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Grief! とある父子の悲嘆!

●ニール村――かつてヴィスマルクに焼かれた村
かつて、その村には人の営みがあった。
今はいない。先のヴィスマルクとイ・ラプセルとの戦いの際、ヴィスマルク側の特殊部隊により火を焼かれたからだ。そこに住んでいた村人は死に絶え、遺体は火に焼かれる。畑には塩が巻かれ、向こう数年は作物が生えないだろう。
だが、何とか難を逃れた者がいた。襲撃時、床下の倉庫に押し込まれていた子供がいたのだ。
「お前はここに隠れてるんだ!」
「やだよ! お父さん! お父さんも一緒に隠れよう!」
「駄目だミゲル。お父さんの体は大きいから、バレちゃうんだ。それに――村を襲う奴らを許しちゃおけない。
こう見えてもお父さんは、昔兵士だったんだ。あんな奴ら、すぐに片づけてやるさ」
それが父の強がりだという事は、子供にもわかる。
殺戮が終わり戦争が終わる。その後でミゲルは家から顔を出した。焼け落ちた村。何もかも破壊された日常。それでも、生きている。
それは良かったことなのだろうか? 家族を失い、住む場所を失い、生きる理由さえ見つけられない子供。ただ生きているという事は、決して幸運ではない。
「やだよ……僕のお父さんを返してよ!」
神はいる。だけど慈悲はない。それがこの世界の法則。祈りは届かず、慟哭は空しく。
ただ、その願いを聞き入れたわけではないのだが。
幽霊列車の汽笛が響いた――
●自由騎士
イ・ラプセル領レガート砦。先の戦いで占拠した砦だが、、撤退時の破壊行為や周辺の村などの修復で手いっぱいだった。
村の調査に向かった自由騎士達は、還リビトの姿を見る。服装と傷痕から察するに、この地で息絶えた村人だろう。どこかに向かうことなく、村の中をうろついている。生前の習性に従っているとすれば、空しくはあるが戦術的には楽である。村の外から攻撃し、そのまま攻めれば楽に勝てるだろう。
自由騎士達は戦闘準備を整えようとした時、村の中から声を聴いた。
「お父さん! 僕だよ! リゲルだよ!」
還リビトに向かって走り出す少年。武器もなく、一心不乱に還リビトの一体に向かって走っていく。そしてその還リビトは、血まみれの斧を走ってくる子供に振り下ろそうとしていた。
そちらに全力で移動すれば、その一撃は防げるだろう。ただしその一撃はまともに受けることとなる。防御の構えを取る余裕はないだろう。文字通り、身をもって防ぐしかない。
子供を見捨てて戦うこともできる。子供に標準が向いている以上、こちらへの警戒は甘い。故に有利に戦いを進めることが出来るだろう。あの還リビトはおそらく重戦士。遠距離攻撃はもっていないだろうから。
時間はない。貴方はこの状況で――
かつて、その村には人の営みがあった。
今はいない。先のヴィスマルクとイ・ラプセルとの戦いの際、ヴィスマルク側の特殊部隊により火を焼かれたからだ。そこに住んでいた村人は死に絶え、遺体は火に焼かれる。畑には塩が巻かれ、向こう数年は作物が生えないだろう。
だが、何とか難を逃れた者がいた。襲撃時、床下の倉庫に押し込まれていた子供がいたのだ。
「お前はここに隠れてるんだ!」
「やだよ! お父さん! お父さんも一緒に隠れよう!」
「駄目だミゲル。お父さんの体は大きいから、バレちゃうんだ。それに――村を襲う奴らを許しちゃおけない。
こう見えてもお父さんは、昔兵士だったんだ。あんな奴ら、すぐに片づけてやるさ」
それが父の強がりだという事は、子供にもわかる。
殺戮が終わり戦争が終わる。その後でミゲルは家から顔を出した。焼け落ちた村。何もかも破壊された日常。それでも、生きている。
それは良かったことなのだろうか? 家族を失い、住む場所を失い、生きる理由さえ見つけられない子供。ただ生きているという事は、決して幸運ではない。
「やだよ……僕のお父さんを返してよ!」
神はいる。だけど慈悲はない。それがこの世界の法則。祈りは届かず、慟哭は空しく。
ただ、その願いを聞き入れたわけではないのだが。
幽霊列車の汽笛が響いた――
●自由騎士
イ・ラプセル領レガート砦。先の戦いで占拠した砦だが、、撤退時の破壊行為や周辺の村などの修復で手いっぱいだった。
村の調査に向かった自由騎士達は、還リビトの姿を見る。服装と傷痕から察するに、この地で息絶えた村人だろう。どこかに向かうことなく、村の中をうろついている。生前の習性に従っているとすれば、空しくはあるが戦術的には楽である。村の外から攻撃し、そのまま攻めれば楽に勝てるだろう。
自由騎士達は戦闘準備を整えようとした時、村の中から声を聴いた。
「お父さん! 僕だよ! リゲルだよ!」
還リビトに向かって走り出す少年。武器もなく、一心不乱に還リビトの一体に向かって走っていく。そしてその還リビトは、血まみれの斧を走ってくる子供に振り下ろそうとしていた。
そちらに全力で移動すれば、その一撃は防げるだろう。ただしその一撃はまともに受けることとなる。防御の構えを取る余裕はないだろう。文字通り、身をもって防ぐしかない。
