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【デザイア!】人形たちの涙

●
賑やかな祭りの音楽が鳴り渡り、商人たちは談笑しながら商談を交わす。それはどこにでもあるような、それでいて理想のような市場の姿と言えるだろう。
商っているものに目を瞑れば、の話だが。
ここはヘルメリアの誇る一大奴隷マーケット大祭『スレイブマーケット』。
ギルバーク全土を使っての奴隷売買祭りである。奴隷売買と侮るなかれ。観賞用から戦闘用まで様々な奴隷が売買され、ヘルメリアの経済を動かす巨大な祭りと言われている。
しかし、華やかな姿に見えるのは、その一部だ。少し離れた先の倉庫には、暗がりに繋がれた少女たちの姿があった。
「かえりたいよう……エミーお姉ちゃん」
ミズヒトの少女、ルディはすすり泣く。姉と共に連れ去られて、どれほどの時が経ったか。姉とは引き離され、今の檻の中に繋がれている。
檻の中には似たような年頃の亜人の少女たちが囚われていた。檻の作りはせいぜいが「在庫を置くための倉庫」でしかなく、まだ幼い少女たちにとっては過酷なものだった。体を壊したものも少なくない。
時間の感覚もあいまいになってきたある日、唐突に見張りが変わった。今までの厳つく恐ろしい男たちに変わって見張りとして現れたのは、まだ若い少女、それも亜人の少女たちだった。
「エミーお姉ちゃん!」
ルディは見張りの中に姉の姿を見つけて、最後の力を振り絞って叫ぶ。檻の中にいた他の娘たちも、友人や家族の姿を見つけて叫んだ。
だが、その声を上げた娘たちは、見張りを行う娘たちの瞳を見て、絶望し、全てを諦めた。
見張りとしてやってきた娘たちの瞳は、ガラス玉のように自我を喪ったものの瞳だったのだから。
●
「諸君、お集まりいただき恐悦至極」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は、演算室にオラクルが揃ったことを確認すると、ゆっくりと切り出した。
「早速だが説明に入らせていただこう。スレイブマーケットのことは聞いているかね?」
スレイブマーケット。その言葉に聞き覚えのある自由騎士もいた。ヘルメリアで行われる大規模奴隷マーケットのことだ。現在、イ・ラプセルではこの市場に対して攻撃を仕掛けている。目的としては奴隷協会に打撃を与え、警備に当たる歯車騎士団の信用を失墜させることだ。
現時点でもいくつかの作戦が動いており、多くの成果を上げている。
「今回諸君らに向かっているのは、奴隷が囚われている倉庫の1つである」
クラウスが示したのはギルバーグの一角にある奴隷倉庫だ。国外で捕まった亜人奴隷の少女たちがここにいる。彼女らの解放が使命となる。
ヘルメリアの人間にとって奴隷、こと亜人とあってはよくてペットのような存在だ。もっと言うなら、消耗品扱いするものだって少なくない。この作戦はヘルメリアへの攻撃というだけでなく、彼女らの未来を救うという意味もある。
もちろん、マーケット側もただ奴隷たちを置いているわけではなく、当然警備は配置されている。
「そして、今回一番の問題になるのがこの警備だ。この倉庫を警備しているのは『魔道乙女』と呼ばれる奴隷たちなのだよ」
ヘルメリアの奴隷の中で、戦闘用に調教された奴隷はそれなりに見かけるものだ。そして、魔道乙女とはヘルメリアに珍しく、魔術を扱う奴隷である。
他国から攫ってきた魔術の素養を持つ亜人を薬物で洗脳し、「世にも不可思議な神秘の技を使う乙女たち」という体で売られているのだ。
魔術というレアリティ、少女という見栄えの良さから、一定の需要があるそうだ。
余談だが、この倉庫に囚われている娘には、魔道乙女になった者の親族や友人が多いらしい。魔道乙女を作るための奴隷狩りの際、一緒に捕まり魔術の素養が無かったものが捨て値で売られるのだ。実際、魔道乙女のリーダーを務める少女エミーの妹のルディは、倉庫の中にいる。
わざわざ魔道乙女をこれらの警護に回しているのも、洗脳の強度実験や、倉庫の中の奴隷の反骨芯を奪うためということだ。
「魔道乙女に関しては、治療の準備がある。君たちには倉庫内の奴隷を解放するだけでなく、倒した魔道乙女の保護をお願いしたい」
クラウスの口調に熱がこもっている気がするのは気のせいだろうか。ひょっとしたら、この場にいる奴隷たちと年の近い孫娘を重ねているのかもしれない。
『浄化』の権能をもってすれば、魔道乙女を無力化して保護することは簡単だ。彼女らを救えるのは自由騎士を置いて他にいない。
「そうそうあるまいが、彼女らを解放したらなるべく早くに撤退してほしい。他の警備に見つかったら厄介である」
