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【ゴールドティアーズ】Moonlitfairy!

●月光妖精
ムーンリットフェアリー。
それはイ・ラプセルでも珍しい光のフェアリー。実体をもたず月光が50㎝ほどの少女のを形どる幻想種。触れれば消えることもあり、その生態は誰にも分からない。人間の文化に興味があるのか、歌や踊り、人間が作った者に近寄る習性があると言われている。
それが今宵、見られると階差運命演算装置がはじき出した。
それはもしかしたらただの作り話なのかもしれない。
月光を受けた霧が少女の形に見えただけの現象なのかもしれない。
それこそ幻覚を見せる幻想種の悪戯なのかもしれない。
それでも人はそこに夢を見る。嘘かもしれないと思いつつ、憧れる。
さあ、貴方は――
ムーンリットフェアリー。
それはイ・ラプセルでも珍しい光のフェアリー。実体をもたず月光が50㎝ほどの少女のを形どる幻想種。触れれば消えることもあり、その生態は誰にも分からない。人間の文化に興味があるのか、歌や踊り、人間が作った者に近寄る習性があると言われている。
それが今宵、見られると階差運命演算装置がはじき出した。
それはもしかしたらただの作り話なのかもしれない。
月光を受けた霧が少女の形に見えただけの現象なのかもしれない。
それこそ幻覚を見せる幻想種の悪戯なのかもしれない。
それでも人はそこに夢を見る。嘘かもしれないと思いつつ、憧れる。
さあ、貴方は――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.ムーンリットフェアリーと夜を楽しむ
どくどくです。
今年もゴールドティアーズがやってきました。
●説明!
ムーンリットフェアリーと呼ばれる幻想種が見られると水鏡が予知しました。大きさ50cm程の少女の姿をした幻想種です。羽根はないけど、空を浮遊できます。踊るように漂って、そのまま消えていくため危険度は皆無。
数少ない分かっていることは、歌や踊りなど人の文明に惹かれる傾向があり、そういった物を捧げると反応するとか。
行動は三種類用意しました。プレイングの冒頭、もしくはEXプレイングに行動したい番号を記載してください。それ以外の行動をされたい方は【4】をお願いします。
【1】月光妖精を肴に:幻想的な光景を見ながら宴を楽しみます。騒いでもいいですし、静かに杯を傾けても構いません。
【2】月光妖精に謳う:フェアリーに歌や踊り等の芸事を捧げます。料理などのお供え物や機械などにも反応して動きます。
【3】商売繁盛!:月光妖精を見に来た人相手に商売をします。かなりの人が集まりらしく、土壌は充分です。屋台レベルなら何とか持って行けます。
●場所情報
イ・ラプセルにある小高い丘。丘の上は広くなだらかで、キャンプをする分には申し分ありません。
時刻は夜。満天の空に星が浮かんでいます。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
今年もゴールドティアーズがやってきました。
●説明!
ムーンリットフェアリーと呼ばれる幻想種が見られると水鏡が予知しました。大きさ50cm程の少女の姿をした幻想種です。羽根はないけど、空を浮遊できます。踊るように漂って、そのまま消えていくため危険度は皆無。
数少ない分かっていることは、歌や踊りなど人の文明に惹かれる傾向があり、そういった物を捧げると反応するとか。
行動は三種類用意しました。プレイングの冒頭、もしくはEXプレイングに行動したい番号を記載してください。それ以外の行動をされたい方は【4】をお願いします。
【1】月光妖精を肴に:幻想的な光景を見ながら宴を楽しみます。騒いでもいいですし、静かに杯を傾けても構いません。
【2】月光妖精に謳う:フェアリーに歌や踊り等の芸事を捧げます。料理などのお供え物や機械などにも反応して動きます。
【3】商売繁盛!:月光妖精を見に来た人相手に商売をします。かなりの人が集まりらしく、土壌は充分です。屋台レベルなら何とか持って行けます。
●場所情報
イ・ラプセルにある小高い丘。丘の上は広くなだらかで、キャンプをする分には申し分ありません。
時刻は夜。満天の空に星が浮かんでいます。
●イベントシナリオのルール
・参加料金は50LPです。
・予約期間はありません。参加ボタンを押した時点で参加が確定します。
・獲得リソースは通常依頼難易度普通の1/3です。
・特定の誰かと行動をしたい場合は『クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)』といった風にIDと名前を全て表記するようにして下さい。又、グループでの参加の場合、参加者全員が【グループ名】というタグをプレイングに記載する事で個別のフルネームをIDつきで書く必要がなくなります。
・NPCの場合も同様となりますがIDとフルネームは必要なく、名前のみでOKです。
・イベントシナリオでは参加キャラクター全員の描写が行なわれない可能性があります。
・内容を絞ったほうが良い描写が行われる可能性が高くなります。
・公序良俗にはご配慮ください。
・未成年の飲酒、タバコは禁止です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