子供を見捨てて戦うこともできる。子供に標準が向いている以上、こちらへの警戒は甘い。故に有利に戦いを進めることが出来るだろう。あの還リビトはおそらく重戦士。遠距離攻撃はもっていないだろうから。
時間はない。貴方はこの状況で――
†シナリオ詳細†
■成功条件
1.還リビトの全滅
どくどくです。
元村人の還リビトなんか、今の自由騎士なら余裕ですよね。ええ。
●敵情報
・還リビト(×16)
先の戦争で焼かれた村の村人達が還リビトとなりました。それぞれが村を襲う兵士に対抗しようと農具や武器を持っています。強くはありませんが、数が厄介です。後、焼かれたことから炎に対する耐性を持っています。
最初は自由騎士達に気付いていません。余計なこと(例えば、子供を殺そうとする還リビトに干渉したり)をしなければ、不意打ちは可能です。
攻撃方法
武器で殴る 攻近単 持っているモノで殴ってきます。
炎を吐く 魔遠単 体内に残る高温の息を吐き出します。【バーン1】
焼かれた体 P 炎に焼かれ、もう燃える箇所はありません。【火耐】
・ウェルター
OPに出てきた『お父さん』です。還リビト。手に斧を持ち、古ぼけた鎧を着ています。
還リビトの集団から少し離れた場所に向かって歩いており、こちらに走ってくる子供を攻撃しようとします。何もしなければ、子供を攻撃してその後で還リビトに合流します。
最初のターンの行動で誰かが子供との間に割って入れば、子供は助かります。ただし、割って入ったキャラは回避失敗防御値0の状態でダメージ算出します。スキルを使って値を増しても、最終的に0になります。当然、そのターンの行動は『割って入る』ことで終わりです。
攻撃方法
『バッシュ Lv3』『オーバーロード Lv3』『焼かれた体 P 【火耐】』
・リヒト
OPで出てきた少年です。10歳男性。ウェルターを見て駆け寄ろうとしています。
精神的に錯乱しているのか、他にすがるものがないのか。ウェルターを還リビトだと言っても聞いてくれません。子供の力で懸命に自由騎士を押しのけて父に近づこうとします。
ダメージを喰らえば死亡します(非殺権能で死なない様にKOすることは可能です)。
彼の生死は、成功条件には含まれません。
●場所情報
元イ・ラプセル領ニース村跡地。
便宜上、戦場を【還リビト】と【ウェルター】の二つに分けます。両戦場の距離は20mほど。魔法の援護も遠距離射撃も届きます。移動は1ターンかかるものとします。
最初のターンで【ウェルター】側に向かって子供を庇う場合、庇う以外の行動は(スキルを使っても)できませんのでご了承ください。
【還リヒト】側は戦闘開始時、敵前衛に『還リビト(×10)』が、敵後衛に『還リビト(×6)』がいます。
【ウェルター】側は戦闘開始時、敵前衛に『ウェルター(×1)」が、味方前衛に『リヒト』がいます。
急いでいるため、事前付与は不可とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
元村人の還リビトなんか、今の自由騎士なら余裕ですよね。ええ。
●敵情報
・還リビト(×16)
先の戦争で焼かれた村の村人達が還リビトとなりました。それぞれが村を襲う兵士に対抗しようと農具や武器を持っています。強くはありませんが、数が厄介です。後、焼かれたことから炎に対する耐性を持っています。
最初は自由騎士達に気付いていません。余計なこと(例えば、子供を殺そうとする還リビトに干渉したり)をしなければ、不意打ちは可能です。
攻撃方法
武器で殴る 攻近単 持っているモノで殴ってきます。
炎を吐く 魔遠単 体内に残る高温の息を吐き出します。【バーン1】
焼かれた体 P 炎に焼かれ、もう燃える箇所はありません。【火耐】
・ウェルター
OPに出てきた『お父さん』です。還リビト。手に斧を持ち、古ぼけた鎧を着ています。
還リビトの集団から少し離れた場所に向かって歩いており、こちらに走ってくる子供を攻撃しようとします。何もしなければ、子供を攻撃してその後で還リビトに合流します。
最初のターンの行動で誰かが子供との間に割って入れば、子供は助かります。ただし、割って入ったキャラは回避失敗防御値0の状態でダメージ算出します。スキルを使って値を増しても、最終的に0になります。当然、そのターンの行動は『割って入る』ことで終わりです。
攻撃方法
『バッシュ Lv3』『オーバーロード Lv3』『焼かれた体 P 【火耐】』
・リヒト
OPで出てきた少年です。10歳男性。ウェルターを見て駆け寄ろうとしています。
精神的に錯乱しているのか、他にすがるものがないのか。ウェルターを還リビトだと言っても聞いてくれません。子供の力で懸命に自由騎士を押しのけて父に近づこうとします。
ダメージを喰らえば死亡します(非殺権能で死なない様にKOすることは可能です)。
彼の生死は、成功条件には含まれません。
●場所情報
元イ・ラプセル領ニース村跡地。
便宜上、戦場を【還リビト】と【ウェルター】の二つに分けます。両戦場の距離は20mほど。魔法の援護も遠距離射撃も届きます。移動は1ターンかかるものとします。