撤退は騎士団のサポートもあるので難しくないが、極端に時間をかけすぎると余計な戦いを招く可能性もある。上手く解放した亜人たちを誘導したいところだ。
「質問はあるかね? なければ説明は以上だ。良い報告を期待しておるよ」
賑やかな祭りの音楽が鳴り渡り、商人たちは談笑しながら商談を交わす。それはどこにでもあるような、それでいて理想のような市場の姿と言えるだろう。
商っているものに目を瞑れば、の話だが。
ここはヘルメリアの誇る一大奴隷マーケット大祭『スレイブマーケット』。
ギルバーク全土を使っての奴隷売買祭りである。奴隷売買と侮るなかれ。観賞用から戦闘用まで様々な奴隷が売買され、ヘルメリアの経済を動かす巨大な祭りと言われている。
しかし、華やかな姿に見えるのは、その一部だ。少し離れた先の倉庫には、暗がりに繋がれた少女たちの姿があった。
「かえりたいよう……エミーお姉ちゃん」
ミズヒトの少女、ルディはすすり泣く。姉と共に連れ去られて、どれほどの時が経ったか。姉とは引き離され、今の檻の中に繋がれている。
檻の中には似たような年頃の亜人の少女たちが囚われていた。檻の作りはせいぜいが「在庫を置くための倉庫」でしかなく、まだ幼い少女たちにとっては過酷なものだった。体を壊したものも少なくない。
時間の感覚もあいまいになってきたある日、唐突に見張りが変わった。今までの厳つく恐ろしい男たちに変わって見張りとして現れたのは、まだ若い少女、それも亜人の少女たちだった。
「エミーお姉ちゃん!」
ルディは見張りの中に姉の姿を見つけて、最後の力を振り絞って叫ぶ。檻の中にいた他の娘たちも、友人や家族の姿を見つけて叫んだ。
だが、その声を上げた娘たちは、見張りを行う娘たちの瞳を見て、絶望し、全てを諦めた。
見張りとしてやってきた娘たちの瞳は、ガラス玉のように自我を喪ったものの瞳だったのだから。
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「諸君、お集まりいただき恐悦至極」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は、演算室にオラクルが揃ったことを確認すると、ゆっくりと切り出した。
「早速だが説明に入らせていただこう。スレイブマーケットのことは聞いているかね?」
スレイブマーケット。その言葉に聞き覚えのある自由騎士もいた。ヘルメリアで行われる大規模奴隷マーケットのことだ。現在、イ・ラプセルではこの市場に対して攻撃を仕掛けている。目的としては奴隷協会に打撃を与え、警備に当たる歯車騎士団の信用を失墜させることだ。
現時点でもいくつかの作戦が動いており、多くの成果を上げている。
「今回諸君らに向かっているのは、奴隷が囚われている倉庫の1つである」
クラウスが示したのはギルバーグの一角にある奴隷倉庫だ。国外で捕まった亜人奴隷の少女たちがここにいる。彼女らの解放が使命となる。
ヘルメリアの人間にとって奴隷、こと亜人とあってはよくてペットのような存在だ。もっと言うなら、消耗品扱いするものだって少なくない。この作戦はヘルメリアへの攻撃というだけでなく、彼女らの未来を救うという意味もある。
もちろん、マーケット側もただ奴隷たちを置いているわけではなく、当然警備は配置されている。
「そして、今回一番の問題になるのがこの警備だ。この倉庫を警備しているのは『魔道乙女』と呼ばれる奴隷たちなのだよ」
ヘルメリアの奴隷の中で、戦闘用に調教された奴隷はそれなりに見かけるものだ。そして、魔道乙女とはヘルメリアに珍しく、魔術を扱う奴隷である。
他国から攫ってきた魔術の素養を持つ亜人を薬物で洗脳し、「世にも不可思議な神秘の技を使う乙女たち」という体で売られているのだ。
魔術というレアリティ、少女という見栄えの良さから、一定の需要があるそうだ。
余談だが、この倉庫に囚われている娘には、魔道乙女になった者の親族や友人が多いらしい。魔道乙女を作るための奴隷狩りの際、一緒に捕まり魔術の素養が無かったものが捨て値で売られるのだ。実際、魔道乙女のリーダーを務める少女エミーの妹のルディは、倉庫の中にいる。
わざわざ魔道乙女をこれらの警護に回しているのも、洗脳の強度実験や、倉庫の中の奴隷の反骨芯を奪うためということだ。
「魔道乙女に関しては、治療の準備がある。君たちには倉庫内の奴隷を解放するだけでなく、倒した魔道乙女の保護をお願いしたい」
クラウスの口調に熱がこもっている気がするのは気のせいだろうか。ひょっとしたら、この場にいる奴隷たちと年の近い孫娘を重ねているのかもしれない。