0個
0個
1個
0個




参加費
50LP
50LP
相談日数
7日
7日
参加人数
24/∞
24/∞
公開日
2019年07月20日
2019年07月20日
†メイン参加者 24人†
●
ムーンリットフェアリー。
それはイ・ラプセルでも珍しい光のフェアリー。実体をもたず月光が50㎝ほどの少女のを形どる幻想種。攻撃性もなく危険性は皆無――
「――な、わけ、あるか!」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はひっきりなしに手を動かし、酔っ払いと怪我人の世話に忙殺されていた。ムーンリットフェアリーを見る為に集まった者達が酒を飲み、乱痴気騒ぎを起こした結果である。
「よーし、酔っ払いはそこに寝かせろ。あと水を飲ませとけ! 喧嘩したモンは布で傷口を押さえておけ! すぐに包帯巻いてやる! 虫に刺されて腫れた? あとで薬草見繕ってやるから傷口を洗っとけ!」
やってくる患者にひっきりなしに対応するツボミ。幻想種自体の危険性はないが、医者が不要になるという状況はなかなかないのであった。
「こんな時に限ってサイラスは居ねえし! 何処行ったあのペストマスク!」
「旦那なら『毒キノコのイブリースが出たので』とか言ってすっ飛んでいったぞ」
逃げたなあの野郎、と叫ぶツボミを見ながら『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は頬を書いた。
「カリカリするなよ、先生。差し入れだ」
「後で飲むから机にでも置いておいてくれ。と言うか、何をしに来たのだ?」
「商売だよ。飲み物の需要は多そうだからな」
テーブルの上に飲み物を置きながらウェルスはニヤリと笑う。ムーンリットフェアリーを見に来たものを相手にジュースを売ろうと屋台を引いてきたのだ。ある程度落ち着いてきたので診療所に顔を出したら、この状況だ。
「酔っ払い用の果実ジュースはどうだい? 二日酔いにも効くらしいぜ」
「商売上手だな。いい稼ぎになってるんじゃないか?」
「借金返済にはまだ遠いがな」
脳内で数字を算出し、肩をすくめるウェルス。目標額にはまだまだ遠い。
「しかしまあ、人が集まるのも分かるぜ。何せこんな光景、めったに見られないからな」
夜の帳に舞う月光の少女。触れれば消える夢幻。一夜限りの光の宴。
それを見に来た自由騎士は、医者と商人だけではなかった。
●
「……そーっと、そーっと……むわ! ホントに消えちゃった!」
ゆっくりとフェアリーに近づき、包み込むようにして触れようとする『南方舞踏伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。カーミラの手が触れた瞬間、シャボン玉が割れるように音もなく月光ははじけて消えた。そして数秒後に、別のムーンリットフェアリーが現れる。
「ごめんねー。お詫びに太陽の踊りを見せてあげる!」
言ってカーミラはステップを踏む。南方諸島で得た熱い太陽の踊り。月光の優しさとは違う、激しく熱いリズムの踊りだ。フェアリーに触れないように注意しながら、体全体を使って踊りを披露する。
「踊りを教えてあげる! 一緒に踊ろう!」
「ふふ。貴方達も飛べるのね」
羽を広げて宙を舞い、『浮世うきよの胡蝶』エル・エル(CL3000370)は傍で舞うフェアリーに話しかけた。言葉を理解するのか、それとも音に反応しているだけなのか。エルの言葉に頷くように旋回した。その様子に微笑みながら、夜空の空気を吸い込むエル。
「歌いましょう。詠いましょう。謳いましょう」
くるくると空で舞いながら、エルはメロディを奏でる。平和を願う歌。豊潤を喜ぶ歌。日々の感謝、明日への期待。それはエルの血族が伝えてきた歌の魔術。歌は響き、心を震わせ、脈々と世代を超えて伝わっていく。万古不変の人の願い。その素晴らしさを伝える歌。
「貴方達も一緒に歌いましょう」
「じゃあ、伴奏はモカがしますね」
エルの歌に惹かれるように『夜空の星の瞬きのように』秋篠 モカ(CL3000531)が宙を舞う。リラを手にして奏でながら、笑顔でムーンリットフェアリーを見る。夜に輝く月光の少女。音楽を喜ぶように近寄る幻想種を前に、モカは笑顔で歌を奏でる。
「妖精さんも一緒に踊りましょう」
リラで曲を奏でながら、宙を舞うように羽ばたくモカ。近寄るムーンリットフェアリーに触れないようにしながら空を飛び、音を奏でていく。夜の静寂を壊さないような優しい音色。夜空に煌く星のように明るい唄。
「来年もまた、会えるでしょうか? 逢えたらその時もお願いしますね」
「消えて、また現れて……そっか、触れても消えてなくなるわけじゃないんだ」
消えてはまた現れるムーンリットフェアリー。それを見て『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は頷いた。ふわふわと漂う月光妖精。人の作った者に喜び、それを求めるように近づいていく。その様子を見てエルシーは微笑んでいた。
「人を愛する妖精。泡のような儚い存在。だからこそ、惹かれるのかしら」
幻想的な妖精の乱舞。夜空にまう白の少女の遊戯は、それだけで感動を与える。だがそれも触れて消えるように、一夜限りの光景だ。その儚さこそが美しさなのだろうか。エルシーはそんなことを思いながらフェアリーに手を伸ばす。その指先に妖精が止まる。