最初のターンで【ウェルター】側に向かって子供を庇う場合、庇う以外の行動は(スキルを使っても)できませんのでご了承ください。
【還リヒト】側は戦闘開始時、敵前衛に『還リビト(×10)』が、敵後衛に『還リビト(×6)』がいます。
【ウェルター】側は戦闘開始時、敵前衛に『ウェルター(×1)」が、味方前衛に『リヒト』がいます。
急いでいるため、事前付与は不可とします。
皆様のプレイングをお待ちしています。
状態
完了
完了
報酬マテリア
6個
2個
2個
2個




参加費
100LP [予約時+50LP]
100LP [予約時+50LP]
相談日数
6日
6日
参加人数
6/8
6/8
公開日
2020年09月06日
2020年09月06日
†メイン参加者 6人†
●
「あーあーあー。ま、還リビトがいても仕方ないが……っ」
苦虫を嚙み潰したような表情をする『罰はその命を以って』ニコラス・モラル(CL3000453)。惨劇が起きた村。その事実だけでも痛々しいというのに、殺された者達が脅威となって蘇る。そしてそこには、まだ生きている子供がいたのだ。子を持つ父として思う所はある。
「あの子供……マズいわね!」
言って駆けだす『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。戦争で親を失った子供。その境遇と自分を重ねてしまう。還リビトになったとはいえ、親に殺されてしまうという惨劇を止める為に、強く拳を握りしめる。
(生きる事は残酷なことかもしれないけど――!)
同じく状況を確認して走り出すフリオ・フルフラット(CL3000454)。父親を失い、おそらく家族や友人全てを失い。そんな状況で生きていくことはけして楽なことではないだろう。それでも、生きているのだ。その事に、何かの意味があると信じている。
「そっちは任せたぜ」
子供の方に向かう仲間を確認し、『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は武器を構える。子供に関して思う所はあるが、仲間の実力を信じている。ならばこちらはこちらの仕事をするまでだ。
「すぐに戻る」
ウェルスにそう言い放って、『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は走り出す。この惨劇を行った部隊の名前を知っている。その部隊の指揮官を知っている。ヘルメットで隠されたアデルの表情は見えない。ただ、武器を持つ手に力が強くこもっていた。
「空を駆けるゲシュペンスト……か」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は還リビト……というよりはイブリースの原因である幽霊列車に関して思いを馳せていた。何に反応して現れ、何を目的としているのか。そもそも生物なのか否か。分からない事は多い。
「父さん!」
走る少年。その瞳には父の姿しか見えていない。村を襲った惨劇という衝撃。その衝撃から逃れるように頼れる大人にすがろうとする。それは子供として当然の心理。父の惨状には気付かない。……気付きたくない。気付いてしまえば、心が壊れてしまうから。
還リビトは無慈悲に斧を振り上げ――
「……大丈夫か」
その一撃は、子供を庇ったアデルに振り下ろされた。防御する余裕もなく、アデルの身体に痛みが走る。悲鳴を精神力で押さえ込んで、優しく声を出した。
「え? 誰……?」
突然の乱入に戸惑うリヒト。他の自由騎士達もそれぞれの配置につき、還リビトもその動きに気付いて殺意を向ける。
滅んだ村。そこで死んだ者達を前に、自由騎士達は武器を構える。
●
「貴方達の相手は私よ!」
村人の還リビトに迫り、エルシーは声を張り喘げ叫ぶ。還リビトに意思はない。ただ生きている者に襲い掛かるだけのイブリース。故に声をかける意味はない。だけど、エルシーは彼らをただのイブリースだと思いたくない。
「皆、還リビトを押さえていて!」
エルシーは飲み仲間の親衛隊に声をかけ、還リビトに迫る。性格に難がある者もいるが、戦闘となれば背中を任せられる者達だ。彼らに背中を預け、エルシーは還リビトに拳を向ける。力任せに振るわれる腕を潜り抜け、真っ直ぐに拳を叩き込んだ。
「数は多いけど、統率は取れていないわ。落ち着いて戦えば勝てる!」
「厄介なのは数だな。逆に言えばそれ以外はどうにかなる」
状況を冷静に分析するウェルス。何名かの自由騎士は子供を救うためにこの場を離れ、十を超える還リビトを相手するには数が足りない。だが、足りないからと言って負けるつもりはない。厄介だが、手も足も出ないわけではない。
「苦しい戦いだが、これぐらいは何度も潜り抜けてきたぜ」
幾多の戦乱を潜り抜けてきた自由騎士。ウェスルもまた、その一人だ。その経験が冷静さを保ち、体を動かしていく。改造銃を慣れた動作で作動させ、狙いを定めて引き金を引く。装填された『専用特殊弾アルカス』が還リビト達を穿っていく。
「足止めしながら数を減らしていくぜ」
「そうだね……。今はそれが最善だ」
