MagiaSteam
Emo-i! 遥かな空で歌い踊れ!



●空の旅、空の幻想種
 シャンバラとの戦争が終わり、ミトラースの死後聖霊門が使用できなくなった。これにより人や物資の輸送はイ・ラプセル本国からの大型輸送がメインとなる。
 前もってクロックワークタワーにより生産されていた気球型飛行船により、イ・ラプセルからシャンバラへの輸送は賄われる。通商連に申請しておいた空路の申請も通り、飛行船はフル稼働で動くことになる――予定だった。
「おおっと、ここから先は俺達の領域ジャン!」
「空は皆の物だって? うんうん、間違いないネ! 話しかけるきっかけ欲しかっただけヨ!」
「あ、脅かしちゃった? 姿かえようか、ボインボインの美女とか」
 飛行船の空路の前に現れる数体の気体状の幻想種。気体から固体へと変化自在の存在。時に人の姿を取り、時に蛇の姿を取り、時に煙のまま人を惑わす者。
「ジン!?」
 ジン――『目に見えず、触れられない存在』の意味を持つ幻想種。総じて人よりも体力や魔力で勝り、その力で人と同じように善を為すジンと、悪を行使するジンがいる。前者は契約に応じて人を助け、後者は罠にはめて人の命を奪うと言う。時折ランプに封じられたジンが願いをかなえたりするとか。
「ノンノンノン! 怯えるのはノー! 俺達は命を奪うつもりはナッシング!」
「最近よく通るから気になって見に来たのヨ。飛ぶ船って珍しいし」
「でもまあ、すんなり通すのも面白くないよネ! 折角出会えたんだからサ!」
 身構える船員たち。輸送に特化した飛空船には武装なんか積んではいない。仮に大砲を積んでいたとしても、ジン相手にどれほど通じるものか。絶望する船員たちに、ジンは手を振り上げ、
「なんか面白いことしたら通してやるよ。ハイ、ハイ、ハーイ!」
 頭上で両手を叩き、芸を要求した。

●自由騎士
「とりま秒で帰ってきたんだって」
 アミナ・ミゼット(nCL3000051)は集まった自由騎士を前にそう言った。
「ワンチャン避けて通ろうとしてもエンカするんでヤバみマックス。
 ジンたんが言うには『パリピたい!』ってことなんで、どちゃくそおもろい人が欲しいっぽいよ。このままだと空からいけなくてシャンバラじわるみたいなんで、無視するのはなしありのなしなんだって」
 ――アミナの言葉を要約すると『別の道を通ろうとしても先回りされる』『ジンは何かお祭り、もしくは芸を求めているのでそういったことに長けた人が必要だ。このまま空路が使えないとシャンバラへの輸送が滞るため、解決しておくに越したことはない』との事である。
「あーしはりょって返したけど数多い方がテンアゲなんで、来てくれるとよいちょいまる」
 独特の言語だが、アミナはジンの元に向かうけど、たくさんいた方が楽しいよね。との事である。
「ジンたん、なにがすことかわけわかめだけど、とりまわちゃればおけまる水産なんだって」
 ジンの好みを探るのは難しい。だが基本的に人間に好意的かつ陽気な性格の為、揚げ足を取ったりすることはないだろう。
 どんな芸を見せるか、と思いながら、自由騎士達は空の旅へと向かった。


†シナリオ詳細†
シナリオタイプ
通常シナリオ
シナリオカテゴリー
交渉
担当ST
どくどく
■成功条件
1.ジンに芸を披露する
 どくどくです。
 第二章最初のどくどくシナリオですが、こんな感じです。

●説明!(三行で)
 飛空船の邪魔をする幻想種、ジン。
 ジンを喜ばせれば、道を開けてくれると言う。
 レッツパーティー!

