MagiaSteam




Island! 無人島に新たな息吹を!

●無人島アーリオ・オーリオ島
アーリオ・オーリオ島――
アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が通商連から購入した島の名前である。島面積3キロほどの機構温順な島。敵愾心の強い動物もない平和な場所。海賊などの類も近くを通ることはない。
それはこの島自体に海賊などが襲撃する経済的な価値がないことを示していた。家屋の類はなく、襲うメリットのない無人島。それがこの島の価値だ。国や通商連に狙われる危険を冒してまで占領する価値はない。そんな島。
だが逆に言えば、新たな価値をつけることが出来るのだ。
アンジェリカはこの島に、『戦争の爪痕を少しでも癒す場所、そして自立し社会復帰出来るようにする場所』を作りたいと言った。その為の施設、その為の建物を。
それは孤児院でもあり、教会でもあり、そして学び舎でもある。同時に農地を開墾し、自給自足も可能とする。
やるべきことは多い。独力でできるものではないだろう。
だが、アンジェリカの意見に賛同する自由騎士は多い。孤児院が軌道になるまで手助けしてくれるものもいる。
さあ、アーリオ・オーリオ島の開墾を始めよう。
アーリオ・オーリオ島――
アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が通商連から購入した島の名前である。島面積3キロほどの機構温順な島。敵愾心の強い動物もない平和な場所。海賊などの類も近くを通ることはない。
それはこの島自体に海賊などが襲撃する経済的な価値がないことを示していた。家屋の類はなく、襲うメリットのない無人島。それがこの島の価値だ。国や通商連に狙われる危険を冒してまで占領する価値はない。そんな島。
だが逆に言えば、新たな価値をつけることが出来るのだ。
アンジェリカはこの島に、『戦争の爪痕を少しでも癒す場所、そして自立し社会復帰出来るようにする場所』を作りたいと言った。その為の施設、その為の建物を。
それは孤児院でもあり、教会でもあり、そして学び舎でもある。同時に農地を開墾し、自給自足も可能とする。
やるべきことは多い。独力でできるものではないだろう。
だが、アンジェリカの意見に賛同する自由騎士は多い。孤児院が軌道になるまで手助けしてくれるものもいる。
さあ、アーリオ・オーリオ島の開墾を始めよう。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.アーリオ・オーリオ島を開墾する
どくどくです。
ちょうど『I』だったのでこのタイトル。ベ、別にアンジェリカさんの為にシナリオ数を調整したわけじゃないんだからねッ!
このシナリオはアンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)に関係するシナリオですが、当人の参加を強要するものではありません。
●説明!
通商連のカジノでアンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が島を購入しました。アンジェリカさんはこの島を『戦争による犠牲者の為の診療所、及び学びの地』にしたいという旨の発言をし、このイベシナはその施設を作るのが目的です。
単純な建物設置もそうですが、治療や農業、教育などを施す人の教育も必要です。自由騎士がこの島にべったり張り付いているわけにもいかないので。
行動は行動は【1】~【4】をプレイング冒頭もしくはEXプレイングに書いてください。書かなくても適当に察しますが、書いてくれると執筆がマジ楽になりますので。
【1】島を開墾する:木を切り倒し、土地をなだらかにします。森に棲んでいる動物等はNPCが移送済みです。
【2】施設設置:建物(教会と学校)、桟橋、通信用のアンテナ……そう言った生活に必要な住居と施設を作ります。
【3】教育:医療や農業と言った事や一般教育、護身術のような戦闘技術を教えます。教える相手はここに在住する職員や、療養される戦争犠牲者などです。
【4】その他:趣旨に反しない程度なら、好きに行動しても構いません。
●NPC
呼べばNPCは現れます。どくどく担当のNPCとなります。
●場所情報
イ・ラプセル近郊にある無人島。アーリオ・オーリオ島。
・島面積3キロほど(現実世界の内離島をイメージしてください。なおあくまで参考イメージであって、数字からリアリティを求めてはいけません。あくまで参考程度に)。
・誰も手を付けていない森と、標高100m程の山があります。
・水源は湖があり問題なし。森には動植物がいるのである程度のサイバイバル技術があれば生きる事は可能。家屋の類はゼロ。
・気候は温順。時期により台風などが来る模様。
経緯などは『ギルド』→『公式ギルド「ラウンジ」』からいける『『アーリオ・オーリオ島』#1』(https://cl3.chocolop.net/bbs.php?id=406)を参照して頂ければ幸いです。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
ちょうど『I』だったのでこのタイトル。ベ、別にアンジェリカさんの為にシナリオ数を調整したわけじゃないんだからねッ!
このシナリオはアンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)に関係するシナリオですが、当人の参加を強要するものではありません。
●説明!
