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Gangster! 無法を生きるモノ!

●小悪党は死にたくない
ギャング――大元の意味は『行進』『行列』だが、それらがいつしか『集団』と同化し、そして『強盗の集団』となり、今では無法者の別称となった言葉だ。
法があるなら、無法がある。これはどうしとうもないことだ。これを完全撤廃するならシャンバラのように国民全員を神の愛で洗脳するか、パノプティコンのように国民全員を管理するか。そう言った政策を施さない限りは、絶対になくならない事である。『正義』は排すべき『悪』があるから成立する概念なのだ。
その為イ・ラプセルにもそう言った集団は存在する。そう言った集団を力技で排除する事自体は可能だが、『法の窮屈さに耐えられない』『神を信じられない』『国のやり方に賛同できない』『無法の方が楽だ』等の理由で無法の中でしか生きられない者達もいる。そう言った人間を皆殺しにするわけにもいかず、しかし無視することもできない……というのはどの時代でも発生する治安維持の案件である。
「ま、多少のお目こぼしは許してほしいんだよな」
ジャン・ディ・ベッロもそう言った人間の一人だ。イ・ラプセル軍に所属する軍医の一人で、同時にギャングの構成員でもある。軍の薬をこっそりスラムの闇医者に横流しし、小銭を稼いでいる小悪党だ。バレない程度の量を書類を誤魔化して渡し、スラムの医療に貢献している――
「なんて言い訳するつもりはないけどな。これも仕事仕事、っと?」
薬をスラムに運ぶ途中、ジャンは数名の人間に囲まれる。ギャングの構成員だ。曰く、
「イ・ラプセルの騎士団から武器と弾薬を奪う。見回りの情報を集めろ」
「ええ……。武器と弾薬はマズいしょ。見回りは軍医の管轄外だし、そもそも警備がキツいっすよ。
こないだ戦争あったばかりで怪我人も多かったから大丈夫? いやいやいや。……えー、本気っすかぁ、兄貴?」
ヴィスマルクやパノプティコンの二大国と戦い疲弊している今なら、武器や弾薬が少し減ってもわからないだろう。その目算で武器庫から物資を奪おうと言う目論見だ。
(面倒だなぁ、武器持ったら兄貴たちが図に乗って暴れるのミエミエじゃん。きったはったはごめんだぜ、俺っち。小銭稼いでスラムもハッピーがいいんだけどなぁ。
なんとか失敗してくれないかなぁ)
頭の中でそんなことを思いながら、どうしたものかと思案した結果――
●自由騎士
「まさかあたしの所に持ってくるとはねぇ……」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は集まった自由騎士を前に呆れたように呟いた。
「夜中、騎士団の武器庫に賊が侵入するって情報が手に入った。街のギャングが武器を求めての行為だ。こいつを許すと、力を得た連中が大暴れしかねない。
一網打尽にする為に、敢えて警備は空にしておく算段になった。逃げ道を完全にふさいで叩き潰す作戦だよ」
相手の素姓と作戦の内容は理解できた。あとは――
「で、情報を提供したそいつはどうするんだ?」
自由騎士の言葉に、頭を下げるジョン。今回の情報提供者だが、情報の信ぴょう性を語るために素姓が暴露された形だ。
「任せる。一応反省して足は洗う、って言ってるけどどうだか」
ジョンの罪状は横領窃盗背任等だ。法に照らし合わせればそれなりの罰則が与えられる。
「いやぁ、温情ほしいなぁ。俺っちが言わなかったら、まあないとは思うけど、もしかしたら武器がちょろっと闇に流れていたかもしれないし。ね?」
戦争に続く戦争。消耗の激しい武器のうち、ほんの少し数字が違った所で気付く人間はまずいない。そういう意味では、この告発は有益だったと言えよう。経緯は褒められたものではないが。
どうあれ今は武器強盗の防止だ。自由騎士達は急ぎ現場に向かった。
ギャング――大元の意味は『行進』『行列』だが、それらがいつしか『集団』と同化し、そして『強盗の集団』となり、今では無法者の別称となった言葉だ。
法があるなら、無法がある。これはどうしとうもないことだ。これを完全撤廃するならシャンバラのように国民全員を神の愛で洗脳するか、パノプティコンのように国民全員を管理するか。そう言った政策を施さない限りは、絶対になくならない事である。『正義』は排すべき『悪』があるから成立する概念なのだ。
その為イ・ラプセルにもそう言った集団は存在する。そう言った集団を力技で排除する事自体は可能だが、『法の窮屈さに耐えられない』『神を信じられない』『国のやり方に賛同できない』『無法の方が楽だ』等の理由で無法の中でしか生きられない者達もいる。そう言った人間を皆殺しにするわけにもいかず、しかし無視することもできない……というのはどの時代でも発生する治安維持の案件である。
「ま、多少のお目こぼしは許してほしいんだよな」
ジャン・ディ・ベッロもそう言った人間の一人だ。イ・ラプセル軍に所属する軍医の一人で、同時にギャングの構成員でもある。軍の薬をこっそりスラムの闇医者に横流しし、小銭を稼いでいる小悪党だ。バレない程度の量を書類を誤魔化して渡し、スラムの医療に貢献している――
「なんて言い訳するつもりはないけどな。これも仕事仕事、っと?」
薬をスラムに運ぶ途中、ジャンは数名の人間に囲まれる。ギャングの構成員だ。曰く、
