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Achoo! 東から来た怪鳥音!

●怪しい鳥達の叫び声
「アチョー! ホワタァ! ハイハイハイハイハイヤァー!」
「オリョリョリョリョ! ホイホイホー!」
「アリャー! ウリャリャリャリャリャー!」
「ハオハオ! ワイヤアアアアアアア!」
「ホウ! リョワタアアアアアアアアア!」
「イィィィィィィィィィィヤハァアアアアアアアアア!」
●自由騎士
「てな感じなの。おけまる?」
「分かるか!」
アミナ・ミゼット(nCL3000051)の説明に、自由騎士達は一斉にツッコんだ。
「えとね、央華? とか言う所から来た人達なんだけど『ブキョー』とか名乗ってるの。で、強い者を探してるんだって」
央華大陸。遥か東にあると言われた場所で、既に神のない大陸である。そこから旅をつづけ、イ・ラプセルの方にやってきたという。
「普段は港で荷物おろしをしたりしてるんだけど、夜中に『シュギョー』とかで大声をあげて叫んでるんで、うっせーって叫んで喧嘩売った人がぱこーんと返り討ち。
そこからわちゃわちゃあってその辺知らない人が激おこになって、でその空気を感じて『ブキョー』も激おこぷんぷん丸。空気びりびりな状態なの」
夜中に叫んでいれば、怪しいと思うものも少なくない。それがあまり情報のない国の人間ならなおのことだ。
とはいえ、非はこちらにある。先に手を出したこともあり、関係者を説得して謝罪に向かったのだが――
「んでいろいろ話し合った結果……『我ら、武俠。拳を振り上げられたのだ。そこの治め処を求める』『聞けばジユウキシなる猛者がいると聞く。我が武を試すにちょうどいい』とかなんとか。いみわからんちんだけど、あーしらに戦えって言ってるみたい」
胸元から取り出した封筒を読み上げるアミナ。
「つまり、連中と戦えと?」
「ういうい。分かりやすくてよいちょいまる」
もともと戦いで全てを納めてきた部族出身のアミナは、うんうんと頷いた。
「で、やる? 面倒ならあーしが全部やるけど」
実際の所、勝ち負けは重要ではない。あちらの満足いく戦いをすればいいのだ。そういう意味ではアミナ一人で戦わせても何ら問題のない話である。
貴方はこの戦いを――
「アチョー! ホワタァ! ハイハイハイハイハイヤァー!」
「オリョリョリョリョ! ホイホイホー!」
「アリャー! ウリャリャリャリャリャー!」
「ハオハオ! ワイヤアアアアアアア!」
「ホウ! リョワタアアアアアアアアア!」
「イィィィィィィィィィィヤハァアアアアアアアアア!」
●自由騎士
「てな感じなの。おけまる?」
「分かるか!」
アミナ・ミゼット(nCL3000051)の説明に、自由騎士達は一斉にツッコんだ。
「えとね、央華? とか言う所から来た人達なんだけど『ブキョー』とか名乗ってるの。で、強い者を探してるんだって」
央華大陸。遥か東にあると言われた場所で、既に神のない大陸である。そこから旅をつづけ、イ・ラプセルの方にやってきたという。
「普段は港で荷物おろしをしたりしてるんだけど、夜中に『シュギョー』とかで大声をあげて叫んでるんで、うっせーって叫んで喧嘩売った人がぱこーんと返り討ち。
そこからわちゃわちゃあってその辺知らない人が激おこになって、でその空気を感じて『ブキョー』も激おこぷんぷん丸。空気びりびりな状態なの」
夜中に叫んでいれば、怪しいと思うものも少なくない。それがあまり情報のない国の人間ならなおのことだ。
とはいえ、非はこちらにある。先に手を出したこともあり、関係者を説得して謝罪に向かったのだが――
「んでいろいろ話し合った結果……『我ら、武俠。拳を振り上げられたのだ。そこの治め処を求める』『聞けばジユウキシなる猛者がいると聞く。我が武を試すにちょうどいい』とかなんとか。いみわからんちんだけど、あーしらに戦えって言ってるみたい」
胸元から取り出した封筒を読み上げるアミナ。
「つまり、連中と戦えと?」
「ういうい。分かりやすくてよいちょいまる」
もともと戦いで全てを納めてきた部族出身のアミナは、うんうんと頷いた。
「で、やる? 面倒ならあーしが全部やるけど」
実際の所、勝ち負けは重要ではない。あちらの満足いく戦いをすればいいのだ。そういう意味ではアミナ一人で戦わせても何ら問題のない話である。
貴方はこの戦いを――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.正々堂々と戦う
どくどくです。
Kung Fu Show Time!