『浄化』の権能をもってすれば、魔道乙女を無力化して保護することは簡単だ。彼女らを救えるのは自由騎士を置いて他にいない。
「そうそうあるまいが、彼女らを解放したらなるべく早くに撤退してほしい。他の警備に見つかったら厄介である」
撤退は騎士団のサポートもあるので難しくないが、極端に時間をかけすぎると余計な戦いを招く可能性もある。上手く解放した亜人たちを誘導したいところだ。
「質問はあるかね? なければ説明は以上だ。良い報告を期待しておるよ」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.奴隷たちの救出
2.魔道乙女たちの保護
2.魔道乙女たちの保護
こんばんは。
転生した異世界に何故奴隷制度があるのか、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は奴隷救出に向かっていただきます。
●戦場
ギルバークの一角にある奴隷倉庫。
人目を避けるため夜に向かっていただきます。倉庫の近くに明かりはあるので、灯の用意は基本不要です。
建物の構造上、入り口前に陣取っている魔道乙女たちを倒さないと奴隷たちの救出は行えません。
魔道乙女達を倒せば、囚われている亜人の少女たちを連れ出すことが可能になります。
●魔道乙女
ヘルメリアには珍しい、魔術を使う奴隷。主に10代前半から半ばくらいの少女から成ります。薬物で自我を喪失しており、侵入者の攻撃を行います。
・エミー
リーダー格の魔道乙女。【アニマ・ムンディLv2】【ユピテルケイヂLv2】【緋文字Lv2】を用います。
1人います。
・錬金術師
錬金術スタイルの魔道乙女。【スパルトイLv1】【ミラーニューロン】を用います。
4人います。
・治癒術師
サブリーダー格でヒーラースタイルの魔道乙女。【メセグリンLv2】【ハーベストレインLv1】を用います。
1人います。
----------------------------------------------------------------------
「この共通タグ【デザイア!】依頼は、連動イベントのものになります。この依頼の成功数により八月末に行われる【デザイア!】決戦の状況が変化します。成功数が多いほど、状況が有利になっていきます」
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転生した異世界に何故奴隷制度があるのか、KSK(けー・えす・けー)です。
今回は奴隷救出に向かっていただきます。
●戦場
ギルバークの一角にある奴隷倉庫。
人目を避けるため夜に向かっていただきます。倉庫の近くに明かりはあるので、灯の用意は基本不要です。
建物の構造上、入り口前に陣取っている魔道乙女たちを倒さないと奴隷たちの救出は行えません。
魔道乙女達を倒せば、囚われている亜人の少女たちを連れ出すことが可能になります。
●魔道乙女
ヘルメリアには珍しい、魔術を使う奴隷。主に10代前半から半ばくらいの少女から成ります。薬物で自我を喪失しており、侵入者の攻撃を行います。
・エミー
リーダー格の魔道乙女。【アニマ・ムンディLv2】【ユピテルケイヂLv2】【緋文字Lv2】を用います。
1人います。
・錬金術師
錬金術スタイルの魔道乙女。【スパルトイLv1】【ミラーニューロン】を用います。
4人います。
・治癒術師
サブリーダー格でヒーラースタイルの魔道乙女。【メセグリンLv2】【ハーベストレインLv1】を用います。
1人います。
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「この共通タグ【デザイア!】依頼は、連動イベントのものになります。この依頼の成功数により八月末に行われる【デザイア!】決戦の状況が変化します。成功数が多いほど、状況が有利になっていきます」
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状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
6/6
6/6
公開日
2019年09月05日
2019年09月05日
†メイン参加者 6人†
●
ギルバークの街は年に1回のスレイブマーケットを迎えていた。街はちょっとしたお祭り騒ぎで、ヘルメリアの繁栄は花のように咲き誇っている。
しかし、その花は数多くの血と涙が育てたもの。ヘルメリアの栄華を支えるため、数多くの奴隷がその命を刈り取られているのだ。
