MagiaSteam
Tribe! インディオという部族!



●これまでの流れ!
 イ・ラプセルはパノプティコン攻略のためにインディオを手を結ぼうとしていた。
 パノプティコンで抵抗を続けるインディオの家族が通商連に居るという情報を聞いて通商連に向かった所、インディオの家族を『所有』している通商連から『彼らと話をしたいのなら、他意かとして幽霊船を倒してくれ』と取引される。
 激闘の末に幽霊船を排した自由騎士達は、しばしの休息の後に通商連に向かうのであった。

●『精霊』と歩む部族
「流石イ・ラプセルの騎士様です。あの幽霊船を撃破するとはお見事お見事。
 ええ、インディオの方々ですよね。どうぞ面会して構いませんよ」
『通商連議長』カシミロ・ルンベック(nCL3000024)は自由騎士達を笑顔で出迎える。
「念のためですが、彼らの状況を説明しておきましょう。
 インディオ達は彼らの秘宝である神像を通商連に売り、その対価で彼らの家族を保護するという契約を結んでいます。年数にすれば三年ほど。足りない分は預かった方々の労働奉仕という形で賄っている形ですな」
 三年の安全。管理国家パノプティコンから完全に隔離された状況を三年維持。それを高いと取るか安いと取るかは人それぞれだろう。
「生活形式は原始的で、蒸気機関に頼らない生活をしています。主食は肉とトウモロコシ。自然の恩恵に感謝する部族のようですね。
 そして彼らは『精霊』と呼ばれる独特の信仰を持っています。イ・ラプセルのアクアディーネ様のような実在する神ではなく、幻想種に似た目に見えない存在を崇め、それらを使役する『祈祷師』と呼ばれる者がいるようです。――もっとも、ほとんどはそういった術を持たず、ただ『精霊』を崇めるだけのようですが」
 そんな会話をしながら、大部屋の戸を開くカシミロ。その奥には、三〇人ほどの褐色のノウブルがいた。独特なボディペイントを身に着け、獣の羽根や毛皮を装飾の一部としている。衛生面や栄養面に問題はないのか健康的だが、その表情は敵愾心に似た警戒が深かった。
「彼らには貴方達がイ・ラプセルの騎士であることを伝えてあります。逆に言えば、それ以外は伝えてありません。大国の一つが話に来たのですから、相応に警戒はするでしょうな」
 然もありなん、といった表情でカシミロは頷く。敵対している相手の敵、というのが必ずしも利益を運ぶとは限らない。何より彼らは『犠牲を払って生み出した安全』に踏み込んできたのだ。警戒しないわけがない。
「あのひとだあれ? あたらしいつーしょーれんのひと?」
 中には事情をよく理解していない子供もいるが、それはともかく。
「言うまでもありませんが、見張らせていただきますよ。貴方達を信用していないわけではありませんが、彼らを『保護』するのはお仕事なので」
 カシミロを始めとした通商連の者達は、少し離れた場所から見守っていた。通商連は何時だって中立だ。自由騎士の行動に口を出すつもりはないが、インディオの家族に危害を加えようとするなら、止めにかかるつもりのようだ。
 普通に交流を仕掛けるもよし。インディオの秘密を聞くもよし。勿論本来の目的である政治的な交渉を試みるもよし。
 自由騎士達はインディオと何を話すのだろうか?




†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
イベントシナリオ
シナリオカテゴリー
交渉
担当ST
どくどく
■成功条件
1.インディオ達と話す
 どくどくです。
 トップ画像はインディオのイメージ画像です。彼女(王族1734)がこのシナリオにいるわけではありません。