「イ・ラプセルの騎士団から武器と弾薬を奪う。見回りの情報を集めろ」
「ええ……。武器と弾薬はマズいしょ。見回りは軍医の管轄外だし、そもそも警備がキツいっすよ。
こないだ戦争あったばかりで怪我人も多かったから大丈夫? いやいやいや。……えー、本気っすかぁ、兄貴?」
ヴィスマルクやパノプティコンの二大国と戦い疲弊している今なら、武器や弾薬が少し減ってもわからないだろう。その目算で武器庫から物資を奪おうと言う目論見だ。
(面倒だなぁ、武器持ったら兄貴たちが図に乗って暴れるのミエミエじゃん。きったはったはごめんだぜ、俺っち。小銭稼いでスラムもハッピーがいいんだけどなぁ。
なんとか失敗してくれないかなぁ)
頭の中でそんなことを思いながら、どうしたものかと思案した結果――
●自由騎士
「まさかあたしの所に持ってくるとはねぇ……」
『あたしにお任せ』バーバラ・キュプカー(nCL3000007)は集まった自由騎士を前に呆れたように呟いた。
「夜中、騎士団の武器庫に賊が侵入するって情報が手に入った。街のギャングが武器を求めての行為だ。こいつを許すと、力を得た連中が大暴れしかねない。
一網打尽にする為に、敢えて警備は空にしておく算段になった。逃げ道を完全にふさいで叩き潰す作戦だよ」
相手の素姓と作戦の内容は理解できた。あとは――
「で、情報を提供したそいつはどうするんだ?」
自由騎士の言葉に、頭を下げるジョン。今回の情報提供者だが、情報の信ぴょう性を語るために素姓が暴露された形だ。
「任せる。一応反省して足は洗う、って言ってるけどどうだか」
ジョンの罪状は横領窃盗背任等だ。法に照らし合わせればそれなりの罰則が与えられる。
「いやぁ、温情ほしいなぁ。俺っちが言わなかったら、まあないとは思うけど、もしかしたら武器がちょろっと闇に流れていたかもしれないし。ね?」
戦争に続く戦争。消耗の激しい武器のうち、ほんの少し数字が違った所で気付く人間はまずいない。そういう意味では、この告発は有益だったと言えよう。経緯は褒められたものではないが。
どうあれ今は武器強盗の防止だ。自由騎士達は急ぎ現場に向かった。
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.敵の全滅
どくどくです。
清濁併せ吞むか、騎士は清らかであるべきか。
●敵情報
・ギャング(×5)
イ・ラプセルのスラムをアジトにしている犯罪者です。小規模で小銭を稼ぐ程度だったのですが、一念発起して武力を求めて軍の武器を狙おうと計画を立てました。ギャングチーム名は『フォルテ』。
警備が甘いことを『今は戦争で騎士達も隙だらけだ』と好意的に受け取り、罠にはまっていきます。
種族は全員マザリモノ。重戦士三名、ガンナー二名。全員ランク1までのスキルを覚えています。
・トバイアス・マキーヴニー(×1)
元シャンバラの魔女狩り。呪術師。ノウブル男性。シャンバラの戦い後、流れるようにスラムにたどり着きました。その後、世間を呪うように腐っていきます。OP中の『兄貴』はこいつです。
『ケイオスゲイト Lv3』『ペインリトゥス Lv3』『ネクロフィリア』等を活性化しています。
NPC
・ジャン・ディ・ベッロ
イ・ラプセル軍医。同時にギャングスター『フォルテ』の一員です。ノウブル。20歳男性。ヒーラースタイル。軍の薬品をスラムに横流しする程度に悪党です。罪状を換算すれば、二年の強制労働ほど。本人はもう足を洗うと言っていますが、バーバラの勘では『しばらくしたら別の悪事をするタイプだよ、こいつは』との事。
ジョン自身は情報を渡したことで司法取引したいと言っていますが、聞く必要はありません。シナリオ後の扱いは、自由騎士に一任されます。大臣も黙認する形です。ジョン自身も『バカ兄貴に巻き込まれて死ぬぐらいなら、刑務所の方がマシ』と言っています。
戦闘には参加しません。逃げるつもりもなく、大人しく別場所で拘束されています。
●場所情報
イ・ラプセルの騎士団基地内。武器庫に向かう道。戦闘開始と同時に兵士達が道を塞ぐので、逃亡対策は不要。
戦闘開始時、敵前衛に『ギャング(重戦士)×3』が、後衛に『ギャング(ガンナー)×2』『トバイアス』がいます。
待ち伏せなので事前付与は三度可能とします。集中や前もって庇う行為も可能。
皆様のプレイングをお待ちしています。
清濁併せ吞むか、騎士は清らかであるべきか。
●敵情報
・ギャング(×5)
イ・ラプセルのスラムをアジトにしている犯罪者です。小規模で小銭を稼ぐ程度だったのですが、一念発起して武力を求めて軍の武器を狙おうと計画を立てました。ギャングチーム名は『フォルテ』。
警備が甘いことを『今は戦争で騎士達も隙だらけだ』と好意的に受け取り、罠にはまっていきます。
種族は全員マザリモノ。重戦士三名、ガンナー二名。全員ランク1までのスキルを覚えています。
・トバイアス・マキーヴニー(×1)
元シャンバラの魔女狩り。呪術師。ノウブル男性。シャンバラの戦い後、流れるようにスラムにたどり着きました。その後、世間を呪うように腐っていきます。OP中の『兄貴』はこいつです。
『ケイオスゲイト Lv3』『ペインリトゥス Lv3』『ネクロフィリア』等を活性化しています。
NPC
・ジャン・ディ・ベッロ