●敵(?)情報
・ジン(数不明)
 気体状態と固体状態を変幻自在に変える事が出来る幻想種です。決まった形をもたず、時に巨人に時に竜に時に美女にと様々な姿を取ります。数が不明なのも、その気になれば複数の人に『変化』できるからです。4mほどのターバンを巻いた巨人の姿が好みのようで、自由騎士達にはその姿で現れます。
 基本的に陽気で友好的なため、相応の芸事をして喜ばせれば通してくれます。芸の内容によっては姿を変えて参加することもあるでしょう。
 なお『戦いが俺の芸だ!』と言い張って戦いを仕掛ける事もできます。悪意さえなければ『わはははは。面白い!』と付き合ってくれるでしょう。

●NPC
・アミナ・ミゼット(nCL3000051)
 独特の言語形態をもつダンサーです。水着に近い恰好で踊ります。
 彼女と一緒に芸をする事も可能です。大抵のことには付き合ってくれます。

●場所情報
 イ・ラプセルとシャンバラ間の空路。気球型飛行船の甲板。
 芸に必要なものは、船に積んでいて構いません。よほど巨大な物(パイプオルガンなど)でなければ詰め込めます。
 事前付与……がいるかどうかは解りませんが可能です。ホムンクルスも作成可能です。

 皆様のプレイングをお待ちしています。

状態
完了
報酬マテリア
1個  1個  3個  3個
8モル 
参加費
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
参加人数
7/8
公開日
2019年05月12日

†メイン参加者 7人†




「これがジンですか……」
 唖然とした表情で『アイドル志望』秋篠 モカ(CL3000531)はジンを見上げる。空を飛ぶ魔人は時に鳥になったり、ドラゴンになって火(演出)を吹いたりと変化自在さをアピールしている。初めて見る幻想種に言葉を失っていた。
「ジンって珍しいのかしら?」
 小首をかしげて考える『極光の魔法少女』モニカ・シンクレア(CL3000504)。シャンバラとイ・ラプセルしか知らないモニカだが、その名を聞くのも初めてである。どうあれ出会ったからには全身全霊をもって演奏するのみだ。
「ジンの後ろ盾を得ると役に立つ……立つのかな? でも仲良くなることはいい事よね」
 少なくともこの空路を使うに際しては役立つかも、と自分を納得させる 『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。純粋な魔力と多彩な変身能力は何かあった時に役立つだろう。もっとも、享楽的なジンが言う事を聞いてくれるかは別問題だが。
「不肖アダム・クランプトン、全力で芸事に当たらせていただく!」
 真剣な面持ちで立ち挑む『革命の』アダム・クランプトン(CL3000185)。シャンバラへの輸送経路が仕えなければ、自由騎士だけではなくシャンバラに住む人達まで不便が生まれるかもしれない。それを思えばここで全力を尽くすのは騎士の本懐とも言えよう。
「個人的にも仲良くしたい相手ですね」
 弦楽器を手にして頷く『癒せる吟遊詩人見習い』ミスリィ・クォード(CL3000548)。自由騎士としての活動はこれが初めてだが、臆することなく幻想種の前に立つ。興味津々という顔でジンを見て、挨拶代わりと軽く弦を奏でた。
「芸見たイか! 芸楽シ。良イ! オレも好キ!」
 言って笑顔を見せる『竜天の属』エイラ・フラナガン(CL3000406)。様々な土地の海を渡ってきた海産系マザリモノのエイラ。その経緯もあって、様々な土地の芸や祭りを見ていた。見様見真似だが色々な知識は持っているし、その楽しさも知っている。
「ねーねー、私にもなれるー? おー! そっくりー!」
 自分と全く同じ姿になったジンを見て『南方舞踏伝承者』カーミラ・ローゼンタール(CL3000069)は目を輝かせていた。事の経緯を忘れたわけではないが、ジンと言う幻想種には興味がある。後でいろいろ話を聞いたりしてみたい。
「これはこれは楽しそうな人がやってきたネ!」
「ちょっと脅かし過ぎてもう来ないかも、って寂しかったんだヨー」
 ジンたちも自由騎士達の登場にテンションが上がっていた。基本的に自分たち意外と話す相手がいないのだろう。寂しさもあったのか、足があれば正座でもしていそうな勢いである。
「いえあー! いくよー!」
 アミナ・ミゼット(nCL3000051)の掛け声と共に自由騎士達のセッションが開始される。
 飛空船の上、幻想種を楽しませるステージの幕が上がった。


