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【北方迎撃戦】ペデラスティの褥

●
その日水鏡に新しく建設された「聖霊門」が映った。
「聖霊門」の中からシャンバラ人が何人も現れ、イ・ラプセルを蹂躙する未来。
しかしその未来はなかったことにすることができる揺らぐ未来だ。
ゆえに、イ・ラプセル国王、エドワード・イ・ラプセルは自由騎士たちに命をくだす。
曰く、「聖霊門」を再度建設しようとする魔女狩りとネクロマンサーの地方聖職者たちを迎撃せよと。
●
「あはっ、かわいいかわいいアタシの子豚ちゃんたちぃ~、アタシたちの役目を言ってごらんなさい~」
ローブ姿の地方聖職者――ネクロマンサーが真っ赤なルージュに彩られた口を開き、船室の隅で体を寄せ合う首輪をつけられた少年たちに問いかける。
どの少年たちも一律として見目麗しい美少年ばかりだ。
「この、補給船の警備です、ジェラルド様」
かけられた首輪につながる鎖を強く引っ張られた、ネコのケモノビトの年若い少年が怯えながら答えた。
「うふふ、せ~い~か~い」
ジェラルドと呼ばれたネクロマンサーが鎖を引き寄せれば、少年はつんのめるように前に出る。仲間のソラビトの少年がひっと息をのんだ。
「ご褒美をあげなきゃね~」
ジェラルドは低い声で淫蕩にルージュの唇をひとなめし、さらに鎖をひきよせた。少年とジェラルドが息が触れ合うほどに近づく。ジェラルドはんふ、と厭らしい笑みを浮かべると涙を浮かべる少年の口を吸う。
「うぐっ、うぐっ」
息ができずに少年は喘いだ。船室の隅の少年たちは目を瞑り時間が経過するのをただただ待つ。
「ふぅ」
しばらくのあと、ジェラルドは少年を乱暴に床に投げ捨てた。
「げほ、げほっ!」
投げ捨てられた少年は肩を揺らしながらせき込み、深呼吸をする。正解したというのにこの責め苦の理不尽に涙が止まらない。不正解であれば、仲間すべてが、鞭でしたたかに体を打ち据えられ、それ以上にひどい責め苦を受ける。そのどちらがましかと問割れたところで、彼らのような少年には選べるものではない。しかしネコの少年は仲間のために答えるしかなかったのだ。
「あなた達のような下賤な魔女狩りもまた、ミトラース神の愛を受けることができるのよ。ああ、素晴らしきかなミトラース!!! ミトラース神は言ったわ。弱きものを愛せよと! んふふ、私もあなた達を心から愛しているわ」
大げさに両手を広げ、ジェラルドは神への愛を、そして少年たちへの下卑た愛を説く。
「ああ、聖名を口にするだけで、昂るわ! 昂るわ! 昂るわ!!」
恍惚とした表情でジェラルドは目を見開き、ねっとりとした、視線で少年たちをなめるように見つめると、カツカツとヒールの音を響かせ、せき込む少年の横を通り過ぎた。
「ジェラルド様っ!! ……ガフッ! ……おやめください」
「なあに? アタシに口出しするつもり?」
少年はその熱を帯びた声に言葉を詰まらせる。
「んふ、今日はあなたにきめたわ!」
ジェラルドは額に一本の長い鬼の角を持つ少年の角を片手で持ち上げると、涙目のその少年のほほをベロりとなめた。
「あはン、素敵な夜になりそう」
●
「ってわけで、俺たちの仕事は小型の船で近づいて、海岸線にある魔女狩りの補給船の拿捕をすることだよ!」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)が両手の人差し指をたてて外側に向ける。
「水鏡で大まかな位置はわかっているから、こっそり近づいて、補給線に飛び込んで資材をゲット!」
「そんなに簡単にいくのか?」
「まあ、そうだなぁ、静かにしないと見つかるだろうからそれなりに工夫はしないとだめだね」
指をちっちっちと振りながら答えるヨアヒム。なんだかいちいちポーズがうざったい。
「補給船を守っているのはジェラルド・オーキスっていう、今流行りのネクロマンサーの男さ。まあ、なんていうかちょっとアレなヤツだから、その、美少年の子はいろんな意味で気を付けてね!」
その日水鏡に新しく建設された「聖霊門」が映った。
「聖霊門」の中からシャンバラ人が何人も現れ、イ・ラプセルを蹂躙する未来。
しかしその未来はなかったことにすることができる揺らぐ未来だ。
ゆえに、イ・ラプセル国王、エドワード・イ・ラプセルは自由騎士たちに命をくだす。
曰く、「聖霊門」を再度建設しようとする魔女狩りとネクロマンサーの地方聖職者たちを迎撃せよと。
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「あはっ、かわいいかわいいアタシの子豚ちゃんたちぃ~、アタシたちの役目を言ってごらんなさい~」
ローブ姿の地方聖職者――ネクロマンサーが真っ赤なルージュに彩られた口を開き、船室の隅で体を寄せ合う首輪をつけられた少年たちに問いかける。
どの少年たちも一律として見目麗しい美少年ばかりだ。
「この、補給船の警備です、ジェラルド様」
かけられた首輪につながる鎖を強く引っ張られた、ネコのケモノビトの年若い少年が怯えながら答えた。
「うふふ、せ~い~か~い」
ジェラルドと呼ばれたネクロマンサーが鎖を引き寄せれば、少年はつんのめるように前に出る。仲間のソラビトの少年がひっと息をのんだ。
「ご褒美をあげなきゃね~」
ジェラルドは低い声で淫蕩にルージュの唇をひとなめし、さらに鎖をひきよせた。少年とジェラルドが息が触れ合うほどに近づく。ジェラルドはんふ、と厭らしい笑みを浮かべると涙を浮かべる少年の口を吸う。
「うぐっ、うぐっ」
息ができずに少年は喘いだ。船室の隅の少年たちは目を瞑り時間が経過するのをただただ待つ。
「ふぅ」
しばらくのあと、ジェラルドは少年を乱暴に床に投げ捨てた。
「げほ、げほっ!」
投げ捨てられた少年は肩を揺らしながらせき込み、深呼吸をする。正解したというのにこの責め苦の理不尽に涙が止まらない。不正解であれば、仲間すべてが、鞭でしたたかに体を打ち据えられ、それ以上にひどい責め苦を受ける。そのどちらがましかと問割れたところで、彼らのような少年には選べるものではない。しかしネコの少年は仲間のために答えるしかなかったのだ。