●敵情報
・武俠(×7)
央華大陸からやってきた者達です。非オラクル。強さを求め、旅をしているようです。
オラクルではないので一部技能は通じますが、それで勝利しても『自由騎士は卑怯ものか』と納得してくれません。
基本的に一対一で戦うことになりますが、自由騎士が望めば複数での戦いも受け入れます。
勝つ必要はありませんが、あからさまに手を抜いたりされれば気分を害されますのでご注意を。場合によっては失敗判定もあり得ます。
『ホークアイ』ユーハン
鷹のケモノビト。50代男性。指先からつぶてを放つガンナーです。遠距離戦を好みますが、近距離戦もこなします。
『動物交流』『ピンポイントシュート Lv3』『ウェッジショット Lv3』『サテライトエイム Lv3』等を活性化しています。
『白鶴』シンイー
白い羽のソラビト。20代女性。両手に鈍器(双錘)をもって戦う重戦士です。
『飛行』『バッシュ Lv3』『オーバーロード Lv2』『バーサーク Lv3』等を活性化しています。
『ほうほう』リキョウ
梟のケモノビト。200歳弾性。物知り爺さんポジションな格闘スタイルです。
『動物交流』『影狼 Lv3』『震撃 Lv3』『龍氣螺合 Lv3』等を活性化しています。
『鬼鳥』コカク
オニビト。30代女性。子供大好きお姉さんです。魔術師スタイル。
『吸血』『緋文字 Lv3』『マナウェーブ Lv3』『アニマ・ムンディ Lv3』等を活性化しています。
『大空のサムライ』ダイモン
ソラビト。40代男性。アマノホカリ製の刀で戦う軽戦士。
『飛行』『コンフュージョンセル Lv3』『サテライトエイム Lv3』『ブレイクゲイト Lv3』等を活性化しています。
『死の爪』ラセツ
羅刹鳥のマザリモノ。150歳男性。ネクロマンサーを求めてこの地にやってきた錬金術師です。
『アンチトキシス Lv3』『スパルトイ Lv3』『ミラーニューロン』等を活性化しています。
『毒手』ミオン
鴆のマザリモノ。10代女性。己の魔力と言う毒素を流し込む格闘スタイル。
『回天號砲 Lv3』『アニマ・ムンディ Lv3』『柳凪 Lv3』等を活性化しています。
●NPC
・アミナ・ミゼット(nCL3000051)
戦い好きな褐色少女。布面積全年齢ギリギリな南国娘。誰も戦わない相手は彼女が担当します。何人でも。
複数戦になった場合、旋風腿を駆使して戦います。
●場所情報
イ・ラプセル首都サンクディゼールの広場。周囲に見物人はいますが、意図して巻き込もうとしない限りは怪我することはありません。相手もそれは遵守します。
一対一の場合、互いに10m離れて一礼してからの勝負となります。事前付与は不可。複数戦になる場合は、互いに一列になって一礼してからの勝負開始です。不意打ちや挨拶前の殴り合いを行えば、相手の気分を損ねて依頼失敗となります。
皆様のプレイングをお待ちしています。
Kung Fu Show Time!
●敵情報
・武俠(×7)
央華大陸からやってきた者達です。非オラクル。強さを求め、旅をしているようです。
オラクルではないので一部技能は通じますが、それで勝利しても『自由騎士は卑怯ものか』と納得してくれません。
基本的に一対一で戦うことになりますが、自由騎士が望めば複数での戦いも受け入れます。
勝つ必要はありませんが、あからさまに手を抜いたりされれば気分を害されますのでご注意を。場合によっては失敗判定もあり得ます。
『ホークアイ』ユーハン
鷹のケモノビト。50代男性。指先からつぶてを放つガンナーです。遠距離戦を好みますが、近距離戦もこなします。
『動物交流』『ピンポイントシュート Lv3』『ウェッジショット Lv3』『サテライトエイム Lv3』等を活性化しています。
『白鶴』シンイー
白い羽のソラビト。20代女性。両手に鈍器(双錘)をもって戦う重戦士です。
『飛行』『バッシュ Lv3』『オーバーロード Lv2』『バーサーク Lv3』等を活性化しています。
『ほうほう』リキョウ
梟のケモノビト。200歳弾性。物知り爺さんポジションな格闘スタイルです。
『動物交流』『影狼 Lv3』『震撃 Lv3』『龍氣螺合 Lv3』等を活性化しています。
『鬼鳥』コカク
オニビト。30代女性。子供大好きお姉さんです。魔術師スタイル。
『吸血』『緋文字 Lv3』『マナウェーブ Lv3』『アニマ・ムンディ Lv3』等を活性化しています。
『大空のサムライ』ダイモン
ソラビト。40代男性。アマノホカリ製の刀で戦う軽戦士。
『飛行』『コンフュージョンセル Lv3』『サテライトエイム Lv3』『ブレイクゲイト Lv3』等を活性化しています。
『死の爪』ラセツ
羅刹鳥のマザリモノ。150歳男性。ネクロマンサーを求めてこの地にやってきた錬金術師です。
『アンチトキシス Lv3』『スパルトイ Lv3』『ミラーニューロン』等を活性化しています。
『毒手』ミオン
鴆のマザリモノ。10代女性。己の魔力と言う毒素を流し込む格闘スタイル。
『回天號砲 Lv3』『アニマ・ムンディ Lv3』『柳凪 Lv3』等を活性化しています。
●NPC
・アミナ・ミゼット(nCL3000051)
戦い好きな褐色少女。布面積全年齢ギリギリな南国娘。誰も戦わない相手は彼女が担当します。何人でも。
複数戦になった場合、旋風腿を駆使して戦います。
●場所情報
イ・ラプセル首都サンクディゼールの広場。周囲に見物人はいますが、意図して巻き込もうとしない限りは怪我することはありません。相手もそれは遵守します。
一対一の場合、互いに10m離れて一礼してからの勝負となります。事前付与は不可。複数戦になる場合は、互いに一列になって一礼してからの勝負開始です。不意打ちや挨拶前の殴り合いを行えば、相手の気分を損ねて依頼失敗となります。
皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2020年03月07日
2020年03月07日
†メイン参加者 6人†
●
「ドーンとこい!」
『薔薇の谷の騎士』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)!
VS!
「元気なお嬢ちゃんじゃな。おいぼれで良ければお相手するぞ」
『ほうほう』リキョウ!
「カノンのこの手が真っ赤に燃えて、勝利を掴めと轟き叫ぶんだよ!」
『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)!
VS!
「この手は毒……耐えられるかしら?」
『毒手』ミオン!
「お手柔らかにお願いします」
『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)!
VS
「アイヤー! 全力でいくアルヨ!」
『白鶴』シンイー!
「宜しくお願いします!」
フリオ・フルフラット(CL3000454)!
VS!
「うむ、お相手任まろう」
『大空のサムライ』ダイモン!
「深く考えずに癒し手として出たつもりなんだけどなぁ……」
『パツィフィスト・ゲベート』アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)!
「成程。ではエスコートが必要だろう」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)!
VS!