「一芸ねぇ。披露できるような芸なんて私は持っていないけど……」
 言いながらいそいそとエプロンを付けるエルシー。その背後で組み立て式の台と火を起こしているスタッフの姿があった。あとモカがリラを手にして伴奏を開始する。エルシーに渡されたメモ通りに奏でられた伴奏は、どこか軽快なものだった。
「こんにちは、エルシーです。今日はみなさんにとっておきの麺料理をご紹介しますね!」
 明るいノリと共に手をあげるエルシー。そのままステップを踏むように移動し、回転しながら鍋を手にする。魅せるように腰の動きを優先した回転がエプロンをふわりと翻させた。
「1! パスタと言えばアルデンテ! 大事なのは温度管理よ!」
 ぱん、と手を叩いてエルシーが鍋に水を注ぐ。ある程度温まった後に、パスタを回転させるように投入した。同時に近くに皿を置き、余熱で皿を温める。無駄ない動きで野菜を刻み、茹で上がるまでの時間を飽きさせないようにしている。
 アルデンテ。
 その意味は『歯ごたえのある』であり、厳密に言えば麺料理の名前ではない。麺を完全に茹で上がらせないで、中に芯を残した状態のパスタを指すのである。アマノホカリ的に言えば『コシがある』と言われるこの状態は、エルシーの言葉通り温度管理が重要となる。高めのお湯に麺をつければ一気に熱が通ってしまい、かといって低い温度だと硬すぎる。
 大事なのは麺だけではない。余熱で芯まで熱が通ってしまえば歯ごたえは減衰する。しかし冷えてしまった麺の味あいは温度同様冷めてしまう。適切な温度、適切なタイミング。温度と時間管理が重要な麺料理である。
 そしてエルシーはその時間を踊りながら測っていた。
「2! にんにくと唐辛子と一緒にパスタをフライパンで炒めます」
 タイミングを見計らい、麺を取り出し一気に炒める。大量に料理を作るのは教会の雑務でなれている。タイミングを見計らい、皿に盛りつけた。
「アーリオ・オリオ・ペペロンチーノの完成よ! ほら、おいしいですよ。はい、アーンして」
「おお、グラッチェ! 美味しいですなぁ!」
 蠱惑的な肉体を醸し出すようにしてジンにパスタを食べさせようとするエルシー。その動作一つ一つも彼女の芸であった。
「先ずは胃袋を掴む。基本中の基本よ」
 微笑むエルシー。打算的な面もあるが、出された一品はジンを喜ばせたいと言う気持ちがこもった物であった。
 パスタを口にするジンを前に現れる吟遊詩人一人。
「初めまして ミスリィです。私が披露できるのは 歌と演奏。楽器は小型の竪琴。
 さあ、自己紹介を始めましょう」
 リラを奏で、ミスリィが演奏を開始する。軽やかな音とリズムが空に響き、場を満たしていく。セミロングの髪が風に吹かれてふわりと揺れた。その揺れが収まるのを待って、演奏は再開される。
「鳥より早い飛行船。びっくり出会った風の御仁。青い空に雲で描く私の名前は、ミスリィ。
 ミズビトの吟遊詩人を生業としています」
 歌った後に恭しくジンに向かって一礼する。
「ここで会うのも何かの縁。風の魔人さん、お名前教えてくださいな」
「ヨーク!」「フィアマット!」「バラーガ!」
 ノリノリで応えるジン三人。その答えを受けてミスリィの歌は続く。
「船が運ぶのは衣食住。戦争の傷跡癒す物と人。私達が行かなければ、多くの人がお腹を空かせてしまいます。
 嗚呼、風の御仁、どうか私達に道を譲ってもらえませんか?」
「おお、それは知らずに申し訳ない。偏西風の魔人、一生の不覚。
 しかししかしこちらも手は抜けぬ。主との契約に縛られた憐れなジンに、どうか一芸をば」