『SHAMROCK』を手にしてマグノリアが頷く。戦術上の最適解は、子供を見捨てて不意打ちをする事だ。だが自由騎士はそれを選ばなかった。その事を責めるつもりは毛頭ない。そうすると決まれば、その方針に則した最適解を選ぶのみだ。
「傷を癒しながら、合流を待とう……」
魔力を展開し、戦況を見るマグノリア。手数が足りないのなら、敵の力を弱めればいい。『劣化』の概念を展開し、還リビト達に付与していく。元となった村人の身体能力がそれほど強くない事もあり、こちらが受ける傷はかなり抑えられた。
「大丈夫。アデル達ならあの子を守り切れる」
言ってマグノリアは子供の方を見る。
「やれやれ無事か。とはいえ、ここからが問題なんだけどな」
子供を庇ったアデルを見ながらニコラスは安堵のため息をつく。アデルのかなりのダメージを負ったが、致命的というほどでもない。命があるなら、巻き返しは可能だ。肉体的にも、精神的にもだ。
(子供を守ったつもりが傷つけてしまう、か。ヤレヤレだね)
未だ病床に伏している娘のことを思いながら、ニコラスはそんなことを思う。思う所はそれなりにあるが、今は戦闘に集中する。崩れそうになるアデルに癒しの術を解き放ち、術の効き具合を確認した。
「やるだけやったが、無茶するなよ」
「安心しろ。俺は追い込まれてからが本番だ」
和らいだ痛みを確認し、アデルは言葉を放つ。腕の中には小さな命。その鼓動が途切れていない事を再確認し、その首筋に打撃を加える。機を失ったことを確認し、アデルは子供を抱えたまま立ち上がり、安全な場所に走っていく。
「侵火槍兵団第100歩兵大隊、フォートシャフトの置き土産、か……」
忌々し気に言い放つアデル。イブリース化は偶然だが、第100歩兵大隊が暗躍しなければ今回の事件は起きなかった。それを思えば憎しみの感情も生まれるものだ。大隊の指揮官への感情を燃やしながら、アデルは体を動かした。
「これがフォートシャフトの強さと言うのなら、俺は――」
「あの子の元へは向かわせないであります!」
子供を狙う還リビトを足止めするフリオ。還リビトの跋扈を許すつもりはなく、親が子供を殺すなどと言う事を認めるつもりはない。それを止める力があるのなら、それを行使することに迷いはなかった。それが困難な道だとしても。
「私は、そうした献身によって生かされたのですから」
1818年のヴィスマルク空襲時、フリオは四肢を失った。その際、人の助けにより生還したのだ。あの日助けられた命に意味があるのなら、これから助ける命にもきっと意味がある。鉄の腕で還リビトの斧を受け止めながら、心はただ哀しみを帯びていた。
「……せめて、安らかに眠ってほしいであります」
死は覆らない。ならばせめて眠りは静謐に。アクアディーネの浄化の権能は、その為に在るのだ。破壊ではなく、安らぎをもって虚無の海へと返すために。
ニール村の戦い。生きている者と死んでいる者の戦いは、加速していく。
●
戦いにおいて、数は暴力だ。
弱体化されているとはいえ、五倍近くの手勢を相手するのは楽ではない。此処の実力は自由騎士一人一人に劣っているとはいえ、暴力的ともいえる数の猛威は相手をする自由騎士達の体力を奪っていく。最前線で戦うエルシーと、体力に劣るマグノリアは瞬く間に体力を奪われてフラグぐメンツを削られた。
「待たせたな。子供の退避は完了した」
だがアデルが子供を安全な場所に寝かせ、戦線に戻ってくると戦いの流れは一変する。
「ありがとうございます。お父さんが死ぬところは見せたくなかったのであります」
アデルに礼を言って、フリオが剣を振るう。相手は軍務経験を持ち、イブリース化で強化されているため容易に打ち倒すことはできない。だが難敵と言うわけでもない。フリオの剣は確実に、相手の体力を奪っていた。
「俺達の到着が間に合っていれば、な……勇敢な兵士に、敬意を」
同じく斧を持つ還リビトに迫るアデル。鎧の壊れ具合や斧の持ち方などから、相応に戦い慣れた兵士だったのだろう。だからこそ手加減はしないし、だからこそ戦いを挑んだ勇気に本気を出して挑む。突き出した穂先が還リビトの身体を貫き、その動きを止めた。
「コッチはこれで片付いたかね。そんじゃ向こう戻りますか」
還リビトが完全に動かなくなったことを確認し、ニコラスはそう告げた。ダメージを受けた仲間の傷を癒しながら、これで良かったのだと息をつく。この男も子供を殺したくなんかないだろう。ヘルメリアでの戦いを思い出し、背筋を震わせた。
「さすが旦那達だ。もう済ませたのか」
合流した仲間達に笑みを浮かべるウェルス。押し寄せる還リビトの群れに難儀していたウェルスだが、これで巻き返せるぜと弾丸を撃ち放つ。弾丸が還リビトの群れの中心で炸裂し、多くの還リビトを地に伏していく。
「うん。これで盛り返せる……かな」
戦いの流れが変わったことを感じながら、マグノリアは頷いた。単純に攻め手が増えたという事だけではない。自分の役割に集中できるという精神的な安心が大きかった。魔力を練り上げ、因果を結ぶ。錬金術を行使し、状況を整えていく。
「緋色の拳、味わいなさい!」
言って紅色のガントレッドを突き出すエルシー。浄化の力を込めて、祈りと共に敵を穿っていく。もう少し早く来ることが出来たら。そんな想いを込めて拳を強く握りしめる。時間は戻らないけど、未来をよくするることはできるはずだ。
