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【デザイア!】RedRampage! 赤色の心傷!



●赤の衝動を持つソラビト達
 炎の記憶。血の記憶。
 そのソラビトの記憶は緋と共にあった。炎で村を失い、家族の血を見て、その心の傷は全て紅色で彩られた。
 ヘルメリアの奴隷商人に売り飛ばされ、そこでも紅と共に様々な傷を負わされ、刻まれた。天井や壁や床全てが赤く塗られた部屋。そこで教えられたのは生き物を殺す訓練。効率よく急所に牙を突き立てる殺しの技。
 上手く殺せれば、紅色の部屋から出る事が出来た。失敗すれば紅色の部屋で痛みを受けた。心はじわじわと紅色に支配され、いつしか赤色を見るだけで気が狂いそうになった。呼吸は乱れ、全身を掻きむしりたくなってくる。
 だがそれさえまだ『正気』の範疇だった。まだ『人の心』を保てていた状態だった。恐怖への拒絶。それは心の防壁。体中が示すアラート。それが機能している間はまだよかった。それさえなくなれば、もはや人ですらない。
 いつしかそのソラビトは、紅色を見るだけで戦闘状態にスイッチが入るようになっていた。超絶的な反射速度。針の穴を通すほどの精密的な急所狙い。流した血を見てさらに暴走し、静止命令が下るまで止まらなくなる。
「こんな所か。もう少し訓練させたかったが仕方ない。スレイブマーケットも近いしな」
 そのソラビトはその意味を知っている。もうすぐ自分は売られるのだ。奴隷商人に戦闘用奴隷として調教され、誰かに売られるのだ。
 どうでもいい、と思う心さえ摩耗していた。

●自由騎士
 スレイブマーケット。それはヘルメリアで八月にに開催される一大奴隷マーケット。街の区画を使った巨大奴隷売買市場。
 その奴隷商人の一人を襲撃すべく、フリーエンジンと自由騎士は動いていた。爆発で周囲の客を遠ざけ、奴隷商人から奴隷を強奪するのだ。
 しかしその奴隷商人は戦闘用に調教した奴隷を数体保有している。なんでも紅色を見ると暴走するように調教されたようで、人間ではありえない反射速度と急所狙いを行ってくるという。
 時間をかければ歯車騎士団が駆け付けてくるだろう。そうなる前に戦闘用奴隷を気絶させ、奴隷商人から奴隷を開放するのだ。
 戦闘開始まで、あと数秒。客のふりをして近づく自由騎士達は、件の戦闘用奴隷を見る。
 ――虚ろな瞳は、何の希望も写していなかった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
新天地開拓γ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.24ターンまでに敵を全滅させる
 どくどくです。
 ヘルメリアの全体依頼でございます。

●敵情報
・レッドランページ(×3)
 全員ソラビト。格闘家スタイル。戦うこと以外すべてを『捨てさせられた』戦士です。
 人間性はなく、戦闘になれば狂ったように暴れまわります。それでいて俊敏且つ狙いが的確です。具体的に言うと反応速度とCTが高いです。
 気を失うまで戦い続けます。
『飛行』『影狼 Lv3』『柳凪 Lv2』『龍氣螺合 Lv3』等を活性化しています。

・護衛兵(×5)
 全員キジン(ハーフ)。奴隷商人に雇われた剣士です。重戦士のランク1を活性化しています。
 戦意は一般的な傭兵相当です。

・奴隷商人(×1)
 ノウブル。戦闘力はありません。ある程度ダメージを受ければ倒れます。歯車騎士団がやってくると信じているため、脅されても時間を稼げば勝てると思っているため、レッドランページの戦闘中止命令は出しません。
 レッドランページ以外にも労働用の奴隷を有しており、彼らの拘束具の鍵を持っています。

●場所情報
 港町ギルバーク。スレイブマーケットの一角。時刻は昼。奴隷商人が乗ってきた馬車の中には労働用奴隷が拘束されています。
 人通りはそこそこありますが、初手に派手な音を鳴らして人払いをします。その為不意打ちにはなりませんが、無関係な人を巻き込まずに済みます。
 25ターン目の最初に歯車騎士団がやってきます。そうなると逃亡を余儀なくされ、依頼失敗です。
 戦闘開始時、敵前衛に『レッドランページ(×3)』『護衛兵(×4)』。敵後衛に『奴隷商人』『護衛兵(×1)』がいます。奴隷商人の馬車は『奴隷商人』の後ろにあります。
 事前付与は不可。怪しい真似をすると、襲撃前に通報されるので。

