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Question? 我が問いに答えよ人間

●問う幻想種
「ミーの名前は『ネズミ公爵』ノーマン・B・ウィスター!
この度『生体エンジン』によって起動するラーケン三十八号にて、自由騎士団にリベンジを果たすべく進行中デース!」
大量のネズミが回す歯車を動力にして動く大きさ三メートルのボートっぽい何かがイ・ラプセル近郊の海を渡っていた。ボートの先端には鋭い衝角がついており、近くのレバーを倒すことで射出できる形式になっていた。
「イ・ラプセル近郊の島を占拠し、そこを拠点として海路を妨害するのデース! 具体的には匂いがきつくて落ちにくい染料を飛ばしてやりマース!」
等と言いながら目星をつけていた島に向かうボート。しかしそこには先客がいた。ライオンの胴体と人の顔をもった生物――スフィンクスと呼ばれる幻想種である。
「コラー! そこはミーが先に目を付けた島デス! とっとと退くがユーのためデスヨ!」
「断わる。ここは幾多の船が通る狩場。手放すには惜しい。場を欲するなら挑むがいい。
その前に問おう――」
ウィスター公爵はスフィンクスの性質を知っていた。戦う前に相手に問いかけをし、その問いに間違えた者を喰らい、正しく答えるとダメージを受けるのだ。
(そして博識のミーはその問いの答えを知っている。『人間』だ! そう答えて弱まったところをこのラーケン三十八号でぶっ叩くのがベスト!)
「カモン! どんな問いでもアンサーしてやるデース!」
「GoldはあってSilverにない。TreeはあってFlowerにはない。FireはあってLightにはない。
Wind、Sun、Moon。それぞれにあるやなしや、如何に」
「人間人間ニンゲーン……へ?」
「不正解。出直してまいれ!」
「ライトニーング!? ……い、いまのでラーケン三十八号に穴が!? ふ、たまにはホリデーに勤しむのも悪くないデス! それではこれにて!」
言って踵を返すなんとか公爵さんでしたとさ。
問題は、これでめでたしめでたしと行かないことである。
●イ・ラプセル
「そのスフィンクスがイ・ラプセルに近づく船を攻撃してくるの」
『マーチャント』ミズーリ・メイヴェン(nCL3000010)は集まった自由騎士達に説明を開始する。
「遠距離から魔法を撃ち、足が遅くなった船から人を攫っていくのよ。伝承の通り問いかけはするようだけど……」
暗澹としたミズーリの表情が攫われた人達がどうなったかを示していた。
「スフィンクスは戦いの前に問いかけをするの。その問いに間違えた人は問答無用でダメージをくらうの。でも正解すればスフィンクス自身がダメージを受けて弱体化するわ。
勿論、答えずに攻撃してもいいの。どうするかは任せるわ」
弱体化を狙って問いかけに応えてもいいし、問答無用で殴りかかってもいい。間違えた者はダメージを受けるので、その辺りは自己判断だろう。
「島までは船を出すわ。傲慢な幻想種を倒してきてね」
ミズーリの言葉に頷き、自由騎士達は船に乗り込んだ。
「ミーの名前は『ネズミ公爵』ノーマン・B・ウィスター!
この度『生体エンジン』によって起動するラーケン三十八号にて、自由騎士団にリベンジを果たすべく進行中デース!」
大量のネズミが回す歯車を動力にして動く大きさ三メートルのボートっぽい何かがイ・ラプセル近郊の海を渡っていた。ボートの先端には鋭い衝角がついており、近くのレバーを倒すことで射出できる形式になっていた。
「イ・ラプセル近郊の島を占拠し、そこを拠点として海路を妨害するのデース! 具体的には匂いがきつくて落ちにくい染料を飛ばしてやりマース!」
等と言いながら目星をつけていた島に向かうボート。しかしそこには先客がいた。ライオンの胴体と人の顔をもった生物――スフィンクスと呼ばれる幻想種である。
「コラー! そこはミーが先に目を付けた島デス! とっとと退くがユーのためデスヨ!」
「断わる。ここは幾多の船が通る狩場。手放すには惜しい。場を欲するなら挑むがいい。
その前に問おう――」
ウィスター公爵はスフィンクスの性質を知っていた。戦う前に相手に問いかけをし、その問いに間違えた者を喰らい、正しく答えるとダメージを受けるのだ。
(そして博識のミーはその問いの答えを知っている。『人間』だ! そう答えて弱まったところをこのラーケン三十八号でぶっ叩くのがベスト!)
