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Weapon! 女神に恥じぬ兵器を作れ!

●
ヴィスマルクが大量生産する戦車。それに搭載されている『チャイルドギア』。
幼子と言ってもいい子供を暴力と薬物で洗脳し、逆らえないようにしてから鉄の機械に四肢を拘束して閉じ込め、機械の『部品』として動かす駆動システム。
極悪非道と言ってもいい兵器だが、小型化による鉄鋼量の節約と戦災孤児を『有効利用』できることもあり、ヴィスマルクの飛躍的な戦力増加が予想される。
これに対し、イ・ラプセルはそれらに対抗する新兵器を開発すると言う方向に舵を切った。『チャイルドギア』そのものではなく、それに対する別方向の兵器。大量生産且つ軽量化による物量作戦に対抗するだけのアイデアを出さなければならない。
「とりあえず茹でながら考えましょうか」
「新しい技術は大好きだわ! チャイルドギアは気にくわないしね!」
「皆様の知恵が集まれば、きっと良案が出るでしょう」
「蒸気ドローンの発想を、イ・ラプセルの技術で再現できないだろうか?」
「飛行艇の開発とかどうでしょうか……?」
「チャイルドギアの機構に子供以外を組み込むことは難しいのでしょうか」
「イ・ラプセルには賢い人がたくさんいるからね」
「今こそ、技術者の、出番ですね……!」
兵器の材料となる鉄鉱石、多くの技術者、そう言った開発そのもののコストは既に用意されている。
自由騎士に求められるのは、兵器の方向性。どのような兵器を作り、どのような形で『チャイルドギア』に対抗するのか。
この兵器が、戦争の流れを決定すると言っても過言ではない――
ヴィスマルクが大量生産する戦車。それに搭載されている『チャイルドギア』。
幼子と言ってもいい子供を暴力と薬物で洗脳し、逆らえないようにしてから鉄の機械に四肢を拘束して閉じ込め、機械の『部品』として動かす駆動システム。
極悪非道と言ってもいい兵器だが、小型化による鉄鋼量の節約と戦災孤児を『有効利用』できることもあり、ヴィスマルクの飛躍的な戦力増加が予想される。
これに対し、イ・ラプセルはそれらに対抗する新兵器を開発すると言う方向に舵を切った。『チャイルドギア』そのものではなく、それに対する別方向の兵器。大量生産且つ軽量化による物量作戦に対抗するだけのアイデアを出さなければならない。
「とりあえず茹でながら考えましょうか」
「新しい技術は大好きだわ! チャイルドギアは気にくわないしね!」
「皆様の知恵が集まれば、きっと良案が出るでしょう」
「蒸気ドローンの発想を、イ・ラプセルの技術で再現できないだろうか?」
「飛行艇の開発とかどうでしょうか……?」
「チャイルドギアの機構に子供以外を組み込むことは難しいのでしょうか」
「イ・ラプセルには賢い人がたくさんいるからね」
「今こそ、技術者の、出番ですね……!」
兵器の材料となる鉄鉱石、多くの技術者、そう言った開発そのもののコストは既に用意されている。
自由騎士に求められるのは、兵器の方向性。どのような兵器を作り、どのような形で『チャイルドギア』に対抗するのか。
この兵器が、戦争の流れを決定すると言っても過言ではない――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.兵器のアイデアを想像し、作り手に語れ!
どくどくです。
決戦兵器を作ってみませんか?
●説明ッ!
ヴィスマルクの極悪非道な駆動システム『チャイルドギア』。大量生産且つ小型化を成功させた戦車部隊に対抗すべく、国力を使って新しい兵器を作ることになりました。
参加された自由騎士達は、技術者たちに『こういう兵器が作りたい』と言うアピールをしてください。ただし参加した人達の意見がバラバラなら、その分兵器もちぐはぐになっていきます。
説明と言いましたが、要するに交渉です。アイデアを出す人間の心情や語りかけ、セフィラやスキルが影響するかもしれません。ただ兵器のスペックだけをプレイングにあげているだけでは、ただの伝言ゲームで作る人間もあまり熱が入らず作製することになるでしょう。
あるいは、自らが作り手になってもいいでしょう。その辺りはプレイング次第です。
兵器に必要な情報
1:大きさ
兵器の大きさです。巨大であればあるほど兵装もつめて防御力も高まりますが、機動性が犠牲になります。
この項目だけは、一つに絞っていただきます。意見が異なれば、作る側も混乱するため中途半端な大きさになります。
【巨大】:戦艦などがこのレベルです。自由騎士全員を乗せて戦闘可能です。一体だけ作れます
【大】:プロメテウスやティダルトなどがこのレベルです。3体だけ作れます。
【中】:戦車などがこのレベルです。(参加人数分)体作れます
【小】:武器防具など。大量生産され、店売りされます。
2:方向性
兵器の方向性です。攻撃に偏る。防御に偏る。運搬する。特殊な走査を行う。その兵器が主とする方向性です。その方向性を各PC一つずつ加えることが出来ます。
この方向性が異なるなら、兵器のスペックも多機能になります。股方向性が重なった分だけ、その方向性に特化した形になります。
何かしらを犠牲にして、兵器の効果を高める手法は禁止されます。『チャイルドギア』を否定したのだから、その二の轍を踏むのは意味がありません。
3:具体的な効果
その兵器が戦場に及ぼす効果です。
例えば戦場全体に戦車レベルの砲撃をばらまく。敵の攻撃を防ぐ。自由騎士を運搬する。そういった感じです。
飛空船を作るのに、誰も『飛行機能』を入れなければ飛ぶことはできません。そういった兵器の機構を各PC一つずつ加えることが出来ます。
スキルのように示しても構いませんし、願望的な事をつらつらと書いても構いません。ただしあまりに無茶なものは開発陣も匙を投げるでしょうし、非現実的な事は現実にできません。
ヴィスマルクの飛行船は『蒸気技術』と『魔導技術』の融合です。そこまでしないと、軍隊を乗せれるほどの飛行船は作れないものと思ってください。
プロメテウスを超える兵器を作りたい、というのならどういう方向性でこうやって超えたい、と示すことが出来れば可能です。
4:名前、形状と言ったモノ。
兵器の名称や形状です。人型(完全人型、下半身戦車、多脚戦車)、船型(飛空船、地上空母、多脚式水陸両用船)、車両型(列車砲、戦車、高速輸送車両)などです。詳しければ詳しいほど、兵器の形が伝わりやすいです。
プレイングには1~4の項目を記載し、それがどのような兵器にしたいかをアピールしてください。必要な情報が抜けていた場合、兵器にも抜けが存在します。
説明に際し、一部の技能があればその効果(3)が強化される可能性があります。
アニムス、宿業改善を使っても成功には直結しません。繰り返しますが、『チャイルドギア』を否定する兵器であるのに命を削ることで効果を得るなどは矛盾するので、不可能です。
例
1:中型
2:突撃兵器
3:相手のブロックを突破して、敵後衛に突撃する。
4:兵器名『トツゲキーン』 形状『自転車』
1:大型
2:補助機械
3:ダンサー技能の効果を増幅する
4:兵器名『ダンスステージ』 形状『演劇舞台』
皆で意見を合わせてもいいですし、個人バラバラで立案しても構いません。
このシナリオで作られた兵器が、次ヴィスマルクの決戦に使用されます。
皆様のプレイングをお待ちしています。
決戦兵器を作ってみませんか?