 この共通タグ【デザイア!】依頼は、連動イベントのものになります。この依頼の成功数により八月末に行われる【デザイア!】決戦の状況が変化します。成功数が多いほど、状況が有利になっていきます。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  6個  2個
9モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年08月14日

†メイン参加者 8人†

『ReReボマー?』
エミリオ・ミハイエル(CL3000054)
『水銀を伝えし者』
リュリュ・ロジェ(CL3000117)
『我戦う、故に我あり』
リンネ・スズカ(CL3000361)
『平和を愛する農夫』
ナバル・ジーロン(CL3000441)



 作戦決行数十秒前。自由騎士達は怪しまれない位置からマーケットを確認していた。
「あれがレッドランページですね」
『ReReボマー?』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は虚ろな瞳をしたソラビト達を見る。格闘用の武器を手にした彼らの顔に生気はない。血色が悪いという意味ではなく、あまりにも無表情過ぎた。
(みおぼえのあるめ。いつもかがみでみてるきがするめ)
 レッドランページの瞳を見て『黒炎獣』リムリィ・アルカナム(CL3000500)は静かに思う。リムリィ自身も未来に希望を見出せない時期があった。救われたのは優しい手があったから。その手が彼らに訪れれば、あるいは。
「これがヘルメリアか……!」
 怒りを抑えるように拳を握る『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)。同じソラビトとして亜人として、レッドランページが生まれた経緯に思う所はある。だが今はその怒りを抑えて機会を待つ。
「歯車騎士団が来るまでにケリをつけないとね」
 赤い髪をフードで覆いながら『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は周囲を確認する。騒ぎを起こせば歯車騎士団がやってくる。そうなれば奴隷救出は困難になるだろう。時間がカギとなる戦いであることを、心に意識する。
「分からねぇ……どうしてこんなことが出来るんだ……!」
 疑問と怒り。『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)が抱く思いはその二つだった。同じ人間同士なのになぜこんなことが出来るのか。そんな疑問とそんな扱いが出来る者への怒りだ。
「個人的にはその技量に興味が湧きますね」
 ドライに『我戦う、故に我あり』リンネ・スズカ(CL3000361)は言い放つ。レッドランページが生み出された経緯は同情するが、それよりも人間性を削ってまで作られた格闘技術に興味が湧いていた。
「レッドランページさんたちが捨てさせられた、心や感情……それを拾い上げることが、出来るのなら……」
 置物のように立つソラビト達を見て、『命を繋ぐ巫女』たまき 聖流(CL3000283)は祈るように両手を合わせる。許されるとは思っていない。偽善だと言われればそれを受け入れよう。それでも彼らをこの場から救って終わり、と言う事だけはしたくなかった。
「作戦、開始だよ!」
 元気良く叫ぶ『ひまわりの約束』ナナン・皐月(CL3000240)。それと同時に爆発が起き、周囲の人間を誘導するようにフリーエンジン達の声がかかる。奴隷商人とその奴隷以外のものは、その誘導に従うようにその場から離れていく。
「フリーエンジンだ! その奴隷、解放させてもらうぞ!」
 宣言と共に自由騎士達が奴隷商人に向かって迫る。奴隷商人は軽くレッドランページ達の頭を小突き、それが合図となったのか、レッドランページ達は狂ったような大声をあげて自由騎士達に向かって走り出してくる。
 スレイブマーケットに対するフリーエンジンの一矢。その戦いが今切って落とされた。