通商連のカジノでアンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)が島を購入しました。アンジェリカさんはこの島を『戦争による犠牲者の為の診療所、及び学びの地』にしたいという旨の発言をし、このイベシナはその施設を作るのが目的です。
単純な建物設置もそうですが、治療や農業、教育などを施す人の教育も必要です。自由騎士がこの島にべったり張り付いているわけにもいかないので。
行動は行動は【1】~【4】をプレイング冒頭もしくはEXプレイングに書いてください。書かなくても適当に察しますが、書いてくれると執筆がマジ楽になりますので。
【1】島を開墾する:木を切り倒し、土地をなだらかにします。森に棲んでいる動物等はNPCが移送済みです。
【2】施設設置:建物(教会と学校)、桟橋、通信用のアンテナ……そう言った生活に必要な住居と施設を作ります。
【3】教育:医療や農業と言った事や一般教育、護身術のような戦闘技術を教えます。教える相手はここに在住する職員や、療養される戦争犠牲者などです。
【4】その他:趣旨に反しない程度なら、好きに行動しても構いません。
●NPC
呼べばNPCは現れます。どくどく担当のNPCとなります。
●場所情報
イ・ラプセル近郊にある無人島。アーリオ・オーリオ島。
・島面積3キロほど(現実世界の内離島をイメージしてください。なおあくまで参考イメージであって、数字からリアリティを求めてはいけません。あくまで参考程度に)。
・誰も手を付けていない森と、標高100m程の山があります。
・水源は湖があり問題なし。森には動植物がいるのである程度のサイバイバル技術があれば生きる事は可能。家屋の類はゼロ。
・気候は温順。時期により台風などが来る模様。
経緯などは『ギルド』→『公式ギルド「ラウンジ」』からいける『『アーリオ・オーリオ島』#1』(https://cl3.chocolop.net/bbs.php?id=406)を参照して頂ければ幸いです。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
4個
0個




参加費
50LP
50LP
相談日数
7日
7日
参加人数
21/∞
21/∞
公開日
2021年03月06日
2021年03月06日
†メイン参加者 21人†
●
何をするにせよ、準備は必要だ。そしてその準備の段階で、勝負は決すると言っても過言ではない。八時間かけて木を切るのに、六時間かけて斧を研ぐ。そう言った入念な準備こそが成功へとつながるのだ。
「建物の位置はこの様に。日照や快適などを考慮すればこれが最良であろう」
『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は事前に学んだ知識から結論を導き出した。建物の高さや島の日照時間。畑の位置、水場の場所、そう言った周囲環境を考慮しての発言だ。
「無論、これに納得できぬ意見もあろう。どうすべきかを談義しようではないか」
テオドールは皆の意見を募るように声をかける。鶴の一声で決めてしまうのも悪くはない。しかし皆で意見を出し合うことの大事さも理解していた。上手く先導を取らないとただ意見を言い合うだけになってしまう。
「この島をより良い場所にする為に。それをみんなで考えようではないか」
――そして話し合いは始まる。
●
自然がそのまま残っているアーリオ・オーリオ島。そこに人が住めるようにするには、先ずは土地を開墾しなくてはならない。必要な建物と、それを擁する人数を賄えるだけの農地。それを計算し、必要分の区画を決める。そこに住む動植物に可能な限り影響しないように配慮し、開墾を開始する。
「うん、この範囲かな」
その計画を立てたのは『憧れは止まらない』ノエル・カッツェ(CL3000626)だ。森の知識に詳しいノエルはそこに住む動植物や、移送先の林に影響が出ないように配慮し、地図を引いて作業者に分かりやすい形にして指示を出していた。
「あーしも頑張ろう。怪我したら癒すから言ってね」
そしてノエル自身も開墾作業に動き出す。地図の範囲が分かりやすいようにリボンで印をつけ、逃がし損ねた動物がいないかを確認しながら木を切っていく。木々で構成された自然群。その知識がフル活用されていた。
「さあ、頑張っていこう。先は長いよ」
「たまにはこういう運動も悪くないな」
『強者を求めて』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)は斧を手にして木を切っていた。強い相手と戦うのが好きなロンベルにとって、伐採作業は斧を振るう鍛錬でもあった。一振りごとに力を込めて、木に斧を叩きつける。
「せい! せい! せい! せい!」
「どっせーい!」
伐った木を運ぶ『鉄塊の如き拳』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。単独で運べそうなものはそのまま運び、大きすぎる木は斬るなどしてから運んでいた。小さな体に有り余る力。それを余すことなく活用していく。
「力を込めて、ただ真っ直ぐに打ち抜く! とりゃー!」
開墾に邪魔そうな岩などがあれば、カーミラはそこに出向いて拳を握って叩き割っていた。戦いで得た鉄の塊を想起させる拳。愛用のガントレットが岩を砕く。湧き上がる勝算の声に、カーミラはガッツポーズを返した。
「ありがとー! これも修行の成果だね!」
「まさか本当に島を買われるとは……いやはや大したものです」
島の全景を見るように四方を見ながら『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)は頷いた。通商連が島を売っていると言う事は聞いていたが、実際に購入するには途方もない額が必要だ。それを稼いだのだから大したものである。
「ともあれ森の伐採ですね。山は……必要になればと言った所ですか」
この島の目的が教育なら、住居と農地の必要分と着を開ければいい。その意向を汲んでマリアも開墾に手を出す。農家の手伝いをしていたこともあり、手際は悪くない。伐った木の切り株を蒸気自動車の力を借りて手際よく除去していく。
「農地にするには、一度平坦にならしてその後に土を整えないといけませんね」
「切り株撤去に地均し。建造にせよ開墾にせよ、必要な作業だ」
うむ、と頷く『名探偵』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。建物の基礎を敷くにせよ、畑を作るにせよ、大地がなだらかであるに越したことはない。そこまで計算して、ウェルスはある人に助力を頼んでいた。
「私にいい考えがある」
妙に渋い声で告げるウェルスの隣には、ヘルメリアの自爆大好きエンジニア、ニコラ・ウィンゲートがいた。
「彼女が発明した切り株除去マシーンを使って地面を柔らかくしてもらう。キミに決めた!」
「I got this! こんなこともあろうかと用意しておいた『発破式回転開墾車輪兵器(ボマーロールクリーニングパンジャンドラム)』! ぽちっとな!」
止める間もなく怒る大爆発。こうかはばつぐんだ!