「あらお疲れかしら? ゆっくり休んでいいのよ」
「そっか。自分から触れる分には消えないのか」
エルシーの指先に留まったムーンリットフェアリーを見ながら『もてもてにこにー』ニコラス・モラル(CL3000453)は息を吐いた。よく分からない月光妖精の生態。生命と言っていいかどうかすらわからない幻想種だ。謎多き存在を前にニコラスは――
「ま、それを調べるのは学者の仕事だ。おじさん、偶にはしっかりやりますよっと」
ティンホイッスルを取り出し、演奏を始めるニコラス。大雑把に見える見た目とは裏腹に、精錬された音色を奏でていた。夜に似合うしっとりとした曲。はるか遠くの国で働いていた際の慰みで覚えた曲。それを聞かせていた相手はここにはいないけど――
(ヤなこと思い出しそうだ。人が集まってきたら、明るい曲に変えますか)
「まだまだへたっぴですけど、聞いていってくださいね」
『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)はギターを手にムーンリットフェアリーに語りかける。妖精からの返事はないが、霧がギターを奏で始めるとそれに反応して周囲に集まってくる。
「あぁ……フェアリーさんの踊りは心地よいですね」
音に合わせて周囲を舞うムーンリットフェアリー。キリはその光景に感動しながら、楽器を奏でる。誰もが知っている童謡だが、それでも喜んで踊ってくれる。その動きが更なるモチベーションとなって、キリの指を動かしていく。
「ありがとうございます。次は――」
「占いで小銭稼ぎしようと思ったけど、我慢できないよね!」
奏でられる音楽を前に『炎の踊り子』カーシー・ロマ(CL3000569)は限界とばかりに占い用のカードを置く。そのまま立ち上がり、回るように月光妖精に近づいていく。音楽に合わせるようにステップを踏み、ゆっくりと指を妖精に伸ばす。
「一緒に踊りましょう」
言葉と同時に月光妖精に触れないようにステップを踏みながら踊りだすカーシー。異国風の衣装を翻し、周りの音楽に合わせるように体を動かしていく。鋭く、そして大きく。踊り子として鍛えられた肉体は、フェアリーの光に照らされて、輝いていた。
「こうして楽しい夜を過ごしたら、来年も来てくれるかな?」
この幻想的な光景を見れるのなら、いくらでも歌い踊ってみよう。楽師達は皆、同じ気持ちだった。
●
そんな音楽の輪から少し離れたところで、酒を飲む者もいた。
「夜の帳に舞う光の妖精。実に美しい」
『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)は言って機械の腕で杯を傾ける。戦いばかりが騎士の日常ではない。こうして美しいものに触れるのも、大事なのだ。
「なんとも幻想的な光景よ!」
『ほんとうのねがいは口にだせなくて』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)もこの光景を前に心奪われていた。白い光の舞を見ながら、ゆるゆると酒を嚥下する。
「にーくー!」
両手いっぱいに肉を持ち、『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)は喜んでいた。右手には鶏肉豚肉牛肉の串を。左手には羊肉馬肉熊肉を。それぞれを口にしながら、横媚の声をあげていた。
「ピカピカ綺麗だけど、サシャは肉で忙しいんだぞ!」
ムーンリットフェアリーよりも出店の肉。サシャの食欲を満たすにはまだまだ足りない。祭りの出店から匂ってくる肉の香りが、サシャのお腹を刺激する。片手の串を全制覇し、再び店に向かって走り出す。
「おにく! 全制覇! するんだぞ!」
「まぁ! 彼女達がムーンリットフェアリー!」
屋台で買った食べ物を手に『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は儚い幻想種の姿に感動していた。めったに遭遇することがないという事もあるが、夜に光る淡い姿がレオンティーナの心を震わせていた。
「はじめまして、フェアリーさん。ふふふっ。フェアリーさんも食べますか? おいしいですよ?」
持っていた食べ物を差し出すレオンティーナ。人の作った者に興味があるのか、ムーンリットフェアリーは出されたものに近寄っていく。食べる事はしないが、触れるか触れないかの距離を飛び回っていた。
「思議な存在ですわね。彼女達には自我があるのでしょうか? もしあるなら、お友達になることもできますわね」
「最近は忙しくて全然飲んで無かったのよね……毎日ワイン一瓶ぐらいしか」
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)はワイングラスにワインを注ぎ、忙しかった日々を思い出す。シャンバラ平定後、息つく暇もなくヘルメリアへの攻勢を開始する。……まったく飲めなかったわけではないが。っていうか一日一瓶かよ。
「ありったけのお酒を綺麗なフェアリーを見ながら煽る! こんなに贅沢なことってあるかしら!」
アンネリーザは夜空に杯を掲げ、ワインを一気に飲み干す。その足元にはすでに空いているワインの瓶が幾つも並んでいた。赤ワイン白ワインロゼワインシャンパンフォーティファイドワインフレーバーワイン。イ・ラプセルのワインをこの日にために集めてきたのだ。
「綺麗な踊り……酒が進むわね」