「ゴングが鳴ったわ! 速攻よ!」
 最初に躍り出たのはエルシーだ。爆発の合図と共にレッドランページに向かって走り出し、紅竜の籠手を突き出すように構える。戦いの構えすら取らず、だらりと腕を垂らすレッドランページ。隙がある様で隙が無い。焦らず、しかし止まることなく間合いを測る。
 きっかけはエルシー自身分からない。何かの予兆を察し、上体を逸らす。そこに飛んできたレッドランページの拳。驚きはあったが体は素直に反応してくれた。拳をかいくぐるように潜り込み、真っ直ぐに籠手を突き出した。
「速さ自慢は伊達じゃないわね!」
「ええ、急所を容赦なく狙う所もです」
 エルシーの後ろリンネが笑みを浮かべながら頷く。人間性を捨てた機械的な動き。リンネが抱いた感想はそれだ。戦いそのものを楽しむリンネとは真逆の『作業』で戦うレッドランページ。その倫理にリンネは何も言わない。大事なのは強いか弱いかだ。
 呼吸を整え、清らかな空気を肺に溜める。その状態のまま印を切り、呼気と共に魔力を開放した。仲間の武器に宿る呪いに似た力。他者の傷を喰らい、持ち手を癒す痛みを転換する魔力。術の定着を確認し、リンネは深く息を吐く。
「流血に滾るのは貴方達だけではありませんよ」
「いや、オレはそういう趣味はないからな!」
 リンネの言葉を否定するナバル。戦闘を好む人間がいることは知っているが、ナバルはその類ではない。平和に物事が解決できればそれに越したことはなかった。とはいえ、それだけで世の中が回ると思うほど夢見がちでもない。故に盾と槍を手にするのだ。
 兜を外し、赤色の髪を露出する。これでレッドランページがこちらを狙ってくれれば、他の仲間にダメージが向かわないという思惑だ。回転するように盾の内側に入り込むレッドランページ。その貫手を鎧の硬い部分を使ってナバルは逸らした。
「あっぶねー!? でも予想通りこっちを狙って来たぞ!」
「相手の心の傷を抉っているようなものですからね。乱用は禁物かと」
 ナバルに狂乱的に攻撃を加えるレッドランページを見て、エミリオが頷いた。紅色はレッドランページからすれば傷の象徴だ。それを見せつけるようにすれば当然狂ったように襲い掛かるだろう。見たくないものを壊すように。
 スコープを調節しながら戦場を見るエミリオ。援軍やレッドランページの為にも速攻で戦闘を終わらせなければならない。拳大ほどの機械をいじり、戦場に投げる。薬品が空気と反応して爆発するような冷気が広がり、敵の足を奪っていく。
「慌てずに行きましょう。まだ時間はあります」
「おー! ナナンもがんばるぞー!」
 自分の身長ほどの両手剣を掲げ、ナナンが叫ぶ。どこかほのぼのとした幼い言動だが、レッドランページを始めとした亜人の奴隷を救いたいという気持ちは他の自由騎士と変わらない。悪いことをしたら謝る。その心は老若男女変わらないとばかりに。
 戦いの最中に足止めされた護衛兵たちの隙を縫うようにナナンは奴隷商人の方に向かう。幼い笑みをそのままにナナンは巨大な剣を振りかぶった。力いっぱい叩きつけられた一撃が敵を穿つ。
「いつも以上に張り切っちゃうんだからぁ!」
「ん。がんばる」
 無表情に頷くリムリィ。眼前に立つレッドランページ。それはもしかしたら自分もそうなってしまったかもしれないイフの自分。それを前にリムリィが何を思っているのか。それは余人には分からぬことだ。ただ、彼らを開放すべく槌を振るう。
 振るわれる拳を武器で受け流しながら、リムリィは機を伺う。僅かに乱れた相手のリズムを逃さずに、リムリィの槌がうなりをあげる。力強く振り下ろされる一撃が、レッドランページを吹き飛ばす。
「わがままかもしれないけど……たすけるから」
「はい。彼らを……彼らが奪われたものを、取り戻さなくては」
 リムリィの言葉に頷くたまき。戦うためだけに調教され、色々な物を奪われたレッドランページ。彼らが本来持っているべきものは、もう存在しない。だけそれを埋める何かを与える事が出来れば。その想いを胸に、たまきは戦場に足を向ける。
 スタッフを手にしてたまきは魔力を集める。杖が振るわれると同時に広がる癒しの魔術。それが仲間達の傷を癒していく。心の傷もこうして癒すことが出来ればいいのに。狂ったように戦うレッドランページに、たまき悲しげな瞳をむけた。
「それがせめてもの……罪滅ぼし。謝って許されることでは、ないのでしょうが……」
「そうだな。傷は深い。治療は容易ではないだろう」
 たまきの言葉に頷くリュリュ。レッドランページはヘルメリアの社会により深く傷ついた。壊れた心は簡単には癒えないだろう。だがそれでも治療を諦めるつもりはない。紅色の呪縛から解き放たなければ。
 瞳に魔力を集め、敵の状況を確認する。疲弊具合等を確認しながら手の平では術式を展開すべく魔力を集めていた。冷気がリュリュの掌に集い、一陣の風となって戦場を荒れ狂う。リュリュの怒りを示すが如く、冷たくそして激しく。
「君達はもっと高く飛べるんだ。紅色などに捕らわれることなく」
 リュリュの声はレッドランページには届かない。今は、まだ。
「はっ! 図らずもデモンストレーションになりそうだ! 調子に乗ったフリーエンジンを倒せば、こいつらの株も値段も跳ね上がるぜ!」
 奴隷商人は戦いを見ながらそんなことを叫ぶ。そこに亜人を慮る気持ちはない。自分が育てた道具がいい活躍をしているという喜びだ。そんな傲慢な言葉を受け、自由騎士達は怒りが募る。彼らを排し、レッドランページ達を救わなければという思いが増していく。
 奴隷をめぐる戦いは、少しずつ激化していく。