「ふう……。今日の気分はブルーハワイだぜ」
一応周囲に影響ないように、ウェルスはオーディオエフェクトとフォレストマスターで計算してからの行動でした。かしこ。
「うーん。まあ、ご先祖さまから聞いた状況よりはマシ……かな?」
『柔らかくなった』大地を見ながら『機盾ジーロン』ナバル・ジーロン(CL3000441)は頷いた。ナバルの先祖は当時幻想種が跋扈していたころのイ・ラプセルの荒れ地を一つの村に変えた人達だ。それに比べれば、確かにマシな状況だろう。
「新型鎧のパワーアシスト! オレの村に伝わる開墾の知識! これがあれば何の問題もない!」
ナバルは『大地』の名を冠する蒸気鎧を稼働させ、巨大な鋤をもって地面を平坦にしていく。大きな土の盛り上がりにスコップを用い、畑と人が通る区画を分けていく古くから伝わる農家の知識と、新たな蒸気技術。その二つが融合し、土地を作っていく。
「この島にいる間は、オレの名は『機耕ジーロン』だー! うおおおおおおおお!」
アーリオ・オーリオ島の食料を賄うための畑。その下地が少しずつ形成されていく――
●
島の持ち主であるアンジェリカが望むのは、戦争で疲弊した人を受け入れる場所。そして彼らの教育だ。
彼らに物事を教える講師として名乗り出てきた自由騎士達も少なくない。
「あったあった。この草だよ。枝葉の形が特徴的だから覚えておいてね」
リィ・エーベルト(CL3000628)は薬師として一般的な薬草の事を教えていた。発熱や擦り傷など、どのような状況においても発生する事例。軽度な物であれば肉体の治癒力に任せてもいいが、そうでないならこういった知識が役に立つ。
「大事なのは採り過ぎない事。積み過ぎて草が生えなくなったなんてことのないように。
後、根の部分は毒だから茎から摘むようにしてね。根っこに触れたら酷いことになるから」
草がどういった場所に生えるか、草の摘み方、保存方法、薬草としての煎じ方、摘む際のルール。教える事は多い。知識だけではなく、実践して伝えることでより理解を深めていく。
「草も土も、そしてここに住む人も島の一部だ。それを忘れないように」
「うむ。しかし最悪の場合は人命優先だ。そこははき違えるな」
同じく医療知識を教える『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。ツボミは医者らしく医学を中心に教えていた。出血の止め方や骨折時などの添え木。薬学はリィに任せて、応急処置を主に教えていた。
「こういった応急処置で対応できないと判断したら内陸に運べ。その判断がつけれるように知識を学べ」
大事なのはできる事とできない事を知る事。巧遅は拙速に如かず。素早い行動こそが命を救うのだ。ツボミはそれを何千回も実感している。こういった経験則からくる事も伝えていた。
「しかし年端二〇にも満たない娘が戦後のことを想って行動するとはな。……よほど頭がおかしいか聖人かだ。敬っておけよ。そんな考えは普通はできんからな」
「薬草採取用の籠や刃物などはこうして作りましょう」
木を編みながら『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は籠を作る。素材としての木はよくしなり、曲がることから曲線を作りやすい。ティルダは慣れた手つきで小型のバスケットを作り出す。
「ナイフの扱いは大事です。力の込め方を誤らないようにしてくださいね」
教える人の顔を手付きを見ながら講義を続けるティルダ。大事なのは何かを作ろうとすること。その楽しさ、その奥深さを感じてもらえれば幸いだ。何よりもこの島を住みやすくする為に尽力する。ティルダは自らの気持ちを再確認し、笑みを浮かべる。
「はい、上手ですね。では次は――」
「栄養満点な料理を作りましょう~」
間延びしたような声で『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)は料理を教えていた。口調こそスローだがその手際はハキハキとしており、同時に要点を押さえた教えだ。
「この島で採れる者を使った料理は、こんな所でしょうか~? お塩等も作っていくのもいいですねぇ~」
この島と近郊海域で採れそうな食材だけでできそうな料理のレシピを書き、その作り方を説明する。自給自足を目指すなら、料理方法はなくてはならないものだ。塩などの調味料もできるなら作っていければ料理に満足度が増すだろう。
「魚をさばく包丁はこちらになりますぅ~。使い方はぁ~」
「先々代国王時代からイ・ラプセルは生活圏を広げていきました。そのためにまず港町の改築が始まります」
イ・ラプセルの地図を板に張って『春近し乙女』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は歴史の授業をしていた。貴族の嗜みとして学んだ国の歴史。これを後世に伝える事は大事なことだ。
「船の安全を第一に考え、灯台の設置と海賊対策として海兵の強化……おおっと、退屈ですか。ではこの時活躍した海軍の英雄の活躍をしましょう」
子供達の興味が逸れてきたのを感じたのか、デボラは授業の方向を転換させる。海賊を打ち倒した海軍の剣豪や、海を荒らす巨大イカを撃退した第三艦隊。海の英雄の話は事欠かない。血肉躍るような物語に、子供達も喜んでいた。
「その時颯爽と現れたのは、なんと――!」
「平和な島ではありますが、不要な技術ではないと思うのであります」