イ・ラプセル軍医。同時にギャングスター『フォルテ』の一員です。ノウブル。20歳男性。ヒーラースタイル。軍の薬品をスラムに横流しする程度に悪党です。罪状を換算すれば、二年の強制労働ほど。本人はもう足を洗うと言っていますが、バーバラの勘では『しばらくしたら別の悪事をするタイプだよ、こいつは』との事。
ジョン自身は情報を渡したことで司法取引したいと言っていますが、聞く必要はありません。シナリオ後の扱いは、自由騎士に一任されます。大臣も黙認する形です。ジョン自身も『バカ兄貴に巻き込まれて死ぬぐらいなら、刑務所の方がマシ』と言っています。
戦闘には参加しません。逃げるつもりもなく、大人しく別場所で拘束されています。
●場所情報
イ・ラプセルの騎士団基地内。武器庫に向かう道。戦闘開始と同時に兵士達が道を塞ぐので、逃亡対策は不要。
戦闘開始時、敵前衛に『ギャング(重戦士)×3』が、後衛に『ギャング(ガンナー)×2』『トバイアス』がいます。
待ち伏せなので事前付与は三度可能とします。集中や前もって庇う行為も可能。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
1個
1個
5個
1個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
7日
7日
参加人数
5/6
5/6
公開日
2021年02月15日
2021年02月15日
†メイン参加者 5人†

●
武器庫へと続く道は人もなく、そして音もない。そんな場所に自由騎士達は隠れていた。彼らが待つのは、数分後に訪れるだろうギャングである、
「ギャングかぁ……。うーん、まあ悪いかどうかで言えば悪い奴なんだよなぁ」
腕を組んで『機盾ジーロン』ナバル・ジーロン(CL3000441)は呻く。騎士と言う仕事上町の警邏も行うことがあり、その時にギャングに接触することもある。特定の人間とつるむ連中だ。
こちらを警戒したり敵視するような目で見るのはまだましな方だ。酒場でつまらない騒ぎを起こしたり、喧嘩したりする者もいる。そんな連中が騎士団レベルの武器を持てば、あまりいいことにならないのは目に見えている。
「争いなんてつまらないんだよなぁ……それが分かってないのか」
「どうでしょうね。人それぞれだと思いますよ」
ナバルの言葉に『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)はそう返した。争いが好きな者もいるし、人を虐げるのが好きな人もいる。善し悪しはともかく価値観は様々だ。だからこそ世間には法と言う『正しさ』の物差しが必要なわけである。
これから戦うギャングと情報提供者であるジャンの事を思い出すマリア。同じギャング組織で、その暴走を止める為に司法取引を持ちかけたジャン。自分が助かりたいというのが一番なのだろうが、大罪を犯す目に仲間を止めたいという意思がるのかもしれない。
「まあ、そこは私が詮議することではありませんね」
「社会はおおむね清らかであってほしいけど、そうもいかないのが現実なのであります」
『鉄腕』フリオ・フルフラット(CL3000454)は言ってうんうんと頷いた。理想論を語れば皆が平和を望んで武器を捨てれば平和な世界は訪れる。だが現実はそこまで甘くはない。様々な理由により、人間は争うことを止められないのだ。
綺麗な所、汚い所、その混合した所。人が好むのは様々だ。ギャングになった経緯や理由も様々だろう。ただ武器を持って暴れるとなれば話は別だ。行き過ぎた悪事を止めて、しっかり罪を償ってもらおう。
「きつーくお灸をすえるであります」
「そうだな。連中に関してはそれでいい」
うむ、と頷く『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。貴族という立場上、無法者を放置することはできない。それは情報提供者であるジャンも同様だ。とはいえテオドールも清濁併せ呑む事の意味も理解してた。
ギャングのリーダーの素姓を頭の中で反芻し、小さくため息をつく。魔女狩り。シャンバラの中でも高い地位を持つ魔法使い。国破れて流れ着いたイ・ラプセルでどのような思いを抱いて生きてきたのか。少なからず興味があった。
「ともあれ、法の裁きが優先だ。武器庫襲撃の罪は軽くはない」
「まあクズだからな。その辺はきっちり理解したうえでの賭けなんだろう」
ギャングたちの行動をそう評する『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。どちらかというと、なじみ深そうな口調である。ツボミ自身もどちらかというとスラム寄りの場所で生活しているため、彼らの心理が理解できた。
困窮に追い詰められたか、別のギャングが力をつけ始めたか。ともあれ今のままではギャング生活が維持できなさそうと思っての大勝負。騎士団に見つかるリスクをできるだけ排除し、どうにかしようと一念発起したのだろう。
「金か女か快楽か。何を天秤に乗っけたかは知らないがな」
その辺りの事情はジャンも話してはくれなかった。聞いたところでどうにかできるものでもない事だし、あまり重要でもない。今大事なことは、ギャングたちを止める事だ。
ほぼ時間通りにギャングたちらしい影が見えてくる。見張りがいない道に警戒することなく、一直線に走ってくる。所定の位置までやってきた瞬間に合図の笛が鳴り、逃げ道を兵士達が塞いでいく。