 レッドランページは赤い髪をあえて晒したナバルに集中的に攻撃を加えていく。そして護衛兵は奴隷商人に迫るナナンを排除しようと攻撃をしていた。
「いってー!」
「ナナンは負けないよ!」
 猛攻を前にフラグメンツを燃やす二人。膝を屈するほどのダメージを精神力で耐え抜き、何とか踏ん張って耐える。
「かくじつにたおす。……いたいけど、がまんして」
 ここが攻め時と判断したリムリィが、全身の力を込めてハンマーを振るう。体当たりし、ハンマーを振り下ろし、そして払いあげる。体重移動で槌を振るってレッドランページを吹き飛ばし、その意識を奪いとる。
「本当の正解が何なのかわかんないけど、それでも今は、オレが正しいと思うことに全力を尽くす!」
 ナバルはずっと悩んでいる。他国の文化だから口出しすべきではないのか。ここまで残酷になることが普通だから、それを邪魔すべきではないのか。悩んでも答えは出ない。ただいまは、自分が正しいと思う事をするのみだ。
「さて、悩みながら戦うのがいいのか。心を無くして戦うのがいいのか。勝者が正しいというのなら、さてこれは」
 悩むナバルを見ながらリンネがふむりと思考する。戦いに善悪はない。戦いはあくまで手段で、勝った者が正しい。それもまた現実の一面だ。だがそれを安易に受け入れるのも面白くない。戦いの中で得られる正解。リンネはそれを求めていた。
「とりゃー! ナナンの邪魔をすると、こうだー!」
 奴隷商人とそれを守る護衛兵に囲まれたナナンは回転するように武器を振るいながら応戦していた。敵の数は多く、いつも元気なナナンも息が切れそうな状態だ。それでも気丈に元気を振りまいていた。
「今、癒します……!」
 たまきは倒れそうになるナナンを癒すために術を行使する。魔力の蓄えは充分だが、それを行うだけの手数が足りない。焦るな、と自分自身に言いきかせながら一手一手確実に癒していく。息つく暇さえなく、さらに癒しの魔力を練り上げて。
「後で介抱するから、許してね!」
 謝罪するように言いながら、体内の気を叩きつけるエルシー。格闘家独特の構えにより物理的な打撃は受け流される。それ故に気弾による攻めを行っていた。気による打撃はレッドランページの動きを封じ、確実に追い込んでいく。
「これで残り一人だ」
 レッドランページを見ながらリュリュが氷の弾丸を放つ。放たれた蒼いマナの矢はレッドランページの一人を貫き、その意識を刈り取る。謝罪するように一瞬目を伏せ、新たな目標に向かって魔力を練り上げた。
「流石に素早いですが、これでお終いです」
 スコープを再調整しながらエミリオがレッドランページに武器を向ける。情報通りにレッドランページたちは素早かったが、それでも歴戦の自由騎士が追いきれないほどではない。鋭い一撃がレッドランページを貫き、そして地に伏した。
「馬鹿な……! アレを全部倒しただと! くそ、歯車騎士団は何をしている!」
 焦りの声をあげる奴隷商人。それだけ自分の調教に自信を持っていたという事なのだろう。まだ来ない歯車騎士団を罵るようになった。
「後は護衛兵よ!」
 そして自由騎士の矛先は奴隷商人の方に向かう。相手もプロであるため、そう易々と雇い主を見捨てるようなことはしない。自由騎士の雄叫びに応じるように刃を振るうが、一人また一人と数を減らしていく。
「あうぅ」
「くっそ、後は任せた……」
 集中砲火を受けていたナナンとナバルが力尽きるが、戦いの趨勢はほぼ決まった。最後の護衛兵を伏し、奴隷商人に刃が向けられる。
「か、金ならある! だから――」
「そうか。ではその金を抱いて眠るがいい」
 命乞いを聞く耳もたないと切り捨てるリュリュ。試験管から出て来た自立移動する水銀が淡く光る。リュリュの魔力と反応して水銀は鎌のような姿を取った。そのまま大上段から首を刎ねるように振り下ろされる。
「命は取らない。己の卑しさを感じながら生き続けろ」
 振り下ろされるリュリュの水銀の鎌が、戦闘の終りを告げた。