 踊るように応えるジン。
(主?)
(今適当につけたと思うよ。昔あった演劇をもじってるんじゃね? ランプの精霊だったっけ?)
 後ろでひそひそと呟きあう自由騎士。まあ、あれです。こんなシナリオで続き物とかねーよ。
「嗚呼、悲しきかな西風の魔人。されどその心配はございません。ここに集いし自由騎士、武芸百般にして万夫不当、才色兼備で豪華絢爛、百花繚乱の騎士達です。
 彼らが繰り出す芸はビオトープ1。全ての文化はここから始まり、そしてここに帰ります。武にして舞、鋭くもありそして優しくもある彼らの芸をとくとご覧くださいませ。
 歌や音楽に水中も地上も地下も空も国も関係なし。張り切って 心地よい疲れに満ちるまで楽しみましょう!」
 言って演奏に徹するために後ろに下がるミスリィ。目くばせで次の自由騎士に前に出るように合図する。
「場は温めましたよ」
「ハードル上げたなあ」
「このぐらいがいいのですよ。皆様派手好きのようですし」
 ぺこり、と一礼して会話を打ち切るミスリィ。ここで間を開けるのはよろしくないとばかりに、次の騎士が名乗りを上げる。
「では僕が行こう」
 舞台に躍り出たのはアダムだ。気合を入れるように体内の龍を爆発させ……ジンにお願いした。
「あ、これだけはジンさんにお願いしたい! ボインボイン……に限らないけど女性に変化するのは止めていただきたい! 本当に!」
「フリ? 汝フリ?」
「僕が全力で芸出来なくなるから! ね!?」
 アダムが全力で拒否している間に、舞台には打楽器が用意されていた。アマノホカリ製の太鼓である。木製の胴と呼ばれる部分になめした動物の皮を張り、硬く固定した楽器だ。川の張り方や枚数などで音の響きが変わり、同じ太鼓でも微妙に差が生じる。そして打楽器の特徴として、叩く強さで音の響きが変わるのだ。
「僕の誇りは観客の笑顔の中にある! 響け、響け、響け。響け! 我が鼓動! 我が蒸気!」
 バチを手にして気合を入れるアダム。キジンの肉体から蒸気を吹き出し、リミッターを解除するように大声を扇げる。
「これが『演奏用蒸気鎧装太鼓連打(ミュージカルカタフラクトドラミング)』だッ!」
 ドン。
 空に響く太鼓の音。遮るものも反射する壁もない空中に置いて、音は打ち手の力と力量が浮き彫りになる。心震わすほどの太鼓の音は、アダムの力と誰かを楽しませたいと言う気持ちがこもった一打だった。
 ドコドコドコドコドンドンッ!
 そして繰り返される太鼓の音。休むことなく全力で叩かれる太鼓の音は、単調ながら聞く者を引き寄せていた。様々な太鼓を動き回るように打ち、それでいてリズムを崩さない。太鼓の響く音はまさに轟雷。単調だからこそ強く心を震わせる。
「叩くだけではなく、ここで腹筋運動を取り入れる!」
「何、さらに加速すると言うのか!?」
 アダムの一言にノリで応えるジン。
「腹筋運動をしながら太鼓を叩くッ! 響けッ! 腹筋ッ! 唸れッ! 腹筋ッ!
 これによりッ! 蒸気+太鼓+腹筋+汗=極上エンターテイメントが生まれる……ッ!」
「馬鹿な!? 今まで見たことのない技術との融合! これは未知なる肉体演奏!」
「うおおおお! 高まれ僕の蒸気! 燃えろアニムス!」
 気合を込めて加速するアダム。それに歓喜するジン。今まで見たことのない演奏がここに生まれたのだった。
 ――どうしたのアダム? 龍氣螺合で精神のリミッター外れすぎたの?
 心優しい自由騎士達は、そんな言葉をあえて飲み込んでいた。


