MagiaSteam
Keep! 守れニルヴァンの環境を!



●闇の中から
「寒くなった。これは――『聖櫃』がなくなったのか?」
「あの騎士団が去ったのか。ならもう怖くはない」
「作ろう作ろう。我らの武具を作ろう。魔を帯びた呪剣を作ろう」
「攫おう攫おう。我らの贄を攫おう。埋めて、苦しませて、怨嗟を貯めよう」
「川を黒く染め、大地を赤く染め、我らの国を立ち上げよう。孕ませ、子を増やし、支配しよう」
「ウジ虫を崇める国を。我ら黒アールヴの国を」

●自由騎士
 シャンバラ、ニルヴァン――
 先のS級任務の結果、イ・ラプセル自由騎士が占拠した小管区だ。聖霊門により移動が可能となったこの地を橋頭保とし、シャンバラ攻略の足掛かりとなる場所である。
 が――
「なんだこの寒さは……」
 常春と言われたシャンバラではありえない冷風が吹き荒れていた。地面には霜が生え、作物など満足に育つ環境ではない。要塞を作る以前の問題で、環境を整えることが最初の目的となった。防寒用の服を持ち込み、暖炉や耐冷用の建物の建築。準備のための準備から始まることになる。
「黒アールヴだ」
 そんな環境の中 『ペストマスクの医者』サイラス・オーニッツ(nCL3000012)は怒りを含めた声でそう報告する。
「ここより南西にある岩山。そこにある洞窟で奴らの姿を見たという報告が上がってきた。
 既に川を汚染し、飲み水に影響が出始めている。早急に退治しなければ病魔に苦しむことになるだろう」
 黒アールヴ。
 土より暗いと言われる人間型幻想種だ。邪悪な性格で、その周辺に住む者に災厄と病魔を運ぶと言われている。
「記録によればかつてはシャンバラ国民も彼らに苦しめられたという。騎士団に追い込まれて山にこもったらしいが、ニルヴァンの環境変化に応じて顔を出したのだろう」
 イ・ラプセルに気づいているというわけではないが、今後の活動を考えれば放置はできない。説得して味方になるような性格ではないのは、過去の事件簿から立証済みだ。
「水鏡によれば奇妙奇天烈な魔導器具を駆使しているらしい。が、殴れば壊れるらしいので問題ない」
 サイラスが見せた羊皮紙には、洞窟内一杯に足を延ばす蜘蛛のような何かが書かれてあった。絵心ないのかこの人?
「さて、行こう。病魔を滅するために」
 病気関係だと積極的なペストマスクが出発を促す。貴方はその医者の誘いを――



†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
新天地開拓σ
担当ST
どくどく
■成功条件
1.黒アールヴ3体の撃破
 どくどくです。
 シャンバラ編本格開始。先ずは環境整備から。

●敵情報
・黒アールヴ(×3)
 巨人の蛆から生まれたとされる人間型幻想種です。身長1mほどの小人……が蜘蛛のような2mほどの多脚型魔動機に乗っています。動力源が『生後1か月の赤子に入れ墨を刻み、生きたまま土に埋めて苦しませた魂』等なため、大量生産は不可能です。
 手先が器用で、魔導器具を作るのに長けます。性格は邪悪で、交渉はできません。ですが強い者に逆らうつもりはなく、倒されれば従います。

 攻撃方法
八足の刺 攻近単 蜘蛛の足で突き刺してきます。【二連】
投擲魔具 攻遠範 爆発する魔導器具をスリングで撃ち出してきます。
黒の吐息 魔遠全 病魔を振りまきます。【ダメージ0】【ポイズン2】【ウィーク1】
蜘蛛糸  魔遠単 蜘蛛のような糸を吐き、締め付けてきます。【パラライズ1】
八つ足  P   安定した多脚構造。地面のペナルティを打ち消します。
闇視   P   闇に住む種族の視界。暗闇のペナルティを打ち消します。

●NPC
『ペストマスクの医者』サイラス・オーニッツ(nCL3000012)
 夜道で見たら子供が泣きそうな格好の医者です。
『メセグリン Lv2』『クリアカース Lv2』『ハーベストレイン Lv2』『ブリギッテの祈り』等を活性化しています。