「なるほど、アレが魔導乙女か。あと何年かすれば、俺のナンパ対象になりそうな逸材揃いだな」
ここはそんな奴隷を捕らえた倉庫の一つ。
『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は、物陰で様子をうかがいながら、冗談交じりに笑みを浮かべる。
魔道乙女と呼ばれる少女たちは、巫女を思わせる神聖さを漂わせていた。場所によっては神の使い等としても通用するだろう。
その商品としての質の高さこそが、オルパを不快にさせていた。
(シャンバラじゃあミトラースがヨウセイを迫害していたが、ヘルメリアでは亜人全般が迫害されているのだな)
シャンバラの魔女狩りで家族と友人を失ったオルパにとって、ヘルメリアの亜人事情は決して他人事と呼べるものではなかった。
「趣味わっるいよなー。いや、需要があるってのは分からなくはないけどな」
冗談に応えるようにして、『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)がへらっと笑う。
冗談めかしているがニコラスの内心は穏やかとは言えなかった。今でこそ自由騎士の1人として戦っているが、元を正せばかつてはヘルメリアで工作兵をやっていた身だ。
碌な身分ではなかったと自覚しているが、それも魔道乙女と呼ばれる少女たちに比べれば、幾分マシだったのかもしれない。それほどまでに、少女たちの有様は悲惨に見えた。
「不意を突ければ一番だけど、そうは問屋が卸さないか」
自我の無い戦闘用奴隷の一種という話だが、判断力が無いわけでもないようだ。ニコラスの観た所、多少の隠密ならば勘付かれるだろう。
もちろん、タイミングを見計らえばどうにかなる部分もあるが、自由騎士たちはその機会を待てるほど、時間に余裕を持っていない。そうなると、強襲を仕掛ける方が判断としては上々だろう。
自由騎士たちはいつ来るか分からない最善よりも、確実に自分たちが取れる有利を選ぶ。
「あぁっ、いくぜ!」
普段よりも低く抑えた声と共に、『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)が駆け出す。
実の所、チャンスが来るまでの間、ナバルが少女たちの姿に我慢できたかにしたって疑問が残る所だ。
少年と言うか青年と言うか、見る者によってナバルの評し方は変わるだろう。だが、どんな者も彼が「いいやつ」であることを否定はするまい。
無私の聖人というわけではないが、困った人に対しては精一杯の助力を行う。間違ったことには間違っていると言う。
そんな性質のナバルにとって、ヘルメリアの奴隷制度は到底許せるものではなかった。実際、この場に商人がいたら怒りのままに切り殺していたことだろう。怒りに身を任せるようにして攻撃を開始する。
対して、自由騎士たちの存在に気付いた戦闘奴隷の少女たちも、応戦を開始した。少女たちの詠唱に応じて現れた戦闘用の人形が自由騎士たちへと襲い来る。
その躊躇い無しに戦う姿を目に、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)はほうっと息を漏らす。
前々から悩んでいたのだ。
ヘルメリアの法では認められている奴隷制を、勝手な正義感で荒らして良いのかどうか。
ヘルメリアは奴隷制で人々を豊かにしていたし、この制度のお陰で平穏を得るものは奴隷の中にだっていたかもしれない。
だけど、少女たちの惨状はそういった逡巡を断ち切らせるのに十分なものだった。
「シンプルに。自分の感情に従っちゃいます」
言いたいことはいくつもあるが、言葉に出たのはそんなシンプルな一言だった。その言葉に従うようにして、辺りに漂う元素が自由騎士たちの傷を癒し、力を与える。
戦闘奴隷にも回復スキルを使うものはいる。だが、所詮は与えられたパターンに沿って回復を行うだけのもの。仲間の傷を癒やすことで戦い抜いてきたフーリィンとはキャリアがちがう。
こうなった自由騎士たちに恐れはない。
『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)の呼び出した戦闘人形も勢いづいて、敵を押し返していく。
虚を突かれながらも戦闘奴隷の中でも治癒スキルを使えるものは回復に回ろうとした。しかし、それをやすやすと許さないのが『艶師』蔡 狼華(CL3000451)だった。
「ほな、もう仕舞いや」
狼華の動きに対して対応できる戦闘奴隷はいなかった。あるいは、近接戦闘型のものなら可能だったのかもしれないが、その類はこの場にいない。