「カモン! どんな問いでもアンサーしてやるデース!」
「GoldはあってSilverにない。TreeはあってFlowerにはない。FireはあってLightにはない。
Wind、Sun、Moon。それぞれにあるやなしや、如何に」
「人間人間ニンゲーン……へ?」
「不正解。出直してまいれ!」
「ライトニーング!? ……い、いまのでラーケン三十八号に穴が!? ふ、たまにはホリデーに勤しむのも悪くないデス! それではこれにて!」
言って踵を返すなんとか公爵さんでしたとさ。
問題は、これでめでたしめでたしと行かないことである。
●イ・ラプセル
「そのスフィンクスがイ・ラプセルに近づく船を攻撃してくるの」
『マーチャント』ミズーリ・メイヴェン(nCL3000010)は集まった自由騎士達に説明を開始する。
「遠距離から魔法を撃ち、足が遅くなった船から人を攫っていくのよ。伝承の通り問いかけはするようだけど……」
暗澹としたミズーリの表情が攫われた人達がどうなったかを示していた。
「スフィンクスは戦いの前に問いかけをするの。その問いに間違えた人は問答無用でダメージをくらうの。でも正解すればスフィンクス自身がダメージを受けて弱体化するわ。
勿論、答えずに攻撃してもいいの。どうするかは任せるわ」
弱体化を狙って問いかけに応えてもいいし、問答無用で殴りかかってもいい。間違えた者はダメージを受けるので、その辺りは自己判断だろう。
「島までは船を出すわ。傲慢な幻想種を倒してきてね」
ミズーリの言葉に頷き、自由騎士達は船に乗り込んだ。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.スフィンクスの打破
どくどくです。
貴方は問題に答えてもいい。答えなくてもいい。
●敵情報
・スフィンクス(×1)
幻想種。人間の顔にライオンの身体を持っています。大きさは4メートルほど。島までは魔法で移動してきたとか。基本的に人を襲う悪い幻想種です。
戦う前に問いかけをし、正しく答えられると弱体化します。具体的には最大HPの減少とスキルが一部使えなくなります。ただし、質問に間違えると防御無視のダメージを受けます。質問には答えなくても構いません。
攻撃方法
噛みつく 攻近単 大きな口で噛みついてきます。【スクラッチ1】
引っ掻く 攻近範 巨大なライオンの前足で引っ掻きます。
青の魔眼 魔遠単 呪いの魔眼で睨みます。【カース1】
自然同化 魔遠味単 大気の魔力を吸い、体力を回復します。
※これ以降の攻撃方法は『問いかけに正解すると使用不可』になります。
死を見る瞳 魔遠範 対象の『死相』を操作します。【必殺】
再問いかけ 魔遠全 新たに問いかけ、頭を混乱させます。【ピヨ】【ダメージ0】
王獣の威光 P 獣の王のオーラを持っています。ノウブル、キジン以外に対するダメージ増加。
●問いかけ
「GoldはあってSilverにない。TreeはあってFlowerにはない。FireはあってLightにはない。
Wind、Sun、Moon。それぞれにあるやなしや、如何に」
それぞれの単語はある法則性に従い、『ある』と『なし』に分かれています。
Wind、Sun、Moonのそれぞれに対し『ある』と『なし』を割り振ってください。
例「三つとも『あり』だ!」「WindとMoonは『あり』で、Sunは『なし』です」等。
問いに答えるチャンスは『戦闘開始直前』の一度だけ。誰か一人でも正解すれば、スフィンクスは弱体化します。逆に正解者が多くても、弱体の度合いは変わりません。
●場所情報
イ・ラプセル近郊の小島。五分もあれば島を一周できるほど小さな島です。スフィンクスの居場所はすぐにわかります。島までは何の問題もなくたどり着けます。
時刻は昼。足場や広さは戦闘に支障なし。
戦闘開始時、敵前衛に『スフィンクス(×1)』がいます。
事前付与は一度だけ可能です。ホムンクルスも作成可能です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
貴方は問題に答えてもいい。答えなくてもいい。
●敵情報
・スフィンクス(×1)
幻想種。人間の顔にライオンの身体を持っています。大きさは4メートルほど。島までは魔法で移動してきたとか。基本的に人を襲う悪い幻想種です。
戦う前に問いかけをし、正しく答えられると弱体化します。具体的には最大HPの減少とスキルが一部使えなくなります。ただし、質問に間違えると防御無視のダメージを受けます。質問には答えなくても構いません。
攻撃方法
噛みつく 攻近単 大きな口で噛みついてきます。【スクラッチ1】
引っ掻く 攻近範 巨大なライオンの前足で引っ掻きます。
青の魔眼 魔遠単 呪いの魔眼で睨みます。【カース1】
自然同化 魔遠味単 大気の魔力を吸い、体力を回復します。
※これ以降の攻撃方法は『問いかけに正解すると使用不可』になります。
死を見る瞳 魔遠範 対象の『死相』を操作します。【必殺】
再問いかけ 魔遠全 新たに問いかけ、頭を混乱させます。【ピヨ】【ダメージ0】
王獣の威光 P 獣の王のオーラを持っています。ノウブル、キジン以外に対するダメージ増加。
●問いかけ
「GoldはあってSilverにない。TreeはあってFlowerにはない。FireはあってLightにはない。
Wind、Sun、Moon。それぞれにあるやなしや、如何に」
それぞれの単語はある法則性に従い、『ある』と『なし』に分かれています。
Wind、Sun、Moonのそれぞれに対し『ある』と『なし』を割り振ってください。