●説明っ!
 OPでも語っていますが、パノプティコン攻略のために反パノプティコン団体のインディオを使うことになりました。その為の交渉です。
 ジョン・コーリナーの案は『彼らを人質に取る』事です。その為には『通商連からインディオの家族を引き取り』『家族を人質に取った証(髪の毛などの身体部位の一部)』をもっていって脅迫する形です。ジョン曰く『そうすれば確実にインディオは命を賭けて戦ってくれます』とのことです。
 勿論、それに沿わなくても構いません。ですがインディオの家族との交渉はこの一度きりだと思ってください。何も持たずにパノプティコンで戦うインディオの元に向かっても、相手にされないでしょう。
 このシナリオで何を得るのか。それが大事になります。それが『人質』なのか『信頼』なのか、それによりパノプティコンでのインディオとの交渉の内容が変わってきます。ぶっちゃけると、交渉の内容と難易度が変わるだけで『人質』を絶対にとらないといけないわけではありません。
 全員で意見を統一してもいいですし、個人個人で歓談しても構いません。どくどくはその結果をもとに、次のシナリオを書くだけです。 

●登場人物
・イクバヤ
 ノウブル男性。一九八歳。族長的存在です。年老いて座り込んでいますが、血色は健康そのものです。インディオの歴史に詳しく、『精霊』は扱えませんが知識は深いようです。
 イ・ラプセルに対する態度は『普通』です。
「良く来なすった、旅人よ。とはいえ、ワシらの家ではないがな」
「悪いが何も与えられんよ? 精々タバコぐらいだ」

・クワニャウマ
 ノウブル女性。30歳。部族の女性代表です。14名の子供を世話しています。戦士としての心得はありますが、自由騎士に適う程ではありません。インディオの人間関係に詳しく、『精霊』は扱えないようです。
 イ・ラプセルに対する態度は『険悪』です。
「……何の用だ? こちらから話すことなど何もない」
「子供達に手を出すな。戦争に巻き込むつもりなら、容赦はしない」

・ニダウィー
 ノウブル女性。12歳。部族の子供の中で一番の年長。世情を知らず、自由騎士も通商連も区別がついていません。僅かですが『精霊』を扱うことが出来るようです。
 イ・ラプセルに対する態度は『無警戒』です。
「ねえねえ、きしってどんなことするの?」
「いつになったらおうちにかえれるのかなぁ? おしえて」

・カシミロ・ルンベック
 通商連議長。詳細はステータスシート参照。数名の護衛を伴っています。
 インディオとの交渉には口を出しません。交渉の枠を逸脱しそうなら止めに入ります。
 通商連からインディオを引き取ろうとするなら、カシミロとの交渉になります。その場合第一声は、『そうですねぇ……。マキナ=ギアの技術をこちらに提供して頂けるなら喜んで』……という事になります。
 交渉で得た技術と商品は、ヴィスマルクやパノプティコンにに高く売りつけるつもりでしょう。その事を考慮したうえでお話しください。

●場所情報
 通商連所有の船。その大部屋。テーブルや椅子などはありますが、インディオ達は床に座って生活するスタイルなので使っていません。飲み物や食べ物なども通商連が用意してきます。
 インディオの人数は『族長:1 成人女性:10 子供(男女混合 全員15歳以下):15』です。参考までに。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
0個  0個  2個  2個
9モル 
参加費
50LP
相談日数
6日
参加人数
17/∞
公開日
2020年07月03日

†メイン参加者 17人†

『望郷のミンネザング』
キリ・カーレント(CL3000547)
『神落とす北風』
ジーニー・レイン(CL3000647)



 インディオについて、自由騎士が解っていることは多くはない。
 水鏡の情報で彼らの行動を知ってはいるが、それはただの『情報』でしかない。知識として彼らの断片を見聞きしているだけで、インディオという部族に接するのはこれが初めてになる。
 インディオが如何なる部族で、如何なる生活をし、如何なる価値観を持ち、そして如何なる思いをイ・ラプセルに抱くのか。これはそれを知る機会でもあった。そして互いを知る事こそが、交渉の第一歩となる――


