MagiaSteam
HornHorse! 好色暴食幻想種!



●一角獣と二角獣
 ユニコーン。
 動物型幻想種の中ではメジャーな部類に入るだろう。一角獣とも呼ばれ、純潔を司る聖なる獣とも言われている。生命を操る魔力を角に宿し、ユニコーンライダーが三騎いれば戦死者無しとまで言われたほどである。
 そしてバイコーン。
 ユニコーンの対になる幻想種で、ユニコーンが純粋を司るなら、バイコーンは不純を司るという。ユニコーンと異なる点では頭から生えた角が二本であることが挙げられ、二角獣とも称されるという。
 バイコーンは善良な男性や恐妻家の夫を喰らうと言われ、処女を求めるユニコーンの天敵とも言われていた。なんでって? タチの悪い男が増えるとその手の犯罪がふえてげふんげふん。あと妻を恐れて夜は手を出さないとげふんげふん。
 その角が良質の魔法役の材料になることから狩りの対象とされるが、双方ともに凶暴で賢く、並の狩人では立ち打ちできない程の存在だ。
 ユニコーンは清らかな乙女に心を許すという伝承があり、よく吟遊詩人の語り歌になっている。数多の弓矢をものともしない獣でも、穢れを知らない女性には勝てないというギャップが喝さいを浴びるのだ。
 まあ――現実はそんなに甘くはないのだが。

「おう、ユニコーン。最近調子はどう?」
「そこそこええ感じやで。若くてかわいいねーちゃんに弱いふりしてれば、良い目見れるからなぁ。バイコーンはどうなん?」
「こっちもええ感じやわ。好物の草食系男子が増えてお腹パンパンや。国のモラルが高くなると引きずられて性格よくなるからなぁ」
「そうそう。春を売らんでもなんとかなる政治を始めてくれたおかげで、その辺の女もまだ未使用や。もー、しんぼうたまらんで」
「ブヒヒン! 致せりつくせりや。自分ら喧嘩せんですむしいいことづくめやで。ほな行きましょか」
 一角獣と二角獣は笑いながら人里へと近づいていくのであった。
 バイコーンが人里で暴れて男を喰らい、女性が増えたところでユニコーンが近づきこの身の女性に身を寄せる。乙女に促される振りをしてバイコーンを追い出すように戦い、ユニコーンは(乙女にセクハラした後)颯爽と去っていく。二頭はそんな茶番でお互いの欲を満たしていた。

●階差演算室
「――と言うわけである」
『長』クラウス・フォン・プラテス(nCL3000003)は集まった自由騎士達に事の経緯を告げる。ユニコーンに幻想を抱いていた物がショックを受けているが、構うことなくクラウスは説明を続けた。
「この幻想種に狙われる村は水鏡の予知で解っている。幻想種が村に到着する前に接触し、打破してほしい」
 クラウスは地図を広げ、羽ペンで印をつける。人里近くにある湖。そこで幻想種達は相談しているという。
「魔術に精通し、角を使った近接戦闘能力も高い。頭もよく、連携して戦うことになれば相応の被害を受けるだろう。
 だがかの幻想種は色気に弱いという。上手く使えば不意打ちに利用できるやもしれん」
 ユニコーンは(性的に)女性を。バイコーンは(食欲的に)男を求めるという。彼らが求めるような演技でもすれば成功率は高まるだろう。
「不埒な幻想種からイ・ラプセルの民を守ってくれ。よろしく頼むぞ」
 クラウスの声に送られて、自由騎士達は演算室を出た。



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
魔物討伐
担当ST
どくどく
■成功条件
1.幻想種二体の打破
 どくどくです。
 この世界全てのユニコーン&バイコーンがこうではない……はず……。

●敵情報
・ユニコーン
 馬の幻想種です。一角獣。毛色は白。人族女性大好きです。清らかであれば喜びますが、そうでなくてもOKです。性的にスキンシップ(意訳)するのがライフワークだとか。
 女性の気配に敏感で同時に見下していることもあり、囮を仕掛けられるとは思っていません。
 