「あらあら。異国の魔術を味わえるようですわね」
『鬼鳥』コカク!
「差異こそあれどマナの形は世界共通であろう」
『死の爪』ラセツ!
「という事で、あーしの相手はあなた?」
アミナ・ミゼット(nCL3000051)!
VS!
「我が瞳から逃れること叶わぬ。来るがいい」
『ホークアイ』ユーハン!
――戦いの銅鑼が鳴りひびいた。
●
「宜しくお願いします!」
一礼の後にカーミラはリキュウと相対する。ウシのケモノビトのカーミラと、梟のケモノビトのリキュウ。その戦いは、
「どりゃあああああああ!」
開幕同時に突撃するカーミラ。それを受けて拳を返すリキュウ。互いのケモノの性質を示すがようにカーミラが動き、リキュウは静かに対応する。
真っ直ぐ相手に飛び込み、肘や膝などの固い部分を使って相手を攻めるカーミラ。体全てが、武器。力の流れを理解し、至近距離でも高い衝撃を生み出す打撃を放つ。教えた親の教えか、はたまた自由騎士としての戦いの経験からか。精錬された一撃は強く鋭く。
リキュウはその動きを羽毛の如くいなしていた。カーミラの背骨を中心として回転するコマ。それをイメージして脳内で相手の動きを想像する。起点が正しければ、大きなずれは生じない。リキュウが老いるほどに研鑽を重ねた武の慧眼だ。
真っ直ぐに打撃を繰り出すカーミラ。それ受け流し返すリキュウ。その流れは他の人達にも見えた。押しているのはカーミラに見えて、その実リキュウのペースだと。カーミラの体力か気力が切れれば、その時決着がつくだろう。
だが戦っている本人からすれば別の心理が動いていた。
(真っ直ぐな拳。真っ直ぐな蹴り。この娘の心意気を示すようだ)
(おそらくこの娘の心は折れまい。勝ちや敗けに拘るのではなく、戦いそのものを楽しんでいる。最後の最後まで、真っ直ぐに戦うだろう)
リキュウはカーミラをそう評した。そしてカーミラの体力が尽きるより先に、こちらが倒れるだろうことを。だから――
「ハイヤ!」
踏み込みと同時に拳を放つリキュウ。カウンターではなく、自ら攻めに転じるリキュウ。カーミラはその攻撃を腕で受け、よろめきながらも拳を返す。
ここからは互いに引かぬ距離での攻防となった。拳、腕、肘、肩、足、脛、それら全てを用いての打撃戦。体幹と手の動きと目線から相手の動きを見切り、刹那の判断で体を動かす。相手の攻撃を受け止めた瞬間にはすでに次の動きが決まっており、一撃一撃毎に確実に相手の体力を削っていく。
「うりゃああああああああ!」
「イイイイイイヤアアアア!」
互いに気合の声を上げ、さらに半歩距離を詰める。その分打撃速度が加速し、繰り出される技に深みが増していく。
攻防の末、カーミラの膝が崩れ落ち、
「ネツァクのセフィラの根性ナメんなぁ!」
そのまま起き上がるように立ち上がりながら背中でリキュウを打ち据える。その衝撃に耐えきれず、リキュウはよろめ――かなかった。
「見事……!」
そのまま前のめりに倒れ伏す。最後の最後まで、後ろに下がらなかったのは武俠の意地か。
「勝、ッたあああああああああああ!」
倒れそうになる足を根性で支えながら、カーミラは拳を振り上げた。
●
「カノン・イスルギ。ミオン殿に一手ご指南願い奉る」
「リー・ミオン。チン、ヂージャオ」
カノンの一例に、ミオンが頭を下げる。意味合い的には『ご指導よろしくお願いします』と言う意味らしい。礼の後に互いに向き直り、構えを取る。カノンの構えは『センセー』から教わった格闘の構え。ミオンは軽く手を前に出すだけの構え。
(遠距離と近距離を使い分ける格闘スタイルだから、すぐにスイッチできるようにしているのか)
カノンはミオンの構えをそう判断する。隙が多いというよりは、片腕を自由にしてあらゆる状況に対応できるようにしている。そんな所だ。
対し、カノンの構えは近接に傾倒している形だ。格闘スタイルであるなら正道ともいえる。その構えを維持しながら、地を蹴った。滑るようにすり足で迫り、拳を叩き込む。
「貰った!」
「ハイ!」
カノンの拳に反応するようにミオンが動く。柳が風を流すような力無き防御。真っすぐなカノンの拳は真っ直ぐであるがゆえに流される。そのままミオンはそっと添える様にカノンの胸に手を当てた。
「至近距離で回天號砲!?」
流れる気を察したのかカノンは転がるようにしてミオンの一撃を避ける。判断が一瞬遅れればまともに攻撃を喰らい、そのまま倒れていただろう。地面を転がるように移動にして起き上がり、構えを取り直す。
カノンの攻撃はいなされ、ミオンの攻撃を何とかかわした――というふうに見えるが実際は真逆だ。
(動きは見たよ)
戦いにおいて、構えや流派と言ったモノは情報だ。そして情報を得れば、そこから対策が練れる。攻撃のタイミングが分かれば、防御も回避もできる。
「行くよ! センセーに教えてもらった技、試させてもらうね!」
「……ハアアアアアアアアアアア………!」
構えを取り直すカノン。それに呼応するように呼気を整えるミオン。