時をも超えんばかりの速度で、狼華の刃が閃いた。
(半端な仕事や……あの男やない)
狼華の脳裏に一人の男の顔がちらつく。忘れたくても忘れられない男の顔だ。このような『作品』を作っても、あの男ならおかしくはない。
だが一方で、冷静な部分はあの男の所業でないことを悟っていた。あの男のやり方に似てはいても、違う部分を狼華はたしかに感じていた。だからと言って、胸に感じる不快感が拭い去れるわけでもないが。
「……はぁん、嫌やな男の顔がチラつく。胸くそ悪いわ、早々にカタ着けましょか」
血の匂いに軽い酩酊感を覚えながら、狼華は闇夜を背に薄く笑いを浮かべるのだった。
●
自由騎士たちが警戒した通り、戦闘奴隷たちの戦闘力は決して侮れるものではなかった。意志を持たないが故の統率力と薬物で強化された魔力は、決して侮れるものではない。
「面倒なんだよな、こういうのは」
ニコラスの口からそんな言葉が漏れるのも無理はない。態勢を整えた戦闘奴隷たちの攻撃は苛烈なものだ。うっかり先に見つかって、先手を取られていたらと思うとぞっとする。
「ただ、こういう時、権能の加護があるってのは便利だな」
魔術による攻撃よりも物理的な攻撃の方が有効とにらんだニコラスは、スピアガンを抜き放ち、素早く連射を行う。
その攻撃を受けて、仲間の回復に当たっていた戦闘奴隷が大地に倒れる。
『浄化』の権能があるとは言え、年若い少女を攻撃するのにはどうにも躊躇が湧いてしまう。国に残した娘のことをどうしても思い出してしまうのだ。
一方で『浄化』の権能が使えないわけだが、その動きを一切鈍らせていないのは狼華だ。
神の寵愛を受けた刃は縦横無尽に戦場を駆け、戦闘奴隷へと着実に傷を与える。本来であれば恐れるべきであるその姿には、いっそ妖しい美しさがあった。
これがただの敵であれば、容赦なく急所へ刃を振り下ろしていただろう。しかし、殺気とは裏腹に狙いは戦闘奴隷の動きを封じることに注力するものだった。
「猿真似に負けるうちらやあらしまへんえ!」
波のように襲い掛かって来る風のマナをリズミカルに回避し、止まることなく狼華の斬撃が閃く。
「これは悪い夢。目が覚めたら全部忘れなはれ」
動きを止めた戦闘奴隷に向けられる言葉は、普段の狼華からすると考えられないほどに優しいものだった。
戦闘は着実に自由騎士の側に傾いていく。実際に魔道乙女と呼ばれる戦闘奴隷の力は確かに脅威だ。だが、漫然と命令を果たすだけの人形と、少女たちを救うという使命を持つ自由騎士とでは、土台勢いがちがう。
「私は年端もいかない子達が虐げられているのが許せません。なので、無理にでも連れ帰って助けます」
同じように魔術を使うフーリィンであるが、だからこそ魔術を使う腕前には歴然とした差があった。スキルの出力であれば、強化された戦闘奴隷の性能も決して低くはない。しかし、同じ速さの馬がいるのなら、それらの差は騎手が作る。両者の差はそのようなものだった。
そして、フーリィンにあるのはそれだけではない。
「大丈夫か、フーリーンさん!?」
「えぇ、フーリィンですけどねー」
飛んできた炎から身を守ったナバルに対して、フーリィンはいたずらっぽく微笑む。
いつもの癖で呼び名を間違えたナバルは、誤魔化すように戦闘奴隷に向き直り、吠えた。
「護りがオレの本職なんでね」
しかし、これが良い意味でナバルの怒りを和らげた。普段のやり取りをすることで、冷静に相手に向き合う余裕が生まれたのだ。
この話を聞いたときにはヘルメリアに絶望すらしていた。だが、この国を良くしようとする人間、この国に住む人々の幸せのために戦う人間だっている。みんなが仲良くできるように戦うことこそ、ナバルの本懐だ。
「まずは囚われいてる人たちを多く助けて、無駄な人死にを減らすんだ!」
気合一閃、槍から放たれた気の前に倒れていく戦闘奴隷たち。
まだ息があることを確認し、ナバルは安堵の息をつく。
「国家主導の合法的な奴隷制度? ――そんなもの知った事ですか!」
ナバルの様子を見て満足げな顔をしたフーリィンは、思い切り啖呵を切る。それで狙われたって怖くはない。彼女には回復術師を道具扱いせずに守ってくれる仲間がいる。
そんな自身と自信に満ちた回復スキルを操るフーリィンを前にして、戦闘奴隷たちに決定打を与える術はなかった。
それでもなお、攻撃を止めない少女に向かってオルパはゆっくりと狙いを定める。
「この状況でも戦いを止めない上、その目の光。ひどい薬を使ったもんだ。噂以上に非道な連中だぜ」
オルパが攻撃しようとしているのは目の前の世界に翻弄される少女ではない。この世界に起きる理不尽な運命そのものだ。かつては自身も苦しめられた。だからこそ、許せない。