「なんだと!?」
驚くギャングたちに襲い掛かる自由騎士達。ギャングたちはどうにか持ち直し、応戦する。
法と無法。物捕りの開始だ。
●
「行くでありますよ!」
最初の動いたのはフリオだ。『蒸気式射突鋼刃』を手にギャングの前に躍り出て、相手が立て直すより先に動き始める。音を消す術式で予備動作を隠した先手。相手に何をするのかを悟らせぬうちに一気に攻め立てる。
狙いを定め、蒸気鎧を展開するフリオ。敵の位置を正確に補足し、その距離を元に砲撃計算を行う。打ち出す覚悟。弾道が取る軌跡。相手が避けるだろう動き。それらをすべて考慮し、砲の角度を修正しながら砲撃を開始する。
「徹底的にやるでありますよ! 逃げられるとは思わないでくださいね」
「こっちだこっちだー! お前らが何をしにきたか知っているぞー!」
派手に叫びながらナバルがギャングたちに突撃する。わざわざ目立つように行動するのは、後衛に居る仲間に狙いを定めさせない為。戦い慣れしていないギャングたち軒を引くならこれが一番、とばかりに大仰に動いていく。
手にした盾を振り回し、ギャングたち全員を打ち払うようにナバルは動く。相手の攻撃を受ける為の盾は、それだけ重量も重くなる。その重量が生む風圧と衝撃がギャングたちの出足を止めた。そのまま盾を地面に突き刺し、仲間を守るように立ち尽くす。
「抵抗しないなら痛い目は見ずに済む! 抵抗したらめちゃくちゃ痛いぞ!」
「うむ。きっちり痛い目に合わせろ。でないと反省しないからな」
この手の手合いはそんなもんだ、とばかりにツボミが助言する。自分の形勢が不利になるととたんに下手に出て逃げようとする。反省させるなら痛い目に合わせるのが一番だ。なまじ許すと『謝ればどうにかなる』と心の中で舌を出すようになるだろう。
小さくため息をつきながら、ツボミは魔力を紡ぎ出す。ギャングの『兄貴』であるトバイアス。呪術師であるとバイアスが生み出す呪いの拘束を解くために、マナを練り上げていく。戒めをほどくと同時に傷を癒し、仲間達を助けていく。
「とはいえ、自分よりはるか格上と戦っている時点で恐怖ものだろうがな」
「そうでしょうね。そんな経験もなさそうですし」
マリアはギャングたちの浮足立っている動きを見ながらそんな感想を告げる。狙いも甘く、連携もとれていない。明らかに戦い慣れていないのだが、比較対象が他国の兵士であるので仕方のない話だ。日常的に戦う騎士とチンピラでは、比べるまでもない。
深く深く、強く強く。意識を集中させて魔力を練り上げるマリア。体内で螺旋を描く赤きマナが高温を生み出し、手にした杖を赤く染めていく。マリアが杖を振るうと同時に高温の風が吹き、解き放った炎が風を追うように広がっていく。
「最近フォーマルハウトとか溜めが必要な大技撃ててなくて多少ストレス溜まってたんですよね。派手にやりますよ」
「ギャング相手にはいささか過剰に思えるが……相手は元魔女狩りだ。油断はせずに行こう」
マリアの魔術にそんな言葉を放つテオドールだが、相手の素姓を思い出して気を引き締めた。かつてヨウセイを狩るために結成された魔術師軍団『魔女狩り』。トバイアスもその一員だったことを考えれば、それなりに戦闘経験はあるだろう。
事実、素人集団をまとめ上げてどうにか抵抗で来ているのはトバイアスの指示だ。その動きを封じるために、テオドールは呪術を展開する。白き鎖が地面を走り、ギャングたちを拘束しようと蛇のように絡みつく。
「大人しく縛につくがいい。女神の慈悲は汝らにも与えられるだろう」
「ふん。我が神はミトラース様のみ。アクアディーネの慈悲など要らぬ」
テオドールの降伏勧告にを拒絶するトバイアス。その意向に従い、手下のギャングたちも戦いを続行する。
しかし戦闘力の差は容易には覆らない。ギャングたちの攻撃はナバルが受け止め、そしてツボミが癒す。フリオの砲撃とマリアの火炎とテオドールの呪術がギャングたちに襲い掛かり、一気に彼らを瓦解させていく。
「これでお終いであります!」
フリオが刃を振り上げ、トバイアスに迫る。後衛職でもあるトバイアスにフリオの攻撃を避けるだけの体力も技量もない。なんとか相打ちに使用と呪文を唱えるが、第一音節を告げるより早くフリオの剣は振り下ろされた。
「武器を持つと言う事は、こんな痛みを受ける人を増やすと言う事。それを噛みしめるでありますよ!」
振り下ろされた剣がトバイアスに叩き込まれる。その一撃でギャングたちは全員地に伏した。
●
倒れ伏したギャングは水の女神の権能で皆生存していた。そのまま捕縛され、刑罰を受ける事となる。
「お前らさぁ。武器を持つってことの意味、わかってるか?」
ナバルは連行されるギャングたちを前にそう言い放つ。武器を持つ意味。戦争を経験したナバルだからこそわかる武器を持つ意味。効率よく人を傷つける道具。それを持つという意味。自らを戒める意味も含めて、それを伝えようとする。
(誰かを守るために武器を持つ人も、人を傷つけることに酔う奴もいたな……。武器がそうさせるのか、戦争がそうさせるのか……)
様々な人間と戦い、様々な傷を受けた。国を護るために身を盾にする騎士もいた。子供を甚振ることに快感を覚える騎士もいた。武器に善悪はない。だからこそ、武器を持つ意味はしっかり理解しないといけない。人を傷つけてまで、成し遂げたい事とは何か?