●場所情報
 黒アールヴの住む洞窟。明かりはなく(命中にペナルティ)、足場も凹凸が激しい(回避にペナルティ)です。広さは充分あるものとします。ペナルティは相応の装備及び技能で緩和されます。
 戦闘開始時、敵前衛に『黒アールヴ(×3)』がいます。
 水鏡で遭遇場所と時間が分かっているため、事前付与は一度だけ可能とします。

 皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
報酬マテリア
2個  2個  2個  6個
10モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
8/8
公開日
2019年01月27日

†メイン参加者 8人†




「この寒さも懐かしく感じるなあ。砦超えたらほんと急に寒くなったんだよな」
 しみじみと呟く『RED77』ザルク・ミステル(CL3000067)。ザルクはこのニルヴァンを橋頭保とすべく送り込まれた任務の事を思い出していた。常春と言われた温暖な空気が、突如冷え込んだのだ。あれにはびっくりした。
「おー寒い。煙管の火が消えちゃいそうだわ」
 煙管を揺らしながら『黒道』ゼクス・アゾール(CL3000469)は体を震わせる。聖霊門を通ってニルヴァンにやって来て困ったことはこの寒さと、煙管の葉を何処で仕入れようかということだった。
「折角確保した拠点を汚染されるのは、なんとか食い止めなくちゃ!」
 スナイパーライフルの調子を確認しながら『ピースメーカー』アンネリーザ・バーリフェルト(CL3000017)は決意をあらわにする。この場所は必至の思いと行動で獲得した場所なのだ。それが汚されるのはこれまでの努力を無にされるようで許せない。
「災厄と病魔を運ぶ困ったさん達、反省が不可能なら退治も止む無しですね」
 流れる川を見ながら『少年聖歌隊』ティア・ブラックリップ(CL3000489)は呟いた。今はまだ透明度が高い普通の水だが、黒アールヴが本格的に動き出せばこの川も毒で染められるという。戦いは苦手だが、仕方のないことだ。
「黒あーぶるって奴らの乗り物、とんでもない物を動力源にしてるし。悪い事をする連中は殴ってボコって懲らしめちゃわないとね!」
 アールヴな、と皆に突っ込まれる『太陽の笑顔』カノン・イスルギ(CL3000025)。笑うカノンだが、だがあまり気にした様子はない。重要なのは彼らを許しては置けないという一点だ。
「邪なる者、か。生まれ落ちたからにはこの世界にとって必要な命なのだろう」
 硬い表情で悩む『挺身の』アダム・クランプトン(CL3000185)。任務である以上、アールヴと戦うことに異存はない。だが話し合いで解決できないものかと悩む自分もいる。この世界に生まれた以上、生き続けるべきなのだから。
「まー、俺は強ければなんでもいいんだけどね」
 事前に聞いた情報を頭の中で再構築する『隻翼のガンマン』アン・J・ハインケル(CL3000015)。アールヴ当人は子供並に小さいが、彼らが駆使する魔動機はこの洞窟で戦うことを前提に作られている。それなりに強ければいいんだけどね、と笑みを浮かべた。
「五元素に潜れ、レーヴァティ」
 『静かなる天眼』リュリュ・ロジェ(CL3000117)はフラスコを振りながら、そこに魔力を注入していく。フラスコの口から跳ねた小さな魚は見る間に大きくなり、リュリュの周りを泳ぐように移動していた。錬金術の到達点の一つ。ホムンクルスだ。
 自由騎士達はそれぞれの光源を頼りに洞窟を進む。十分も経たないうちに金属が擦れるような音が聞こえ、腐った油の匂いが立ち込める。暫くすると、蜘蛛のような魔動機にのったアールヴが現れる。
「人間、材料にしてやるぜ」
 蜘蛛に乗ったアールヴはケケケ、と小ばかにした笑い声をあげる。人を魔道具の素材としか思っていない声だ。
 言葉の説得は意味をなさない。先ずはその高慢な鼻を折らなくては。
 仄暗い洞窟の中、自由騎士と黒アールヴはぶつかり合う。