「はじめまして、お嬢様。俺はオルパ。デートのお誘いに参上したぜ」
軟派な口説き文句と共に氷雨の矢が解き放たれる。魔弾の射手は天地を繋ぐ。誰が謳った文句か、その通りに。
オルパの矢を受けて、戦闘奴隷たちは倒れていく立ち上がる気力なんてものが無いのは最初から分かっていたことだ。
「囚われた亜人の救出、たしかに果たしたぜ」
●
カチリと小さな音を立てて、扉が開く。ニコラスは我が意を得たとばかりに笑みを浮かべる。
中に罠などが無いことを確認しながら、ナバルが中にいる少女たちに声をかけた。何者かが入ってきた気配におびえる少女たち。
「君たちを解放しにきた……もう大丈夫だから」
最初は怯えていた少女たちも、ナバルの言葉を聞いて安心したようだ。
それは、フーリィンの治療もあって、安心から信頼へと変わる。
「はいはーい。怪我をしている子はいませんかー?」
衰弱している娘もいたが、フーリィンの手当てもあって元気を取り戻す。中には戦闘奴隷に改造された者へ呼びかける娘もいた。
「さぁ、もう安心しぃや。助けに来はりましたよ」
狼華は優しい声で自意識を取り戻した戦闘奴隷の少女を慰める。
この場にあの男が関わっていなかったことに対して複雑な思いはある。しかし、それ以上に心中には自分と同じような年頃の子供を拐して売るような輩への怒りが渦巻いていた。
オルパはヨウセイという外見もあって、少女たちからの信頼は大きかった。ある程度彼女らが落ち着いた所で、戦闘奴隷のリーダーだった少女に肩を貸して撤退を促す。
「奴隷商人について行くより、もっといい目をみさせてあげられると思うぜ? そういえば君。この中に妹さんがいるんじゃなかったかな?」
言われて少女は、ようやく自分の妹の姿を見つけ出す。
その時、姉妹の目から零れる涙は、自我の無い人形の涙などではなかった。
「解放したらとっとと撤退しろってオーダーだったか。介助の手は必要か?」
ニコラスの言葉に導かれて、自由騎士たちに助けられながらも奴隷だった少女たちは移動を開始する。
ニコラスはヘルメリアの姿に思う所はあるが、今はそれを見せないことができる大人だった。
まだヘルメリアとの戦いは続く。
それでも、自由騎士たちの戦いはまぎれもなく、未来に向けて歩を進めるものだった。
ギルバークの街は年に1回のスレイブマーケットを迎えていた。街はちょっとしたお祭り騒ぎで、ヘルメリアの繁栄は花のように咲き誇っている。
しかし、その花は数多くの血と涙が育てたもの。ヘルメリアの栄華を支えるため、数多くの奴隷がその命を刈り取られているのだ。
「なるほど、アレが魔導乙女か。あと何年かすれば、俺のナンパ対象になりそうな逸材揃いだな」
ここはそんな奴隷を捕らえた倉庫の一つ。
『黒衣の魔女』オルパ・エメラドル(CL3000515)は、物陰で様子をうかがいながら、冗談交じりに笑みを浮かべる。
魔道乙女と呼ばれる少女たちは、巫女を思わせる神聖さを漂わせていた。場所によっては神の使い等としても通用するだろう。
その商品としての質の高さこそが、オルパを不快にさせていた。
(シャンバラじゃあミトラースがヨウセイを迫害していたが、ヘルメリアでは亜人全般が迫害されているのだな)
シャンバラの魔女狩りで家族と友人を失ったオルパにとって、ヘルメリアの亜人事情は決して他人事と呼べるものではなかった。
「趣味わっるいよなー。いや、需要があるってのは分からなくはないけどな」
冗談に応えるようにして、『その過去は消えぬけど』ニコラス・モラル(CL3000453)がへらっと笑う。
冗談めかしているがニコラスの内心は穏やかとは言えなかった。今でこそ自由騎士の1人として戦っているが、元を正せばかつてはヘルメリアで工作兵をやっていた身だ。
碌な身分ではなかったと自覚しているが、それも魔道乙女と呼ばれる少女たちに比べれば、幾分マシだったのかもしれない。それほどまでに、少女たちの有様は悲惨に見えた。
「不意を突ければ一番だけど、そうは問屋が卸さないか」
自我の無い戦闘用奴隷の一種という話だが、判断力が無いわけでもないようだ。ニコラスの観た所、多少の隠密ならば勘付かれるだろう。
もちろん、タイミングを見計らえばどうにかなる部分もあるが、自由騎士たちはその機会を待てるほど、時間に余裕を持っていない。そうなると、強襲を仕掛ける方が判断としては上々だろう。
自由騎士たちはいつ来るか分からない最善よりも、確実に自分たちが取れる有利を選ぶ。
「あぁっ、いくぜ!」
普段よりも低く抑えた声と共に、『たとえ神様ができなくとも』ナバル・ジーロン(CL3000441)が駆け出す。