「あなた達のような下賤な魔女狩りもまた、ミトラース神の愛を受けることができるのよ。ああ、素晴らしきかなミトラース!!! ミトラース神は言ったわ。弱きものを愛せよと! んふふ、私もあなた達を心から愛しているわ」
大げさに両手を広げ、ジェラルドは神への愛を、そして少年たちへの下卑た愛を説く。
「ああ、聖名を口にするだけで、昂るわ! 昂るわ! 昂るわ!!」
恍惚とした表情でジェラルドは目を見開き、ねっとりとした、視線で少年たちをなめるように見つめると、カツカツとヒールの音を響かせ、せき込む少年の横を通り過ぎた。
「ジェラルド様っ!! ……ガフッ! ……おやめください」
「なあに? アタシに口出しするつもり?」
少年はその熱を帯びた声に言葉を詰まらせる。
「んふ、今日はあなたにきめたわ!」
ジェラルドは額に一本の長い鬼の角を持つ少年の角を片手で持ち上げると、涙目のその少年のほほをベロりとなめた。
「あはン、素敵な夜になりそう」
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「ってわけで、俺たちの仕事は小型の船で近づいて、海岸線にある魔女狩りの補給船の拿捕をすることだよ!」
『君のハートを撃ち抜くぜ』ヨアヒム・マイヤー(nCL3000006)が両手の人差し指をたてて外側に向ける。
「水鏡で大まかな位置はわかっているから、こっそり近づいて、補給線に飛び込んで資材をゲット!」
「そんなに簡単にいくのか?」
「まあ、そうだなぁ、静かにしないと見つかるだろうからそれなりに工夫はしないとだめだね」
指をちっちっちと振りながら答えるヨアヒム。なんだかいちいちポーズがうざったい。
「補給船を守っているのはジェラルド・オーキスっていう、今流行りのネクロマンサーの男さ。まあ、なんていうかちょっとアレなヤツだから、その、美少年の子はいろんな意味で気を付けてね!」
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.魔女狩りの補給船の拿捕
2.敵の排除
2.敵の排除
ねこてんです。
海岸線で駐留している補給船をゲットする依頼です。
補給船の中には精霊門の資材や、いろいろなものが積んでありますので船ごと拿捕してきてください。
ばっちり拿捕できると生産力にボーナスがはいります。
ロケーション
夜の海です。
小型のボートにのって近づき、船に乗り込んでください。ボートは最大3隻まで用意できます。
派手にいくと見つかって、戦闘が開始されます。
射程外で見つかった場合は補給船は移動を始めます。攻撃射程内に入ると遠距離範囲攻撃で攻撃されます。ボートは広くないので、攻撃は全員に当たるものと思ってください。
補給船はあまり大きくはありませんが船底に資材庫、その上に船室があります。下記ジェラルドは船室のベッドルームにオニヒトのガンナーの美少年と一緒にいますが、甲板で警備中の少年たちに呼ばれたり、騒ぎになれば甲板にでてきます。
邪魔をされているので、ご機嫌斜めです。一緒にいるオニヒトのガンナーの美少年は体力と魔力が半減しています。
エネミー
ジェラルド・オーキス
マッチョなソラビトのネクロマンサー男性です。
ランク2までのスキルを使います。愛こそすべて。
体力、魔導力は高く、命中も高めです。
活性化技能は愛の狩人と暗視
魔女狩り美少年(こぶたちゃん)たち。
全員首輪をつけられて、露出度の高い扇情的な衣装を着せてもらっています。
ジェラルドに飼われています。ジェラルドにとってはかわいい愛しい子たちです。
年齢は10代。ジェラルドの命令には逆らいません。
とはいえ、彼らもシャンバラ人です。ミトラースを強く信仰しています。
活性化技能はリュンケウスの瞳破とハイバラ急
オニヒトの美少年(ガンナー)
体力、魔力が半減しています。
ネコのケモノビトの美少年(フェンサー)
速度高めです。
ネズミのケモノビトの美少年(バスター)
火力高めです。
ウサギのケモノビトの美少年(バスター)
CT高めです。
犬のケモノビトの美少年(ドクター)
少年たちの中では練度は高め。ランク2スキルを使います。
ソラビトの美少年(マギアス)
魔導力高めです。速度もあります。
NPC
ムサシマル・ハセ倉が同行します。だいたい前にでて適当に切りまくっていますが、煩いので静かにさせてあげてください。いうことは聞きます。
【NPC指示】で指示してくださったらそのように。最新の発言を参照します。
美少年がゲシュタルト崩壊しそうですがよろしくお願いします。
海岸線で駐留している補給船をゲットする依頼です。
補給船の中には精霊門の資材や、いろいろなものが積んでありますので船ごと拿捕してきてください。
ばっちり拿捕できると生産力にボーナスがはいります。
ロケーション
夜の海です。
小型のボートにのって近づき、船に乗り込んでください。ボートは最大3隻まで用意できます。
派手にいくと見つかって、戦闘が開始されます。
射程外で見つかった場合は補給船は移動を始めます。攻撃射程内に入ると遠距離範囲攻撃で攻撃されます。ボートは広くないので、攻撃は全員に当たるものと思ってください。
補給船はあまり大きくはありませんが船底に資材庫、その上に船室があります。下記ジェラルドは船室のベッドルームにオニヒトのガンナーの美少年と一緒にいますが、甲板で警備中の少年たちに呼ばれたり、騒ぎになれば甲板にでてきます。
邪魔をされているので、ご機嫌斜めです。一緒にいるオニヒトのガンナーの美少年は体力と魔力が半減しています。
エネミー
ジェラルド・オーキス
マッチョなソラビトのネクロマンサー男性です。
ランク2までのスキルを使います。愛こそすべて。
体力、魔導力は高く、命中も高めです。
活性化技能は愛の狩人と暗視
魔女狩り美少年(こぶたちゃん)たち。
全員首輪をつけられて、露出度の高い扇情的な衣装を着せてもらっています。
ジェラルドに飼われています。ジェラルドにとってはかわいい愛しい子たちです。
年齢は10代。ジェラルドの命令には逆らいません。
とはいえ、彼らもシャンバラ人です。ミトラースを強く信仰しています。
活性化技能はリュンケウスの瞳破とハイバラ急
オニヒトの美少年(ガンナー)