即席で作った槍を構え『鉄腕』フリオ・フルフラット(CL3000454)は集まった人達に告げる。海賊から狙われることもなく、脅威となるような動物もいない。それでも叩かh技術が不要かと言われればそうでもなかった。いつ何が訪れるか、分からないのだから。
(戦争で奪われた無力感。身体を動かすことで埋まるかもしれません。……私のように)
身を護る術がある。その事実だけでも恐怖から立ち直れるかもしれない。フリオはそれを願って槍術を教える。相手から離れた間合から攻撃でき、且つ作製も容易だ。掛け声をあげながら、基本の動作を教えていく。
「いち! に! さん! はい、繰り返して!」
「カノンが教えるのは歌や芸だよ!」
『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は元気よくそう告げると、自ら歌を披露する。日々鍛錬された声と喉。それが生み出すリズミカルな歌。それが聞く人達を魅了する。
「声が出せないなら楽器もあるよ。音楽だけじゃない。演劇だって教えるから!」
カノンは一人一人の適正を見ながら教えを続ける。戦争で体が動かなくなった人でも行えるように片手用の楽器を持ってきたり、一緒にリズムをとってみたり。笑顔を浮かべながら音が生み出す芸事を教えていた。
「今日学んだことを生かして、皆が誰かを笑顔にすることができたら嬉しいな!」
次代を笑顔にする。その為に、自由騎士は今を戦っているのだ。
●
空の色が輝くような青ならば、水の中は全てを包み込む優しい青。
身体銃で感じる海水の感覚と、地上とは異なる音の響き。『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)は全身で海を感じていた。
(凄い……。こんなにお魚さんがいるんだ……)
海中調査。島周辺の魚などを調べるために海に潜ったキリは、その景色に圧倒されていた。大型魚介類がいない海域は小さな魚たちの楽園。美しい珊瑚の周りを踊るように泳ぐ小さな魚の群れ。人間を警戒していないのか、キリの周りを泳いでいた。
(綺麗……。採り過ぎないように注意しないといけないわ)
元々は島の名物料理の為に食用の魚介を調べに潜ったキリだが、この景色もまた島の一部なのだ。人が住む以上手を付けないわけにはいかないが、それでもいたずらにこの光景を破壊するのは間違っている気がする。
(この魚は市場で見た魚だ。あ、あれはなんだろう?)
キリの海中調査は続く。
「この辺りは潮の流れがきついな。注意しておかないと」
「あーね。あと雨降ったらやばばじゃね? 鬼やばじゃね?」
『キセキの果て』ニコラス・モラル(CL3000453)もまた、海中調査に乗り出していた。彼はアミナと共に行動している。南国の海に詳しいアミナの知識。ミズビトである自分とは違った視線と経験が役に立つとふんでの人選――
(褐色! たわわ! その張りは水風船の如く。触れれば温もりをもって人を癒し、同時に柔らかさをもって男の熱をあげるだろう。 太陽の恵みを受けた褐色肌に、果実を思わせるたわわ! 正に自然が生んだ至宝なり!
海中調査である以上水着は必須! すなわちこのたわわを水中と言うミズビトのフィールド内に誘って鑑賞できるいい機会だ!)
――まあ、そういう理由もある。なおニコラスの言動がおかしいのは、どくどくしい何かを受け取ったからです。多分。
「水害対策か。そうだな、海水がここまで迫ったら避難する、っていうラインを決めた方がいいか。水泳できる範囲決めるついでだ」
ニコラスは最初、水遊びできる領域を決める為に調査を行っていた。潮の流れにさらわれてしまわないように、穏やかな潮の流れを探っていたのだ。その範囲を調べ、杭を打つ。あとはそれを元に柵を敷けばいいだろう。
「もしかしたら外からでっかいサメとかが来るかもしれないからな。頑丈にしておくか」
「サメだったら火を吐かれても大丈夫なように鉄製にした方がいいかもかも?」
「……どんなサメだよ」
「? 普通のサメだけど?」
南海のサメは幻想種か何かか? ニコラスは未開の地には近づくまいと固く誓った。
●
生活に必要なものとして、『水』の存在は欠かせない。
「湖から水を引いて、それをろ過する……。蒸気機関用にも確保したいですね」
『天を癒す者』たまき 聖流(CL3000283)は紙にいろいろ書き込みながら頭をひねっていた。島にある湖から生活用水を確保するにいたり、どういうふうに水を利用するかを考えていたのだ。
「畑にも水は必要でしょうから水路を作るのがいいのでしょうね。ろ過した水は水道管を通して……」
ろ過するための機械。それを建物に送る為の水道管。その工事に必要な蒸気機械。必要なものが一あれば、それを用意する労力はその十倍必要になる。苦労はするが、だからこそ面白くもある。
「この辺りの機械は私でも作れそうですね。先ずは図面を引いて」
「人が多くなることを考えれば、階層は多い方がいいわよね」
ふむ、と唸りをあげる『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)。戦争で奪われた者の為を受け入れる為の島。その理念はアンネリーザも共感していた。できる事なら力になりたい、と協力を買って出たのだ。
「地下水のくみ上げ……蒸気エレベーター……そうね。作れるものは作っておきましょう」
資料を手にアンネリーザは図面を敷く。できるだけ多くの人間が不便ないように生活できるように。持ちうる技術を惜しむつもりはない。ここで頑張れば、未来はきっとよくなる。ここはそう信じることが出来る島だ。