 モカの伴奏で間を繋ぎ、次なる芸が用意される。
「ウル! エイカ、踊ル!」
 バックで太鼓をたたいていたエイカが前に出る。栄螺の貝殻を腰につけたマザリモノ。海産系マザリモノの中でも、色濃く親の形質が残っているエイラは、一処に長くとどまることはない。しかしだからこそ得た知識や技術もある。
「ハイ、ハイ、ハイ!」
 手拍子でリズムを取り、演奏に伝える。オーソドックスな八拍子。そのリズムと同時に両手を伸ばして足を軽く開く。派手なダンスではなく、陽気な舞。母親から教えてもらったアマノホカリ風の舞だ。
 どこかひょうきんな、それでいてリズミカルな。悪く言えば素朴で、しかしだからこそ見る人を選ばない踊り。しかし動き一つ一つを見ればそれが精錬された動きであることが分かるだろう。
(ウルル。エイラ、特別な芸無イ。鬼に姿変エてもソもソもジン達、変幻自在。モっと色々変ワれるヤツ等に見セても流石に楽シ筈無イ分カる。
 ダカラ踊り! 参加スる! 演奏参加すル! セッション! 良イ!)
 皆で奏でる演奏。そして踊り。その一役を担うためにエイラは舞う。大事なのは楽しませようとする心。、重要なのはその為に惜しまない事。
「上手イ下手関係無イ! ソモソモオレも別に上手ク無イ! でも楽シ。其処だケ自信あル。だっテ今楽シい!」
 大事なのは楽しむこと。
 勿論ジンを喜ばせると言う目的を忘れているわけではない。だがジンを楽しませて、なおかつ自分も楽しむことが出来れば最高だ。苦行ばかりの道化師もを否定はしないが、皆が笑って過ごせる未来ならそれに越したことはない。
 もしかしたら明日には手のひらを返されているかもしれないが、今日が楽しければきっと明日も楽しい。そう信じる事が今を生きる大事なことだ。
「ウル、ル」
 舞いながらエイラは幻想種本来の姿に身を変化させる。貝のぬるりとした部分が体中に生え、それと舞いが重なり合い一つの像を結ぶ。
 龍。アマノホカリにおいて存在した、天に昇る龍種の形。自然の権限とも言われ、恐れ、敬われ、そして今は存在しない幻想種。その姿を残した目に伝えられた舞。
 エイラにその意思があるかはわからないが、ここに居る者は確かに龍の姿を見ていた。
「モニカとみんなの唄と踊りと演奏を見せてあげるわっ! アミナっ!」
「よろっ!」
 演奏していたモニカが楽器を脇に置いて踊りに参加する。呼ばれたアミナも手をあげて踊りに加わった。
「ペアダンスよ! 全開でいくわ!」
 モニカの言葉と共に音のテンポは明るくなる。打楽器と管楽器。それを中心としたアップテンポな曲調。それに合わせるようにモニカとアミナは踊る。
 全開という言葉は言葉通り。最初からハイテンポに踊るモニカ。ヨウセイの特徴である羽根を広げ、アイドルの魅力全開で歌い、踊る。指先の一つ一つ、その先端にまで意識を向けて、大空そのものが舞台であるかのように。
 華奢な外見に見えるモニカだが、その動きは激しい。常に観客を魅了するようにしながら、体を止めるはしない。アミナもそれに答えるように動いていく。モニカが足を開いたのを見てアミナはその間を潜り、アミナがしゃがんだのを見てモニカはそれを馬飛びする。時に触れあい、時に離れ。互いに何をしたいかが分かっているかのように、リズムが乱れることなく踊り続ける二人。
(相性バッチリ! このまま押せばアミナも百合に目覚めるかも? かも!)
 などと考えているモニカだが、互いの踊りがはまっているのは確かだった。
「フィニッシュよ! アミナ、上げて!」
「ちょいさー!」
 モニカの言葉と共にアミナは背を向けて転がり、モニカは跳躍してその上に乗ろうとする。アミナは迫るモニカの足を蹴って押し上げ、モニカもそれに合わせて叩く跳躍する。
「アーイス、コフィン!」
 モニカの掛け声と共に氷柱が生まれた。モニカがそれを蹴り飛ばすと同時に氷は砕け、細かな輝きとなって空を彩っていく。 
「これが『極光の魔法少女』の踊りよ! アミナ、ありがと!」
 落下するモニカを肩車をする形で受け止めるアミナ。ダイヤモンドダストが舞う中、ポーズを決めるモニカ。
「次は私だよ!」
 拳を突き上げ、カーミラが舞台に現れる。央華大陸風の衣装を見に纏い、その身体能力を生かして横転しながらの登場だ。
「テンション爆上げだ! アミナも一緒に踊ろー!」
「アゲアゲで行くよ!」
 アミナを誘い、カーミラが躍り出す。オーラ全開で笑顔を見せて踊りだす。その動きに合わせるようにアミナも踊りだした。
「太陽のように熱く! 波のように激しく!」
 激しい音楽と共にカーミラが躍る。それは南国の太陽を思わせる熱い踊り。身体を激しく動かし、四肢を最大限に魅せつけるような艶やかにして活発的なダンス。色っぽくあるが扇情的ではなく、元気ではあるが美しさを損なわない。
「霧のように静かに。自分と対峙するように」
 カーミラとアミナの動きは一転して穏やかなものとなる。まるで申し合わせていたかのように同時に。ゆったりとした動きだが止まっているわけではない。むしろ穏やかだからこそ一挙手一投足が目立っていた。
「回るような円の動き! ぐるぐるぐるー!」
 また曲のテンポが変わり、二人は回転を中心とした舞を披露する。円舞にして演武。回るようにしながらカーミラとアミナは拳をかわすように踊っていた。くるくると立ち回る二人の攻防は目まぐるしく変化し、踊りはクライマックスに近づいていく。
「全てを魅了する幻惑的な舞! きらっきらだよ!」
 笑顔と共に舞うカーミラ。見る者を魅了する元気の良さと、その動き。それを舞う事で表現し、さらに倍増させていく。飛び散る汗さえも彼女の魅力。動作一つ一つで見る者を魅了するアイドル的な動き。南方諸島で学び、会得したカーミラの舞だ。
「ジンさんもおいでよー! 踊りは見てるだけじゃつまんないよ!」
「むはー! では参戦させてもらいますヨ! へーんしん!」
 カーミラの誘いにジンたちも女性に変身して踊りだす。そして自由騎士達も負けじと踊り始めた。
 空の上のセッションはまだまだ終わりそうにない――