「初めまして、イクバヤさん。キリの故郷についてお尋ねしたいの」
『戦塵を阻む』キリ・カーレント(CL3000547)はそう言って話を切り出す。キリの記憶にある故郷。炎に燃やされたプレール村。……今は『墓地4133』とパノプティコンに呼ばれる大地。かつてそこに住んでいたことをキリは告げる。
「そうか。あの村の生き残り……。アナ以外にも生きておる者がおったのか」
「アナ?」
「パノプティコンがあの村を攻めた時、村に残って最後まで抵抗した戦士だ。その能力を買われたのか連れ去られたよ」
 パノプティコンに連れ去られたインディオ。キリの脳裏に該当する人物が一人いた。
「『王族1734』さん……?」
「プレールのあった場所は教えよう。だが既に村の痕跡はないだろうな」
 キリの問いに頷くイクバヤ。そしてかつてプレールという村があった場所を教えてもらう。そこに向かうか否かはキリ次第だ。
「イクバヤさん。インディオの話を聞かせてください」
 セーイ・キャトル(CL3000639)は族長的立場のイクバヤに話しかける。実のところ、『パノプティコンを侵略するために協力してくれ』と言い切れない消極的な選択でもあった。だがそれが悪手というわけではない。相手を知ることは交渉において重要なことだからだ。
「硬くなるな、旅人よ。知識の量でいえばそちらの方が多い。むしろこちらは旅の話を知りたいぐらいだ」
 そんなセーイの緊張をほぐすようにイクバヤは話しかける。
「しかし話か。そうだな……我らの祖先が飢餓に襲われた時、鯨を運んできた雷鳥の話で良ければ」
「おお、なんかすごいですね。どんな話なんですか?」
 頷きながらインディオの伝承に耳を傾けるセーイ。
「それも『精霊』なんだ。色々いるんだねー」
 イクバヤからもらった煙草を指先で回転させながら『トリックスター・キラー』クイニィー・アルジェント(CL3000178)は頷いた。『祈祷師』と呼ばれるものは煙草を嗜むと言われてもらったが、絶対というわけでもないらしい。
「あたしたちは目に見える神サマを信仰しているけど、精霊は見える人と見えない人がいる……それはどうしてなんだろう? その差はなんなんだと思う?」
「神像に触れたか否か、だな。ああ、『神』と言っても旅人達のいう神サマではない。力在る精霊を尊ぶために『神』と称しているだけだ」
 クイニィーの問いに答えるイクバヤ。
「各部族にあった神像……それに触れて精霊に好かれた者がその力を使うことが出来る。……もっとも、その像は今ここにはないがな」
 成程、通商連に売ったって言われているあの像か。その後もクイニィーは精霊に関するエピソードなどを聞いていた。
「その精霊を扱うことが、インディオの戦い方なんですか?」
 気を見計らって挨拶を終えた後に『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は話を切り出す。
「精霊の力を借りることもあるが、基本は武器による攻撃だ。精霊を人間の戦いに巻き込むことはしない」
「巻き込む? ……成程、そういう考え方なのね」
 インディオにとって『精霊』は魔法による術ではなく、親しい隣人なのだ。故に積極的に『祈祷』に頼ることはしない。
「という事は自然に隠れたゲリラ戦が基本になるわね。武器による奇襲が容易な場所……そういう地形を探れば」
「アタパカに会うつもりか? 旅人よ」
「ええ。あの子達を孤児になんかさせない。その為に私は戦うのよ」
 かつて孤児であったエルシーは、一点の濁りもなくそう言い放つ。
「……そうか。そうだな。あの子達に故郷の大地を教えなければならぬか。
 ならば南方にある火を噴く山から回るがいい。パノプティコンの蒸気を吐く鳥もあそこには立ち入れんからな」
「故郷。それが貴方達の望みなのですね」
 無礼にならないように注意しながら『重縛公』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)が話に割って入る。
「家のある旅人には分からぬ苦労かもしれぬ。ここの生活に不満はないが、それでもあの大地を求める気持ちがあるのは否めない。アタパカ達もそれを目的に戦っておる」
「……我々はパノプティコンと対します。インディオの方々にその助力を願いに来ました」
 誰かが言わなければならない。ならばその役目は自分だろうと意を決してテオドールは口を開く。
「苦戦は強いられるでしょう。死者が出ぬとは約束できません。
 しかし互いに手を取る事は可能でし――」
「それでは支配する者がパノプティコンからイ・ラプセルに変わるだけだ」
 テオドールの言葉を遮って、イクバヤが口を開く。
「そのようなことは――」
 訂正しようとして、テオドールは口ごもる。戦争とは金がかかる。そしてその代価となるのが土地や人間だ。それを奪わないのなら、国として大損になる。
(自由騎士を納得させることは難しくない。だが他の騎士や貴族達を納得させるには……)
 戦争による『利益』がなければ、国益が損なわれる。そうなれば騎士や貴族は干上がってしまうのだ。それを納得させるには相応の代価と根回しが必要だろう。そして二国同時戦略という切羽詰まった状況で、そんな余裕と資源を短時間で捻出する事は不可能だ。
(名目上はイ・ラプセルが土地を所有することにして、インディオ達に開放する……駄目だな。事情を知らぬか察した貴族達が『名目』を悪用しかねない。彼らに政治の矛先を向けさせないためには、完全に彼らに土地を開放せねばならないわけか。
 土地そのものを国にとって『無価値』と思わせるか、インディオの自由を認めることで益を生むようにするか……)
 テオドールは眉にしわを寄せ、思考する。貴族同志の政治的な戦い。同じ国益を望む味方の中の違う意見。これが一番厄介なのだと、テオドールは実感していた。