「デザインにも拘りたい所だけど、先ずは機能性よね……」
「しかし島を買うとかすごいよなぁ……」
木材を運びながら『水底に揺れる』ルエ・アイドクレース(CL3000673)は感心していた。目に見える島の光景。この全てが個人のもので、しかもそれを戦災被害者の為の施設にするという。大したものだ。
「っと、感心してばかりもいられないな。俺に出来る事をやっとかないと」
言って浅瀬までやってくるルエ。ミズビトの種族特性を生かして水中に潜り、桟橋の基礎を打ち付ける。この島を訪れる船が利用する桟橋。これを疎かにするわけにはいかない。しっかりしたものを作って、多くの人を出迎えなくては。
「こんな所か。終わったら子供達にわらべ歌でも歌ってやるかな」
「まあ近い仕事は得意なので」
言って『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は教材の確認を行っていた。神職として孤児院で子供などにものを教えるのは経験済みだ。その経験を生かして、必要なものをこの島に運んでもらったのだ。
「チョーク、黒板、ノート、頑丈なカバン……後は教育用の本ですね」
戦争の被害者。この一言で年齢や性別を特定することはできない。様々な人間に対応する必要があり、それに合わせた教育が必要になる。重視するのは教養か、或いは手に職か。悩ましい所ではあるが、そこは試行錯誤の繰り返しだろう。
「どちらにせよ、文字を読める様にするのは大事ですね。識字率の上昇は大事ですし」
識字率――文字の読み書きができる人の比率。それは単純に文字が読めない人の数と言う意味ではない。『様々な理由で教育を受けられない者』を一定数生み出す社会構造である事だ。いわば国の在り方と言ってもいい。戦争、貧困、そして死傷率。改善しなくてはいけない事は多い――
●
「ここからが始まりなのですね」
自由騎士達の協力で少しずつ形となっていく島。それを見ながら『未来を切り拓く祈り』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は目を伏した。ここからが始まり。実際に動かしてみれば、様々な苦労が待っているだろう。想像できる苦労。想像できない苦労。それが待ち受けている。
同時に、多くの笑顔もあるだろう。助けられた人達の感謝もあるだろう。いつか恩を返すと言ってくれる人もいるだろう。苦労に見合うだけの喜びがあるかもしれない。ないかもしれない。それは解らない。
傍らに立つアクアディーネの像を見る。当人……当神? は自らを象った像に少し恥ずかしがっていたが、これで人が喜ぶのならと快諾してくれた。……なおパスタは却下された。解せぬ。
とまれ、ここからが始まりなのだ。それを心に刻んで、アンジェリカは祈るように手を合わせた。
「未来に、祝福があらんことを」
明日を願う祈り。ささやかな祈り。しかしその『当たり前』がなくなるかもしれない未来の可能性を知っている。
だからこそ、祈る。希望と、そして決意を込めて――
何をするにせよ、準備は必要だ。そしてその準備の段階で、勝負は決すると言っても過言ではない。八時間かけて木を切るのに、六時間かけて斧を研ぐ。そう言った入念な準備こそが成功へとつながるのだ。
「建物の位置はこの様に。日照や快適などを考慮すればこれが最良であろう」
『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)は事前に学んだ知識から結論を導き出した。建物の高さや島の日照時間。畑の位置、水場の場所、そう言った周囲環境を考慮しての発言だ。
「無論、これに納得できぬ意見もあろう。どうすべきかを談義しようではないか」
テオドールは皆の意見を募るように声をかける。鶴の一声で決めてしまうのも悪くはない。しかし皆で意見を出し合うことの大事さも理解していた。上手く先導を取らないとただ意見を言い合うだけになってしまう。
「この島をより良い場所にする為に。それをみんなで考えようではないか」
――そして話し合いは始まる。
●
自然がそのまま残っているアーリオ・オーリオ島。そこに人が住めるようにするには、先ずは土地を開墾しなくてはならない。必要な建物と、それを擁する人数を賄えるだけの農地。それを計算し、必要分の区画を決める。そこに住む動植物に可能な限り影響しないように配慮し、開墾を開始する。
「うん、この範囲かな」
その計画を立てたのは『憧れは止まらない』ノエル・カッツェ(CL3000626)だ。森の知識に詳しいノエルはそこに住む動植物や、移送先の林に影響が出ないように配慮し、地図を引いて作業者に分かりやすい形にして指示を出していた。
「あーしも頑張ろう。怪我したら癒すから言ってね」
そしてノエル自身も開墾作業に動き出す。地図の範囲が分かりやすいようにリボンで印をつけ、逃がし損ねた動物がいないかを確認しながら木を切っていく。木々で構成された自然群。その知識がフル活用されていた。
「さあ、頑張っていこう。先は長いよ」
「たまにはこういう運動も悪くないな」
『強者を求めて』ロンベル・バルバロイト(CL3000550)は斧を手にして木を切っていた。強い相手と戦うのが好きなロンベルにとって、伐採作業は斧を振るう鍛錬でもあった。一振りごとに力を込めて、木に斧を叩きつける。
「せい! せい! せい! せい!」
「どっせーい!」