 ポロン、とモカの最後の伴奏が終わり、皆が一礼する。その後に、全員一斉に崩れ落ちた。
「あー。疲れた。このままスヤりたーい!」
 踊りつかれて虚脱するように倒れ込むアミナ。他の自由騎士も演奏や踊りでかなり疲れていた。
 だがその顔に疲労の色はなく、むしろやり切った感があふれていた。
「楽しかったヨ! あんたらなら、ここを通ってもいいゼ!」
「そんな事よりさ、色々お話しようよ! ドラゴンとか見なかった!?」
「シャンバラ以外の空の話とか聞きたいわ!」
「それもいいけどお食事とかしません? ジンさんがお酒を飲めるならそれでも」
「イイネー! じゃあ変身するヨ!」
「いやあの、女性に変化するのは、その!」
 わいのわいのと空の上で始まる幻想種との二次会が華開く。

 その後、ジンがこの空域を邪魔するという事はなかった。
 むしろ飛空船の後押しをするように風吹いたり、嵐がやんだりしたと言う。それが今回の件と関係あるかどうかは解らない。
 イ・ラプセルとシャンバラの流通は、今日も滞りなく続いている。
 風は静かに、西から優しく吹いていた――

†シナリオ結果†

成功

†詳細†

称号付与
『蒸気+太鼓+腹筋+汗=アダム』
取得者: アダム・クランプトン(CL3000185)

†あとがき†

どくどくです。
自由騎士って多芸だなぁ。

以上のような結果になりました。戦わないシナリオはもう筆が走る走る。
MVPは最もはっちゃけてたクランプトン様に。オールモストキジンに腹筋あるのか、とか些細な問題でした。

それではまた、イ・ラプセルで。
FL送付済