例「三つとも『あり』だ!」「WindとMoonは『あり』で、Sunは『なし』です」等。
問いに答えるチャンスは『戦闘開始直前』の一度だけ。誰か一人でも正解すれば、スフィンクスは弱体化します。逆に正解者が多くても、弱体の度合いは変わりません。
●場所情報
イ・ラプセル近郊の小島。五分もあれば島を一周できるほど小さな島です。スフィンクスの居場所はすぐにわかります。島までは何の問題もなくたどり着けます。
時刻は昼。足場や広さは戦闘に支障なし。
戦闘開始時、敵前衛に『スフィンクス(×1)』がいます。
事前付与は一度だけ可能です。ホムンクルスも作成可能です。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
2個
6個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年09月16日
2018年09月16日
†メイン参加者 8人†
●
「はー。確かにライオンの身体に人の顔ですね」
スフィンクスを見上げながら『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は頷く。大きなスフィンクスだと城のような大きさもあるという。それを思えばまだ小柄な方なのだろう。それでも人よりは大きいのだが。
「なぞなぞとか頭良いアピールかよ。わかんねーから任せたぜ!」
堂々とマリア・スティール(CL3000004)は腕を組んで回答を拒否する。下手に応えてダメージを受けるよりはずっといい。それに他の面々はそれぞれ分かったような表情をしている。ここは何もしないのが最良だろう。
「まぁ相手も生きるために狩ってるんだ。仕方ないだろうな」
言って頷く『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。だがスフィンクスの蛮行を擁護するつもりはない。狩るということ狩られることも考慮しなくてはいけない。それを教える為に武器を手にする。
「普通に害獣だし。駆除一択だなー」
にべもなく言い放つ『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。出生の関係上、言葉を喋る獣系の幻想種と言うのには興味がある。だが所業を考えれば交渉になるはずもない。人を喰らう獣など、即刻排除するに限る。
「問いかけを行ってくるのは『人間ごときに私の問題がわかるわけあるまい』という傲慢によるものなのでしょうか……?」
首をひねり考える『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)。襲う前にワンクッションおいて問いかける性質。そこにどんな理由があるかは本人にしかわからない。あるいは本人さえも何故そうするかが分かっていないこともある。人の理解が及ばぬのが幻想種か。
「売られた喧嘩は買うのが! わたくしの美学! ですわ!」
言葉毎にポーズを決めて『命短し恋せよ乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)は胸を張る。相手の流儀に合わせ、正々堂々と打ち勝つ。それが騎士の本懐であり、ジュリエットの美学でもある。
「スフィンクスって砂漠にいる印象だけど、こんな所にまで出張してくるんだね。暇なのかな?」
指を顎に当てて考える『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。砂漠から離れたイ・ラプセルに飛んできて狩りをするスフィンクス。どんな事情があるのかは解らないが、このまま放置するわけにもいかない。先ずはきっちり撃退しなくては。
「おそらくパノプティコンの砂漠地帯の出身でしょうね。言葉通じないから退屈だったのでしょう」
推測を述べる『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)。大陸共通語が通じないパノプティコンで謎かけをしても、帰ってくるのは意味不明な言葉のみ。あまり面白くないだろうことは想像に難くない。
「我を阻むか人間。では問おう――」
言って問いかけをするスフィンクス。自由騎士達はその問いを受け、
「Windは『なし』、SunとMoonは『ある』です」
「英語をそのまま漢字に変換すれば一発だよね」
「金曜日はあるけど銀曜日は無い。木曜日はあるけど花曜日は無い。火曜日はあるけど光曜日は無い」
「即ちこの謎掛けの答えは『曜日』です」
「ウゴゴゴゴゴゴ……正解だ!」
自由騎士達に正解されて崩れ落ちるスフィンクス。そしてそういうルールの結界を張っていたのか、スフィンクス自身に稲妻が落ちた。
「正直なところ拍子抜けでしたね、もっと難問がくるかと思ったんですが」
「様々な国の者が通り得る海路で特定の文化通念を前提とした謎掛けとは姑息だな? 曜日の概念の無い孤島の部族出身者は差別か? しかも言語まで変えてやんわり攪乱とはセコい。コスい。程度が低い。王獣スフィンクスの名が大号泣だ。今からでもイジワル問題オジサンに改名しては如何か?」
追い打ちをかける自由騎士達。しかしスフィ……イジワル問題オジサンはまだ倒れたわけではない。弱体化したまま、襲い掛かってくる。
イ・ラプセルの航路を守るため、自由騎士達は武器を構える。
●
「行きましょう。一気呵成に叩き込みます」
一番槍を取ったのはカスカだ。『逢瀬切乱丸』を抜き、呼吸を整える。肉体の隅々まで空気がいきわたり、活力が増していく。体中に清風が満ちていくイメージ。その風を止めぬように一気に走りスフィンクスに迫る。