体力、魔力が半減しています。
ネコのケモノビトの美少年(フェンサー)
速度高めです。
ネズミのケモノビトの美少年(バスター)
火力高めです。
ウサギのケモノビトの美少年(バスター)
CT高めです。
犬のケモノビトの美少年(ドクター)
少年たちの中では練度は高め。ランク2スキルを使います。
ソラビトの美少年(マギアス)
魔導力高めです。速度もあります。
NPC
ムサシマル・ハセ倉が同行します。だいたい前にでて適当に切りまくっていますが、煩いので静かにさせてあげてください。いうことは聞きます。
【NPC指示】で指示してくださったらそのように。最新の発言を参照します。
美少年がゲシュタルト崩壊しそうですがよろしくお願いします。

状態
完了
完了
報酬マテリア
2個
6個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
8/8
8/8
公開日
2018年10月25日
2018年10月25日
†メイン参加者 8人†
●
「うーん……」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は胸の前で腕を組んで難しそうな顔をしている。
「どうしましたぁ~?」
たぬきの耳をぷるぷると揺らしながら『商売繁盛どどんこどん』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)がエルシーに尋ねる。
「美少年かぁ~と思って。まあ、敵だから倒すに決まってるんだけどこう」
「ですねぇ~奴隷というのは本当に悪しき制度です……いえ、すべてが悪とは語弊がありますが、件の主人は悪しきものと言わざるを得ません」
エルシーの懊悩とシェリルの懊悩は似ているようで少しズレがあるようだ。
「エセだよ、エセ」
囮用のボートを準備する『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)はいつもの清純そうな仕事着とは一線を画した『夜』用のスケスケベビードール、略してスケベ衣装での出陣である。
乗り込み用のボートを用意する男性諸氏の視線はフラフラと揺れているのは仕方ない話だ。
「なんか、ジェラルドってやつ、よくわかんないけど気持ち悪い。グリ、気をつけてね」
『おともだち』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)は同じ孤児院で過ごす少年に不安を吐露する。
「ん? わかってるよ、イーイー」
『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)は軍から支給された、鎖閂式のライフルの槓桿を後方に引き絞りながら幼馴染に答えた。
ライフルを構え海の向こうに駐留している補給線に向ける。彼が自由騎士として初めてその引き金を引いたのはちょうど半年前。最初の引き金の重さは覚えている。然し、然しだ。アクアディーネの権能『不殺』があるとはいえ、その引き金は今はずいぶんと軽くなった。それは騎士――軍人としての経験の結果か、それとも――。
「闇夜に隠れてこっそりドッキリ! わくわくするね! さーちあんですとろーい!」
『神秘(ゆめ)への探求心』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は虹色の瞳を輝かせ元気にしっぽを振っている。月光に反射する色は朱。どうにも興奮の色が見える。
「両方のボートの準備はととのったようだ。そろそろ出発してもかまわないか?」
『これもまた運命』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)が騎士たちに声をかけた。
「OK、資材はきっちりいただいていこう」
ヴィンセント・ローズ(CL3000399)はいの一番にボートに乗り込むとニンマリと微笑んだ。
(人の趣味趣向にケチをつけるつもりはねぇが見過ごせないよな)
「拙者は騒げばいいでござるな! ところでローラ殿、すけべいでござるな!!」
いつものようにテンションの高い『一刀両断』ムサシマル・ハセ倉(nCL3000011) がシェリルの指示を聞きブンブンと首を縦にふる。
「はい~、派手にいきますよ~」
●
「2時方向から……イ・ラプセルかな? ボートが来る」
「ジェラルド様に報告は?」
「今はやめておいたほうがいい、お邪魔をしてはご機嫌を害される。一艘なら僕らで対応できるよ」
「そうだね。ミトラース様の加護を」
「ミトラース様の加護を」
美少年たちはうなずきあう。
「くぉらーーー!! ホモのみなさ~~~~~~~~ん!! こんばんは~~~~~!!!」
乗船部隊から連絡を受け、準備完了と、美少年を無駄に浪費することは絶対許さない委員会委員長のローラが、大声で叫ぶ。
「ばーかばーか!!!!!」
それに合わせてなんとも少ない語彙での煽りでムサシマルが追随した。
「なんと破廉恥な。……でもあの桃色の髪のこ、僕らと同じような服。あのこも僕らと「同じ」なのかな?」
少年は一瞬戸惑う。
「だとしても唯一至高神ミトラースの敵だ」
少年たちは見事に釣られ、ローラたちの乗る船に向かってミトラースの権能による遠距離攻撃を仕掛け始める。
「あわわ、バッチリと囮の役目は果たせたようですね~」
中空に燃える緋色の文字を指先で踊らせ、シェリルが反撃する。避ける場所もない美少年たちの攻撃は3人を蹂躙していく。
「愛の狩人ってもんをローラが見せちゃうんだからね!」
仕掛ける前にはノートルダムの息吹をかけておいた。此処から先は仲間が乗り込むまでは耐え続ければいい。耐久レースは得意だ。朝まで何人もの相手とやりあったことだってある。それに比べたらあんな坊やたちなんて甘いくらいだ。
ハーベストレインを連発しながらローラは耐える。
「ローラ殿ぱんつまるみえでござるよ」
「みせてんのよ!」
一方息を殺しながら近づいた二艘のボートはシャンバラの少年たちがローラたちに意識を奪われているうちに後ろから、接舷するとエルシーのカギ付きロープで乗船していく。
「こんばんは! おいらジーニアス! ジニーって呼んでね!