「確かに。良い景色だ」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はアンネリーザの言葉に頷く。ムーンリットフェアリーと自由騎士の宴から少し離れ、夜の天幕の元で酒を口にしていた。貴族達の派手で色彩溢れた酒宴とは異なるが、それに劣らない光景だ。
「あ、テオドールさん。お菓子はいりませんか? それともお酒をお楽しみですか?」
そんなテオドールに近づいていく『混世魔王』フーリィン・アルカナム(CL3000403)。自作のお菓子を自由騎士の人達に配っているのだ。妖精用に小さく作ってあるが、見た目も味も精巧に作られていた。
「いや。頂こう。こういう菓子に会う酒もあるのだ」
「それは良かったです。ムーンリットフェアリーさんにも喜んでもらえましたし」
「興味深いな。妖精が食したというのか?」
「流石に食べるまでは。でも気に入って近づいて来てくれました」
フーリィンの手にした御菓子に集まる白光の妖精。その光景を想像して、テオドールは小さくほほ笑んだ。それはさぞ美しい光景だったのだろう。
「来年もムーンリットフェアリーが見られたのなら、フーリィン嬢の料理の腕前のおかげになるのだろうな」
「ふふ。お世辞がうまいですね。でも料理には自信があるんです。お姉さんですから」
微笑むフーリィン。孤児院で多くの孤児を抱える彼女を見て、貴族であるテオドールはため息をついた。
「……孤児が出ないような社会を作れればいいのだがな」
「いいえ。貴族さんは頑張ってます。今はそれよりも祭りを楽しみましょう」
未来に思いをはせるより、今しかない光景を楽しむ。テオドールは深く頷き、酒を口につけた。
「英羽さん、甘いお酒はいかがですか? お酌させてくださいな」
「お酌、いいんですか! ではお言葉に甘えて……」
幻想的な月光妖精の光景を『大いなる癒やし』サラ・アーベント(CL3000443)と『護るちから』英羽・月秋(CL3000159)は並んで見ていた。サラに注がれた果実酒を味わいながら飲み干す月秋。熱い何かが胸からこみあげてきた。
「ムーンリットフェアリーが見られるなんて思ってもみませんでした。……綺麗ですね」
「ええ、綺麗ですね……サラさんと一緒に、見れて良かったと心の底から思います」
「まあ、お上手」
「あ、えと……思ったままの事をですねっ!」
慌てる月秋の様子を見て、微笑むサラ。表情こそ変えないが、月秋の動揺は見て取れる。その違いを感じ取れて、サラは嬉しくあった。果実酒を口に含み、息を吐く。
「ゴールドティアーズでは、英羽さんは何かお願いはされましたか?」
「願いですか? 僕は『少しでも多く、守りたい人を守れますように』でしょうか。サラさんは?」
「私は、皆さんが傷付かないように、傷付いても癒しがありますように、と。
それともう一つ――」
サラは月秋の方を見ながら唇を開く。
「英羽さんを独り占めできますように、とか?」
「サラ、さん……」
その意味が理解できないほど月秋は子供ではない。こちらを見つめるサラの顔から目が離せないでいた。
「ふふ、酔っていますね、私。嫌でしたら聞かなかったことにしてください」
「いいえ! その……サラさんの願い事、叶って欲しいです」
夜の静寂の中、月光が優しく二人を照らしていた。
●
「リリーも少しは踊れるんですっ」
音楽に合わせて踊る『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)。様々な表現方法を学ぶリリアナ。踊りもその一つだ。ムーンリットフェアリーと共に優雅に踊っていた。
「どんな歌がお好みですか?」
『きらきら謡う』ミスリィ・クォード(CL3000548)はリラを手にしてフェアリーたちに一礼する。心の中で三つ数えて頭をあげ、リラを構える。空に浮かぶ月の灯りと光る妖精たちが照明。淡く白い光に照らされながら、ミスリィはゆっくりと弦を奏でる。
「星の光満ちる丘の上 降り立つ幻の君 手を伸ばせば解けるのなら」
どこか悲しげな、そして心を揺るがすような歌。
「振り向いて 此処に居て 今少し 願いを旋律に乗せ 触れさせて声だけでも……」
それはムーンリットフェアリーのことを歌っているようでもあり、遠く届かない誰かを思うようでもあった。届かない君。手を伸ばしても触れられない。ならばせめて振り向いてほしい。この旋律に声を乗せてほしい――
「恋歌ってこんな感じでしょうか」
「お疲れさん。これ飲んで喉、潤しとき」
一曲終えたミスリィにジュースを渡す『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)。アリシアは歌ったり踊ったりする人に料理やジュースを配っていた。機械の足で大地を蹴って、人の間を縫うようにして料理を運んでいく。
「なんや? うちの運び方気に入ったか? ならついてきーや!」
アリシアを追うように舞うムーンリットフェアリーに手を振り、笑みを浮かべて料理を運ぶ。指と指の間に皿を挟んで多くの料理を手にしながら、緩急着けた動きで踊るように移動していく。派手に動いているのに料理が崩れることはなかった。
「どや! みんなの嬉しそうで楽しそうな顔がいっぱい見れるで!」