●説明ッ!
ヴィスマルクの極悪非道な駆動システム『チャイルドギア』。大量生産且つ小型化を成功させた戦車部隊に対抗すべく、国力を使って新しい兵器を作ることになりました。
参加された自由騎士達は、技術者たちに『こういう兵器が作りたい』と言うアピールをしてください。ただし参加した人達の意見がバラバラなら、その分兵器もちぐはぐになっていきます。
説明と言いましたが、要するに交渉です。アイデアを出す人間の心情や語りかけ、セフィラやスキルが影響するかもしれません。ただ兵器のスペックだけをプレイングにあげているだけでは、ただの伝言ゲームで作る人間もあまり熱が入らず作製することになるでしょう。
あるいは、自らが作り手になってもいいでしょう。その辺りはプレイング次第です。
兵器に必要な情報
1:大きさ
兵器の大きさです。巨大であればあるほど兵装もつめて防御力も高まりますが、機動性が犠牲になります。
この項目だけは、一つに絞っていただきます。意見が異なれば、作る側も混乱するため中途半端な大きさになります。
【巨大】:戦艦などがこのレベルです。自由騎士全員を乗せて戦闘可能です。一体だけ作れます
【大】:プロメテウスやティダルトなどがこのレベルです。3体だけ作れます。
【中】:戦車などがこのレベルです。(参加人数分)体作れます
【小】:武器防具など。大量生産され、店売りされます。
2:方向性
兵器の方向性です。攻撃に偏る。防御に偏る。運搬する。特殊な走査を行う。その兵器が主とする方向性です。その方向性を各PC一つずつ加えることが出来ます。
この方向性が異なるなら、兵器のスペックも多機能になります。股方向性が重なった分だけ、その方向性に特化した形になります。
何かしらを犠牲にして、兵器の効果を高める手法は禁止されます。『チャイルドギア』を否定したのだから、その二の轍を踏むのは意味がありません。
3:具体的な効果
その兵器が戦場に及ぼす効果です。
例えば戦場全体に戦車レベルの砲撃をばらまく。敵の攻撃を防ぐ。自由騎士を運搬する。そういった感じです。
飛空船を作るのに、誰も『飛行機能』を入れなければ飛ぶことはできません。そういった兵器の機構を各PC一つずつ加えることが出来ます。
スキルのように示しても構いませんし、願望的な事をつらつらと書いても構いません。ただしあまりに無茶なものは開発陣も匙を投げるでしょうし、非現実的な事は現実にできません。
ヴィスマルクの飛行船は『蒸気技術』と『魔導技術』の融合です。そこまでしないと、軍隊を乗せれるほどの飛行船は作れないものと思ってください。
プロメテウスを超える兵器を作りたい、というのならどういう方向性でこうやって超えたい、と示すことが出来れば可能です。
4:名前、形状と言ったモノ。
兵器の名称や形状です。人型(完全人型、下半身戦車、多脚戦車)、船型(飛空船、地上空母、多脚式水陸両用船)、車両型(列車砲、戦車、高速輸送車両)などです。詳しければ詳しいほど、兵器の形が伝わりやすいです。
プレイングには1~4の項目を記載し、それがどのような兵器にしたいかをアピールしてください。必要な情報が抜けていた場合、兵器にも抜けが存在します。
説明に際し、一部の技能があればその効果(3)が強化される可能性があります。
アニムス、宿業改善を使っても成功には直結しません。繰り返しますが、『チャイルドギア』を否定する兵器であるのに命を削ることで効果を得るなどは矛盾するので、不可能です。
例
1:中型
2:突撃兵器
3:相手のブロックを突破して、敵後衛に突撃する。
4:兵器名『トツゲキーン』 形状『自転車』
1:大型
2:補助機械
3:ダンサー技能の効果を増幅する
4:兵器名『ダンスステージ』 形状『演劇舞台』
皆で意見を合わせてもいいですし、個人バラバラで立案しても構いません。
このシナリオで作られた兵器が、次ヴィスマルクの決戦に使用されます。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
6個
4個
4個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2020年11月30日
2020年11月30日
†メイン参加者 8人†
●
ヴィスマルクに対抗するための兵器。
それは次の戦いの趨勢を決めると言っても過言ではない。この開発が上手くいかなければ、不利な状態で戦に挑むことになるのだ。待ち受けるのは『チャイルドギア』を搭載した戦車。そして新型のプロメテウスである。
その重圧を感じながら、自由騎士達はテーブルにつく。
「私なんかが、アクアディーネ様の思想を語るなんておこがましいですけど……」
何処かおどおどした様子でミウ・ムー(CL3000697)は口を開く。高貴な血筋なのだがそうとは思えないほどの不健康な顔色。目の下にあるクマは不摂生な生活を象徴していた。ネガティブな言葉を放つが、それでも皆の役に立とうとこの場に現れたのである。
「数に勝る相手に数で対抗しようなど、愚の骨頂。イ・ラプセルの強みを見せていきましょう」
『未来を切り拓く祈り』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は、言って皆に料理を差し出す。何はなくとも腹ごしらえだ。こういった人の温かさを忘れない事も、イ・ラプセルの強みなのだろう。
「『チャイルドギア』に対抗するために……」
『チャイルドギア』に捕らわれていた子供の事を思い出しながらセアラ・ラングフォード(CL3000634)は唇を結ぶ。暴力を浴び、戦いを強要される子供達。そんな所業を認めるわけにはいかない。その為にも、ここで知恵を振るうのだ。
「合理的だからと言って、『チャイルドギア』を認めてはいけません」
ロザベル・エヴァンス(CL3000685)は静かに告げる。ヘルメリア出身の彼女にとって、蒸気機関やそれを利用した兵器には相応の想いがある。その到達点が人を取り込んだ兵器なのだというのを、決して認めてはいけない。
「皆の力でヴィスマルクやパノプティコンが泣き喚くような物作るわよ! 吠え面をかかせてやろうじゃない!」
言って笑みを浮かべる『日は陰り、されど人は歩ゆむ』猪市 きゐこ(CL3000048)。顔の上半分はフードで隠れて見えないが、口の形から愉悦的な表情を浮かべているのは分かる。技術を組み合わせ、大国に勝つ。ジャイアントキリングの愉悦に。
「そうだな。戦争のルールを変える。それほどのモノでなければならない」
きゐこの言葉に頷く『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)。蒸気技術はプロメテウスという形で戦争を一変させた。技術の進歩は戦争の形を変化させる。そのブレイクスルーを今自分達で起こすのだ。
「兵器とは人を傷つけるものだけに非ず。戦場を支配し掌握することが要だ」
集まった技師たちにそう告げる『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。戦争とは兵士を殺しそして領土を奪うと思われがちだが、それは一面でしかない。人が死なないように戦うことも、可能なはずだ。
「はい。誰も傷つかない、そんな発明が出来れば」
テオドールの言葉に頷く『円卓を継ぐ騎士』たまき 聖流(CL3000283)。多くの人間が傷つく戦争。だからこそ、多くの人を傷つけないものを作りたい。そんなたまきの技術者を目指した原点。それをいま再確認する。
サポートに来ていたマザリモノの錬金術師とノウブルのマータマイスターが、全員にお茶を配る。精神を落ち着かせ、議論が活性化する。
作りたいものを纏めた後に、それを説明するために技術者の元に向かった。
●
自由騎士は大型兵器三台を作ることを選択した。それは多様性とヴィスマルクの激突を想定しての結果だ。
「要約すると、兵士を乗せて飛ぶ輸送兵器です」
セアラとロザベルときゐこが提案したのは、十名ぐらいを乗せて飛ぶ飛行船である。ヴィスマルクにも飛行船はあるが、それほど大きいものではない。
「飛行船か……」
その設計図を見た技術者は、難色を示す。
有史以来、人は空を飛ぶことに夢を抱いていた。そして多くのモノがそれに挑み、地に落ちていった。鳥が何故飛べて、人が何故飛べないか。その理由は簡単で鳥は飛ぶために生物として極端に軽量化しているのだ。骨の密度は薄く、羽根を動かす筋肉以外はそれほど発達していない。
これを兵器転用すると、装甲を薄くして、空を飛ぶ動力以外は削らなくてはならない。そして当然だが、空には遮蔽物はない。つまり、空飛ぶ船はいい的なのである。ヴィスマルクの飛空船のように巨大であれば装甲も実戦的になるのだが、この大きさでは……。
「安心しなさい! 要は見つからなければいいのよ!」
技師達の不安を感じ取ったのか、きゐこが前に出る。
「ヘルメリアの技師さんとキャッシュアカデミーの魔術師に声をかけてきたわ! あとシャンバラの魔術師もね!」
魔導的、蒸気的な技術に秀でた人達を集めていたきゐこ。
「視覚、聴覚、そして温度を誤魔化して飛行船の見た目を周囲と一体化させるのよ!