もう秋だけどそんな格好で寒くない?
はい、暖かい蒸気を召し上がれ!」
いの一番に乗り込んだジーニアスは、ドクターの少年を狙い二連の剣閃を煌めかせた。
「なっ、蒸気などと悪魔の技に耽溺する破廉恥さ! 恥ずかしいとはおもわないのか!」
肩口をえぐられた少年は下がりながら自らを癒す。
「ジェラルドのやってることは、お前たちの信じるミトラース神の教えと合ってるって、本当に思うか?」
もしも、説得が通じるなら。ダメモトでヴィンセントは少年たちに声をかけた。
「ミトラース様の愛は千差万別だ、情愛もまた愛の一つ」
眉をしかめ教義を語る少年の瞳に浮かぶは妄信と狂信。説得などは通じない。それがわかりヴィンセントは舌を打ち、二連の弾丸を放った。
ネコの少年がドクターの少年を庇う。
イーイーもまた同じように説得の言葉をもって来てはいるが、きっと彼らには届かない。言葉は風を滑る。
「それでも君たちは苦しそうだよ」
「憐れむな! イ・ラプセル人。それこそが愚弄としれ! 神は我らのために試練をも齎す! それはさらなる神の愛の高みに至るために!」
ネズミのバスターの少年が踏み込み、イーイーのバッシュが組あい高い金属音が上がる。イーイーにはそれが声なき悲鳴に聞こえた。
「えっ、ちょっとまってよ! この子達が敵なのっていうなんていう、えっちな格好っ!」
よじ登ったエルシーをまっていたのは露出度の高い少年たちの姿。自分も大概ではあるがそれ以上の肌の露出面積だ。
際どい腰元をみて、顔が赤くなる。
泣いたあとのあるネコの少年をみて、そのほてりも一気に冷める。ひどいことをされていたことくらいその首輪をみればわかる。
首輪などヒトがつけられるものではない。
「信じる神は違うかもしれない。でもその前に私達は同じ人間。味方になれとは言わないから、邪魔しないでもらえるかしら。私達は貴方達のボスに用があるの」
(ほんとに用があるのは貨物だけどって、まるで飲み友みたいね)エルシーはこころの中でそう付け足した。
「ジェラルド様になんのようだ!」
少年は明確な警戒心をむき出しにする。
「君達の神も信仰も否定はしない。だが、問おう。ジェラルドという男は君達の神と信仰に相応しい男だろうか?」
アリスタルフは彼らを否定しない。それでも彼らの警戒心はとけることはない。
「ジェラルド様は俺たちのような魔女狩りの身分から地方聖職者に上り詰めた方だ。信仰は俺たちより認められている!」
それは教義という糖衣に塗り固められた詭弁に過ぎないことを彼らは気づいていない。気づくことすらできない。
それこそが、彼らにまとわりつき、支配するシャンバラの神、ミトラースの権能であるのかもしれないとアリスタルフは思う。
アリスタルフは唇を噛み、ドクターを庇うバスターの少年ごと鉄山靠で撃ち抜く。
ドクターの少年はバスターの少年の回復を自らの神に願う。しかしマナと、バスターの少年のオドは結びつかない。グリッツから放たれる致命の弾丸がバスターの少年を苛んでいるからだ。
グリッツの軽い引き金は敵である少年を穿つ。その行動に抵抗感はない。
「なによう~、うるさいわねぇ~~」
甲板での戦闘は大きな音を立てる。故にこの補給線の王が気づくのは時間の問題だった。
うしろから憔悴した様子のオニヒトの少年もついてくる。首元には鮮やかにあかい花びらが舞っている。
「なっ……!」
其の意味がわかったエルシーはきっ、とネクロマンサー、ジェラルドをにらみつける。
「ふぅん、ねえ、アタシあんたたちに守れっていったわよね? みつけたらなんですぐに知らせなかったの?」
「それは……その」
少年は口ごもる。最中に声をかければ何をされるかわからないからだとは言えない。
「まあいいわ。イ・ラプセルの背教者たち。……あらぁ? 可愛い子たちがいるじゃない」
イーイーとグリッツ、ジーニアス、そして脚線美を短いパンツから見せつけるアリスタルフをいやらしい目で眺めるとぺろりと舌なめずりする。
「おいら?」
その湿度の高い視線からイーイーは本能的な危険を感じグリッツを視線から守るように移動する。ジーニアスはその視線の意味はわからない。
「其の子たちだけなら、アタシのものになるなら、ミトラース様の愛に殉じるならつれていってあげるわよぉ」
質量を伴うかのようなその粘ついた声に、アリスタルフは身震いし、其の嫌悪を飲み込みながら、自らをその視線に晒し、少年たちを守る。
「己が欲望の肯定に神を利用するか。とんだ背信者だな」
声は怒りに震える。嫌悪感の顕なその声にジェラルドは笑う。
「あはぁ。可愛い! 愛を知らないのね。いいわ。教えてあげるわ。情愛もミトラースの愛」
「んなわけあるかー! ホモは殺す!!」
戦場が甲板に移ったことで、手摺に足をかけとんでもない格好のローラが其の勢いで飛びかかり、言葉にはできないような顔で桃色の星を降らせた。
「きゃあ」
伏兵を意識していなかったジェラルドはその攻撃を受けてしまうが、ダメージ自体は権能に減退させられている。
その隙を見逃さず、ヴィンセントは二連の銃撃をジェラルドに叩き込んだ。
「みんな、あいつに集中! あいつだけは放置はできないだろ」
「同感! 美少年を独占する世界の敵は、この世から消し去るわ」
ヴィンセントの指示にエルシーも同意するが、こっちはこっちでなにか怪しげなものを含んでいる。荒ぶる鉄山靠がジェラルドを襲う。