「ハイ!」
先に仕掛けたのはミオンだ。気を飛ばし、カノンを真正面から打ち据える。カノンは斜め前に移動することで回避し、そのままミオンに歩を進めていく。
それを舞っていたのはミオンだ。相手に動いてもらい、移動先に設置するように本命の気を飛ばす。三歩先のカノンの場所を予測し、体内の気を練り上げて解き放――
「残念。そこにはいないよ」
声はミオンの死角から聞こえてきた。強く地面を蹴って二歩分の距離を一歩で進む。相手が『予測』することを知っているから、カノンはその裏をかいて移動したのだ。そのまま顔を叩いて思考を軽く惑わし、首を押さえながら動きを封じて肘で脇腹を打つ。
「解っていても躱せず受け流せない。カラテの技らしーよ」
「……うぐ」
その衝撃に耐えきれず、ミオンは腹を押さえて気を失った。
●
「礼に始まり、礼に終わる。大事ですわね」
アンジェリカはシンイーと一礼し、『断罪と救済の十字架』を構える。相手は自分と同じ重戦士。武器の重さがその強さを示すかのようだ。両手に持った錘と呼ばれる武器。央華の文化で生まれたメイスのような鈍器。さてそれをどう扱うのか。
礼の終わりと同時に動き出すシンイー。片側の鈍器を振り下ろすと同時に、その遠心力を殺さないようにもう片方の鈍器を繰り出す。武器の重さに振り回されているのではなく、むしろ武器の重さを利用して体術を行使している。
アンジェリカはその攻撃を受け、そして力を込めて十字架を振るう。シンイーに当たる寸前に錘に阻まれ、激しい衝撃と共に弾かれる。速度とパワーはアンジェリカが勝っており、武器の熟練度はシンイーが勝っている。
「幼いころから使い続けているようですわね」
柔和な笑みを浮かべるアンジェリカ。けして相手を見下しているのではない。言葉通り相手の努力を認めているのだ。武に生きるという思想は理解の外だが、日々努力を怠らないという事のすばらしさは知っている。
「空を飛んで一時離脱……をなさるつもりはないようですね」
「当然。武に生きる、故に武俠」
アンジェリカにそう告げるシンイー。正々堂々と挑まれb、それに応える。彼らの中の一定のルールがあるようだ。互いに引くことなく打撃を繰り消し、共に疲弊していく。互いのパワーのぶつかり合い。重戦士同士の戦いは防御ではなく攻撃が重視される。どれだけ重い一撃を、どれだけ多く叩き込めるか。
「この一発一発に立ち向かう貴方への敬意と……私の覚悟の重さを添えましょう」
「感謝。されど手は抜かない」
遠慮せずに挑む。それこそが戦士への敬意。言葉にせずともその一打で理解できる。相手を打ち倒す気持ちには変わりはないが、相手を憎むわけではない。一撃毎に相手を理解し、そしてさらに高みを目指していく。
「その弛まぬ努力と鍛錬に最大の敬意を。
さぁ、貴方の全身全霊、全力全開を私に叩き込みなさい」
突如、武器を下ろしてアンジェリカがシンイーに向けて言う。自らを晒すような格好に最初はふざけているのかと思ったシンイーだが、アンジェリカの目が闘志を失っていない事に気づき、力を込める。
「是、全力の一打……ハイヤアアアアアアアアア!」
体のリミッターを外し、理性を飛ばして叫ぶ。骨を砕く一撃がアンジェリカに叩き込まれた。アンジェリカはその重さを真正面から受け止め――
「私の『全力』で、その一撃に返礼致しましょう……!」
その衝撃を体内に留め、それを返すように自らの武器を振るう。シンイーの一撃を乗せたアンジェリカの一打。
「我、敗北……!」
その一撃に耐えきれず、シンイーは吹き飛ばされて意識を失った。
●
「央華大陸からいらっしゃった方々、でありますか」
遠く東方から来た来訪者に礼をしながら、フリオが目の前のソラビトを見る。
「武を求め流れ流れてやってきた。聞けば鋼の身体を持つと聞く。さて、我が刃を受けきれるかな?」
ダイモンはアマノホカリ製の刀を手にしてフリオに相対する。
「よろしくするであります!」
強化型ヘビィブレードを手に構えを取るフリオ。切っ先を舌に構えて、刃の腹を相手に向ける。正中線を守る防御の構え。それでいて相手の動きに合わせて攻撃できる作戦だ。
「なかなかの鍛錬。相手にとって不足なし。その鉄壁、崩してくれよう」
言葉と同時に動くダイモン。風が凪ぐような一閃。だがそれを受けたフリオは怖気すら感じる。立て続けに吹き荒れる疾風。それを受け流しながら、フリオは呼吸を整える。大丈夫、と心に言い聞かせ訓練通りに耐え凌ぐ。
その四肢は機械なれど、機械でない部分はまだ乙女。迫りくる刃を前に鋼の身体は耐えれども、死の足音は心を少しずつ削る。刃が起こす風が少しずつ近づいてくる。皮膚を、肉を、そして血管を裂こうと。退かねば、切られる。
――手に持つ剣折れようと。
だが、フリオは前に出る。そのことでより死の気配が濃くなるが、それを恐れはしない。怖くはある。だが、恐れはしない。死や滅びを喜んで受け入れはしない。
――心に折れぬ剣持て!