これによりステルス機構を持たせ、気付かれないように敵に近づくのよ!」
おお、と技師達はきゐこの案に驚きと称賛の声をあげる。実際にアイテムを用意し、人を集めてきた事も大きかったようだ。
「風景に溶け込むなら天候に溶け込めばいいから、色の種類は少なくて済むか?」
「音は風の音を出せれば問題はないはずだ。後は鳥などの動物だな」
「温度……その戦場の空の温度データを測ってそれに合わせる形か。機材足りるか?」
「なんなら鬼の力で道具を強化してもいいわよ!」
喧々囂々としながら、話し合いは進んでいく。
結果として『大きく動かなければ、見つからないのでは?』というレベルまでの迷彩はめどがついた。しかし問題はある。
「しかしステルスはあくまでステルスだ。上空ならともかく、地上に近づけばそれだけ発見確率も高くなるぞ」
「はい。なので上空から兵を降下させる作戦になります」
ロザベルが説明を継ぐ。
「兵を乗せたブロックを用意し、これをカタパルトで射出します。
ブロックそのものは装甲を厚めにし、対魔術防御を高めにして降下までは中の兵にダメージを与えないようにする形式です」
船そのものはあくまで輸送手段であり、そこから兵を打ち出して敵の重要箇所を攻撃すると言う形式だ。
「空挺爆撃ではなく、兵を撃ちだす?」
「はい。重量や兵装の安全性などの問題を考えれば爆薬よりは兵の方が安全です。加えて言えば、イ・ラプセルの戦争は破壊が目的ではなく制圧が目的となります」
ロザベルは技師達の言葉に、表情を崩さず反論する。
勘違いされがちだが、戦争の目的は土地の制圧だ。破壊はそのための手段でしかない。高度な技術が破壊力の高い兵器を生み出すことで戦争自体の空気が変わりつつあるが、過度な破壊は占領後の処理が大変なのだ。
もっとも、それとは別の――戦争による犠牲者は少ないに越したことはないと言う思惑があるのも事実である。
「我々が目指すべくは、生かす為の技術であると思います」
「しかしなぁ、撃ちだされた兵が危険だぞ。この大きさの船では打ち出せる兵数もそれほど多くはないだろうし」
船の大きさを考慮すれば、一度に射出できる兵の数は限られる。自由騎士全員を撃ちだすには、船の規模が足りない。数グループを打ち出せればいい所である。以前、ヘルメリアのロンディアナで自由騎士全員を乗せて打ち出した作戦があったが、あれは車輛そのものを打ち出したからこそである。
「それは作戦次第でしょう」
「はい。要は陸上移動では難しい戦場に人を移動できればいいんです」
ロザベルの言葉に頷くセアラ。
「イ・ラプセルの強みはヒトです。そのヒトを最大限に生かす為の兵装であるべきなのです。
その為の飛行能力なのですが……私は技術者じゃないので、こういう物があったらいいという希望を言ってみる事にしますね」
セアラは咳払いをした後に、希望を列挙する。
「速度を優先して、飛び道具が届かない場所を飛行できる設計です。
先も言いましたが、輸送メイン。エヴァンス様の兵を射出する形式……あ、射出機能はもしかしたら滑り落とすだけでも良いのかもしれません。飛行船自体にスピードがあれば、その速度を受けますし?
動力は通常の物とスピードアップできる物があればいいのかもしれません。例えば魔導や蒸気等の爆発力を一定の方向に誘導できれば……筒とかで?」
「すみません、少し待ってください」
セアラの言葉を遮る技師達。その顔には困惑が見て取れた。
「騎士様が言いたいことと、そっちの騎士様の言っていることと齟齬があるんだがどっちを優先したらいいんだ?」
「あと、疑問形でまとめられても、こっちはどうしたらいいかわからないんです。速度優先までは分かりますが、そこから先はあやふやで」
セアラは技術者ではないし、専門的な知識はないと言う事は前もって説明していたし技師もそれを覚悟して話は聞いていた。
だが、説明の纏め自身に『どうすればいいんでしょうか?』という疑問符が見え隠れして、どう受け取っていいのかわからない部分があった。同時に他のメンバーとの齟齬もあり、どちらの案を採用していいのか不明瞭な部分もある。
「とりあえず、やってみますが……希望に沿うものが出来るかはわかりませんとだけは言っておきます」
安全性。人を大事にするというコンセプトだが、戦場に人を射出するという安全とは遠い思考。送り出した兵を回収する機構もないこともあり、技師の倫理はせめぎ合っていた。
結果、船自体は一度兵を射出したら即離脱。戦闘を終えた兵士は自力で戻らなければならない……という運用に落ち着いたと言う。
●
「こちらは攻撃兵器となります」
「戦争のルールを塗り替える。その為の新兵器だ」
アンジェリカとアデルの提出した図面は、二足歩行型の兵器だった。ヘルメリアやヴィスマルクのプロメテウスに酷似しているが、その兵装は大きく異なっていた。
「プロメテウスは、堅牢な装甲と強大な火力で戦場を制圧する兵器だ」
アデルは技師達に説明をしながら、図面の武装を指差す。槍に似た兵装だが、薬莢などでそれを打ち出す杭打機に似ていた。
「これらの兵器が想定しているのは、対人戦闘および施設破壊だ。同等以上の火力を有する相手との戦闘は、設計の想定には無いように思える」
「この『槍』がそれ以上の火力を出せると言うのか?」
「そうだ。至近距離まで相手に近づき、火薬を用いて『槍』を貫通させる。ゼロ距離から最大威力で射出すれば、プロメテウスの装甲をも貫ける」
一撃必殺。確かにそれは敵国も想定されていないだろう。何故ならそれにはいくつかの障害があるからだ。相手の攻撃を避け、或いは受けながら懐に入り込む。その上で正確に相手の装甲の隙間に『槍』の先端を押し当てて兵器を作動させなければならない。それを誰が行えるのか?