「この子達がこぶたなら、ジェラルドはおおぶた? それともめすぶた?」
ジーニアスが悪意なく呟く。
「あらあら、難しい言葉をしっているのね、こねこちゃん!」
「こねこじゃない! ヒョウだよっ!」
「あるていど距離はあけないとですよ~」
シェリルは緋文字を展開しながら指摘する。彼らシャンバラ人の攻撃は相手の数が多いほどに有効になっていく権能によって守られているのだ。
故に固まっていることは彼らの権能に対して有利を譲ることに相違ない。
「わかってるよー!」
ジーニアスが元気に答える。
「面倒な子たちね。こぶたちゃん、まだいけるわね?」
呼ばれたネズミの少年は頷く。ジェラルドは彼の大剣に何らかの付与魔法を齎せば、その大剣に黒い靄がまとわりつく。
ネズミの少年は、目の前のイーイーに向かってその大剣を振るえば、イーイーは体からなにかが奪われたような嫌悪感を覚えた。
するとネズミの少年につけた傷がみるみる間に薄くなり血液が止まる。
「なにそれ」
「答える必要はない!」
イーイーの疑問に答えはない。
見たこともないスキルに自由騎士たちは浮足立つが、疑問はあとだ。回復の術であると断じたグリッツはヴィンセントと目配せしあって、致命弾を撃ち続けることにする。
エルシーとジーニアス、アリスタルフは最優先撃破対象をジェラルドに定め、合図でもって彼を集中攻撃する。
「致命ってのはね、こう使うの」
ジェラルドがまた見たことのない範囲攻撃を自らの眼の前にいるエルシーとジーニアス、アリスタルフに命中させる。
「んもう!」
ローラのハーベストレインが弾かれたかのように前衛の3人には届かない。
ネクロマンサーの情報を得ることはできたが、それと引き換えのピンチは厄介だ。
「めんどくさいホモは死ね!! めんどくさくなくてもホモはしね!!」
文句を言いながらもドクターとしてのローラの行動は合理的だ。仲間の傷の具合を確かめ確実に戦線を支えているのだ。えっちなポーズで少年たちを悩殺するつもりであったが、そんな余裕は今やない。彼女がこの状況の生命線なのだ。
縦しんば悩殺をしようが、彼らには通じないだろうということもわかる。彼らを呪縛するものの根は深い。
「あー、ローラ真面目にやりたくないんだけどーーー!」
「すまん、そこは頼む! あとで奢るから!」
ヴィンセントは銃撃での支援をしながらスケベなドクターを励ます。
状況は一進一退だ。範囲致命は一人しか回復手がいない場合はやっかいにすぎる。
とはいえ、自由騎士団もこの半年で大きく力をつけてきたのだ。連携力がやや劣る――それは魔女狩りの美少年たちとジェラルドの関係もあったのかもしれないが――シャンバラ人と連携力の高いイ・ラプセル人の差がじわじわとキルレシオの天秤をイ・ラプセルの側に傾けていく。
ジェラルドを守るためにねこの少年が彼らの間に割り込んでくる。アリステフとエルシーの鉄山靠でダメージを通すことができるが、とうのジェラルド本人に有効打は打てない状況は続くが、ジーニアスの二連撃を喰らい続けるねこの少年にも限界はある。
イーイーと一騎打ちするねずみの少年もお互い満身創痍だ。謎の回復効果はすでに切れている。グリッツがイーイーを支援攻撃し、ねずみの少年の隙を作る。その幼馴染がくれたチャンスをイーイーは受け取り、渾身のバッシュでねずみの少年を黙らせた。
ドクターの少年は今や単体回復しかできない、前衛二人も倒れた時点でジェラルドはうさぎの少年を下がらせる。
このまま戦っていても自分たちが負けてしまうこともわかる。
この補給線にあるものは『所詮はイ・ラプセル人には使えない』だろう。それなりの細工はしてある。それに引き際を見定めることは指揮官として重要な役目でもあるのだ。
「飛び込みなさい!」
ジェラルドの其の言葉にうさぎの少年とオニヒトの少年は走り出し船から飛び出す。それと同時に補給船にかけられたフックをうさぎの少年が切り、オニヒトの少年はミトラースの祝福を受けた魔力の散弾で目眩ましを自由騎士団に向け放った。
彼らは追撃を防ぐと、自由騎士団の用意したボートを利用し、撤退する。
「じゃぁね! またあうひまで。 そこのかわいこちゃんたち、宗旨変えをするなら私のもとにいらっしゃい! 悪くはしないわ!」
そういうとソラビトの羽を広げ、マギアスの少年とともに浮かび上がったジェラルドは追いかけようとする、エルシーの足元に泥の沼を生成した。
「なにっ、動けない?!」
足元の泥はエルシーの足を捕らえ移動を阻む。
ヴィンセントとグリッツ、そしてシェリルが遠距離攻撃で追撃するが、彼らは逃げに集中している。ダメージは与えたが落とすにはいたらない。
とまれ、彼らは補給船の鹵獲に成功した。
気絶するネコと犬のケモノビトにイーイーは「この子達こんな服でいじめられてたのかな」とこぼす。
「わかんないけどね。このままじゃ寒そうだ」
いって、グリッツはシェリルがふんじばった少年たちに毛布をかぶせる。余談であるが少年を縛るシェリルの目はちょっとだけ怖かったと後にグリッツが答えていた。
「ねえねえ、君たちはジェラルドについてどう思っているの?」
ジーニアスが虹色の目でネコとイヌの二人を見つめながら問いかけるが少年たちは口を噤んだまま話そうとはしない。
かれらは補給船の資材をチェックする。
船の倉庫には彼らの教義を記した、聖書。そして彼らが使ったであろう小さな簡易的な祭壇。