実の所、チャンスが来るまでの間、ナバルが少女たちの姿に我慢できたかにしたって疑問が残る所だ。
少年と言うか青年と言うか、見る者によってナバルの評し方は変わるだろう。だが、どんな者も彼が「いいやつ」であることを否定はするまい。
無私の聖人というわけではないが、困った人に対しては精一杯の助力を行う。間違ったことには間違っていると言う。
そんな性質のナバルにとって、ヘルメリアの奴隷制度は到底許せるものではなかった。実際、この場に商人がいたら怒りのままに切り殺していたことだろう。怒りに身を任せるようにして攻撃を開始する。
対して、自由騎士たちの存在に気付いた戦闘奴隷の少女たちも、応戦を開始した。少女たちの詠唱に応じて現れた戦闘用の人形が自由騎士たちへと襲い来る。
その躊躇い無しに戦う姿を目に、『蒼光の癒し手(病弱)』フーリィン・アルカナム(CL3000403)はほうっと息を漏らす。
前々から悩んでいたのだ。
ヘルメリアの法では認められている奴隷制を、勝手な正義感で荒らして良いのかどうか。
ヘルメリアは奴隷制で人々を豊かにしていたし、この制度のお陰で平穏を得るものは奴隷の中にだっていたかもしれない。
だけど、少女たちの惨状はそういった逡巡を断ち切らせるのに十分なものだった。
「シンプルに。自分の感情に従っちゃいます」
言いたいことはいくつもあるが、言葉に出たのはそんなシンプルな一言だった。その言葉に従うようにして、辺りに漂う元素が自由騎士たちの傷を癒し、力を与える。
戦闘奴隷にも回復スキルを使うものはいる。だが、所詮は与えられたパターンに沿って回復を行うだけのもの。仲間の傷を癒やすことで戦い抜いてきたフーリィンとはキャリアがちがう。
こうなった自由騎士たちに恐れはない。
『道化の機械工』アルビノ・ストレージ(CL3000095)の呼び出した戦闘人形も勢いづいて、敵を押し返していく。
虚を突かれながらも戦闘奴隷の中でも治癒スキルを使えるものは回復に回ろうとした。しかし、それをやすやすと許さないのが『艶師』蔡 狼華(CL3000451)だった。
「ほな、もう仕舞いや」
狼華の動きに対して対応できる戦闘奴隷はいなかった。あるいは、近接戦闘型のものなら可能だったのかもしれないが、その類はこの場にいない。
時をも超えんばかりの速度で、狼華の刃が閃いた。
(半端な仕事や……あの男やない)
狼華の脳裏に一人の男の顔がちらつく。忘れたくても忘れられない男の顔だ。このような『作品』を作っても、あの男ならおかしくはない。
だが一方で、冷静な部分はあの男の所業でないことを悟っていた。あの男のやり方に似てはいても、違う部分を狼華はたしかに感じていた。だからと言って、胸に感じる不快感が拭い去れるわけでもないが。
「……はぁん、嫌やな男の顔がチラつく。胸くそ悪いわ、早々にカタ着けましょか」
血の匂いに軽い酩酊感を覚えながら、狼華は闇夜を背に薄く笑いを浮かべるのだった。
●
自由騎士たちが警戒した通り、戦闘奴隷たちの戦闘力は決して侮れるものではなかった。意志を持たないが故の統率力と薬物で強化された魔力は、決して侮れるものではない。
「面倒なんだよな、こういうのは」
ニコラスの口からそんな言葉が漏れるのも無理はない。態勢を整えた戦闘奴隷たちの攻撃は苛烈なものだ。うっかり先に見つかって、先手を取られていたらと思うとぞっとする。
「ただ、こういう時、権能の加護があるってのは便利だな」
魔術による攻撃よりも物理的な攻撃の方が有効とにらんだニコラスは、スピアガンを抜き放ち、素早く連射を行う。
その攻撃を受けて、仲間の回復に当たっていた戦闘奴隷が大地に倒れる。
『浄化』の権能があるとは言え、年若い少女を攻撃するのにはどうにも躊躇が湧いてしまう。国に残した娘のことをどうしても思い出してしまうのだ。
一方で『浄化』の権能が使えないわけだが、その動きを一切鈍らせていないのは狼華だ。
神の寵愛を受けた刃は縦横無尽に戦場を駆け、戦闘奴隷へと着実に傷を与える。本来であれば恐れるべきであるその姿には、いっそ妖しい美しさがあった。
これがただの敵であれば、容赦なく急所へ刃を振り下ろしていただろう。しかし、殺気とは裏腹に狙いは戦闘奴隷の動きを封じることに注力するものだった。
「猿真似に負けるうちらやあらしまへんえ!」
波のように襲い掛かって来る風のマナをリズミカルに回避し、止まることなく狼華の斬撃が閃く。
「これは悪い夢。目が覚めたら全部忘れなはれ」
動きを止めた戦闘奴隷に向けられる言葉は、普段の狼華からすると考えられないほどに優しいものだった。