 攻撃方法
一角 攻近単  角で突き刺し、相手の生命力を乱します。【生命逆転】
蹄鉄 攻近範  前足で近くにいる敵を蹴っていきます。
魔弾 魔遠単  無属性の魔力の弾丸を放ちます。【二連】
癒角 魔近味単 癒しの力を持った角で回復します。
乙女の加護 自 純潔を司る幻想種。性別:女性から受けるダメージを半減します(6T)。

・バイコーン
 馬の幻想種です。二角獣。毛色は黒。人族男性大好きです。食欲的に。善良であればいいですが、こだわりません。いいじゃないか。こういうのでいいんだよ。こういうので。
 男性の気配に敏感で同時に見下していることもあり、囮を仕掛けられるとは思っていません。

 攻撃方法
二角 攻近単  二本の角で突き刺します。【二連】
噛み 攻近単  力強くかみついてきます。【必殺】
突撃 攻近貫2 馬の脚力を角に乗せ、突撃してきます。(100%、50%)
穢れ 魔遠範  陰気を放ち、肉体と精神を病ませます。【ポイズン2】【アンガー1】
男を喰らう 自 世界を不純に穢す幻想種。全ての攻撃に『攻撃する対象が男性の時【防御力無視】』が乗ります(6T)

●場所情報
 イ・ラプセル南部の村近くにある湖。岩陰など身を隠す場所はあり、誘い込む場所も複数存在します。それっぽい動作をすれば、誘い出すことは可能です。
 戦闘開始の状況は作戦内容によって変化するでしょう。基本、プレイングは好意的に受け取りますので、色々練ってみてください。作戦とメンバーによっては両幻想種を20メートル以上放れた場所で囲むことも可能です。
 事前付与は好きなだけできますが、時間が経てば幻想種に気づかれる可能性が増えます。ご利用は計画的に。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
6個  2個  2個  2個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
参加人数
8/8
公開日
2019年01月12日

†メイン参加者 8人†




「コンビ幻想種の撃破だね!」
 ユニコーンとバイコーンを遠目で見ながら『『豪脚』ローゼ』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は拳を握る。マッチポンプ的に騒ぎを起こし、自分自身の欲を満たそうとする幻想種。どかん、と行って一気に解決しようという意気込みが見て取れた。
「さすがのローラも幻想種相手の誘惑の経験はあんまりないんだよねぇ……」
 言って腕を組む『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)。あんまり、ということは未経験ではないのである。誰だよそんなシナリオ書いたのは。それはともかく、誘惑の為に用意してきた服を指でつまむ。よし、問題ないと頷いた。
「二匹とも残念な幻想種だよねー」
 階差演算室で聞いた話を思い出しながら『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)はため息をつく。演劇でも語られるユニコーンの逸話。それとは真逆の乙女の天敵。その毒牙が無辜の民に向く前に、倒してしまおう。
「ふらち? ってのはよくわかんないけど……こらしめてあげればいいんだよね」
 たてがみは綺麗なんだけどなー、と『黒砂糖はたからもの』リサ・スターリング(CL3000343)は呟いた。まだ幼いリサはユニコーンがどういうことをするのかとかは知らないけど、女性を狙うということは理解している。
「さて、僕の場合はどうなるのかな」
 顎に手を当てて『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は思考する。バイコーンは男性に影響する能力を持ち、ユニコーンは女性に対する防御がある。ならどちらかわからない僕はどうなるのか。強い興味があった。
「バイコーンの囮……どうやれば狙われやすくなるのだろうか?」
 ロイ・シュナイダー(CL3000432)は遠くのバイコーンを見ながら考える。善良な男性や恐妻家な男を狙うと言われているが、具体的にはどうすればいいのかが分からない。とりあえずいろいろ試してみよう。
「ロイがバイコーンの囮になる……」
 悩むロイを見ながらタイガ・トウドラード(CL3000434)は複雑な表情を浮かべる。作戦内容に不満はない。だが、その為にロイを危険にさらすのは忸怩たる思いがある。出来る事なら自分以外は誰も危険にさらしたくない。そんな表情だ。
「ユニコーンにバイコーン。意外とクズよね」
『聖母殺し』ライカ・リンドヴルム(CL3000405)はため息と共に幻想種に対する感想を口にした。男性を喰らい、女性に取り入る幻想種コンビ。全てのバイコーンとユニコーンがそうではないのだろうが、それでもあの二体は許しておけない。
 だがその性格そのものが幻想種の弱点となる。人を侮り、我欲を満たすための道具としてしか見ていない二匹。その油断と傲慢を利用するのだ。
 自由騎士達は頷きあい、配置につく。