「僕は、歌が得意な訳じゃないから……これを持ってきたよ」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は街で買ってきたオルゴールのねじを巻きながらムーンリットフェアリーに話しかける。ふたを開けると音楽が鳴り、小さな人形が回転して踊りだす。その音色と回転に合わせるように月光妖精も踊りだす。
「少し、待って……。今、君達の友達を増やしてあげる……」
いってマグノリアはオルゴールを就寝に薄ぼんやりとした光を放ち、ホムンクルスを展開する。ムーンリットフェアリーと一緒に踊るホムンクルスとオルゴールの人形。小さな劇場を作り出したマグノリアは、その光景に心を癒していた。
「君達と話が出来れば……それは素晴らしい事なんだろうね……」
「ヨ、ヨツカさん、ご一緒させて下さってありがとうございます」
「なに。ヨツカも見てみたいと思っていたのだ。さぞ美しいのだろうな」
ここに来る途中で『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は『誰ガタメの願イ』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)と合流する。ティルダはシャンバラでは見られない幻想種の姿を想像し、ヨツカは故郷の『ホタル』を思い浮かべていた。
「これは……」
「すごくきれいですね!」
ヨツカもティルダも夜の天幕に踊る月光妖精の姿に感嘆の声をあげていた。深い夜空に舞う白い少女。触れれば消える儚い存在。それが意思を持っているかのように、人が作った者に興味を持つように寄っていくのだ。
「お会い出来て嬉しいですっ。これ、どうぞ……!」
ティルダはカバンに入れていた小物入れを出す。星の形にカットした石が装飾されており、月光妖精用にとサイズも小さめだ。やってくるムーンリットフェアリーに差し出せば、その小さな手が小物入れに触れた。
「それはティルダが作ったのか? すごいな!」
ヨツカはそんなティルダの様子を見ていた。物を作ることがない――記憶がないのだから仕方がないのだが――ヨツカにとってこの月光妖精に捧げるものはない。だが儚くも美しい幻想種を見ているだけで、どこか心が落ち着いてくる。
「これは、ヨツカさんに。余った石で作ったものです。つたないものですけど、もしよかったら」
「おお。貰っていいのか? なら頂こう」
ティルダから羽根の形をした御守りを受け取り、ヨツカは喜んだ後に、
「しかしヨツカには返せるものがない。困ったな」
「いいんですよ、今困らなくて。同じ自由騎士なんですから、好きな時に返してくれればいいんです」
月下、優しい約束が交わされた。
●
朝日と共に月光妖精の姿は消える。
金の涙の祭は日の訪れと共に終わりを告げる。
祭の終わりを噛みしめながら、自由騎士達は慌しい日々に帰還する。
ムーンリットフェアリーの姿を心に留め、新しい明日へと――
ムーンリットフェアリー。
それはイ・ラプセルでも珍しい光のフェアリー。実体をもたず月光が50㎝ほどの少女のを形どる幻想種。攻撃性もなく危険性は皆無――
「――な、わけ、あるか!」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はひっきりなしに手を動かし、酔っ払いと怪我人の世話に忙殺されていた。ムーンリットフェアリーを見る為に集まった者達が酒を飲み、乱痴気騒ぎを起こした結果である。
「よーし、酔っ払いはそこに寝かせろ。あと水を飲ませとけ! 喧嘩したモンは布で傷口を押さえておけ! すぐに包帯巻いてやる! 虫に刺されて腫れた? あとで薬草見繕ってやるから傷口を洗っとけ!」
やってくる患者にひっきりなしに対応するツボミ。幻想種自体の危険性はないが、医者が不要になるという状況はなかなかないのであった。
「こんな時に限ってサイラスは居ねえし! 何処行ったあのペストマスク!」
「旦那なら『毒キノコのイブリースが出たので』とか言ってすっ飛んでいったぞ」
逃げたなあの野郎、と叫ぶツボミを見ながら『クマの捜査官』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は頬を書いた。
「カリカリするなよ、先生。差し入れだ」
「後で飲むから机にでも置いておいてくれ。と言うか、何をしに来たのだ?」
「商売だよ。飲み物の需要は多そうだからな」
テーブルの上に飲み物を置きながらウェルスはニヤリと笑う。ムーンリットフェアリーを見に来たものを相手にジュースを売ろうと屋台を引いてきたのだ。ある程度落ち着いてきたので診療所に顔を出したら、この状況だ。
「酔っ払い用の果実ジュースはどうだい? 二日酔いにも効くらしいぜ」
「商売上手だな。いい稼ぎになってるんじゃないか?」
「借金返済にはまだ遠いがな」
脳内で数字を算出し、肩をすくめるウェルス。目標額にはまだまだ遠い。
「しかしまあ、人が集まるのも分かるぜ。何せこんな光景、めったに見られないからな」
夜の帳に舞う月光の少女。触れれば消える夢幻。一夜限りの光の宴。
それを見に来た自由騎士は、医者と商人だけではなかった。
●
「……そーっと、そーっと……むわ! ホントに消えちゃった!」
ゆっくりとフェアリーに近づき、包み込むようにして触れようとする『南方舞踏伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)。カーミラの手が触れた瞬間、シャボン玉が割れるように音もなく月光ははじけて消えた。そして数秒後に、別のムーンリットフェアリーが現れる。