「いきなり行くぜ!」
 初手を取ったのはザルクだ。手になじんだ大型拳銃を両手で構え、狙いを定める。魔力を込めた瞳が闇を見据え、驚く黒アールヴの表情をとらえる。その唇が驚きの声を放つよりも早く、ザルクは引き金を引いていた。
 ザルクが放った弾丸は真っ直ぐに黒アールヴ達に向かって飛び、命中の直前で爆ぜるように四散する。弾丸の欠片が不可視の先を紡ぎ出し、立体魔法陣となって黒アールヴ達に呪いを穿った。形なき糸が幻想種を縛り、その行動を封じる。
「そんなクソ趣味の悪い魔導器具は、ここで壊させてもらうぜ」
「カノン達が勝ったらこっちのゆー事聞いてもらうからね!」
 拳を握り、カノンが黒アールヴの乗る魔導機器に迫る。凹凸のある洞窟の内部を苦も無く駆け、一気に相手との距離を縮めた。折角橋頭保として確保したニルヴァン。ここを汚染させるわけにはいかない。
 体内に巡らせた『龍』の気を循環させるカノン。眉間、胸、臍部分を強く意識して呼吸を行う。呼気と共に半歩踏み出し、同時に突き出す拳。力の流れを拳に集め、発気と共に魔道機器に拳を叩き込んだ。衝撃でよろめく魔道機器と驚く黒アールヴ。
「水を汚染するとか許せないんだから!」
「僕は騎士アダム・クランプトン! 力を以て貴方方に僕の意思を示させていただく!」
 黒アールヴに向けて名乗りを上げるアダム。戦場において名乗りを上げることの意味は二つ。敵の注目を引くことと、味方を鼓舞すること。だがアダムにはそれ以上の意味がある。騎士らしく、不誠実ではない事。その在り方こそが真の意味なのだ。
 幻想種の注目があるうちにアダムは歩を進める。戦時用蒸気鎧装から蒸気を排出しながらゆっくりと。黒アールヴの魔導機器の攻撃を左腕で受け流しながら、右腕を大きく振る被った。振るわれた一撃は蜘蛛の足を揺るがせるほどの衝撃。
「可能であれば僕らのいうことを聞いて欲しい。さもなくば、武をもって示させてもらう」
「ま、それで大人しく降伏するようなやつじゃ……ないよな?」
 アダムの降伏勧告を受けてもなお戦意ある声を上げる黒アールヴ。その反応を聞いてアンは笑みを浮かべた。こちらを小ばかにした黒アールヴの態度だが、戦意があるのならば問題はない。相手が逃げ腰なら逆にやる気をなくしていた所だ。
 視界を確保し、安定した足場を得るアン。野を生きるガンマンにとって、それの確保は空気を求めるレベルの必須条件。目まぐるしく動く戦場でそれを確保し、瞬きの隙をも逃さず引き金を引く。弾丸が魔道機器の足を穿ち、そのバランスを崩す。
「楽しませてもらうよ、幻想種」
「器用ね、あの動き。本当に蜘蛛みたい」
 足を撃たれても即座にバランスを立て直す。その動きを見てアンネリーザはため息をついた。八本の足が互いを補うように動いている。あのバランスを崩すなら、複数の足を同時に撃つしかないようだ。
 フクロウの羽根を羽ばたかせ、地面からわずかに浮く。その状態でスナイパーライフルを構え、息をひそめて戦場を見る。黒アールヴが魔導器具を投擲しようとした瞬間を狙い、引き金を引くアンネリーザ。攻撃の出先を封じ、味方をフォローする。
「悪いけど、あなた達の好き勝手にさせる訳にはいかないの」
「……悪趣味な魔動機だが、技術力は確かということか」
 リュリュは黒アールヴの魔動機をそう評価した。動力源を生み出す方法は許されるものではない。だがそれによって生まれた魔導機器は自由騎士八名と相対できるだけのシロモノだ。それを生み出す技術は無視してはいけない。
 頷いて、思考を戦いに切り替えるリュリュ。その周りを泳ぐように魚のホムンクルスが漂っていた。ホムンクルスの動きがリュリュの手の動きを隠し、魔術の発動を遅らせる。放たれた二矢は黒アールヴの不意を突くように迫り、魔動機に穿たれる。
「頼もしいヒーラーが二人もいるのだ。攻撃に回らせてもらおう」
「はい。頑張りますね!」
 リュリュの声に頷くティア。戦いは初めてだが、守ってくれる仲間を前にして身体の震えは収まっていた。自分にできること、自分にしかできない事。大事なのはその線引き。自分にできることを精一杯やる。今はそれだけだ。
 大きく息を吸い、心を沈める。横隔膜に力を込めて、謳うようにティアは魔力を解き放った。ティアの喉から奏でられる旋律が洞窟内に響き、癒しの力となって仲間達に届く。穏やかな声が傷口に触れ、その痛みを和らげていく。
「サイラスさん、次は――」
「私に構うことはない。君のやりたいようにやり給え。私は足りない部分をフォローしよう」
「水の汚染とかシャンバラの都らへんでしてくんないかなあ……って無理だからこっちに逃げてきたのか」
 言ってから肩をすくめるゼクス、黒アールヴからすれば『素材』がたくさん取れる都近くに居を構える方が効率がいい。だが都を防衛する者もいるわけだ。生き延びる為にニルヴァンに来て、息をひそめていたのだろう。
 ロングボウを構え、黒アールヴを見るゼクス。にやけたような細目の奥で、確かに眼光が光る。番えた矢に魔力を込めて、鋭い意志を込めて解き放つ。込められた魔力が矢の姿を隠し、戸惑う隙を与えず魔道危機に突き刺さる。
「お前等、シャンバラの連中が嫌いだろ? だったらお前等の知識を教えろよ」
「ウルセー! お前らもシャンバラなんだろーが!」
 ゼクスの言葉にいきり立つ黒アールヴ。どうやら自由騎士をシャンバラと勘違いしているようだ。或いは彼らにとって人族=シャンバラなのかもしれない。
 誤解を解くにせよ、今はおとなしくさせてからだ。そもそも説いたところで彼らの態度が軟化するとは思えない。シャンバラじゃないなら、とばかりに調子に乗る可能性もある。
 洞窟での戦いは、少しずつ激化していく。