「はふぅ、ユニコーンだわ……アッチも馬並なのかしらぁ」
 艶のある声を出すローラ。ローラの格好は薄い桃色の聖衣だが、太ももや胸を強調するように所々短くなっていた。肌を冬の寒さに晒すことになるが、そんなことはローラにとって問題ない。対策はバッチリだった。
「角の生えたお馬さん、かっこいい!」
 元気のいい子供のような――事実、元気がいい子供なのだが――声をあげるカーミラ。幼い顔つきながら十分に育ったふくよかな胸。動きやすさを重視してスリットの入ったスカートから除く太もも。ユニコーンの目はそれを見逃さなかった。
「……よくは解らないが、大丈夫なのだろうか?」
 性的な知識に疎いライカは二人の行為に首を捻る。冷静に見れば、怪しいことこの上ない。幾多の狩人の罠を潜り抜けたユニコーンがそんなあからさまな誘いに引っかかるわけが――
「ブヒヒン! 夜のおねーちゃんとロリ巨乳や!」
 引っかかりました。
「ねえ。お馬さんの逞しい<検閲削除>でローラを穢してほしぃのぉ」
「わー。背中乗せて。むぎゅってしちゃう」
 媚びるようにローラがユニコーンに手を伸ばし、ユニコーンの背に乗るカーミラ。ユニコーンも遠慮なくローラやカーミラに触れながら、涎を垂らしていた。
「ええでええで。うほほ。こりゃ上玉や。
 ねーちゃんが醸し出すのは穢れなき乙女ではありえへん経験が生み出す魅力! 触れれば男をその気にさせる嬌声と体の反応! 徐々に上気する肌が生み出す誘いと優しくオトコを引き寄せる手管。まさに快楽の底なし沼やぁ!
 そしてこっちのロリちゃんは無知故に遠慮のないスキンシップ! 遠慮のない抱き着きとそれが生み出す密着! 秘密の花園を無防備にさらし、しかし穢れなき笑いで心を癒すエロとヒーリングのダブル効果! その無垢な純情を背徳で染め上げたいわ!」
「ああん、お・じ・ょ・う・ず」
「わーい。よくわからないけど褒められたー」
「意味は解らないけど、背筋に悪寒が走る。殴ろう」
 ユニコーンが自由騎士達に誘導されると同時期に、バイコーンも誘われていた。
「とりあえず、釣りでもしてみるか……」
 ロイは釣竿を手に湖に近づく。バイコーンを見ないようにしながら、釣り糸を垂らした。
「待ちぃな、兄ちゃん。誰に断ってここで釣りしとんねん」
 それを見たバイコーンが絡んでくる。ガラの悪いチンピラそのものだ。
「許可がいるのか。それはすまない。今日の夕ご飯の為に何匹か魚を釣らせてもらえないか? 許嫁が待っているんだ」
「許嫁――仲睦まじき呼び方――つまりそこまで関係が進んでいるということは、共に経験済みということやな」
 いきなり興奮したかのようにしゃべりだすバイコーン。ロイが何かを言うより早く、
「金髪でその筋肉。名うての戦士やな。許嫁のために剣を取り、、許嫁の為に戦地に向かう。世界の平和でなく、ただ一人の女性のために命を懸けるってところか。名誉や浪漫ではなく、女の為に。見事や、今日の夕食はお前に決めたで」
「よく分からんが、ロイに手を出させはしない」
「二匹の下手な芝居の事はもうバレてるんだよ、キーック!」
「囲んで一気に倒しちゃうよ!」
「もちろんだ。ここで止めさせてもらおう」
 ロイを守るためにタイガが割って入り、カノンが不意打ちでバイコーンを蹴っている間にリサとマグノリアがバイコーンを逃がさないように封鎖する。
「これは……まさか人間如きが!?」
 ようやく罠と気づく幻想種。しかし時すでに遅し。二匹は互いに干渉できないほど分断されていた。
 あとは各個撃破するのみ。自由騎士達はマキナ=ギアから武器を取り出し、構えを取る。
「ブヒヒン! せやけどまだ負けたわけやあらへん! あんたらを倒して色々おさわりして気持ちよくさせて『ああん、ユニコーン様ぁ、もう貴方なしでは生きてけへんのぉ。どうにでもしてぇ』と言わせて従順にした後に一晩楽しんだ後でバイコーンと合流すれば勝ち目はあるんや!」
「ブヒヒン! せやけどまだ負けたわけやあらへん! あんたらを倒して色々味見した後に『やめろ! 仲間に手を出すならこの俺を! 俺が犠牲になるから仲間は見逃してくれ!』的なセリフを吐かせたのちに前菜とスープからのコース料理で頂いたのちにユニコーンと合流すれば勝ち目はあるで!」
 異なる戦場で、そんなことを言うユニコーンとバイコーン。だめだこいつらはやくなんとかしないと。
 幻想種の妄想を現実化させない為に、自由騎士達は戦いに挑む。