「無論、自由騎士だ。
この兵装はプロメテウス同様に誰かが搭乗し、使用する形を想定している」
「危険だぞ。それはプロメテウスの攻撃を最優先で受けることになる」
自分を倒しうる兵装を持つ兵器があるなら、先にそれを潰す。それは当然の考えだ。アデルもそれは理解していた。
「それが狙いだ。相手の鉾を盾で受けるのではなく、鉾で貫く。対プロメテウスに特化した、領域支配(エリア・ドミナンス)兵器だ。
戦術や攻撃動作は、俺の戦い方が参考になるだろう。必要なモーションデータの提供は惜しまない」
「もちろん、それだけではありません。遠距離からの攻撃も保有しています」
話を継いだのはアンジェリカだ。
「先のアデル様と同じように貫通力を重視した遠距離兵装です。正確には、貫通力を高めた弾丸です」
アンジェリカが指差す図面の先には、二重構造の弾丸がある。弾道の先端に、小さな弾道が埋め込まれている。小型の弾道にも火薬が装填されており、トリガーを引けば射出される形式だ。
「仮に大型弾道と、小型弾道と名称を付けましょう。
大型弾道の火薬を用いて砲撃します。この砲撃自体は一般的な砲ですが、可能であれば安定性と耐久性を重視した構造であれば好ましいです。
大型弾道が着弾した瞬間に小型弾道の火薬が炸裂。密着状態から再射出された弾丸が最大火力で装甲を貫通する……という形式です」
「つまり大型弾道は小型弾道を運ぶための弾丸で、密着状態で放たれる小型弾道がメインの兵器、と?」
「はい。理解が早くて助かります」
頷くアンジェリカ。技術的には可能だろう。だが、
「上手く小型弾道の先端を当てないと、貫通力は減衰するぞ」
この弾道の欠点は小型弾道を放つタイミングと角度がズレれば、最大威力を発揮しないという点だ。
装甲は硬い。それを貫こうとするなら、正しい角度から正しいタイミングにインパクトを与える必要がある。戦闘中にそれを狙うのは、容易ではないだろう。よほどのガンナーでなければ、運用は難しい。
「はい。それを踏まえたうえでの搭乗兵器となります」
「いいのか? この構造だと防御に割ける重量は薄くなる。誰が搭乗するかは知らないけど、かなり危険に身を晒すことになるぞ」
攻撃に特化した二足歩行兵器。あまりの危険性に二の足を踏む技師達。
「無論だ。軍服に袖を通した以上、その覚悟はできている」
「勝ちましょう。未来のために」
だが、提案した二人の強い覚悟を受けて踏ん切りがついたようだ。技師達はその意思を受け取り、開発を開始した。
●
「いいか、諸君。兵器というものは敵を傷付けるものだけに非ず。味方を助け、戦況をコントロールするのも、また兵器が担えるものなのだ」
「攻めることを欠かすわけにはいきませんが、同時に命を救うモノも重要です。私自身も技師としてお手伝いします」
「人を殺すよりも救う方は、アクアディーネさんの思想に近いと思うんですよ。はい」
テオドール、たまき、ミウの三人の図面を見た技師達は、その兵器の方向性をすぐに理解する。
「防御用の兵装?」
大雑把に言えば、戦車に巨大な盾を付けたような構造だ。
「うむ。走行時は空気を受けないように盾を真横に折りたたむようにして格納。戦闘時は展開し、自身と騎士を守る盾となる形状だ」
テオドールが盾の構造について説明する。盾そのものを折りたたむ構造は、アマノホカリから伝わった『オリガミ』の形式を採用している。交互に畳みこむことでその形状を大きく縮め、走行に影響ないようにしている。
「盾の角度を調節し、敵の攻撃……想定される攻撃はプロメテウス級の攻撃を受け流せるようにする。真正面から受けるのではなく、逸らす形にだ」
「騎士を守る、と言われましたが具体的にはどのような形で?」
「防御タンクなどの使う防護技術の応用だ。出来るだけ多くの人数を庇えるようにしたい」
「その為にも多くの戦場を見ることが出来る『目』が必要になります」
テオドールの説明を継いだのは、たまきだ。
「こういった球体の外周に大きな望遠鏡と、外周下部に小さな望遠鏡をつけた者を設置。これにより、遠くのものと足元周囲を見ることが出来ます」
多くの視野を確保し、それにより戦場を把握。そしてそれらを守るために動く。そういうコンセプトだ。
「……いや、それでも守れるのはせいぜい二名が限界だろう」
苦悩するように技師達は答えを返す。
二名を守る防御タンクの技術は、彼らの努力の果てに得た技巧だ。それを超える技術は、未だ見つからない。全てが見えようとも、どう動けばいいかという『例』がなければ二名以上を守ることは難しい。
「大きな盾でも小さな人を守るのは難しい。その重量もあって、小さな人間の動きには対応しずらいんだ。……騎士様が盾に合わせて動いてくれるなら別だけど」
それは攻めの足を滞らせることになる。仕方ない、とたまきとテオドールは諦めた。