戦闘は着実に自由騎士の側に傾いていく。実際に魔道乙女と呼ばれる戦闘奴隷の力は確かに脅威だ。だが、漫然と命令を果たすだけの人形と、少女たちを救うという使命を持つ自由騎士とでは、土台勢いがちがう。
「私は年端もいかない子達が虐げられているのが許せません。なので、無理にでも連れ帰って助けます」
同じように魔術を使うフーリィンであるが、だからこそ魔術を使う腕前には歴然とした差があった。スキルの出力であれば、強化された戦闘奴隷の性能も決して低くはない。しかし、同じ速さの馬がいるのなら、それらの差は騎手が作る。両者の差はそのようなものだった。
そして、フーリィンにあるのはそれだけではない。
「大丈夫か、フーリーンさん!?」
「えぇ、フーリィンですけどねー」
飛んできた炎から身を守ったナバルに対して、フーリィンはいたずらっぽく微笑む。
いつもの癖で呼び名を間違えたナバルは、誤魔化すように戦闘奴隷に向き直り、吠えた。
「護りがオレの本職なんでね」
しかし、これが良い意味でナバルの怒りを和らげた。普段のやり取りをすることで、冷静に相手に向き合う余裕が生まれたのだ。
この話を聞いたときにはヘルメリアに絶望すらしていた。だが、この国を良くしようとする人間、この国に住む人々の幸せのために戦う人間だっている。みんなが仲良くできるように戦うことこそ、ナバルの本懐だ。
「まずは囚われいてる人たちを多く助けて、無駄な人死にを減らすんだ!」
気合一閃、槍から放たれた気の前に倒れていく戦闘奴隷たち。
まだ息があることを確認し、ナバルは安堵の息をつく。
「国家主導の合法的な奴隷制度? ――そんなもの知った事ですか!」
ナバルの様子を見て満足げな顔をしたフーリィンは、思い切り啖呵を切る。それで狙われたって怖くはない。彼女には回復術師を道具扱いせずに守ってくれる仲間がいる。
そんな自身と自信に満ちた回復スキルを操るフーリィンを前にして、戦闘奴隷たちに決定打を与える術はなかった。
それでもなお、攻撃を止めない少女に向かってオルパはゆっくりと狙いを定める。
「この状況でも戦いを止めない上、その目の光。ひどい薬を使ったもんだ。噂以上に非道な連中だぜ」
オルパが攻撃しようとしているのは目の前の世界に翻弄される少女ではない。この世界に起きる理不尽な運命そのものだ。かつては自身も苦しめられた。だからこそ、許せない。
「はじめまして、お嬢様。俺はオルパ。デートのお誘いに参上したぜ」
軟派な口説き文句と共に氷雨の矢が解き放たれる。魔弾の射手は天地を繋ぐ。誰が謳った文句か、その通りに。
オルパの矢を受けて、戦闘奴隷たちは倒れていく立ち上がる気力なんてものが無いのは最初から分かっていたことだ。
「囚われた亜人の救出、たしかに果たしたぜ」
●
カチリと小さな音を立てて、扉が開く。ニコラスは我が意を得たとばかりに笑みを浮かべる。
中に罠などが無いことを確認しながら、ナバルが中にいる少女たちに声をかけた。何者かが入ってきた気配におびえる少女たち。
「君たちを解放しにきた……もう大丈夫だから」
最初は怯えていた少女たちも、ナバルの言葉を聞いて安心したようだ。
それは、フーリィンの治療もあって、安心から信頼へと変わる。
「はいはーい。怪我をしている子はいませんかー?」
衰弱している娘もいたが、フーリィンの手当てもあって元気を取り戻す。中には戦闘奴隷に改造された者へ呼びかける娘もいた。
「さぁ、もう安心しぃや。助けに来はりましたよ」
狼華は優しい声で自意識を取り戻した戦闘奴隷の少女を慰める。
この場にあの男が関わっていなかったことに対して複雑な思いはある。しかし、それ以上に心中には自分と同じような年頃の子供を拐して売るような輩への怒りが渦巻いていた。
オルパはヨウセイという外見もあって、少女たちからの信頼は大きかった。ある程度彼女らが落ち着いた所で、戦闘奴隷のリーダーだった少女に肩を貸して撤退を促す。
「奴隷商人について行くより、もっといい目をみさせてあげられると思うぜ? そういえば君。この中に妹さんがいるんじゃなかったかな?」
言われて少女は、ようやく自分の妹の姿を見つけ出す。
その時、姉妹の目から零れる涙は、自我の無い人形の涙などではなかった。
「解放したらとっとと撤退しろってオーダーだったか。介助の手は必要か?」
ニコラスの言葉に導かれて、自由騎士たちに助けられながらも奴隷だった少女たちは移動を開始する。
ニコラスはヘルメリアの姿に思う所はあるが、今はそれを見せないことができる大人だった。
まだヘルメリアとの戦いは続く。
それでも、自由騎士たちの戦いはまぎれもなく、未来に向けて歩を進めるものだった。