 ユニコーン側には女性が三人。女性の攻撃に耐性があるユニコーンだが、
「思いっきりぶん殴る!」
 ライカは構わずに攻撃を仕掛ける。不可視の壁に殴った衝撃が吸収されるが、構うことなく再度拳を振り上げた。一撃で倒せないなら二度殴ればいい。殴って倒せるのなら、殴るまでだ。
 ユニコーンの頭が動くのを目は四で捕えると同時に、ステップを踏んで移動するライカ。足を止めるな。思考を止めるな。常に動き、そして攻める。それがライカという自由騎士の戦闘スタイル。その信念を刃として、ユニコーンの角を叩く。
「その角、集中して叩けば折れるかしら?」
「おまっ、恐ろしいこと言うなや! これはワイの象徴やで!」
「んふふー。ヨワい場所をローラに晒しちゃって。イジメてほしいの?」
 唇に指をあてて、ローラが微笑む。指を責めるように動かして、相手に動作と好意を想像させるようにして微笑んだ。性的な知識に疎いカーミラとライカはその意味は分からなかったが、ユニコーンは解ったのか背筋を震わせる。
 ユニコーンの角で傷ついていないことを確認し、ローラは魔力を展開する。薄いスカートを翻し、回るように魔力を放出した。生命を癒す魔力の光。それが仲間を包み込み、傷を癒していく。
「まだまだ元気ねっ。やーん、ローラの方が先に(MPが)果てちゃうかもぉ」
 一応言うと、ユニコーンの防御力が高いため先に回復で使うMP切れるかも、という意味です。
「とう! やぁ! たー!」
 ユニコーンから振り下ろされたカーミラは、転がるように受け身を取ってすぐに反撃に移行する。行く手を阻むようにユニコーンの真正面に立ち、拳を握って立ち向かう。相手の実力を知りながら、しかし臆することなく真っ直ぐに。
 体内に巡らせた『龍』の流れを意識しながらカーミラは半歩踏み出す。同時に突き出した拳がユニコーンの鼻を叩き、生じた隙を逃すことなく跳躍して両足で蹴り上げた。着地と同時に全身を叩きつけるように突撃し、頭の角を叩きつける。
「硬ーい! でも殴り続ければいつかは倒れるよね!」
「げヘヘヘ。その前にワイが押し倒してええことしたるわ!」
 対女性ゆえにまだ余裕があるユニコーン。しかし付与が切れた瞬間に大打撃を受ける未来を、まだ知らない。
 そしてバイコーンサイドも、
「ロイは私が守る」
 バックラーとライオットシールドを構え、タイガがバイコーンの前に立つ。腕に固定したバックラーと、前面を守るライオットシールド。異なる形の盾を苦も無く振るい、仲間を守る盾となる。それがタイガのスタイルだ。
 バイコーンの突撃をライオットシールドで防ぐタイガ。二本の角から来る衝撃を、紙面を踏みしめて受け流す。追撃を仕掛けようとするバイコーンの視界を遮るようにバックラーを割り込ませ、盾を動かして視線を誘導する。仲間を守るために。
「私は皆の盾になる。私を倒さない限り、だれも倒せないと知れ」
「ブヒヒン! 女に用はないんや! とっとといね!」
「タイガを傷つけるというのなら、許しはしないよ」
 銃剣を手にしてバイコーンに挑むロイ。タイガの動きに合わせるように突撃し、バイコーンの角を打つように武器を振るう。その言葉に偽りなし、とばかりに力を込めて許嫁を守るように立ち振る舞う。
 槍のように銃剣を振るい、バイコーンの角をさばいていくロイ。二本の角に押されながら、しかし負けじと銃剣を持つ手に力を籠める。力負けしたバイコーンが逃げるように離脱し、それを追うようにロイは引き金を引いてバイコーンの足を撃つ。
「どうしたの。男を食いたいんだろう?」
「おまっ、酷いでそれ。おまんまぶら下げて吊るとか!」
「作戦ですからね。卑怯と罵る余裕は与えませんよ。貴方達だって似たようにして村人を嵌めようとしたのですから」
 聖遺物を手にマグノリアが口を開く。相手は何も知らない村人を騙そうとした幻想種だ。罠に嵌めても罪悪感などありはしない。人間を舐めてかかった罰をしっかり受けてもらおう。
 体内で魔力を回し、術式を組み立てる。既にかけてある魔力強化の術式が魔法陣の展開を加速させ、更なる魔力がマグノリアの体内で膨れ上がる。人の中に流れる生命の流れ。放たれた魔力はその流れを正すように展開されていく。
「どうやら僕にはユニコーンとバイコーンの付与は意味を為さないようだね。いい実験になったよ」
「性別分からへん奴は苦手やー」
「なんで男とか女に拘るのかなぁ?」
 バイコーンの言葉に小首をかしげるリサ。まだ幼いリサは異性に対しての想いがどのようなものか、まだ理解が薄い。まあ、ここまで濃ゆい思いは流石に理解できる人は少ないだろうが。ともあれ疑問を抱いたまま、しかし迷わず拳を握る。
 バイコーンの退路を断つように動くリサ。仲間の動きを見て、包囲の穴をふさぐように移動し、間合を詰める。バイコーンの後ろ蹴りを横に飛んで交わし、着地と同時に一気に迫る。繰り出されるリサの拳が、バイコーンを打つ。
「早く倒して、ユニコーン側と合流するよ!」
「役者の端くれとして、悪い事をする大根役者はお仕置きしてやるんだから!」
 言いながらカノンは拳を振るう。役者は人を楽しませるために努力し、舞台に立つ。自分の楽しみのために演技をする奴は、役者ですらない。しっかり引導を渡して、今までの悪事を反省させるのだ。
 ガントレットを嵌め、二本の角の軌道を逸らしながらカノンはバイコーンに挑む。アクロバティックに動きながらもけして転ぶことなく攻め回り、隙を逃さず拳を叩き込む。たゆまぬ鍛錬が生み出した安定した体幹。それは役者としても格闘家としても役立っていた。
「カノンのすぺしゃるぱんちをプレゼントするよ!」
 二つの戦場に分かれた自由騎士達。先に決着がついたのは、人数と相性もあってバイコーン側だった。
「あいたたた……」
 リサが二つの角でフラグメンツを削られるが、唯一の『男性』であるロイをタイガが守り、マグノリアの癒しを基点として逃げ道を封鎖して追い込んでいく。
「これで終わりだねー」
 ロイの銃剣がバイコーンの眉間に突き刺さる。その衝撃で崩れ落ちるバイコーン。
 そしてバイコーンを倒した自由騎士はユニコーン側に向かう。
「まだまだ負けないからねー!」
 ユニコーンの矢面に立っていたカーミラが大怪我を受けてフラグメンツを燃やす。女性に対する防御力を持つユニコーンと、回復効果を逆転させるユニコーンの角。その二つの特性がじわりじわりと三人の自由騎士達を追い込んでいく。――が、
「男の攻撃だったら問題なく通るよな。行くよー」
 しかしバイコーンを倒した自由騎士が参戦すれば、形勢は一気に逆転する。ユニコーンの回復能力が高くとも、数で圧されればどうしようもない。
「これで終わりだ。実験終了だよ」
 マグノリアの放った魔力がユニコーンに絡みつき、低温を生む。冷風の動きに沿うように氷の蔦が生まれ、冷気と凝固の二重の鎖でユニコーンを縛り上げていく。低温で体力を奪われたユニコーンにその縛を解く力はない。
「もーあかんわ……」
 そんな言葉と共に、一角の幻想種は力尽きた。