身長140センチにも満たないカスカと4メートル近くのスフィンクス。その身長差は三倍ほどだ。しかしカスカはその差に臆することなく踏み込み、刃を振るう。その一閃、一迅の風の如く。風が収まった後、スフィンクスの足が血に染まる。
「運がなかったですね。アマノホカリ出身の私にとって七曜は身近なものでしたよ」
「ええ。この国にもあるようですが私達にとっては日常ですので」
頷くのは同じアマノホカリから移住してきたマリアだ。アマノホカリでは占いなどで七曜を使用することもあり、イ・ラプセルよりも生活に密着している。、魔導士でもありその知識を求めるマリアからすれば、さらに身近な感覚だ。
大気に含むマナを取り入れ、魔力を増す。高まる魔力をマジックスタッフに集中させて赤き炎を形成した。魔力を糧として燃え上がる炎。緋色を束ね、一本の矢と化した。コマンドワードと共に放たれる緋の弾丸がスフィンクスを穿つ。
「一気に削ります。回復させ続けるつもりで」
「オレもアイツを殴る! 短期決戦でいこーぜ!」
二枚の盾を手にスフィンクスの前に立つマリア。機動性を捨て、防御力に重点を置いた鎧がガシャガシャと音を立てて進む。マリア自身の小ささ故に威圧感はないが、それでもその歩みは重厚感を感じさせる。
巨大な手甲の先に盾を構え、大きく振りかぶる。硬く、重く、そして強く。単純だがそれ故に他に勝るものがない強打。右、左、そして頭突き。最後の一撃は『頭を使って答えた』というマリアなりのスフィンクスへの答えでもあった。
「これがオレの答えだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「頑張ってくださいね」
一歩引いたところで柔らかくほほ笑むエミリオ。その空気は戦闘中だろうと日常だろうと変わらない。常に自分のペースを保ち、他人に流されない。そこがエミリオの長所でもあり、短所でもあった。
勿論、ただ微笑むだけというわけではない。手首と指を適切な角度に変えて因果を律し、牙の欠片に命を与えるエミリオ。生み出されたのは十数秒しか保てない竜の戦士。しかし短命であるからこそ、戦士は雄々しく迫り、渾身の一打をスフィンクスに叩き込む。
「傷ついたら言ってくださいね。微力ですが回復しますので」
「今回はいらんかもしれんぞ。あのイジワル問題オジサン、相当弱ってる」
スフィ……イジワル問題オジサンを指差しツボミが笑みを浮かべる。弱体化前の状態だと肝を冷やしただろうが、体力を奪われ且つ一部技を使えない状態では攻めにも精彩を欠く。引っかけられている前衛を重点的に回復すればよさそうだ。
だからと言って気を抜くつもりはない。医者の見地から倒れそうな人間を選び、治療順位を選別する。重要なのは焦らない事。ツボミは魔力を包帯のように包み込むような形状にし、自由騎士達の傷口にかぶせる。暖かい熱と共に傷が少しずつ癒えていく。
「しかし希少種には違いないな。出来れば解剖したいのだが……」
「そうだな。さすがに剥製にはできそうもないし」
顎に手を当てて頷くウェルス。体長4メートルの獣のはく製は珍しいが、流石に大きすぎて作るための工房を確保するのも難しい。商売人として珍しい商品には目がないが、奇抜すぎるのも問題だなと諦める。
はく製にしないのなら、傷口を気にする必要はない。両手に構えた拳銃を容赦なく打ち続ける。ウェルスは片方の銃を撃ち、移動しながら弾を込めてもう片方の銃を撃つ。横転するように移動してから銃を撃ち、弾を込める。二つの銃を使った矢次の銃撃。
「流石にマタタビとかは効いてくれないか」
「ライオンなのにおかしいねー」
ウェルスの言葉にけらけらと笑うカノン。猫がマタタビで酩酊状態になるのだから、同じネコ科のライオンもそうなってもおかしくはない。頭が人間だからかな、とカノンは納得して、じゃあお酒は酔うのかな? と思い直した。
ひとしきり想像した後に腕をぐるぐる回してスフィンクスに迫る。体内をめぐる龍の力。その力を呼吸と共に方向を定める。強く踏み込み、強く打つ。打撃と同時に龍の力を拳を通じてスフィンクスに伝導させる。激しい衝撃がカノンの拳から響き渡った。
「人面犬がライオンになったくらい、どーって事ないもんね! 悔しかったらかかってこい!」
「おーっほほほほほ! 頭脳明晰容姿端麗才色兼備仙姿玉質のわたくしを前にしては流石のスフィンクスも手も足も出ないようですわね!」
『聖剣「ロミオ」』を手にジュリエットが高笑いする。自由騎士でもまだ新人で、実力もまだまだという自覚はあるが、それを認めたうえで笑っていた。大事なのは矜持を胸に抱くこと。不安も恐怖もすべて受け入れて笑みを浮かべる。
背筋を伸ばし、采配を振るうように剣を掲げる。呪文により魔力が導かれ、一つの形となって顕現する。それは癒し。ほのかな光に変化した癒しの魔力はジュリエットの意志に従い仲間の自由騎士に降り注ぐ。
「魔眼など恐れるにあらず! 私がすぐに癒して差し上げますわ!」
「おのれ調子に乗り折って……!」
自由騎士の猛攻に奥歯を噛みしめるスフィンクス。弱体化しているとはいえ、一〇に満たない数の騎士相手に後れを取るとは思わなかったのだろう。悔しそうに歯ぎしりまでしている。
当然だが、自由騎士も油断はできない。獣の一撃は強く、追い詰められた獣の一撃は侮ることが出来ない。確実にダメージを積み重ねていかなくては。
幻想種と自由騎士。イ・ラプセルの航路をめぐる戦いは、少しずつ加速していく。
●
弱体化したスフィンクスは呪いを与える魔眼を中心に攻撃を仕掛けてきていた。
「おおっと、仕方ないですね。後は任せました」