 自由騎士はザルクの足止めを基点に一気呵成に攻め立てていた。
「来るがいい黒アールヴ。騎士の名に懸けて仲間を傷つけさせはしない!」
 前衛に立つアダムが名乗りを上げ、その攻撃を引き受けていたこともあり魔道機器が後衛に雪崩れ込むこともなかった。守ることが騎士の努め。災厄の前に立ち、己を身をもって命を救う。それこそが自分の役割だと言わんがばかりの動きだった。
「爆発物を山で投げるなよなあ、山崩れとか起きたらどうすんだ、っての!」
 黒アールヴの攻撃に悲鳴に近い声を上げるゼクス。彼らにとって洞窟の倒壊など問題ではないのだろう。元より闇に住む種族だ。そうなった時の魔道機器も作ってあるのかもしれない。むしろ侵入者を生き埋めに出来ればよし、と言った所か。
「先ずは一体。攻撃を集中させて片をつけるぞ」
 リュリュが放った魔力の矢が魔導機器の一体を穿ち、その動きを止める。動かなくなる際、そこから何かが飛び出て消えていった。おそらくは魔導機器作製時に捧げられた赤子の魂だろうか。錬金術にも似た幻想種の技術。興味深くはあるが、今は二の次だ。
「戦うのは怖いですけど……病気が広がるのはもっと怖いので。絶対負けられないのです」
 目の前で繰り広げられる戦いを前に、ティアは唾をのむ。交差する鋭い金属と、飛び交う弾丸。悲鳴と怒号。平和とは真逆の世界だが、ここで逃げるわけにはいかない。病魔で苦しむ者が生まれれば、これ以上の地獄が待っているのだから。
「喰らえ! カノンのすぺしゃるぱんち!」
 一瞬のスキを見出し、カノンは魔導機器に一撃を喰らわせる。人間とは違う蜘蛛の動き。しかしその動きも攻撃のリズムも繰り出すのは黒アールヴだ。その視線と動きを読めば、攻撃のタイミングは計れないこともない。少しずつ、カノンはそのリズムが分かってきた。
「いいねえ! その意地汚さは立派だよ!」
 邪法に身を染め、人のいやがる動きをする黒アールヴ。その意地汚さをアンは高く評価していた。卑怯だろうが勝てばいい。最後に生き残った者が勝者なのだ。その精神が強さになるのならアンとしては喜ばしいことだ。
「お前らの技術がどれだけすごくとも、アレより強いということはないだろうからな!」
 脳内に浮かべている敵。それを思い浮かべながらザルクは引き金を引く。弾丸が金属を穿つ音が響くと同時にさらに引き金を引き、同じ個所に弾丸を叩き込む。二重の衝撃が魔導機器を襲い、その動力を完全に破壊した。
「水を汚し大気を穢す。それがなければあるいは和解できたかもしれないわね」
 残念そうにアンネリーザが告げる。環境を汚す黒アールヴとの共存は、どう考えても不可能だ。人間や動物が住む環境を黒アールヴの思うままに汚させるわけにはいかない。このまま地の底に眠ってもらうのが互いの為なのだろう。
 一体ずつ、確実に魔導機器の動きを止めていく自由騎士達。連携だって動く彼らを前に、黒アールヴは満足な効果を出すことができずに追い詰められていく。
 もとより洞窟内の地の利を利用するのが彼らの戦略だ。自由騎士が洞窟に対して万全の対策を施した時点で、優位性は失われていたのだ。
「君達もまたこの世界の命。無為に摘み取ることはしない」
 守りに徹していたアダムが前に出て、魔導機器に迫る。ここで一気に片をつけることで、最小限の犠牲で戦闘を収めようとしていた。右腕の蒸気腕に魔力と蒸気を重ね、刃を打ち出すようにして魔導機器に叩きつけた。
「これで終わりだ」
 山吹色に光り輝く腕を天に向け、優しい顔でアダムは戦闘終了を告げた。