「これに懲りたら、もう二度とすんなよ!」
「そうでありますね。しっかり反省して更生するでありますよ」
うんうんと頷くフリオ。ギャングたちが武器庫を襲った理由を聞いたところ、帰ってきた答えは『自衛のため』だったという。対立するギャング組織から仲間を守る為だったとか。思ったよりはマシな理由だが、それでも罪は罪だ。
抗争の火力をあげれば、相手も火力が高くなる。今は殴り合いで済んだ事例が、銃弾に変わるのならもうそれは戦争と同義だ。そうなる前に止めることが出来たのは、幸運だったと言えよう。フリオは安堵しながらギャングたちを見送った。
「大人しく更生してくれればいいのでありますが」
「その辺りは法の裁きと刑務所の仕事だろう。さて……」
自由騎士の仕事は賊を捕らえるまでだ、と告げるテオドール。ギャングの頭であるトバイアスに目を向けるテオドール。元シャンバラの魔女狩りの前に立ち、口を開く。
「マキーヴニー卿か。シャンバラの魔女狩りであれば希望すれば相応の待遇を受けれたはずだが」
「卿を付けられる身分でもない。ミトラース様の消滅と共に、魔女狩りの地位と家名は捨てた。ここに居るのは生きる目的を亡くした無法者だ」
「生きる目的か。それは神への信仰か、それともシャンバラと言う国への忠義か?」
トバイアスの気持ちは幾分か理解できる。テオドールとて、イ・ラプセルが消えてなくなれば生きる目的を見失うだろう。愛する家族が亡くなれば、足を止めるだろう。それがどの程度の期間になるか、立ち直れるのか否か。それは解らない。
どの道、詮無きことだ。イ・ラプセルはシャンバラを滅ぼした。ミトラースを消滅させたのだから。
「ギャングもそれぞれですね」
テオドールとトバイアスのやり取りを見ていたマリアがそう呟いた。人間が悪事に走る理由は様々だ。欲望だったり、生まれだったり、人生の結果だったり。法を犯すのが犯罪で、騎士である以上は無法を放置はできない。それは確かだ。
「ただまあ、それを踏まえたうえで憎めない人と言うのはいますよね」
悪人を倒すことに躊躇しない事と、悪人に悪くない感情を持つことは違う。イ・ラプセルの人間だけではない。他国の人間でも同じことだ。善人であれ悪人であれ、好き嫌いは存在する。苦手な善人もいれば、好感が持てる悪人もいるのだ。
「ジャンさんなんかがいい例ですけど。あの人はツボミさんに任せましょう」
「貴様うちの診療所で働け。通いでな」
留置所で拘束されていたジャンは、ツボミの一言に呆然とした。え? 何言ってるのこの人。
「足を洗えば前科が、裏に戻れば内通実績が重しになる。だが番外地は元よりそう言うはみ出し者の掃溜めだ。誰も気にせんぞ。
ほとぼり醒める迄居るにゃちょーど良かろー」
「いやあのもしもし? 騎士としてそれはいいんですかい?」
ジャンは司法取引こそ持ち掛けたものの受け入れられるとは思っておらず、精々が刑務所内で配慮されるぐらいだと見ていた。その伝手を利用して刑務所内で新たな『商売』を……などと考えてはいたが。
「安心しろ、上も了承済みだ。プリズンギャングぽいものを作られるのも厄介だし、という理由もある」
あ、しっかりバレてるのね。ジャンは降参の意を含めて両手をあげた。
「ぶっちゃけ、戦争で手一杯なんで診療所が碌に開けられん状態なのだ。かといって代行の医者はこんな場所には来てくれん。
その点、貴様の様なクズなら適任。渡りに船。破れ鍋に閉じ鍋。実にグッド!」
「遠回しに自分も同じだって言ってるんですけどね、それは」
精一杯の皮肉を受けたツボミは、むしろ清々しいほどの笑みを浮かべて言葉を返した。
「その機転と口の悪さも気に入った。小遣い稼ぎ程度なら見逃してやる。貴様の経緯を考慮するに、自由騎士を敵に回す程の悪事が出来るとは思えんしな!」
笑うツボミに、ため息をつくジャン。
――こうして、番外地の診療所に軍医崩れのチンピラが就くことになった。
●
こうしてこの騒動は幕を引くこととなる。
ギャングたちは刑務所で罪を償うために労働に服し、ジャンはツボミの診療所で働くこととなる。ジャンは相も変わらず診療所の薬品を横流しして懐を温めているが、結果としてスラムなどの病死率低下に貢献することとなる。
法と無法。法を守る者は民を守るために奮闘し、無法者は法に逆らうように知恵を絞る。相反する思想を持つ者達だ。
だが、どちらも同じヒトなのだ。
相反する思想を持ちながら、共にイ・ラプセルで生きていく――