伐った木を運ぶ『鉄塊の如き拳』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。単独で運べそうなものはそのまま運び、大きすぎる木は斬るなどしてから運んでいた。小さな体に有り余る力。それを余すことなく活用していく。
「力を込めて、ただ真っ直ぐに打ち抜く! とりゃー!」
開墾に邪魔そうな岩などがあれば、カーミラはそこに出向いて拳を握って叩き割っていた。戦いで得た鉄の塊を想起させる拳。愛用のガントレットが岩を砕く。湧き上がる勝算の声に、カーミラはガッツポーズを返した。
「ありがとー! これも修行の成果だね!」
「まさか本当に島を買われるとは……いやはや大したものです」
島の全景を見るように四方を見ながら『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)は頷いた。通商連が島を売っていると言う事は聞いていたが、実際に購入するには途方もない額が必要だ。それを稼いだのだから大したものである。
「ともあれ森の伐採ですね。山は……必要になればと言った所ですか」
この島の目的が教育なら、住居と農地の必要分と着を開ければいい。その意向を汲んでマリアも開墾に手を出す。農家の手伝いをしていたこともあり、手際は悪くない。伐った木の切り株を蒸気自動車の力を借りて手際よく除去していく。
「農地にするには、一度平坦にならしてその後に土を整えないといけませんね」
「切り株撤去に地均し。建造にせよ開墾にせよ、必要な作業だ」
うむ、と頷く『名探偵』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。建物の基礎を敷くにせよ、畑を作るにせよ、大地がなだらかであるに越したことはない。そこまで計算して、ウェルスはある人に助力を頼んでいた。
「私にいい考えがある」
妙に渋い声で告げるウェルスの隣には、ヘルメリアの自爆大好きエンジニア、ニコラ・ウィンゲートがいた。
「彼女が発明した切り株除去マシーンを使って地面を柔らかくしてもらう。キミに決めた!」
「I got this! こんなこともあろうかと用意しておいた『発破式回転開墾車輪兵器(ボマーロールクリーニングパンジャンドラム)』! ぽちっとな!」
止める間もなく怒る大爆発。こうかはばつぐんだ!
「ふう……。今日の気分はブルーハワイだぜ」
一応周囲に影響ないように、ウェルスはオーディオエフェクトとフォレストマスターで計算してからの行動でした。かしこ。
「うーん。まあ、ご先祖さまから聞いた状況よりはマシ……かな?」
『柔らかくなった』大地を見ながら『機盾ジーロン』ナバル・ジーロン(CL3000441)は頷いた。ナバルの先祖は当時幻想種が跋扈していたころのイ・ラプセルの荒れ地を一つの村に変えた人達だ。それに比べれば、確かにマシな状況だろう。
「新型鎧のパワーアシスト! オレの村に伝わる開墾の知識! これがあれば何の問題もない!」
ナバルは『大地』の名を冠する蒸気鎧を稼働させ、巨大な鋤をもって地面を平坦にしていく。大きな土の盛り上がりにスコップを用い、畑と人が通る区画を分けていく古くから伝わる農家の知識と、新たな蒸気技術。その二つが融合し、土地を作っていく。
「この島にいる間は、オレの名は『機耕ジーロン』だー! うおおおおおおおお!」
アーリオ・オーリオ島の食料を賄うための畑。その下地が少しずつ形成されていく――
●
島の持ち主であるアンジェリカが望むのは、戦争で疲弊した人を受け入れる場所。そして彼らの教育だ。
彼らに物事を教える講師として名乗り出てきた自由騎士達も少なくない。
「あったあった。この草だよ。枝葉の形が特徴的だから覚えておいてね」
リィ・エーベルト(CL3000628)は薬師として一般的な薬草の事を教えていた。発熱や擦り傷など、どのような状況においても発生する事例。軽度な物であれば肉体の治癒力に任せてもいいが、そうでないならこういった知識が役に立つ。
「大事なのは採り過ぎない事。積み過ぎて草が生えなくなったなんてことのないように。
後、根の部分は毒だから茎から摘むようにしてね。根っこに触れたら酷いことになるから」
草がどういった場所に生えるか、草の摘み方、保存方法、薬草としての煎じ方、摘む際のルール。教える事は多い。知識だけではなく、実践して伝えることでより理解を深めていく。
「草も土も、そしてここに住む人も島の一部だ。それを忘れないように」
「うむ。しかし最悪の場合は人命優先だ。そこははき違えるな」
同じく医療知識を教える『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。ツボミは医者らしく医学を中心に教えていた。出血の止め方や骨折時などの添え木。薬学はリィに任せて、応急処置を主に教えていた。
「こういった応急処置で対応できないと判断したら内陸に運べ。その判断がつけれるように知識を学べ」
大事なのはできる事とできない事を知る事。巧遅は拙速に如かず。素早い行動こそが命を救うのだ。ツボミはそれを何千回も実感している。こういった経験則からくる事も伝えていた。
「しかし年端二〇にも満たない娘が戦後のことを想って行動するとはな。……よほど頭がおかしいか聖人かだ。敬っておけよ。そんな考えは普通はできんからな」
「薬草採取用の籠や刃物などはこうして作りましょう」
木を編みながら『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は籠を作る。素材としての木はよくしなり、曲がることから曲線を作りやすい。ティルダは慣れた手つきで小型のバスケットを作り出す。