その魔眼を受けてエミリオが膝をつく。目を回しているが後遺症が残るほどではなさそうだ。
「折角なので私のほうからも謎掛けを出します。まさか自分だけに出す権利があるなんて言いませんよね? 勝負はお互い公平《フェア》にいきましょう」
カスカはスフィンクスに対し問いかけを仕掛ける。だが、
「公平ということは、答えるまでこちらに対する攻撃を控え、且つこちらが正解したら私と同じように全員弱体化とダメージを受けてくれる、ということになるが相違ないか?」
「……成程。止めておきましょう」
全員の同意を取っていないこともあり、取り下げた。
「しかし解剖したい。ああ、スマン心の声が漏れた。しかし解剖したい」
ツボミは仲間に回復を施しながら、スフィンクスに聞こえるように呟く。相手の攻撃をこちらに向けさせるための挑発である。まあ、心の底から珍しい幻想種を解剖したいという願いがあるのは確かだが。
「呪いが地味に足を止めますね……」
マジックスタッフに体重を任せて立つマリア。スフィンクスの魔眼で体力を奪われ、呪いで動きが止まっていた。英雄の欠片を使って膝を屈することは堪えているが、戦いが長引けば気力も尽き倒れてしまうかもしれない。
「カノーンパーンチ!」
スフィンクスの攻撃を右に左に避けながらカノンが拳を繰り出す。全ての攻撃を避けきれているわけではないのだが、致命傷を避けて戦場に立ち続ける。子供のような立ち振る舞いだが、その一撃は訓練された格闘家の一打だ。
「体力回復なんかさせやしないぜ」
ウェルスが笑みを浮かべる。ウェルスはスフィンクスの頭を狙い、回復を阻害するほどのダメージを与えていた。命中精度の高いガンナーの攻撃を避けきれず、ダメージを受け続けるスフィンクス。ウェルスの目測通り、回復できずに戦い続けることになる。
「オラァ! オラァ! こいつでどうだぁ!」
拳を振り上げ、スフィンクスを叩き続けるマリア。作戦も何もない。真っすぐ行ってぶっ叩く。敵の攻撃は受け止める。単純明快な前衛の戦い方だ。だがそれを為す為の地力は相応の努力をしなければ手に入らない。猪突猛進を為すだけの努力がそこにあった。
「おーっほほほほほほ! あとは押し切るのみですわ! この! わたくしが! 援護しますので皆様頑張ってください!」
胸を張り、鼓舞するように声を出すジュリエット。高笑いして何もしていないように見えるが、きっちり回復は飛ばしている。剣を振るう度に光が飛び、仲間の傷が癒えていく。
「くぅ。だがまだまだ負けんぞ!」
弱体化したスフィンクスは何とか持ち帰そうと爪を振るい、近くにいる者に噛み付こうとする。だがツボミやジュリエットの回復に支えられた自由騎士達は怒涛の勢いで幻想種を追い詰めていく。
「これで終いです。砂漠で大人しくしていればこのような事にはならかったでしょう」
カスカが『逢瀬切乱丸』を手に疾駆する。刀の間合に入ったと同時に腰をひねり、刀を振るう。下から跳ね上げる様な一閃がスフィンクスの胴を薙ぐ。
「この美少女剣士に倒されたのです。その事だけは良しと思ってください」
納刀の音と同時に、スフィンクスの身体がぐらりと揺れる。きっちり一秒後、気を失ったスフィンクスが地面に倒れ伏した。
●
戦闘後、サポートできていたオラクル達の援助もあり怪我を癒す自由騎士。
「あいたたた。ふう、皆さんお疲れ様です」
笑みを浮かべて立ち上がるエミリオ。スフィンクスにやられた傷はもう癒えている。傷が残ることはなさそうだ。
「何でイ・ラプセルに入ってこようとする奴を襲ってたんだよ。人を襲いたかったり、なぞなぞがしたかったなら別に他の場所でもよかったろ」
「他の国だと防げない魔法とかよくわからない機械だとか軍隊とかがやってくるからな。ここだとそれはないと踏んだのだが……」
マリアの質問に答えるスフィンクス。それぞれシャンバラ、ヘルメリア、ヴィスマルクだろう。イ・ラプセルなら安全と見込んできたのだが自由騎士の存在を知らなかったようだ。
「まー、人を喰わなければ悪感情もないのだが。おい、人を喰わずに生きることはできるか?」
同じくすフィンク氏に問いかけるツボミ。高い知能を持つ獣型幻想種には興味がある。共存の道が図れるか模索しているのだが、
「我慢すれば可能だが、その分家畜を襲う」
「よし、害獣確定。トドメをさせ」
「ぎゃー!」
無理と分かると容赦はなかった。割りきりの良さは医者ゆえんか。
「あったよー。これ、多分食べられた人の服だ」
カノンは島を探り、食べられた人の遺品がないかを探していた。スフィンクスが鎮座していた所に土を盛り返した跡がある。そこを掘ってみると、ボロボロになった布とカバンを見つけた。おそらく食べる際に吐き出した物だろう。
「名前は……? そうか、家族には伝えておく」
ウェルスは遺品に交霊術を使ってそれを媒介に死者の魂の話を聞いていた。その無念を聞き届け、家族への伝言を受け取る。死者が生き返ることはないが、死者の言葉が生きている者を前に進めることはある。
「そろそろ戻るぞー」
出航を促すウサギとセキセイインコのケモノビト。その声に従い、自由騎士達は帰路につく。謎かけをして人を喰らう幻想種はもういない。航路の平和を取り戻した以上、ここに留まる理由はな――
「これ、持って帰っちゃいかんか? 解剖したいのだ。大事に使うし。バラした後はちゃんと処分するし。駄目?」
「駄目。船に腐った匂いが充満するから」
「そっかー……」
ツボミはうなだれ、諦めたようにうなだれ、船に乗った。
かくして戦いは終わりを告げる。
これにより通商も活性化し、通商連からも感謝の言葉を貰ったという。