それはフリオの持つ信念。例え武器が折れ鎧が砕けようとも、絶望せずに立ち上がれ。自らに向く相手の剣を見ながら、それでも生きる事を諦めるな。故にフリオは迷うことなく、前に出る。殺意を感じ、それを正しく受け入れながら、真っ直ぐに。
「なんと――死中に活を見出したか!」
「強く打たれてもそれ以上に相手を打ち砕く……それが、フルフラットの戦技であります!」
何があっても諦めず、活路を見出すために前に出る。その愚直ともいえる信念が刃の風を突破する。
自らの間合にはいれば、後は簡単。
跳ね上がるような一撃は、これまで受けてきた痛みを乗せた一打。豪風ともいえるフリオの刃がダイモンの疾風を吹き飛ばす。
「真っ直ぐな信念。心の差で負けたか。いやはや、悔しいなぁ」
「ありがとうございました! 満足して頂ければ嬉しいであります!」
相手の力を引き出し、そして自分に出来る事をすべて行う。互いに出し惜しみなく叩けて、フリオは満足していた。
●
「武を尊ぶと聞いていたが、拳や武器で殴るだけではないようだな」
「武とは『矛』を『止』める事。その心意気に術も含まれるのですよ」
テオドールとラセツがそんな話をする。
「殴って解決という理念ではないのだね。興味深い」
「勿論それが最良ならそうしますわ」
アクアリスとコカクがその会話を継ぐように言葉を重ねた。
一礼の後に動き出す四人。自由騎士側はテオドールが前に、アクアリスが後ろに。たいして武俠側はコカクが前に出て、ラセツが後ろに下がる。
「吸血を意識したか。成程魔力の枯渇は望ましくないからな」
テオドールは武俠の陣形をそう評する。勿論ラセツを守る意味もあるだろうが、自由騎士二人が魔術師であるということも理由の一つだろう。
「まあ、ボクは前衛が倒れれば降伏するしかないんだけどね」
アクアリスは回復の術式を練りながら苦笑する。単純な殴り合いになれば、アクアリスはこの中で一番弱いだろう。癒し手である以上、チームプレイであることが前提なのだ。
ラセツは符から骨の兵隊を呼び出し、コカクは扇に炎を纏わせ解き放つ。央華式錬金術師とマギアスと言った所か。炎はテオドールを穿ち、骨の刃はアクアリスに迫る。
「成程大したものだ。ではこちらも呪術師の神髄を見せよう」
言いながらテオドールは『アルボス・サピエンティア』を構える。林檎と葡萄の枝を織り込んだ杖は主の魔力を受けて淡く光り、効率よくマナを力に変換させていく。地の底から伸びた白い茨が二人の武俠を捕らえた。その冷たさから、ラセツは術式の本質に気付く。
「ほう、それは噂に聞いた死霊術。ならば意識なき者を操る術も。そしてその先も――」
「止めておきなさい。そこから先は外法だ。死は覆らない。それは絶対だ」
ラセツの求める声に気付き、強く言葉を返すテオドール。
「死を忌避しますか。イブリース化による遺体の自立活動……こちらでは還リビトと称するのでしたか? あの領域にたどり着けるかもしれないのに」
「還リビトは死者蘇生ではない。魂はセフィロトの海に帰っている。。還リビトはただ生前の残渣があるだけだ」
そうでなければ前妻は――喉元まで出かかった言葉を、堪えるテオドール。その件は既に自分の中で昇華し、前に進んでいる。思い出に足を止める事はあるかもしれないが、振り返ることはしない。
「残念ね、ラセツ。教えてもらえそうにはなさそう」
「こちらの文化に興味があるようだね。それは何故だい?」
炎を放つコカクに問いかけるアクアリス。炎を放つコカクに対し、回復の術式でしのぐアクアリス。現状はそんな構図だ。
「強くなると思ったら興味を持つ。それが武俠ってものなのよ」
「自由騎士は協力し合うことで強くなる。そういうのに興味はないかい?」
「ふん? 連携は嫌いじゃないわ。でもその程度――」
「残念ながら自由騎士はキミ達の思う通りの屈強な猛者ばかりではない。ボクのように弱さを別の何かで補って戦う者たちが殆どであるように思う」
コカクが興味を引くタイミングを見計らって、アクアリスは言葉を放つ。
「だが、キミ達には強者に見えたようだ。その理由は何だい?」
「強いて言えば『熱』かねぇ? 世界を変えるかもしれない熱を感じたのさ。単純な強さではなく、運命という何かを手繰る寄せる感じを。
ああ、これはただの勘よ。名剣も持ち手が弱ければ飾り同然。その『熱』で何を為すかはわからないけどねぇ」
分かったようなわからないような、そんなコカクの言葉だ。
繰り広げられる魔術戦。実のところ、アクアリスの言うようにテオドールが倒れれば自由騎士は降参せざるを得まい。アクアリス自体は相手を攻撃す詰ま術を持っていないからだ。
故に武俠はテオドールを集中攻撃するのが最善だ。だが――そうはしなかった。
「加減しているのか?」
「否! 堂々と打ち勝ってこその勝負。その為に全力を尽くすのが武俠」
「堂々と戦わない事で、逆に全力が出せないのが私達なのよ」
あえて最善手を選ばないことが、最大の力を出すことが出来る。非効率だが、それが武俠という生き方なのだろう。
となれば、互いの魔力、互いの地力の差が勝敗を喫する。幾多の戦争を超えた自由騎士と、大陸を渡り戦った武俠。その魔力戦は――
「――紙一重、だったな」
「うん。あともう少し攻められたら、倒れてたかもね」
肩で息をするテオドールとアクアリス。自由騎士側の方に軍配が上がった。
●
戦い終わり、互いの健闘をたたえ合う自由騎士と武俠。
その次の日、武俠達は一枚の手紙を残し、町から消えていた。
『戦いで得るものがあったので、修行の旅に出る。また会えれば、その時は拳を交わそう』
彼ららしい、と自由騎士達は頷いた。
「ハイヤアアアアアアアア!」
今日もどこかで、武俠達の怪鳥音が響き渡る――
「ドーンとこい!」
『薔薇の谷の騎士』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)!
VS!
「元気なお嬢ちゃんじゃな。おいぼれで良ければお相手するぞ」
『ほうほう』リキョウ!
「カノンのこの手が真っ赤に燃えて、勝利を掴めと轟き叫ぶんだよ!」
『戦場に咲く向日葵』カノン・イスルギ(CL3000025)!
VS!
「この手は毒……耐えられるかしら?」
『毒手』ミオン!
「お手柔らかにお願いします」
『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)!
VS
「アイヤー! 全力でいくアルヨ!」
『白鶴』シンイー!
「宜しくお願いします!」
フリオ・フルフラット(CL3000454)!
VS!
「うむ、お相手任まろう」
『大空のサムライ』ダイモン!