そして簡易的な門がもう一つ立てることができるほどの資材。
しかしその資材には厳重な魔法のプロテクトが掛けられていた。現時点ではシャンバラのこのプロテクトの魔法を解くことができるものはイ・ラプセルにはいないだろう。
しかし、資材自体を確保できたのは十分な成果だろう。
激化するシャンバラとの戦いに必ず役に立つはずだ。
「うーん……」
『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)は胸の前で腕を組んで難しそうな顔をしている。
「どうしましたぁ~?」
たぬきの耳をぷるぷると揺らしながら『商売繁盛どどんこどん』シェリル・八千代・ミツハシ(CL3000311)がエルシーに尋ねる。
「美少年かぁ~と思って。まあ、敵だから倒すに決まってるんだけどこう」
「ですねぇ~奴隷というのは本当に悪しき制度です……いえ、すべてが悪とは語弊がありますが、件の主人は悪しきものと言わざるを得ません」
エルシーの懊悩とシェリルの懊悩は似ているようで少しズレがあるようだ。
「エセだよ、エセ」
囮用のボートを準備する『裏街の夜の妖精』ローラ・オルグレン(CL3000210)はいつもの清純そうな仕事着とは一線を画した『夜』用のスケスケベビードール、略してスケベ衣装での出陣である。
乗り込み用のボートを用意する男性諸氏の視線はフラフラと揺れているのは仕方ない話だ。
「なんか、ジェラルドってやつ、よくわかんないけど気持ち悪い。グリ、気をつけてね」
『おともだち』イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)は同じ孤児院で過ごす少年に不安を吐露する。
「ん? わかってるよ、イーイー」
『見習い銃士』グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)は軍から支給された、鎖閂式のライフルの槓桿を後方に引き絞りながら幼馴染に答えた。
ライフルを構え海の向こうに駐留している補給線に向ける。彼が自由騎士として初めてその引き金を引いたのはちょうど半年前。最初の引き金の重さは覚えている。然し、然しだ。アクアディーネの権能『不殺』があるとはいえ、その引き金は今はずいぶんと軽くなった。それは騎士――軍人としての経験の結果か、それとも――。
「闇夜に隠れてこっそりドッキリ! わくわくするね! さーちあんですとろーい!」
『神秘(ゆめ)への探求心』ジーニアス・レガーロ(CL3000319)は虹色の瞳を輝かせ元気にしっぽを振っている。月光に反射する色は朱。どうにも興奮の色が見える。
「両方のボートの準備はととのったようだ。そろそろ出発してもかまわないか?」
『これもまた運命』アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)が騎士たちに声をかけた。
「OK、資材はきっちりいただいていこう」
ヴィンセント・ローズ(CL3000399)はいの一番にボートに乗り込むとニンマリと微笑んだ。
(人の趣味趣向にケチをつけるつもりはねぇが見過ごせないよな)
「拙者は騒げばいいでござるな! ところでローラ殿、すけべいでござるな!!」
いつものようにテンションの高い『一刀両断』ムサシマル・ハセ倉(nCL3000011) がシェリルの指示を聞きブンブンと首を縦にふる。
「はい~、派手にいきますよ~」
●
「2時方向から……イ・ラプセルかな? ボートが来る」
「ジェラルド様に報告は?」
「今はやめておいたほうがいい、お邪魔をしてはご機嫌を害される。一艘なら僕らで対応できるよ」
「そうだね。ミトラース様の加護を」
「ミトラース様の加護を」
美少年たちはうなずきあう。
「くぉらーーー!! ホモのみなさ~~~~~~~~ん!! こんばんは~~~~~!!!」
乗船部隊から連絡を受け、準備完了と、美少年を無駄に浪費することは絶対許さない委員会委員長のローラが、大声で叫ぶ。
「ばーかばーか!!!!!」
それに合わせてなんとも少ない語彙での煽りでムサシマルが追随した。
「なんと破廉恥な。……でもあの桃色の髪のこ、僕らと同じような服。あのこも僕らと「同じ」なのかな?」
少年は一瞬戸惑う。
「だとしても唯一至高神ミトラースの敵だ」
少年たちは見事に釣られ、ローラたちの乗る船に向かってミトラースの権能による遠距離攻撃を仕掛け始める。
「あわわ、バッチリと囮の役目は果たせたようですね~」
中空に燃える緋色の文字を指先で踊らせ、シェリルが反撃する。避ける場所もない美少年たちの攻撃は3人を蹂躙していく。
「愛の狩人ってもんをローラが見せちゃうんだからね!」
仕掛ける前にはノートルダムの息吹をかけておいた。此処から先は仲間が乗り込むまでは耐え続ければいい。耐久レースは得意だ。朝まで何人もの相手とやりあったことだってある。それに比べたらあんな坊やたちなんて甘いくらいだ。
ハーベストレインを連発しながらローラは耐える。
「ローラ殿ぱんつまるみえでござるよ」
「みせてんのよ!」
一方息を殺しながら近づいた二艘のボートはシャンバラの少年たちがローラたちに意識を奪われているうちに後ろから、接舷するとエルシーのカギ付きロープで乗船していく。
「こんばんは! おいらジーニアス! ジニーって呼んでね!
もう秋だけどそんな格好で寒くない?