武器庫へと続く道は人もなく、そして音もない。そんな場所に自由騎士達は隠れていた。彼らが待つのは、数分後に訪れるだろうギャングである、
「ギャングかぁ……。うーん、まあ悪いかどうかで言えば悪い奴なんだよなぁ」
腕を組んで『機盾ジーロン』ナバル・ジーロン(CL3000441)は呻く。騎士と言う仕事上町の警邏も行うことがあり、その時にギャングに接触することもある。特定の人間とつるむ連中だ。
こちらを警戒したり敵視するような目で見るのはまだましな方だ。酒場でつまらない騒ぎを起こしたり、喧嘩したりする者もいる。そんな連中が騎士団レベルの武器を持てば、あまりいいことにならないのは目に見えている。
「争いなんてつまらないんだよなぁ……それが分かってないのか」
「どうでしょうね。人それぞれだと思いますよ」
ナバルの言葉に『みつまめの愛想ない方』マリア・カゲ山(CL3000337)はそう返した。争いが好きな者もいるし、人を虐げるのが好きな人もいる。善し悪しはともかく価値観は様々だ。だからこそ世間には法と言う『正しさ』の物差しが必要なわけである。
これから戦うギャングと情報提供者であるジャンの事を思い出すマリア。同じギャング組織で、その暴走を止める為に司法取引を持ちかけたジャン。自分が助かりたいというのが一番なのだろうが、大罪を犯す目に仲間を止めたいという意思がるのかもしれない。
「まあ、そこは私が詮議することではありませんね」
「社会はおおむね清らかであってほしいけど、そうもいかないのが現実なのであります」
『鉄腕』フリオ・フルフラット(CL3000454)は言ってうんうんと頷いた。理想論を語れば皆が平和を望んで武器を捨てれば平和な世界は訪れる。だが現実はそこまで甘くはない。様々な理由により、人間は争うことを止められないのだ。
綺麗な所、汚い所、その混合した所。人が好むのは様々だ。ギャングになった経緯や理由も様々だろう。ただ武器を持って暴れるとなれば話は別だ。行き過ぎた悪事を止めて、しっかり罪を償ってもらおう。
「きつーくお灸をすえるであります」
「そうだな。連中に関してはそれでいい」
うむ、と頷く『智の実践者』テオドール・ベルヴァルド(CL3000375)。貴族という立場上、無法者を放置することはできない。それは情報提供者であるジャンも同様だ。とはいえテオドールも清濁併せ呑む事の意味も理解してた。
ギャングのリーダーの素姓を頭の中で反芻し、小さくため息をつく。魔女狩り。シャンバラの中でも高い地位を持つ魔法使い。国破れて流れ着いたイ・ラプセルでどのような思いを抱いて生きてきたのか。少なからず興味があった。
「ともあれ、法の裁きが優先だ。武器庫襲撃の罪は軽くはない」
「まあクズだからな。その辺はきっちり理解したうえでの賭けなんだろう」
ギャングたちの行動をそう評する『咲かぬ橘』非時香・ツボミ(CL3000086)。どちらかというと、なじみ深そうな口調である。ツボミ自身もどちらかというとスラム寄りの場所で生活しているため、彼らの心理が理解できた。
困窮に追い詰められたか、別のギャングが力をつけ始めたか。ともあれ今のままではギャング生活が維持できなさそうと思っての大勝負。騎士団に見つかるリスクをできるだけ排除し、どうにかしようと一念発起したのだろう。
「金か女か快楽か。何を天秤に乗っけたかは知らないがな」
その辺りの事情はジャンも話してはくれなかった。聞いたところでどうにかできるものでもない事だし、あまり重要でもない。今大事なことは、ギャングたちを止める事だ。
ほぼ時間通りにギャングたちらしい影が見えてくる。見張りがいない道に警戒することなく、一直線に走ってくる。所定の位置までやってきた瞬間に合図の笛が鳴り、逃げ道を兵士達が塞いでいく。
「なんだと!?」
驚くギャングたちに襲い掛かる自由騎士達。ギャングたちはどうにか持ち直し、応戦する。
法と無法。物捕りの開始だ。
●
「行くでありますよ!」
最初の動いたのはフリオだ。『蒸気式射突鋼刃』を手にギャングの前に躍り出て、相手が立て直すより先に動き始める。音を消す術式で予備動作を隠した先手。相手に何をするのかを悟らせぬうちに一気に攻め立てる。
狙いを定め、蒸気鎧を展開するフリオ。敵の位置を正確に補足し、その距離を元に砲撃計算を行う。打ち出す覚悟。弾道が取る軌跡。相手が避けるだろう動き。それらをすべて考慮し、砲の角度を修正しながら砲撃を開始する。
「徹底的にやるでありますよ! 逃げられるとは思わないでくださいね」
「こっちだこっちだー! お前らが何をしにきたか知っているぞー!」