「深く考えずに癒し手として出たつもりなんだけどなぁ……」
『パツィフィスト・ゲベート』アクアリス・ブルースフィア(CL3000422)!
「成程。ではエスコートが必要だろう」
『達観者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)!
VS!
「あらあら。異国の魔術を味わえるようですわね」
『鬼鳥』コカク!
「差異こそあれどマナの形は世界共通であろう」
『死の爪』ラセツ!
「という事で、あーしの相手はあなた?」
アミナ・ミゼット(nCL3000051)!
VS!
「我が瞳から逃れること叶わぬ。来るがいい」
『ホークアイ』ユーハン!
――戦いの銅鑼が鳴りひびいた。
●
「宜しくお願いします!」
一礼の後にカーミラはリキュウと相対する。ウシのケモノビトのカーミラと、梟のケモノビトのリキュウ。その戦いは、
「どりゃあああああああ!」
開幕同時に突撃するカーミラ。それを受けて拳を返すリキュウ。互いのケモノの性質を示すがようにカーミラが動き、リキュウは静かに対応する。
真っ直ぐ相手に飛び込み、肘や膝などの固い部分を使って相手を攻めるカーミラ。体全てが、武器。力の流れを理解し、至近距離でも高い衝撃を生み出す打撃を放つ。教えた親の教えか、はたまた自由騎士としての戦いの経験からか。精錬された一撃は強く鋭く。
リキュウはその動きを羽毛の如くいなしていた。カーミラの背骨を中心として回転するコマ。それをイメージして脳内で相手の動きを想像する。起点が正しければ、大きなずれは生じない。リキュウが老いるほどに研鑽を重ねた武の慧眼だ。
真っ直ぐに打撃を繰り出すカーミラ。それ受け流し返すリキュウ。その流れは他の人達にも見えた。押しているのはカーミラに見えて、その実リキュウのペースだと。カーミラの体力か気力が切れれば、その時決着がつくだろう。
だが戦っている本人からすれば別の心理が動いていた。
(真っ直ぐな拳。真っ直ぐな蹴り。この娘の心意気を示すようだ)
(おそらくこの娘の心は折れまい。勝ちや敗けに拘るのではなく、戦いそのものを楽しんでいる。最後の最後まで、真っ直ぐに戦うだろう)
リキュウはカーミラをそう評した。そしてカーミラの体力が尽きるより先に、こちらが倒れるだろうことを。だから――
「ハイヤ!」
踏み込みと同時に拳を放つリキュウ。カウンターではなく、自ら攻めに転じるリキュウ。カーミラはその攻撃を腕で受け、よろめきながらも拳を返す。
ここからは互いに引かぬ距離での攻防となった。拳、腕、肘、肩、足、脛、それら全てを用いての打撃戦。体幹と手の動きと目線から相手の動きを見切り、刹那の判断で体を動かす。相手の攻撃を受け止めた瞬間にはすでに次の動きが決まっており、一撃一撃毎に確実に相手の体力を削っていく。
「うりゃああああああああ!」
「イイイイイイヤアアアア!」
互いに気合の声を上げ、さらに半歩距離を詰める。その分打撃速度が加速し、繰り出される技に深みが増していく。
攻防の末、カーミラの膝が崩れ落ち、
「ネツァクのセフィラの根性ナメんなぁ!」
そのまま起き上がるように立ち上がりながら背中でリキュウを打ち据える。その衝撃に耐えきれず、リキュウはよろめ――かなかった。
「見事……!」
そのまま前のめりに倒れ伏す。最後の最後まで、後ろに下がらなかったのは武俠の意地か。
「勝、ッたあああああああああああ!」
倒れそうになる足を根性で支えながら、カーミラは拳を振り上げた。
●
「カノン・イスルギ。ミオン殿に一手ご指南願い奉る」
「リー・ミオン。チン、ヂージャオ」
カノンの一例に、ミオンが頭を下げる。意味合い的には『ご指導よろしくお願いします』と言う意味らしい。礼の後に互いに向き直り、構えを取る。カノンの構えは『センセー』から教わった格闘の構え。ミオンは軽く手を前に出すだけの構え。
(遠距離と近距離を使い分ける格闘スタイルだから、すぐにスイッチできるようにしているのか)
カノンはミオンの構えをそう判断する。隙が多いというよりは、片腕を自由にしてあらゆる状況に対応できるようにしている。そんな所だ。
対し、カノンの構えは近接に傾倒している形だ。格闘スタイルであるなら正道ともいえる。その構えを維持しながら、地を蹴った。滑るようにすり足で迫り、拳を叩き込む。
「貰った!」
「ハイ!」
カノンの拳に反応するようにミオンが動く。柳が風を流すような力無き防御。真っすぐなカノンの拳は真っ直ぐであるがゆえに流される。そのままミオンはそっと添える様にカノンの胸に手を当てた。
「至近距離で回天號砲!?」
流れる気を察したのかカノンは転がるようにしてミオンの一撃を避ける。判断が一瞬遅れればまともに攻撃を喰らい、そのまま倒れていただろう。地面を転がるように移動にして起き上がり、構えを取り直す。
カノンの攻撃はいなされ、ミオンの攻撃を何とかかわした――というふうに見えるが実際は真逆だ。
(動きは見たよ)
戦いにおいて、構えや流派と言ったモノは情報だ。そして情報を得れば、そこから対策が練れる。攻撃のタイミングが分かれば、防御も回避もできる。