「ナイフの扱いは大事です。力の込め方を誤らないようにしてくださいね」
教える人の顔を手付きを見ながら講義を続けるティルダ。大事なのは何かを作ろうとすること。その楽しさ、その奥深さを感じてもらえれば幸いだ。何よりもこの島を住みやすくする為に尽力する。ティルダは自らの気持ちを再確認し、笑みを浮かべる。
「はい、上手ですね。では次は――」
「栄養満点な料理を作りましょう~」
間延びしたような声で『食のおもてなし』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)は料理を教えていた。口調こそスローだがその手際はハキハキとしており、同時に要点を押さえた教えだ。
「この島で採れる者を使った料理は、こんな所でしょうか~? お塩等も作っていくのもいいですねぇ~」
この島と近郊海域で採れそうな食材だけでできそうな料理のレシピを書き、その作り方を説明する。自給自足を目指すなら、料理方法はなくてはならないものだ。塩などの調味料もできるなら作っていければ料理に満足度が増すだろう。
「魚をさばく包丁はこちらになりますぅ~。使い方はぁ~」
「先々代国王時代からイ・ラプセルは生活圏を広げていきました。そのためにまず港町の改築が始まります」
イ・ラプセルの地図を板に張って『春近し乙女』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は歴史の授業をしていた。貴族の嗜みとして学んだ国の歴史。これを後世に伝える事は大事なことだ。
「船の安全を第一に考え、灯台の設置と海賊対策として海兵の強化……おおっと、退屈ですか。ではこの時活躍した海軍の英雄の活躍をしましょう」
子供達の興味が逸れてきたのを感じたのか、デボラは授業の方向を転換させる。海賊を打ち倒した海軍の剣豪や、海を荒らす巨大イカを撃退した第三艦隊。海の英雄の話は事欠かない。血肉躍るような物語に、子供達も喜んでいた。
「その時颯爽と現れたのは、なんと――!」
「平和な島ではありますが、不要な技術ではないと思うのであります」
即席で作った槍を構え『鉄腕』フリオ・フルフラット(CL3000454)は集まった人達に告げる。海賊から狙われることもなく、脅威となるような動物もいない。それでも叩かh技術が不要かと言われればそうでもなかった。いつ何が訪れるか、分からないのだから。
(戦争で奪われた無力感。身体を動かすことで埋まるかもしれません。……私のように)
身を護る術がある。その事実だけでも恐怖から立ち直れるかもしれない。フリオはそれを願って槍術を教える。相手から離れた間合から攻撃でき、且つ作製も容易だ。掛け声をあげながら、基本の動作を教えていく。
「いち! に! さん! はい、繰り返して!」
「カノンが教えるのは歌や芸だよ!」
『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)は元気よくそう告げると、自ら歌を披露する。日々鍛錬された声と喉。それが生み出すリズミカルな歌。それが聞く人達を魅了する。
「声が出せないなら楽器もあるよ。音楽だけじゃない。演劇だって教えるから!」
カノンは一人一人の適正を見ながら教えを続ける。戦争で体が動かなくなった人でも行えるように片手用の楽器を持ってきたり、一緒にリズムをとってみたり。笑顔を浮かべながら音が生み出す芸事を教えていた。
「今日学んだことを生かして、皆が誰かを笑顔にすることができたら嬉しいな!」
次代を笑顔にする。その為に、自由騎士は今を戦っているのだ。
●
空の色が輝くような青ならば、水の中は全てを包み込む優しい青。
身体銃で感じる海水の感覚と、地上とは異なる音の響き。『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)は全身で海を感じていた。
(凄い……。こんなにお魚さんがいるんだ……)
海中調査。島周辺の魚などを調べるために海に潜ったキリは、その景色に圧倒されていた。大型魚介類がいない海域は小さな魚たちの楽園。美しい珊瑚の周りを踊るように泳ぐ小さな魚の群れ。人間を警戒していないのか、キリの周りを泳いでいた。
(綺麗……。採り過ぎないように注意しないといけないわ)
元々は島の名物料理の為に食用の魚介を調べに潜ったキリだが、この景色もまた島の一部なのだ。人が住む以上手を付けないわけにはいかないが、それでもいたずらにこの光景を破壊するのは間違っている気がする。
(この魚は市場で見た魚だ。あ、あれはなんだろう?)
キリの海中調査は続く。
「この辺りは潮の流れがきついな。注意しておかないと」
「あーね。あと雨降ったらやばばじゃね? 鬼やばじゃね?」
『キセキの果て』ニコラス・モラル(CL3000453)もまた、海中調査に乗り出していた。彼はアミナと共に行動している。南国の海に詳しいアミナの知識。ミズビトである自分とは違った視線と経験が役に立つとふんでの人選――
(褐色! たわわ! その張りは水風船の如く。触れれば温もりをもって人を癒し、同時に柔らかさをもって男の熱をあげるだろう。 太陽の恵みを受けた褐色肌に、果実を思わせるたわわ! 正に自然が生んだ至宝なり!
海中調査である以上水着は必須! すなわちこのたわわを水中と言うミズビトのフィールド内に誘って鑑賞できるいい機会だ!)