「ごめんねー。お詫びに太陽の踊りを見せてあげる!」
言ってカーミラはステップを踏む。南方諸島で得た熱い太陽の踊り。月光の優しさとは違う、激しく熱いリズムの踊りだ。フェアリーに触れないように注意しながら、体全体を使って踊りを披露する。
「踊りを教えてあげる! 一緒に踊ろう!」
「ふふ。貴方達も飛べるのね」
羽を広げて宙を舞い、『浮世うきよの胡蝶』エル・エル(CL3000370)は傍で舞うフェアリーに話しかけた。言葉を理解するのか、それとも音に反応しているだけなのか。エルの言葉に頷くように旋回した。その様子に微笑みながら、夜空の空気を吸い込むエル。
「歌いましょう。詠いましょう。謳いましょう」
くるくると空で舞いながら、エルはメロディを奏でる。平和を願う歌。豊潤を喜ぶ歌。日々の感謝、明日への期待。それはエルの血族が伝えてきた歌の魔術。歌は響き、心を震わせ、脈々と世代を超えて伝わっていく。万古不変の人の願い。その素晴らしさを伝える歌。
「貴方達も一緒に歌いましょう」
「じゃあ、伴奏はモカがしますね」
エルの歌に惹かれるように『夜空の星の瞬きのように』秋篠 モカ(CL3000531)が宙を舞う。リラを手にして奏でながら、笑顔でムーンリットフェアリーを見る。夜に輝く月光の少女。音楽を喜ぶように近寄る幻想種を前に、モカは笑顔で歌を奏でる。
「妖精さんも一緒に踊りましょう」
リラで曲を奏でながら、宙を舞うように羽ばたくモカ。近寄るムーンリットフェアリーに触れないようにしながら空を飛び、音を奏でていく。夜の静寂を壊さないような優しい音色。夜空に煌く星のように明るい唄。
「来年もまた、会えるでしょうか? 逢えたらその時もお願いしますね」
「消えて、また現れて……そっか、触れても消えてなくなるわけじゃないんだ」
消えてはまた現れるムーンリットフェアリー。それを見て『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は頷いた。ふわふわと漂う月光妖精。人の作った者に喜び、それを求めるように近づいていく。その様子を見てエルシーは微笑んでいた。
「人を愛する妖精。泡のような儚い存在。だからこそ、惹かれるのかしら」
幻想的な妖精の乱舞。夜空にまう白の少女の遊戯は、それだけで感動を与える。だがそれも触れて消えるように、一夜限りの光景だ。その儚さこそが美しさなのだろうか。エルシーはそんなことを思いながらフェアリーに手を伸ばす。その指先に妖精が止まる。
「あらお疲れかしら? ゆっくり休んでいいのよ」
「そっか。自分から触れる分には消えないのか」
エルシーの指先に留まったムーンリットフェアリーを見ながら『もてもてにこにー』ニコラス・モラル(CL3000453)は息を吐いた。よく分からない月光妖精の生態。生命と言っていいかどうかすらわからない幻想種だ。謎多き存在を前にニコラスは――
「ま、それを調べるのは学者の仕事だ。おじさん、偶にはしっかりやりますよっと」
ティンホイッスルを取り出し、演奏を始めるニコラス。大雑把に見える見た目とは裏腹に、精錬された音色を奏でていた。夜に似合うしっとりとした曲。はるか遠くの国で働いていた際の慰みで覚えた曲。それを聞かせていた相手はここにはいないけど――
(ヤなこと思い出しそうだ。人が集まってきたら、明るい曲に変えますか)
「まだまだへたっぴですけど、聞いていってくださいね」
『望郷のミンネザング』キリ・カーレント(CL3000547)はギターを手にムーンリットフェアリーに語りかける。妖精からの返事はないが、霧がギターを奏で始めるとそれに反応して周囲に集まってくる。
「あぁ……フェアリーさんの踊りは心地よいですね」
音に合わせて周囲を舞うムーンリットフェアリー。キリはその光景に感動しながら、楽器を奏でる。誰もが知っている童謡だが、それでも喜んで踊ってくれる。その動きが更なるモチベーションとなって、キリの指を動かしていく。
「ありがとうございます。次は――」
「占いで小銭稼ぎしようと思ったけど、我慢できないよね!」
奏でられる音楽を前に『炎の踊り子』カーシー・ロマ(CL3000569)は限界とばかりに占い用のカードを置く。そのまま立ち上がり、回るように月光妖精に近づいていく。音楽に合わせるようにステップを踏み、ゆっくりと指を妖精に伸ばす。
「一緒に踊りましょう」
言葉と同時に月光妖精に触れないようにステップを踏みながら踊りだすカーシー。異国風の衣装を翻し、周りの音楽に合わせるように体を動かしていく。鋭く、そして大きく。踊り子として鍛えられた肉体は、フェアリーの光に照らされて、輝いていた。
「こうして楽しい夜を過ごしたら、来年も来てくれるかな?」
この幻想的な光景を見れるのなら、いくらでも歌い踊ってみよう。楽師達は皆、同じ気持ちだった。
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そんな音楽の輪から少し離れたところで、酒を飲む者もいた。
「夜の帳に舞う光の妖精。実に美しい」
『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)は言って機械の腕で杯を傾ける。戦いばかりが騎士の日常ではない。こうして美しいものに触れるのも、大事なのだ。