「盾そのものは鋼鉄を使用。鋼の強度を落とさない程度に魔術の力を含んだ石を加工して魔に対する防御力を上昇させます。
頑丈さを意識し、同時に自陣を守る要となるのが目的です」
「あ、あとは自己再生能力とか……どうでしょうか?」
おずおずと、ミウが挙手する。自分に自信がないのか、少し腰が引けていた。
「不死鳥の如く場に存在し続けるのって、カッコイイと思うんですよ……戦場にあって、その背に預かってる命の数……! それを背中で語っちゃうって……。
漢気溢れてませんか!? ますよね!?」
そして急に語りだし、圧倒される技師達。その様子を見て我に返り、再びおどおどした表情になる。
「……あ、肝心の自己回復……蒸気機械的に言うと自己修復機能の事ですけど、錬金術の回復スキル……ホムンクルスもい癒せるんですよね。
これを蒸気機械に応用出来ないかなぁー……ってですね……あはは……」
駄目ですよね、すみません。そんな表情で去ろうとするミウ。
「……ありか? ただの鋼鉄の盾ならともかく、魔導コーティングされた盾なら」
「しかし『生命』ではない対象を錬金術で癒せるのか?」
「あ……それはメアリーさんが成功例を出していると聞いたことが」
難色を示す技師達にミウが告げる。技師の数名が立ち上がり、マータマイスターを伝えたメアリーの元に走っていく。
半時間後、無理やり連れてこられたメアリーと共に開発が始まった。
●
かくして、イ・ラプセルの新兵器開発は動き出す。
一号機、兵射出式隠密飛行船『アルタイル』――
二号機、貫通式兵装二足歩行兵器『ベガ』――
三号機、自陣防衛防御戦車『デネブ』――
その完成と同時に、自由騎士達は攻勢に出る――
ヴィスマルクに対抗するための兵器。
それは次の戦いの趨勢を決めると言っても過言ではない。この開発が上手くいかなければ、不利な状態で戦に挑むことになるのだ。待ち受けるのは『チャイルドギア』を搭載した戦車。そして新型のプロメテウスである。
その重圧を感じながら、自由騎士達はテーブルにつく。
「私なんかが、アクアディーネ様の思想を語るなんておこがましいですけど……」
何処かおどおどした様子でミウ・ムー(CL3000697)は口を開く。高貴な血筋なのだがそうとは思えないほどの不健康な顔色。目の下にあるクマは不摂生な生活を象徴していた。ネガティブな言葉を放つが、それでも皆の役に立とうとこの場に現れたのである。
「数に勝る相手に数で対抗しようなど、愚の骨頂。イ・ラプセルの強みを見せていきましょう」
『未来を切り拓く祈り』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)は、言って皆に料理を差し出す。何はなくとも腹ごしらえだ。こういった人の温かさを忘れない事も、イ・ラプセルの強みなのだろう。
「『チャイルドギア』に対抗するために……」
『チャイルドギア』に捕らわれていた子供の事を思い出しながらセアラ・ラングフォード(CL3000634)は唇を結ぶ。暴力を浴び、戦いを強要される子供達。そんな所業を認めるわけにはいかない。その為にも、ここで知恵を振るうのだ。
「合理的だからと言って、『チャイルドギア』を認めてはいけません」
ロザベル・エヴァンス(CL3000685)は静かに告げる。ヘルメリア出身の彼女にとって、蒸気機関やそれを利用した兵器には相応の想いがある。その到達点が人を取り込んだ兵器なのだというのを、決して認めてはいけない。
「皆の力でヴィスマルクやパノプティコンが泣き喚くような物作るわよ! 吠え面をかかせてやろうじゃない!」
言って笑みを浮かべる『日は陰り、されど人は歩ゆむ』猪市 きゐこ(CL3000048)。顔の上半分はフードで隠れて見えないが、口の形から愉悦的な表情を浮かべているのは分かる。技術を組み合わせ、大国に勝つ。ジャイアントキリングの愉悦に。
「そうだな。戦争のルールを変える。それほどのモノでなければならない」
きゐこの言葉に頷く『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)。蒸気技術はプロメテウスという形で戦争を一変させた。技術の進歩は戦争の形を変化させる。そのブレイクスルーを今自分達で起こすのだ。
「兵器とは人を傷つけるものだけに非ず。戦場を支配し掌握することが要だ」
集まった技師たちにそう告げる『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。戦争とは兵士を殺しそして領土を奪うと思われがちだが、それは一面でしかない。人が死なないように戦うことも、可能なはずだ。
「はい。誰も傷つかない、そんな発明が出来れば」
テオドールの言葉に頷く『円卓を継ぐ騎士』たまき 聖流(CL3000283)。多くの人間が傷つく戦争。だからこそ、多くの人を傷つけないものを作りたい。そんなたまきの技術者を目指した原点。それをいま再確認する。
