かった。だから大丈夫だ」
操舵桿破壊まであと10秒。たった10秒をこれほどまでに長いとおもったことは今まであっただろうか?
「おっと、やっべ、操舵桿破壊とか何やってんだよ!! おい! 蒸気騎士たちちゃんと仕事してんの??? 止めろよ! ころすぞ」
言ってレイは銃を構える。それはガンナーのスキルとしての構えではない。
「あぶない……!」
それが何を示すのであるか直感したマグノリアが叫ぶ。
「階段を登ろうぜ。13段目で終わりだ、じゅう、じゅういち、じゅうに、じゅうさんッ!!」
レイの銃口がナバルもろともにアデルを狙う。
「させるかあぁあああ!」
少年ナバルは叫ぶ。展開したパリィングの防御を超えるダメージがナバルの身を貫きそして――。
「よくやった、ナバル。任務完了だ」
13の刑吏の弾丸はアデルを貫くことはなかった。なぜなら全て、その全てのダメージをナバルがキャバリエの誇りにかけて自らの身に留めたからだ。その時間稼ぎによってアデルの破壊工作は完了する。
撃たれた弾痕を伝い不安がナバルのなかに渦巻くが、精神力でなんとかそれを払拭した。
操舵桿はアデルによって完膚なきほどまでに破壊されている。
「しゃあ……」
ふらりとナバルの体が揺らぐのをアデルが腕を持ち上げて止める。守りの勇者が跪くにはまだ早い。
ナバルもまた勇者である運命力を削って心を奮い立たせる。
仲間がいる限りはまだ倒れるわけにはいかないのだ。
「こわしたーー!!」
「こっちもだ」
ややあって、クイニィーとウェルスが大砲の破壊を宣言する。
これで、大砲3門と操舵桿の50%の破壊がなされることになった。あとは撤収だ。
「おいおい、まじかよ。かわいこちゃんとのトークしてた俺ちゃん、もしかしてハニートラップに引っかかったってやつ?????」
自由騎士たちはレイに答えることもなく、アダムを殿に撤収準備にかかる。
「アデルくんも……! 目的は果たしたんだ! ブラッドベリ二等が存在している戦場にとどまる意味はないよ! エスター号に向かわないと!」
叫ぶアダムをアデルは視線で制する。
「レイ・ブラッドベリ二等。プロメテウス/ベインのパイロットだったな。ここでお前を殺しておけば、プロメテウスを一機無力化できるというわけだ」
「はぁ? そりゃ挑発かい? 機械野郎。いいぜ? むしゃくしゃしてたところだ。こいよ。ぶっころしてやる」
アデルは一歩進む。そしてアダムは気づいた。アデルがその運命を削るという切り札をきったことに。
「アデル、くん?」
「アダムさん~! はやくですわ!」
レオンティーナが急かす。
「仕方ないな、殿の仕事がひとつオーダーされようだ。レオンティーナさんたちははやく逃げて」
アダムが防御の体勢をとる。
「僕は守るものだ。僕は騎士だ。ナバルくんには少し騎士として格好いいところをとられたからね。次は僕の番だ」
そう、改めて自分の立ち位置を確認するアダムをアデルは一瞥し、ベアリング散弾の残数を数える。十分だ。
「じゃあ死ねよ! おまえらガキども二人そろってさぁ!!」
レイがまた少年たちに向け13階段の構えをとる。
不吉の散弾がばらまかれるその前にベアリング弾がレイの目の前で炸裂した。
――なんだと? 距離が……?!
もともとそれほどの距離は開いてはいなかったとはいえ、だ。まばたきの刹那にアデルが自分の胸元にまで接近したと思った瞬間に自分の胸元が炸裂したのだ。意味がわからない。
「戦略兵器の操縦兵が目の前にいる好機を活かす」
そう、それはまるで「奇跡」のような瞬歩。
「てめえええええ!! 機械野郎!!」
アデルの攻撃は続く。愛用のジョルトランサーが火を吹く。
「吹き飛べ!! クソ野郎!!」
レイはギリギリの戦場で培われた反射神経で体幹をずらす。――が。
アデルのアヴァランチ・アサルトはレイの右腕を貫き吹き飛ばす。その勢いでレイは海に投げ出されてしまった。
「畜生! お前のことは覚えたぞ! 機械野郎!!!!」
大きな水音をあげ、レイの体が海の中に水没していく。
夕闇の昏い海がレイを飲み込みその姿はあっという間に見えなくなった。
「やったのか」
アダムが呟く。
「わからん」
魂さえも削るようなその攻撃(きせき)の大きな消耗にアデルは膝をつく。膝が震える。これ以上立っているのは難しい。
「とにかく、いくよ」
アダムは意識朦朧なアデルをかかえ、仲間の乗り移った自軍の軍艦に飛び移った。
「んもー! アデルさんもアダムさんも! 無茶しすぎですわ!」
ぷんぷんと頬を膨らますレオンティーナの後ろでは、満身創痍の仲間がイ・ラプセル艦の乗務員に手伝われながら回復をしている。
一人も欠けることはなくこの場を制した彼らは、ヘルメリアの軍艦が本国にむけ危うい足取りで帰っていくのを見つめた。
戦いは――。
エスター号での解放戦線はまだこれからである。
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
皆様ご参加ありがとうございました。
ウェルスさんの機転で近くの大砲を破壊していたのが状況を早く終了させるポイントになりました。その分狙われることになり多少の怪我は負う形になりましたが。
また、成功条件よりひとつ先をめざしたアデルさんにMVPを。
この両方の結果により大成功の判定にさせていただきました。
ウェルスさんの機転で近くの大砲を破壊していたのが状況を早く終了させるポイントになりました。その分狙われることになり多少の怪我は負う形になりましたが。
また、成功条件よりひとつ先をめざしたアデルさんにMVPを。
この両方の結果により大成功の判定にさせていただきました。
FL送付済