だが真の報酬は平和な航路。幻想種に怯えることのない安全な道。それこそが自由騎士達が守った最大の報酬だった。
「はー。確かにライオンの身体に人の顔ですね」
スフィンクスを見上げながら『胡蝶の夢』エミリオ・ミハイエル(CL3000054)は頷く。大きなスフィンクスだと城のような大きさもあるという。それを思えばまだ小柄な方なのだろう。それでも人よりは大きいのだが。
「なぞなぞとか頭良いアピールかよ。わかんねーから任せたぜ!」
堂々とマリア・スティール(CL3000004)は腕を組んで回答を拒否する。下手に応えてダメージを受けるよりはずっといい。それに他の面々はそれぞれ分かったような表情をしている。ここは何もしないのが最良だろう。
「まぁ相手も生きるために狩ってるんだ。仕方ないだろうな」
言って頷く『星達の記録者』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)。だがスフィンクスの蛮行を擁護するつもりはない。狩るということ狩られることも考慮しなくてはいけない。それを教える為に武器を手にする。
「普通に害獣だし。駆除一択だなー」
にべもなく言い放つ『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。出生の関係上、言葉を喋る獣系の幻想種と言うのには興味がある。だが所業を考えれば交渉になるはずもない。人を喰らう獣など、即刻排除するに限る。
「問いかけを行ってくるのは『人間ごときに私の問題がわかるわけあるまい』という傲慢によるものなのでしょうか……?」
首をひねり考える『マギアの導き』マリア・カゲ山(CL3000337)。襲う前にワンクッションおいて問いかける性質。そこにどんな理由があるかは本人にしかわからない。あるいは本人さえも何故そうするかが分かっていないこともある。人の理解が及ばぬのが幻想種か。
「売られた喧嘩は買うのが! わたくしの美学! ですわ!」
言葉毎にポーズを決めて『命短し恋せよ乙女』ジュリエット・ゴールドスミス(CL3000357)は胸を張る。相手の流儀に合わせ、正々堂々と打ち勝つ。それが騎士の本懐であり、ジュリエットの美学でもある。
「スフィンクスって砂漠にいる印象だけど、こんな所にまで出張してくるんだね。暇なのかな?」
指を顎に当てて考える『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。砂漠から離れたイ・ラプセルに飛んできて狩りをするスフィンクス。どんな事情があるのかは解らないが、このまま放置するわけにもいかない。先ずはきっちり撃退しなくては。
「おそらくパノプティコンの砂漠地帯の出身でしょうね。言葉通じないから退屈だったのでしょう」
推測を述べる『天辰』カスカ・セイリュウジ(CL3000019)。大陸共通語が通じないパノプティコンで謎かけをしても、帰ってくるのは意味不明な言葉のみ。あまり面白くないだろうことは想像に難くない。
「我を阻むか人間。では問おう――」
言って問いかけをするスフィンクス。自由騎士達はその問いを受け、
「Windは『なし』、SunとMoonは『ある』です」
「英語をそのまま漢字に変換すれば一発だよね」
「金曜日はあるけど銀曜日は無い。木曜日はあるけど花曜日は無い。火曜日はあるけど光曜日は無い」
「即ちこの謎掛けの答えは『曜日』です」
「ウゴゴゴゴゴゴ……正解だ!」
自由騎士達に正解されて崩れ落ちるスフィンクス。そしてそういうルールの結界を張っていたのか、スフィンクス自身に稲妻が落ちた。
「正直なところ拍子抜けでしたね、もっと難問がくるかと思ったんですが」
「様々な国の者が通り得る海路で特定の文化通念を前提とした謎掛けとは姑息だな? 曜日の概念の無い孤島の部族出身者は差別か? しかも言語まで変えてやんわり攪乱とはセコい。コスい。程度が低い。王獣スフィンクスの名が大号泣だ。今からでもイジワル問題オジサンに改名しては如何か?」
追い打ちをかける自由騎士達。しかしスフィ……イジワル問題オジサンはまだ倒れたわけではない。弱体化したまま、襲い掛かってくる。
イ・ラプセルの航路を守るため、自由騎士達は武器を構える。
●
「行きましょう。一気呵成に叩き込みます」
一番槍を取ったのはカスカだ。『逢瀬切乱丸』を抜き、呼吸を整える。肉体の隅々まで空気がいきわたり、活力が増していく。体中に清風が満ちていくイメージ。その風を止めぬように一気に走りスフィンクスに迫る。
身長140センチにも満たないカスカと4メートル近くのスフィンクス。その身長差は三倍ほどだ。しかしカスカはその差に臆することなく踏み込み、刃を振るう。その一閃、一迅の風の如く。風が収まった後、スフィンクスの足が血に染まる。
「運がなかったですね。アマノホカリ出身の私にとって七曜は身近なものでしたよ」
「ええ。この国にもあるようですが私達にとっては日常ですので」
頷くのは同じアマノホカリから移住してきたマリアだ。アマノホカリでは占いなどで七曜を使用することもあり、イ・ラプセルよりも生活に密着している。、魔導士でもありその知識を求めるマリアからすれば、さらに身近な感覚だ。
大気に含むマナを取り入れ、魔力を増す。高まる魔力をマジックスタッフに集中させて赤き炎を形成した。魔力を糧として燃え上がる炎。緋色を束ね、一本の矢と化した。コマンドワードと共に放たれる緋の弾丸がスフィンクスを穿つ。
「一気に削ります。回復させ続けるつもりで」
「オレもアイツを殴る! 短期決戦でいこーぜ!」