 そこから自由騎士達の行動は迅速だった。
『フリーエンジン参上!』
 そう書かれたカードをその場に置いて、奴隷商人から鍵を奪取して馬車ごと捕らわれていた奴隷達を強奪。気絶しているレッドランページ達もその馬車に乗せ、通りを一気に走り抜ける。
「オレに出来る事は、この程度だな」
 ナバルはレッドランページ達の目に布を巻く。うっかり赤い物を見ないようにするための措置だ。応急処置的なことなのは解っている。本格的な治療はフリーエンジンに戻ってからだ。
「ニコラさんに頼んで、赤色だけが視認できなくなる補正装置か何か作ってもらえればいいのですが」
 エミリオは言ってため息をつく。彼らの傷は深い。治療には時間がかかるだろう。その為の補助装置があるに越したことはない。骨折した時の杖のように、赤を見ないための何かが。……まあ、ニコラに頼むのは分の悪い賭けになるのだろうが。
「お前達はもっといい景色が見れるんだ。その羽根を広げ、大空を飛んで」
 意識を取り戻したレッドランページ達にリュリュはそう告げる。この言葉が届いたかどうかは分からない。届いても意味が分かるかも分からない。それでも同じソラビトとして、伝えなくてはいけない事だった。
「……いろいろすてられちゃったなら……またひろえばいい」
 リムリィはレッドランページ達を見ながら、そう呟く。過去を捨てたり捨てられたり。その傷はリムリィも知っている。そんな自分に手を伸ばしてくれた姉のように、そっとレッドランページ達に手を添えた。その手伝いが出来ますように。
「私が言うのも烏滸がましいと、思います。ですが、皆さんの『失ってしまったもの』を取り戻す為に尽力する事を許して頂けないでしょうか……?」
 たまきは謝罪するようにレッドランページ達に頭を下げる。彼らから様々な事を奪ったのはノウブルだ。同じノウブルとしてそれを恥じ、そして救いたい。それがエゴだと分かっていても、たまきはそうしたかった。
「馬車はここに置いていくわ! 貴方達も逃げましょう、私達についてきて!」
 追手を誤魔化すために馬車を捨てる決意をした自由騎士達。エルシーはそこに捕らわれていた奴隷達の枷を外し、手を伸ばした。最初は戸惑っていた亜人達は、ゆっくりと前に進みだす。自由への道を。
「殿は私が勤めましょう。適度に暴れて、逃げますよ」
「ナナンもドカーンてやるのだ!」
 逃げるまでの時間を稼ぐためにリンネとナナンが馬車に留まる。狭い路地を利用して数の優位を発揮できないようにしながら、逃亡ルートを確保する。時間を稼いで、フリーエンジンの煙幕と共に逃げ去るつもりだ。
 自由騎士達は頷きあい、奴隷を逃がす為の戦いに身を投じる――

 そうして戦いは終わりを告げる。
 レッドランページ達を含め、総勢一四名の奴隷を自由に導くことが出来た。デザイアと呼ばれるようになった彼らは、フリーエンジンの『村』に送られる。レッドランページ達の精神的な治療もそこで行われるという。
 自由騎士達は成功を祝いあい、そして再び奴隷解放への戦いに身を投じる。
 スレイブマーケットはまだ続く。
 ヘルメリアの奴隷社会に風穴を開けるべく、そしてそこで囚われた亜人達に希望を与えるべく、自由騎士達はまた武器を持つのであった。


†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
赤に反応……なんでケモノビト(ウシ)の奴隷にしなかったんだろう?(←全亜人コンプリートしたかったから)

以上のような結果になりました。
赤い髪って普通にあるよね。出した後で気づくポンコツでした。ええ、もう。
そんなわけでMVPは敵を見事に引き付けた盾役のジーロン様に。
行かない理由なんか何もなかったです。ええ。

スレイブマーケットは続きます。先ずは傷を癒してください。
皆様の戦いが、ヘルメリアを変えてくれると信じて、筆を置きます。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済