「行くよ! センセーに教えてもらった技、試させてもらうね!」
「……ハアアアアアアアアアアア………!」
構えを取り直すカノン。それに呼応するように呼気を整えるミオン。
「ハイ!」
先に仕掛けたのはミオンだ。気を飛ばし、カノンを真正面から打ち据える。カノンは斜め前に移動することで回避し、そのままミオンに歩を進めていく。
それを舞っていたのはミオンだ。相手に動いてもらい、移動先に設置するように本命の気を飛ばす。三歩先のカノンの場所を予測し、体内の気を練り上げて解き放――
「残念。そこにはいないよ」
声はミオンの死角から聞こえてきた。強く地面を蹴って二歩分の距離を一歩で進む。相手が『予測』することを知っているから、カノンはその裏をかいて移動したのだ。そのまま顔を叩いて思考を軽く惑わし、首を押さえながら動きを封じて肘で脇腹を打つ。
「解っていても躱せず受け流せない。カラテの技らしーよ」
「……うぐ」
その衝撃に耐えきれず、ミオンは腹を押さえて気を失った。
●
「礼に始まり、礼に終わる。大事ですわね」
アンジェリカはシンイーと一礼し、『断罪と救済の十字架』を構える。相手は自分と同じ重戦士。武器の重さがその強さを示すかのようだ。両手に持った錘と呼ばれる武器。央華の文化で生まれたメイスのような鈍器。さてそれをどう扱うのか。
礼の終わりと同時に動き出すシンイー。片側の鈍器を振り下ろすと同時に、その遠心力を殺さないようにもう片方の鈍器を繰り出す。武器の重さに振り回されているのではなく、むしろ武器の重さを利用して体術を行使している。
アンジェリカはその攻撃を受け、そして力を込めて十字架を振るう。シンイーに当たる寸前に錘に阻まれ、激しい衝撃と共に弾かれる。速度とパワーはアンジェリカが勝っており、武器の熟練度はシンイーが勝っている。
「幼いころから使い続けているようですわね」
柔和な笑みを浮かべるアンジェリカ。けして相手を見下しているのではない。言葉通り相手の努力を認めているのだ。武に生きるという思想は理解の外だが、日々努力を怠らないという事のすばらしさは知っている。
「空を飛んで一時離脱……をなさるつもりはないようですね」
「当然。武に生きる、故に武俠」
アンジェリカにそう告げるシンイー。正々堂々と挑まれb、それに応える。彼らの中の一定のルールがあるようだ。互いに引くことなく打撃を繰り消し、共に疲弊していく。互いのパワーのぶつかり合い。重戦士同士の戦いは防御ではなく攻撃が重視される。どれだけ重い一撃を、どれだけ多く叩き込めるか。
「この一発一発に立ち向かう貴方への敬意と……私の覚悟の重さを添えましょう」
「感謝。されど手は抜かない」
遠慮せずに挑む。それこそが戦士への敬意。言葉にせずともその一打で理解できる。相手を打ち倒す気持ちには変わりはないが、相手を憎むわけではない。一撃毎に相手を理解し、そしてさらに高みを目指していく。
「その弛まぬ努力と鍛錬に最大の敬意を。
さぁ、貴方の全身全霊、全力全開を私に叩き込みなさい」
突如、武器を下ろしてアンジェリカがシンイーに向けて言う。自らを晒すような格好に最初はふざけているのかと思ったシンイーだが、アンジェリカの目が闘志を失っていない事に気づき、力を込める。
「是、全力の一打……ハイヤアアアアアアアアア!」
体のリミッターを外し、理性を飛ばして叫ぶ。骨を砕く一撃がアンジェリカに叩き込まれた。アンジェリカはその重さを真正面から受け止め――
「私の『全力』で、その一撃に返礼致しましょう……!」
その衝撃を体内に留め、それを返すように自らの武器を振るう。シンイーの一撃を乗せたアンジェリカの一打。
「我、敗北……!」
その一撃に耐えきれず、シンイーは吹き飛ばされて意識を失った。
●
「央華大陸からいらっしゃった方々、でありますか」
遠く東方から来た来訪者に礼をしながら、フリオが目の前のソラビトを見る。
「武を求め流れ流れてやってきた。聞けば鋼の身体を持つと聞く。さて、我が刃を受けきれるかな?」
ダイモンはアマノホカリ製の刀を手にしてフリオに相対する。
「よろしくするであります!」
強化型ヘビィブレードを手に構えを取るフリオ。切っ先を舌に構えて、刃の腹を相手に向ける。正中線を守る防御の構え。それでいて相手の動きに合わせて攻撃できる作戦だ。
「なかなかの鍛錬。相手にとって不足なし。その鉄壁、崩してくれよう」
言葉と同時に動くダイモン。風が凪ぐような一閃。だがそれを受けたフリオは怖気すら感じる。立て続けに吹き荒れる疾風。それを受け流しながら、フリオは呼吸を整える。大丈夫、と心に言い聞かせ訓練通りに耐え凌ぐ。
その四肢は機械なれど、機械でない部分はまだ乙女。迫りくる刃を前に鋼の身体は耐えれども、死の足音は心を少しずつ削る。刃が起こす風が少しずつ近づいてくる。皮膚を、肉を、そして血管を裂こうと。退かねば、切られる。
――手に持つ剣折れようと。
だが、フリオは前に出る。そのことでより死の気配が濃くなるが、それを恐れはしない。怖くはある。だが、恐れはしない。死や滅びを喜んで受け入れはしない。
――心に折れぬ剣持て!