 戦い終わり、自由騎士達は黒アールヴの魔導機器を完全に破壊する。
「赤子の魂をいつまでも縛らせておくワケにはいかないからね」
「呪術よりの錬金術と言った所か。とても転用できそうにないな」
 リュリュは奥にあった彼らの書物を見て、ため息をついた。人族の生贄を捧げることが前提の術ばかりだ。これを人間が使えるようにして戦争に投入すれば勝率は上がるだろうが、死亡率も同様に跳ね上がる。世に広めない方が世界の為だ。
「つまり彼らの魔導機器の技術を使って要塞を強化しようとすれば……」
「当然、生贄が必要になる。2mほどの魔道機器で赤子一人分だ。要塞全土となればその数は――」
 もういい、とばかりに自由騎士達はリュリュの説明を止めた。彼らの技術を要塞に転用しようとしたカノンとアダムだが、そこまでして強化するのは流儀に反するとばかりに諦める。
「俺は聞いておきたいけどね。シャンバラのヨウセイが燃料の魔導と似通ってるじゃん。
 壊したりバラしたいするのに役立つかもよ」
「その方が強くなるっていうんなら、俺も賛成だね」
 そして逆に興味を引いたとばかりにゼクスが煙管を揺らす。ヨウセイを糧として活動する聖櫃。その在り方と魔道機器は似通っていた。アンもそれで生存率が高まるなら良しと言ったふうに頷く。
「やれることはやる。戦闘ってのは準備から始まってるんだからな」
「蒸気機関に組み込める所あるかもだしよ。ほらキリキリ吐けよ」
 アンとゼクスの言葉に同族を得たとばかりに喜々として教えようとする黒アールヴ。他の自由騎士達は首を振って、無言でゼクスと黒アールヴを引き離した。
「……ともあれ、協力が無理なのは解ったわ。このまま大人しく地下に潜ってちょうだい」
「だな。正直あんなモンに頼って勝ちたいとか思わねぇ」
  聖櫃を直に見たザルクとアンネリーザは、深くため息をつきながら諦める。要塞の強化は急務だが、かといって何をしてもいいとは思わない。このまま彼らには大人しくしてもらった方が、互いの為だ。
「公衆衛生的にダメダメな方々ですね……」
「言っただろう。病魔を運ぶと」
 ティアは諦めたように肩をすくめ、サイラスは分かっていたかのように呟いた。相手は人と組みすることのできない邪悪な幻想種。その技術を利用する事は、その邪悪を受け入れるも当然なのだ。
「シカタネー」
 黒アールヴは諦めたように背を向ける。勝ち目がないことを理解したのだろう。日の届かない洞窟は彼らにとっても悪い居心地ではない。野心さえ抱かなければ、彼らも生きることはできるのだ。

 こうして戦いは終わり、病魔がニルヴァンを襲うことはなかった。
 要塞の強化はまだまだ余念が残るが、今はできる限りのことをするしかない。
 いずれ来るシャンバラとの戦い。それに備える為に――

†シナリオ結果†

成功

†詳細†


†あとがき†

どくどくです。
 黒アールヴ技術を受け入れるか否かは、キャラを見て判断しました。主に経歴とアライメントで。

 以上のような結果になりました。……君達準備良すぎ!(笑
 誰もフラグメンツ削れないまま終わりましたとさ。

 MVPは一番戦闘状況に対応していたイスルギ様に。ほぼ僅差でしたが。
 それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済