二枚の盾を手にスフィンクスの前に立つマリア。機動性を捨て、防御力に重点を置いた鎧がガシャガシャと音を立てて進む。マリア自身の小ささ故に威圧感はないが、それでもその歩みは重厚感を感じさせる。
巨大な手甲の先に盾を構え、大きく振りかぶる。硬く、重く、そして強く。単純だがそれ故に他に勝るものがない強打。右、左、そして頭突き。最後の一撃は『頭を使って答えた』というマリアなりのスフィンクスへの答えでもあった。
「これがオレの答えだーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「頑張ってくださいね」
一歩引いたところで柔らかくほほ笑むエミリオ。その空気は戦闘中だろうと日常だろうと変わらない。常に自分のペースを保ち、他人に流されない。そこがエミリオの長所でもあり、短所でもあった。
勿論、ただ微笑むだけというわけではない。手首と指を適切な角度に変えて因果を律し、牙の欠片に命を与えるエミリオ。生み出されたのは十数秒しか保てない竜の戦士。しかし短命であるからこそ、戦士は雄々しく迫り、渾身の一打をスフィンクスに叩き込む。
「傷ついたら言ってくださいね。微力ですが回復しますので」
「今回はいらんかもしれんぞ。あのイジワル問題オジサン、相当弱ってる」
スフィ……イジワル問題オジサンを指差しツボミが笑みを浮かべる。弱体化前の状態だと肝を冷やしただろうが、体力を奪われ且つ一部技を使えない状態では攻めにも精彩を欠く。引っかけられている前衛を重点的に回復すればよさそうだ。
だからと言って気を抜くつもりはない。医者の見地から倒れそうな人間を選び、治療順位を選別する。重要なのは焦らない事。ツボミは魔力を包帯のように包み込むような形状にし、自由騎士達の傷口にかぶせる。暖かい熱と共に傷が少しずつ癒えていく。
「しかし希少種には違いないな。出来れば解剖したいのだが……」
「そうだな。さすがに剥製にはできそうもないし」
顎に手を当てて頷くウェルス。体長4メートルの獣のはく製は珍しいが、流石に大きすぎて作るための工房を確保するのも難しい。商売人として珍しい商品には目がないが、奇抜すぎるのも問題だなと諦める。
はく製にしないのなら、傷口を気にする必要はない。両手に構えた拳銃を容赦なく打ち続ける。ウェルスは片方の銃を撃ち、移動しながら弾を込めてもう片方の銃を撃つ。横転するように移動してから銃を撃ち、弾を込める。二つの銃を使った矢次の銃撃。
「流石にマタタビとかは効いてくれないか」
「ライオンなのにおかしいねー」
ウェルスの言葉にけらけらと笑うカノン。猫がマタタビで酩酊状態になるのだから、同じネコ科のライオンもそうなってもおかしくはない。頭が人間だからかな、とカノンは納得して、じゃあお酒は酔うのかな? と思い直した。
ひとしきり想像した後に腕をぐるぐる回してスフィンクスに迫る。体内をめぐる龍の力。その力を呼吸と共に方向を定める。強く踏み込み、強く打つ。打撃と同時に龍の力を拳を通じてスフィンクスに伝導させる。激しい衝撃がカノンの拳から響き渡った。
「人面犬がライオンになったくらい、どーって事ないもんね! 悔しかったらかかってこい!」
「おーっほほほほほ! 頭脳明晰容姿端麗才色兼備仙姿玉質のわたくしを前にしては流石のスフィンクスも手も足も出ないようですわね!」
『聖剣「ロミオ」』を手にジュリエットが高笑いする。自由騎士でもまだ新人で、実力もまだまだという自覚はあるが、それを認めたうえで笑っていた。大事なのは矜持を胸に抱くこと。不安も恐怖もすべて受け入れて笑みを浮かべる。
背筋を伸ばし、采配を振るうように剣を掲げる。呪文により魔力が導かれ、一つの形となって顕現する。それは癒し。ほのかな光に変化した癒しの魔力はジュリエットの意志に従い仲間の自由騎士に降り注ぐ。
「魔眼など恐れるにあらず! 私がすぐに癒して差し上げますわ!」
「おのれ調子に乗り折って……!」
自由騎士の猛攻に奥歯を噛みしめるスフィンクス。弱体化しているとはいえ、一〇に満たない数の騎士相手に後れを取るとは思わなかったのだろう。悔しそうに歯ぎしりまでしている。
当然だが、自由騎士も油断はできない。獣の一撃は強く、追い詰められた獣の一撃は侮ることが出来ない。確実にダメージを積み重ねていかなくては。
幻想種と自由騎士。イ・ラプセルの航路をめぐる戦いは、少しずつ加速していく。
●
弱体化したスフィンクスは呪いを与える魔眼を中心に攻撃を仕掛けてきていた。
「おおっと、仕方ないですね。後は任せました」
その魔眼を受けてエミリオが膝をつく。目を回しているが後遺症が残るほどではなさそうだ。
「折角なので私のほうからも謎掛けを出します。まさか自分だけに出す権利があるなんて言いませんよね? 勝負はお互い公平《フェア》にいきましょう」
カスカはスフィンクスに対し問いかけを仕掛ける。だが、
「公平ということは、答えるまでこちらに対する攻撃を控え、且つこちらが正解したら私と同じように全員弱体化とダメージを受けてくれる、ということになるが相違ないか?」
「……成程。止めておきましょう」
全員の同意を取っていないこともあり、取り下げた。
「しかし解剖したい。ああ、スマン心の声が漏れた。しかし解剖したい」
ツボミは仲間に回復を施しながら、スフィンクスに聞こえるように呟く。相手の攻撃をこちらに向けさせるための挑発である。まあ、心の底から珍しい幻想種を解剖したいという願いがあるのは確かだが。
「呪いが地味に足を止めますね……」
マジックスタッフに体重を任せて立つマリア。スフィンクスの魔眼で体力を奪われ、呪いで動きが止まっていた。英雄の欠片を使って膝を屈することは堪えているが、戦いが長引けば気力も尽き倒れてしまうかもしれない。