「それでカシミロ様は何が本命なんだ?」
『海蛇を討ちし者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は通商連のカシミロにそう言い放つ。
「『無理難題を出して、その後に本命を出す』……商売の基本だな。最初に無茶を言えば、その後の条件が幾分マシに見えて受け入れやすくなる。そういうやり方なんだろう?」
 ウェルスは商人としてカシミロのやり方を見抜いていた。他に買いたいものがあるから『マキナ=ギア』という無茶を言ったのだ、と。
「そういう意図があるのも事実ですが、マキナ=ギアを世に広めたいのも事実ですよ」
「は? そんな事すれば戦争がさらに陰湿になるぞ」
 情報伝達速度を加速させれば、その分スパイ活動も加速する。それが分からないカシミロではないはずだ。
「そうですね。ですが戦争以外の分野で助かる人も増えます」
 だが情報伝達の加速が求められるのは戦争だけではない。流通、教育、その他さまざまな面でそれにより助かる人は増えるのだ。そしてそれは商売のチャンスとなる。
「それに情報伝達が進めば戦争は早く終わるでしょう。誰が勝とうが通商連としては構わないのです。貴方達とてヴィスマルクとパノプティコンが衝突し、どちらかが滅びてくれれば楽だとは思いませんか? 自分達には無関係ですからね。
 そうそう、マキナ=ギアが無理なら踊りの技術と剣に魔力を込めて戦う戦闘方を教えてもらえませんか? あれなら高く売れそうですので」
 カシミロの要求に、少し考えさせてくれ、と保留の言葉を返すウェルス。一筋縄ではいかないな、と心の中で苦笑していた。