派手に叫びながらナバルがギャングたちに突撃する。わざわざ目立つように行動するのは、後衛に居る仲間に狙いを定めさせない為。戦い慣れしていないギャングたち軒を引くならこれが一番、とばかりに大仰に動いていく。
手にした盾を振り回し、ギャングたち全員を打ち払うようにナバルは動く。相手の攻撃を受ける為の盾は、それだけ重量も重くなる。その重量が生む風圧と衝撃がギャングたちの出足を止めた。そのまま盾を地面に突き刺し、仲間を守るように立ち尽くす。
「抵抗しないなら痛い目は見ずに済む! 抵抗したらめちゃくちゃ痛いぞ!」
「うむ。きっちり痛い目に合わせろ。でないと反省しないからな」
この手の手合いはそんなもんだ、とばかりにツボミが助言する。自分の形勢が不利になるととたんに下手に出て逃げようとする。反省させるなら痛い目に合わせるのが一番だ。なまじ許すと『謝ればどうにかなる』と心の中で舌を出すようになるだろう。
小さくため息をつきながら、ツボミは魔力を紡ぎ出す。ギャングの『兄貴』であるトバイアス。呪術師であるとバイアスが生み出す呪いの拘束を解くために、マナを練り上げていく。戒めをほどくと同時に傷を癒し、仲間達を助けていく。
「とはいえ、自分よりはるか格上と戦っている時点で恐怖ものだろうがな」
「そうでしょうね。そんな経験もなさそうですし」
マリアはギャングたちの浮足立っている動きを見ながらそんな感想を告げる。狙いも甘く、連携もとれていない。明らかに戦い慣れていないのだが、比較対象が他国の兵士であるので仕方のない話だ。日常的に戦う騎士とチンピラでは、比べるまでもない。
深く深く、強く強く。意識を集中させて魔力を練り上げるマリア。体内で螺旋を描く赤きマナが高温を生み出し、手にした杖を赤く染めていく。マリアが杖を振るうと同時に高温の風が吹き、解き放った炎が風を追うように広がっていく。
「最近フォーマルハウトとか溜めが必要な大技撃ててなくて多少ストレス溜まってたんですよね。派手にやりますよ」
「ギャング相手にはいささか過剰に思えるが……相手は元魔女狩りだ。油断はせずに行こう」
マリアの魔術にそんな言葉を放つテオドールだが、相手の素姓を思い出して気を引き締めた。かつてヨウセイを狩るために結成された魔術師軍団『魔女狩り』。トバイアスもその一員だったことを考えれば、それなりに戦闘経験はあるだろう。
事実、素人集団をまとめ上げてどうにか抵抗で来ているのはトバイアスの指示だ。その動きを封じるために、テオドールは呪術を展開する。白き鎖が地面を走り、ギャングたちを拘束しようと蛇のように絡みつく。
「大人しく縛につくがいい。女神の慈悲は汝らにも与えられるだろう」
「ふん。我が神はミトラース様のみ。アクアディーネの慈悲など要らぬ」
テオドールの降伏勧告にを拒絶するトバイアス。その意向に従い、手下のギャングたちも戦いを続行する。
しかし戦闘力の差は容易には覆らない。ギャングたちの攻撃はナバルが受け止め、そしてツボミが癒す。フリオの砲撃とマリアの火炎とテオドールの呪術がギャングたちに襲い掛かり、一気に彼らを瓦解させていく。
「これでお終いであります!」
フリオが刃を振り上げ、トバイアスに迫る。後衛職でもあるトバイアスにフリオの攻撃を避けるだけの体力も技量もない。なんとか相打ちに使用と呪文を唱えるが、第一音節を告げるより早くフリオの剣は振り下ろされた。
「武器を持つと言う事は、こんな痛みを受ける人を増やすと言う事。それを噛みしめるでありますよ!」
振り下ろされた剣がトバイアスに叩き込まれる。その一撃でギャングたちは全員地に伏した。
●
倒れ伏したギャングは水の女神の権能で皆生存していた。そのまま捕縛され、刑罰を受ける事となる。
「お前らさぁ。武器を持つってことの意味、わかってるか?」
ナバルは連行されるギャングたちを前にそう言い放つ。武器を持つ意味。戦争を経験したナバルだからこそわかる武器を持つ意味。効率よく人を傷つける道具。それを持つという意味。自らを戒める意味も含めて、それを伝えようとする。
(誰かを守るために武器を持つ人も、人を傷つけることに酔う奴もいたな……。武器がそうさせるのか、戦争がそうさせるのか……)
様々な人間と戦い、様々な傷を受けた。国を護るために身を盾にする騎士もいた。子供を甚振ることに快感を覚える騎士もいた。武器に善悪はない。だからこそ、武器を持つ意味はしっかり理解しないといけない。人を傷つけてまで、成し遂げたい事とは何か?