歴戦の自由騎士は数で勝る還リビトを少しずつ押し返していく。そして還リビトの数が減れば減るほど、自由騎士達の殲滅速度は加速していく。
「貴方で最後よ!」
最後に残った還リビトにエルシーが迫る。既にボロボロの還リビト。その姿から目を背けることなく、エルシーは真っ直ぐに拳を突き出した。惨劇から目を背けない。そして二度と繰り返さない。そう誓って、真っ直ぐに。
「悔しさや辛さは私が背負ってあげる。だから貴方達は穏やかに眠りなさい!」
突き出した拳が還リビトを討つ。その衝撃で崩れ落ちる還リビト。
その表情は偶然かはたまたエルシーの言葉が届いたのか、安らかな表情だった。
●
リヒトの安全が確保されてからは、戦いは滞りなく終わったと言えよう。
「大丈夫か?」
「あ……。お父さんは!?」
目を覚ましたリヒトは、開口一番そう問いかける。
「良ーく聞きな。俺達はイ・ラプセルの騎士だ。お前のお父さんだが、ヴィスマルクの軍隊の暴走で亡くなった」
しゃがみこんで目線を合わせたニコラスが、説明を開始する。還リビトとなった親に殺されそうになった、という事を伏せて。
「んでもって俺らは還リビトとヴィスマルク軍の対応に派遣されたわけだ」
「でも僕は確かに父さんを――」
「ウェルターを見たのか」
何かを言おうとするリヒトを制するようにアデルが口を挟む。
「もしかしたらそれは、最後に彼がお前を一目見ようとして、彼の魂がお前の所に現れたのかもしれないな」
そんなことがあるとアデルは信じてはいない。だけどそう思うことで親に殺されそうになった事実が隠せるのなら、それでいい。
「……そう。やっぱり、死んだんだ……」
衝撃を受けたのか、顔を青ざめてしゃがみ込むリヒト。村の惨状を見て覚悟していたとはいえ、真実を知るのはやはりつらい。
「君の父親の最後の……君への想いを……君は覚えているかい?」
そんな少年にマグノリアは語りかける。水鏡から聞いたウェルターとリヒトの会話。息子を生かすために戦いを挑んだ父の姿。
「……お父さんは、ボクを助けるために……」
「うん。それが分かっているのなら……何も言わない。父親の想いを、忘れないで上げてほしい」
父は息子に生きてほしいと願った。その想いをどう解釈するかは、マグノリアの範疇ではない。行かされたことを喜ぶのも、残されたことを恨むのも、すべてリヒト自身の問題なのだ。
「恨みたいのなら恨んでもいいのであります。それはそれで、生きる理由になるのですから」
リヒトを見ながらフリオが声をかける。如何なる理由であれ、そこに感情があるなら生きる理由になる。今は無気力にさえならなければそれでいい。辛くても悲しくても、生きていることを諦めないでいてほしい。
「……お墓を作りませんか? 村の皆さんがそのままなのは、かわいそうでありますから」
「生存者はなしだ。遺品になりそうなものを見繕って来たぜ」
戦いが終わってから村の中を散策していたウェルスがそんなことを言う。まだ生存者がいないかを探すと同時に、村人の遺品になりそうなものを探してきたのだ。……ただ肉体だけを土に埋めるのは、忍びない。
「指輪に銀の皿。交霊術で誰のものか確認して、一緒に埋めておくぜ」
「大いなる女神の祝福を受け、その魂は虚無の海へと還らん」
神職であるエルシーは村人達を埋めた墓前で祈りを捧げる。セフィロトの海に還る魂の安息を願って手を合わせていた。言葉が確かに、祈りは静かに、儀礼的に指先で聖なる印を刻み、彼らの安寧をねがう。
「願わくば、その旅路が安らかでありますように」
葬送の言葉は、空に響いて消えていった――
ニール村唯一の生存者であるリヒトはこの後イ・ラプセルに引き取られ、孤児院に送られることになる。戦時下に置いて子供が一人で生きていく術は過酷で、それは犯罪を伴う事となるだろう。国としても、未然に犯罪が抑止できるならそれに越したことはない。
荒涼とした風が、誰もいないニール村を吹き抜ける。家を焼かれ、畑に塩を巻かれたこの村に生活の息吹きが戻るのはどれほどの時間がかかるだろうか。このまま朽ち果てていくのが運命なのだろうか。
戦争という過酷な時代。弱き者が強い者の得となるために犠牲となる世界。
『そんなことは間違っている』
自由騎士達はそんな想いを噛みしめ、ニール村を後にした。
戦争は、まだ終わらない――
「あーあーあー。ま、還リビトがいても仕方ないが……っ」
苦虫を嚙み潰したような表情をする『罰はその命を以って』ニコラス・モラル(CL3000453)。惨劇が起きた村。その事実だけでも痛々しいというのに、殺された者達が脅威となって蘇る。そしてそこには、まだ生きている子供がいたのだ。子を持つ父として思う所はある。
「あの子供……マズいわね!」
言って駆けだす『緋色の拳』エルシー・スカーレット(CL3000368)。戦争で親を失った子供。その境遇と自分を重ねてしまう。還リビトになったとはいえ、親に殺されてしまうという惨劇を止める為に、強く拳を握りしめる。
(生きる事は残酷なことかもしれないけど――!)