「こんにちは! 警戒されるのも当然だと思います」
『愛の盾』デボラ・ディートヘルム(CL3000511)は挨拶の後にそう告げる。警戒心を顕わにするクワニャウマ。彼女が自分達を警戒する理由を十分理解している。
「なので私達がどういう人物なのかを理解してもらいたいです。あ、クワニャウマ様はお耳を傾けているだけで結構ですよ」
 デボラは自分達の人物を知ってもらいたく、世間話を開始する。生活や世情などの共通の話題から会話の取っ掛かりを作ろうという魂胆だ。勿論、純粋に仲良くなりたいという意図もある。
「聞いて下さいよ。この前、お父様に怒られてしまいまして。やれ、帰りが遅いだの。もっとお淑やかにしてほしいだの。
 騎士として戦う皆様の力添えをしている以上、怪我やそんな事は日常茶飯事だというのに」
「貴方達の羽根飾り、とても素敵ね」
『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は相手の衣装を誉める所から会話を始める。衣食住は文化の基本。彼らの文化に触れるには最適の一手だろう。帽子職人の感性が刺激された、というのもあるが。
「今日はお近付きの印にプレゼントを持ってきたの。
 ぜひ被って欲しいの! ちょっとだけ、ちょっとだけでもいいから……!」
 アンネリーザの勢いに押される形でインディオの女性達はアンネリーザの作った帽子をかぶる。褐色の肌に合わせた黄色の帽子。それはアンネリーザの想像通り、非常に映えるものとなった。
「通商連は安全だけど、ずっと籠ってばかりだと息がつまるでしょう? こういうおしゃれも楽しまないと」
「突然現れて、信頼してください……というのも無理な話なのは理解しています」
 言って軽く首を垂れる『救済の聖女』アンジェリカ・フォン・ヴァレンタイン(CL3000505)。クワニャウマの疑惑の視線が突き刺さるのを感じながら、言葉を続ける。
「私達はこれからパノプティコンと戦います。その為には貴方達インディオのお力が必要なのです。貴方達に危害を加えるつもりは――」
「矛盾しているわよ。戦争に巻き込むくせに、危害を加えない? 国同士の戦いに巻き込まれた時点で十分危害なのよ」
 アンジェリカの言葉に言葉を返すクワニャウマ。
「貴方達がアタパカ様を捨て駒にしない保証がどこにあるの? その戦いで貴方達が負ければ、国の矛先は私達の部族に向くのよ。最悪、通商連を通して私達に。子供達に! それを貴方達の都合で受け入れろと?」
 インディオの立場は現状ただの『パノプティコンに対する反抗勢力』だ。それが他国の力を借りたとなれば、もはや看過はできないだろう。明確な他国からの侵略なのだ。滅ぼすのに躊躇はしないだろう。それこそ、ここに居る人達を人質にして。
「そっか、戦争だもんな。戦う人だけが傷つくなんて甘いよな……」
 クワニャウマの言葉に『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)は暗い表情をする。これは戦争なのだ。この大陸に住む者全てが当事者で、誰かを巻き込まないなんてことはありえない。
「でもこれだけは言わせてください! オレたちは今、パノプティコンの地で戦っている人たちを捨て駒なんかにしない! 共に戦う『仲間』として戦いたいんだ! 『未来』の為に!」
「未来?」
「そうだ! 今ここに居る子供達が笑って過ごせる未来のために今戦わないといけないんだ! 今のままじゃ、その未来はない。オレたちにも、子供達にも!」
 ナバルは『虚無の未来』を含めてそう告げる。もっともそれはクワニャウマ二は理解できない事だが、
「……そんなことは、解っているわよ……!」
 子供を軸とした説得は、母親であるクワニャウマに突き刺さる。ナバル自身は意図していなかったが、見事に相手の弱点を突いた一言だった。
「始めまして……話し、たく……ないに、なってる……なら、話さなくても……いい……」
 途切れ途切れにノーヴェ・キャトル(CL3000638)は告げる。喋るのは得意ではないが、それでも告げなければならないことがあるとインディオ達の前に立った。
「私、は……ヒトを守る……役目……。ヒトを、皆……全部を『あたたかい』……に、したい……から、戦ってる……」
 ノーヴェの言う『あたたかい』は落ち着く気分、幸せな気持ちといった意味合いだ。その事を説明する双子の片割れは今ここにはいないが。
「私、は……つめたい…ひとりぼっち……の…おひめ、さ、ま……を助ける……の」
「おひめさま……アナの事か」
 アナ――『王族1734』とパノプティコンでナンバリングされた元インディオの戦士。
「おひめ、さま……も……クワニャウマ……も……私、と同じ……。『あたたかい』を、守ってる……から」
 だから、助ける。大事な何かを守ろうとする者を見捨てることはできないから。


「これはただの質問だ。私に決定権とかないからな。純粋な興味からの問いだ」
『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)はそう前を期して、カシミロに問いかける。
「インディオ達から買った神像は売り物として残っているのか。あるならばその基本価格は如何程だ?」
「ほう」
 カシミロは感服の声をあげる。まさかそう来るとは思ってなかった……というよりは、この状況で神像に食らいつく者がいるとは、という声だ。
「ええ、売り物としては残っています。値段は……そうですね、我々の部隊をそちらでも雇用して頂くというのはどうでしょうか?
 インディオは家族を預けました。ならばこちらも人を預けるという事で」
 無論、国としてはそれなりの負担を強いることになる。通商連に年間レベルで雇用費を渡すことになるのだから。
「しかし予想外ですな。貴方達は如何にインディオを戦争に参加させるかに興味があると思っていました。なのに神像に興味を持たれるとは」
「一般論だが『犠牲』何ざ、無くせるなら無くすのが一番良いに決まっとろうよ。それを難しくしているのは立場や種族や文化だ。そこを無視して解決などできんよ」
 ため息とともにツボミが言葉を放つ。口惜しいが、世の中は単純ではなく、楽園はこの世にない。それでもヒトは生きていくのだ。
「それで、どうされます? あの像はブル族の宝。取り返すことが出来れば、現地で戦うインディオ達を平伏させるのに、最も効果的でしょう。
 こちらとしても、戦争などと言うコストパフォーマンスの悪いイベントは早々に終わらせるに越したことはありませんからね」