――まあ、そういう理由もある。なおニコラスの言動がおかしいのは、どくどくしい何かを受け取ったからです。多分。
「水害対策か。そうだな、海水がここまで迫ったら避難する、っていうラインを決めた方がいいか。水泳できる範囲決めるついでだ」
ニコラスは最初、水遊びできる領域を決める為に調査を行っていた。潮の流れにさらわれてしまわないように、穏やかな潮の流れを探っていたのだ。その範囲を調べ、杭を打つ。あとはそれを元に柵を敷けばいいだろう。
「もしかしたら外からでっかいサメとかが来るかもしれないからな。頑丈にしておくか」
「サメだったら火を吐かれても大丈夫なように鉄製にした方がいいかもかも?」
「……どんなサメだよ」
「? 普通のサメだけど?」
南海のサメは幻想種か何かか? ニコラスは未開の地には近づくまいと固く誓った。
●
生活に必要なものとして、『水』の存在は欠かせない。
「湖から水を引いて、それをろ過する……。蒸気機関用にも確保したいですね」
『天を癒す者』たまき 聖流(CL3000283)は紙にいろいろ書き込みながら頭をひねっていた。島にある湖から生活用水を確保するにいたり、どういうふうに水を利用するかを考えていたのだ。
「畑にも水は必要でしょうから水路を作るのがいいのでしょうね。ろ過した水は水道管を通して……」
ろ過するための機械。それを建物に送る為の水道管。その工事に必要な蒸気機械。必要なものが一あれば、それを用意する労力はその十倍必要になる。苦労はするが、だからこそ面白くもある。
「この辺りの機械は私でも作れそうですね。先ずは図面を引いて」
「人が多くなることを考えれば、階層は多い方がいいわよね」
ふむ、と唸りをあげる『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)。戦争で奪われた者の為を受け入れる為の島。その理念はアンネリーザも共感していた。できる事なら力になりたい、と協力を買って出たのだ。
「地下水のくみ上げ……蒸気エレベーター……そうね。作れるものは作っておきましょう」
資料を手にアンネリーザは図面を敷く。できるだけ多くの人間が不便ないように生活できるように。持ちうる技術を惜しむつもりはない。ここで頑張れば、未来はきっとよくなる。ここはそう信じることが出来る島だ。
「デザインにも拘りたい所だけど、先ずは機能性よね……」
「しかし島を買うとかすごいよなぁ……」
木材を運びながら『水底に揺れる』ルエ・アイドクレース(CL3000673)は感心していた。目に見える島の光景。この全てが個人のもので、しかもそれを戦災被害者の為の施設にするという。大したものだ。
「っと、感心してばかりもいられないな。俺に出来る事をやっとかないと」
言って浅瀬までやってくるルエ。ミズビトの種族特性を生かして水中に潜り、桟橋の基礎を打ち付ける。この島を訪れる船が利用する桟橋。これを疎かにするわけにはいかない。しっかりしたものを作って、多くの人を出迎えなくては。
「こんな所か。終わったら子供達にわらべ歌でも歌ってやるかな」
「まあ近い仕事は得意なので」
言って『SALVATORIUS』ミルトス・ホワイトカラント(CL3000141)は教材の確認を行っていた。神職として孤児院で子供などにものを教えるのは経験済みだ。その経験を生かして、必要なものをこの島に運んでもらったのだ。
「チョーク、黒板、ノート、頑丈なカバン……後は教育用の本ですね」
戦争の被害者。この一言で年齢や性別を特定することはできない。様々な人間に対応する必要があり、それに合わせた教育が必要になる。重視するのは教養か、或いは手に職か。悩ましい所ではあるが、そこは試行錯誤の繰り返しだろう。
「どちらにせよ、文字を読める様にするのは大事ですね。識字率の上昇は大事ですし」
識字率――文字の読み書きができる人の比率。それは単純に文字が読めない人の数と言う意味ではない。『様々な理由で教育を受けられない者』を一定数生み出す社会構造である事だ。いわば国の在り方と言ってもいい。戦争、貧困、そして死傷率。改善しなくてはいけない事は多い――
●
「ここからが始まりなのですね」
自由騎士達の協力で少しずつ形となっていく島。それを見ながら『未来を切り拓く祈り』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は目を伏した。ここからが始まり。実際に動かしてみれば、様々な苦労が待っているだろう。想像できる苦労。想像できない苦労。それが待ち受けている。
同時に、多くの笑顔もあるだろう。助けられた人達の感謝もあるだろう。いつか恩を返すと言ってくれる人もいるだろう。苦労に見合うだけの喜びがあるかもしれない。ないかもしれない。それは解らない。
傍らに立つアクアディーネの像を見る。当人……当神? は自らを象った像に少し恥ずかしがっていたが、これで人が喜ぶのならと快諾してくれた。……なおパスタは却下された。解せぬ。
とまれ、ここからが始まりなのだ。それを心に刻んで、アンジェリカは祈るように手を合わせた。
「未来に、祝福があらんことを」
明日を願う祈り。ささやかな祈り。しかしその『当たり前』がなくなるかもしれない未来の可能性を知っている。
だからこそ、祈る。希望と、そして決意を込めて――
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
どくどくです。
島のネコがベリーハード並みに強くて、9回殺さないと死なない……とかいう事がSTのネタメモにあったとかなかったとか。
改めて、島購入おめでとうございます。
このシナリオがアンジェリカ様を始めとした皆様が楽しんでいただければ幸いです。
それではまた、イ・ラプセルで。
島のネコがベリーハード並みに強くて、9回殺さないと死なない……とかいう事がSTのネタメモにあったとかなかったとか。
改めて、島購入おめでとうございます。
このシナリオがアンジェリカ様を始めとした皆様が楽しんでいただければ幸いです。
それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済