それはフリオの持つ信念。例え武器が折れ鎧が砕けようとも、絶望せずに立ち上がれ。自らに向く相手の剣を見ながら、それでも生きる事を諦めるな。故にフリオは迷うことなく、前に出る。殺意を感じ、それを正しく受け入れながら、真っ直ぐに。
「なんと――死中に活を見出したか!」
「強く打たれてもそれ以上に相手を打ち砕く……それが、フルフラットの戦技であります!」
何があっても諦めず、活路を見出すために前に出る。その愚直ともいえる信念が刃の風を突破する。
自らの間合にはいれば、後は簡単。
跳ね上がるような一撃は、これまで受けてきた痛みを乗せた一打。豪風ともいえるフリオの刃がダイモンの疾風を吹き飛ばす。
「真っ直ぐな信念。心の差で負けたか。いやはや、悔しいなぁ」
「ありがとうございました! 満足して頂ければ嬉しいであります!」
相手の力を引き出し、そして自分に出来る事をすべて行う。互いに出し惜しみなく叩けて、フリオは満足していた。
●
「武を尊ぶと聞いていたが、拳や武器で殴るだけではないようだな」
「武とは『矛』を『止』める事。その心意気に術も含まれるのですよ」
テオドールとラセツがそんな話をする。
「殴って解決という理念ではないのだね。興味深い」
「勿論それが最良ならそうしますわ」
アクアリスとコカクがその会話を継ぐように言葉を重ねた。
一礼の後に動き出す四人。自由騎士側はテオドールが前に、アクアリスが後ろに。たいして武俠側はコカクが前に出て、ラセツが後ろに下がる。
「吸血を意識したか。成程魔力の枯渇は望ましくないからな」
テオドールは武俠の陣形をそう評する。勿論ラセツを守る意味もあるだろうが、自由騎士二人が魔術師であるということも理由の一つだろう。
「まあ、ボクは前衛が倒れれば降伏するしかないんだけどね」
アクアリスは回復の術式を練りながら苦笑する。単純な殴り合いになれば、アクアリスはこの中で一番弱いだろう。癒し手である以上、チームプレイであることが前提なのだ。
ラセツは符から骨の兵隊を呼び出し、コカクは扇に炎を纏わせ解き放つ。央華式錬金術師とマギアスと言った所か。炎はテオドールを穿ち、骨の刃はアクアリスに迫る。
「成程大したものだ。ではこちらも呪術師の神髄を見せよう」
言いながらテオドールは『アルボス・サピエンティア』を構える。林檎と葡萄の枝を織り込んだ杖は主の魔力を受けて淡く光り、効率よくマナを力に変換させていく。地の底から伸びた白い茨が二人の武俠を捕らえた。その冷たさから、ラセツは術式の本質に気付く。
「ほう、それは噂に聞いた死霊術。ならば意識なき者を操る術も。そしてその先も――」
「止めておきなさい。そこから先は外法だ。死は覆らない。それは絶対だ」
ラセツの求める声に気付き、強く言葉を返すテオドール。
「死を忌避しますか。イブリース化による遺体の自立活動……こちらでは還リビトと称するのでしたか? あの領域にたどり着けるかもしれないのに」
「還リビトは死者蘇生ではない。魂はセフィロトの海に帰っている。。還リビトはただ生前の残渣があるだけだ」
そうでなければ前妻は――喉元まで出かかった言葉を、堪えるテオドール。その件は既に自分の中で昇華し、前に進んでいる。思い出に足を止める事はあるかもしれないが、振り返ることはしない。
「残念ね、ラセツ。教えてもらえそうにはなさそう」
「こちらの文化に興味があるようだね。それは何故だい?」
炎を放つコカクに問いかけるアクアリス。炎を放つコカクに対し、回復の術式でしのぐアクアリス。現状はそんな構図だ。
「強くなると思ったら興味を持つ。それが武俠ってものなのよ」
「自由騎士は協力し合うことで強くなる。そういうのに興味はないかい?」
「ふん? 連携は嫌いじゃないわ。でもその程度――」
「残念ながら自由騎士はキミ達の思う通りの屈強な猛者ばかりではない。ボクのように弱さを別の何かで補って戦う者たちが殆どであるように思う」
コカクが興味を引くタイミングを見計らって、アクアリスは言葉を放つ。
「だが、キミ達には強者に見えたようだ。その理由は何だい?」
「強いて言えば『熱』かねぇ? 世界を変えるかもしれない熱を感じたのさ。単純な強さではなく、運命という何かを手繰る寄せる感じを。
ああ、これはただの勘よ。名剣も持ち手が弱ければ飾り同然。その『熱』で何を為すかはわからないけどねぇ」
分かったようなわからないような、そんなコカクの言葉だ。
繰り広げられる魔術戦。実のところ、アクアリスの言うようにテオドールが倒れれば自由騎士は降参せざるを得まい。アクアリス自体は相手を攻撃す詰ま術を持っていないからだ。
故に武俠はテオドールを集中攻撃するのが最善だ。だが――そうはしなかった。
「加減しているのか?」
「否! 堂々と打ち勝ってこその勝負。その為に全力を尽くすのが武俠」
「堂々と戦わない事で、逆に全力が出せないのが私達なのよ」
あえて最善手を選ばないことが、最大の力を出すことが出来る。非効率だが、それが武俠という生き方なのだろう。
となれば、互いの魔力、互いの地力の差が勝敗を喫する。幾多の戦争を超えた自由騎士と、大陸を渡り戦った武俠。その魔力戦は――
「――紙一重、だったな」
「うん。あともう少し攻められたら、倒れてたかもね」
肩で息をするテオドールとアクアリス。自由騎士側の方に軍配が上がった。
●
戦い終わり、互いの健闘をたたえ合う自由騎士と武俠。
その次の日、武俠達は一枚の手紙を残し、町から消えていた。
『戦いで得るものがあったので、修行の旅に出る。また会えれば、その時は拳を交わそう』
彼ららしい、と自由騎士達は頷いた。
「ハイヤアアアアアアアア!」
今日もどこかで、武俠達の怪鳥音が響き渡る――
†シナリオ結果†
大成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
リプレイ全部を怪鳥音と叫び声だけにしようとして、理性で止めました。
以上のような結果になりました。
プレング内容から、戦闘描写オンリーにするか心情重視にするかを決めた形です。
お気に召していただければ幸いです。
全員MVPという事で、大成功をお送りします。
それではまた、イ・ラプセルで。
リプレイ全部を怪鳥音と叫び声だけにしようとして、理性で止めました。
以上のような結果になりました。
プレング内容から、戦闘描写オンリーにするか心情重視にするかを決めた形です。
お気に召していただければ幸いです。
全員MVPという事で、大成功をお送りします。
それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済