「これに懲りたら、もう二度とすんなよ!」
「そうでありますね。しっかり反省して更生するでありますよ」
うんうんと頷くフリオ。ギャングたちが武器庫を襲った理由を聞いたところ、帰ってきた答えは『自衛のため』だったという。対立するギャング組織から仲間を守る為だったとか。思ったよりはマシな理由だが、それでも罪は罪だ。
抗争の火力をあげれば、相手も火力が高くなる。今は殴り合いで済んだ事例が、銃弾に変わるのならもうそれは戦争と同義だ。そうなる前に止めることが出来たのは、幸運だったと言えよう。フリオは安堵しながらギャングたちを見送った。
「大人しく更生してくれればいいのでありますが」
「その辺りは法の裁きと刑務所の仕事だろう。さて……」
自由騎士の仕事は賊を捕らえるまでだ、と告げるテオドール。ギャングの頭であるトバイアスに目を向けるテオドール。元シャンバラの魔女狩りの前に立ち、口を開く。
「マキーヴニー卿か。シャンバラの魔女狩りであれば希望すれば相応の待遇を受けれたはずだが」
「卿を付けられる身分でもない。ミトラース様の消滅と共に、魔女狩りの地位と家名は捨てた。ここに居るのは生きる目的を亡くした無法者だ」
「生きる目的か。それは神への信仰か、それともシャンバラと言う国への忠義か?」
トバイアスの気持ちは幾分か理解できる。テオドールとて、イ・ラプセルが消えてなくなれば生きる目的を見失うだろう。愛する家族が亡くなれば、足を止めるだろう。それがどの程度の期間になるか、立ち直れるのか否か。それは解らない。
どの道、詮無きことだ。イ・ラプセルはシャンバラを滅ぼした。ミトラースを消滅させたのだから。
「ギャングもそれぞれですね」
テオドールとトバイアスのやり取りを見ていたマリアがそう呟いた。人間が悪事に走る理由は様々だ。欲望だったり、生まれだったり、人生の結果だったり。法を犯すのが犯罪で、騎士である以上は無法を放置はできない。それは確かだ。
「ただまあ、それを踏まえたうえで憎めない人と言うのはいますよね」
悪人を倒すことに躊躇しない事と、悪人に悪くない感情を持つことは違う。イ・ラプセルの人間だけではない。他国の人間でも同じことだ。善人であれ悪人であれ、好き嫌いは存在する。苦手な善人もいれば、好感が持てる悪人もいるのだ。
「ジャンさんなんかがいい例ですけど。あの人はツボミさんに任せましょう」
「貴様うちの診療所で働け。通いでな」
留置所で拘束されていたジャンは、ツボミの一言に呆然とした。え? 何言ってるのこの人。
「足を洗えば前科が、裏に戻れば内通実績が重しになる。だが番外地は元よりそう言うはみ出し者の掃溜めだ。誰も気にせんぞ。
ほとぼり醒める迄居るにゃちょーど良かろー」
「いやあのもしもし? 騎士としてそれはいいんですかい?」
ジャンは司法取引こそ持ち掛けたものの受け入れられるとは思っておらず、精々が刑務所内で配慮されるぐらいだと見ていた。その伝手を利用して刑務所内で新たな『商売』を……などと考えてはいたが。
「安心しろ、上も了承済みだ。プリズンギャングぽいものを作られるのも厄介だし、という理由もある」
あ、しっかりバレてるのね。ジャンは降参の意を含めて両手をあげた。
「ぶっちゃけ、戦争で手一杯なんで診療所が碌に開けられん状態なのだ。かといって代行の医者はこんな場所には来てくれん。
その点、貴様の様なクズなら適任。渡りに船。破れ鍋に閉じ鍋。実にグッド!」
「遠回しに自分も同じだって言ってるんですけどね、それは」
精一杯の皮肉を受けたツボミは、むしろ清々しいほどの笑みを浮かべて言葉を返した。
「その機転と口の悪さも気に入った。小遣い稼ぎ程度なら見逃してやる。貴様の経緯を考慮するに、自由騎士を敵に回す程の悪事が出来るとは思えんしな!」
笑うツボミに、ため息をつくジャン。
――こうして、番外地の診療所に軍医崩れのチンピラが就くことになった。
●
こうしてこの騒動は幕を引くこととなる。
ギャングたちは刑務所で罪を償うために労働に服し、ジャンはツボミの診療所で働くこととなる。ジャンは相も変わらず診療所の薬品を横流しして懐を温めているが、結果としてスラムなどの病死率低下に貢献することとなる。
法と無法。法を守る者は民を守るために奮闘し、無法者は法に逆らうように知恵を絞る。相反する思想を持つ者達だ。
だが、どちらも同じヒトなのだ。
相反する思想を持ちながら、共にイ・ラプセルで生きていく――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
もう少しクズ度を上げても受け入れられる……かな?(意味不明なチキンレース
以上のような結果になりました。
戦闘? ええ、一瞬でした。イージーでこのメンバーでこの戦術されて、どうしろと!?
MVPは非時香様に。ジャンの扱いがあまりにもお見事でしたので。
それではまた、イ・ラプセルで。
もう少しクズ度を上げても受け入れられる……かな?(意味不明なチキンレース
以上のような結果になりました。
戦闘? ええ、一瞬でした。イージーでこのメンバーでこの戦術されて、どうしろと!?
MVPは非時香様に。ジャンの扱いがあまりにもお見事でしたので。
それではまた、イ・ラプセルで。
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