「大人しくしてな」
 クマのケモノビトが自由騎士を回復した後に、幻想種二匹に逃げられないように足に鎖と重しをつける。抵抗の意味なしと諦めたように二匹はうなだれていた。
「この二匹どうしようか?」
「去勢と抜舌」
「馬肉って美味しいと思うんだよねー」
「ローラがノンケにしてあげようか?」
「「すんませんすんませんほんとすんません」」
 自由騎士達の提案に、土下座するように頭を下げる二頭。まあ、元々四足歩行なのだが。
「男を食べる、と言っても殺すほど食べてるわけじゃない……まあ、それでも害獣なんだが」
「かといって放置もできないし……こういう時は国に任せるか」
 というわけでマキナ=ギアで連絡を取ったところ、騎士団で引き取って強制労働の扱いとなった。扱いとしては人間の犯罪者と同等の扱いである。文字通り馬車馬のように働かされるとか。
「「そんな殺生な~」」
 それでも命があるだけまし、とばかりに納得するユニコーンとバイコーン。その治癒能力もフルに使えば、二年程働けば解放されるという。
「ブヒヒン! 女以外に治癒能力なんてやれるかよどうしてもというならおっぱいひともみさせるならともかくうそですごめんなさい」
「ブヒヒン! 男食うなとか坊主ちゃうねんから無理やわこうなったらばれへんようにこっそりとじょうだんですまじすんません」
 不服ではあるが、逃れる術はない。二頭はぶーぶー言いながらも騎士団に連行されるのであった。