(イ、インディオの人達を人質にはしたくないですけど、どんな人達なのか知るのは大切だと思うんです)
『その瞳は前を見つめて』ティルダ・クシュ・サルメンハーラ(CL3000580)の想いは、ここに集まった自由騎士の思いでもあった。ただ今のままだと、そうしなければパノプティコンに居るインディオ達と共闘することは難しい。
「はい。出来れば仲良くなりたいです。わたしに出来る事は――」
 そんな想いからティルダは様々なアクセサリーを用意する。細工師であるティルダが出来る事。そこから仲良くなろうと。
「そう言えば、羽根や木や革を使った装飾が多いのですけど、そういうのが好きなんですか?」
「んとね。精霊がやどってるの!」
 ニダウィーの話によると、そういった自然物は精霊の力を宿しており、力を借りる媒体となるという。マジックスタッフみたいなものだろうか? ヨウセイとは違う自然信仰な文化だ。
「それじゃあ、この革にビーズをつけますね」
「わー。きれーい」
 初めて見るビーズに、ニダウィーの目は輝いていた。
「初めまして。僕はアダム・クランプトン、騎士の一人さ」
 膝を曲げてニダウィーを目線を合わせ、『朽ちぬ信念』アダム・クランプトン(CL3000185)は口を開く。相手は子供だが、だからといって軽視はしない。一人の人間として礼儀を尽くし、相対する。それがアダムの信念でもあった。
「きし?」
「そうだね。本来は『軍人』という意味を持つのだけど、僕は『弱きを助け、強きを挫く者』だと考えているよ」
『騎士』も様々だ。シャンバラのように神に尽くす騎士もいれば、ヴィスマルクやヘルメリアのように軍人色が強い騎士もある。だがアダムは自分なりの騎士の定義を告げる。それがどれだけ困難であっても――
「もし君が助けて欲しいと願った時は僕の名を呼んでごらん。どこへだろうと、騎士アダムが貴女を救いに馳せ参じるさ」
 騎士の誓い。勿論、ニダウィーに危機が訪れない方がいいに決まっている。だが、もし彼女に危機が迫るなら白銀の腕が彼女を守るだろう。
「よー、遊ぼうぜー」
『帰ってきた工作兵』ニコラス・モラル(CL3000453)はニダウィーに声をかける。爺さんとか気難しい女とかに声をかけるより、まだ純真な子供の方がましだ、という逃げ腰的理由である。無理して心を折るよりは健全ではあるのは事実だ。
「親父さんはニダウィーとどんな風に遊んでくれてたんだ?」
「んとねー、かげふみ!」
「影踏みか。そういう所はあんま変わらんのな」
 うんうんと頷くニコラス。子供の遊びは基本的に変わらない。
「かげをふまれると、ウェンディゴにとりつかれちゃうの!」
「まあ、地方によっていろいろ違いはあるわな。ウェンディゴって精霊か?」
「うん! ふゆになると『あいつを殺せ』ってはなしかけてくるの」
「……そいつは大変だ。精霊っていいヤツばかりじゃないんだな」
 苦笑するニコラス。そんな精霊を束ねるのが『祈祷師』なのだろう。
「お父さん、て言うのはアタパカなのか?」
 遊びがひと段落した状態で『砂塵の戦鬼』ジーニー・レイン(CL3000647)が話しかける。風の精霊とインディオ部族の子供。その母親はパノプティコンに下ったが、ジーニー自身はマザリモノの差別を受けることを恐れて逃がされた。
「アタパカはみんなのおとうさんなの」
 部族全員が家族、という考えなのだろう。血縁関係云々を問いつもりもないのでジーニーはそれ以上を問わないでいた。
「おねえちゃん、ヤ=オ=ガーのにおいがする」
 ジーニーに近づいてきたニダウィーがそう言葉を放つ。
「ヤ=オ=ガー?」
「きたかぜの精霊だよ。すっごくつよくて、さむいかぜをはこんできてくれるんだ」
「へえ……どんな姿をしているか、教えてくれないかな?」
 優しく語りかける『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)。子供の目線、子供の歩幅、子供の感性。それに合わせる事を意識しながらマグノリアは話をする。ニダウィーの身振り手振りを鷹揚に筆を動かし、精霊の絵を描く。
「……熊みたいだね」
「うん。くま!」
 マグノリアの書いた精霊の絵は、クマに似ていた。ニダウィーも両手をあげてクマと叫ぶ。精霊が自然の力を司る幻想種であるのなら、その姿が大自然にある者と似るのは当然の流れなのだろうか。少しばかり興味がわいた。
「でも今日は……一緒にあそぼうか」
「うん!」
 微笑み頷くニダウィー。その笑みは何処にでもいる子供そのものだった。