同じく状況を確認して走り出すフリオ・フルフラット(CL3000454)。父親を失い、おそらく家族や友人全てを失い。そんな状況で生きていくことはけして楽なことではないだろう。それでも、生きているのだ。その事に、何かの意味があると信じている。
「そっちは任せたぜ」
子供の方に向かう仲間を確認し、『ラスボス(HP50)』ウェルス ライヒトゥーム(CL3000033)は武器を構える。子供に関して思う所はあるが、仲間の実力を信じている。ならばこちらはこちらの仕事をするまでだ。
「すぐに戻る」
ウェルスにそう言い放って、『装攻機兵』アデル・ハビッツ(CL3000496)は走り出す。この惨劇を行った部隊の名前を知っている。その部隊の指揮官を知っている。ヘルメットで隠されたアデルの表情は見えない。ただ、武器を持つ手に力が強くこもっていた。
「空を駆けるゲシュペンスト……か」
『紅の傀儡師』マグノリア・ホワイト(CL3000242)は還リビト……というよりはイブリースの原因である幽霊列車に関して思いを馳せていた。何に反応して現れ、何を目的としているのか。そもそも生物なのか否か。分からない事は多い。
「父さん!」
走る少年。その瞳には父の姿しか見えていない。村を襲った惨劇という衝撃。その衝撃から逃れるように頼れる大人にすがろうとする。それは子供として当然の心理。父の惨状には気付かない。……気付きたくない。気付いてしまえば、心が壊れてしまうから。
還リビトは無慈悲に斧を振り上げ――
「……大丈夫か」
その一撃は、子供を庇ったアデルに振り下ろされた。防御する余裕もなく、アデルの身体に痛みが走る。悲鳴を精神力で押さえ込んで、優しく声を出した。
「え? 誰……?」
突然の乱入に戸惑うリヒト。他の自由騎士達もそれぞれの配置につき、還リビトもその動きに気付いて殺意を向ける。
滅んだ村。そこで死んだ者達を前に、自由騎士達は武器を構える。
●
「貴方達の相手は私よ!」
村人の還リビトに迫り、エルシーは声を張り喘げ叫ぶ。還リビトに意思はない。ただ生きている者に襲い掛かるだけのイブリース。故に声をかける意味はない。だけど、エルシーは彼らをただのイブリースだと思いたくない。
「皆、還リビトを押さえていて!」
エルシーは飲み仲間の親衛隊に声をかけ、還リビトに迫る。性格に難がある者もいるが、戦闘となれば背中を任せられる者達だ。彼らに背中を預け、エルシーは還リビトに拳を向ける。力任せに振るわれる腕を潜り抜け、真っ直ぐに拳を叩き込んだ。
「数は多いけど、統率は取れていないわ。落ち着いて戦えば勝てる!」
「厄介なのは数だな。逆に言えばそれ以外はどうにかなる」
状況を冷静に分析するウェルス。何名かの自由騎士は子供を救うためにこの場を離れ、十を超える還リビトを相手するには数が足りない。だが、足りないからと言って負けるつもりはない。厄介だが、手も足も出ないわけではない。
「苦しい戦いだが、これぐらいは何度も潜り抜けてきたぜ」
幾多の戦乱を潜り抜けてきた自由騎士。ウェスルもまた、その一人だ。その経験が冷静さを保ち、体を動かしていく。改造銃を慣れた動作で作動させ、狙いを定めて引き金を引く。装填された『専用特殊弾アルカス』が還リビト達を穿っていく。
「足止めしながら数を減らしていくぜ」
「そうだね……。今はそれが最善だ」
『SHAMROCK』を手にしてマグノリアが頷く。戦術上の最適解は、子供を見捨てて不意打ちをする事だ。だが自由騎士はそれを選ばなかった。その事を責めるつもりは毛頭ない。そうすると決まれば、その方針に則した最適解を選ぶのみだ。
「傷を癒しながら、合流を待とう……」
魔力を展開し、戦況を見るマグノリア。手数が足りないのなら、敵の力を弱めればいい。『劣化』の概念を展開し、還リビト達に付与していく。元となった村人の身体能力がそれほど強くない事もあり、こちらが受ける傷はかなり抑えられた。
「大丈夫。アデル達ならあの子を守り切れる」
言ってマグノリアは子供の方を見る。
「やれやれ無事か。とはいえ、ここからが問題なんだけどな」
子供を庇ったアデルを見ながらニコラスは安堵のため息をつく。アデルのかなりのダメージを負ったが、致命的というほどでもない。命があるなら、巻き返しは可能だ。肉体的にも、精神的にもだ。
(子供を守ったつもりが傷つけてしまう、か。ヤレヤレだね)
未だ病床に伏している娘のことを思いながら、ニコラスはそんなことを思う。思う所はそれなりにあるが、今は戦闘に集中する。崩れそうになるアデルに癒しの術を解き放ち、術の効き具合を確認した。
「やるだけやったが、無茶するなよ」
「安心しろ。俺は追い込まれてからが本番だ」