「カノーンパーンチ!」
スフィンクスの攻撃を右に左に避けながらカノンが拳を繰り出す。全ての攻撃を避けきれているわけではないのだが、致命傷を避けて戦場に立ち続ける。子供のような立ち振る舞いだが、その一撃は訓練された格闘家の一打だ。
「体力回復なんかさせやしないぜ」
ウェルスが笑みを浮かべる。ウェルスはスフィンクスの頭を狙い、回復を阻害するほどのダメージを与えていた。命中精度の高いガンナーの攻撃を避けきれず、ダメージを受け続けるスフィンクス。ウェルスの目測通り、回復できずに戦い続けることになる。
「オラァ! オラァ! こいつでどうだぁ!」
拳を振り上げ、スフィンクスを叩き続けるマリア。作戦も何もない。真っすぐ行ってぶっ叩く。敵の攻撃は受け止める。単純明快な前衛の戦い方だ。だがそれを為す為の地力は相応の努力をしなければ手に入らない。猪突猛進を為すだけの努力がそこにあった。
「おーっほほほほほほ! あとは押し切るのみですわ! この! わたくしが! 援護しますので皆様頑張ってください!」
胸を張り、鼓舞するように声を出すジュリエット。高笑いして何もしていないように見えるが、きっちり回復は飛ばしている。剣を振るう度に光が飛び、仲間の傷が癒えていく。
「くぅ。だがまだまだ負けんぞ!」
弱体化したスフィンクスは何とか持ち帰そうと爪を振るい、近くにいる者に噛み付こうとする。だがツボミやジュリエットの回復に支えられた自由騎士達は怒涛の勢いで幻想種を追い詰めていく。
「これで終いです。砂漠で大人しくしていればこのような事にはならかったでしょう」
カスカが『逢瀬切乱丸』を手に疾駆する。刀の間合に入ったと同時に腰をひねり、刀を振るう。下から跳ね上げる様な一閃がスフィンクスの胴を薙ぐ。
「この美少女剣士に倒されたのです。その事だけは良しと思ってください」
納刀の音と同時に、スフィンクスの身体がぐらりと揺れる。きっちり一秒後、気を失ったスフィンクスが地面に倒れ伏した。
●
戦闘後、サポートできていたオラクル達の援助もあり怪我を癒す自由騎士。
「あいたたた。ふう、皆さんお疲れ様です」
笑みを浮かべて立ち上がるエミリオ。スフィンクスにやられた傷はもう癒えている。傷が残ることはなさそうだ。
「何でイ・ラプセルに入ってこようとする奴を襲ってたんだよ。人を襲いたかったり、なぞなぞがしたかったなら別に他の場所でもよかったろ」
「他の国だと防げない魔法とかよくわからない機械だとか軍隊とかがやってくるからな。ここだとそれはないと踏んだのだが……」
マリアの質問に答えるスフィンクス。それぞれシャンバラ、ヘルメリア、ヴィスマルクだろう。イ・ラプセルなら安全と見込んできたのだが自由騎士の存在を知らなかったようだ。
「まー、人を喰わなければ悪感情もないのだが。おい、人を喰わずに生きることはできるか?」
同じくすフィンク氏に問いかけるツボミ。高い知能を持つ獣型幻想種には興味がある。共存の道が図れるか模索しているのだが、
「我慢すれば可能だが、その分家畜を襲う」
「よし、害獣確定。トドメをさせ」
「ぎゃー!」
無理と分かると容赦はなかった。割りきりの良さは医者ゆえんか。
「あったよー。これ、多分食べられた人の服だ」
カノンは島を探り、食べられた人の遺品がないかを探していた。スフィンクスが鎮座していた所に土を盛り返した跡がある。そこを掘ってみると、ボロボロになった布とカバンを見つけた。おそらく食べる際に吐き出した物だろう。
「名前は……? そうか、家族には伝えておく」
ウェルスは遺品に交霊術を使ってそれを媒介に死者の魂の話を聞いていた。その無念を聞き届け、家族への伝言を受け取る。死者が生き返ることはないが、死者の言葉が生きている者を前に進めることはある。
「そろそろ戻るぞー」
出航を促すウサギとセキセイインコのケモノビト。その声に従い、自由騎士達は帰路につく。謎かけをして人を喰らう幻想種はもういない。航路の平和を取り戻した以上、ここに留まる理由はな――
「これ、持って帰っちゃいかんか? 解剖したいのだ。大事に使うし。バラした後はちゃんと処分するし。駄目?」
「駄目。船に腐った匂いが充満するから」
「そっかー……」
ツボミはうなだれ、諦めたようにうなだれ、船に乗った。
かくして戦いは終わりを告げる。
これにより通商も活性化し、通商連からも感謝の言葉を貰ったという。
だが真の報酬は平和な航路。幻想種に怯えることのない安全な道。それこそが自由騎士達が守った最大の報酬だった。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
あっさり答えらてもうた……(がくり)。
以上の結果になりました。
スフィンクスは大きいものだと50メートルの者もいるらしく、今回のはまだ幼い個体でした。だから問題もあっさり解かれたと……ええ、そういう設定に今しました。
MVPは正解者に……と思ったけどみんな正解なので、戦術的に厄介な回復を塞いだライヒトゥーム様に。
ともあれお疲れ様です。先ずは傷を癒してください。
それではまた、イ・ラプセルで
あっさり答えらてもうた……(がくり)。
以上の結果になりました。
スフィンクスは大きいものだと50メートルの者もいるらしく、今回のはまだ幼い個体でした。だから問題もあっさり解かれたと……ええ、そういう設定に今しました。
MVPは正解者に……と思ったけどみんな正解なので、戦術的に厄介な回復を塞いだライヒトゥーム様に。
ともあれお疲れ様です。先ずは傷を癒してください。
それではまた、イ・ラプセルで
FL送付済