 会見が終わり、自由騎士達は別室で話し合う。
「インディオ達の戦う目的は、故郷……パノプティコンに奪われた土地への帰還だ。
 極論を言えば、パノプティコン打倒はその手段だ。それさえ適えばどの国が勝っても構わないのだろう」
 大前提として、インディオがパノプティコンに反する理由はそれだ。そこをはき違えれば、現地のインディオの交渉に致命的なズレが生じるだろう。
「つまりイ・ラプセルがパノプティコンに勝利しても、『支配者が変わるだけ』と受け入れないのだろう。彼らに対し『土地を開放する』という盟約をつけなければならない」
 戦争に勝って、土地を得ない。それは借金をして商売をして、その利益を他人にあげることに等しい。国は慈善企業ではない。自由騎士達がそれでよくとも、財務を司る貴族や国益からお金を貰う騎士や役人たちは絶対に納得しないだろう。
「面倒な問題だが、解決策は二つある。『インディオの土地に価値はない』と言う証拠を出すか『インディオ達の自由を認めることで価値を生む』かだ」
 これはもう現地の情報を得ないと何とも言えないことだ。パノプティコンに奪われた土地が今どうなっているのか。それを知らない事には手の打ちようがない。
「現地のインディオに接触するなら、彼らが売った神像を持っていくとある程度の信頼は得られそうだぞ。家族の無事を通商連保護で保証しつつ、同時に彼らの秘宝を返す。安い買い物ではないが……」
 現地のインディオ達の信頼を得る方法が分かったのは大きい。通商連に足元を見られそうな取引だが、家族の安全を保障したうえで彼らとの架け橋となるアイテムがある。それが分かったのは大きな進展だ。
「パノプティコンに居るインディオへの接触方法だけど、蒸気ドローンの監視を逃れるルートがあるわ」
 パノプティコン南部にある火山帯。そこには流石に蒸気ドローンも飛んでこないという。安全とは言えないルートだが、パノプティコンに見つからないのは大きい。 

 そういった情報の他にも、色々得られたことはある。精霊のこと、インディオの文化のこと、そして彼らからの会話から得られた反応と信頼。
 時間にすれば二時間あまり。短いようで、しかし確かな交流。

 その成果を元に、自由騎士達はどう行動するのだろうか。
 それは水鏡ですら見えない未来の話――



†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
異文化コミュニケーションお疲れさまでした。

『神像』を通商連から購入したい場合、ブレインストーミングに【神像購入】と冒頭に書いて発言してください。同タグが5個集まれば、購入のシナリオが発生します。

またインディオの身柄を『マキナ=ギア』もしくは『ダンサーと魔剣士のスキル』の伝承することで引き取りたい場合、【インディオ引取】と冒頭に書いて発言してください。同タグが5つ集まれば、引取のシナリオが発生します。

いずれにおいても、期間は7月末日までとします。

MVPは交渉の要所を抑えた御三方に。まるまる一話分かっ飛ばされた感じです。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済