 かくして事件は終わりを告げる。
 ユニコーンとバイコーンは不服ながらも軍の強制労働に服し、それなりにまじめに働いているという。……うっとうしいぐらいにやかましいのが玉に瑕だが。
 伝説に憧れてその背中に乗ろうとする騎士もいたが、あまりの暴れっぷりに諦めざるを得なかった。幻想種を乗りこなそうとするなら、相応の技量が必要なのだろう。
 二頭に狙われるはずだった村は、今日も平和に過ごしている。村人が幻想種の被害に悩むことはない。
 その事実が、自由騎士達の最大の報酬だった。


†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『幻想誘惑人』
取得者: ローラ・オルグレン(CL3000210)

†あとがき†

どくどくです。
 幻想種、途中から自分が喋ってるような錯覚を受けました。なんでこいつこんなに書きやすいんだ。どくどくは清楚な人だというのに。

 以上のような結果になりました。きっちり二分されて各個撃破。
 二頭同時だと、ユニコーンが庇いつつバイコーンが攻めたりとめんどい戦い方をする予定でしたので、被害は少なかったと思われます。
 MVPはユニコーンの誘いが一番クリティカルだったオルグレン様に。でもマギアスティームは全年齢。どくどくが言うな? 知らぬ!

 それではまた。イ・ラプセルで。
FL送付済