サポートに来ていたマザリモノの錬金術師とノウブルのマータマイスターが、全員にお茶を配る。精神を落ち着かせ、議論が活性化する。
作りたいものを纏めた後に、それを説明するために技術者の元に向かった。
●
自由騎士は大型兵器三台を作ることを選択した。それは多様性とヴィスマルクの激突を想定しての結果だ。
「要約すると、兵士を乗せて飛ぶ輸送兵器です」
セアラとロザベルときゐこが提案したのは、十名ぐらいを乗せて飛ぶ飛行船である。ヴィスマルクにも飛行船はあるが、それほど大きいものではない。
「飛行船か……」
その設計図を見た技術者は、難色を示す。
有史以来、人は空を飛ぶことに夢を抱いていた。そして多くのモノがそれに挑み、地に落ちていった。鳥が何故飛べて、人が何故飛べないか。その理由は簡単で鳥は飛ぶために生物として極端に軽量化しているのだ。骨の密度は薄く、羽根を動かす筋肉以外はそれほど発達していない。
これを兵器転用すると、装甲を薄くして、空を飛ぶ動力以外は削らなくてはならない。そして当然だが、空には遮蔽物はない。つまり、空飛ぶ船はいい的なのである。ヴィスマルクの飛空船のように巨大であれば装甲も実戦的になるのだが、この大きさでは……。
「安心しなさい! 要は見つからなければいいのよ!」
技師達の不安を感じ取ったのか、きゐこが前に出る。
「ヘルメリアの技師さんとキャッシュアカデミーの魔術師に声をかけてきたわ! あとシャンバラの魔術師もね!」
魔導的、蒸気的な技術に秀でた人達を集めていたきゐこ。
「視覚、聴覚、そして温度を誤魔化して飛行船の見た目を周囲と一体化させるのよ!
これによりステルス機構を持たせ、気付かれないように敵に近づくのよ!」
おお、と技師達はきゐこの案に驚きと称賛の声をあげる。実際にアイテムを用意し、人を集めてきた事も大きかったようだ。
「風景に溶け込むなら天候に溶け込めばいいから、色の種類は少なくて済むか?」
「音は風の音を出せれば問題はないはずだ。後は鳥などの動物だな」
「温度……その戦場の空の温度データを測ってそれに合わせる形か。機材足りるか?」
「なんなら鬼の力で道具を強化してもいいわよ!」
喧々囂々としながら、話し合いは進んでいく。
結果として『大きく動かなければ、見つからないのでは?』というレベルまでの迷彩はめどがついた。しかし問題はある。
「しかしステルスはあくまでステルスだ。上空ならともかく、地上に近づけばそれだけ発見確率も高くなるぞ」
「はい。なので上空から兵を降下させる作戦になります」
ロザベルが説明を継ぐ。
「兵を乗せたブロックを用意し、これをカタパルトで射出します。
ブロックそのものは装甲を厚めにし、対魔術防御を高めにして降下までは中の兵にダメージを与えないようにする形式です」
船そのものはあくまで輸送手段であり、そこから兵を打ち出して敵の重要箇所を攻撃すると言う形式だ。
「空挺爆撃ではなく、兵を撃ちだす?」
「はい。重量や兵装の安全性などの問題を考えれば爆薬よりは兵の方が安全です。加えて言えば、イ・ラプセルの戦争は破壊が目的ではなく制圧が目的となります」
ロザベルは技師達の言葉に、表情を崩さず反論する。
勘違いされがちだが、戦争の目的は土地の制圧だ。破壊はそのための手段でしかない。高度な技術が破壊力の高い兵器を生み出すことで戦争自体の空気が変わりつつあるが、過度な破壊は占領後の処理が大変なのだ。
もっとも、それとは別の――戦争による犠牲者は少ないに越したことはないと言う思惑があるのも事実である。
「我々が目指すべくは、生かす為の技術であると思います」
「しかしなぁ、撃ちだされた兵が危険だぞ。この大きさの船では打ち出せる兵数もそれほど多くはないだろうし」
船の大きさを考慮すれば、一度に射出できる兵の数は限られる。自由騎士全員を撃ちだすには、船の規模が足りない。数グループを打ち出せればいい所である。以前、ヘルメリアのロンディアナで自由騎士全員を乗せて打ち出した作戦があったが、あれは車輛そのものを打ち出したからこそである。
「それは作戦次第でしょう」
「はい。要は陸上移動では難しい戦場に人を移動できればいいんです」
ロザベルの言葉に頷くセアラ。
「イ・ラプセルの強みはヒトです。そのヒトを最大限に生かす為の兵装であるべきなのです。
その為の飛行能力なのですが……私は技術者じゃないので、こういう物があったらいいという希望を言ってみる事にしますね」
セアラは咳払いをした後に、希望を列挙する。
「速度を優先して、飛び道具が届かない場所を飛行できる設計です。
先も言いましたが、輸送メイン。エヴァンス様の兵を射出する形式……あ、射出機能はもしかしたら滑り落とすだけでも良いのかもしれません。飛行船自体にスピードがあれば、その速度を受けますし?