和らいだ痛みを確認し、アデルは言葉を放つ。腕の中には小さな命。その鼓動が途切れていない事を再確認し、その首筋に打撃を加える。機を失ったことを確認し、アデルは子供を抱えたまま立ち上がり、安全な場所に走っていく。
「侵火槍兵団第100歩兵大隊、フォートシャフトの置き土産、か……」
忌々し気に言い放つアデル。イブリース化は偶然だが、第100歩兵大隊が暗躍しなければ今回の事件は起きなかった。それを思えば憎しみの感情も生まれるものだ。大隊の指揮官への感情を燃やしながら、アデルは体を動かした。
「これがフォートシャフトの強さと言うのなら、俺は――」
「あの子の元へは向かわせないであります!」
子供を狙う還リビトを足止めするフリオ。還リビトの跋扈を許すつもりはなく、親が子供を殺すなどと言う事を認めるつもりはない。それを止める力があるのなら、それを行使することに迷いはなかった。それが困難な道だとしても。
「私は、そうした献身によって生かされたのですから」
1818年のヴィスマルク空襲時、フリオは四肢を失った。その際、人の助けにより生還したのだ。あの日助けられた命に意味があるのなら、これから助ける命にもきっと意味がある。鉄の腕で還リビトの斧を受け止めながら、心はただ哀しみを帯びていた。
「……せめて、安らかに眠ってほしいであります」
死は覆らない。ならばせめて眠りは静謐に。アクアディーネの浄化の権能は、その為に在るのだ。破壊ではなく、安らぎをもって虚無の海へと返すために。
ニール村の戦い。生きている者と死んでいる者の戦いは、加速していく。
●
戦いにおいて、数は暴力だ。
弱体化されているとはいえ、五倍近くの手勢を相手するのは楽ではない。此処の実力は自由騎士一人一人に劣っているとはいえ、暴力的ともいえる数の猛威は相手をする自由騎士達の体力を奪っていく。最前線で戦うエルシーと、体力に劣るマグノリアは瞬く間に体力を奪われてフラグぐメンツを削られた。
「待たせたな。子供の退避は完了した」
だがアデルが子供を安全な場所に寝かせ、戦線に戻ってくると戦いの流れは一変する。
「ありがとうございます。お父さんが死ぬところは見せたくなかったのであります」
アデルに礼を言って、フリオが剣を振るう。相手は軍務経験を持ち、イブリース化で強化されているため容易に打ち倒すことはできない。だが難敵と言うわけでもない。フリオの剣は確実に、相手の体力を奪っていた。
「俺達の到着が間に合っていれば、な……勇敢な兵士に、敬意を」
同じく斧を持つ還リビトに迫るアデル。鎧の壊れ具合や斧の持ち方などから、相応に戦い慣れた兵士だったのだろう。だからこそ手加減はしないし、だからこそ戦いを挑んだ勇気に本気を出して挑む。突き出した穂先が還リビトの身体を貫き、その動きを止めた。
「コッチはこれで片付いたかね。そんじゃ向こう戻りますか」
還リビトが完全に動かなくなったことを確認し、ニコラスはそう告げた。ダメージを受けた仲間の傷を癒しながら、これで良かったのだと息をつく。この男も子供を殺したくなんかないだろう。ヘルメリアでの戦いを思い出し、背筋を震わせた。
「さすが旦那達だ。もう済ませたのか」
合流した仲間達に笑みを浮かべるウェルス。押し寄せる還リビトの群れに難儀していたウェルスだが、これで巻き返せるぜと弾丸を撃ち放つ。弾丸が還リビトの群れの中心で炸裂し、多くの還リビトを地に伏していく。
「うん。これで盛り返せる……かな」
戦いの流れが変わったことを感じながら、マグノリアは頷いた。単純に攻め手が増えたという事だけではない。自分の役割に集中できるという精神的な安心が大きかった。魔力を練り上げ、因果を結ぶ。錬金術を行使し、状況を整えていく。
「緋色の拳、味わいなさい!」
言って紅色のガントレッドを突き出すエルシー。浄化の力を込めて、祈りと共に敵を穿っていく。もう少し早く来ることが出来たら。そんな想いを込めて拳を強く握りしめる。時間は戻らないけど、未来をよくするることはできるはずだ。
歴戦の自由騎士は数で勝る還リビトを少しずつ押し返していく。そして還リビトの数が減れば減るほど、自由騎士達の殲滅速度は加速していく。
「貴方で最後よ!」
最後に残った還リビトにエルシーが迫る。既にボロボロの還リビト。その姿から目を背けることなく、エルシーは真っ直ぐに拳を突き出した。惨劇から目を背けない。そして二度と繰り返さない。そう誓って、真っ直ぐに。
「悔しさや辛さは私が背負ってあげる。だから貴方達は穏やかに眠りなさい!」
突き出した拳が還リビトを討つ。その衝撃で崩れ落ちる還リビト。
その表情は偶然かはたまたエルシーの言葉が届いたのか、安らかな表情だった。