はい、暖かい蒸気を召し上がれ!」
いの一番に乗り込んだジーニアスは、ドクターの少年を狙い二連の剣閃を煌めかせた。
「なっ、蒸気などと悪魔の技に耽溺する破廉恥さ! 恥ずかしいとはおもわないのか!」
肩口をえぐられた少年は下がりながら自らを癒す。
「ジェラルドのやってることは、お前たちの信じるミトラース神の教えと合ってるって、本当に思うか?」
もしも、説得が通じるなら。ダメモトでヴィンセントは少年たちに声をかけた。
「ミトラース様の愛は千差万別だ、情愛もまた愛の一つ」
眉をしかめ教義を語る少年の瞳に浮かぶは妄信と狂信。説得などは通じない。それがわかりヴィンセントは舌を打ち、二連の弾丸を放った。
ネコの少年がドクターの少年を庇う。
イーイーもまた同じように説得の言葉をもって来てはいるが、きっと彼らには届かない。言葉は風を滑る。
「それでも君たちは苦しそうだよ」
「憐れむな! イ・ラプセル人。それこそが愚弄としれ! 神は我らのために試練をも齎す! それはさらなる神の愛の高みに至るために!」
ネズミのバスターの少年が踏み込み、イーイーのバッシュが組あい高い金属音が上がる。イーイーにはそれが声なき悲鳴に聞こえた。
「えっ、ちょっとまってよ! この子達が敵なのっていうなんていう、えっちな格好っ!」
よじ登ったエルシーをまっていたのは露出度の高い少年たちの姿。自分も大概ではあるがそれ以上の肌の露出面積だ。
際どい腰元をみて、顔が赤くなる。
泣いたあとのあるネコの少年をみて、そのほてりも一気に冷める。ひどいことをされていたことくらいその首輪をみればわかる。
首輪などヒトがつけられるものではない。
「信じる神は違うかもしれない。でもその前に私達は同じ人間。味方になれとは言わないから、邪魔しないでもらえるかしら。私達は貴方達のボスに用があるの」
(ほんとに用があるのは貨物だけどって、まるで飲み友みたいね)エルシーはこころの中でそう付け足した。
「ジェラルド様になんのようだ!」
少年は明確な警戒心をむき出しにする。
「君達の神も信仰も否定はしない。だが、問おう。ジェラルドという男は君達の神と信仰に相応しい男だろうか?」
アリスタルフは彼らを否定しない。それでも彼らの警戒心はとけることはない。
「ジェラルド様は俺たちのような魔女狩りの身分から地方聖職者に上り詰めた方だ。信仰は俺たちより認められている!」
それは教義という糖衣に塗り固められた詭弁に過ぎないことを彼らは気づいていない。気づくことすらできない。
それこそが、彼らにまとわりつき、支配するシャンバラの神、ミトラースの権能であるのかもしれないとアリスタルフは思う。
アリスタルフは唇を噛み、ドクターを庇うバスターの少年ごと鉄山靠で撃ち抜く。
ドクターの少年はバスターの少年の回復を自らの神に願う。しかしマナと、バスターの少年のオドは結びつかない。グリッツから放たれる致命の弾丸がバスターの少年を苛んでいるからだ。
グリッツの軽い引き金は敵である少年を穿つ。その行動に抵抗感はない。
「なによう~、うるさいわねぇ~~」
甲板での戦闘は大きな音を立てる。故にこの補給線の王が気づくのは時間の問題だった。
うしろから憔悴した様子のオニヒトの少年もついてくる。首元には鮮やかにあかい花びらが舞っている。
「なっ……!」
其の意味がわかったエルシーはきっ、とネクロマンサー、ジェラルドをにらみつける。
「ふぅん、ねえ、アタシあんたたちに守れっていったわよね? みつけたらなんですぐに知らせなかったの?」
「それは……その」
少年は口ごもる。最中に声をかければ何をされるかわからないからだとは言えない。
「まあいいわ。イ・ラプセルの背教者たち。……あらぁ? 可愛い子たちがいるじゃない」
イーイーとグリッツ、ジーニアス、そして脚線美を短いパンツから見せつけるアリスタルフをいやらしい目で眺めるとぺろりと舌なめずりする。
「おいら?」
その湿度の高い視線からイーイーは本能的な危険を感じグリッツを視線から守るように移動する。ジーニアスはその視線の意味はわからない。
「其の子たちだけなら、アタシのものになるなら、ミトラース様の愛に殉じるならつれていってあげるわよぉ」
質量を伴うかのようなその粘ついた声に、アリスタルフは身震いし、其の嫌悪を飲み込みながら、自らをその視線に晒し、少年たちを守る。
「己が欲望の肯定に神を利用するか。とんだ背信者だな」
声は怒りに震える。嫌悪感の顕なその声にジェラルドは笑う。
「あはぁ。可愛い! 愛を知らないのね。いいわ。教えてあげるわ。情愛もミトラースの愛」
「んなわけあるかー! ホモは殺す!!」
戦場が甲板に移ったことで、手摺に足をかけとんでもない格好のローラが其の勢いで飛びかかり、言葉にはできないような顔で桃色の星を降らせた。
「きゃあ」
伏兵を意識していなかったジェラルドはその攻撃を受けてしまうが、ダメージ自体は権能に減退させられている。
その隙を見逃さず、ヴィンセントは二連の銃撃をジェラルドに叩き込んだ。
「みんな、あいつに集中! あいつだけは放置はできないだろ」
「同感! 美少年を独占する世界の敵は、この世から消し去るわ」
ヴィンセントの指示にエルシーも同意するが、こっちはこっちでなにか怪しげなものを含んでいる。荒ぶる鉄山靠がジェラルドを襲う。
「この子達がこぶたなら、ジェラルドはおおぶた? それともめすぶた?」
ジーニアスが悪意なく呟く。
「あらあら、難しい言葉をしっているのね、こねこちゃん!」
「こねこじゃない! ヒョウだよっ!」
「あるていど距離はあけないとですよ~」
シェリルは緋文字を展開しながら指摘する。彼らシャンバラ人の攻撃は相手の数が多いほどに有効になっていく権能によって守られているのだ。
故に固まっていることは彼らの権能に対して有利を譲ることに相違ない。
「わかってるよー!」
ジーニアスが元気に答える。
「面倒な子たちね。こぶたちゃん、まだいけるわね?」
呼ばれたネズミの少年は頷く。ジェラルドは彼の大剣に何らかの付与魔法を齎せば、その大剣に黒い靄がまとわりつく。
ネズミの少年は、目の前のイーイーに向かってその大剣を振るえば、イーイーは体からなにかが奪われたような嫌悪感を覚えた。
するとネズミの少年につけた傷がみるみる間に薄くなり血液が止まる。
「なにそれ」
「答える必要はない!」
イーイーの疑問に答えはない。
見たこともないスキルに自由騎士たちは浮足立つが、疑問はあとだ。回復の術であると断じたグリッツはヴィンセントと目配せしあって、致命弾を撃ち続けることにする。