動力は通常の物とスピードアップできる物があればいいのかもしれません。例えば魔導や蒸気等の爆発力を一定の方向に誘導できれば……筒とかで?」
「すみません、少し待ってください」
セアラの言葉を遮る技師達。その顔には困惑が見て取れた。
「騎士様が言いたいことと、そっちの騎士様の言っていることと齟齬があるんだがどっちを優先したらいいんだ?」
「あと、疑問形でまとめられても、こっちはどうしたらいいかわからないんです。速度優先までは分かりますが、そこから先はあやふやで」
セアラは技術者ではないし、専門的な知識はないと言う事は前もって説明していたし技師もそれを覚悟して話は聞いていた。
だが、説明の纏め自身に『どうすればいいんでしょうか?』という疑問符が見え隠れして、どう受け取っていいのかわからない部分があった。同時に他のメンバーとの齟齬もあり、どちらの案を採用していいのか不明瞭な部分もある。
「とりあえず、やってみますが……希望に沿うものが出来るかはわかりませんとだけは言っておきます」
安全性。人を大事にするというコンセプトだが、戦場に人を射出するという安全とは遠い思考。送り出した兵を回収する機構もないこともあり、技師の倫理はせめぎ合っていた。
結果、船自体は一度兵を射出したら即離脱。戦闘を終えた兵士は自力で戻らなければならない……という運用に落ち着いたと言う。
●
「こちらは攻撃兵器となります」
「戦争のルールを塗り替える。その為の新兵器だ」
アンジェリカとアデルの提出した図面は、二足歩行型の兵器だった。ヘルメリアやヴィスマルクのプロメテウスに酷似しているが、その兵装は大きく異なっていた。
「プロメテウスは、堅牢な装甲と強大な火力で戦場を制圧する兵器だ」
アデルは技師達に説明をしながら、図面の武装を指差す。槍に似た兵装だが、薬莢などでそれを打ち出す杭打機に似ていた。
「これらの兵器が想定しているのは、対人戦闘および施設破壊だ。同等以上の火力を有する相手との戦闘は、設計の想定には無いように思える」
「この『槍』がそれ以上の火力を出せると言うのか?」
「そうだ。至近距離まで相手に近づき、火薬を用いて『槍』を貫通させる。ゼロ距離から最大威力で射出すれば、プロメテウスの装甲をも貫ける」
一撃必殺。確かにそれは敵国も想定されていないだろう。何故ならそれにはいくつかの障害があるからだ。相手の攻撃を避け、或いは受けながら懐に入り込む。その上で正確に相手の装甲の隙間に『槍』の先端を押し当てて兵器を作動させなければならない。それを誰が行えるのか?
「無論、自由騎士だ。
この兵装はプロメテウス同様に誰かが搭乗し、使用する形を想定している」
「危険だぞ。それはプロメテウスの攻撃を最優先で受けることになる」
自分を倒しうる兵装を持つ兵器があるなら、先にそれを潰す。それは当然の考えだ。アデルもそれは理解していた。
「それが狙いだ。相手の鉾を盾で受けるのではなく、鉾で貫く。対プロメテウスに特化した、領域支配(エリア・ドミナンス)兵器だ。
戦術や攻撃動作は、俺の戦い方が参考になるだろう。必要なモーションデータの提供は惜しまない」
「もちろん、それだけではありません。遠距離からの攻撃も保有しています」
話を継いだのはアンジェリカだ。
「先のアデル様と同じように貫通力を重視した遠距離兵装です。正確には、貫通力を高めた弾丸です」
アンジェリカが指差す図面の先には、二重構造の弾丸がある。弾道の先端に、小さな弾道が埋め込まれている。小型の弾道にも火薬が装填されており、トリガーを引けば射出される形式だ。
「仮に大型弾道と、小型弾道と名称を付けましょう。
大型弾道の火薬を用いて砲撃します。この砲撃自体は一般的な砲ですが、可能であれば安定性と耐久性を重視した構造であれば好ましいです。
大型弾道が着弾した瞬間に小型弾道の火薬が炸裂。密着状態から再射出された弾丸が最大火力で装甲を貫通する……という形式です」
「つまり大型弾道は小型弾道を運ぶための弾丸で、密着状態で放たれる小型弾道がメインの兵器、と?」
「はい。理解が早くて助かります」
頷くアンジェリカ。技術的には可能だろう。だが、
「上手く小型弾道の先端を当てないと、貫通力は減衰するぞ」
この弾道の欠点は小型弾道を放つタイミングと角度がズレれば、最大威力を発揮しないという点だ。
装甲は硬い。それを貫こうとするなら、正しい角度から正しいタイミングにインパクトを与える必要がある。戦闘中にそれを狙うのは、容易ではないだろう。よほどのガンナーでなければ、運用は難しい。
「はい。それを踏まえたうえでの搭乗兵器となります」
「いいのか? この構造だと防御に割ける重量は薄くなる。誰が搭乗するかは知らないけど、かなり危険に身を晒すことになるぞ」
攻撃に特化した二足歩行兵器。あまりの危険性に二の足を踏む技師達。
「無論だ。軍服に袖を通した以上、その覚悟はできている」
「勝ちましょう。未来のために」
だが、提案した二人の強い覚悟を受けて踏ん切りがついたようだ。技師達はその意思を受け取り、開発を開始した。
●
「いいか、諸君。兵器というものは敵を傷付けるものだけに非ず。味方を助け、戦況をコントロールするのも、また兵器が担えるものなのだ」