●
リヒトの安全が確保されてからは、戦いは滞りなく終わったと言えよう。
「大丈夫か?」
「あ……。お父さんは!?」
目を覚ましたリヒトは、開口一番そう問いかける。
「良ーく聞きな。俺達はイ・ラプセルの騎士だ。お前のお父さんだが、ヴィスマルクの軍隊の暴走で亡くなった」
しゃがみこんで目線を合わせたニコラスが、説明を開始する。還リビトとなった親に殺されそうになった、という事を伏せて。
「んでもって俺らは還リビトとヴィスマルク軍の対応に派遣されたわけだ」
「でも僕は確かに父さんを――」
「ウェルターを見たのか」
何かを言おうとするリヒトを制するようにアデルが口を挟む。
「もしかしたらそれは、最後に彼がお前を一目見ようとして、彼の魂がお前の所に現れたのかもしれないな」
そんなことがあるとアデルは信じてはいない。だけどそう思うことで親に殺されそうになった事実が隠せるのなら、それでいい。
「……そう。やっぱり、死んだんだ……」
衝撃を受けたのか、顔を青ざめてしゃがみ込むリヒト。村の惨状を見て覚悟していたとはいえ、真実を知るのはやはりつらい。
「君の父親の最後の……君への想いを……君は覚えているかい?」
そんな少年にマグノリアは語りかける。水鏡から聞いたウェルターとリヒトの会話。息子を生かすために戦いを挑んだ父の姿。
「……お父さんは、ボクを助けるために……」
「うん。それが分かっているのなら……何も言わない。父親の想いを、忘れないで上げてほしい」
父は息子に生きてほしいと願った。その想いをどう解釈するかは、マグノリアの範疇ではない。行かされたことを喜ぶのも、残されたことを恨むのも、すべてリヒト自身の問題なのだ。
「恨みたいのなら恨んでもいいのであります。それはそれで、生きる理由になるのですから」
リヒトを見ながらフリオが声をかける。如何なる理由であれ、そこに感情があるなら生きる理由になる。今は無気力にさえならなければそれでいい。辛くても悲しくても、生きていることを諦めないでいてほしい。
「……お墓を作りませんか? 村の皆さんがそのままなのは、かわいそうでありますから」
「生存者はなしだ。遺品になりそうなものを見繕って来たぜ」
戦いが終わってから村の中を散策していたウェルスがそんなことを言う。まだ生存者がいないかを探すと同時に、村人の遺品になりそうなものを探してきたのだ。……ただ肉体だけを土に埋めるのは、忍びない。
「指輪に銀の皿。交霊術で誰のものか確認して、一緒に埋めておくぜ」
「大いなる女神の祝福を受け、その魂は虚無の海へと還らん」
神職であるエルシーは村人達を埋めた墓前で祈りを捧げる。セフィロトの海に還る魂の安息を願って手を合わせていた。言葉が確かに、祈りは静かに、儀礼的に指先で聖なる印を刻み、彼らの安寧をねがう。
「願わくば、その旅路が安らかでありますように」
葬送の言葉は、空に響いて消えていった――
ニール村唯一の生存者であるリヒトはこの後イ・ラプセルに引き取られ、孤児院に送られることになる。戦時下に置いて子供が一人で生きていく術は過酷で、それは犯罪を伴う事となるだろう。国としても、未然に犯罪が抑止できるならそれに越したことはない。
荒涼とした風が、誰もいないニール村を吹き抜ける。家を焼かれ、畑に塩を巻かれたこの村に生活の息吹きが戻るのはどれほどの時間がかかるだろうか。このまま朽ち果てていくのが運命なのだろうか。
戦争という過酷な時代。弱き者が強い者の得となるために犠牲となる世界。
『そんなことは間違っている』
自由騎士達はそんな想いを噛みしめ、ニール村を後にした。
戦争は、まだ終わらない――
†シナリオ結果†
成功
†詳細†
†あとがき†
どくどくです。
ヴィスマルクレガート砦戦役(勝手に名前つけた)の幕間でした。
以上のような結果となりました。やはり還リビト16名は多すぎ……でもなかったよ、ちくしょう。
アフターケアも含めて、お見事な対応でした。
MVPは子供を救うために尽力したハビッツ様に。戦闘中も上手く足手まとい出来るかと思ったのですが、気絶させられたのなら仕方なし。
それではまた、イ・ラプセルで。
ヴィスマルクレガート砦戦役(勝手に名前つけた)の幕間でした。
以上のような結果となりました。やはり還リビト16名は多すぎ……でもなかったよ、ちくしょう。
アフターケアも含めて、お見事な対応でした。
MVPは子供を救うために尽力したハビッツ様に。戦闘中も上手く足手まとい出来るかと思ったのですが、気絶させられたのなら仕方なし。
それではまた、イ・ラプセルで。
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