エルシーとジーニアス、アリスタルフは最優先撃破対象をジェラルドに定め、合図でもって彼を集中攻撃する。
「致命ってのはね、こう使うの」
ジェラルドがまた見たことのない範囲攻撃を自らの眼の前にいるエルシーとジーニアス、アリスタルフに命中させる。
「んもう!」
ローラのハーベストレインが弾かれたかのように前衛の3人には届かない。
ネクロマンサーの情報を得ることはできたが、それと引き換えのピンチは厄介だ。
「めんどくさいホモは死ね!! めんどくさくなくてもホモはしね!!」
文句を言いながらもドクターとしてのローラの行動は合理的だ。仲間の傷の具合を確かめ確実に戦線を支えているのだ。えっちなポーズで少年たちを悩殺するつもりであったが、そんな余裕は今やない。彼女がこの状況の生命線なのだ。
縦しんば悩殺をしようが、彼らには通じないだろうということもわかる。彼らを呪縛するものの根は深い。
「あー、ローラ真面目にやりたくないんだけどーーー!」
「すまん、そこは頼む! あとで奢るから!」
ヴィンセントは銃撃での支援をしながらスケベなドクターを励ます。
状況は一進一退だ。範囲致命は一人しか回復手がいない場合はやっかいにすぎる。
とはいえ、自由騎士団もこの半年で大きく力をつけてきたのだ。連携力がやや劣る――それは魔女狩りの美少年たちとジェラルドの関係もあったのかもしれないが――シャンバラ人と連携力の高いイ・ラプセル人の差がじわじわとキルレシオの天秤をイ・ラプセルの側に傾けていく。
ジェラルドを守るためにねこの少年が彼らの間に割り込んでくる。アリステフとエルシーの鉄山靠でダメージを通すことができるが、とうのジェラルド本人に有効打は打てない状況は続くが、ジーニアスの二連撃を喰らい続けるねこの少年にも限界はある。
イーイーと一騎打ちするねずみの少年もお互い満身創痍だ。謎の回復効果はすでに切れている。グリッツがイーイーを支援攻撃し、ねずみの少年の隙を作る。その幼馴染がくれたチャンスをイーイーは受け取り、渾身のバッシュでねずみの少年を黙らせた。
ドクターの少年は今や単体回復しかできない、前衛二人も倒れた時点でジェラルドはうさぎの少年を下がらせる。
このまま戦っていても自分たちが負けてしまうこともわかる。
この補給線にあるものは『所詮はイ・ラプセル人には使えない』だろう。それなりの細工はしてある。それに引き際を見定めることは指揮官として重要な役目でもあるのだ。
「飛び込みなさい!」
ジェラルドの其の言葉にうさぎの少年とオニヒトの少年は走り出し船から飛び出す。それと同時に補給船にかけられたフックをうさぎの少年が切り、オニヒトの少年はミトラースの祝福を受けた魔力の散弾で目眩ましを自由騎士団に向け放った。
彼らは追撃を防ぐと、自由騎士団の用意したボートを利用し、撤退する。
「じゃぁね! またあうひまで。 そこのかわいこちゃんたち、宗旨変えをするなら私のもとにいらっしゃい! 悪くはしないわ!」
そういうとソラビトの羽を広げ、マギアスの少年とともに浮かび上がったジェラルドは追いかけようとする、エルシーの足元に泥の沼を生成した。
「なにっ、動けない?!」
足元の泥はエルシーの足を捕らえ移動を阻む。
ヴィンセントとグリッツ、そしてシェリルが遠距離攻撃で追撃するが、彼らは逃げに集中している。ダメージは与えたが落とすにはいたらない。
とまれ、彼らは補給船の鹵獲に成功した。
気絶するネコと犬のケモノビトにイーイーは「この子達こんな服でいじめられてたのかな」とこぼす。
「わかんないけどね。このままじゃ寒そうだ」
いって、グリッツはシェリルがふんじばった少年たちに毛布をかぶせる。余談であるが少年を縛るシェリルの目はちょっとだけ怖かったと後にグリッツが答えていた。
「ねえねえ、君たちはジェラルドについてどう思っているの?」
ジーニアスが虹色の目でネコとイヌの二人を見つめながら問いかけるが少年たちは口を噤んだまま話そうとはしない。
かれらは補給船の資材をチェックする。
船の倉庫には彼らの教義を記した、聖書。そして彼らが使ったであろう小さな簡易的な祭壇。
そして簡易的な門がもう一つ立てることができるほどの資材。
しかしその資材には厳重な魔法のプロテクトが掛けられていた。現時点ではシャンバラのこのプロテクトの魔法を解くことができるものはイ・ラプセルにはいないだろう。
しかし、資材自体を確保できたのは十分な成果だろう。
激化するシャンバラとの戦いに必ず役に立つはずだ。
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
称号付与
『ジェラルドのおてつき』
取得者: グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)
『ジェラルドのおてつき』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
『ジェラルドのおてつき』
取得者: イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)
『ジェラルドのおてつき』
取得者: ジーニアス・レガーロ(CL3000319)
取得者: グリッツ・ケルツェンハイム(CL3000057)
『ジェラルドのおてつき』
取得者: アリスタルフ・ヴィノクロフ(CL3000392)
『ジェラルドのおてつき』
取得者: イーイー・ケルツェンハイム(CL3000076)
『ジェラルドのおてつき』
取得者: ジーニアス・レガーロ(CL3000319)
†あとがき†
皆様参加ありがとうございました。
資材についてはわかることは現状ではありませんが、聖霊門の材料であることは確かです。無事にゲットできましたので生産力はプラスしておきます。
MVPはいろいろがんばったあなたへ。
この先シャンバラとの本格的な戦いは続きます。
皆様がんばってくださいませ。
捕虜の少年たちは、がんとして口を開きません。情報は得ることはできないと判断されています。
資材についてはわかることは現状ではありませんが、聖霊門の材料であることは確かです。無事にゲットできましたので生産力はプラスしておきます。
MVPはいろいろがんばったあなたへ。
この先シャンバラとの本格的な戦いは続きます。
皆様がんばってくださいませ。
捕虜の少年たちは、がんとして口を開きません。情報は得ることはできないと判断されています。
FL送付済