「攻めることを欠かすわけにはいきませんが、同時に命を救うモノも重要です。私自身も技師としてお手伝いします」
「人を殺すよりも救う方は、アクアディーネさんの思想に近いと思うんですよ。はい」
テオドール、たまき、ミウの三人の図面を見た技師達は、その兵器の方向性をすぐに理解する。
「防御用の兵装?」
大雑把に言えば、戦車に巨大な盾を付けたような構造だ。
「うむ。走行時は空気を受けないように盾を真横に折りたたむようにして格納。戦闘時は展開し、自身と騎士を守る盾となる形状だ」
テオドールが盾の構造について説明する。盾そのものを折りたたむ構造は、アマノホカリから伝わった『オリガミ』の形式を採用している。交互に畳みこむことでその形状を大きく縮め、走行に影響ないようにしている。
「盾の角度を調節し、敵の攻撃……想定される攻撃はプロメテウス級の攻撃を受け流せるようにする。真正面から受けるのではなく、逸らす形にだ」
「騎士を守る、と言われましたが具体的にはどのような形で?」
「防御タンクなどの使う防護技術の応用だ。出来るだけ多くの人数を庇えるようにしたい」
「その為にも多くの戦場を見ることが出来る『目』が必要になります」
テオドールの説明を継いだのは、たまきだ。
「こういった球体の外周に大きな望遠鏡と、外周下部に小さな望遠鏡をつけた者を設置。これにより、遠くのものと足元周囲を見ることが出来ます」
多くの視野を確保し、それにより戦場を把握。そしてそれらを守るために動く。そういうコンセプトだ。
「……いや、それでも守れるのはせいぜい二名が限界だろう」
苦悩するように技師達は答えを返す。
二名を守る防御タンクの技術は、彼らの努力の果てに得た技巧だ。それを超える技術は、未だ見つからない。全てが見えようとも、どう動けばいいかという『例』がなければ二名以上を守ることは難しい。
「大きな盾でも小さな人を守るのは難しい。その重量もあって、小さな人間の動きには対応しずらいんだ。……騎士様が盾に合わせて動いてくれるなら別だけど」
それは攻めの足を滞らせることになる。仕方ない、とたまきとテオドールは諦めた。
「盾そのものは鋼鉄を使用。鋼の強度を落とさない程度に魔術の力を含んだ石を加工して魔に対する防御力を上昇させます。
頑丈さを意識し、同時に自陣を守る要となるのが目的です」
「あ、あとは自己再生能力とか……どうでしょうか?」
おずおずと、ミウが挙手する。自分に自信がないのか、少し腰が引けていた。
「不死鳥の如く場に存在し続けるのって、カッコイイと思うんですよ……戦場にあって、その背に預かってる命の数……! それを背中で語っちゃうって……。
漢気溢れてませんか!? ますよね!?」
そして急に語りだし、圧倒される技師達。その様子を見て我に返り、再びおどおどした表情になる。
「……あ、肝心の自己回復……蒸気機械的に言うと自己修復機能の事ですけど、錬金術の回復スキル……ホムンクルスもい癒せるんですよね。
これを蒸気機械に応用出来ないかなぁー……ってですね……あはは……」
駄目ですよね、すみません。そんな表情で去ろうとするミウ。
「……ありか? ただの鋼鉄の盾ならともかく、魔導コーティングされた盾なら」
「しかし『生命』ではない対象を錬金術で癒せるのか?」
「あ……それはメアリーさんが成功例を出していると聞いたことが」
難色を示す技師達にミウが告げる。技師の数名が立ち上がり、マータマイスターを伝えたメアリーの元に走っていく。
半時間後、無理やり連れてこられたメアリーと共に開発が始まった。
●
かくして、イ・ラプセルの新兵器開発は動き出す。
一号機、兵射出式隠密飛行船『アルタイル』――
二号機、貫通式兵装二足歩行兵器『ベガ』――
三号機、自陣防衛防御戦車『デネブ』――
その完成と同時に、自由騎士達は攻勢に出る――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
たぢまCWと『一度はPCに兵器を作らせてみたいねー』とか言っていたのがマギスチ開始の半年前。技能『蒸気機関取扱技術』を作っていたころ。
その念願がかなったので、どくどくのマギスチはここで終了で……だめですね、はい。
以上のような結果になりました。
MVPは迷いましたが、スキルとアイテムまで使用したと言う事で猪市様に。
これら兵器をもって『チャイルドギア』決戦に挑むことになります。兵器完成までしばしお待ちください。
それではまた、イ・ラプセルで。
たぢまCWと『一度はPCに兵器を作らせてみたいねー』とか言っていたのがマギスチ開始の半年前。技能『蒸気機関取扱技術』を作っていたころ。
その念願がかなったので、どくどくのマギスチはここで終了で……だめですね、はい。
以上のような結果になりました。
MVPは迷いましたが、スキルとアイテムまで使用したと言う事で猪市様に。
これら兵器をもって『チャイルドギア』決戦に挑むことになります。兵器完成までしばしお待ちください。
それではまた、イ・ラプセルで。
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