「なんとも幻想的な光景よ!」
『ほんとうのねがいは口にだせなくて』シノピリカ・ゼッペロン(CL3000201)もこの光景を前に心奪われていた。白い光の舞を見ながら、ゆるゆると酒を嚥下する。
「にーくー!」
両手いっぱいに肉を持ち、『教会の勇者!』サシャ・プニコフ(CL3000122)は喜んでいた。右手には鶏肉豚肉牛肉の串を。左手には羊肉馬肉熊肉を。それぞれを口にしながら、横媚の声をあげていた。
「ピカピカ綺麗だけど、サシャは肉で忙しいんだぞ!」
ムーンリットフェアリーよりも出店の肉。サシャの食欲を満たすにはまだまだ足りない。祭りの出店から匂ってくる肉の香りが、サシャのお腹を刺激する。片手の串を全制覇し、再び店に向かって走り出す。
「おにく! 全制覇! するんだぞ!」
「まぁ! 彼女達がムーンリットフェアリー!」
屋台で買った食べ物を手に『てへぺろ』レオンティーナ・ロマーノ(CL3000583)は儚い幻想種の姿に感動していた。めったに遭遇することがないという事もあるが、夜に光る淡い姿がレオンティーナの心を震わせていた。
「はじめまして、フェアリーさん。ふふふっ。フェアリーさんも食べますか? おいしいですよ?」
持っていた食べ物を差し出すレオンティーナ。人の作った者に興味があるのか、ムーンリットフェアリーは出されたものに近寄っていく。食べる事はしないが、触れるか触れないかの距離を飛び回っていた。
「思議な存在ですわね。彼女達には自我があるのでしょうか? もしあるなら、お友達になることもできますわね」
「最近は忙しくて全然飲んで無かったのよね……毎日ワイン一瓶ぐらいしか」
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)はワイングラスにワインを注ぎ、忙しかった日々を思い出す。シャンバラ平定後、息つく暇もなくヘルメリアへの攻勢を開始する。……まったく飲めなかったわけではないが。っていうか一日一瓶かよ。
「ありったけのお酒を綺麗なフェアリーを見ながら煽る! こんなに贅沢なことってあるかしら!」
アンネリーザは夜空に杯を掲げ、ワインを一気に飲み干す。その足元にはすでに空いているワインの瓶が幾つも並んでいた。赤ワイン白ワインロゼワインシャンパンフォーティファイドワインフレーバーワイン。イ・ラプセルのワインをこの日にために集めてきたのだ。
「綺麗な踊り……酒が進むわね」
「確かに。良い景色だ」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)はアンネリーザの言葉に頷く。ムーンリットフェアリーと自由騎士の宴から少し離れ、夜の天幕の元で酒を口にしていた。貴族達の派手で色彩溢れた酒宴とは異なるが、それに劣らない光景だ。
「あ、テオドールさん。お菓子はいりませんか? それともお酒をお楽しみですか?」
そんなテオドールに近づいていく『混世魔王』フーリィン・アルカナム(CL3000403)。自作のお菓子を自由騎士の人達に配っているのだ。妖精用に小さく作ってあるが、見た目も味も精巧に作られていた。
「いや。頂こう。こういう菓子に会う酒もあるのだ」
「それは良かったです。ムーンリットフェアリーさんにも喜んでもらえましたし」
「興味深いな。妖精が食したというのか?」
「流石に食べるまでは。でも気に入って近づいて来てくれました」
フーリィンの手にした御菓子に集まる白光の妖精。その光景を想像して、テオドールは小さくほほ笑んだ。それはさぞ美しい光景だったのだろう。
「来年もムーンリットフェアリーが見られたのなら、フーリィン嬢の料理の腕前のおかげになるのだろうな」
「ふふ。お世辞がうまいですね。でも料理には自信があるんです。お姉さんですから」
微笑むフーリィン。孤児院で多くの孤児を抱える彼女を見て、貴族であるテオドールはため息をついた。
「……孤児が出ないような社会を作れればいいのだがな」
「いいえ。貴族さんは頑張ってます。今はそれよりも祭りを楽しみましょう」
未来に思いをはせるより、今しかない光景を楽しむ。テオドールは深く頷き、酒を口につけた。
「英羽さん、甘いお酒はいかがですか? お酌させてくださいな」
「お酌、いいんですか! ではお言葉に甘えて……」
幻想的な月光妖精の光景を『大いなる癒やし』サラ・アーベント(CL3000443)と『護るちから』英羽・月秋(CL3000159)は並んで見ていた。サラに注がれた果実酒を味わいながら飲み干す月秋。熱い何かが胸からこみあげてきた。
「ムーンリットフェアリーが見られるなんて思ってもみませんでした。……綺麗ですね」
「ええ、綺麗ですね……サラさんと一緒に、見れて良かったと心の底から思います」
「まあ、お上手」
「あ、えと……思ったままの事をですねっ!」
慌てる月秋の様子を見て、微笑むサラ。表情こそ変えないが、月秋の動揺は見て取れる。その違いを感じ取れて、サラは嬉しくあった。果実酒を口に含み、息を吐く。
「ゴールドティアーズでは、英羽さんは何かお願いはされましたか?」
「願いですか? 僕は『少しでも多く、守りたい人を守れますように』でしょうか。サラさんは?」
「私は、皆さんが傷付かないように、傷付いても癒しがありますように、と。
それともう一つ――」
サラは月秋の方を見ながら唇を開く。
「英羽さんを独り占めできますように、とか?」
「サラ、さん……」
その意味が理解できないほど月秋は子供ではない。こちらを見つめるサラの顔から目が離せないでいた。
「ふふ、酔っていますね、私。嫌でしたら聞かなかったことにしてください」
「いいえ! その……サラさんの願い事、叶って欲しいです」
夜の静寂の中、月光が優しく二人を照らしていた。
●
「リリーも少しは踊れるんですっ」
音楽に合わせて踊る『新米自由騎士』リリアナ・アーデルトラウト(CL3000560)。様々な表現方法を学ぶリリアナ。踊りもその一つだ。ムーンリットフェアリーと共に優雅に踊っていた。
「どんな歌がお好みですか?」
『きらきら謡う』ミスリィ・クォード(CL3000548)はリラを手にしてフェアリーたちに一礼する。心の中で三つ数えて頭をあげ、リラを構える。空に浮かぶ月の灯りと光る妖精たちが照明。淡く白い光に照らされながら、ミスリィはゆっくりと弦を奏でる。
「星の光満ちる丘の上 降り立つ幻の君 手を伸ばせば解けるのなら」
どこか悲しげな、そして心を揺るがすような歌。
「振り向いて 此処に居て 今少し 願いを旋律に乗せ 触れさせて声だけでも……」
それはムーンリットフェアリーのことを歌っているようでもあり、遠く届かない誰かを思うようでもあった。届かない君。手を伸ばしても触れられない。ならばせめて振り向いてほしい。この旋律に声を乗せてほしい――
「恋歌ってこんな感じでしょうか」
「お疲れさん。これ飲んで喉、潤しとき」
一曲終えたミスリィにジュースを渡す『カタクラフトダンサー』アリシア・フォン・フルシャンテ(CL3000227)。アリシアは歌ったり踊ったりする人に料理やジュースを配っていた。機械の足で大地を蹴って、人の間を縫うようにして料理を運んでいく。
「なんや? うちの運び方気に入ったか? ならついてきーや!」
アリシアを追うように舞うムーンリットフェアリーに手を振り、笑みを浮かべて料理を運ぶ。指と指の間に皿を挟んで多くの料理を手にしながら、緩急着けた動きで踊るように移動していく。派手に動いているのに料理が崩れることはなかった。
「どや! みんなの嬉しそうで楽しそうな顔がいっぱい見れるで!」
「僕は、歌が得意な訳じゃないから……これを持ってきたよ」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は街で買ってきたオルゴールのねじを巻きながらムーンリットフェアリーに話しかける。ふたを開けると音楽が鳴り、小さな人形が回転して踊りだす。その音色と回転に合わせるように月光妖精も踊りだす。
「少し、待って……。今、君達の友達を増やしてあげる……」
いってマグノリアはオルゴールを就寝に薄ぼんやりとした光を放ち、ホムンクルスを展開する。ムーンリットフェアリーと一緒に踊るホムンクルスとオルゴールの人形。小さな劇場を作り出したマグノリアは、その光景に心を癒していた。
「君達と話が出来れば……それは素晴らしい事なんだろうね……」
「ヨ、ヨツカさん、ご一緒させて下さってありがとうございます」
「なに。ヨツカも見てみたいと思っていたのだ。さぞ美しいのだろうな」
ここに来る途中で『叶わぬ願いと一つの希望』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)は『誰ガタメの願イ』月ノ輪・ヨツカ(CL3000575)と合流する。ティルダはシャンバラでは見られない幻想種の姿を想像し、ヨツカは故郷の『ホタル』を思い浮かべていた。
「これは……」
「すごくきれいですね!」
ヨツカもティルダも夜の天幕に踊る月光妖精の姿に感嘆の声をあげていた。深い夜空に舞う白い少女。触れれば消える儚い存在。それが意思を持っているかのように、人が作った者に興味を持つように寄っていくのだ。
「お会い出来て嬉しいですっ。これ、どうぞ……!」
ティルダはカバンに入れていた小物入れを出す。星の形にカットした石が装飾されており、月光妖精用にとサイズも小さめだ。やってくるムーンリットフェアリーに差し出せば、その小さな手が小物入れに触れた。
「それはティルダが作ったのか? すごいな!」
ヨツカはそんなティルダの様子を見ていた。物を作ることがない――記憶がないのだから仕方がないのだが――ヨツカにとってこの月光妖精に捧げるものはない。だが儚くも美しい幻想種を見ているだけで、どこか心が落ち着いてくる。
「これは、ヨツカさんに。余った石で作ったものです。つたないものですけど、もしよかったら」
「おお。貰っていいのか? なら頂こう」
ティルダから羽根の形をした御守りを受け取り、ヨツカは喜んだ後に、
「しかしヨツカには返せるものがない。困ったな」
「いいんですよ、今困らなくて。同じ自由騎士なんですから、好きな時に返してくれればいいんです」
月下、優しい約束が交わされた。
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朝日と共に月光妖精の姿は消える。
金の涙の祭は日の訪れと共に終わりを告げる。
祭の終わりを噛みしめながら、自由騎士達は慌しい日々に帰還する。
ムーンリットフェアリーの姿を心に留め、新しい明日へと――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
†あとがき†
それでは、別の月夜で会いましょう――
FL送付済